説明

給糸装置

【課題】低いエネルギー消費及び高い作動安全性で、最適な短時間の挿入を達成可能にする。
【解決手段】挿入の度に、挿入のために必要とされる緯糸の実質的な部分が、断続的に引き出されるように緩くほぼ張力のない状態で挿入システム(A)に供給される。隣接する巻線の管状のパッケージは、少なくともほぼ連続的な巻き付けプロセスによって、内部の機械的支持体(S)上に緯糸材料から与えられ、引き出し方向前方に運ばれる。引き出すために、少なくとも緯糸部分にほぼ対応する多数の巻線は、その管状構成を維持しながら支持体から引き離され、実質的に緩められる。緯糸材料は、管の軸線(X)に沿って引き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機用の給糸装置であって、巻き付け要素と機械式の緯糸長さ測定組立体とを含むものに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の方法により、接触しているか又は分離され間隔をもって配置された巻線からなる巻線パッケージが、貯留体上に形成される。挿入システムは、糸を巻線パッケージから貯留体の前端に亘って引く。貯留体上の巻線は、異なる前進組立体によって前方に進むことができる。貯留体は、巻線パッケージより軸方向に長い。引き出しの際に糸バルーンが形成され、該糸バルーンは、顕著な糸張力の変化と相当な糸張力を生成し、その両方とも挿入を遅らせる。したがって、高い挿入速度を達成するために、挿入システムにおいて相当なエネルギー入力が必要とされる。一方、これは緯糸にとって高い機械的負荷を意味する。最も重要な欠点は、この方法によって決定された長い挿入時間、すなわち、挿入の始まりと、その後に布地の反対の縁で停止する緯糸の到着との間の時間である。現在の織機の基本的に非常に高効率の潜在能力は、そうした既知の挿入方法の長い挿入時間のために、十分に用いることができない。さらに、他の方法が知られており、該方法によると、挿入システムは、緯糸を直接、貯留体上の巻線パッケージから引き出さないが、代わりに緯糸材料が、緩くかつ張力がほぼないような状態で該挿入システムに与えられる。糸バルーンの影響が避けられ、したがって、低いエネルギー入力で高い挿入速度を達成することができ、緯糸材料は丁寧に扱われることになる。例えば、緯糸部分は、機械的手段によってジグザグ形状か又はループ形状で与えられる。機械的手段は、引き出し運動と同期して緯糸部分を解放する。この方法は、装置については高い作動力を必要とするが、機械的要素の質量慣性、及び非常に精密に制御された複数の機械的要素の運動のために、現在の織機には遅すぎる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さらに別の方法があり、該方法によると、緯糸が機械的手段によって挿入システムに1つの大きなループ状に与えられる。ループは挿入が始まると解放される。この場合、望ましくない大きな空間が必要とされ、達成可能な挿入速度が制限される。
【0004】
最後に、緯糸部分を、緩くかつほぼ張力なしにキャビティの内部でランダムな構成で挿入システムに与えることが知られている。緯糸部分のランダムな構成は、引き出しの際の緯糸の切断及び糸張力の変化により、障害をもたらし易い。
【0005】
本発明の目的は、極めて効率の良い現在の織機において、低いエネルギー消費及び高い作動安全性で、最適な短時間の挿入を達成可能にする上述のような方法及び給糸装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的は、請求項1の特徴によって達成される。
【0007】
