説明

給湯装置

【課題】安全かつクリーンで、装置がコンパクトで軽量であり、移動が簡単で、車両への搬入搬出が容易な給湯装置を提供する。
【解決手段】被介護者宅に車両が到着したら、浴槽62と給湯装置1を車両から降ろして被介護者宅に搬入する。被介護者宅の蛇口71と給湯装置1の給水口53をホース65で接続する。被介護者宅の図示しないコンセントに給湯装置1の図示しないプラグを接続して、給湯装置1に電力を供給する。蛇口71からホース65を介して給水口53に供給される水を、ポンプ52を駆動して渦電流加熱装置4の流入口441に供給する。電動モータ51を回転し、渦電流加熱装置4によって加熱した熱湯を、給湯口58からホース69を介してシャワー63に供給し、被介護者の入浴サービスを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置に関し、特に訪問入浴サービスを行う車両に搭載して温水を供給するのに適した給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の訪問入浴サービス用車両に搭載される給湯装置は、大別して二通りがあった。第一番目は、車内に油焚き若しくはガス焚きのボイラを搭載し、入浴サービスを行う場所に赴き、車外から取り入れた水道水をボイラで加熱して温水を供給するものである。第二番目は、車内に貯湯式の電気温水器を搭載し、電気代の安い深夜の間に駐車状態で電気温水器に通電して80〜100℃の温水を作っておき、入浴サービスを行う場所に赴いて温水を取り出し、水道水と混合して所定温度の温水として供給するものである。(特許文献1、特許文献2参照)
【0003】
ボイラ式の場合には、車内に石油やガスといった燃料を積まなければならず、燃料が漏れる恐れがあって危険である。また、万が一交通事故を起こした時でも被害が大きくならないように対策を講ずる必要があり、装置コストが高くなるという欠点を有している。さらに、住宅街の道路でボイラを燃焼させるのは、騒音や煙を出すため好ましくない。
【0004】
一方、貯湯式の電気温水器を車両に搭載すると、装置が大きく重いので必然的に車両も大きくせざるを得ない。また、供給できる温水の量が限られている上に、突然の温水の需要増があった場合に、電気温水器に水道水を足して温水を作ろうとしても、すぐには所定温度の温水が得られないという不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4112132号公報
【特許文献2】特開2007−101156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、安全かつクリーンで、装置がコンパクトで軽量であり、移動が簡単で、車両への搬入搬出が容易な給湯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明の給湯装置は、ベースと、前記ベース上に取り付けられ、永久磁石を有するロータを回転して、永久磁石の磁界中に配置された導電材料の発熱により水を加熱する渦電流加熱装置と、前記ベース上に取り付けられ、給水口から供給された水を前記渦電流加熱装置に供給するポンプと、前記ポンプと渦電流加熱装置との間に接続され、前記ポンプから供給された水を濾過して鉄分を除去するフィルターと、前記渦電流加熱装置で加熱された水を供給する給湯口とを有するものであることを特徴とする。
【0008】
第2番目の発明の給湯装置は、第1番目の発明の給湯装置において、前記渦電流加熱装置は、前記ベース上に取り付けられた電動モータによって前記ロータを回転させるものであることを特徴とする。
【0009】
第3番目の発明の給湯装置は、第2番目の発明の給湯装置において、前記電動モータは、再充電可能な蓄電地の電力によって駆動されるものであることを特徴とする。
【0010】
第4番目の発明の給湯装置は、第1番目の発明の給湯装置において、前記渦電流加熱装置は、車両の駆動輪の回転力によって前記ロータを回転させるものであることを特徴とする。
【0011】
第5番目の発明の給湯装置は、第2番目から第4番目までののいずれかの発明の給湯装置において、前記ベースには車輪が取り付けられ、前記ベースを人力によって車両に搬入搬出可能なものであることを特徴とする。
【0012】
第6番目の発明の給湯装置は、第2番目の発明の給湯装置において、前記車両には前記給湯口に接続された貯湯タンクが搭載され、前記電動モータを夜間電力で回転し、前記渦電流加熱装置で加熱した水を前記貯湯タンクに貯湯するものであることを特徴とする。
【0013】
第7番目の発明の給湯装置は、第1番目の発明の給湯装置において、前記給湯口から供給するお湯の設定流量を設定し、前記設定流量から算出された指令電圧で前記ポンプを駆動することを特徴とする。
