説明

給湯装置

【課題】貯湯タンクの給排水作業を簡素化し、作業負担を低減することができる給湯装置を提供する。
【解決手段】給湯装置100は、貯湯タンク2を有する。貯湯タンク2の上部には、貯湯タンク2内と外方空間とを連通する空気抜き用配管21が設けられる。空気抜き用配管21には、貯湯タンク2が満水になるまで開状態であり、貯湯タンク2が満水になると閉状態に切り替わる自動空気抜き弁12が設けられる。制御装置は、排水スイッチ10によって排水指令が入力されると、排水弁13を閉状態から開状態に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンク内の温水を用いて給湯使用側端末へ温水を供給する給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の従来技術の給湯装置として、電力単価が安価な深夜電力を利用して夜間に湯を沸かし、貯湯タンクに沸かした湯を貯めるという貯湯式の給湯装置が知られている。貯湯タンク内の湯は、貯湯タンクの天面に設けた出口管から出湯され、シャワーや蛇口等の給湯使用側端末に通水される。
【0003】
貯湯タンクに貯める湯の沸き上げ温度は、細菌等の繁殖防止の観点より一般的に65℃以上に設定され、日々継続的に給湯装置が使用される状態であれば何ら問題は生じない。しかしながら長期にわたって給湯装置を使用しない場合はランニングコスト削減の目的で給湯装置の電源をOFFにされることがあり、保温性能に配慮した貯湯タンクにおいても貯湯タンク内の湯温は暫時低下し細菌が繁殖しやすい温度環境となってしまうため、その場合は貯湯タンク内の湯を排水する必要があり、また給湯装置の再使用時には貯湯タンク内に給水しなければならない。
【0004】
たとえば賃貸集合住宅に貯湯式の給湯装置を複数設置した場合、入居者が入れ替わる時を考えてみると、旧入居者が退去する際には給湯装置の電源をOFFにし、手作業で貯湯タンク内の湯を排水する必要が生じる。また新入居者が入居する際には、貯湯タンク内に給水し給湯装置の電源をONにする必要がある。
【0005】
このような排水作業を容易にした第2の従来技術の給湯装置として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1記載の給湯装置では、排水スイッチを操作すると、排水管に設けられる開閉弁が開状態となる。これによって排水作業を簡素化している。
【特許文献1】特開2007−64581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1の従来技術の給湯装置では、排水作業および給水作業を集合住宅オーナーまたはオーナーから委託された管理代行者の管理のもとに実施する必要があり、入退去が集中する時期においては非常に手間がかかるという問題がある。
【0007】
さらに第1の従来技術の給湯装置では、貯湯タンク内の水を排水する場合、排水することによって貯湯タンク内に負圧が発生して、貯湯タンクが変形するおそれがある。
【0008】
また第2の従来技術の給湯装置では、前述のような貯湯タンクの変形を防止するために、貯湯タンクに連結される給湯配管に逃がし弁が設けられる。逃がし弁の主たる機能は、貯湯タンク内に想定以上の圧力が発生した場合に、その圧力を貯湯タンク外に逃がすことで貯湯タンクの破損を防止するものである。また逃がし弁の従たる機能として、貯湯タンク内の湯を貯湯タンク下部から排水する際に貯湯タンク上部に設けられた逃がし弁を強制的に開放して、貯湯タンク内への空気の供給を促すことで湯の排水をスムーズに行うことが可能となる。このような逃がし弁の強制開放は、信頼性の面より手動で行われる。したがって第2の従来技術の給湯装置における排水作業においても、逃がし弁の強制開放という手順が必要である。
【0009】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、貯湯タンクの給排水作業を簡素化し、作業負担を低減することができる給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0011】
請求項1に記載の発明では、水を加熱する加熱手段(3,32)と、
