説明

給湯システム

【課題】温水が貯留される給湯タンク(41)と、給湯タンクに貯留された温水を利用機器へ出湯する出湯流路と、給湯タンクの内部の水を浄化する水浄化ユニット(60)とを備えた給湯システムにおいて、給湯タンク(41)内で湯水が次亜塩素酸の分解する温度になっても、給湯タンク(41)内の除菌性能を十分に高められるようにする。
【解決手段】水浄化ユニット(60)に、給湯タンク(41)の水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)を有する放電部(62)と、電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)とを設け、ストリーマ放電によって給湯タンク(41)の水中に過酸化水素を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯システムに関し、特に給湯システムに設けられる給湯タンク内の湯水を除菌する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴槽等へ温水を供給する給湯システムが広く知られているが、この種の給湯システムでは給湯タンク内で菌が増殖する可能性があった。これは、給湯タンク内で水中の塩素が分解して減少することが一つの原因であると考えられる。
【0003】
このような問題を解決しようとする給湯システムとして、特許文献1には、タンク内で2つの電極に電圧を印加することで、水を電気分解するようにしたものが記載されている。これにより、タンク内で次亜塩素酸や強酸性水等を含む電解水が生成される。そして、次亜塩素酸や強酸性水を含む電解水により、塩素の分解に伴う殺菌力の低下を相殺するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−317105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、次亜塩素酸は、水温の上昇に伴い分解され易い特性を有する。具体的には、次亜塩素酸は、水温が約40℃を越えると急激に分解され、塩素やトリハロメタン等が生成されるおそれもある。
【0006】
また、給湯タンク内の温度は一般に40℃を越えており、給湯タンク内の水温では、次亜塩素酸を生成してもすぐに分解してしまうことになる。そのため、次亜塩素酸の殺菌力を生かすことは困難であった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、給湯システムに設けられる給湯タンク内で湯水が次亜塩素酸の分解する温度になっても、給湯タンク内の除菌性能を十分に高められるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、温水が貯留される給湯タンク(41)と、給湯タンクに貯留された温水を利用機器へ出湯する出湯流路(15)と、上記給湯タンクの内部の水を浄化する水浄化ユニット(60)とを備えた給湯システムを前提としている。
【0009】
そして、この給湯システムは、上記水浄化ユニット(60)が、上記給湯タンク(41)の水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)を有する放電部(62)と、該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)とを有し、上記ストリーマ放電によって上記給湯タンク(41)の水中に過酸化水素を生成するように構成されていることを特徴としている。
【0010】
この第1の発明では、水浄化ユニット(60)において、直流電源(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加される。これにより、給湯タンク(41)の水中でストリーマ放電が生起する。このストリーマ放電に伴って給湯タンク(41)の水中で過酸化水素が生成される。過酸化水素は、比較的高温の条件下においても、水中に残留し易い。具体的に、過酸化水素は、水温が約40℃以上の条件下で、約1時間経過したとしても、約4%程度の濃度しか分解されない。従って、本発明の給湯システムでは、給湯タンク(41)の水温が比較的高温であっても、過酸化水素によって水の殺菌・浄化を充分に行うことができる。
【0011】
また、水中では、ストリーマ放電の発生に伴い、水酸ラジカル等の活性種も生成される。このため、水中に含まれる有害物質(例えば硫黄系化合物)は、活性種によって酸化分解されて除去される。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記水浄化ユニット(60)の放電部(62)は、上記給湯タンク(41)の底部に設けられていることを特徴としている。
【0013】
この第2の発明では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素が、ストリーマ放電に伴う熱によって給湯タンク(41)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、上記給湯タンク(41)の内部には、給湯タンク(41)に貯留されている水を加熱する熱交換器(13a)が設けられ、上記水浄化ユニット(60)の放電部(62)は、上記熱交換器(13a)の近傍に配置されていることを特徴としている。
【0015】
この第3の発明では、放電部(62)の周囲の水温が熱交換器(13a)によって高くなり、過酸化水素の活性が高くなる。また、放電部(62)の周囲の水温が高くなるため、タンク内の温水に対流が生じ、放電によって発生した過酸化水素が温水中で拡散しやすくなる。
【0016】
第4の発明は、第1から第3の発明の何れか1つにおいて、上記放電部(62)が、棒状の放電電極(64)と、放電電極(64)の周囲に配置された筒状の対向電極(65)と、放電電極(64)と対向電極(65)とを一体的に保持する絶縁ケーシング(71)とを有する放電ユニットにより構成され、放電ユニット(62)が、給湯タンク(41)の壁面に固定される固定部(65b)を有していることを特徴としている。
【0017】
この第4の発明では、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とから一体的に形成された放電ユニット(62)により、給湯タンク(41)の水中でストリーマ放電が発生する。そして、このストリーマ放電により、水中で過酸化水素や活性種が発生する。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、上記放電ユニット(62)の対向電極(65)が、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する上記固定部(65b)としての鍔部(65b)とを有し、上記鍔部(65b)が、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が給湯タンク(41)の水中に浸漬した状態となるように、電極本体(65a)の軸方向の中間部分に形成されていることを特徴としている。