【0014】
第8番目の発明の給湯装置は、第7番目の発明の給湯装置において、前記給湯口から供給するお湯の設定温度を設定し、前記設定温度と給水口から供給された水の入口温度との温度差から加熱温度を算出し、前記加熱温度と設定流量から算出されたロータ回転数で前記ロータを回転することを特徴とする。
【0015】
第9番目の発明の給湯装置は、第8番目の発明の給湯装置において、前記給湯口から供給するお湯の出口温度を検出し、前記設定温度と出口温度との温度差からロータ回転数の補正値を算出し、前記算出された補正値に前記ロータの回転数を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の給湯装置は、ベース上に取り付けられ、永久磁石を有するロータを回転して、永久磁石の磁界中に配置された導電材料の発熱により水を加熱する渦電流加熱装置と、ベース上に取り付けられ、給水口から供給された水を前記渦電流加熱装置に供給するポンプと、ポンプと渦電流加熱装置との間に接続され、ポンプから供給された水を濾過して鉄分を除去するフィルターと、渦電流加熱装置で加熱された水を供給する給湯口とから構成される。従って、簡素な構造でコンパクトであるから、各部の故障やトラブルが発生しにくく、保守作業やランニングコストを低減させることができる。さらに、石油やガス等の燃料を使用しないため、騒音や煙を出さず、安全でクリーンである。
【0017】
また、本発明の給湯装置は、ベースには車輪が取り付けられているため、人力によって車両に簡単に搬入搬出が可能であるから、被介護者宅に簡単に搬入して水道水を加熱し、入浴サービスを行うことができる。また、本発明の給湯装置は、給湯口に接続された貯湯タンクが車両に搭載され、電動モータを夜間電力で回転してロータを回転し、渦電流加熱装置で加熱した水を貯湯タンクに貯湯することができるため、被介護者宅に到着してすぐに入浴サービスを行うことができ、経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態の給湯装置を車両に搬入する状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の給湯装置の外観を示す斜視図である。
【図3】図2の給湯装置の内部構造を示す斜視図である。
【図4】図3の渦電流加熱装置の内部構造を示す断面図である。
【図5】被介護者宅に持ち込んだ浴槽に、本発明の第1の実施の形態の給湯装置から温水を供給して、入浴サービスを実施している状態を示す概略構成図である。
【図6】(a)は図5のP部拡大図、(b)は図5のQ部拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態を示し、被介護者宅に持ち込んだ浴槽の水を給湯装置で加熱して、入浴サービスを実施している状態を示す概略構成図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態を示し、被介護者宅に浴槽と給湯装置を持ち込み、入浴サービスを実施している状態を示す概略構成図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態の給湯装置の操作盤を示す正面図である。
【図10】(a)は図9の操作盤の流量設定画面を示す正面図、(b)は図9の操作盤の温度設定画面を示す正面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の給湯装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図12】図11のフローチャートの後の制御動作を示すフローチャートである。
【図13】図12のフローチャートの後の制御動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3の実施の形態の給湯装置のロータ回転数と温度との関係を示す温度特性グラフの一例である。
【図15】本発明の第4の実施の形態を示し、車両の駆動輪の回転力によって渦電流加熱装置のロータを回転して水を加熱している状態を示す概略構成図である。
【図16】本発明の第5の実施の形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の給湯装置を車両に搬入する状態を示す斜視図、図2は本発明の第1の実施の形態の給湯装置の外観を示す斜視図である。図3は図2の給湯装置の内部構造を示す斜視図、図4は図3の渦電流加熱装置の内部構造を示す断面図である。図5は被介護者宅に持ち込んだ浴槽に、本発明の第1の実施の形態の給湯装置から温水を供給して、入浴サービスを実施している状態を示す概略構成図、図6(a)は図5のP部拡大図、図6(b)は図5のQ部拡大図である。
