説明

給湯機

【課題】沸き上げ動作を正常に行うことができる給湯機を提供する。
【解決手段】貯湯タンク10と、ヒートポンプユニット3と、入水配管11と、出湯配管12と、バイパス配管13と、貯湯タンク10の下部10aからヒートポンプユニット3の入口3iへ向かう経路を連通させる第一状態、バイパス配管13からヒートポンプユニット3の入口3iへ向かう経路を連通させる第二状態および当該三方弁14での連通を遮断する第三状態に切り替え可能な三方弁14と、三方弁14とヒートポンプユニット3との間の入水配管11に設けられ外部へ開放可能なエア抜きバルブ15と、制御部50,60と、を備え、制御部50,60は、エア抜き運転の際、エア抜きバルブ15が入水配管11を開放した状態で、三方弁14を前記第三状態に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク下部の水を熱源ユニットで加熱して、加熱された温水を貯湯タンク上部側に蓄える方式のヒートポンプ式の給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の給湯機は、熱源ユニットから流出した温水を、貯湯タンクを経て再び熱源ユニットに戻すための第1経路と、熱源ユニットから流出した温水を、貯湯タンクをバイパスして再び熱源ユニットに戻す第2経路とを備え、第1経路と第2経路とを三方弁を介して切り替える方式を採用したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3969154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、給湯機を据付けた後に、貯湯タンク内に水を満たす処理が行われるが、このとき貯湯タンクと熱源ユニットとを繋ぐ配管(第1経路、第2経路)内にはエアが残留しているため、エアが残留している状態で沸き上げ運転を行うと、循環ポンプにおいてエア噛みが発生し、沸き上げ運転が正常に行われないという問題がある。
【0005】
そこで、従来の三方弁を備えた給湯機では、熱源ユニットの入口と出口にそれぞれエア抜きバルブ(エア抜き機構)を設けて、エア抜き時に、三方弁を第1経路が連通するように切り替えることが行われている。
【0006】
しかし、このような従来の給湯機のエア抜き機構では、貯湯タンク下部から熱源ユニットに向かう入水配管と、熱源ユニットから貯湯タンク上部に向かう出湯配管の両方から熱源ユニットへ向かって貯湯タンク内の水が流入してくるため、双方のエア抜きバルブの先の領域、すなわち熱源ユニット内のエアが抜けないおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題を解決するものであり、沸き上げ動作を正常に行うことができる給湯機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貯湯タンクと、前記貯湯タンクに貯留される水を加熱する熱源ユニットと、前記貯湯タンクの下部から前記熱源ユニットの入口に向かう入水配管と、前記熱源ユニットの出口から前記貯湯タンクの上部へ向かう出湯配管と、前記入水配管と前記出湯配管とを接続し、前記貯湯タンクをバイパスするバイパス配管と、前記入水配管と前記バイパス配管との接続部に設けられる三方弁と、前記三方弁を制御する制御装置と、を備え、前記三方弁と前記熱源ユニットとの間の前記入水配管には、この入水配管を外部へ開放可能なエア抜き機構が設けられ、前記三方弁は、前記貯湯タンクの下部から前記熱源ユニットの入口へ向かう経路を連通させる第一状態と、前記バイパス配管から前記熱源ユニットの入口へ向かう経路を連通させる第二状態と、当該三方弁での連通を遮断する第三状態と、に切り替え可能に構成され、前記制御装置は、エア抜き運転の際、前記エア抜き機構が前記入水配管を開放した状態で、前記三方弁を前記第三状態に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、確実にエア抜きができ、沸き上げ動作を正常に行うことができる給湯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る給湯機を示す全体構成図である。
【図2】三方弁の状態を示し、(a)は第一状態、(b)は第二状態、(c)は第三状態である。
【図3A】本実施形態に係る給湯機の動作を示すフローチャートである。
【図3B】本実施形態に係る給湯機の動作を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る給湯機のエア抜き運転時の動作説明図である。