驚くことに、引き出しのために支持体から自由にされ、巻線が順序良く配列された状態の巻線パッケージ部分は、特に巻線の特有の慣性特性と形状安定性により、如何なる機械的な内部保持(サスペンション)もないとしても、自由空間において安全に管状構成のままでいる傾向を示し、これにより、引き出しの間の緯糸は、最初にバルーンを形成することなく管から内側に進み、次いでさらに中心に進み、管から巻線をクリーンな様式で消費し、最後に給糸される巻線までも依然として支持体上に支持される。解放された巻線パッケージ部分は衝突しない。迅速に、且つ巻線パッケージ部分の解放に時間に関して精密に制御して適応されて引き出しが実行されれば、巻線は、絡むか又は崩壊するような傾向は示さない。この方法によって驚くほど短い挿入時間が達成できる。その驚くほど短い挿入時間は、高い糸速度及び高い挿入頻度についての現在の織機の能力を、最適に用いることを可能にする。解放された糸のパッケージ部分は、外側から支持することもできる。しかしながら、そうしたサスペンションは、より安全な手段である。便宜上、ほぼ連続的な巻き付けプロセスの速度における巻き付けは、挿入頻度と、それぞれの挿入された緯糸部分の長さに適合させることができ、これにより各々の挿入は、後続の巻線パッケージ部分が解放される前に解放された巻線パッケージ部分を実質的に消費する。糸速度が極めて高い場合でさえも、中心方向に引き出された緯糸は、最初の巻線をほぼ半径方向内向きの引き出し方向に、いかなるバルーン形成もなしに消費し、しかも解放された巻線パッケージ部分における巻線の管状構成は、挿入の終了まで最適な糸の幾何学的形状に維持されることが見られる。解放された巻線パッケージ部分は、挿入されるべき緯糸の長さにほぼ対応する多数の糸の巻線を含むか、又は、相次いで挿入されるべき幾つかの緯糸に対応する、より多数の巻線を含むことができる。
【0008】
引き出しを巻線パッケージ部分の解放と時間に関して重ねることは役立ち、解放された巻線パッケージ部分か、又は該巻線パッケージ部分の引き出し側の巻線が、それぞれ、順序良く配列された巻線の管状構成を離れるのに出来るだけ少ない時間を有するようにすることができる。
【0009】
本方法は、巻線パッケージ部分における巻線が、内部支持体の軸方向のオーバーフィリング(過供給)によって該支持体の引き出し側の端部を越え自由にされる場合には、単純な手法で実行することができる。解放された巻線は、解放された巻線パッケージ部分が衝突するか、又は乱雑な状態になる前に、引き出しの間に消費される。オーバーフィリングは、新しい緯糸材料の連続的な巻き付けによって実行される。
【0010】
これに代わり又はこれに追加する形で、巻線は、支持体上の巻線パッケージを該支持体の引き出し側の端部を越えて前進させることによって解放することができる。この場合には、前進組立体の適当な種類のいずれも用いることができる。
【0011】
解放された糸のパッケージ部分の管状構成を出来るだけ安定して保持するために、及び、接触している巻線間の自然な付着性も随意的に用いるために、巻線パッケージと解放された巻線パッケージ部分とを、斜め上方の引き出し方向に運ぶことができる。
【0012】
さらに別の代替的手法は、支持体の少なくとも一部の運搬運動又は調整運動のそれぞれによって、引き出しのために解放された巻線パッケージ部分における巻線を解放することである。この場合は、支持体の機械的な調整装置を用いることができる。
【0013】
この方法の過程において、解放された巻線パッケージ部分が、内部の機械的支持なしで空間において自由なままでいる傾向を出来るだけ長く延長することが重要である。また、この傾向は、糸材料及び巻線の形状安定性と、巻線パッケージ部分の少なくとも予備的な特有の形状安定性による。形状安定性は、巻線が、曲率を記憶するのに最小の自然で強制されない能力に少なくともほぼ対応する糸材料の曲率を備える支持体上に巻かれるときには、良好である。上述の湾曲を記憶するための能力は、以下のように説明することができる。緯糸材料の一部分が滑らかな表面上に置かれる。その部分の両端が互いに出来るだけ近くに引き合わされる。これにより、緯糸部分がある湾曲を受け入れる。