【0020】
図1から図3に示すように、本発明の第1の実施の形態の給湯装置1は、底部を形成する矩形板状のベース21と、ベース21の各辺から垂直に上方に伸びる側板22、23、前板24、後板25によって、密閉した箱形に形成されている。ベース21の前方側には、360度回転可能な小車輪26が2個固定され、後方側には大車輪27が2個固定され、後板25の上端両側には取っ手28が2個固定されている。
【0021】
図1に示すように、車両(軽自動車)3の後部ドア31を跳ね上げ、荷物室32の床面33と地上35との間に携帯用スロープ34を掛け渡す。取っ手28を手で持って給湯装置1を押し、携帯用スロープ34に沿って、車両3の荷物室32に、給湯装置1を人力で簡単に搬入搬出することができる。
【0022】
図3に示すように、ベース21上には、水を加熱する渦電流加熱装置4と電動モータ51が取り付けられている。渦電流加熱装置4は、ベース21上に立設された平板状のスタンド41に取り付けられている。図4に示すように、渦電流加熱装置4は、回転可能に設けられた回転軸42に固定されたロータ43と、ロータ43の外側に配置された加熱部44で構成される。
【0023】
回転軸42の右端にはプーリ421が固定され、電動モータ51の出力軸に固定されたプーリ511(図3参照)との間に、ベルト422が掛け渡され、電動モータ51によって回転軸42が回転駆動される。ロータ43は円筒状に形成されており、その外周には多数の永久磁石45が配置されている。ロータ43は継鉄からなるものであり、永久磁石45の内周側の磁路を形成している。ロータ43は中央部が空洞状に形成され、回転軸42に固定されている。回転軸42は、軸受423、424により渦電流加熱装置4に対して回転可能に支持されている。
【0024】
加熱部44は永久磁石45の外周と微少な間隙を有して配置され、永久磁石45の外周全周を取り巻くドーナツ状に形成されている。加熱部44の内部は中空状に形成されており、その空間が加熱用の水を流通させるための流通路44Bとして機能する。加熱部44の内部には、内周壁44Aに螺旋状の仕切壁44Cが形成されている。この仕切壁44Cにより、流通路44Bは加熱部44の内部に螺旋状に形成されている。
【0025】
加熱部44の内周壁44Aは、ステンレス綱、アルミニウム合金等の導電材料で形成されている。ロータ43の回転により、外周の永久磁石45による磁力線が内周壁44Aを貫通して移動するため、内周壁44Aに渦電流が発生し、この渦電流による抵抗損失等により内周壁44A自体が発熱する。内周壁44Aで発生した熱は、流通路44Bを通過する水に直接伝達され、また仕切壁44Cを介して水に伝達され、効率的に流通路44B内の水を加熱する。仕切壁44Cは熱伝導率の大きな金属材料で形成されている。
【0026】
加熱用の水は、加熱部44に形成された流入口441から加熱部44内に流入し、螺旋状の流通路44Bを通って加熱され、流出口442から渦電流加熱装置4の外に流出する。このように、加熱用の水は螺旋状の流通路44Bを通って、十分な距離を流通する間に加熱されるため、効率よく加熱することができる。
【0027】
加熱用の水は、図3に示すように、ポンプ52により給水口53から一次フィルタ54を介して吸い上げられ、温度計・流量計55、二次フィルタ56を介して渦電流加熱装置4の流入口441に供給される。渦電流加熱装置4によって十分に加熱された温水は、渦電流加熱装置4の流出口442から、温度計・流量計57、給湯口58を介して後記する浴槽またはシャワーに供給される。温度計・流量計55、温度計・流量計57の温度、流量の検出信号は、側板22に取り付けられた制御盤59に送られ、制御盤59が電動モータ51の回転数を制御する。
【0028】
一次フィルタ54及び二次フィルタ56は、ポンプ52、渦電流加熱装置4に流入する水を濾過し、ゴミや鉄分を除去する。渦電流加熱装置4の加熱部44は、永久磁石45による磁力線が貫通するため、一次フィルタ54及び二次フィルタ56によって鉄分を除去し、流通路44Bに鉄分が付着して水の流通が阻害されないようにしている。
【0029】
車両3の荷物室32には、図5に示す貯湯タンク61、蛇口付湯水混合栓64が付いた浴槽62、シャワー63が搭載されている。入浴サービスを行う前日の夜に、車両3の駐車中に、図示しない蛇口から水道水を貯湯タンク61に供給する。また、図示しないコンセントに給湯装置1の図示しないプラグを接続して、給湯装置1に電力を供給する。価格の安い夜間電力を使って電動モータ51を回転し、ポンプ52により給水口53から貯湯タンク61内の水を吸い上げて、渦電流加熱装置4の流入口441に供給する。渦電流加熱装置4によって加熱した熱湯を、給湯口58から貯湯タンク61に戻して貯湯し、85℃ほどの熱湯を、朝の業務開始前に貯湯タンク61に用意する。