【0019】
この第5の発明では、第4の発明と同様に、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とから一体的に形成された放電ユニット(62)により、給湯タンク(41)の水中でストリーマ放電が発生する。そして、このストリーマ放電により、水中で過酸化水素や活性種が発生する。
【0020】
第6の発明は、第5の発明において、上記対向電極(65)が、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有し、内側筒部(65c)及び連接部(65d)が、給湯タンク(41)内の水中に浸漬するように構成され、上記絶縁ケーシング(71)には、絶縁ケーシング(71)の内部に空間(S)を区画するとともに開口(74)を有する仕切板(73)が設けられ、上記放電電極(64)と対向電極の内側筒部(65c)が、上記仕切板(73)を挟んで両側に位置するように構成されていることを特徴としている。
【0021】
この第6の発明では、水浄化ユニット(60)の運転の開始時には、絶縁ケーシング(71)が空間(S)の中まで浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加すると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われているこのため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されるとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0022】
開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡が形成される。この気泡は、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)(内側筒部(65c))に導通する負極側(又は正極側)の水と、正極側(又は負極側)の放電電極(64)との間に気泡が介在するようになる。従って、この状態では、気泡が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0023】
以上のようにして、気泡でストリーマ放電が行われると、給湯タンク(41)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって給湯タンク(41)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、給湯タンク(41)の水中において、ストリーマ放電を行い過酸化水素を生成するようにしている。過酸化水素は、次亜塩素酸と比較して、水温が上昇しても分解されにくい。このため、給湯タンク(41)内の水を過酸化水素によって充分に殺菌・浄化することができる。また、ストリーマ放電では、水中において多量の活性種が生成するため、この活性種により水中の有害物質を効果的に除去できる。
【0025】
また、本発明では、直流電源(70)を用いてストリーマ放電を行っているので、例えばパルス電源と比較して、電源部の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、パルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまう。これに対し、直流電源(70)を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0026】
上記第2の発明によれば、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素が、ストリーマ放電に伴う熱によって給湯タンク(41)内を対流し、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促されるので、給湯タンク(41)内の水を均一に浄化できる。
【0027】
上記第3の発明によれば、放電部(62)の周囲の水温が熱交換器(13a)によって高くなり、熱による殺菌効果が向上するし、過酸化水素の活性が高まって殺菌効果も向上する。また、放電ユニット(62)の周囲の水温が高くなるため、タンク内の温水に対流が生じ、放電によって発生した過酸化水素が温水中で拡散しやすくなるので、給湯タンク(41)内の水を効率よく浄化できる。
【0028】
上記第4の発明によれば、放電部(62)を、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とから一体的に形成された放電ユニット(62)により構成しているので、給湯タンク(41)に放電部(62)を設けるのを容易に行える。
【0029】
上記第5の発明によれば、放電ユニット(62)の対向電極(65)を、円筒状の電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)を上記固定部(65b)として設け、この鍔部(65b)を給湯タンク(41)に固定するようにしているので、給湯タンク(41)に放電ユニット(62)を容易に装着できる。
【0030】
上記第6の発明によれば、上記対向電極(65)に、電極本体(65a)とそれよりも小径の内側筒部(65c)とを連接する連接部(65d)を設け、内側筒部(65c)及び連接部(65d)が、給湯タンク(41)内の水中に浸漬するように構成している。また、絶縁ケーシング(71)には、絶縁ケーシング(71)の内部に空間(S)を区画するとともに開口(74)を有する仕切板(73)を設け、放電電極(64)と対向電極(65)の内側筒部(65c)を、仕切板(73)を挟んで両側に位置するように構成している。そして、このように構成することにより、給湯タンク(41)の水中で放電電極(64)と対向電極(65)の内側筒部(65c)との間に位置する仕切板(73)の開口(74)に気泡を発生させ、その気泡内でストリーマ放電が生じるようにしている。このように、第6の発明によれば、水中でストリーマ放電を発生させることのできる放電ユニット(62)を、構成を複雑にすることなく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、実施形態1に係る給湯システムの全体構成を示す配管系統図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係る水浄化ユニットの全体構成図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングの斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始する前の状態を示すものである。
