説明

給水装置

【課題】節水を図ることができ、かつ汚物による横引き配管内の閉塞を防止することができる給水装置を提供する。
【解決手段】給水装置は、便鉢12と、この便鉢12に連通して下流端に排水口14を形成する便器排水路13とを有する水洗式大便器10に水を供給する。便鉢12及び便器排水路13によって形成した水封部H内の排泄物を排水口14から排出するのに必要な水量の水を水洗式大便器10に供給する第1給水手段W1と、排水口14の下流側に連通する横引き配管30内に滞留する汚物X1の上流側に水が滞留するように、第1給水手段W1が供給する水の水量よりも少ない水量の水を横引き配管30内に供給する第2給水手段W2とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の給水装置が開示されている。この給水装置は、水洗式大便器の使用回数、又は使用時間の間隔をカウントし、所定のカウント値に達すると水洗式便器に搬送用の水を供給する。搬送用の水の水量は、通常の便器洗浄に利用する水の水量より多い。搬送用の水を水洗式便器に供給することによって、水洗式大便器の下流側に連通する横引き配管内に滞留する汚物を下流側へ押し流すことができる。このため、汚物による横引き配管の閉塞を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−303639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の給水装置では、横引き配管内に滞留する汚物を搬送するために、通常の便器洗浄に利用する水の水量よりも多い水を利用する。このため、節水を充分に図ることができないおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、節水を図ることができ、かつ汚物による横引き配管内の閉塞を防止することができる給水装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の給水装置は、便鉢と、この便鉢に連通して下流端に排水口を形成する便器排水路とを有する水洗式大便器に水を供給する給水装置であって、
前記便鉢及び前記便器排水路によって形成した水封部内の排泄物を前記排水口から排出するのに必要な水量の水を前記水洗式大便器に供給する第1給水手段と、
前記排水口の下流側に連通する横引き配管内に滞留する汚物の上流側に水が滞留するように、前記第1給水手段が供給する水の水量よりも少ない水量の水を前記横引き配管内に供給する第2給水手段とを備えており、
前記第1給水手段を実行した後、設定時間の間は前記第2給水手段を実行しないことを特徴とする。
【0007】
本発明の発明者は、下流側に向け下り勾配である横引き配管内において、滞留した汚物の上流側から水が流れてきた際、汚物の上流側に水が滞留していない場合に比べて汚物の上流側に水が滞留している場合の方が、汚物の搬送距離が長くなるという現象を発見した。
【0008】
その現象を説明すると、横引き配管内に滞留した汚物の上流側に水があり、そこに上流側から水が合流すると、その水の勢いが汚物に衝突して汚物が下流側に押される一方、水は上流側に押し返される。押し返された水は、上流に向かう波となって逆流する。逆流した波は、上流に向かう勢いがなくなったり、さらに上流側から搬送された汚物に衝突したりすると、下流に向けて折返し、再度汚物に衝突する。これによって、汚物はさらに下流側に押される一方、水は上流側に押し返される。このような現象が繰り返され、汚物は横引き配管の下流側に押し流される。
【0009】
本発明の給水装置では、横引き配管内に滞留する汚物の上流側に水が滞留するように第2給水手段を実行することができる。これにより、第2給水手段によって横引き配管内の汚物の上流側に水が滞留している状態を確実に実現することができる。このため、そこに上流側から水が合流すると汚物を良好に搬送することができる。
【0010】
また、近年、節水化の要望が高まり、第1給水手段の実行の際に供給される水の水量は少なくなっている。この給水装置では、第2給水手段の実行によって横引き配管内の汚物の上流側に水が滞留している状態を確実に実現できるため、第1給水手段の実行によって供給される水が少ない水量であっても、汚物を良好に搬送することができる。
【0011】
また、第1給水手段の実行とともに横引き配管内に搬送されて横引き配管内に滞留した汚物の上流側には、第1給水手段の実行によって供給された水の一部が滞留する。この水は時間の経過とともに汚物の下流側に流れ、減少する。つまり、設定時間の間は、汚物の上流側に水が滞留するため、その後に上流側から合流する水によって、汚物を下流側に良好に搬送することができる。また、設定時間を経過した際には第2給水手段を実行し、汚物の上流側に水が滞留している状態にして、その後に上流側から合流する水によって、汚物を下流側に良好に搬送することができる。
【0012】
したがって、本発明の給水装置は、節水を図ることができ、かつ汚物による横引き配管内の閉塞を防止することができる。
【0013】
前記第2給水手段は前記水洗式大便器に洗浄水を供給し得る。この場合、横引き配管内に水洗式大便器を介して水を供給することができる。このように、特別な給水路を必要とせずに横引き配管内に容易に水を供給することができる。
【0014】
前記第2給水手段の実行に続いて前記第1給水手段を実行し得る。この場合、水洗式大便器の使用者に第2給水手段の実行を気づかれ難くすることができる。このため、水洗式大便器の使用者は水洗式大便器を違和感なく使用することができる。また、第2給水手段の実行によって、横引き配管内に滞留する汚物の上流側に水を滞留させることができるため、そこに第1給水手段の実行による水が上流側から合流し、汚物を確実に下流側に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例の給水装置を備えた水洗式大便器の施工状態を示す図である。