【0030】
入浴サービスの当日に被介護者宅に車両が到着したら、浴槽62とシャワー63を被介護者宅に搬入する。被介護者宅の蛇口71から、ホース65で蛇口付湯水混合栓64、シャワー63に水道水が供給される。止水栓66を開いて、貯湯タンク61内の熱湯を、貯湯タンク61の給湯口611(図6参照)から蛇口付湯水混合栓64とシャワー63に供給する。シャワー63の湯水混合栓631及び蛇口付湯水混合栓64を調整して、適温の湯を吐出し、被介護者の入浴サービスを行う。
【0031】
給湯により貯湯タンク61内の熱湯が少なくなったら、入浴サービス中に止水栓67を開いて、貯湯タンク61の給水口612(図6参照)から貯湯タンク61に水道水を補給する。被介護者宅の図示しないコンセントに給湯装置1の図示しないプラグを接続して、給湯装置1に電力を供給する。電動モータ51を回転し、貯湯タンク61の加熱供給口613から、ホース68を介してポンプ52により貯湯タンク61内の水を吸い上げて、給水口53を経由して渦電流加熱装置4の流入口441に供給する。
【0032】
渦電流加熱装置4によって加熱した熱湯を、給湯口58からホース69を介して貯湯タンク61の加熱戻り口614に戻して貯湯し、貯湯タンク61に熱湯を補充する。貯湯タンク61のお湯の温度が低下した時に、電動モータ51を回転し、貯湯タンク61内の水を吸い上げて、渦電流加熱装置4によって追い焚きしてもよい。
【0033】
すなわち、本発明の第1の実施の形態の給湯装置は、渦電流により直接水を加熱するものであり、装置自体も簡素な構造でコンパクトであるから、各部の故障やトラブルが発生しにくく、保守作業やランニングコストを低減させることができる。さらに、石油やガス等の燃料を使用しないため、騒音や煙を出さず、安全でクリーンである。
【0034】
次に、第2の実施の形態の給湯装置について説明する。図7は被介護者宅に持ち込んだ浴槽の水を給湯装置で加熱して、入浴サービスを実施している状態を示す概略構成図である。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の貯湯タンク61を廃止して浴槽の水を給湯装置1で直接加熱する例である。以下の説明では、上記第1の実施の形態と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0035】
被介護者宅に車両が到着したら、浴槽62を被介護者宅に搬入する。被介護者宅の蛇口71から、ホース65で浴槽62に水道水を供給する。被介護者宅の図示しないコンセントに給湯装置1の図示しないプラグを接続して、給湯装置1に電力を供給する。電動モータ51を回転し、浴槽62の加熱供給口621から、ホース68を介してポンプ52により浴槽62内の水を吸い上げて、給水口53を経由して渦電流加熱装置4の流入口441に供給する。渦電流加熱装置4によって加熱した熱湯を、給湯口58からホース69を介して浴槽62の加熱戻り口622に戻し、浴槽62に熱湯を供給し、適度な湯温になったら、被介護者の入浴サービスを行う。
【0036】
浴槽62内の水温が変化しても、温度計・流量計55、温度計・流量計57の温度、流量の検出信号によって、電動モータ51の回転数を制御し、一定温度の熱湯を供給することができる。また、電動モータ51の回転数を制御することによって、熱湯の温度を変化させ、所望温度の熱湯を供給することができる。本発明の第2の実施の形態の給湯装置は、貯湯タンク61を省略できるので、装置がよりコンパクトになり、より小型の車両に搭載することが可能になる。
【0037】
次に、第3の実施の形態の給湯装置について説明する。図8は被介護者宅に浴槽と給湯装置を持ち込み、入浴サービスを実施している状態を示す概略構成図である。第3の実施の形態は、第1の実施の形態の貯湯タンク61を廃止し、浴槽と給湯装置を被介護者宅に持ち込み、水道の水を給湯装置1で直接加熱する例である。以下の説明では、上記実施の形態と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0038】
被介護者宅に車両が到着したら、浴槽62と給湯装置1を車両から降ろして被介護者宅に搬入する。給湯装置1は、車輪(小車輪26、大車輪27)と取っ手28が付いているため、人力で簡単に被介護者宅に搬入することができる。被介護者宅の蛇口71と給湯装置1の給水口53(図3参照)をホース65で接続する。被介護者宅の図示しないコンセントに給湯装置1の図示しないプラグを接続して、給湯装置1に電力を供給する。
