説明

給水温度の制御方法およびシステム

【課題】自然循環沸騰水型原子炉(NCBWR)の出力レベルを制御するシステムを提供する。
【解決手段】出力レベルを制御するシステム14は、NCBWR10のアニュラス25に流入する給水を加熱して、炉心54を通って流れる再循環水の温度を、所定の再循環水運転温度より高く上昇させるための加熱サブシステム70を備える。さらに、アニュラス25に流入する給水の温度を検知する温度センサ74を備える。温度センサ74は、アニュラス25に流入する給水の温度を、アニュラス25に流入する給水の所定の運転温度より高い要求された温度に上昇するべく、加熱サブシステム18に対して命令する温度制御装置75と通信可能に接続されている。アニュラス25に流入する給水の温度を上昇することによって、再循環水の温度は所定の再循環水運転温度より高く上昇させられ、NCBWR10の炉心54で発生する出力レベルを低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本教示は、自然循環沸騰水型原子炉内の再循環冷却材の温度を制御し、それによって原子炉の出力を制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この項の記述は、本開示に関する背景情報を単に提供するものであり、先行技術を構成するものではない。
【0003】
通常、沸騰水型原子炉(BWR)では、制御棒の配置および炉心を通る液体冷却材の再循環流量を調節することによって、炉心の反応度量が制御される。例えば、単に再循環流量を変化することによって、出力は30%から40%に調節できる。一般に、典型的なBWRは比較的低い出力レベルで運転するように設定されており、すなわち、制御棒を移動することにより、燃料バンドルがかなり低い出力で運転されており、次に再循環流を増加して、制御棒を移動することなく100%出力を達成できる。出力を制御するために再循環流を使用することにより、燃料棒および燃料ペレットは比較的緩慢に均一な割合で出力レベルを変化させ、それによってペレット被覆管相互作用(PCI)および燃料棒被覆管の損傷を回避する。
【0004】
しかし、自然循環沸騰水型原子炉(NCBWR)は再循環ポンプを備えず、その代わりに自然循環を採用する。したがって、NCBWRの出力を制御するために再循環流を使用することはできない。少なくともいくつかの既知のNCBWRは制御棒を操作して燃料バンドルの出力レベルを制御するが、この方法では出力レベルがかなり急速に、非均一な割合で変化する。制御棒が引き抜かれるにつれて出力をあまりに急速に上昇すると、燃料被覆管に重大な損傷を引き起こす。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様によれば、自然循環沸騰水型原子炉(NCBWR)の出力レベルを制御するシステムが提供される。種々の実施形態において、本システムは、NCBWRの原子炉容器に流入する給水を加熱して、炉心を通って流れる再循環水の温度を、所定の再循環水運転温度より高く上昇させるための加熱サブシステムを備える。さらに本システムは原子炉容器に流入する給水の温度を検知するように作動可能な温度センサを備える。温度センサは、原子炉容器に流入する給水の温度を原子炉容器に流入する給水の所定の運転温度より高い要求された温度に上昇させるように、温度センサの温度読取り値に基づいて、加熱サブシステムに対して命令するように作動可能な、温度制御装置と通信可能に結合されている。原子炉容器に流入する給水の温度を上昇させることによって、再循環水の温度は所定の炉心に流入する再循環水運転温度より高く上昇させられ、NCBWR炉心で発生する出力レベルを低下させる。
【0006】
他の態様によれば、自然循環沸騰水型原子炉(NCBWR)の出力レベルを制御する方法が提供される。種々の実施形態において、この方法は、温度センサを用いて原子炉容器に流入する給水の温度を検知すること、およびNCBWRの加熱サブシステムを用いて原子炉容器に流入する給水の温度を上昇させることを含む。加熱サブシステムは、原子炉容器に流入する給水の温度を、所定の原子炉容器に流入する給水の運転温度より高い、要求された温度に上昇させる。したがって、炉心に流入する再循環水の温度は、所定の再循環水運転温度より高く上昇させられ、その結果、NCBWR炉心で発生する出力レベルは低下する。
【0007】