加熱手段によって加熱された温水を貯える貯湯タンク(2)と、
貯湯タンク内の温水を給湯使用側端末に供給するときに用いられる給湯配管(4)と、
貯湯タンク内に給水するときに用いられる給水配管(1)と、
貯湯タンク内の水を排水するときに用いられる排水管(18)と、
排水管に設けられ、開閉状態が制御される排水弁(13)と、
貯湯タンクの上部に接続され、貯湯タンク内と外方空間とを連通する空気抜き用配管(21)と、
空気抜き用配管に設けられ、貯湯タンクが満水になるまで開状態であり、貯湯タンクが満水になると閉状態に自動的に切り替わる空気抜き弁(12)と、
排水指令を入力するための入力手段(10)と、
排水指令が入力されると、排水弁を閉状態から開状態に制御する制御手段(7)と、を含むことを特徴とする給湯装置である。
【0012】
請求項1に記載の発明に従えば、排水弁の開閉状態を制御手段によって制御可能であるので、作業者は排水作業を行う場合、入力手段を操作することによって排水弁を開状態にすることができる。したがって排水弁を開状態にする作業が容易である。
【0013】
また空気抜き弁が空気抜き用配管に設けられるので、排水時、すなわち貯湯タンクが満水でない時には、空気抜き弁は開状態である。したがって作業者は空気抜き弁を何ら操作することなく、空気抜き用配管から貯湯タンク内への空気が供給される。これによって排水時に貯湯タンク内にて負圧が発生することなく、排水をスムーズに行うことができる。
【0014】
また給水時に貯湯タンク内に所定の空気圧力が発生した場合、貯湯タンクは満水ではないので、空気抜き弁は開状態である。したがって給水時に貯湯タンク内の空気を空気抜き弁によっていわば自動的に抜くことができ、貯湯タンク内の空気圧力を一定に保つことができる。貯湯タンク内に給水して満水になると、空気抜き弁は自動的に開状態から閉状態となる。したがって給水時に空気抜き弁を何ら操作する必要がないので、給水作業が容易となる。このように空気抜き弁を設けることによって、給排水作業を簡素化することができ、作業負担を低減することができる。
【0015】
また請求項2に記載の発明では、時間を計時する計時手段をさらに含み、
制御手段は、排水指令が与えられると、排水弁を閉状態から開状態に制御し、計時手段によって計時される排水弁が開状態である時間が、予め定める排水時間を経過すると、排水弁を開状態から閉状態に制御することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明に従えば、入力手段が操作されてから排水時間が経過すると排水弁がいわば自動的に閉状態となる。したがって貯湯タンク内の排水が完了し、排水が終了した後に、作業者が何ら排水弁を操作する必要がない。したがって排水作業をより簡素化することができる。また給水作業を行う場合に排水弁が確実に閉状態であるので、排水作業から給水作業までの期間が長期間であっても、給水作業時に排水管から不所望に水が排出されることなく、給水作業を円滑に行うことができる。
【0017】
さらに請求項3に記載の発明では、貯湯タンク内と外方空間とを連通する逃がし配管(16)と、
逃がし配管に設けられ、沸き上げ時の膨張水を外方空間に自動的に排出する逃がし弁(6)をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明に従えば、逃がし弁が設けられるので、貯湯タンク内の圧力が所定圧以上に上昇した場合には、貯湯タンク内の膨張水を自動的に外方空間に排出することができる。これによって貯湯タンクなどに損害を与えることを防止することができる。
【0019】
さらに請求項4に記載の発明では、逃がし配管は、貯湯タンクの下部から膨張水を排出することを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明に従えば、逃がし配管は、貯湯タンクの上部より低温な下部の膨張水を排出することができる。このような低温の膨張水を排出することによって、膨張水を排出することによる熱損失を低減することができる。
【0021】
さらに請求項5に記載の発明では、加熱手段は、
熱交換部を流れる水を高温高圧の冷媒と熱交換させて加熱するヒートポンプユニット(32)と、