【0039】
蛇口71からホース65を介して給水口53に供給される水を、ポンプ52(図3参照)を駆動して渦電流加熱装置4の流入口441に供給する。電動モータ51を回転し、渦電流加熱装置4によって加熱したお湯を、給湯口58(図3参照)からホース69を介してシャワー63に供給し、被介護者の入浴サービスを行う。
【0040】
蛇口71から供給される水道水の温度が変化しても、温度計・流量計55、温度計・流量計57の温度、流量の検出信号によって、電動モータ51の回転数を制御し、一定温度のお湯を供給することができる。また、電動モータ51の回転数を制御することによって、お湯の温度を変化させ、所望温度のお湯をシャワー63に供給することができる。
【0041】
本発明の第3の実施の形態の給湯装置は、装置がコンパクトで小型の車両に搭載することができ、車両から簡単に被介護者宅に搬入することが可能で、水道水と家庭用電源があればどこでも使用することが可能になる。この給湯装置1を一般家庭に設置し、台所、洗面所、浴槽等への給湯に使用してもよい。また、給湯装置1で加熱したお湯を貯湯タンクに貯湯し、貯湯タンクから台所、洗面所、浴槽へ給湯してもよい。この給湯装置1を大型にすれば、工事現場での給湯や浴槽、洗面所に使用することができる。
【0042】
図9は本発明の第3の実施の形態の給湯装置1の操作盤8を示す正面図である。図9に示すように、給湯装置1の操作盤8には、押しボタン式の運転スイッチ81、停止スイッチ82と、タッチパネル式の表示装置83が形成されている。図示しない電源を入れると、図示しない初期画面が表示装置83に表示される。初期画面に触れると、図9の運転画面が表示装置83に表示される。
【0043】
運転画面には、動作ランプ831、入口温度(℃)832、出口温度(℃)833、流量設定834、パラメータ設定835、動作状態836が表示される。動作ランプ831は、運転スイッチ81を入れると点灯し、停止スイッチ82を入れると消灯する。入口温度(℃)832は、入口側の温度計・流量計55(図3参照)で検出した水の入口温度を表示する。出口温度(℃)833は、出口側の温度計・流量計57(図3参照)で検出したお湯の出口温度を表示する。動作状態836は、自動運転中は「自動」、単独運転中は「単独」を表示する。
【0044】
パラメータ設定835に触れると、図10(a)の流量設定画面が表示装置83に表示される。給湯口58から供給するお湯の設定流量は、「小」と「大」の2種類に区分され、設定流量「小」は、2.0L、2.5L、3.0Lの3種類の流量を選択できる。設定流量「大」は、3.0L、3.5L、4.0Lの3種類の流量を選択できる。所定の流量、例えば設定流量「小」の2.0Lに触れて流量を選択した後、「次項目へ」837に触れると、図10(b)の温度設定画面が表示装置83に表示される。
【0045】
給湯口58から供給するお湯の設定温度は、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃の6種類の温度を選択できる。所定の温度(例えば41℃)に触れれば、希望する温度として41℃を選択することができる。図11から図13は、本発明の第3の実施の形態の給湯装置の制御動作を示すフローチャートである。
【0046】
図11に示すように、運転スイッチ81を入れると動作ランプ831が点灯し、ステップS1で、入口側の温度計・流量計55で検出した水の入口温度(例えば21℃)を取り込む。ステップS2で、図10(a)の流量設定画面で選択した設定流量2.0Lを取得する。ステップS3で、図10(b)の温度設定画面で選択した設定温度41℃を取得する。
【0047】
ステップS4で、設定温度41℃と入口温度21℃との温度差から加熱温度(20℃=41℃−21℃)を算出する。図14は本発明の第3の実施の形態の給湯装置1のロータ回転数(rpm)と温度(℃)との関係を示す温度特性グラフの一例であり、設定流量が2.0Lの場合の温度特性グラフである。図14に示すように、渦電流加熱装置4のロータ43のロータ回転数(rpm)と温度(℃)との関係は直線的である。従って、ステップS5で、図14の温度特性グラフからロータ回転数(rpm)を算出し、算出したロータ回転数(rpm)でロータ43を回転させることによって、所望温度のお湯を給湯口58から供給することができる。図14の温度特性グラフは、設定流量に応じて複数作成している。
【0048】
ステップS6で、設定流量2.0Lからポンプ52を運転する指令電圧(0V〜6V)を算出する。ステップS7で、算出した指令電圧でポンプ52を起動する。ステップS8で、入口側の温度計・流量計55、出口側の温度計・流量計57で検出した流量が最低流量の2.0L以上であれば、ステップS11で、電動モータ51(図3参照)を起動し、