次に両端が解放された場合、緯糸部分は、弛緩して、曲率を記憶するのに最小の自然で強制されない能力を表す残留した曲率をもつ。驚くことに、異なる緯糸材料は、わずかに異なる作用をするか、又は非常に似た作用をすることが見出された。巻線パッケージにおける緯糸材料が、曲率を記憶するのに最小の自然の能力によって少なくとも実質的に巻かれた場合には、解放された巻線パッケージ部分における巻線は、該巻線の半径を自身で増やすか、又は減らすという大きな傾向は有さず、該解放された巻線パッケージ部分は、内側からのさらなる支持がなかったとしても、巻き付けプロセスによって形成された管状構成を、内側の支持体上に比較的に長い間保持する。同様に形成された接触している巻線の間の付着性もこの作用を支持することができる。
【0014】
それ自身では挿入された緯糸部分のそれぞれの長さを精密に測定することができない挿入システムを用いる挿入方法の場合、該挿入システムと支持体上に残っている巻線パッケージ部分との間の緯糸部分を機械的に測定することが役立つであろう。その目的のために、織り込みサイクルに適応して制御される機械的システムを用いることができる。
【0015】
給糸装置は支配的に設計されるが、自身で緯糸の長さを測定することができない、例えばジェット織機のような織機のための緯糸の長さの測定に制限されるものではない。各々の挿入についての正確な緯糸の長さの測定又は定義により、糸の巻線パッケージの構成と糸の巻線パッケージ部分の解放にほとんど影響を与えないようにするために、係合停止要素が、別個の駆動装置を用いることなく糸の巻線パッケージの前方移動のみによって停止位置に移動される。停止要素は係合位置にもたらされ、該位置は、支持体上に生成されたばかりの巻線の直ぐ前であり、かつ巻線パッケージの運搬運動を妨げることなしに長さを測定するのに適切な位置である。次に停止要素は、最終的に、該停止要素が引き出された緯糸の長さの端を定める停止位置に到達するまで、前方に運ばれた巻線パッケージと共に浮遊する。停止要素を後で再びホーム位置に戻すために、動力駆動装置が与えられ、該装置は、停止要素を排他的に引き出し方向とほぼ対向する遠ざかった解放位置に移動させ、同時に、遠ざかった停止要素による妨害なしに糸の巻線を引き出すことができる。これは段階的な方法の実行をもたらし、実行の間、糸のパッケージが停止要素を前方に移動させるが、動力駆動装置が必ず該停止要素を戻す。係合停止位置において、停止要素は、挿入の終了をもたらす。
【0016】
便宜上、停止要素は機能上、糸クランプと協働し、該クランプは挿入の始まりをもたらし、かつ該停止要素の作動運動に時間に関して適応して制御される。糸クランプは緯糸をしっかりと保持し、係合を外された停止要素はホーム位置に戻される。糸クランプは、緯糸を最初に正確に挿入サイクルの開始時に解放する。次に挿入は、糸クランプが停止要素の戻り運動に備えて糸を再び保持する前に、係合停止要素が停止位置に到達し、該停止位置に引っ掛かったときに終わる。
【0017】
停止要素が係合停止位置において挿入を終わらせたときに、緯糸が、該停止要素と挿入システムとの間で、又は該停止要素とさらに織機との間で顕著な縦方向の張力を受けることがある。縦方向の張力は、少なくとも停止要素に向けて後向きに作用する。クランプ位置に調整され、糸を保持する糸クランプと停止要素との間の緯糸部分は、縦方向の張力下に残る。次に、停止要素が、係合停止位置から、もはや係合しない解放位置に移動された場合、移動する停止要素における緯糸の摩擦による張力は、糸の巻線パッケージの管状構成を乱すことがある。さらに、停止要素が解放位置に移動する間の、張力をもった糸にやむを得ず生じる弛緩も、糸の巻線の管状構成に乱れを生じさせることがある。しかしながら、補助的な駆動装置により、糸を保持する糸クランプを調整することができ、依然として係合停止位置にある停止要素に向かう方向への糸クランプの調整移動によって、その間に延びる緯糸部分は、徐々に弛緩され、停止要素が次の挿入のために解放位置に移動するとすぐに、完全に弛緩される。