【図2】実施例の給水装置を備えた水洗式大便器を示す断面図である。
【図3】実施例の給水装置の給水パターンを示すグラフである。
【図4】実施例の給水装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図5】横引き配管内の汚物搬送状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の給水装置を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<実施例>
実施例の給水装置は、図1及び図2に示すように、水洗式大便器10に水を供給する。水洗式大便器10は、便器本体11と、便器本体の上面に配置した便座装置16とを有している。便器本体11は、便鉢12と、この便鉢12に連通して下流端に排水口14を形成する便器排水路13とを有している。便鉢12は上端開口の周縁部にリム通水路12Aを形成している。便器排水路13は、便鉢12の下流端から上昇する上昇流路13Aと、上昇流路13Aの上昇端から下降する下降流路13Bとから形成されている。水洗式大便器10は、便鉢12と上昇流路13Aとによって、水が貯留される水封部Hを形成している。便器排水路13の排水口14は下降流路13Bの下端に形成されている。
【0018】
便器排水路13の排水口14は連結部材15の上端開口に連結されている。連結部材15は下端開口を横引き配管30の上流端に連結している。便器排水路13の排水口14の下流側に連通する横引き配管30は、上流端から垂直下方に延びた縦管部30Aと、縦管部30Aの下端部を屈曲して、下流側に向け下り勾配に延びた横管部30Bを有している。横引き配管30は下流端が浴槽排水や台所排水などが合流する集合配管31に連結している。
【0019】
便座装置16は、便器本体11の上面後部に取り付けた便座ボックス16Aと、便座ボックス16に回動自在の取り付けられた便蓋16B及び図示しない便座とを有している。便座は、便器本体11の上面に倒伏した状態では便蓋16Bに上方と側方とを覆われている。
【0020】
便座ボックス16は、給水装置を構成する第1開閉弁V1、第2開閉弁V2、及び制御装置Cを収納している。制御装置Cは第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2の開閉を制御する。第1開閉弁V1は給水源Sに連通した主給水路20を2方向に分岐した一方の第1分岐給水路21Aに設けられている。第2開閉弁V2は主給水路20を2方向に分岐した他方の第2分岐給水路21Bに設けられている。第1分岐給水路21Aは下流端をリム給水管22の上流端に連結している。リム給水管22はリム通水路12Aに沿って水を吐水するリム吐水ノズル22Aを先端に有している。第2分岐給水路21Bは下流端をジェット給水管23の上流端に連結している。ジェット給水管23は便器排水路13の上昇流路13Aに沿って水を吐水するジェット吐水ノズル23Aを先端に有している。
【0021】
給水装置は、制御装置Cが第1開閉弁V1を開弁すると、リムノズル21Aからリム通水路12Aに沿って水を吐水するリム洗浄を実行する。また、給水装置は、制御装置Cが第2開閉弁V2を開弁すると、ジェットノズル22Aから上昇流路13Aに沿って水を吐水するジェット洗浄を実行する。
【0022】
給水装置は第1給水手段W1と第2給水手段W2とを備えている。第1給水手段W1は、図3(A)に示すように、制御装置Cが、第1リム洗浄R1、ジェット洗浄J、第2リム洗浄R2の順に実行するように、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開閉する。この際の第1リム洗浄R1の水量Q1は約0.9リットルであり、ジェット洗浄Jの水量Q2は約1.2リットルであり、第2リム洗浄R2の水量Q3は約1.9リットルである。
【0023】
第2給水手段W2は、図3(B)に示すように、制御装置Cが、リム洗浄R3を実行するように、第1開閉弁V1を開閉する。この際のリム洗浄R3の水量Q4は約1.0リットルである。このように、第2給水手段W2が供給する水の水量は第1給水手段W1が供給する水の水量よりも少なく設定されている。また、第2給水手段W2はリム洗浄R3を実行することによって、リム通水路12Aから便鉢12、便器排水路13及び連結部材15を介して、横引き配管30内に水を供給することができる。このように、特別な給水路を必要とせずに横引き配管30内に容易に水を供給することができる。
【0024】
また、給水装置は、図4に示すように、第1給水手段W1及び第2給水手段W2を実行する。給水装置の制御装置Cは、図示しない洗浄スイッチの操作による「洗浄指示」の有無を判断する(ステップS1)。制御装置Cは、洗浄スイッチが操作されて「洗浄指示」が有ったと判断すると、先の第1給水手段W1の実行から設定時間が経過したかを判断する(ステップS2)。
【0025】
次に、制御装置Cは、先の第1給水手段W1の実行から設定時間が経過していると判断した場合、第1開閉弁V1を開閉して第2給水手段W2を実行する(ステップS3)。さらに、制御装置Cは、第2給水手段W2の実行に続いて、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開閉して第1給水手段W1を実行する(ステップS4)。つまり、給水装置は、図3(B)に示すように、第2給水手段W2の実行に続いて第1給水手段W1を実行する。このため、水洗式大便器10の使用者に第2給水手段W2の実行を気づかれ難くすることができる。よって、水洗式大便器10の使用者は違和感なく水洗式大便器10を使用することができる。
