説明

給油装置

【課題】登録作業を容易に行うことができるとともに、通常使用時に顧客を混乱させる虞もない給油装置を提供する。
【解決手段】ハウジング本体2に、自装置の初期設定又は設定変更を行うためのデータ登録用キーパッド8を着脱自在に備える給油装置1。片手で操作マニュアルを持ちながら作業を行うことができて登録作業を容易に行うことができるとともに、登録作業を行わない場合には、ハウジング本体からデータ登録用キーパッドを外すことで、通常使用時に顧客を混乱させる虞もない。データ登録用キーパッドは、ハウジング本体に装着されたデータ登録用基板7を覆う板状部材5の上に載置することができる。データ登録用キーパッドは、マグネットシートにキーボードシートを貼着したもの、又はマグネットシートにキーボードシートを印刷したものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーパッドを省いた単機能の給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給油所に設置される給油装置等の各機器は、設置現場において初期設定を行う必要がある。この際の設定項目としては、例えば、給油ノズルと油種との関係、給油装置のID登録等であり、機器の使用状況に応じて種々のデータを登録する必要がある。また、設定変更の際には、上記初期設定で登録したデータを変更する必要がある。
【0003】
従来、上記初期設定及び設定変更の際にデータを登録する作業は、例えば特許文献1に記載のように、作業員が操作する可搬式データ入出力装置を用いて行っていたが、近年、設備投資に関わる費用を低く抑えるためにキーパッドを省いた単機能の給油装置のニーズが出てきたため、初期設定作業に支障を来している。
【0004】
また、従来の給油装置では、データ登録用キーパッドがカウンターユニットの内部に存在するため、このキーパッドを操作するには、キーパッドを片手で持ち、もう一方の手で操作を行う必要がある。しかし、操作マニュアルを見ながら登録作業を行うと、マニュアルを持つことができず、操作が困難になるという問題があった。
【0005】
また、登録用キーパッドを手元で操作する際には、登録用キーパッドに接続されているケーブルを長く延ばすことができないため、登録用キーパッドの操作が困難であった。
【0006】
さらに、入力内容を確認するには、ディスプレイを見る必要があるが、操作の際にディスプレイ付きのカバーを持ち上げる必要があるため、入力内容の確認が困難であった。
【0007】
また、上記問題点を解消するため、ディスプレイと同一面に登録用キーパッドを設置することも考えられるが、そのような構成を採用すると、顧客が通常使用しないキーパッドが存在することとなり、顧客を混乱させる虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−96900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、片手で操作マニュアルを持ちながら作業を行うことができるなど登録作業を容易に行うことができるとともに、通常使用時に顧客を混乱させる虞もない給油装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、給油装置であって、ハウジング本体に、自装置の初期設定又は設定変更を行うためのデータ登録用キーパッドを着脱自在に備えることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明によれば、データ登録用キーパッドをハウジング本体に着脱自在に設けたため、片手で操作マニュアルを持ちながら作業を行うことができて登録作業を容易に行うことができるとともに、登録作業を行わない場合には、ハウジング本体からデータ登録用キーパッドを外すことで、通常使用時に顧客を混乱させる虞もない。
【0012】
上記給油装置において、前記データ登録用キーパッドを、前記ハウジング本体に装着されたデータ登録用基板を覆う板状部材の上に載置することができ、簡易な構成でデータ登録用キーパッドをハウジング本体に着脱自在とすることができる。
【0013】
また、上記給油装置において、前記データ登録用キーパッドを、マグネットシートにキーボードシートを貼着したもの、又はマグネットシートにキーボードシートを印刷したものとすることができ、容易にハウジング本体に着脱することができる。
【0014】
さらに、上記給油装置において、前記データ登録用キーパッドを、マグネットシートに、キーボードの各々のキーに相当する領域を、正面から見た場合には目視不可能で、正面以外の方向から見た場合には目視可能なように、該各々の領域の境界に印を付したものとすることができる。このように構成することで、キーボードシートが存在しない場合でも、マグネットシートのキーボードの各々のキーに相当する領域を、所定のキー配列位置に基づいて操作することでデータ登録作業を行うことが可能であるとともに、通常使用時に顧客を混乱させる虞もないため、キーボードシートを貼着又は印刷したマグネットシートを紛失した場合でも対応することができる。
【0015】
上記給油装置において、前記データ登録用キーパッドでの初期設定又は設定変更は、該データ登録用キーパッドを用いて入力されたキーパターンが指定パターンと一致する場合、及び入力された給油装置IDが所定の給油装置IDと一致する場合にのみ実施されるように構成することができる。これによって、二重のセキュリティーを施すことができ、給油装置の安全性を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、登録作業を容易に行うことができるとともに、通常使用時に顧客を混乱させる虞もない給油装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる給油装置の一実施の形態を示す図であって、出荷状態又は通常使用状態の外観を示す正面図である。