【図8】図8は、実施形態2に係る水浄化ユニットの全体構成図であり、水浄化動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部の平面図である。
【図10】図10は、その他の実施形態に係る給湯システムの全体構成を示す配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0033】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1に係る給湯システム(10)の全体構成について、図1を参照しながら説明する。給湯システム(10)は、浴槽(U1)やシャワー(U2)へ温水を供給するシステムである。給湯システム(10)は、いわゆるヒートポンプ式の給湯器であり、熱源ユニット(30)と給湯ユニット(40)とを有している。
【0034】
熱源ユニット(30)は、圧縮機(31)と加熱熱交換器(32)と膨張弁(33)と室外熱交換器(34)とを備えている。この熱源ユニット(30)では、圧縮機(31)、加熱熱交換器(32)、膨張弁(33)、及び室外熱交換器(34)が冷媒配管を介して順に接続され、閉回路となる冷媒回路(11)が構成されている。冷媒回路(11)には、冷媒として二酸化炭素が充填されている。
【0035】
加熱熱交換器(32)は、一次側伝熱部(32a)と二次側伝熱部(32b)とを有している。一次側伝熱部(32a)は、圧縮機(31)と膨張弁(33)との間の高圧ラインに接続されている。二次側伝熱部(32b)は、給湯ユニット(40)側の第1循環流路(13)に接続されている。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒と、二次側伝熱部(32b)を流れる水とが熱交換する。室外熱交換器(34)の近傍には、ファン(35)が設けられている。室外熱交換器(34)では、その内部を流れる冷媒と、ファン(35)が送風する室外空気とが熱交換する。
【0036】
冷媒回路(11)では、圧縮機(31)が運転されて冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。即ち、冷媒回路(11)では、圧縮機(31)で圧縮された冷媒が、一次側伝熱部(32a)で放熱し、膨張弁(33)で減圧される。減圧された冷媒は、室外熱交換器(34)で蒸発し、圧縮機(31)に吸入される。この冷凍サイクルは、冷媒としての二酸化炭素を臨界圧力以上まで圧縮する、いわゆる超臨界サイクルである。
【0037】
給湯ユニット(40)は、給湯タンク(41)と内部熱交換器(42)とを備えている。
【0038】
給湯タンク(41)は、縦長の円筒状の密閉容器で構成されている。給湯タンク(41)には、円筒形の周壁部(41a)と、周壁部(41a)の上側を閉塞する頂壁部(41b)と、周壁部(41a)の下側を閉塞する底壁部(41c)とが形成されている。給湯タンク(41)には、第1循環流路(13)と第2循環流路(14)と供給流路(15)とが接続されている。また、給湯タンク(41)には、該給湯タンク(41)内へ水道水を適宜補給する給水路(20)も接続されている。これらの流路(13,14,15,20)は、給湯タンク(41)と連通する水流路(12)を構成している。
【0039】
第1循環流路(13)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第1循環流路(13)の終端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の上部に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)寄りに開口している。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)が設けられている。第1ポンプ(43)は、第1循環流路(13)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第1循環流路(13)には、第1ポンプ(43)の下流側に二次側伝熱部(32b)が接続されている。
【0040】
第2循環流路(14)の始端は、給湯タンク(41)の周壁部(41a)の下部に接続され、給湯タンク(41)内の底壁部(41c)寄りに開口している。第2循環流路(14)の終端は、給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)に開口している。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)が設けられている。第2ポンプ(44)は、第2循環流路(14)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。第2循環流路(14)には、第2ポンプ(44)の下流側に内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)が接続されている。
【0041】
内部熱交換器(42)は、第1伝熱管(42a)と第2伝熱管(42b)とを有している。第1伝熱管(42a)は、第2循環流路(14)に接続されている。第2伝熱管(42b)は、供給流路(15)の第3循環流路(16)に接続されている。
【0042】
供給流路(15)は、温水を浴槽(U1)やシャワー(U2)へ供給する出湯流路であって、主供給路(17)、第1分岐路(18)、第2分岐路(19)、及び第3循環流路(16)を含んでいる。
【0043】
主供給路(17)の始端は給湯タンク(41)の頂壁部(41b)に接続され、給湯タンク(41)内の頂壁部(41b)に開口している。主供給路(17)の終端側は、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分岐している。主供給路(17)には、第3ポンプ(45)が設けられている。第3ポンプ(45)は、主供給路(17)の始端側から終端側の方向(図1の矢印で示す方向)へ水を搬送する搬送機構である。
【0044】
第1分岐路(18)の終端は、第3循環流路(16)を介して浴槽(U1)と連通している。つまり、第1分岐路(18)は、浴槽(U1)側へ温水を供給するための浴槽側供給路を構成している。第1分岐路(18)には、第1開閉弁(46)が設けられている。第2分岐路(19)の終端は、シャワー(U2)と接続されている。つまり、第2分岐路(19)は、シャワー(U2)へ温水を供給するシャワー側供給路を構成している。第2分岐路(19)には、第2開閉弁(47)が設けられている。