【0026】
この場合、図5(A)に示すように、第2給水手段W2が実行される前において、横引き配管30の横管部30B内に滞留した汚物X1の上流側に水は殆ど滞留していない。第2給水手段W2の実行によって、水封部Hから水Y1が溢れ出し、図5(B)に示すように、横管部30B内の汚物X1の上流側に水Y1が滞留する。その後、第1給水手段W1の実行によって、汚物X2と共に水が便器排水路13の排水口14から排出され、横引き配管30内に流入する。汚物X2のよりも前方に流れる水Y2が汚物X1の上流側に滞留した水Y1に合流すると、図5(C)に示すように、水Y2の勢いが汚物X1に衝突して汚物X1が下流側に押される一方、水Y2は水Y1を巻き込んで上流側に押し返される。押し返された水Y1、Y2は、上流に向かう波となって逆流する。逆流した波は、汚物X2に衝突して下流側に折返し、再度汚物X1に衝突する。これによって、汚物X1はさらに下流側に押される一方、水Y1、Y2は上流側に押し返される。このような現象が繰り返され、汚物X1は横管部30Bの下流側に押し流される。このように、第2給水手段W2の実行によって、横管部30B内の汚物X1の上流側に水Y1を滞留するため、第1給水手段W1の実行によって供給される水Y2が少ない水量であっても、汚物X1を良好に搬送することができる。
【0027】
したがって、実施例の給水装置は、節水を図ることができ、かつ汚物による横引き配管30内の閉塞を防止することができる。
【0028】
また、制御装置Cは、先の第1給水手段W1の実行から設定時間が経過していないと判断した場合は、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開閉して第1給水手段W1を実行する(ステップS4)。つまり、給水装置は、図3(A)に示すように、第1給水手段W1のみを実行する。
【0029】
この場合でも、横引き配管30の横管部30B内に滞留した汚物X1の上流側には水Y1が滞留しているため、第1給水手段W1の実行によって汚物X2とともに横引き配管30内に流入した水が汚物X1の上流側に滞留した水Y1に合流する。このため、上述した現象が生じ、第1給水手段W1の実行によって供給される水Y2が少ない水量であっても、汚物X1を良好に搬送することができる。
【0030】
このように、第1給水手段W1の実行とともに横引き配管30内に搬送され、滞留する汚物の上流側には、第1給水手段W1の実行によって供給された水の一部が滞留する。この水は時間の経過とともに汚物の下流側に流れ、減少する。つまり、設定時間の間は、汚物の上流側に水が滞留するため、その後に上流側から合流する水によって、汚物を下流側に良好に搬送することができる。また、設定時間を経過した際には第2給水手段W2を実行し、汚物の上流側に水が滞留する状態にして、その後に上流側から合流する水によって、汚物を下流側に良好に搬送することができる。
【0031】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、第2給水手段による横引き配管内への水の供給を水洗式大便器を介して行ったが、横引き配管内へ水を供給する給水路を形成して直接的に横引き配管内へ水を供給してもよい。
(2)実施例では、第2給水手段の実行に続いて第1給水手段を実行したが、第2給水手段と第1給水手段とは別々に実行してもよい。例えば、水洗式大便器に使用者が着座した直後に第2給水手段のみを実行してもよい。
(3)実施例では、給水装置が給水源から直接的に水洗式大便器へ水を供給するものであったが、タンクに貯留した水を水洗式大便器へ供給するものでもよい。
(4)実施例では、給水装置はリム洗浄とジェット洗浄を有していたが、リム洗浄のみのものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は水洗式大便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10…水洗式大便器
12…便鉢
13…便器排水路
14…排水口
30…横引き配管
H…水封部
W1…第1給水手段
W2…第2給水手段
X1、X2…汚物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢と、この便鉢に連通して下流端に排水口を形成する便器排水路とを有する水洗式大便器に水を供給する給水装置であって、
前記便鉢及び前記便器排水路によって形成した水封部内の排泄物を前記排水口から排出するのに必要な水量の水を前記水洗式大便器に供給する第1給水手段と、
前記排水口の下流側に連通する横引き配管内に滞留する汚物の上流側に水が滞留するように、前記第1給水手段が供給する水の水量よりも少ない水量の水を前記横引き配管内に供給する第2給水手段とを備えており、
前記第1給水手段を実行した後、設定時間の間は前記第2給水手段を実行しないことを特徴とする給水装置。
【請求項2】
前記第2給水手段は前記水洗式大便器に水を供給することを特徴とする請求項1記載の給水装置。
【請求項3】
前記第2給水手段の実行に続いて前記第1給水手段を実行することを特徴とする請求項1又は2記載の給水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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