糸クランプのこの調整は、糸の巻線パッケージの管状構成に対する損害を避ける。基本的に、少なくとも挿入の最終段階において、例えば、さらに別のアクチュエータを用いて、又は同じ補助的な駆動装置を用いてでも、糸クランプを糸の移動空間から外に移動させることも役立つであろう。これは、糸が糸クランプによってキャッチされる危険性を最小にする。或る条件下では、シールドを糸クランプのクランプ領域の上に短時間移動させるか、或いは、糸クランプに又は該糸クランプのクランプ領域に隣接する場所にデフレクタを設けることで十分であり、この場合、該デフレクタは、糸をクランプ領域を経て横方向にすなわち通常そこから糸がクランプ領域に入る側部において案内する。
【0018】
糸の巻線パッケージによって停止要素が引き出し方向に移動する際に、出来るだけ少しの質量だけが移動するために、停止要素と該停止要素の動力駆動装置との間にヒンジが設けられるべきである。さらに、停止要素は、少なくとも停止位置に精密に位置決めするために、その移動方向に案内されるべきであり、これは糸の長さを測定するために重要なことである。この案内は、引き出し方向に垂直な定義されたヒンジ軸線によって、及び/又は、支持体或いは外側の支持体に隣接する構造体における案内曲線によって達成することができ、該案内曲線は、正確にこの方向に延びることができる。
【0019】
磁気に基づく動力駆動装置は、構造的に単純で、機能上安全である。固定ソレノイドは、ヒンジを用いることによって、開放位置における少なくとも部分的に磁気的に伝導性の停止要素を、引くか又は押すかして定位置に戻す。或いは、同じ目的のために、他の駆動装置を代わりに用いることができる。
【0020】
停止位置における停止要素の正確な位置決めは、支持体か又は外側に配置された隣接する構造体のいずれかにおける案内ノッチに設けられた停止部によって達成することができる。糸の巻線パッケージは、停止要素を停止部に対して運搬方向に移動させる。
【0021】
引き出された緯糸が停止要素の停止位置に急に停止することにより、この技術における一瞬の糸張力の上昇に関連して、不可避的に鞭打ち作用又は突然の伸張が生じるので、通常は、張力の上昇を抑える制御された糸ブレーキ(挿入終了ブレーキ)が用いられる。そうした制御された糸ブレーキは、高価であり、かつ複雑な制御システムを必要とする。この理由のために、及び本発明により、代わりに、糸は、構造的に単純な手法で、鞭打ち作用又は伸張作用が生じる位置、すなわち停止要素において、正確に、該停止要素の停止位置で制動される。制動は、停止要素を、所定の弾性的な反力に逆らって支持体の本質的に周方向にそらすことにより、及び緯糸の停止によって停止要素上に伝達されるエネルギーにより実行される。停止要素を弾性的な反力に逆らってそらすことによって、緯糸が徐々に減速され、エネルギーが分散されて、緯糸の張力のピークが顕著に減少するか、又は排除される。この理由のために、制御された糸ブレーキはここでは省略することができる。
【0022】
上述の機能は、例えば、それ自身が弾性的な戻り作用のために設計された、例えば、ばねのようなヒンジ部分をもつ停止要素を用いることによって達成することができ、該停止要素は、糸張力の上昇を軽減するために、鞭打ち作用のエネルギー上昇の下でのみ、曲げばねのように偏向される。或いは、支持体か又は支持体に隣接する構造体における停止要素のために、横方向に位置するリテーナを設けることができる。リテーナは、次に、所定の反力に逆らう緯糸の力の下で、横方向に移動する停止要素と共に、エネルギーを分散させるために一時的に横方向に変位される。鞭打ち作用が終わるとすぐに、リテーナ又は停止要素のそれぞれは、停止位置を定める所定の正確な長さに周方向に戻される。
【0023】