【図5】本実施形態に係る給湯機の沸き上げ運転時の動作説明図である。
【図6】本実施形態に係る給湯機の凍結防止運転時の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態に係る給湯機1について図面を参照して説明する。なお、以下では、タンク内の湯水そのものを一般給湯や浴槽給湯に利用する場合を例に挙げて説明するが、このような方式の給湯機1に限定されるものではなく、タンク内の湯水を熱交換用の熱媒体として、給水源からの水をタンク内の湯水と熱交換することにより、一般給湯や浴槽給湯として利用するものであってもよい。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の給湯機1は、貯湯タンクユニット2、ヒートポンプユニット3(熱源ユニット)、コントローラ100を含んで構成されている。
【0013】
貯湯タンクユニット2は、貯湯タンク10、入水配管11、出湯配管12、バイパス配管13、三方弁14、エア抜きバルブ15、制御部50などを備えている。
【0014】
貯湯タンク10は、湯水を溜める容器であり、縦長の筒形状を呈している。また、貯湯タンク10は、保温性能向上のため、その周囲が発泡スチロールなどの断熱材などで覆われている。なお、貯湯タンク10の形状は、円筒形状であっても、角形形状であってもよい。
【0015】
貯湯タンク10内の温水の温度は、鉛直方向下方から上方にいくにしたがって高く、すなわち貯湯タンク10内の下部から上部にいくにしたがって、相対的に低、中、高の温度分布となっている。例えば、貯湯タンク10内の上部で約90℃、中間部で約50℃となっている。
【0016】
また、貯湯タンク10には、鉛直方向に沿って、温水の温度を検出する複数のタンク温度センサ51,52,53,54,55,56が上部から下部に配置されており、これらのタンク温度センサ51,52,53,54,55,56により検出された貯湯タンク10内の温水の温度を示す検出信号は、制御部50に出力され、給湯機1の制御に使用されている。
【0017】
また、貯湯タンク10には、その下部10aから、給水源(水道管)からの水道水が、配管5,6を介して導入される。配管5には、上流側から順にストレーナS、逆止弁CV1、給水温度センサ7、減圧弁V1が設けられている。また、貯湯タンク10の下部10aには、配管8が接続され、この配管8に貯湯タンク10内の湯水を排水するための排水弁V2が設けられている。なお、排水弁V2は、手動式のものであり、通常用として使用する際の排水口と、非常用水として使用する際の排水口と、を備えている。
【0018】
入水配管11は、ヒートポンプユニット3の入口3iと貯湯タンク10の下部10aとを接続し、貯湯タンク10内の水(低温水)をヒートポンプユニット3に送り込む流路を構成している。
【0019】
出湯配管12は、ヒートポンプユニット3の出口3oと貯湯タンク10の上部10bとを接続し、ヒートポンプユニット3で加熱された水(高温水)を貯湯タンク10の上部10bに送り出す流路を構成している。
【0020】
バイパス配管13は、入水配管11と出湯配管12とを接続し、ヒートポンプユニット3から貯湯タンク10をバイパスして後記する三方弁14と接続される流路を構成している。
【0021】
三方弁14は、例えば、ステッピングモータを駆動源とするものであり、入水配管11とバイパス配管13との接続部に設けられている。この三方弁14は、図2(a)に示すように、貯湯タンク10と三方弁14とを接続する配管11a(入水配管11の上流側)と、三方弁14とヒートポンプユニット3の入口3iとを接続する配管11b(入水配管11の下流側)とを連通させる第一状態と、図2(b)に示すように、バイパス配管13と配管11bとを連通させる第二状態と、図2(c)に示すように、三方弁14でのすべての連通を遮断する第三状態とを切り替え可能に構成されている。なお、第三状態とは、前記第一状態および前記第二状態の双方を遮断する状態だけではなく、バイパス配管13と配管11aとの連通をも遮断する状態も含むことを意味している。
【0022】
また、三方弁14は、制御部50によって、第一状態と第二状態と第三状態とが適宜切り替えられるようになっている。なお、図示していないが、三方弁14には、第一状態、第二状態および第三状態のいずれの状態であるかを検知する位置センサが設けられており、制御部50によって、三方弁14が現在どの状態であるかを検知することができるように構成されている。
【0023】