貯湯タンク内の水が熱交換部を通って貯湯タンク内に戻るように貯湯タンクと熱交換部とを連絡する循環流路(35)と、を含むことを特徴とする。
【0022】
請求項5に記載の発明に従えば、加熱手段のうち比較的エネルギ消費が少ないヒートポンプユニットによって、貯湯タンク内に温水を供給することができる。これによって給湯装置の省エネ化を図ることができる。
【0023】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図8を用いて説明する。図1は、第1実施形態の給湯装置100の概略構成を示す模式図である。本実施形態の給湯装置100は、貯湯式の給湯装置100である。給湯装置100は、主に一般家庭用として使用されるものであり、貯湯タンク2内に蓄えられた温水を給湯使用側端末(図示せず)に供給するものである。給湯使用側端末は、たとえばシャワー、カラン、風呂の浴槽および手洗い栓である。給湯装置100は、温水を貯える貯湯タンク2と、貯湯タンク2内の水を加熱するヒータ3と、本給湯装置100の作動を制御する制御手段である制御装置7と、を備えている。
【0026】
貯湯タンク2は、給湯用の湯を蓄える容器であり、耐食性に優れた金属製、たとえばステンレス鋼からなり、その外周部に断熱材(図示せず)が設けられ、給湯用の高温水を長時間に渡って保温することができる。貯湯タンク2は縦長形状であり、鉛直方向に沿って縦置きに設置される。したがって貯湯タンク2の上部とは、設置時における鉛直方向上方の部分であり、貯湯タンク2の下部とは鉛直方向下方の部分である。
【0027】
貯湯タンク2には、貯湯タンク2内部の貯湯量および貯湯温度を検出するために高さ方向に複数個並ぶようにサーミスタ8a〜8cが設けられている。貯湯タンク2内に満たされた湯もしくは水の水位レベルでの温度情報は、制御装置7に出力される。したがって、制御装置7は、サーミスタ8a〜8cからの温度情報に基づいて、貯湯タンク2内上方の沸き上げられた湯と貯湯タンク2内下方の沸き上げられる前の水との境界位置を検出できるとともに、これにより貯湯量が検出できるようになっている。
【0028】
ヒータ3は、加熱手段であって、貯湯タンク2内に設けられる。ヒータ3は、貯湯タンク2内の水を沸きあげる。ヒータ3は、通電することによって発熱する発熱体である。ヒータ3は、制御装置7によって通電と非通電とが制御される。ヒータ3は、貯湯タンク2の下部に設けられる。
【0029】
また貯湯タンク2の底面に導入口14が設けられている。導入口14には貯湯タンク2内に市水を供給する給水配管1が接続されている。給水配管1には、導入口14よりも上流の部位において給水専用止水弁15が設けられている。給水専用止水弁15は、貯湯タンク2内の下部へ流入する市水の流量を調節する機能を有する。また給水配管1には、給水専用止水弁15の下流の部位において、減圧弁5が設けられている。減圧弁5は、導入される水道水の水圧が所定圧となるように調節するとともに、断水などにおける湯の逆流を防止する。
【0030】
また給水配管1の経路途中には、逃がし弁6が配設された逃がし配管16が接続される。逃がし弁6は、貯湯タンク2内の圧力が所定圧以上に上昇した場合には、貯湯タンク2内の膨張水を外方空間に自動的に排出して、貯湯タンク2等に損害を与えないように構成されている。
【0031】
また給湯装置100は、給湯水が流れる主な配管として、貯湯タンク2内の高温水部の温水が流出して給湯使用側端末まで流れる給湯配管4を備えている。給湯配管4は、貯湯タンク2の最上部に設けられる導出口20に接続される。給湯配管4は、下流端に接続された給湯使用側端末へ温水を導く流路である。給湯配管4は、シャワー、カラン、手洗い栓および風呂の浴槽内などの給湯使用側端末に連通している。浴槽内に連通する給湯配管4は、浴槽内に湯張り、差し湯およびたし湯などを行うときに、温水を導く流路となる。
【0032】
また貯湯タンク2の底面に排出口17が設けられている。排出口17には貯湯タンク2内に水を排出するときに用いられる排水管18が接続されている。排水管18には、排水弁13が設けられている。排水弁13は、開閉状態が制御装置7によって制御される。したがって排水弁13が開状態であると、貯湯タンク2内の水が外方空間に排出される。排水弁13は、たとえば電磁弁によって実現される。