挿入の始まりをもたらす糸クランプは、緯糸が解放されるタイミングを、織機の作動に非常に正確に適合させなくてはならないことと、挿入開始の命令から実際に緯糸が解放されるまでの間に経過する時間をごく短くすべきであるということから、相当な重要性をもつ。この理由から、糸クランプは挿入のトリガとして用いられる。糸クランプは、糸経路において小さな空間を占めるべきであり、かつ、支持体の前端の前面の直ぐ近くで作用するべきであり、解放された糸パッケージ部分は、所望の大きさで且ついかなる機械的干渉もなしに挿入のために自由になることができる。引き出し方向における糸クランプの調整性は、直線運動又はピボット運動のいずれにおいても、糸を保持する糸クランプと挿入後に停止位置にある停止要素との間に与えられた緯糸部分を弛緩させるために重要であり、かつ、ある条件下では、糸クランプの糸分配部分を少なくとも実質的に糸の移動領域の外に移動させるために重要である。ステップ・モータは、例えば、有益な回転駆動装置である。ソレノイド組立体を直線駆動装置として用いることができる。
【0024】
小さな部位での精密に調整されたクランプ力による効果的なクランピングは、糸クランプの細い突出部におけるノッチ状のクランプ領域によって達成することができる。クランプ力は、ばね力によって機械的に生成される。こうすることができるのは、糸のためのクランプ動作の時間に関する重要度が二次的だからであり、緯糸はいずれにしても停止要素によってキャッチされる。ばね力は、挿入システムによって生成された張力下であっても、クランプ力が緯糸を安全に保持するのに十分なものであることを確実にしなければならない。
【0025】
しかしながら重要なのは、挿入が始まるときに、糸クランプが緯糸を、正確に所望のタイミングで出来るだけ迅速に解放することである。これは、ソレノイドを機能上単純な手法で切り換えることによって達成できる。切換ソレノイドのアーマチャは、該切換ソレノイドが励磁されている間、緯糸を緊密に保持するボルトから所定の中間距離をもつ初期位置にある。中間距離のおかげで、アーマチャは、開始時の静摩擦に打ち勝ち、増加する磁力を高速で変換し、高い運動エネルギーを生成し、アーマチャがボルトに当たる前に強力に加速するために、十分な時間をもつことになる。切換ソレノイドは、アーマチャを速度ゼロから加速することによってばね力に打ち勝つ必要はないが、そのとき加速される該アーマチャの高い運動エネルギーによって、急にばねの反力に打ち勝つ。これは、クランプされた緯糸の急な解放をもたらす。実際には、たった1ミリ秒の範囲の解放時間を達成できる。
【0026】
糸の巻線パッケージは、もはや内側からは支持されていない解放された部分において、長時間にわたり管状構成を保持する傾向をもつが、この場合、該糸の巻線パッケージを案内表面上の少なくともある領域において外側から支持することが役立つであろう。この外側からの支持は、管状構成を維持し、引き出しの間に緯糸を最初の巻線から半径方向内向きに引き出し、次いで支持体の軸線の延長線に沿って引き出すことを可能にし、遅れを招いたりエネルギーの放散を引き起こすことがあるバルーンは形成されず、所望の高い挿入速度か又は短時間の挿入が達成される。
【0027】
案内表面は、それらが解放された糸の巻線パッケージ部分の少なくとも下半分を支持するように形成することができる。幾つかの場合においては、より大きな部分か、或いは糸の巻線パッケージ部分全体も支持することができる。この場合、案内表面は、解放された糸の巻線パッケージ部分の上に出来るだけ低い摩擦を生じさせるために、又は、役立つであろう場所、例えば引き出し方向の最前列の巻線の上部だけに摩擦を生じさせて、該巻線が不注意に前方に傾くようなことを防ぐために、表面部品又はロッド等によって形成することができる。
【0028】
これに代わり又はこれに追加する形で、案内表面の少なくとも一部を、引き出し方向上方に傾けることができる。これは、解放された糸の巻線パッケージ部分が前方に移動する間、さらには糸の引き出しの間に、解放された糸の巻線パッケージ部分を、コンパクトにかつ高密度に維持することに寄与する。