図1に戻って、エア抜きバルブ15(エア抜き機構)は、例えば手動式のもの(作業者が手で開け閉めするもの)であり、給湯機1の据付時において、エア抜きバルブ15を開放する(開弁する)ことによって、ヒートポンプユニット3内、配管11b内および出湯配管12内のエア(空気)を抜くことができるものである。また、エア抜きバルブ15は、入水配管11の三方弁14の近傍に位置している。なお、エア抜きバルブ15の位置は、三方弁14の近傍に限定されるものではなく、後記するエア抜き運転を行ったときに、循環ポンプ16でのエア噛みが発生しない程度の位置(三方弁14からの距離)に設定されていればよい。
【0024】
なお、図示省略しているが、エア抜きバルブ15は、例えばねじ込み式のものであり、作業者が手で入水配管11に取り付けられたねじ部を緩めることにより、ねじ部と入水配管11との間に隙間が形成され、入水配管11の内部と外部とが連通するように構成されたものである。また、以下では、手動式のエア抜きバルブ15を例に挙げて説明するが、電動式の開閉弁を用いてエア抜き機構を構成してもよい。また、配管内のエア抜きを行うことができるものであれば、その機構については特に限定されるものではない。
【0025】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)などで構成され、コントローラ100からの操作信号および後記する制御部60からの検出信号に基づいて給湯機1全体を統括的に制御する。
【0026】
なお、屋外に設置されるヒートポンプユニット3、入水配管11および出湯配管12には、凍結防止用の断熱材が巻かれている。また、配管には、凍結防止用として、電気ヒータなどが設けられていてもよい。
【0027】
ヒートポンプユニット3は、冷媒を圧縮して高温・高圧にする圧縮機3a、高温・高圧の冷媒(例えば、二酸化炭素)と貯湯タンク10からの低温水との間で熱交換させ低温水を加熱する熱交換器3b、冷媒を膨張させ減圧する膨張弁3c、減圧され温度低下した冷媒に外気の熱を吸熱させる吸熱器3d、循環ポンプ16、制御部60などを備えている。
【0028】
循環ポンプ16は、入水配管11と熱交換器3bとを接続する配管3eに設けられている。この循環ポンプ16は、沸き上げ運転時や凍結防止運転時に作動するものであり、入水配管11から熱交換器3bを介して出湯配管12に向けて流体を循環させるようになっている。なお、流体とは、沸き上げ運転時であれば低温水、凍結防止運転時であれば温水(凍結防止に有効な温度の水)を意味している。
【0029】
また、ヒートポンプユニット3には、入水温度センサ61、出湯温度センサ62、外気温度センサ63が設けられている。入水温度センサ61は、ヒートポンプユニット3内の配管3eに設けられ、熱交換器3bに導入される流体(低温水など)の温度を検知する機能を有している。出湯温度センサ62は、ヒートポンプユニット3内の熱交換器3bと出湯配管12と接続される配管3fに設けられ、熱交換器3bから流出する流体(湯など)の温度を検知する機能を有している。外気温度センサ63は、給湯機1が設置される外気(大気)の温度を検知する機能を有している。
【0030】
制御部60は、ヒートポンプユニット3を電子制御する制御装置であり、貯湯タンクユニット2に設けられた制御部50によって制御信号に応じて、圧縮機3aのモータ回転速度、膨張弁3cの開度、吸熱器3dの電動ファンの回転速度および循環ポンプ16のモータ回転速度を制御する。また、制御部60は、入水温度センサ61、出湯温度センサ62および外気温度センサ63の各検出信号(検出値)を取得して制御部50に送るようになっている。
【0031】
コントローラ100は、湯張り、追い焚き、給湯等を行なうために利用者が操作するふろリモコン101、台所リモコン102を有する。なお、貯湯タンクユニット2には、電源スイッチが設けられており、この電源スイッチをオンすることにより、ヒートポンプユニット3およびコントローラ100に電力が供給されるようになっている。
【0032】
また、給湯機1は、一般給湯回路20、浴槽給湯回路30、浴槽水循環回路40などを備えている。なお、前記した逆止弁CV1および以下に示す逆止弁CV2〜CV7は、図示の矢印方向への流れのみを許容する弁であることを意味している。
【0033】
一般給湯回路20は、一般給湯端末に湯を供給する回路であり、配管21,22,23、給湯混合弁V3などで構成されている。なお、一般給湯端末とは、台所、洗面所、風呂場などの蛇口やシャワー等であり、供給された湯を一度利用して完了するような利用形態のものを意味している。
【0034】