ステップS5で算出したロータ回転数(rpm)でロータ43を回転させる。
【0049】
電動モータ51は三相誘導電動機であり、インバータ制御によって電動モータ51の電圧と周波数を制御して、ロータ43を所定の回転数で回転させる。入口側の温度計・流量計55、出口側の温度計・流量計57で検出した流量が、2秒経過しても最低流量の2.0L未満であれば(ステップS9)、ステップS10でエラー停止し、ポンプ52が停止する。操作盤8の表示装置83には、図示しないエラー画面が表示され、エラーの内容が表示される。
【0050】
図12に示すように、ステップS12で、出口側の温度計・流量計57で検出したお湯の出口温度が安定したら、ステップS13で、出口側の温度計・流量計57で検出したお湯の出口温度と、図10(b)の温度設定画面で選択した設定温度41℃を取得する。例えば出口温度のサンプリング周期は50msecで行う。ステップS4で算出した加熱温度(20℃=41℃−21℃)の幅に応じて、ステップS12の出口温度が安定したか否か判断するまでの判断時間を異ならせると良い。
【0051】
ステップS14で、出口側の温度計・流量計57で検出したお湯の出口温度が44℃以上であれば、お湯の温度が高く、使用に適さないので、ステップS20でエラー停止し、ポンプ52、電動モータ51が停止する。操作盤8の表示装置83には、図示しないエラー画面が表示され、エラーの内容が表示される。
【0052】
ステップS15で、出口側の温度計・流量計57で検出したお湯の出口温度と、図10(b)の温度設定画面で選択した設定温度41℃との温度差を算出する。出口側の温度計・流量計57の検出時間の遅れを補正するために、出口温度と設定温度との温度差の算出は、例えば出口温度20回分の平均値で行う。ステップS16では、ステップS15で算出した温度差と図14の温度特性グラフからロータ回転数(rpm)の補正値を算出する。ステップS17で、電動モータ51の回転数を変更し、ステップS16で算出したロータ回転数(rpm)でロータ43を回転させる。
【0053】
ステップS18で、出口側の温度計・流量計57で検出したお湯の出口温度が安定したら、ステップ19にすすむ。ステップS18で、出口温度が安定していなければ、安定するまで待機する。ステップS19で、温度補正の周期(本発明の実施の形態では2秒に設定)になったか否か判断し、YESなら、ステップS13に戻る。ステップS19の判定がNOなら、図13に示すように、ステップS21で、最初に設定した設定流量2.0Lが変更されたか否か判断し、変更されていなければ、ステップS19に戻る。設定流量2.0Lが変更されていれば、ステップS22で、変更された設定流量を取得する。
【0054】
ステップS23で、変更された設定流量に対応する温度特性グラフ(図示せず)からロータ回転数(rpm)を算出し、ステップS24で、電動モータ51の回転数を変更して、ステップS23で算出したロータ回転数(rpm)でロータ43を回転させる。ステップS25で、出口側の温度計・流量計57で検出したお湯の出口温度が安定したら、ステップS26にすすむ。ステップS25で、出口温度が安定していなければ、安定するまで待機する。ステップS26で、電動モータ51が過負荷か否か判断し、NOなら、ステップS19に戻る。ステップS26の判定がYESなら、ステップS27でエラー停止し、ポンプ52、電動モータ51が停止する。操作盤8の表示装置83には、図示しないエラー画面が表示され、エラーの内容が表示される。
【0055】
次に、本発明の第4の実施の形態の給湯装置について説明する。図15は車両の駆動輪の回転力によって渦電流加熱装置のロータを回転して水を加熱している状態を示す概略構成図である。第4の実施の形態は、車両の駆動輪の回転力によって渦電流加熱装置のロータを回転して水を加熱する例である。以下の説明では、上記実施の形態と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0056】
図15に示すように、地上35に置かれた矩形板状のフレーム46の上面には、左右方向に所定間隔を空けて、ローラ461、462が回転自在に軸支されている。フレーム46の前部(図15の左側)の地上35には、傾斜案内部47が置かれている。傾斜案内部47には、前下がりの傾斜面が形成されていて、車両3の駆動輪(後輪)36を前側のローラ461に案内する。後側のローラ462の端部(図15の紙面に直交する方向の手前側)には、ローラ462の回転を伝達するプーリ48が固定されている。