【0045】
第3循環流路(16)は、浴槽(U1)内の水を循環させる浴槽循環流路を構成している。第3循環流路(16)は、供給循環路(16a)と返送循環路(16b)とを有している。供給循環路(16a)の流出端は、浴槽(U1)の内部における上方寄りに開口している。返送循環路(16b)の流入端は、浴槽(U1)の内部における下方寄りに開口している。供給循環路(16a)には、第4ポンプ(48)が設けられている。第4ポンプ(48)は、主供給路(17)側の水、又は返送循環路(16b)側の水を浴槽(U1)内へ供給する搬送機構である。返送循環路(16b)には、内部熱交換器(42)の第2伝熱管(42b)が接続され、該第2伝熱管(42b)の下流側に第3開閉弁(49)が設けられている。
【0046】
内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水と、第2伝熱管(42b)を流れる水とが熱交換する。給湯ユニット(40)では、返送循環路(16b)を流れる水と比較すると、第2循環流路(14)を流れる水の温度の方が高くなる。このため、内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ付与される。つまり、第2伝熱管(42b)は、第3循環流路(16)を流れる水を加熱する加熱部を構成している。
【0047】
〈放電ユニットの詳細構造〉
給湯システム(10)は、水浄化ユニット(60)を備えている。水浄化ユニット(60)は、水中でのストリーマ放電によって水中に過酸化水素等の浄化成分を生成し、この浄化成分によって水の浄化を行うものである。水浄化ユニット(60)は放電ユニット(放電部)(62)を有している(図2を参照)。放電ユニット(62)は給湯タンク(41)内に設けられている。具体的には、給湯タンク(41)の底部に放電ユニット(62)が配置されている。
【0048】
給湯タンク(41)に接続されている第1循環流路(13)の配管は銅管で構成されている。第1循環流路(13)の配管を銅管にしているので、内壁から水中へ銅イオンが溶出する。この銅イオンは、温水とともに弓道タンク(41)に戻る。つまり、第1循環流路(13)の配管は、給湯タンク(41)内へに銅イオンを供給するイオン供給部を構成している。
【0049】
放電ユニット(62)は、放電電極(64)及び対向電極(65)からなる電極対(64,65)と、この電極対(64,65)に電圧を印加する電源部(70)と、放電電極(64)を内部に収容する絶縁ケーシング(71)とを備えている。
【0050】
電極対(64,65)は、水中でストリーマ放電を起こすためのものである。放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に配置されている。放電電極(64)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(64)は、電源部(70)の正極側に接続されている。放電電極(64)は、例えばステンレス、銅等の導電性の金属材料で構成されている。
【0051】
対向電極(65)は、絶縁ケーシング(71)の外部に配置されている。対向電極(65)は、放電電極(64)の上方に設けられている。対向電極(65)は、上下方向に薄い扁平な板状で、且つ上下方向に貫通する複数の貫通孔(66)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(65)は、放電電極(64)と略平行に配設されている。対向電極(65)は、電源部(70)の負極側に接続されている。対向電極(65)は、例えばステンレス、真鍮等の導電性の金属材料で構成されている。
【0052】
電源部(70)は、電極対(64,65)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。即ち、電源部(70)は、電極対(64,65)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(64,65)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(70)のうち、対向電極(65)が接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(70)には、電極対(64,65)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている(図示省略)。
【0053】
絶縁ケーシング(71)は給湯タンク(41)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(71)は、例えばセラミックス等の絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(71)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(72)と、該ケース本体(72)の上端の開放部を閉塞する板状の蓋部(仕切板)(73)とを有している。
【0054】
ケース本体(72)は、角型筒状の側壁部(72a)と、該側壁部(72a)の底面を閉塞する底部(72b)とを有している。放電電極(64)は、底部(72b)の上側に固定されている。絶縁ケーシング(71)では、蓋部(73)と底部(72b)との間の上下方向の距離が、放電電極(64)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(64)と蓋部(73)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(71)の内部では、放電電極(64)とケース本体(72)と蓋部(73)との間に空間(S)が形成される。
【0055】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)には、該蓋部(73)を厚さ方向に貫通する1つの開口(74)が形成されている。この開口(74)により、放電電極(64)と対向電極(65)との間での電界の形成が許容されている。蓋部(73)の開口(74)の内径は、0.02mm以上0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(74)は、電極対(64,65)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成している。
【0056】