配管21は、一端が配管6に対して分岐して接続され、他端が逆止弁CV2を介して給湯混合弁V3の一方の入力ポートに接続されている。給湯混合弁V3は、配管21からの水(低温水)と配管22からの湯水(高温水)とを混合して、コントローラ100で設定された給湯温度になるように混合割合が制御部50によって制御される。配管22は、一端が貯湯タンク10の上部10bに接続され、他端が逆止弁CV3を介して給湯混合弁V3の他方の入力ポートに接続されている。
【0035】
なお、制御部50は、給湯温度センサ71および給湯流量センサ72の各検出信号(検出値)に基づいて、コントローラ100で設定された給湯温度となるように給湯混合弁V3を制御する。
【0036】
浴槽給湯回路30は、浴槽Bに湯を供給する回路であり、配管21,22,31〜35、風呂混合弁V4などで構成されている。なお、配管21,22は、一般給湯回路20と共通の配管となっている。
【0037】
配管31は、一端が配管21の逆止弁CV2の上流側に接続され、他端が逆止弁CV4を介して風呂混合弁V4の一方の入力ポートに接続されている。風呂混合弁V4は、配管31からの水(低温水)と配管32からの湯水(高温水)とを混合して、コントローラ100で設定された給湯温度(風呂温度)になるように混合割合が制御部50によって制御される。
【0038】
配管32は、一端が配管22の逆止弁CV3の上流側に接続され、他端が逆止弁CV5を介して風呂混合弁V4の他方の入力ポートに接続されている。
【0039】
配管33は、一端が風呂混合弁V4の出力ポートと接続され、他端が風呂電磁弁V5、逆止弁CV6、風呂流量センサ73、逆止弁CV7、水位センサ74、風呂温度センサ75を介して浴槽Bに接続されている。風呂電磁弁V5は、湯張り運転時に制御部50によって開弁され、浴槽Bへの給湯が可能となるように構成されている。
【0040】
配管34は、一端が逆止弁CV7と水位センサ74との間の配管33に接続され、他端が風呂循環ポンプ76、水流スイッチ77を介して循環調整弁V6の入力ポートに接続されている。配管35は、一端が風呂調整弁V6の出力ポートと接続され、他端が浴槽Bと接続されている。
【0041】
また、浴槽給湯回路30は、二次側からの逆流が発生したときに、図示しない排水弁を開弁して排水する逆流防止装置78を備えている。
【0042】
制御部50は、風呂流量センサ73で検出された検出信号(流量)に基づいて、コントローラ100で設定された所定の給湯量となるように演算して給湯量を制御し、所定の給湯量になった場合に風呂電磁弁V5を閉弁し、浴槽Bへの給湯を停止する。
【0043】
また、制御部50は、水位センサ74で検出された検出信号に基づいて、浴槽B内が所定の設定水位となるように風呂電磁弁V5などを制御する。また、制御部50は、風呂温度センサ75によって湯張り時の配管33を通る温水の温度を検出し、該検出温度の検出信号に基づいて、利用者が設定した給湯温度となるように風呂混合弁V4での水(低温水)と湯水(高温水)との混合比を調整する。
【0044】
浴槽水循環回路40は、追焚き運転時に浴槽水を循環させて加熱する回路であり、配管33,34,41,42、追焚き熱交換器43などで構成されている。なお、配管33の一部および配管34は、浴槽給湯回路30と共通の配管となっている。
【0045】
配管41は、一端が循環調整弁V6の他方の出力ポートと接続され、他端が貯湯タンク10内に設けられた追焚き熱交換器43の入口と接続されている。配管42は、一端が追焚き熱交換器43の出口と接続され、他端が浴槽Bと接続されている。
【0046】
制御部50は、風呂温度センサ75によって検出された配管34を通る追い焚き前の温水の温度と、温度センサ79によって検出された追い焚き後の配管35を通る温水の温度とに基づいて、浴槽B内の温水の温度が、利用者の設定温度となるまで風呂循環ポンプ76を駆動させ、追い焚きモードを継続するようになっている。そして、制御部50は、浴槽B内の温水の温度が、利用者の設定温度になった時点で風呂循環ポンプ76の駆動を停止し、追い焚きモードを終了する。また、水流スイッチ77は、追焚きモード時に温水が流れているかどうかを検出するセンサである。
【0047】
逃し弁80は、配管22に分岐して接続された配管81に設けられ、貯湯タンク10の耐圧を超えない所定圧になったときに開弁して大気(外気)に開放するようになっている。なお、逃し弁80は、制御部50によって電気的に制御されるものではなく、前記所定圧に至ったときに機械的に開弁するように構成されたものである。また、開弁後に貯湯タンク10内の圧力が所定圧を下回ったときには、自動的に閉弁するようになっている。また、逃し弁80は、後記するエア抜き作業において、作業者が手で開け閉めできるようにもなっている。また、逃し弁80は、機械的に動作するものに限定されず、貯湯タンク10内の圧力を検知する圧力センサを設けて、圧力センサの検出値に基づき(前記と同様な所定圧になったときに)逃し弁80を電気的に開弁するものであってもよい。