本教示のさらなる応用分野は、本明細書に記載される説明によって明らかになるであろう。この説明および具体的な例は、例示する目的のみを意図しており、本教示の範囲を限定することを意図するものでないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書に記載された図面は例示することのみを目的としており、本教示の範囲を限定することは全く意図していない。
【0009】
以下の説明はその本質において単に例示するものであり、本発明の教示、応用、または使用を限定することは全く意図していない。本明細書を通して、同様の参照番号は同様の構成要素を参照するために使用される。
【0010】
図1を参照すると、出力レベル制御システム14を備える自然循環沸騰水型原子炉(NCBWR)10の全体概略図が示される。NCBWR10は一般に、少なくとも1台の主給水加熱器18、原子炉容器22、蒸気ラインヘッダ26、高圧蒸気タービン30、湿分分離加熱器34、および低圧蒸気タービン38を備える。図1に例示され本明細書で説明されるように、種々の実施形態において、NCBWR10は複数の主給水加熱器18を備える。
【0011】
主給水加熱器18はそれぞれ、給水入口ライン42および給水ポンプ46を経由して供給されるか、または給水リンクライン50およびその他の主給水加熱器18を経由して供給される給水を受け入れる給水加熱器コア(図示せず)を備える。各主給水加熱器18はさらに、それぞれの加熱器コアを取り囲み、湿分分離加熱器34および/または高圧蒸気タービン30から蒸気抽気ライン52および/または53を経由して流入する高圧、高温蒸気を受け入れるように構成された蒸気シェル(図示せず)を含む。通常、高圧蒸気タービン30および/または湿分分離加熱器34から流出する蒸気は、主給水加熱器18に向けて分流され、それぞれのシェルを通して循環させられて、各加熱器コアを通して流れる給水を通常運転温度などの所定の温度、例えば420°F未満まで加熱する。加熱された給水は次いで原子炉容器給水入口ライン56を経由して原子炉容器22のアニュラス25に供給され、加熱された給水はそこで炉心54内に循環する再循環流と混合され、その一部となる。
【0012】
再循環流は、炉心54内の燃料棒を冷却し、炉心54で、冷却水が例えば540°Fの高温蒸気に変換され、この蒸気は複数の原子炉容器蒸気出口ライン58を通って原子炉容器22から流出する。蒸気出口ライン58は、高圧タービン蒸気供給ライン62を経由して高圧蒸気タービン30に出力される高温、高圧蒸気を調整および制御する蒸気ラインヘッダ26に入って終結する。高圧蒸気タービン30に供給された高温、高圧蒸気は、タービン30を回転するために使用される。次いで、高温、高圧蒸気の少なくとも一部は、高圧タービン出口ライン66を経由して、高圧蒸気タービン30から流出する。高圧タービン30から出力された蒸気は湿分分離加熱器34に供給され、そこで液体の水が蒸気から分離され蒸気は乾燥させられる。乾燥された蒸気は次に低圧蒸気タービン38に供給される。低圧蒸気タービン38に供給された高温、低圧蒸気はタービン38を回転するために使用される。
【0013】
出力レベル制御システム14は、給水が原子炉容器給水入口ライン56を経由してアニュラス25に流入する前に、主給水加熱器18から流出する給水の温度を上昇するように構成され、作動可能とされている。さらに具体的には出力レベル制御システム14は、アニュラス25に流入する給水を制御可能に加熱し、それによって再循環水流の温度を、所定の通常の再循環水運転温度より高い温度まで制御可能に上昇させるように構成され、作動可能とされている。再循環水流の温度を、所定の通常の再循環水運転温度より高い温度に上昇させることにより、炉心54から出力される出力レベルを制御可能に減少させる。
【0014】
一般に出力レベル制御システム14は、加熱サブシステム70、および温度制御装置75に通信可能に接続された温度センサ74を備えており、温度制御装置75は加熱サブシステム70に通信可能に接続されている。温度センサ74は原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を検知し、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を監視し制御するために、温度制御装置75と通信する。温度制御装置75は、コントロールセンタ78から受信した温度命令に基づき、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を、アニュラス25に流入する給水の通常の運転温度より高い、命令されまたは要求された温度に上昇させるための命令信号を、加熱サブシステム70に送信する。加熱された給水はアニュラス25に供給されて、再循環流と混合し炉心54内の再循環流の温度を、再循環流の通常の運転温度より高い温度に制御可能に上昇させる。したがって、再循環流の制御された温度上昇は、炉心54の出力レベルを制御可能に減少させる。