【0033】
また貯湯タンク2の最上部に空気抜き口19が設けられている。空気抜き口19には貯湯タンク2内の空気を抜くときに用いられる空気抜き用配管21が接続されている。空気抜き用配管21は、貯湯タンク2の上部に設けられ、貯湯タンク2内と外方空間とを連通する。空気抜き用配管21には、自動空気抜き弁12が設けられる。自動空気抜き弁12は、自動の空気抜き弁12であって、貯湯タンク2が満水になるまで開状態であり、貯湯タンク2が満水になると閉状態に切り替わる。自動空気抜き弁12は、自己制御型の切換え機構となっている。
【0034】
制御装置7は、マイクロコンピュータを主体として構成され、記憶手段(図示せず)として内蔵するROMまたはRAMには、あらかじめ設定された制御プログラムや更新可能な制御プログラムが備えられている。制御装置7は、計時手段(図示せず)として内蔵するタイマによって、時間を計時する。制御装置7は、電源からの電力が電源開閉器11を介して供給される。電源開閉器11は、電源スイッチ(図示せず)によって電力の供給状態(ON)と供給停止状態(OFF)とが切替られる。
【0035】
また制御装置7は、排水スイッチ10および操作スイッチ9と電気的に接続される。排水スイッチ10は、排水指令を制御装置7に入力するため入力手段である。操作スイッチ9は、給湯温度などを設定するための入力手段である。操作スイッチ9は、たとえば台所リモコンおよび風呂リモコンなどによって実現される。台所リモコンおよび風呂リモコンには、たとえば電源操作部、給湯設定温度操作部、湯張り操作部、湯張り設定温度操作部、追い焚き操作部、および追い焚き設定温度操作部などが設けられている。
【0036】
制御装置7は、各サーミスタ8a〜8cからの温度情報、および操作スイッチ9からの操作信号等に基づいて、ヒータ3を制御する。制御装置7は、各サーミスタ8a〜8cからの温度情報に基づいて、貯湯タンク2内に水の温度が低い場合や深夜電力が使用できる時間帯においては、ヒータ3を通電して貯湯タンク2内の水を加熱する。また制御装置7は、操作スイッチ9から出湯指令があったときは、各サーミスタ8a〜8cからの温度情報に基づいて、貯湯タンク2内に湯水の過不足を判断し、湯水が不足している場合は、ヒータ3を通電して貯湯タンク2内の水を加熱する。
【0037】
次に、給湯装置100における排水作業・給水作業、および制御装置7の排水処理に関して説明する。図2は、排水作業の手順を示すフローチャートである。図3は、排水処理を示すフローチャートである。図4は、給水作業の手順を示すフローチャートである。先ず、排水作業に関して、図2を用いて説明する。
【0038】
図2に示す排水作業は、給湯装置100を長期間にわたって使用しない場合に、貯湯タンク2内の水を排出する作業である。このような排水作業は、作業者によって行われる。作業者は、排水作業を開始すると、ステップa1にて給水専用止水弁15を閉状態にし、ステップa2に移る。これによって貯湯タンク2内への水の供給が停止される。ステップa2では、排水スイッチ10をONにし、ステップa3に移る。これによって制御装置7に排水指令が与えられる。ステップa3では、制御装置7によって後述する排水処理が実行され、ステップa4に移る。排水処理によって貯湯タンク2内の水が全て排水される。ステップa4では、電源開閉器11の電源スイッチを操作して、電源をOFFにして、本フローを終了する。このように作業者は、給水専用止水弁15を閉状態にし、排水スイッチ10をONにし、電源をOFFにするという、簡単な作業で排水作業を完了することができる。
【0039】