【0029】
さらに別の代替的手法は、案内表面と糸の巻線パッケージとの間の摩擦の影響を出来るだけ低く保つために、該案内表面を前方に運ばれる糸の巻線パッケージと共に移動させることである。これは、例えば、駆動される案内表面の履帯構造によって達成することができ、該構造は、糸の巻線パッケージを、間隔をもって配置された歯車のように外側から保持し運ぶものである。挿入の終了時には、支持体上の最後の糸の巻線も、停止位置における停止要素まで消費される。望ましくない鞭打ち作用又は伸張作用は、緯糸張力の望ましくない上昇をもたらす。その理由のために、ラメラ又はブラシの形状の引き止め要素を糸の巻線パッケージの上に設けることができる。要素は支持体の前端と協働して、緯糸が停止要素において完全に静止するようになる前に、該緯糸の速度を緩める。この要素は、それぞれの所望の時点においてのみ、すなわち挿入の終了時に動作するように、しかし、残りの時間は解放された糸の巻線パッケージに影響を与えないように、調整可能でなければならない。
【0030】
構造的に単純な手法において、支持体はロッド・ケージとして設計される。ロッド・ケージのフィンガは、支持体の前側から接近可能な共通の調整偏心器をもつ個々の偏心調整装置を有することができる。この手法において、種々の直径のロッド・ケージを容易に作成することができる。本方法を実行するための支持体は、曲率を記憶するのに緯糸材料の最小の自然で強制されない能力にほぼ対応する比較的小さい直径を有し、1つの糸の巻線の長さに対応する直径の変化は、比較的小さな半径方向の調整ストロークしか必要としないので、単純な偏心調整装置で十分である。
【0031】
ここで2つの可能性を実現することができる。調整用偏心器は、キャリアにおいて回転されフィンガを外向きに又は内向きに移動させるか、又は、フィンガにおいて回転され、キャリア内で該フィンガと共に偏心部分を介して移動されるかのいずれかである。
【0032】
約20mmから約50mmの間の外径、好ましくは約30mmから約40mmの間の外径が、支持体に役立つ。これは、現在処理される殆どの緯糸材料の曲率を記憶するのに最小の自然で強制されない能力に対応する直径の範囲である。
【0033】
もちろん、糸の巻線パッケージの管状構成の乱れは、糸の巻線パッケージを出来るだけ均質に及び安定させるために、さらには安定した均質な解放された糸の巻線パッケージ部分を達成するために避けるべきであり、停止要素を、引力が停止要素の妨害影響を避けることに寄与する支持体の下側に設けることが役立つであろう。
【0034】
糸クランプは、停止部が支持体を貫通する領域において、引き伸ばされた糸の方向に実質的に位置合わせされるべきである。
【0035】
本発明の非常に重要な態様によると、本方法の作動上の安全性は、支持体の中心に設けられ、引き出し方向に支持体の軸線にほぼ位置合わせされて突出するループ抑制体によって、著しく改善することができ、その自由端は、該支持体の前の距離をおいた場所に位置する。本方法の基本的な利点は、極めて高い挿入速度か、又は短い挿入時間である。この建設的な効果は、解放された巻線パッケージ部分の最前列の巻線から糸を引き出す際に、該糸は、最初にほぼ半径方向内向きに直接進み、次に軸方向に織機の中に進み、いかなるバルーンも形成することはないという事実からもたらされる。この糸の移動は、非常に高速で及び高い原動力で実行される。解放された巻線パッケージ部分における巻線は、内側から支持されていないが、空間においていわば自由なままでいるので、特に活発な糸の品質の場合においては、時折もつれが形成されることがあり、該もつれは、ねじれている状態で挿入された場合に、布地の欠陥をもたらすか、又は挿入システムにおいて障害を生じさせることがある。もつれ抑制体は、糸が、最前列の巻線からほぼ半径方向内向きに進み、次に軸方向にさらに進む領域で糸の進行を支持する。この領域において、抑制体は、その構造的な存在により、もつれがねじれることを妨げる。代わりに、ねじれていないもつれは、引っぱられて再び解かれる。糸の動的進行の際に抑制体と接触することによって、該糸はまた、著しく落ち着き、次いで、挿入システムの中に比較的直線的に軸方向に移動する。