【0015】
ここで図2を参照すると、種々の実施形態において、加熱サブシステム70は蒸気ヘッダ26、少なくとも1台の高温給水加熱器(HTFH)、および蒸気バイパス弁82を備える。種々の実施形態において各HTFHは、1台または複数の主給水加熱器18から加熱器コア(図示せず)に給水の入力流を受け入れるように構成された、補助給水加熱器86である。さらに各補助給水加熱器86は、蒸気ヘッダ26からヘッダ蒸気分流ライン84を経由して、各加熱器コアを取り囲むシェル(図示せず)内に高温蒸気を受け入れるように構成されている。各補助給水加熱器86はさらに、給水の流れを原子炉アニュラス25に出力するように構成されている。温度制御装置75が原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を上昇させる命令を受信すると、温度制御装置75は次に蒸気バイパス弁82に命令信号を送信する。
【0016】
蒸気バイパス弁82は温度制御装置75から命令を受信すると、受信した命令に基づき、蒸気ヘッダ26から補助給水加熱器86のシェルに流入する高温蒸気の流量を制御する。高温蒸気が各シェルを通って循環すると、主給水加熱器18から各補助給水加熱器コアを通って流れる給水が加熱される。温度制御装置75は、温度センサ74によって検知された温度読取り値に基づいて、蒸気バイパス弁82と通信し、補助給水加熱器86への高温蒸気の流入量を制御する。このようにコントロールセンタ78から受信した要求温度に基づいて、温度センサ74と制御装置75は原子炉アニュラス25へ出力される給水流の温度上昇を制御するフィードバックループを確立する。さらに具体的には、センサ/制御装置74/75のフィードバックループは給水流の温度を調整して、原子炉アニュラス25に流入する給水の通常の運転温度より高い要求温度を達成する。
【0017】
種々の実施形態において、ヘッダ蒸気分流ライン84および補助/高温給水加熱器86のシェル側を暖機し要求に応じて使用可能な状態に維持するために、ヘッダ蒸気分流ライン84を通る一定の蒸気流を実現するオリフィス88が、蒸気バイパス弁82周りのバイパスライン89に設けられる。
【0018】
さらに図2を参照すると、種々の実施形態において、加熱サブシステム70は温度制御装置75からの命令も受信するように作動可能な、給水バイパス弁90をさらに備える。受信した命令に応答して、給水バイパス弁90は、給水の流れを給水ポンプ46から原子炉アニュラス25内に導く加熱器バイパスライン94を通る給水の流量を制御する。給水ポンプ46から流出する給水の温度は、主および補助給水加熱器18および86から流出する給水よりも著しく低い。したがって、温度制御装置75に命令されて、加熱器バイパスライン94を通る給水の流れが増加すると、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度が低下する。例えば、コントロールセンタ78からの、炉心54の出力レベルを増加する要求、すなわち原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を特定の温度に下げる要求に応答して、温度センサおよび制御装置の組合せ74/75は、加熱器バイパスライン94を通って流れる給水の流れを増加させる。
【0019】
加熱器バイパスライン94を通って流れる低温の水が増加すると、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度が低下する。さらに具体的には、温度センサ74および温度制御装置75は、加熱器バイパスライン94を通る給水の流れを制御し、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を下げて、炉心54内の再循環水の温度を通常の運転温度より低い要求された温度に下げ、それによって炉心54で発生する出力レベルを増加する。したがって、種々の実施形態において、出力レベル制御システム14は給水流の温度を上昇して出力を低下し、給水流の温度を低下して出力を上昇することによって、炉心54の出力レベルを制御する。