次に、排水処理に関して、図3を用いて説明する。図3に示す排水処理は、制御装置7によって行われる。本フローは、図2のステップa2にて排水スイッチ10がONになると、開始される。ステップb1にて、排水弁13を開状態にし、ステップb2に移る。ステップb2では、タイマの計時を開始し、ステップb3に移る。ステップb3では、タイマが計時している時間が、排水時間を経過したか否かを判断し、経過した場合、ステップb4に移り、経過していない場合、ステップb3の処理を繰返す。排水時間は、予め設定される時間であって、貯湯タンク2の容量および排水管18の排出量に基づいて、貯湯タンク2が満水の場合に、排水弁13を開状態にしたときに、貯湯タンク2が確実に空になる時間に設定される。ステップb4では、排水時間を経過しているので、排水弁13を閉状態にし、本フローを終了する。これによって貯湯タンク2における排水処理が完了して、貯湯タンク2を確実に空にすることができる。
【0040】
次に、給水作業に関して、図4を用いて説明する。図4に示す給水作業は、給湯装置100を長期間にわたって使用していない場合に、空の貯湯タンク2に給水する作業である。このような給水作業は、作業者によって行われる。作業者は、給水作業を開始すると、ステップc1にて給水専用止水弁15を開状態にし、ステップc2に移る。これによって貯湯タンク2内への給水が開始される。貯湯タンク2が満水になると、自動空気抜き弁12が閉状態に切り替わるので、貯湯タンク2から水が溢れることはない。ステップc2では、電源開閉器11の電源スイッチを操作して、電源をONにして、本フローを終了する。このように作業者は、給水専用止水弁15を開状態にし、電源をONにするという、簡単な作業で給水作業を完了することができる。
【0041】
次に、自動空気抜き弁12の構成および動作に関して、図5〜図8を用いて説明する。図5は、自動空気抜き弁12を示す断面図である。自動空気抜き弁12は、浮遊弁体22とOリング23とケーシング24とを含む。
【0042】
ケーシング24は、浮遊弁体22を収容する収容空間25を形成する。ケーシング24には、空気抜き用配管21に連通する下部連通口26と、外方空間に連通する上部連通口27が形成される。下部連通口26は、収容空間25に臨むケーシング24の内壁の内、下方に位置する下方壁部28に形成される。上部連通口27は、収容空間25に臨むケーシング24の内壁の内、上方に位置する上方壁部29に形成される。収容空間25は、下部連通口26を介して空気抜き用配管21内に連通し、上部連通口27を介して外方空間と連通する。
【0043】
Oリング23は、シール部材であって、上部連通口27の周囲の上方壁部29に設けられる。浮遊弁体22は、水に浮かぶ部材である。浮遊弁体22は、収容空間25内を上下に変位でき、浮遊弁体22の周囲に位置するケーシング24の内壁から離間する大きさである。また浮遊弁体22は、下部連通口26および上部連通口27を通過できない大きさである。浮遊弁体22の上面部22aは、平坦状である。したがって浮遊弁体22が上方に位置した状態では、上面部22aとOリング23とが当接する。
【0044】
また浮遊弁体22には、収容空間25内における姿勢を維持するための突出部30が下面部22bに設けられる。突出部30は、下面部22bから下方に突出する。突出部30は、空気抜き用配管21の内径より小径の円柱状の部材である。突出部30は、浮遊弁体22が収容空間25内のどこに位置していても、空気抜き用配管21内に位置する。換言すると、突出部30は、浮遊弁体22を上下方向に案内する案内手段としての機能を有する。
【0045】
次に、このような自動空気抜き弁12の動作に関して説明する。図6は、給水時の自動空気抜き弁12を示す断面図である。図7は、貯湯タンク2が満水時の自動空気抜き弁12を示す断面図である。図8は、排水時の自動空気抜き弁12を示す断面図である。給水時であって、収容空間25内に水がない状態では、浮遊弁体22は自重によって、浮遊弁体22の下面部22bがケーシング24の下方壁部28に当接している。このような状態で、給水されると、貯湯タンク2内の圧力が上昇し、浮遊弁体22に圧力が作用する。この圧力によって、浮遊弁体22が揺動し、図6に示すように、貯湯タンク2内の空気が下部連通口26から収容空間25に流入し、流入した空気が上部連通口27から流出する。このような自動空気抜き弁12の自動空気抜き機能によって、給水時には、貯湯タンク2の空気を適宜抜くことができる。このように自動空気抜き弁12は、給水時は開状態であるので、給水時の空気の圧力によって貯湯タンク2等に損害を与えないように構成されている。
【0046】