【0057】
このように構成されたフレーム46、傾斜案内部47を車両3に搭載し、被介護者宅に車両3が到着したら、フレーム46、傾斜案内部47、給湯装置1を車両3から降ろす。図示はしないが、浴槽を被介護者宅に搬入し、被介護者宅の蛇口から、ホースで浴槽に水道水を供給する。フレーム46、傾斜案内部47を地上35に置き、給湯装置1の渦電流加熱装置4のプーリ421とローラ462のプーリ48との間に、ベルト422を掛け渡す。
【0058】
駆動輪36が傾斜案内部47の前方から乗り上げるように車両3を後退させる。駆動輪36がローラ461、462の間に納まったらエンジンを停止し、前輪37に楔状の車止め38、38をかける。
【0059】
再びエンジンをかけて、ローラ461、461上に載せられた駆動輪36を回転させる。駆動輪36の回転がローラ462に伝達され、ローラ462が回転することにより、ローラ462に固定されたプーリ48が回転し、プーリ48、プーリ421にかけられたベルト422を介して、渦電流加熱装置4のロータ43(図4参照)を回転させる。実施例2と同様に、浴槽の水をホースで吸い上げて、渦電流加熱装置4によって加熱し、加熱した熱湯を、浴槽に供給して被介護者の入浴サービスを行う。
【0060】
本発明の第4の実施の形態の給湯装置は、渦電流加熱装置4による加熱に被介護者宅の家庭用の電源を使用しない。一般の家庭用の電源は100V、20Aであって、渦電流加熱装置4による加熱に使用すると、十分な湯量や湯温が得られない場合がある。200Vの電源が引かれている家庭では問題が無い。発電機を車両に搭載する方法も有るが、補助ガソリンも搭載する必要があり、消防法上許可されない。本発明の第4の実施の形態の給湯装置は、200Vの電源が引かれていない家庭で、車両に搭載可能な簡単な装置で、十分な湯量や湯温を得ることができる。
【0061】
次に、本発明の第5の実施の形態の給湯装置について説明する。図16は本発明の第5の実施の形態を示すブロック図である。第5の実施の形態は、再充電可能な蓄電地の電力によって電動モータを回転し、水を加熱する例である。以下の説明では、上記実施の形態と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。
【0062】
図16に示すように、給湯装置1の図示しないベース21には、主電源としての蓄電池85が設けられており、この蓄電池85からの電力供給を受けて電動モータ51が駆動される。電動モータ51は三相誘導電動機である。蓄電池85は、電力を蓄える再充電可能な直流電源であり、たとえば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池等の二次電池や、大容量のキャパシタ等である。また、電動モータ51にはインバータ84が接続されており、このインバータ84により蓄電池85からの直流電流が三相交流電流に変換されるとともに、電動モータ51の出力トルク及び回転数が制御される。
【0063】
さらに、インバータ84にはコントローラ86が接続されており、このコントローラ86により電動モータ51の出力トルクが設定されるとともに、この出力トルク指令値等の信号がインバータ84に出力されるようになっている。これにより、インバータ84の作動が制御されて、電動モータ51の出力トルクや回転数が制御されるようになっている。
【0064】
入浴サービスを行う前日の夜に、車両3の駐車中に、価格の安い夜間電力を使って蓄電池85に充電する。すなわち、蓄電池85に充電器87のケーブル871を接続し、図示しない外部電源のコンセントに充電器87のプラグ872を接続する。充電器87によって、外部電源から入力された交流電圧を直流電圧に変換することで、蓄電池85への充電に適した充電用電力とし、この充電用電力を蓄電池85へ出力することで、蓄電池85の充電を行なう。
【0065】
入浴サービスの当日に被介護者宅に車両が到着したら、浴槽62と給湯装置1を車両から降ろして被介護者宅に搬入する。蓄電池85からインバータ84を介して電動モータ51に電力を供給し、電動モータ51を回転する。電動モータ51の回転が、プーリ511、ベルト422、プーリ421を介して渦電流加熱装置4に伝達され、渦電流加熱装置4によって加熱した熱湯を、浴槽62に供給し、適度な湯温になったら、被介護者の入浴サービスを行う。
【0066】