【0020】
ここで図3および図4を参照すると、他の種々の実施形態において、NCBWRは複数の主給水加熱器18を備えており、主給水加熱器18の少なくとも1台はHTFHの機能も果たす。
【0021】
いくつかの実施形態において、各主給水加熱器18は、図3に示すようにHTFHの機能も果たすように構成されている。それらの実施形態において、各HTFH/主給水加熱器18は、高圧蒸気タービン30および/または湿分分離加熱器34から蒸気抽気ライン53および/または52を経由して、高圧、高温蒸気を受け入れ、炉心54に出力される給水の流れを通常の運転温度に加熱するように構成されている。さらに、それらの実施形態では上述のように、各HTFH主給水加熱器18は蒸気ヘッダ26から高温蒸気を受け入れ、原子炉アニュラス25に出力される給水の温度を、通常の運転温度より高い要求された温度に上昇するように構成されている。
【0022】
いくつかの実施形態では代替として、給水ポンプ46に最も近い主給水加熱器18(一次主給水加熱器18)は、蒸気ヘッダ26または湿分分離器/加熱器34のどちらかからではなく、高圧蒸気タービン30からのみ蒸気抽気ライン53を経由して、抽気蒸気を受け入れる。したがって、一次主給水加熱器18から後続の主給水加熱器18に流れる給水の温度は、通常の運転温度より高くなる。
【0023】
他の実施形態では、図4に示すように、複数の主給水加熱器18の一部のみがHTFHとしての機能も有するように構成される。そのような実施形態において、HTFHでない各主給水加熱器18は、上述のように、高圧蒸気タービン30および/または湿分分離加熱器34から蒸気抽気ライン53および/または52を経由して高圧、高温蒸気を受け入れ、原子炉アニュラス25に出力される給水の流れを通常の運転温度に加熱するように構成されている。しかし、各HTFH/主給水加熱器18は、蒸気ヘッダ26からヘッダ蒸気分流ライン84を経由して高温蒸気を受け入れるように構成されている。
【0024】
各HTFH/主給水加熱器18は、通常運転温度の給水が要求されたときは、HTFH/主給水加熱器18が蒸気ヘッダ26からの蒸気を用いて、原子炉アニュラス25に出力される給水の流れを通常運転温度に加熱するように構成されている。さらに、通常運転温度より高い給水温度が要求されたときは、各HTFH/主給水加熱器18は蒸気ヘッダ26からの追加の高温蒸気を用いて、炉心54へ出力される給水の温度を要求された温度に上昇させる。
【0025】
このように、図3および図4をさらに参照すると、温度制御装置75が原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を上昇させる命令を受信すると、温度制御装置75は、蒸気ヘッダ26から各HTFH/主給水加熱器18に流入することを許可された高温蒸気の量を増加するように、蒸気バイパス弁82に命令する。各HTFH/主給水加熱器18のシェルを通って流れる高温蒸気が増加すると、それぞれの加熱器コアを通って流れ、原子炉アニュラス25に出力される給水の温度が、要求され/命令された温度に上昇する。原子炉アニュラス25に流入する給水の温度が上昇すると、それに応じて炉心54内の再循環水の温度が上昇し、それによって原子炉容器22内の制御棒を操作せずに、原子炉容器22の出力レベルを低下させる。
【0026】
ここで図5を参照すると、種々の実施形態において、加熱サブシステム70は主給水加熱器18から原子炉アニュラス25に流入する給水を加熱するように構成され、作動可能とされている加熱装置98を備える。さらに具体的には、加熱装置98は、温度制御装置75から発せられた命令に応答し、温度センサ74によって検知された原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を、通常運転温度より高い要求された温度に上昇させる。例えば、炉心54の出力レベルを低下させるというコントロールセンタ78からの要求に応答して、温度制御装置75は、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を要求された温度に上昇させるように加熱装置98に命令する。それに応じて炉心54内の再循環流の温度は上昇させられ、原子炉容器22から出力される出力レベルは、再循環流の温度低下に対応する要求されたレベルに低下する。