【0048】
次に、本実施形態に係る給湯機1の運転制御について図3A,図3B、図4〜図6を参照(適宜、図1および図2を参照)して説明する。
まず、作業者が給湯機1を所定の位置に据付後、逃し弁80を手動で開弁した状態で貯湯タンク10内に給水を開始する。なお、このとき配管21から配管23に給水源からの水が流れないように一般給湯端末が設定され、また配管22から配管33に貯湯タンク10内の水が流れないように風呂電磁弁V5が設定されている。そして、貯湯タンク10内が満水になると、逃し弁80から水が流れ出すので、作業者は、この状態を確認することにより貯湯タンク10内が満水であることを確認でき、逃し弁80を手動で閉じる。なお、このとき、三方弁14は、第三状態(図2(c)参照)に設定されている。
【0049】
そして、図3Aに示すように、作業者によって電源がオン(ON)にされると、制御装置(制御部50および制御部60)は、ステップS101において、エア抜き動作開始指令が発せられたか否かを判定する。なお、エア抜き動作開始指令は、作業者がコントローラ100(例えば、台所リモコン102)からエア抜き開始用に予め設定された操作が行われることにより発せられる。制御装置は、エア抜き動作開始指令有りと判定した場合には(S101、Yes)、ステップS102に進む。なお、作業者は、コントローラ100からエア抜き開始用の操作を行った後に、エア抜きバルブ15を手動で開弁(開放)する。
【0050】
ステップS102において、制御装置は、三方弁14が第三状態であるか否かを判定する。なお、三方弁14が第三状態であるか否かは、前記したように三方弁14に設けられた位置センサ(不図示)によって判定することができる。制御装置は、三方弁14が第三状態ではないと判定した場合には(No)、ステップS103に進み、三方弁14を第三状態に切り替え、また三方弁14が第三状態であると判定した場合には(Yes)、リターンする。
【0051】
このように三方弁14が第三状態に設定されると、三方弁14でのすべての流通が遮断されるので、貯湯タンク10の上部10bから出湯配管12、ヒートポンプユニット3、入水配管11の配管11b、三方弁14に至る流路、つまりヒートポンプユニット3に対して一方向のみからの流路が形成される。
【0052】
よって、エア抜きバルブ15が開放されると、貯湯タンク10内の給水圧力によって、貯湯タンク10内の水が出湯配管12、ヒートポンプユニット3(配管3e,3f、熱交換器3b)、配管11b内に残留するエアを押し出しながら、貯湯タンク10の上部10bから出湯配管12、ヒートポンプユニット3を通り、配管11bに向かって水が逆流する。
【0053】
これにより、図4において太線で示すように、出湯配管12、ヒートポンプユニット3(配管3e,3f、熱交換器3b)、配管11b内に残留するエアがエア抜きバルブ15を介して外部(大気中)に排出される。そして、エア抜きバルブ15から水のみが継続して流出することを作業者が確認することにより、エア抜きが完了したことを確認でき、エア抜きバルブ15を手動で閉じる操作を行う。
【0054】
なお、本実施形態では、エア抜きバルブ15が手動式のものを例に挙げて説明したが、エア抜きバルブを電動式のものとして、エア抜きバルブが開放したことを検知するセンサ(タイマ)を設けて、エア抜きバルブが開放してから所定時間が経過したときにエア抜きが完了したと制御装置が判断し、エア抜きバルブを閉じるように構成してもよい。なお、所定時間は、出湯配管12、ヒートポンプユニット3(配管3e,3f、熱交換器3b)、配管11b内に残留するエアをすべて(ほぼすべて)排出できる時間であり、事前の試験等に基づいて設定される。
【0055】
また、このエア抜き運転は、基本的に給湯機1の据付時にのみ行われ、通常運転時には行われないものである。ただし、貯湯タンク10内を清掃等するために貯湯タンク10内の水を入れ替えるなどのメンテナンスを行った場合には、再度エア抜き運転が行われる。
【0056】
ステップS101において、制御装置は、エア抜き動作開始指令無しと判定した場合には(No)、ステップS201に進み、沸き上げ動作開始指令が発せられたか否かを判定する。沸き上げ動作は、作業者がコントローラ100から沸き上げ用ボタンの操作が行われることにより発せられる。なお、初回の沸き上げ動作については、沸き上げ用ボタンが操作されたときに、エア抜き動作が終了したと判定し、ステップS201のYesに進む。
【0057】