また給水時であって、貯湯タンク2に給水された水31が収容空間25内に下部連通口26から水31が流入すると、浮遊弁体22は浮力によって上昇する。浮遊弁体22が浮力によって上昇すると、図7に示すように、水圧によって浮遊弁体22とOリング23とが密着する。したがって自動空気抜き弁12は閉状態となり、上部連通口27から水31が流出することを防ぐことができる。また自動空気抜き弁12は、貯湯タンク2が満水になると自動的に閉状態になるので、給水専用止水弁15の開閉状態を制御することなく、給水専用止水弁15を開状態にするだけで貯湯タンク2を満水にすることができる。
【0047】
また排水時は、図8に示すように、収容空間25内において水面31aが下降するので浮遊弁体22が下がり、浮遊弁体22とOリング23とが離間するので、空気が上部連通口27から流入することができる。したがって自動空気抜き弁12は開状態となる。このような自動空気抜き弁12の負圧保護機能によって、貯湯タンク2内の水を排水する場合、排水することによって貯湯タンク2内に負圧が発生して、貯湯タンク2が変形することを防止することができる。
【0048】
以上説明したように本実施の形態の給湯装置100では、排水弁13の開閉状態を制御装置7によって制御可能であるので、作業者は排水作業を行う場合、排水スイッチ10を操作することによって排水弁13を開状態にすることができる(図2のステップa2参照)。したがって排水弁13を開状態にする作業が容易である。
【0049】
また自動空気抜き弁12が空気抜き用配管21に設けられるので、排水時、すなわち貯湯タンク2が満水でない時には、図8に示すように、自動空気抜き弁12は開状態である。したがって作業者は自動空気抜き弁12を何ら操作することなく、空気抜き用配管21から貯湯タンク2内への空気が供給される。これによって排水時に貯湯タンク2内にて負圧が発生することなく、排水をスムーズに行うことができる。
【0050】
また給水時に貯湯タンク2内に所定の空気圧力が発生した場合、貯湯タンク2は満水ではないので、図6に示すように、自動空気抜き弁12は開状態である。したがって給水時に貯湯タンク2内の空気を自動空気抜き弁12によっていわば自動的に抜くことができ、貯湯タンク2内の空気圧力を一定に保つことができる。貯湯タンク2内に給水して満水になると、図7に示すように、自動空気抜き弁12は自動的に開状態から閉状態となる。したがって給水時に自動空気抜き弁12を何ら作業する必要がないので、給水作業が容易となる。このように自動空気抜き弁12を設けることによって、給排水作業を簡素化することができ、作業負担を低減することができる。
【0051】
このように本実施の形態の給湯装置100では、排水スイッチ10によって排水作業が簡便となり、自動空気抜き弁12によって給水作業が簡便となる。排水弁13は、通常、屋外の貯湯タンク2付近に設置されるので、作業者が排水弁13を操作すると貯湯タンク2付近のほこりなどによって作業者の衣服などが汚れる場合があるが、本実施の形態の給湯装置100では、排水スイッチ10を操作するだけであるので、このような心配がなく作業負担を軽減することができる。また排水スイッチ10を操作するだけなので、専門の作業者でなくとも住居の管理人などによって簡便に排水作業を完遂することができる。
【0052】
また図3のステップb3およびステップb4に示すように、排水スイッチ10が操作されてから排水時間が経過すると排水弁13がいわば自動的に閉状態となる。したがって貯湯タンク2内の排水が完了し、排水が終了した後に、作業者が何ら排水弁13を操作する必要がない。したがって排水作業をより簡素化することができる。また給水作業を行う場合に排水弁13が確実に閉状態であるので、排水作業から給水作業までの期間が長期間であっても、給水作業時に排水管18から不所望に水が排出されることなく、給水作業を円滑に行うことができる。
【0053】