【0036】
便宜上、もつれ抑制体は被覆表面を有し、該表面は、回転対称であり、自由端に向けてテーパする。これは、形成されたもつれがそこで滑り落ちて、該もつれがねじれるのを妨げることを確実にする。この形状はまた、引き出し張力の存在下で、もつれが本体の周りをラップして緊密に締め付けるような傾向さえも妨げる。
【0037】
構造的に単純なもつれ抑制体はピンであり、円錐形のピンであることが好ましい。ピンは、各々の引き出された巻線を位置合わせするために、そこに引き出しセンサを置くための理想的な可能性を与える。
【0038】
ピンの外径は、少なくともその自由端の近くにおいて、支持体の直径のほんの僅かな量であるべきである。
【0039】
自由端は、糸が解放された巻線パッケージ部分から内側に進む領域においても機能するように、支持体の前側を明らかに越えて突出するべきである。自由端はさらに、もはやもつれが形成されず且つもつれがねじれたり結び目を形成する危険性が存在しない下流の領域に達するように、糸クランプの位置の引き出し方向下流に配置されることが好ましい。
【0040】
被覆表面は滑らかであるべきで、かつ低い摩擦係数を有するべきであり、随意的には、該被覆表面は、低摩擦のオーバーレイを有するべきである。低摩擦とは、表面が糸材料とごく低い摩擦を生じるべきであるという意味を有する。これは、抑制体が、その全体の存在とほぼ引き出し方向の延長部だけによって、生成が進行中のもつれがねじれないように影響を与えなくてはならないためである。抑制体は、出来るだけ小さな機械的負荷及び遅延負荷を糸に課すべきである。
【0041】
便宜上、巻線パッケージの前進運動は、所定の支持体の円錐によって開始される。円錐運搬原理は、直接糸の巻線に接触するという利点をもたらし、該糸の巻線は、次いで解放された糸の巻線パッケージ部分において互いにくっつくこともできる。さらに、これは費用が低く、安全な解決法である。
【0042】
或いは、支持体にウォブル要素を用いる前進原理を用いることができ、該ウォブル要素は、支持体上に形成され、巻き付け要素と同期して駆動され、回転はしないが、その傾斜軸によって、巻き付け要素から出て行く最初の糸の巻線に伝達されるウォブル運動(揺動)を生じさせる。最初の糸の巻線は、次に、下流の糸の巻線をさらに押す。
【0043】
さらに別の代替的手法として、糸の巻線パッケージを、前進要素を駆動することで発生した、いわゆる糸分離によって、軸方向に前進させることができる。前進要素は、フィンガか又はロッド・ケージのロッドの間に置かれ、例えば、支持体の軸線か又は巻き付け要素の駆動軸線のそれぞれに対して斜めである軸線を有する共通の駆動ハブを用いる。
【0044】
基本的に、糸の巻線パッケージ部分が、引き出しのために張力なしで緩く与えられたとき、該部分は、支持体に過供給することによって解放される。代替的手法として、糸の巻線パッケージ部分を正しい瞬間に解放するために、支持体は、該糸の巻線パッケージに対して、及び引き出し方向に対向して引き戻される。この場合には、補助取り外し部材が、糸の巻線パッケージを引き戻された支持体から、コンパクトな形状で、かつ管状構成で解放することに寄与することができる。
【0045】
さらに別の代替的手法によると、補助支持体は、支持体の前側に関連する。補助支持体は、最初に、内側から支持された糸の巻線パッケージを形成するために用いられる。その後、補助支持体は、挿入されることが意図される糸の巻線パッケージ部分を解放するために、支持体から同軸方向に引き離される。この場合においては、補助支持体の引き戻しは、取り外し部材によって助けられ、これは、解放された糸の巻線パッケージ部分をコンパクトな形状で保持するという利点とすることができる。