【図2】図1に示した給油装置の投影図である。
【図3】図1に示した給油装置の初期設定又は設定変更時の外観を示す図であって、(a)は正面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図4】図3のB部拡大図である。
【図5】図1の給油装置のデータ登録用キーパッドを用いて初期設定等を行う要領を示すフローチャートであって、(a)は登録モード設定時、(b)は項目モード設定時を示す。
【図6】図1の給油装置のハウジング本体の板状部材に切れ目を入れた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明にかかる給油装置の一実施の形態を示し、同図では、本発明にかかる給油装置1を正面から見た場合のハウジング本体2のディスプレイ3及びその周辺のみを示している。
【0020】
ハウジング本体2の下方には、給油中に押圧された場合に給油装置1の全ての動作を停止させる緊急停止ボタン4が配置される。緊急停止ボタン4の左右両側には、下方に位置するデータ登録用基板(以下、「基板」と略称する)7(図2及び図4参照)を覆ったり、開口を塞ぐための鉄板等の金属板からなる板状部材5、6が配置される。
【0021】
図2は、図1の板状部材5を外した状態を示し、基板7が配置されている。これら図1及び図2で示した状態が給油装置1の出荷時又は通常使用時の状態であり、給油所に設置される前の状態、又は、給油所に設置された後初期設定が完了し、顧客が給油作業を行うことが可能な状態である。
【0022】
図3は、給油装置1の初期設定又は設定変更時の状態を示し、この給油装置1では、図1に示した板状部材5に上にデータ登録用キーパッド8が貼着され、キーボード8aが板状部材5の下方に位置する基板7に対応する位置に貼着される。データ登録用キーパッド8は、マグネットシートにキーボードシートを貼着したもの、又はマグネットシートにキーボードシートを印刷したものとすることができ、板状部材5が鉄板等からなるため、板状部材5の上面に載置するだけで板状部材5と一体化され、容易にずれることはない。
【0023】
以上のように構成されることで、図4に示すように、ハウジング本体2内に装着された基板7の上方に板状部材5が位置し、さらに板状部材5の上方にデータ登録用キーパッド8が積層され、データ登録用キーパッド8のキーボード8a(図3参照)を操作することで、基板7を介して給油装置1の初期設定又は設定変更を行うことができる。
【0024】
次に、上記キーボード8aによる初期設定又は設定変更時のデータ登録要領について、図5を中心に参照しながら説明する。ここでは、給油所に設置された給油装置(計量機)の初期設定を行う場合について説明する。
【0025】
初期設定は、登録モード設定と、項目モード設定の2つのステップからなり、登録モード設定は、指定パターンの入力と給油装置IDの入力との2段階で構成されるセキュリティ用の前処理である。この登録モード設定が完了すると、項目モード設定が可能となる。以下、まず登録モードの設定要領について図5(a)を中心に参照しながら説明する。
【0026】
キーボード8aのいずれかのキーが押圧されたか否かを判断し、いずれかのキーが押圧された場合には(ステップS1;Yes)、ステップS2に進み、いずれのキーも押圧されていない場合には(ステップS1;No)、いずれかのキーが押圧されるまで待つ。
【0027】
ステップS2において、キー操作の押圧時間間隔(あるキーが押されてから次のキーが押されるまでの時間)が2秒以上であるか否かを判断し、キー操作の押圧時間間隔が2秒未満の場合には(ステップS2;Yes)、ステップS3で、入力されたキー入力パターンが指定パターンであるか否かを判断する。一方、キー操作の押圧時間間隔が2秒以上の場合には(ステップS2;No)、ステップS1に移る。
【0028】
ステップS3において、入力されたキー入力パターンが指定パターンと一致する場合には(ステップS3;Yes)、ステップS5において、登録モードの仮設定がなされる。一方、入力されたキー入力パターンが指定パターンと一致しない場合には(ステップS3;No)、ステップS1に移る。
【0029】
次に、ステップS6において、給油装置IDの入力操作がなされたか否かを判断し、給油装置IDが入力された場合には(ステップS6;Yes)、ステップS7において、入力されたキーパターンと、給油装置IDとが一致するか否かを判断し、一致する場合には(ステップS7;Yes)、ステップ8において、登録モードの設定を完了し、後述の項目モードの設定へと移行する。一方、ステップS6において、給油装置IDの入力操作がなされていないと判断された場合には、給油装置IDが入力されるまで待ち、入力されたキーパターンと、給油装置IDとが一致しないと判断された場合には(ステップS7;No)、ステップS4に移る。
【0030】
ステップS4において、ステップS7で入力されたキーパターンと、給油装置IDとが一致しないと判断された場合には(ステップS7;No)、原則としてステップS1へと戻るが、これらの判断が合計で1日に3回以上なされた場合には(ステップS4;Yes)、セキュリティの観点から登録モードの設定を終日禁止する。
【0031】
次に、上記登録モードの設定に引き続いて行われる項目モードの設定要領について説明する。
【0032】