逃がし配管16は、貯湯タンク2の下部に設けられるので、貯湯タンク2の上部より低温な下部の膨張水を排出することができる。このような低温の膨張水を排出することによって、膨張水を排出することによる熱損失を低減することができる。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図9を用いて説明する。図9は、第2実施形態の給湯装置100Aの概略構成を示す模式図である。第2実施形態の給湯装置100Aでは、加熱手段として、第1実施形態のヒータ3の換わりにヒートポンプユニット32を用いる点に特徴を有する。また逃がし弁6が配設された逃がし配管16が、貯湯タンク2の上部の逃がし口36に接続される点に特徴を有する。
【0055】
ヒートポンプユニット32は、水・冷媒熱交換器(図示せず)で水を高温高圧の冷媒と熱交換させて加熱する。貯湯タンク2の底面には貯湯タンク2内の最下部の水を吸入するための吸入口33が設けられ、貯湯タンク2の上部には貯湯タンク2内の最上部に温水を吐出する吐出口34が設けられている。吸入口33と吐出口34は、水・冷媒熱交換器を介在させて循環流路35と接続されることで連通している。循環流路35の一部は水・冷媒熱交換器の水流路を構成している。
【0056】
ヒートポンプユニット32は、冷媒として臨界温度の低い二酸化炭素を使用するヒートポンプサイクル(図示せず)を有し、閉回路で構成されたヒートポンプサイクルにおいて圧縮機、加熱手段としての水・冷媒熱交換器、減圧器、および蒸発器が接続されている。ヒートポンプユニット32は、水・冷媒熱交換器の冷媒流路を流れる高温高圧の冷媒と、水・冷媒熱交換器の水流路を流れる水との間で熱交換を行うことにより、温水を沸き上げることができる。ヒートポンプユニット32は、制御装置7によって制御される。
【0057】
ヒートポンプサイクルを超臨界ヒートポンプで構成した場合、一般的なヒートポンプサイクルよりも高温、例えば、85℃〜90℃程度の湯を貯湯タンク2内に蓄えることができる。ヒートポンプサイクルは、主に、料金設定の安価な深夜時間帯の深夜電力を利用して貯湯タンク2内の湯を沸き上げる。
【0058】
このように本実施の形態では、加熱手段としてヒートポンプユニット32を用いる。ヒートポンプユニット32は、加熱手段のうち比較的エネルギ消費が少ないので、給湯装置100Aの省エネ化を図ることができる。また逃がし弁6が配設された逃がし配管16が、貯湯タンク2の上部に接続されるので、貯湯タンク2に満たされた水(湯)に含まれている溶存空気も同時に排出することができる。
【0059】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0060】
前述の各実施形態では、自動空気抜き弁12の構成は浮遊弁体22を含む構成であるが、このような構成に限ることはなく、貯湯タンク2が満水になるまで開状態であり、貯湯タンク2が満水になると閉状態に切り替わる構成であればよい。自動空気抜き弁12は、たとえば制御装置7によって開閉が制御される切替弁であり、制御装置7は貯湯タンク2の満水か否かに応じて、自動空気抜き弁12の開閉状態を制御するように構成してもよい。
【0061】
また前述の各実施形態では、制御装置7における排水処理では、排水時間を経過するとステップb4にて排水弁13を閉状態に切替えているが、このような制御することなく、排水弁13を開状態のままにしておいてもよい。換言すると、排水処理では、排水弁13を開状態にするだけの処理であってもよい。このような排水処理のよると、作業者が排水時間経過後に電源オフの操作をする必要がなく、排水スイッチ10を操作後に直ちに電源オフの操作をすることができるので、さらに作業時間を短縮することができる。このように排水処理に設定される場合、図4における給水作業では、先ず、作業者は電源をオンにする。そして、制御装置7は電力が与えられると、排水弁13が閉状態になるように制御することが好ましい。これによって、作業者は電源をオンにした後、確実に排水弁13が閉状態となるので、その後に給水専用止水弁15を開状態に操作することによって、給水作業を終了することができる。このように図4における作業手順の順番を入れ替えるだけなので、給水作業も極めて短時間で完遂することができる。
【0062】