【0027】
加熱装置98は、原子炉アニュラス25に流入する給水を、主給水加熱器18で実現された通常運転温度より高い要求された温度に加熱するために適切な、どのような加熱装置であってもよい。例えば、加熱装置98は適切なガスまたは電気加熱装置であってよい。
【0028】
ここで図6を参照すると、種々の実施形態において、各主給水加熱器18はHTFHとして機能するように構成されている。それらの実施形態では、各HTFH/主給水加熱器18は、高圧蒸気タービン30および/または湿分分離加熱器34から、蒸気抽気ライン53および/または52を経由してくる高圧、高温の蒸気を受け入れるように構成され、原子炉アニュラス25に出力される給水の流れを、通常運転温度より高い温度に加熱する。さらに、それらの実施形態では、加熱サブシステム70は温度制御装置75からの命令を受信するように作動可能な給水バイパス弁102を備える。受信した命令に応答して給水バイパス弁102は、給水の流れを給水ポンプ46から原子炉アニュラス25内に導く、加熱器バイパスライン106を通る給水の流量を制御する。給水ポンプ46から流出する給水の温度は、HTFH/主給水加熱器18から流出する給水より著しく低い。したがって、温度センサ74で検知され温度制御装置75によって命令された、加熱器バイパスライン106を通る給水の流れの増加は、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を低下させる。
【0029】
このように、それらの実施形態では、温度センサおよび制御装置の組合せ74/75は給水バイパス弁の動作を制御して、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を要求された任意の温度に低下する。例えば、コントロールセンタ78からの要求に応答して、炉心54から出力される与えられた出力レベル、例えば最大出力の90%、を達成するために、温度制御装置75は、HTFH/主給水加熱器18から流出する給水を十分に冷却して、要求された出力レベルを十分に達成する温度になるように、加熱器バイパスライン106を通る給水が流れるようにする。したがって、出力レベルを増加させるために、温度制御装置75は加熱器バイパスライン106を通る給水の流れを増加させるように命令して、温度センサ74によって検知される給水流および再循環水流の温度を低下させる。逆に、出力レベルを低下させるために、温度制御装置75は加熱器バイパスライン106を通る給水の流れを低下させるように命令して、給水流および再循環水流の温度を上昇させる。
【0030】
ここで図7を参照すると、種々の実施形態に従って、炉心54の出力レベルが変化する2つの独立な機構、すなわち制御棒の移動と給水温度の変化とを組み合わせて、図7に例示されたマップ例などの、炉心出力−給水温度マップを構築することができる。線B−Aは、従来の制御棒引き抜きのみによる、例えば約25%から100%出力への出力上昇線を示す。原子炉出力レベルが増加すると、高圧蒸気タービン30および/または湿分分離加熱器34から来る、より高圧、高温の蒸気を給水加熱のために利用できるので、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度は自動的に上昇する。線B−Aの勾配は、蒸気抽気点および主給水加熱器18を含むバランスオブプラント系統の設計に依存する。
【0031】
線A−Cは、上述の種々の出力レベル制御システム14の実施形態を使用して、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度が、通常の運転温度例えば420°Fを超えて上げられたときの原子炉出力の減少を示す。A−C線は、100%負荷線とも称せられ、A−C線に沿う運転では制御棒の移動が用いられないことを示す。燃料ピンが過熱しない態様で確実に給水温度を変化させるために、線A−Cより上にあってそれに平行な「制御棒ブロック」線を開発し、実行してよい。
【0032】
D−C線は、給水温度および制御棒位置の両方が小刻みに変化させられた場合の経路を示す。D−C線は、原子炉容器22の起動中に、再循環流の温度を通常運転温度より高くして、炉心をC点、例えば85%出力に到達させるときに適用することができる。原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を通常運転温度、例えば約420°Fにして、原子炉容器22を100%出力にするために、必要な制御棒の調節を行い、CからAへの経路を移動するように給水温度を下げることが可能である。出力抑制試験またはその他の原子炉出力操作の間には、逆方向の経路A−C−D−Bに沿って移動することができる。