本発明の第5の実施の形態の給湯装置では、蓄電池85、インバータ84が、給湯装置1のベース21に取り付けられているが、車両3に搭載してもよい。また、200Vの電源のコンセントに接続して電動モータ51を回転する仕様と、蓄電池85の電力で電動モータ51を回転する仕様を、選択的に使用できるようにしてもよい。本発明の第5の実施の形態の給湯装置は、渦電流加熱装置4による加熱に被介護者宅の家庭用の電源を使用しないので、200Vの電源が引かれていない家庭で、車両に搭載可能な簡単な装置で、十分な湯量や湯温を得ることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…給湯装置
21…ベース
22、23…側板
24…前板
25…後板
26…小車輪
27…大車輪
28…取っ手
3…車両(軽自動車)
31…後部ドア
32…荷物室
33…床面
34…携帯用スロープ
35…地上
36…駆動輪(後輪)
37…前輪
38…車止め
4…渦電流加熱装置
41…スタンド
42…回転軸
421…プーリ
422…ベルト
423、424…軸受
43…ロータ
44…加熱部
44A…内周壁
44B…流通路
44C…仕切壁
441…流入口
442…流出口
45…永久磁石
46…フレーム
461、462…ローラ
47…傾斜案内部
48…プーリ
51…電動モータ
511…プーリ
52…ポンプ
53…給水口
54…一次フィルタ
55…温度計・流量計
56…二次フィルタ
57…温度計・流量計
58…給湯口
59…制御盤
61…貯湯タンク
611…給湯口
612…給水口
613,621…加熱供給口
614,622…加熱戻り口
62…浴槽
63…シャワー
631…湯水混合栓
64…蛇口付湯水混合栓
65…ホース
66…止水栓
67…止水栓
68、69…ホース
71…蛇口
8…操作盤
81…運転スイッチ
82…停止スイッチ
83…表示装置
831…動作ランプ
832…入口温度(℃)
833…出口温度(℃)
834…流量設定
835…パラメータ設定
836…動作状態
837…次項目へ
84…インバータ
85…蓄電池
86…コントローラ
87…充電器
871…ケーブル
872…プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベース上に取り付けられ、永久磁石を有するロータを回転して、永久磁石の磁界中に配置された導電材料の発熱により水を加熱する渦電流加熱装置と、
前記ベース上に取り付けられ、給水口から供給された水を前記渦電流加熱装置に供給するポンプと、
前記ポンプと渦電流加熱装置との間に接続され、前記ポンプから供給された水を濾過して鉄分を除去するフィルターと、
前記渦電流加熱装置で加熱された水を供給する給湯口と
を有するものである給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載された給湯装置において、
前記渦電流加熱装置は、前記ベース上に取り付けられた電動モータによって前記ロータを回転させるものであること
を特徴とする給湯装置。
【請求項3】
請求項2に記載された給湯装置において、
前記電動モータは、再充電可能な蓄電地の電力によって駆動されるものであること
を特徴とする給湯装置。
【請求項4】
請求項1に記載された給湯装置において、
前記渦電流加熱装置は、車両の駆動輪の回転力によって前記ロータを回転させるものであること
を特徴とする給湯装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれかに記載された給湯装置において、
前記ベースには車輪が取り付けられ、前記ベースを人力によって車両に搬入搬出可能なものであること
を特徴とする給湯装置。
【請求項6】
請求項2に記載された給湯装置において、
前記車両には前記給湯口に接続された貯湯タンクが搭載され、
前記電動モータを夜間電力で回転し、前記渦電流加熱装置で加熱した水を前記貯湯タンクに貯湯するものであること
を特徴とする給湯装置。
【請求項7】
請求項1に記載された給湯装置において、
前記給湯口から供給するお湯の設定流量を設定し、
前記設定流量から算出された指令電圧で前記ポンプを駆動すること
を特徴とする給湯装置。
【請求項8】
請求項7に記載された給湯装置において、
前記給湯口から供給するお湯の設定温度を設定し、
前記設定温度と給水口から供給された水の入口温度との温度差から加熱温度を算出し、
前記加熱温度と設定流量から算出されたロータ回転数で前記ロータを回転すること
を特徴とする給湯装置。
【請求項9】
請求項8に記載された給湯装置において、
前記給湯口から供給するお湯の出口温度を検出し、
前記設定温度と出口温度との温度差からロータ回転数の補正値を算出し、
前記算出された補正値に前記ロータの回転数を変更すること
を特徴とする給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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