また前述の第2実施形態のヒートポンプユニット32のヒートポンプサイクルを流れる作動冷媒は、二酸化炭素に限定されるものではなく、フロン等の他の冷媒であってもよい。またヒートポンプユニット32は、冷媒の圧力が臨界圧力以上となる超臨界ヒートポンプサイクルによるものであるが、これに限定されるものではなく、冷媒の圧力が臨界圧力未満のヒートポンプサイクルによるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態の給湯装置100の概略構成を示す模式図である。
【図2】排水作業の手順を示すフローチャートである。
【図3】排水処理を示すフローチャートである。
【図4】給水作業の手順を示すフローチャートである。
【図5】自動空気抜き弁12を示す断面図である。
【図6】給水時の自動空気抜き弁12を示す断面図である。
【図7】貯湯タンク2が満水時の自動空気抜き弁12を示す断面図である。
【図8】排水時の自動空気抜き弁12を示す断面図である。
【図9】第2実施形態の給湯装置100Aの概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1…給水配管
2…貯湯タンク
3…ヒータ(加熱手段)
4…給湯配管
5…減圧弁
6…逃がし弁
7…制御装置(制御手段)
8a〜8c…サーミスタ
9…操作スイッチ
10…排水スイッチ(入力手段)
11…電源開閉器
12…自動空気抜き弁
13…排水弁
16…逃がし配管
18…排水管
21…空気抜き用配管
22…浮遊弁体
23…Oリング
24…ケーシング
32…ヒートポンプユニット(加熱手段)
35…循環流路
100,100A…給湯装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱する加熱手段(3,32)と、
前記加熱手段によって加熱された温水を貯える貯湯タンク(2)と、
前記貯湯タンク内の前記温水を給湯使用側端末に供給するときに用いられる給湯配管(4)と、
前記貯湯タンク内に給水するときに用いられる給水配管(1)と、
前記貯湯タンク内の水を排水するときに用いられる排水管(18)と、
前記排水管に設けられ、開閉状態が制御される排水弁(13)と、
前記貯湯タンクの上部に接続され、前記貯湯タンク内と外方空間とを連通する空気抜き用配管(21)と、
前記空気抜き用配管に設けられ、前記貯湯タンクが満水になるまで開状態であり、前記貯湯タンクが満水になると閉状態に自動的に切り替わる空気抜き弁(12)と、
排水指令を入力するための入力手段(10)と、
前記排水指令が入力されると、前記排水弁を閉状態から開状態に制御する制御手段(7)と、を含むことを特徴とする給湯装置。
【請求項2】
時間を計時する計時手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記排水指令が与えられると、前記排水弁を閉状態から開状態に制御し、前記計時手段によって計時される前記排水弁が開状態である時間が、予め定める排水時間を経過すると、前記排水弁を開状態から閉状態に制御することを特徴とする請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記貯湯タンク内と外方空間とを連通する逃がし配管(16)と、
前記逃がし配管に設けられ、沸き上げ時の膨張水を外方空間に自動的に排出する逃がし弁(6)をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記逃がし配管は、前記貯湯タンクの下部から膨張水を排出することを特徴とする請求項3に記載の給湯装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、
熱交換部を流れる水を高温高圧の冷媒と熱交換させて加熱するヒートポンプユニット(32)と、
前記貯湯タンク内の水が前記熱交換部を通って前記貯湯タンク内に戻るように前記貯湯タンクと前記熱交換部とを連絡する循環流路(35)と、を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−78189(P2010−78189A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244843(P2008−244843)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】