ステップS202において、制御装置は、出湯温度が第一所定温度以上であるか否かを判定する。なお、出湯温度は、出湯温度センサ62によって検出される。第一所定温度は、例えば高温水(90℃など)となる温度に設定される。
【0058】
ステップS202において、制御装置は、出湯温度が第一所定温度以上ではないと判定した場合には(No)、ステップS203に進み、三方弁14が第二状態(図2(b)参照)であるか否かを判定する。三方弁14が第二状態であるか否かは、三方弁14に設けられた位置センサ(不図示)に基づいて判定することができる。
【0059】
ステップS203において、制御装置は、三方弁14が第二状態であると判定した場合には(Yes)、リターンし、三方弁14が第二状態ではないと判定した場合には(No)、ステップS204に進み、三方弁14を第二状態に切り替える。
【0060】
このように沸き上げ運転開始直後は、ヒートポンプユニット3での熱交換が十分ではないため、ヒートポンプユニット3から出湯配管12に流出する温水の温度は低い状態となっている。この状態で貯湯タンク10に温水を供給すると、逆に貯湯タンク10内の熱量を少なくしてしまう。よって、出湯配管12に設けられた出湯温度センサ62が第一所定温度以上を検知するまで三方弁14を第二状態として温水を循環して、ヒートポンプユニット3の余熱運転を行う。
【0061】
一方、ステップS202において、制御装置は、出湯温度が第一所定温度以上であると判定した場合には(Yes)、ステップS205に進み、三方弁14が第一状態(図2(a)参照)であるか否かを判定する。
【0062】
ステップS205において、制御装置は、三方弁14が第一状態であると判定した場合には(Yes)、ステップS207に進み、また三方弁14が第一状態ではないと判定した場合には(No)、ステップS206に進み、三方弁14を第一状態に切り替えて、その後ステップS207に進む。
【0063】
このように、三方弁14を第一状態に切り替えることにより、図5において太線で示すように、貯湯タンク10の下部10aから取り出した水(低温水)が、入水配管11を介してヒートポンプユニット3で加熱され、出湯配管12から導出された湯水(高温水)が貯湯タンク10の上部10bに送られる。
【0064】
そして、ステップS207において、制御装置は、タンク温度が第二所定温度以上ではないと判定した場合には(No)、ステップS207を繰り返し、タンク温度が第二所定温度以上であると判定した場合には(Yes)、リターンする。
【0065】
なお、タンク温度とは、タンク温度センサ51〜56によって検出されるものであり、例えば、タンク温度センサ53の温度が第二所定温度(例えば、90℃以上)であると検出されたときに、沸き上げ運転が完了したと判定する。なお、これは一例であり、タンク温度センサ56の検出値が第二所定温度以上、またはタンク温度センサ52の検出値が第二所定温度以上であるか否かを判定してもよく、適宜変更できる。
【0066】
ところで、ヒートポンプユニット3と、このヒートポンプユニット3に接続される入水配管11および出湯配管12は、通常屋外に設置されるものであるため、外気温度が氷点下以下になると、入水配管11、ヒートポンプユニット3、出湯配管12にかけて凍結するおそれがある。そこで、制御装置は、エア抜き動作開始指令無し(S101、No)、かつ、沸き上げ動作開始指令無し(S201、No)と判定した場合には、図3Bに示すように、ステップS301に進み、凍結防止動作開始指令有りか否かを判定する。
【0067】
なお、凍結防止動作開始指令の有無は、外気温度センサ63によって検出された外気温度に基づいて判定することができる。外気温度が所定外気温度以下であると判定した場合には、制御装置によって凍結防止動作開始指令が発せられる。所定外気温度は、入水配管11から出湯配管12にかけて凍結するよりも高い温度、例えば2℃に設定される。
【0068】
図3BのステップS301において、制御装置は、凍結防止動作開始指令有りと判定した場合には(Yes)、ステップS302に進み、三方弁14が第二状態(図2(b)参照)であるか否かを位置センサ(不図示)の検出信号(検出値)に基づいて判定する。
【0069】
ステップS302において、制御装置は、三方弁14が第二状態であると判定した場合には(Yes)、ステップS304に進み、三方弁14が第二状態ではないと判定した場合には(No)、ステップS303に進み、三方弁14を第二状態に切り替えた後、ステップS304に進む。
【0070】