【0033】
図7のハッチングした区域は、上述のように、原子炉容器22の出力レベルを制御するために、異なる制御棒位置と関連付けた原子炉アニュラス25に流入する給水の温度制御を用いたNCBWR10の運転可能な領域を例示するものである。このようにして、コントロールセンタ78にいる運転員は、命令されたある特定の給水温度の変化の結果として生ずる、出力レベルに及ぼす効果を概念的に理解するための道具および/または指針として、出力−給水温度マップを使用できる。
【0034】
さらにコントロールセンタ78は、出力−給水温度マップを記憶装置108または他のデータベースに保存し、上述のように、温度制御装置75と自動的に通信して原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を自動的に制御するように、記憶装置108に保存された制御アルゴリズムを実行することが可能である。すなわち運転員は、コントロールセンタ78のコンピュータベースのシステムに所望の出力レベルを入力することで、所望の出力レベルを選択し得る。これに応答して、コントロールセンタ78のコンピュータベースのシステムは制御アルゴリズムを実行し、保存された出力−給水温度マップにアクセスして、所望の出力レベルを発生する温度を得る。次いで、コントロールセンタ78は給水温度命令、または給水温度命令のシーケンスを温度制御装置75に送信する。これらの命令は、少なくともその一部として、出力−給水温度マップから得られた所望の出力レベルを発生する温度を指示する。このように、制御アルゴリズムを実行することにより、温度制御装置75に設定される1つまたは複数の温度命令信号が生成される。命令された温度に応答して、温度制御装置75は温度センサ74からの出力に基づくフィードバック制御ループを構築し、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を命令された温度に自動的に調整する。
【0035】
さらに具体的には、温度制御装置75は温度命令信号に応答して温度センサ74と繰り返し通信し、適用可能なバイパス弁、例えばバイパス弁82、90、または102の作動を制御し、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を調整する。さらに、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を自動的に調整して、炉心54内に循環する再循環流の温度を自動的に調整し、その結果出力レベルを所望のレベルに調整する。
【0036】
コントロールセンタ78はさらに、上述した自動制御を実行し遂行するために適した、プロセッサ、ディスプレイ、例えばキーボード、マウス、入力用ペン、タッチスクリーン等のユーザインターフェイス、および他のインターフェイスおよび/または記憶装置などの、他のコンピュータベースの構成要素(図示せず)を備えてよい。
【0037】
このように、本明細書に説明する出力レベル制御システム14は、原子炉アニュラス25に流入する給水の温度を独立的に変化させるように構成され、作動可能とされており、それによって制御棒移動を必要とせずに、炉心の出力レベルを均一に変化させる。
【0038】
本明細書の説明は、本質的に単に例示するものであり、したがって、説明された主旨から逸脱しない変形は、本教示の範囲内にあることが意図されている。そのような変形は本教示の精神と範囲から逸脱したものはみなされない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本開示の種々の実施形態による、自然循環沸騰水型原子炉(NCBWR)の一般的概略図である。
【図2】本開示の種々の実施形態による出力レベル制御システムを含む、図1に示すNCBWRの概略図である。
【図3】本開示の他の種々の実施形態による出力レベル制御システムを含む、図1に示すNCBWRの概略図である。
【図4】本開示の種々の他の実施形態による出力レベル制御システムを含む、図1に示すNCBWRの概略図である。
【図5】本開示の他の種々の実施形態による出力レベル制御システムを含む、図1に示すNCBWRの概略図である。