以上のように、絶縁ケーシング(71)は、電極対(64,65)のうちの一方の電極(放電電極(64))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部としての開口(74)を有する絶縁部材を構成している。
【0057】
加えて、絶縁ケーシング(71)の開口(74)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(71)の開口(74)は、該開口(74)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0058】
−給湯システムの運転動作−
給湯システム(10)の基本的な運転動作について図1を参照しながら説明する。この給湯システム(10)では、浴槽内へ温水を供給する「給湯運転」と、浴槽内の水を循環させながら加熱する「追い焚き運転」とが行われる。
【0059】
〈給湯運転〉
給湯運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)及び第3ポンプ(45)が運転され、第2ポンプ(44)及び第4ポンプ(48)が停止状態となる。また、第1開閉弁(46)、第2開閉弁(47)が開放状態となり、第3開閉弁(49)は閉鎖状態となる。
【0060】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)へ流出する。この水は、加熱熱交換器(32)の二次側伝熱部(32b)を流れる。加熱熱交換器(32)では、一次側伝熱部(32a)を流れる冷媒の熱が、二次側伝熱部(32b)を流れる水へ放出され、この水が所定温度まで加熱される。加熱された水は、第1循環流路(13)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。これにより、給湯タンク(41)の内部には、所定温度の温水が蓄えられる。また、このとき、第1循環流路(13)の配管から水中へ銅イオンが溶出し、その銅イオンが給湯タンク(41)へ導入される。
【0061】
第3ポンプ(45)が運転されると、給湯タンク(41)内の水(温水)は、主供給路(17)に流出し、第1分岐路(18)と第2分岐路(19)とに分流する。第1分岐路(18)を流れた水は、第3循環流路(16)の供給循環路(16a)に流入する。この水は、供給循環路(16a)から浴槽(U1)内へ放出される。これにより、浴槽(U1)内に所定温度の温水が供給される。一方、第2分岐路(19)を流れた水は、シャワー(U2)側に供給される。
【0062】
〈追い焚き運転〉
追い焚き運転では、熱源ユニット(30)の圧縮機(31)が運転され、冷媒回路(11)で冷凍サイクルが行われる。給湯ユニット(40)では、第1ポンプ(43)、第2ポンプ(44)、及び第4ポンプ(48)が運転される。また、第1開閉弁(46)が閉鎖状態となり、第2開閉弁(47)及び第3開閉弁(49)が開放状態となる。
【0063】
第1ポンプ(43)が運転されると、給湯タンク(41)内の水が第1循環流路(13)を流れる。これにより、第1循環流路(13)の水は、加熱熱交換器(32)で加熱されて給湯タンク(41)へ返送される。
【0064】
第2ポンプ(44)が運転されると、給湯タンク(41)内の水は、第2循環流路(14)へ流出する。この水は、内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)を流れる。内部熱交換器(42)では、第1伝熱管(42a)を流れる水の熱が、第2伝熱管(42b)を流れる水へ放出される。第1伝熱管(42a)で放熱した水は、第2循環流路(14)を経由して給湯タンク(41)内に流入する。
【0065】
第4ポンプ(48)が運転されると、浴槽(U1)の水は第3循環流路(16)の返送循環路(16b)へ吸い込まれる。返送循環路(16b)を流れた水は、内部熱交換器(42)で加熱された後、供給循環路(16a)を通って浴槽(U1)へ供給される。これにより、浴槽(U1)内の水の温度が徐々に高くなっていく。
【0066】
−水浄化ユニットの運転動作−
本実施形態の給湯システム(10)では、水浄化ユニット(60)が運転されることで、給湯タンク(41)内の水が浄化される。このような水浄化ユニット(60)による水の浄化動作について詳細に説明する。なお、この水浄化動作は、主に「給湯運転」時に実行されるが、「追い焚き運転」時にも行って給湯タンク(41)内の温水を常に清浄にしておくとよい。
【0067】
水浄化ユニット(60)の運転の開始時には、図2に示すように、絶縁ケーシング(71)が空間(S)の中まで浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(64,65)の間に電界が形成される。放電電極(64)の周囲は、絶縁ケーシング(71)で覆われている。このため、電極対(64,65)の間での漏れ電流が抑制されるとともに、開口(74)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0068】
開口(74)内の電流密度が上昇すると、開口(74)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(71)では、開口(74)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(65)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(64)との間に気泡(B)が介在するようになる。従って、この状態では、気泡(B)が、放電電極(64)と対向電極(65)との間での水を介した導電を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(64,65)間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0069】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、給湯タンク(41)内の水中では、水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素等が生成される。水酸ラジカル等の活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって給湯タンク(41)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成し易くなる。よって、給湯タンク(41)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果を更に向上できる。
【0070】