ステップS304において、制御装置は、循環ポンプ16を作動させる。これにより、図6において太線で示すように、ヒートポンプユニット3、入水配管11、出湯配管12およびバイパス配管13内に湯水を循環させることができ、入水配管11、出湯配管12およびヒートポンプユニット3の凍結を防止できる。なお、温水が循環しない部分、つまり、入水配管11の上流側の配管11a、出湯配管12のバイパス配管13の接続部分から貯湯タンク10の上部10bまでの配管など屋外に設置される部分については、配管に電気ヒータなどを巻き付けて凍結を防止するようにしてもよい。
【0071】
ステップS305において、制御装置は、外気温度が第三所定温度以上であるか否かを判定する。なお、第三所定温度は、ヒステリシスを持たせて、前記所定外気温度よりも高い温度(例えば、5℃)が設定される。ステップS305において、制御装置は、外気温度が第三所定温度以上ではないと判定した場合には(No)、ステップS304に戻って循環ポンプ16の作動を継続し、外気温度が第三所定温度以上であると判定した場合には(Yes)、ステップS306に進み、循環ポンプ16を停止する。
【0072】
なお、図3Bには図示していないが、循環ポンプ16の作動による温水の循環のみでは凍結防止を回避できないと判定した場合には、さらにヒートポンプユニット3を作動させて、高温水を生成して、三方弁14を第二状態で循環させるように構成してもよい。
【0073】
また、ステップS301において、制御装置は、凍結防止動作開始指令無しと判定した場合には(No)、ステップS401に進む。つまり、エア抜き動作開始指令無し(S101、No)、かつ、沸き上げ動作開始指令無し(S201、No)、かつ、凍結防止動作開始指令無し(S301、No)であると判定した場合(エア抜き運転、沸き上げ運転および凍結防止運転のいずれの運転でもない場合)には、ステップS401に進む。
【0074】
ステップS401において、制御装置は、三方弁14が第三状態であるか否かを判定し、三方弁14が位置センサ(不図示)により第三状態であると判定した場合には(Yes)、リターンし、三方弁14が第三状態ではないと判定した場合には(No)、S402に進み、三方弁14を第三状態に切り替えて、リターンする。
【0075】
ところで、比較例として、第一状態と第二状態にのみ切り替え可能な三方弁を備えた給湯機では、沸き上げ運転を停止したときに、三方弁を第一状態から第二状態に切り替える制御を行うものが提案されている。しかし、三方弁を第二状態に設定すると、沸き上げ運転を停止したときに、出湯配管12側の高温水の熱によって入水配管11側に伝達され易くなり、次回沸き上げ運転を開始する際に、入水配管11からヒートポンプユニット3に向けて暖かいお湯が導入され易くなるので、熱交換器3bでの熱変換効率が低下する。また、熱交換器3bに暖かいお湯が導入されることにより、圧縮機3aに大きな負荷がかかることにもなる。
【0076】
本実施形態では、沸き上げ運転停止後に三方弁14を第三状態に設定することにより、出湯配管12側の高温水の熱がヒートポンプユニット3を介して入水配管11に伝達され難くなり、次回沸き上げ運転を開始する際に、入水配管11からヒートポンプユニット3に向けて暖かいお湯が導入され難くなる。よって、熱交換効率の低下を抑制することができ、また圧縮機3aに大きな負荷がかかるのを防止できる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係る給湯機1では、貯湯タンク10と、ヒートポンプユニット3と、入水配管11と、出湯配管12と、バイパス配管13と、第一状態、第二状態および第三状態に切り替え可能な三方弁14と、エア抜きバルブ15と、制御装置(制御部50,60)と、を備え、エア抜き運転の際、エア抜きバルブ15を開弁して入水配管11を開放した状態で、三方弁14を第三状態に切り替えるものである。これによれば、貯湯タンク10の上部から出湯配管12、ヒートポンプユニット3、配管11b(入水配管11)のエア抜きバルブ15までの水の流入が一方通行となるので、ヒートポンプユニット3内などにエア溜まりを作ることなく、エア抜きをすることが可能となる。よって、沸き上げ運転の際に、エアの残りによるエア噛みを防止することができ、沸き上げ運転等を正常に行うことが可能となる。
【0078】
また、本実施形態によれば、エア抜きバルブ15は、三方弁14とヒートポンプユニット3の入口3iとを接続する配管11b(入水配管11)において、三方弁14の近傍に位置しているので、貯湯タンク10の上部から出湯配管12、ヒートポンプユニット3、配管11b(入水配管11)のエア抜きバルブ15までに残っている空気をほぼ全量外部に排出することができ、エアの残りによるエア噛みをより確実に防止することができ、沸き上げ運転等をより正常に行うことが可能となる。