【図6】本開示の他の種々の実施形態による出力レベル制御システムを含む、図1に示すNCBWRの概略図である。
【図7】本開示の種々の実施形態による、図1に示すNCBWRに使用される出力−給水温度マップを図示したものである。
【符号の説明】
【0040】
10 NCBWR
14 出力レベル制御システム
18 主給水加熱器
22 原子炉容器
25 アニュラス
26 蒸気ラインヘッダ
30 高圧蒸気タービン
34 湿分分離加熱器
38 低圧蒸気タービン
42 給水入口ライン
46 給水ポンプ
50 給水リンクライン
52 蒸気抽気ライン
53 蒸気抽気ライン
54 炉心
56 原子炉容器給水入口ライン
58 原子炉容器蒸気出口ライン
62 タービン蒸気供給ライン
66 高圧タービン出口ライン
70 加熱サブシステム
74 温度センサ
75 温度制御装置
78 コントロールセンタ
82 蒸気バイパス弁
84 ヘッダ蒸気分流ライン
86 補助給水加熱器
88 オリフィス
89 バイパスライン
90 給水バイパス弁
94 加熱器バイパスライン
98 加熱装置
102 給水バイパス弁
106 加熱器バイパスライン
108 コントロールセンタメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然循環沸騰水型原子炉(NCBWR)10の出力レベルを制御するシステムであって、
前記NCBWR10のアニュラス25に流入する給水を加熱するための加熱サブシステム70と、
前記アニュラス25に流入する前記給水の前記温度を検知する温度センサ74と、
検知された前記温度に基づいて前記加熱サブシステム70を制御して前記アニュラス25に流入する前記給水の温度を所望の温度に調節することにより、前記NCBWR10の出力レベルを制御する制御装置と、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記加熱サブシステム70は、
炉心54で発生された高温蒸気を受けるように構成された蒸気ヘッダ26と、
給水入力流を受け入れ、前記蒸気ヘッダ26から高温蒸気を受け入れ、給水流を前記アニュラス25に出力するように構成された、少なくとも1台の高温給水加熱器18と、
前記温度制御装置75からの命令を受信し、受信した命令に基づいて、前記蒸気ヘッダ26から少なくとも1台の給水加熱器18へ流入する高温蒸気の流量を制御する蒸気バイパス弁82であって、前記炉心54を通って流れる再循環水の温度が上昇するように前記アニュラス25に出力される給水流の温度を要求された温度に上昇させ、その結果、NCBWR10の炉心54で発生する出力レベルを低下させる蒸気バイパス弁82と、
ことを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1台の高温給水加熱器18は、
1台または複数の主給水加熱器86からの給水の入力流を受け入れるように構成され、少なくとも1台の補助給水加熱器86に入力される給水流を、前記アニュラス25に流入する給水を所定の運転温度に加熱する少なくとも1台の補助給水加熱器86を備えることを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記高温給水加熱器18の少なくとも1台は、
前記アニュラス25に出力される前記給水流を所定の運転温度に加熱し、
前記蒸気バイパス弁82が前記蒸気ヘッダ26からの前記高温蒸気の前記流量を増加するように命令されたとき、前記アニュラス25に出力される前記給水流の温度を、前記所定の運転温度より高い前記要求された温度に加熱するべく構成された、
1台または複数の主給水加熱器18を備えることを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記1台または複数の各主給水加熱器18は、
前記NCBWR10の高圧タービン66および前記NCBWR10の湿分分離加熱器34のうちの1台から蒸気を受け入れて、前記アニュラス25に出力される前記給水の流れを前記所定の運転温度に加熱し、
前記蒸気ヘッダ26から高温蒸気を受け入れて、前記アニュラス25に出力される前記給水の流れの温度を前記所定の運転温度より高い前記要求された温度に加熱するように構成されたことを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記1台または複数の主給水加熱器18は、
複数の主給水加熱器18と、