また、上述したように、第1循環流路(13)の配管に銅管を用いているので、給湯タンク(41)へは、第1循環流路(13)の配管から水中へ溶出した銅イオンが導入される。過酸化水素と銅イオンの存在下では、フェントン反応により、銅イオンが触媒的に作用して水酸ラジカルの生成が促進される。これにより、水酸ラジカルによる水の浄化効率が向上する。加えて、銅イオンは菌の繁殖を抑制する効果があるため、水中での殺菌作用も高くなる。
【0071】
以上のようにして、水中に拡散した水酸ラジカル等の活性種は、水中に含まれる被処理成分(例えばアンモニア等)を酸化分解して水の浄化に利用される。また、水中に拡散した過酸化水素は、水の殺菌に利用される。「給湯運転」では、このような水浄化動作が適宜実行され、浄化された水が浴槽(U1)やシャワー(U2)に供給される。これにより、本実施形態の給湯システム(10)では、浴槽(U1)内の清浄度が保たれる。また、「追い焚き運転」のときも給湯タンク(41)内の温水を正常に保つことができる。
【0072】
−実施形態1の効果−
実施形態1では、給湯タンク(41)の水中において、ストリーマ放電を行い過酸化水素を生成するようにしている。過酸化水素は、次亜塩素酸と比較して、水温が上昇しても分解されにくい。具体的に、過酸化水素であれば、水温が約40℃の条件下で約1時間放置されても、約8%程度しか濃度が低下しない。このため、上記実施形態1では、きゅうとうたんく(41)の水温が高温となっても、充分な殺菌効果を得ることができる。また、トリハロメタンが生成されるのも防止できる。
【0073】
実施形態1では、給湯タンク(41)の中に水浄化ユニット(60)を設けている。このため、水浄化ユニット(60)で生成した過酸化水素や活性種を浴槽(U1)に供給することができる。これにより、浴槽(U1)の壁面の除菌や洗浄を行うことができる。また、シャワー(U2)へも綺麗な水を供給できる。
【0074】
実施形態1では、給湯タンク(41)の水温が比較的高温に維持される。給湯タンク(41)内の水温が高温になると、熱による殺菌効果が向上する。加えて、過酸化水素の活性が高まり、過酸化水素による殺菌効果も向上する。従って、水浄化ユニット(60)による殺菌性能を高められる。
【0075】
実施形態1では、第1循環流路(13)の配管を銅管としている。このため、第1循環流路(13)の配管から水中へ溶出した銅イオンを給湯タンク(41)に適宜供給することができる。給湯タンク(41)内において、過酸化水素と銅イオンとが併存した状態になると、フェントン反応により、水酸ラジカルの生成が促される。従って、この水酸ラジカルを用いて水中の有害物質を効果的に酸化分解することができる。
【0076】
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0077】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0078】
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に1つの開口(74)が形成されている。しかしながら、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(71)の蓋部(73)が、略正方形板状に形成され、この蓋部(73)に複数の開口(74)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(64)及び対向電極(65)は、全ての開口(74)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0079】
この変形例においても、各開口(74)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(70)から電極対(64,65)に直流電圧が印加されると、各開口(74)の電流密度が上昇し、各開口(74)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が生成される。
【0080】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る給湯システム(10)は、上述した実施形態1と放電ユニット(62)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0081】
図7に示すように、実施形態2の放電ユニット(62)は、給湯タンク(41)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の放電ユニット(62)は、放電電極(64)と対向電極(65)と絶縁ケーシング(71)とが一体的に組立てられている。
【0082】
実施形態2の絶縁ケーシング(71)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(71)は、ケース本体(72)と蓋部(仕切板)(73)とを有している。
【0083】
絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(72)は、円筒状の基部(76)と、該基部(76)から給湯タンク(41)側に向かって突出する筒状壁部(77)と、該筒状壁部(77)の外縁部から更に給湯タンク(41)側に向かって突出する環状凸部(78)とを有している。また、ケース本体(72)には、環状凸部(78)の先端側に先端筒部(79)が一体に形成されている。基部(76)の軸心部には、円柱状の挿入口(76a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(77)の内側には、挿入口(76a)と同軸となり、且つ挿入口(76a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0084】
実施形態2の蓋部(73)は、略円板状に形成されて環状凸部(78)の内側に嵌合している。蓋部(73)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(73)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(73)を上下に貫通する円形状の1つの開口(74)が形成されている。
【0085】
放電電極(64)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(64)は、基部(76)の挿入口(76a)に嵌合している。これにより、放電電極(64)は、絶縁ケーシング(71)の内部に収容されている。実施形態2では、放電電極(64)の給湯タンク(41)とは反対側の端部(端面)が、給湯タンク(41)の外部に露出する状態となる。このため、給湯タンク(41)の外部に配置される電源部(70)と、放電電極(64)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0086】
放電電極(64)のうち給湯タンク(41)側の端部(64a)は、絶縁ケーシング(71)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図7に示す例では、放電電極(64)の端部(64a)が、挿入口(76a)の開口面よりも上側(給湯タンク(41)側)に突出しているが、この端部(64a)の先端面を挿入口(76a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(64a)を挿入口(76a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(64)は、実施形態1と同様、開口(74)を有する蓋部(73)との間に所定の間隔が確保されている。
【0087】
対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する鍔部(65b)とを有している。電極本体(65a)は、絶縁ケーシング(71)のケース本体(72)に外嵌している。鍔部(65b)は、給湯タンク(41)の底壁部(41c)に固定されて放電ユニット(62)を保持する固定部を構成している。放電ユニット(62)が給湯タンク(41)に固定された状態では、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が水中に浸漬した状態となる。つまり、鍔部(65b)は、電極本体(65a)の軸方向の中間部分に形成されている。
【0088】
対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有している。内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、給湯タンク(41)内の水中に浸漬している。そして、対向電極(65)は、給湯タンク(41)内で水中に位置する先端側の部分が二重管構造になっている。内側筒部(65c)は、その内部に円柱空間(67)を形成している。上記放電電極(64)と対向電極の内側筒部(65c)は、上記蓋部(73)を挟んで両側に位置している。
【0089】
内側筒部(65c)の軸方向の一端は、蓋部(73)と当接して該蓋部(73)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(65a)と内側筒部(65c)と連接部(65d)の間には、ケース本体(72)の先端筒部(79)が内嵌している。内側筒部(65c)の軸方向の他端側には、円柱空間(67)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(68)が設けられている。この漏電防止材(68)は、対向電極(65)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(68)は、給湯タンク(41)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(67)の内側から外側への漏電を防止している。
【0090】
対向電極(65)は、電極本体(65a)の一部が給湯タンク(41)の外部に露出する状態となる。このため、電源部(70)と対向電極(65)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0091】
−水浄化ユニットの運転動作−
実施形態2の給湯システム(10)においても、水浄化ユニット(60)が運転されることで、給湯タンク(41)内の水が浄化される。
【0092】
水浄化ユニット(60)の運転の開始時には、図7に示すように、絶縁ケーシング(71)の内の空間(S)に浸水した状態となっている。電源部(70)から電極対(64,65)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(74)の内部の電流密度が上昇していく。
【0093】
図7に示す状態から、電極対(64,65)へ更に直流電圧が継続して印加されると、開口(74)内の水が気化されて気泡(B)が形成される(図8を参照)。この状態では、気泡(B)が開口(74)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(67)内の負極側の水と、放電電極(64)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(64)と対向電極(65)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルや過酸化水素を生成され、これらの成分が水の浄化に利用される。
【0094】
〈実施形態2の変形例〉
上記実施形態2では、円板状の蓋部(73)の軸心に1つの開口(74)を形成しているが、この蓋部(73)に複数の開口(74)を形成してもよい。図9に示す例では、蓋部(73)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(74)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(73)に複数の開口(74)を形成することで、各開口(74)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0095】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0096】
〈給湯システムの構成〉
上記実施形態の給湯システム(10)を図10に示すような、他の方式としてもよい。
【0097】
具体的に、図10に示す例の給湯システム(10)は、加熱熱交換器(32)と第1ポンプ(43)とが、熱源ユニット(30)や給湯ユニット(40)と異なるユニット(ハイドロボックス(30a))に収容されている。また、この例では、給湯タンク(41)の内部に、コイル型熱交換器(13a)が収容されている。コイル型熱交換器(13a)は、給湯タンク(41)の底壁部(41c)寄りに配設されている。コイル型熱交換器(13a)では、熱媒体としての水が流れる伝熱管が、給湯タンク(41)の周壁部(41a)に沿うように螺旋状に形成されている。コイル型熱交換器(13a)は、一端が第1循環流路(13)の始端に接続し、他端が第1循環流路(13)の終端に接続している。
【0098】
この給湯システム(10)では、水浄化ユニット(60)は給湯タンク(41)の周壁部(41a)に沿うように配置されている。水浄化ユニット(60)は、具体的には、コイル形熱交換器(13a)の螺旋状の伝熱管の近傍に配置されている。水浄化ユニット(60)の放電ユニット(62)には、図2,4,5等に示したボックス状のものを採用してもよいし、図7,8に示したフランジユニット型のものを採用してもよい。
【0099】
図10に示す給湯システム(10)では、加熱熱交換器(32)で加熱された水が、コイル型熱交換器(13a)を流れる。これにより、コイル型熱交換器(13a)の伝熱管を流れる水の熱が、伝熱管の外部へ放出される。その結果、給湯タンク(41)内に貯留された水が加熱され、温水が生成される。
【0100】
このように構成すると、放電ユニット(62)がコイル型熱交換器(13a)の伝熱管の近傍に位置するため、放電ユニット(62)の周囲の水温が高くなり、熱による殺菌効果が向上するし、過酸化水素の活性が高まって殺菌効果も向上する。また、放電ユニット(62)の周囲の水温が高くなるため、タンク内の温水に対流が生じ、放電によって発生した過酸化水素が温水中で拡散しやすくなる。
【0101】
なお、放電ユニット(62)は必ずしも給湯タンク(41)の周壁部(41a)に沿って配置しなくてもよく、底壁部(41c)に沿って配置してもよい。
【0102】
〈放電ユニットの構成>
上述した各実施形態の電源部(70)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0103】
また、上述した各実施形態では、電源部(70)の正極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の負極に対向電極(65)を接続している。しかしながら、電源部(70)の負極に放電電極(64)を接続し、電源部(70)の正極に対向電極(65)を接続することで、電極対(64,65)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【0104】
〈イオン供給部の構成〉
上述した各実施形態では、第1循環流路(13)の配管を銅管とすることで、この配管を、銅イオンを水中へ供給するイオン供給部としている。しかしながら、イオン供給部としては、例えば鉄イオンを生成する鉄製の配管を用いることもできる。鉄イオンも銅イオンと同様、過酸化水素の存在下でフェントン反応を促進させるため、水酸ラジカルの生成量を増大できる。
【0105】
また、例えば、給湯タンク(41)と連通する第1循環流路(13)の配管に銅管や鉄管を用いる代わりに、内部熱交換器(42)の第1伝熱管(42a)を銅管で構成したり、給湯タンク(41)の水中に例えば銅片や鉄片を浸漬したりすることで、これらをイオン供給部とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上説明したように、本発明は、給湯システムに設けられる給湯タンク内の湯水を除菌する技術について有用である。
【符号の説明】
【0107】
10 給湯システム
13a コイル型熱交換器
15 供給流路(出湯流路)
41 給湯タンク
60 水浄化ユニット
62 放電ユニット(放電部)
64 放電電極(電極対)
65 対向電極(電極対)
65a 電極本体
65b 固定部(鍔部)
65c 内側筒部
65d 連接部
70 電源部(直流電源)
71 絶縁ケーシング
73 蓋部(仕切板)
74 開口
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水が貯留される給湯タンク(41)と、給湯タンクに貯留された温水を利用機器へ出湯する出湯流路(15)と、上記給湯タンクの内部の水を浄化する水浄化ユニット(60)とを備えた給湯システムであって、
上記水浄化ユニット(60)は、上記給湯タンク(41)の水中でストリーマ放電を生起する電極対(64,65)を有する放電部(62)と、該電極対(64,65)に直流電圧を印加する直流電源(70)とを有し、上記ストリーマ放電によって上記給湯タンク(41)の水中に過酸化水素を生成するように構成されていることを特徴とする給湯システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記水浄化ユニット(60)の放電部(62)は、上記給湯タンク(41)の底部に設けられていることを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
請求項2において、
上記給湯タンク(41)の内部には、給湯タンク(41)に貯留されている水を加熱する熱交換器(13a)が設けられ、
上記水浄化ユニット(60)の放電部(62)は、上記熱交換器(13a)の近傍に配置されていることを特徴とする給湯システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つにおいて、
上記放電部(62)は、棒状の放電電極(64)と、放電電極(64)の周囲に配置された筒状の対向電極(65)と、放電電極(64)と対向電極(65)とを一体的に保持する絶縁ケーシング(71)とを有する放電ユニットにより構成され、
放電ユニット(62)は、給湯タンク(41)の壁面に固定される固定部(65b)を有していることを特徴とする給湯システム。
【請求項5】
請求項4において、
上記放電ユニット(62)の対向電極(65)は、円筒状の電極本体(65a)と、該電極本体(65a)から径方向外方へ突出する上記固定部(65b)としての鍔部(65b)とを有し、
上記鍔部(65b)は、対向電極(65)の電極本体(65a)の一部が給湯タンク(41)の水中に浸漬した状態となるように、電極本体(65a)の軸方向の中間部分に形成されていることを特徴とする給湯システム。
【請求項6】
請求項5において、
上記対向電極(65)は、電極本体(65a)よりも小径の内側筒部(65c)と、該内側筒部(65c)と電極本体(65a)との間に亘って形成される連接部(65d)とを有し、
内側筒部(65c)及び連接部(65d)は、給湯タンク(41)内の水中に浸漬するように構成され、
上記絶縁ケーシング(71)には、絶縁ケーシング(71)の内部に空間(S)を区画するとともに開口(74)を有する仕切板(73)が設けられ、
上記放電電極(64)と対向電極の内側筒部(65c)が、上記仕切板(73)を挟んで両側に位置するように構成されていることを特徴とする給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−77919(P2012−77919A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220395(P2010−220395)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】