【0079】
また、本実施形態によれば、外気温度を検出する外気温度センサ63を備え、制御装置は、沸き上げ運転のときに三方弁14を第一状態とし、凍結防止運転のときに三方弁14を第二状態とし、エア抜き運転、沸き上げ運転および凍結防止運転のいずれの運転でもないときに三方弁14を第三状態とすることで、沸き上げ運転および凍結防止運転を確実に行うことができ、しかもいずれの運転でもないときの不具合(圧縮機3aに過大な負荷がかかること)を防止することが可能になる。
【0080】
なお、本発明は、前記した実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。例えば、図3Aのエア抜き運転において、フロー(S101〜S103)に、エア抜き動作開始指令有りの場合(S101、Yes)、三方弁14を第三状態に設定する前に、三方弁14を第一状態に設定する制御を追加するようにしてもよい。なお、三方弁14を第一状態に設定する時間は、貯湯タンク10内の水が、貯湯タンク10の下部10aから三方弁14を通ってエア抜きバルブ15までのエアを全量排出できる時間に設定され、事前の試験等によって決定される。
【0081】
このようにエア抜き運転の際に三方弁14を制御することにより、貯湯タンク10の下部から配管11aを通ってエア抜きバルブ15までに残るエアを外部に排出することが可能となり、その後における三方弁14を第三状態とする制御によって、出湯配管12、ヒートポンプユニット3および入水配管11に残るエアのすべてを排出することが可能になる。よって、エア噛みをさらに確実に防止することができる。
【0082】
よって、エア抜き運転の際に、三方弁14を第一状態にした後に第三状態にする制御では、エア抜きバルブ15を、例えばヒートポンプユニット3の入口3iに取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 給湯機
2 貯湯タンクユニット
3 ヒートポンプユニット(熱源ユニット)
10 貯湯タンク
10a 貯湯タンクの下部
10b 貯湯タンクの上部
11 入水配管
12 出湯配管
13 バイパス配管
14 三方弁
15 エア抜きバルブ(エア抜き機構)
16 循環ポンプ
50,60 制御部(制御装置)
63 外気温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
前記貯湯タンクに貯留される水を加熱する熱源ユニットと、
前記貯湯タンクの下部から前記熱源ユニットの入口に向かう入水配管と、
前記熱源ユニットの出口から前記貯湯タンクの上部へ向かう出湯配管と、
前記入水配管と前記出湯配管とを接続し、前記貯湯タンクをバイパスするバイパス配管と、
前記入水配管と前記バイパス配管との接続部に設けられる三方弁と、
前記三方弁を制御する制御装置と、を備え、
前記三方弁と前記熱源ユニットとの間の前記入水配管には、この入水配管を外部へ開放可能なエア抜き機構が設けられ、
前記三方弁は、前記貯湯タンクの下部から前記熱源ユニットの入口へ向かう経路を連通させる第一状態と、前記バイパス配管から前記熱源ユニットの入口へ向かう経路を連通させる第二状態と、当該三方弁での連通を遮断する第三状態と、に切り替え可能に構成され、
前記制御装置は、エア抜き運転の際、前記エア抜き機構が前記入水配管を開放した状態で、前記三方弁を前記第三状態に切り替えることを特徴とする給湯機。
【請求項2】
前記エア抜き機構は、前記三方弁と前記熱源ユニットの入口とを接続する前記入水配管において、前記三方弁の近傍に位置していることを特徴とする請求項1に記載の給湯機。
【請求項3】
外気温度を検出する外気温度検出手段を備え、
前記制御装置は、
前記貯湯タンクに加熱された湯を貯留する沸き上げ運転の際に、前記三方弁を前記第一状態とし、
前記外気温度検出手段により検出された外気温度が所定温度以下に低下した凍結防止運転の際に、前記三方弁を前記第二状態とし、
前記エア抜き運転、前記沸き上げ運転および前記凍結防止運転のいずれの運転でもない場合、前記三方弁を前記第三状態とすることを特徴とする請求項1に記載の給湯機。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87998(P2013−87998A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227591(P2011−227591)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】