まず、ステップS11において、項目コードが入力されたか否かを判断し、項目コードが入力されたと判断された場合には(ステップ11;Yes)、ステップS12において、入力された項目コードに対応する項目をハウジング本体2のディスプレイ3に表示する。一方、ステップS11で、項目コードが入力されていないと判断された場合には(ステップS11;No)、項目コードが入力されるまで待つ。
【0033】
次に、ステップS13において、表示された項目が入力又は修正されたか否かを判断し入力又は修正がなされたと判断された場合には(ステップS13;Yes)、さらに、ステップS14において、単位変更キーが押圧されたか否かを判断し、単位変更キーが押圧されたと判断された場合には(ステップS14;Yes)、ステップS15において、上記指定した変更をして項目設定を完了する。一方、ステップS13で、入力又は修正がなされていないと判断された場合(ステップS13;No)や、ステップS14で単位変更キーが押圧されていないと判断された場合には(ステップS14;No)、これらが行われるまで待つ。
【0034】
そして、ステップS16において、C(クリア)キーが3回押圧された否かを判断し、Cキーが3回押圧されたと判断された場合には(ステップS16;Yes)、ステップS11へと戻って項目コードを入力して他の項目設定を行う。これにより、後述の項目インクリメントに従わずに項目設定を行うことができて便利である。
【0035】
また、ステップS16で、Cキーが3回押圧されていないと判断された場合(ステップS16;No)には、ステップS17で、ノズルスイッチ(SW)がONとなったか否かを判断し、ノズルSWがONとなったと判断された場合には(ステップS17;Yes)、ステップ18において、登録モードを離脱して処理を終了する。
【0036】
一方、ステップS17で、ノズルSWがONとなっていないと判断された場合には(ステップS17;No)、ステップS19において、項目インクリメントを行う。この項目インクリメントは、予め設定された設定順番に従って、ステップS15で項目設定を完了すると、ステップS12で次の項目を表示して、スムーズに作業できるために設けられる。
【0037】
上記実施の形態においては、図3及び図4に示すように、データ登録用キーパッド8が、板状部材5の上に、キーボード8aが板状部材5の下方に位置する基板7に対応する位置に貼着される。しかし、データ登録用キーパッド8は、給油装置1の初期設定又は設定変更に用いられるだけで、通常は使用しないため、通常使用時にデータ登録用キーパッド8を給油装置1のハウジング本体2から外しておくと、データ登録用キーパッド8を紛失する虞がある。
【0038】
そこで、図6に示すように、板状部材5に、図3に示したデータ登録用キーパッド8のキーボード8aの各々のキーに相当する領域5aにカッター等で切れ目5bを入れることで、板状部材5を正面から見た場合には、切れ目5bが目視不可能で、正面以外の方向から見た場合には、切れ目5bを目視可能なようにすることで、データ登録用キーパッド8を紛失した場合でも、データ登録用キーパッド8のキーボード8aの各々のキーに相当する領域5aを所定のキー配列位置に基づいて操作することで、データ登録作業を行うことが可能となる。また、通常使用時に顧客は、切れ目5bの存在に気付かないため、顧客を混乱させる虞もない。
【符号の説明】
【0039】
1 給油装置
2 ハウジング本体
3 ディスプレイ
4 緊急停止ボタン
5 板状部材
5a (キーに相当する)領域
5b 切れ目
6 板状部材
7 基板
8 データ登録用キーパッド
8a キーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング本体に、自装置の初期設定又は設定変更を行うためのデータ登録用キーパッドを着脱自在に備えることを特徴とする給油装置。
【請求項2】
前記データ登録用キーパッドは、前記ハウジング本体に装着されたデータ登録用基板を覆う板状部材の上に載置されることを特徴とする請求項1に記載の給油装置。
【請求項3】
前記データ登録用キーパッドは、マグネットシートにキーボードシートを貼着したもの、又はマグネットシートにキーボードシートを印刷したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の給油装置。
【請求項4】
前記データ登録用キーパッドは、マグネットシートに、キーボードの各々のキーに相当する領域を、正面から見た場合には目視不可能で、正面以外の方向から見た場合には目視可能なように、該各々の領域の境界に印を付したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の給油装置。
【請求項5】
前記データ登録用キーパッドでの初期設定又は設定変更は、該データ登録用キーパッドを用いて入力されたキーパターンが指定パターンと一致する場合、及び入力された給油装置IDが所定の給油装置IDと一致する場合にのみ実施されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の給油装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−158345(P2012−158345A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17739(P2011−17739)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000151346)株式会社タツノ (167)
【Fターム(参考)】