前記NCBWR10の高圧タービン30、および前記NCBWR10の前記湿分分離加熱器34の少なくとも1台から蒸気を受け入れて、前記アニュラス25に出力される前記給水の流れを前記所定の運転温度に加熱するように構成された、少なくとも1台の前記主給水加熱器18と、
前記温度制御装置75および前記蒸気バイパス弁82で制御されることにより、前記蒸気ヘッダ26から高温蒸気を受け入れ、前記アニュラス25に出力される前記給水の流れを前記所定の運転温度に加熱し、および、前記アニュラス25に出力される前記給水流の温度を前記所定の運転温度より高い前記要求された温度に上昇させるように構成された、少なくとも1台の主給水加熱器18と、を備える請求項4記載のシステム。
【請求項7】
前記温度制御装置75は、給水バイパス弁90を制御することによって、加熱器バイパスライン94を通って前記アニュラス25に流入する前記給水の流量を調節して、前記アニュラス25に流入する前記給水の温度を、前記所定の運転温度より低い要求された温度に低下させ、前記NCBWR10の炉心54で発生する前記出力レベルを上昇させるように作動可能であることを特徴とする請求項2記載のシステム。
【請求項8】
前記加熱サブシステム70は、前記温度制御装置75から命令を受信し、前記受信した命令に基づいて、前記NCBWR10の少なくとも1台の主給水加熱器18から前記アニュラス25へ至る給水ラインを通って流れる前記給水の温度を、上昇するように作動可能な加熱装置98を備えることを特徴とする請求項1記載のシステム。
【請求項9】
複数の主給水加熱器18と、
前記アニュラス25に出力される前記給水の流れを所定の運転温度よりも高い温度に加熱する少なくとも1台の前記主給水加熱器18と、
前記温度制御装置75からの命令を受信し、前記受信した命令に基づいて、加熱器バイパスライン94を通って前記アニュラス25に流れる前記給水の流量を制御するための給水バイパス弁90を有する前記加熱サブシステム70と、
をさらに備える請求項1記載のシステムであって、
炉心54の出力低下が所望されたときは、前記アニュラス25に流入する前記給水の温度を、給水の最高温度から前記所定の運転温度までの範囲に及ぶ要求された温度に低下させ、
前記NCBWR10の炉心54で発生する前記出力レベルを増加するためには、前記アニュラス25に流入する前記給水の温度を、前記所定の運転温度より低い要求された温度に低下させることを特徴とするシステム。
【請求項10】
自然循環沸騰水型原子炉(NCBWR)10の出力レベルを制御するシステムであって、
NCBWR10のアニュラス25に流入する給水を加熱し、炉心54を通って流れる再循環水の温度を変化させる加熱サブシステム70と、
前記アニュラス25に流入する給水の温度を検知するように作動可能な温度センサ74と、
前記温度センサ74に通信可能に接続され、前記検知された温度の読取り値に基づいて、前記アニュラス25に流入する前記給水の温度を要求された温度に変化させ、前記再循環水の温度を所定の再循環水運転温度から所望の運転温度に変えるよう、前記加熱サブシステム70に命令することにより前記NCBWR10の炉心54で発生する前記出力レベルを制御するように作動可能な温度制御装置75、とを備え、
前記加熱サブシステム70が、
前記炉心54で発生された前記高温蒸気を受け入れるように構成された蒸気ヘッダ26と、
給水の入力流を受け入れ、前記蒸気ヘッダ26から高温蒸気を受け入れ、および前記アニュラス25に向けて前記給水の流れを出力するように構成された、少なくとも1台の高温給水加熱器18と、
前記温度制御装置75からの命令を受信するように構成され、前記受信した命令に基づいて、前記蒸気ヘッダ26から少なくとも1台の給水加熱器18に流入する前記高温蒸気の流量を制御して、前記アニュラス25に出力される前記給水流の温度を前記要求された温度に変える蒸気バイパス弁82、とを有することを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−20110(P2009−20110A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180839(P2008−180839)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナージー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC