説明

給糸ボビン供給装置及び給糸ボビン供給装置の制御方法

【課題】箱状体内の給糸ボビンを確実に少量ずつ供給できる給糸ボビン供給装置を提供する。
【解決手段】給糸ボビン供給装置は、ワゴンと、シリンダと、搬送コンベアと、ボビンセンサと、投入制御部と、を備える。ワゴンは、上方が開放されており、給糸ボビンを収容することができる。シリンダは、ワゴンを傾けるために駆動される。搬送コンベアは、シリンダによって傾けられたワゴンから供給された給糸ボビンを搬送する。ボビンセンサは、搬送コンベアに供給された給糸ボビンの量が規定供給量を満たすか否かを確認する。投入制御部は、シリンダを制御する。投入制御部は、シリンダを駆動してワゴンを規定傾斜量傾け、その状態でワゴンを規定静止時間静止させた後に、前記搬送部の給糸ボビンの量が前記規定供給量を満たすか否かをボビンセンサで確認し、給糸ボビンの量が前記規定供給量に満たない場合にはシリンダを駆動してワゴンを更に傾けるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、糸が巻かれた給糸ボビンを自動ワインダに供給するための給糸ボビン供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、精紡機で紡績された糸を巻いた給糸ボビンを自動ワインダのそれぞれのワインダユニットに供給するために、当該自動ワインダに備えられた給糸ボビン供給装置を開示する。この供給装置は、前記給糸ボビンが内部にばら積みされたワゴン(箱状体)を荷あけ装置で反転して傾けることで、ワゴン内の給糸ボビンをコンベア上に段階的に荷あけする構成になっている。こうしてコンベア上に供給された給糸ボビンは、当該コンベアの駆動により給糸ボビンの積み山を切り崩しながら、下流側の振動コンベアへ供給される。振動コンベアは給糸ボビンを1個ずつ分離しながら搬送して向き判別部に供給し、向き判別部は給糸ボビンの向きを判別する。その後、給糸ボビンは整列シュートに投下され、給糸ボビンをワインダユニットへ送るためのトレイのペグに上方から供給される。
【0003】
特許文献1において、給糸ボビン供給装置は、ワゴンをセットした可動フレームを駆動するためのチェーンを備える。チェーンにはドックが設けられるとともに、給糸ボビン供給装置は、前記ドックが接触可能な3段のリミットスイッチを備えている。この構成で、チェーンを駆動してワゴンを傾ける際に、ドックが3段のリミットスイッチにそれぞれ接触する毎にチェーンの駆動をいったん停止して、ワゴンの角度位置を保持した後、コンベア上に給糸ボビンが存在しないことをセンサにより検知するのを待ってチェーンの駆動を再開する。この制御により、ワゴンを段階的に漸次倒し、ワゴン内の給糸ボビンをコンベアに少しずつ荷あけできるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−133015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワゴン内に給糸ボビンが十分に残っていても、当該給糸ボビンのワゴン内での状態等によっては、荷あけのためにワゴンを傾けた状態で静止させた場合でも給糸ボビンがワゴンから直ぐには出てこず、荷あけ(即ち、給糸ボビンの実際の投入)までにある程度の時間を要する場合がある。この点、上記特許文献1の構成は、ワゴンを段階的に傾けることができるものの、給糸ボビンが即時に投入されない場合にはワゴンの傾斜を次段階に増加する制御が直ちに行われ、その結果、ワゴンから過剰な量の給糸ボビンがコンベア上に供給されてしまうことがあった。これにより、コンベアや振動コンベアが給糸ボビンで溢れて供給作業の妨げとなったり、振動コンベア等の破損の原因となることがあり、改善が望まれていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、箱状体内の給糸ボビンを確実に少量ずつ供給することができる給糸ボビン供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の給糸ボビン供給装置が提供される。即ち、この給糸ボビン供給装置は、箱状体と、アクチュエータと、搬送部と、ボビン量確認部と、アクチュエータ制御部と、を備える。前記箱状体は、上方が開放されており、給糸ボビンを収容する。前記アクチュエータは、前記箱状体を傾けるために駆動される。前記搬送部は、前記アクチュエータによって傾けられた前記箱状体から供給された給糸ボビンを搬送する。前記ボビン量確認部は、前記搬送部に供給された給糸ボビンの量が規定供給量を満たすか否かを確認する。前記アクチュエータ制御部は、前記アクチュエータを制御する。前記アクチュエータ制御部は、前記アクチュエータを駆動して前記箱状体を規定傾斜量傾け、その状態で前記箱状体を規定静止時間静止させた後に、前記搬送部の給糸ボビンの量が前記規定供給量を満たすか否かを前記ボビン量確認部によって確認し、前記給糸ボビンの量が前記規定供給量に満たない場合には前記アクチュエータを駆動して前記箱状体を更に傾けるように制御する。
【0009】
これにより、搬送部へ給糸ボビンを段階的に少量ずつ投入することができる。また、箱状体を規定傾斜量傾けてから給糸ボビンが搬送部へ投入されるまでにある程度の時間が掛かった場合でも、投入が規定静止時間に間に合えば箱状体の傾きが増加することがない。従って、箱状体の傾きが必要以上にきつくなって過剰の給糸ボビンが一度に搬送部に投入されることを防止できるので、搬送部でのスムーズな搬送を実現できる。
【0010】
前記の給糸ボビン供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記搬送部は、前記箱状体から供給された給糸ボビンを受けるボビン受け部を備える。前記ボビン量確認部は、前記ボビン受け部に供給された給糸ボビンの量が前記規定供給量を満たすか否かを確認する。
【0011】
これにより、箱状体から搬送部に供給されてボビン受け部で受けられた給糸ボビンの量を調べることで、給糸ボビンの量が規定供給量を満たすか否かを簡素な構成で確認することができる。
【0012】
前記の給糸ボビン供給装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ボビン量確認部は、前記搬送部の前記ボビン受け部に設けられて前記給糸ボビンの有無を検知するセンサである。前記センサの取付高さに応じて前記規定供給量が決定される。
【0013】
これにより、センサの取付高さを変更することで、規定供給量を簡単に調整することができる。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、以下のような給糸ボビン供給装置の制御方法が提供される。即ち、前記給糸ボビン供給装置は、アクチュエータと、搬送部と、ボビン量確認部と、を備える。前記アクチュエータは、上方が開放されるとともに給糸ボビンを収容する箱状体を傾けるために駆動される。前記搬送部は、傾けられた前記箱状体から出た給糸ボビンを搬送する。前記ボビン量確認部は、前記箱状体から出て前記搬送部に供給された給糸ボビンの量が規定供給量を満たすか否かを確認する。前記制御方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程と、を含む。前記第1工程では、前記アクチュエータを駆動して前記箱状体を傾ける。前記第2工程では、前記箱状体を傾けた状態で規定静止時間静止させる。前記第3工程では、前記ボビン量確認部で給糸ボビンの量を確認する。前記第4工程では、前記ボビン量確認部による確認の結果、前記給糸ボビンが前記規定供給量に満たない場合に、前記アクチュエータを駆動して前記箱状体を更に傾ける。
【0015】
これにより、搬送部へ給糸ボビンを段階的に少量ずつ投入することができる。また、箱状体を傾けてから給糸ボビンが搬送部へ投入されるまでにある程度の時間が掛かった場合でも、規定静止時間に間に合えば箱状体の傾きが増加することがない。従って、箱状体の傾きが必要以上にきつくなって過剰の給糸ボビンが一度に搬送部に投入されることを防止できるので、搬送部でのスムーズな搬送を実現できる。
【0016】
前記の給糸ボビン供給装置の制御方法においては、前記第4工程の実行時に前記アクチュエータの駆動位置が上昇端に達している場合には、当該第4工程の実行を停止することが好ましい。
【0017】
これにより、限度を超えて箱状体を傾けようとする制御が防止されるので、制御の効率化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る給糸ボビン供給装置の全体的な構成を示す斜視図。
【図2】投入装置の構成を示す側面図及び機能ブロック図。
【図3】投入装置にワゴンをセットする前の状態を示す側面図。
【図4】投入装置にワゴンをセットした状態を示す側面図。
【図5】投入装置でワゴンを持ち上げ、給糸ボビンを搬送コンベアへ投入する様子を示す側面図。
【図6】投入制御部で行われる処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る給糸ボビン供給装置1の全体的な構成を示す斜視図である。図2は、投入装置3の構成を示す側面図及び機能ブロック図である。図3は、投入装置3にワゴン60をセットする前の状態を示す側面図である。図4は、投入装置3にワゴン60をセットした状態を示す側面図である。図5は、投入装置3がワゴン60を持ち上げ、給糸ボビン10を搬送コンベア4へ投入する様子を示す側面図である。
【0020】
図1に示す給糸ボビン供給装置1は、自動ワインダを構成する複数のワインダユニットに対して、芯管に糸を巻いた給糸ボビン10を供給するものである。この給糸ボビン供給装置1は、投入装置(反転機)3と、搬送コンベア(搬送部)4と、分離搬送コンベア5と、向き判別装置6と、ボビンシュート7と、を備える。
【0021】
投入装置3は、箱状体であるワゴン60を装着可能な可動フレーム31を備える。ワゴン60は、上方を開放させた直方体形状の箱の底面に車輪を備えて構成されている。図1では1つしか図示されていないが、ワゴン60の内部には多数の給糸ボビン10が収容されている。
【0022】
可動フレーム31は、ワゴン60の底面を支持することができる2本のフォーク32と、ワゴン60の両側面をガイドするガイド板33と、を備える。また、可動フレーム31は、支点を中心として回転可能に支持されている。この可動フレーム31には、アクチュエータとしてのシリンダ34が連結されている(図2を参照)。シリンダ34は復動式の油圧シリンダとして構成され、このシリンダ34が伸縮駆動することにより、可動フレーム31を回転させることができる。
【0023】
図2に示すように、給糸ボビン供給装置1は、シリンダ34を駆動して可動フレーム31の回転を制御する投入制御部(アクチュエータ制御部)90を備えている。この投入制御部90はマイクロコンピュータとして構成され、図示しないCPU、ROM、RAM等を備えている。投入制御部90は、作動油の供給を切り換えるための図示しない電磁弁を介して、シリンダ34の伸縮を制御する。
【0024】
図2に示すように、可動フレーム31の適宜の位置には、センシングレバー35が回転可能に支持されている。このセンシングレバー35の基部には、当該センシングレバー35の回転を検出するセットセンサ36が配置されている。このセットセンサ36は、投入制御部90に電気的に接続される。
【0025】
センシングレバー35は、図示しない付勢バネの弾性力によって斜め下方に突出した姿勢とされるが(図3を参照)、ワゴン60を可動フレーム31に取り付けると、ワゴン60によってセンシングレバー35が図4のように押され、このセンシングレバー35の回転をセットセンサ36が検出する。これにより、投入制御部90は、投入装置3へのワゴン60のセットを検出することができる。
【0026】
給糸ボビン供給装置1の正面側の適宜位置には、操作パネル37が設けられる。この操作パネル37には、可動フレーム31を上昇させるための上昇スイッチ38が配置されている。上昇スイッチ38はランプを内蔵した押しボタンスイッチとして構成されており、上昇スイッチ38自体を光らせることができる。また、上昇スイッチ38は投入制御部90に電気的に接続されており、投入制御部90は、上昇スイッチ38の操作を検出できるほか、当該上昇スイッチ38の点灯、消灯あるいは点滅を制御することができる。
【0027】
図1及び図2に示す搬送コンベア4は、投入装置3と分離搬送コンベア5とを接続するように設けられている。この搬送コンベア4は振動式のコンベアとして構成されており、細長く形成された搬送面41を振動させるための振動モータ42を備えている。この構成で、振動モータ42を駆動して搬送面41を振動させることにより、投入装置3から搬送コンベア4の搬送方向上流側に投入された給糸ボビン10を、下流側の分離搬送コンベア5に搬送することができる。
【0028】
搬送面41の両側の側部には、給糸ボビン10が搬送面41から落下しないように案内する細長いガイド部44が、搬送面41の高さから上方に突出するように設けられている。このガイド部44と、前記搬送面41とで、ワゴン60から供給された給糸ボビン10を受けるボビン受け部45が構成される。
【0029】
搬送コンベア4の上流側の端部において、前記ボビン受け部45(具体的には、ガイド部44)には、給糸ボビン10の有無を検出可能なボビンセンサ(ボビン量確認部)43が配置されている。このボビンセンサ43は、投光部と受光部とを有する非接触式のセンサとして構成されている。投光部及び受光部は、図示しない固定構造を介して支持されており、その取付高さを適宜変更することができるようになっている。この固定構造の例としては、ボルト及びナットと、上下方向に長い長孔と、からなる構造を挙げることができるが、これに限定されない。詳細は後述するが、ボビンセンサ43は、規定供給量を超える給糸ボビン10がボビン受け部45に供給されることを防止するために、ボビン受け部45上の給糸ボビン10を常に確認している。
【0030】
図1に示す分離搬送コンベア5は、搬送コンベア4と同様に振動式のコンベアとして構成されている。この分離搬送コンベア5は、ボウル状に形成されたフィーダボウル51と、フィーダボウル51を振動させるためのソレノイド52と、を備えている。この構成で、ソレノイド52を駆動してフィーダボウル51を振動させることにより、搬送コンベア4からフィーダボウル51内に投入された給糸ボビン10を、1つずつ分離しつつボビン搬送方向下流側の向き判別装置6に供給することができる。なお、このソレノイド52の代わりにモータを用いて分離搬送コンベア5を駆動する構成にしても良い。
【0031】
向き判別装置6は、給糸ボビン10の向きを判別するための図示しない方向検出センサと、給糸ボビン10の向きを変更するための図示しない方向変更レバーと、を備えている。この向き判別装置6は、供給された給糸ボビン10の向きを方向検出センサで検出すると、必要に応じて方向変更レバーを駆動することで給糸ボビン10の向きを一定に揃え、下流側のボビンシュート7に落下させて供給する。
【0032】
ボビンシュート7は、向き判別装置6から供給された給糸ボビン10を、給糸ボビン10を搬送するためのトレイ11のペッグに給糸ボビン10の芯菅が差し込まれるようにセットする。こうしてトレイ11に装着された給糸ボビン10は、自動ワインダにおいて配置される複数のワインダユニットへ向けてトレイ11とともに搬送される。
【0033】
次に、本実施形態の投入制御部90における給糸ボビン10の投入制御について、図6のフローチャートを中心に参照しながら説明する。図6は、投入制御部90で行われる処理を示すフローチャートである。なお、図6の処理が開始された時点において、可動フレーム31は図3のように下降した状態であるものとする。
【0034】
図6のフローが開始されると、投入制御部90は、投入装置3にワゴン60がセットされたか否かを、セットセンサ36の状態を調べることにより判断する(S101)。ワゴン60がセットされていない場合、ワゴン60がセットされるまで待機する。
【0035】
S101の判断で、ワゴン60が図4のように投入装置3にセットされていると判断された場合、投入制御部90は、上昇スイッチ38に内蔵されているランプを点滅させる(S102、図4も併せて参照)。これにより、オペレータは、給糸ボビン10を搬送コンベア4側へ投入可能になったことを、上昇スイッチ38の状態を目で見ることにより確認することができる。その後、投入制御部90は、上昇スイッチ38がオペレータによって押されるまで待機する(S103)。
【0036】
オペレータが上昇スイッチ38を押すと、投入制御部90はシリンダ34を伸ばし、可動フレーム31とともにワゴン60を上昇させ(S104)、そして、ワゴン60の可動開始から規定時間経過した後に(S105)、可動フレーム31の上昇を停止し、ワゴン60を停止させる(S106)。可動フレーム31が規定時間だけ上昇した状態(即ち、規定傾斜量だけ傾けられた状態)が図5の実線で示されており、この状態でワゴン60内の給糸ボビン10が重力で斜面を転がり落ちて、搬送コンベア4の上流側端部に供給される。ただし、S105で示す可動フレーム31の上昇動作中において、搬送コンベア4に規定供給量以上の給糸ボビン10が供給されているか否かはボビンセンサ43によって常時監視されており、規定時間が経過する前であっても、ワゴン60から搬送コンベア4に十分な量の給糸ボビン10が供給されてボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知した場合は、可動フレーム31の上昇が中止される。これにより、給糸ボビン10の過剰供給を防止することができる。なお、上記した給糸ボビン10の規定供給量については、S107のところで詳しく説明する。
【0037】
その後、投入制御部90は、可動フレーム31を、上昇を停止させた状態で規定時間待機させる(S106)。なお、以下の説明では、このように可動フレーム31を静止させておく時間として予め定められた時間を規定静止時間と呼ぶことがある。この規定静止時間は任意に定めることができるが、ワゴン60の内部の給糸ボビン10が現在の傾斜角度で崩れ落ちた後、給糸ボビン10の崩れが収まり、ワゴン60内の給糸ボビン10の移動がなくなる状態になるまでの時間を考慮して規定することが好ましい。具体例としては、1秒以上3秒以下、好ましくは2秒とすることが考えられる。
【0038】
次に、投入制御部90は、搬送コンベア4の上流側端部に設置されているボビンセンサ43の状態を調べ、当該ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知しているかを判断する(S107)。即ち、ワゴン60内の給糸ボビン10の残量が最初から少ない場合は、図5の実線に示す程度の緩い傾斜では、給糸ボビン10が搬送コンベア4へ実際には全く投入されなかったり、あるいは投入量が不十分になってしまうことが考えられる。そこで、本実施形態では、実際に給糸ボビン10が十分な量だけ供給された状態か否かをボビンセンサ43で検出するようにしている。
【0039】
具体的には、搬送面41からある程度高い位置に設置されたボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知した場合、搬送面41上に、複数の給糸ボビン10によりなる少なくともある程度の大きさの積み山が形成されていることになる。従って、この場合は、投入制御部90は、搬送コンベア4(ボビン受け部45)に供給された給糸ボビン10の量が規定供給量を満たしていると判断する。一方、ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知しない場合は、投入制御部90は、搬送コンベア4に供給された給糸ボビン10の量が規定供給量未満であると判断する。従って、ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検出しているか否かを調べることは、搬送コンベア4(ボビン受け部45)に供給された給糸ボビン10の量が、予め決められた供給量(規定供給量)以上であるか否かを確認することに相当する。なお、この規定供給量は、ボビンセンサ43の取付高さを変更することで適宜調整することができる。
【0040】
S107の判断の結果、ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知した場合は、既に十分な量の給糸ボビン10が搬送コンベア4(ボビン受け部45)に供給されていることを意味する。従って、投入制御部90は、給糸ボビン10が搬送コンベア4により下流側へ搬送され、ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知しなくなるまで(言い換えれば、ボビン受け部45上の給糸ボビン10の量が規定供給量を下回るまで)可動フレーム31を待機させる。
【0041】
S107の判断の結果、ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知していない場合は、給糸ボビン10の供給量が不十分であるので、投入制御部90は可動フレーム31の上昇を開始させる(S108)。この可動フレーム31の上昇は、S105と同様に、規定時間が経過するまで、又は、ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知するまで継続される(S109)。これにより、ワゴン60は例えば図5の鎖線の状態となるように上昇して、ワゴン60の内部に留まっていた給糸ボビン10について、搬送コンベア4への落下(投入)が促される。続いて、投入制御部90は、この状態で可動フレーム31を静止させ、規定時間(前記の規定静止時間)だけ待機させる(S110)。
【0042】
その後、投入制御部90は再びボビンセンサ43の状態を調べ、当該ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知しているかを判断する(S111)。ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知している場合は、投入制御部90はS111の処理に戻り、搬送コンベア4による給糸ボビン10の搬送によって給糸ボビン10がボビンセンサ43で検知されなくなるまで待機する。
【0043】
一方で、S111の判断の結果、ボビンセンサ43が給糸ボビン10を検知していない場合は、ワゴン60を更に傾斜させる必要があることになる。従って、投入制御部90は、現在の可動フレーム31が、当該可動フレーム31の可動ストロークの上昇端に位置しているか否かを、適宜のセンサにより判断する(S112)。可動フレーム31が上昇端に位置していなければ、投入制御部90はS108の処理に戻り、可動フレーム31を上昇させて、上記の処理を繰り返す。可動フレーム31が既に上昇端である場合は、可動フレーム31を更に上昇させることはできないので、投入制御部90はランプ等の適宜の方法で投入完了をオペレータに通知して、処理を停止する(S113)。
【0044】
以上のフローにより、投入装置3では、図5のようにワゴン60を持ち上げて横倒し状に傾け、この状態で静止させ(S104〜S106)、その後、ボビンセンサ43で給糸ボビン10を検知できない場合(搬送コンベア4の搬送により給糸ボビン10が検知できなくなった場合を含む)にはワゴン60の傾きを更にきつくして静止させる制御が繰り返される(S108〜S112のループ)。これにより、搬送コンベア4へ給糸ボビン10を段階的に少量ずつ投入することができる。
【0045】
なお、ワゴン60内に十分な量の給糸ボビン10が残っていても、当該給糸ボビン10の状況によっては、持ち上げられたワゴン60から給糸ボビン10が転がり出てくるのに時間を要し、ある程度時間が経過してから搬送コンベア4へ投入されてボビンセンサ43で検出可能になる現象が発生することがある。この現象は、特に、ワゴン60を上昇させ始めた当初の状態(傾斜が緩い状態)で発生し易い。しかしながら、本実施形態では、ボビンセンサ43での給糸ボビン10の検出の前には、可動フレーム31を静止させて規定時間待機させる処理が行われる(S106、S110)。従って、給糸ボビン10がワゴン60から転がり出てくるのをある程度待ってからボビンセンサ43で給糸ボビン10の有無が調べられるので、ワゴン60の傾斜のつけ過ぎによる給糸ボビン10の過剰な投入を防止することができる。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の給糸ボビン供給装置1は、ワゴン60と、シリンダ34と、搬送コンベア4と、ボビンセンサ43と、投入制御部90と、を備える。ワゴン60は、上方が開放されており、給糸ボビン10を収容する。シリンダ34は、ワゴン60を傾けるために駆動される。搬送コンベア4は、シリンダ34によって傾けられたワゴン60から供給された給糸ボビン10を搬送する。ボビンセンサ43は、搬送コンベア4に供給された給糸ボビン10の量が規定供給量を満たすか否かを常に確認する。投入制御部90は、シリンダ34を制御する。投入制御部90は、シリンダ34を駆動して(S104/S108)、ワゴン60を規定傾斜量傾け(S105/S109)、その状態でワゴン60を規定静止時間静止させた後に(S106/S110)、搬送コンベア4の給糸ボビン10の量が規定供給量を満たすか否かを確認し(S107/S111)、給糸ボビン10の量が規定供給量に満たない場合にはシリンダ34を駆動してワゴン60を更に傾けるように制御する(S108〜S109)。
【0047】
これにより、搬送コンベア4へ給糸ボビン10を段階的に少量ずつ投入することができる。また、ワゴン60を傾けてから給糸ボビン10が搬送コンベア4へ投入されるまでにある程度の時間が掛かった場合でも、投入が規定静止時間に間に合う限り、ワゴン60の傾きが増加することがない。従って、ワゴン60の傾きが必要以上にきつくなって過剰の給糸ボビン10が一度に搬送コンベア4に投入されることを防止できるので、搬送コンベア4でのスムーズな搬送を実現でき、かつ給糸ボビン10の投入による搬送コンベア4のダメージを軽減することができる。
【0048】
また、本実施形態の給糸ボビン供給装置1において、搬送コンベア4は、ワゴン60から供給された給糸ボビン10を受けるボビン受け部45を備える。ボビンセンサ43は、ボビン受け部45に供給された給糸ボビン10の量が前記規定供給量を満たすか否かを確認する。
【0049】
これにより、ワゴン60から搬送コンベア4に供給されてボビン受け部45で受けられた給糸ボビン10の量を調べることで、給糸ボビン10の量が規定供給量を満たすか否かを簡素な構成で確認することができる。
【0050】
また、本実施形態の給糸ボビン供給装置1において、ボビンセンサ43は、搬送コンベア4のボビン受け部45(前記ガイド部44)に設けられて給糸ボビン10の有無を検知するセンサとして構成される。ボビンセンサ43の取付高さに応じて規定供給量が決定される。
【0051】
これにより、ボビンセンサ43の取付高さを変更することで、規定供給量を簡単に調整することができる。
【0052】
また、本実施形態の給糸ボビン供給装置1は、シリンダ34と、搬送コンベア4と、ボビンセンサ43と、を備える。シリンダ34は、上方が開放されるとともに給糸ボビンを収容するワゴン60を傾けるために駆動される。搬送コンベア4は、傾けられたワゴン60から出た給糸ボビン10を搬送する。ボビンセンサ43は、ワゴン60から出て搬送コンベア4に供給された給糸ボビン10の量が規定供給量を満たすか否かを確認する。そして、給糸ボビン供給装置1は、以下のように制御される。即ち、第1工程では、シリンダ34を駆動してワゴン60を傾ける(S104〜S105/S108〜S109)。第2工程では、ワゴン60を傾けた状態で規定静止時間静止させる(S106、S110)。第3工程では、ボビンセンサ43で給糸ボビン10の量を確認する(S107/S111)。第4工程では、ボビンセンサ43による確認の結果、給糸ボビン10が前記規定供給量に満たない場合に、シリンダ34を駆動してワゴン60を更に傾ける(S108〜S109)。
【0053】
これにより、搬送コンベア4へ給糸ボビン10を段階的に少量ずつ投入することができる。また、ワゴン60を傾けてから給糸ボビン10が搬送コンベア4へ投入されるまでにある程度の時間が掛かった場合でも、規定静止時間に間に合う限り、ワゴン60の傾きが増加することがない。従って、ワゴン60の傾きが必要以上にきつくなって過剰の給糸ボビン10が一度に搬送コンベア4に投入されることを防止できるので、搬送コンベア4でのスムーズな搬送を実現できる。
【0054】
また、本実施形態では、ボビンセンサ43による確認の結果、給糸ボビン10が前記規定供給量に満たない場合であっても、S112及びS113で示すように、シリンダ34の駆動位置が上昇端に達している場合には、シリンダ34を駆動してワゴン60を更に傾ける工程(前記第4工程)が行われない。
【0055】
これにより、限度を超えてワゴン60を傾けようとする制御が防止されるので、制御の効率化を実現することができる。
【0056】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0057】
可動フレーム31及びワゴン60を傾けるためのアクチュエータとしては、シリンダ34に代えて、例えば電動モータ等を用いることができる。
【0058】
搬送コンベア4は、振動式のコンベアに代えて、例えば無端状のベルトを使用したベルトコンベアに変更することができる。
【0059】
車輪付きのワゴン60を着脱可能に構成することに代えて、可動フレーム31に給糸ボビン10の収容箱を固定し、この収容箱を可動フレーム31とともに回転させて傾けるように変更することができる。
【0060】
図6のS106、S110における待機時間(前記規定静止時間)は、一定の時間とすることもでき、また、オペレータの操作により変更できるようにすることもできる。また、規定静止時間を箱状体の傾斜に合わせて変化させることもできる。例えば、ワゴン60がほぼ上下反転姿勢となるように大きく傾けた状態では、ワゴン60内部の給糸ボビン10が短時間で落下することが確実であるので、静止時間を短くするような制御を行うことが考えられる。
【0061】
図6のS105、S109の処理において、可動フレーム31を上昇させる際に時間を基準として上昇の制御を行ったが、可動フレーム31又はワゴン60の角度、あるいはシリンダ34の伸び量を基準として、上昇の制御を行うように変更しても良い。
【0062】
本発明における規定とは、オペレータが任意に設定可能な範囲に含まれる数値が含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 給糸ボビン供給装置
3 投入装置
4 搬送コンベア(搬送部)
10 給糸ボビン
34 シリンダ(アクチュエータ)
43 ボビンセンサ(ボビン量確認部)
45 ボビン受け部
60 ワゴン(箱状体)
90 投入制御部(アクチュエータ制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開放されるとともに給糸ボビンを収容する箱状体と、
この箱状体を傾けるために駆動されるアクチュエータと、
このアクチュエータによって傾けられた前記箱状体から供給された給糸ボビンを搬送する搬送部と、
前記搬送部に供給された給糸ボビンの量が規定供給量を満たすか否かを確認するボビン量確認部と、
前記アクチュエータを制御するアクチュエータ制御部と、
を備え、
前記アクチュエータ制御部は、前記アクチュエータを駆動して前記箱状体を規定傾斜量傾け、その状態で前記箱状体を規定静止時間静止させた後に、前記搬送部の給糸ボビンの量が前記規定供給量を満たすか否かを前記ボビン量確認部によって確認し、前記給糸ボビンの量が前記規定供給量に満たない場合には前記アクチュエータを駆動して前記箱状体を更に傾けるように制御することを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記搬送部は、前記箱状体から供給された給糸ボビンを受けるボビン受け部を備え、
前記ボビン量確認部は、前記ボビン受け部に供給された給糸ボビンの量が前記規定供給量を満たすか否かを確認することを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給糸ボビン供給装置であって、
前記ボビン量確認部は、前記搬送部の前記ボビン受け部に設けられて前記給糸ボビンの有無を検知するセンサであり、
前記センサの取付高さに応じて前記規定供給量が決定されることを特徴とする給糸ボビン供給装置。
【請求項4】
上方が開放されるとともに給糸ボビンを収容する箱状体を傾けるために駆動されるアクチュエータと、
傾けられた前記箱状体から出た給糸ボビンを搬送する搬送部と、
前記箱状体から出て前記搬送部に供給された給糸ボビンの量が規定供給量を満たすか否かを確認するボビン量確認部と、
を備える給糸ボビン供給装置の制御方法であって、
前記アクチュエータを駆動して前記箱状体を傾ける第1工程と、
前記箱状体を傾けた状態で規定静止時間静止させる第2工程と、
前記ボビン量確認部で給糸ボビンの量を確認する第3工程と、
前記ボビン量確認部による確認の結果、前記給糸ボビンが前記規定供給量に満たない場合に、前記アクチュエータを駆動して前記箱状体を更に傾ける第4工程と、
を含むことを特徴とする給糸ボビン供給装置の制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の給糸ボビン供給装置の制御方法であって、
前記第4工程の実行時に前記アクチュエータの駆動位置が上昇端に達している場合には、当該第4工程の実行を停止することを特徴とする給糸ボビン供給装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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