【0046】
測定給糸装置から生じる緯糸によって給糸されたジェット織機の中への挿入の終了時における伸張作用又は鞭打ち作用は、挿入された緯糸の停止要素における急な減速の機械的な結果である。損傷を避けるために、実際には、制御された糸ブレーキが用いられ、該ブレーキは、緯糸が停止要素でキャッチされる前に、前もってブレーキをかけて、緯糸を減速させるものである。この種の制御された糸ブレーキは、精密な電子制御システムを必要とし、かつ複雑で費用がかかる。本発明の重要な態様によると、停止位置に到達したときに鞭打ち作用又は伸張作用をもたらす停止要素自体が、挿入の終了時の糸張力の上昇を抑えるか又は減じるために用いられる。すなわち、制動は、望ましくない糸張力の上昇が生じる場所で正確に緯糸に実行される。その目的のために、停止要素を所定の弾力に逆らって、制動ストロークに亘り、支持体のほぼ周方向に偏向させることができる。より詳細には、停止要素は、緯糸を減速し始める第1キャッチ位置から制動ストロークに亘り第2キャッチ位置に調整され、該緯糸からの反力によって付勢され、エネルギーは、該緯糸が完全に停止する前に放散される。停止要素は次に、所定の弾性力によって戻される。全体として、これは、最終的に直線的に伸張された緯糸の破損なしに、非常に良好な糸の制御を可能にする。
【0047】
この場合においては、係合位置と解放位置との間で停止要素を制御する直線駆動装置と支持体との間に少なくとも1つのヒンジ領域を設けることが役立つであろう。ヒンジ領域は、直線駆動装置を対応させて同様に動かす必要なしに、横方向の可動性、すなわち停止要素のこの自由度を可能にする。静止ガイドに所定の移動方向で移動可能に配置された制動要素は、ばね力に屈することができる。制動要素は、ばね力に逆らう緯糸の反力によって、制動ストロークに亘り、停止要素によって動かされ、これによりエネルギーが放散され、糸は著しい糸張力の上昇を受けずに徐々にブレーキをかけられる。制動要素は、厳密に支持体の周方向に移動する必要はないが、代わりに、停止要素において生じた糸の反力の向きにほぼ対応する方向に斜めに移動することができる。この向きは、引き出し側での最後の巻線と停止要素との間に延びる糸のほぼ周方向の力と、下流の糸部分のほぼ軸線方向の力からもたらされる。糸張力のピークを補償した後の制動要素の自動的な戻りは、さらに、少なくとも小さな距離だけ緯糸を引き戻す利点を与える。
【0048】
代替的な実施形態においては、糸の巻線パッケージには既に、隣接するものより大きい幾つかの糸の巻線が形成されており、該巻線は、複数の停止要素の中のそれぞれについての係合位置を定める。停止要素は、フック状に形成することができ、例えば、糸の巻線パッケージと共に転向し移動することができ、それらは、大きい巻線と連続して係合することができる。これは、糸の巻線パッケージが、幾つかの後続の挿入のための緯糸の長さを表す大きさに形成されているときに、特に役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
本発明の実施形態は図面を用いて説明される。
【0050】
図1において、途切れのない緯糸材料Yが、例えば図示されていない給糸装置から、回転する巻き付け要素Wの中に引かれ、該要素Wは、駆動装置Mによってほぼ連続的な回転巻き付け運動Rで動かされる。緯糸材料Yは、巻き付け要素Wによって、巻線Tに後続して又は隣接して管状の巻線パッケージとして配置されるように内部の機械的支持体S上に巻かれ、該パッケージは、支持体S上で矢印の方向に速度Vで前方移動される。巻線Tは次に、引き出し方向に、さらに支持体SからX軸方向に支持体Sの端部を越えた巻線パッケージ部分Bにおいて自由になるが、それらは管状構成を維持する。自由な巻線パッケージ部分Bにおいて、巻線T1は、前方に緩やかにかつほぼ張力なしで運ばれる。巻線パッケージの慣性及び形状安定性により、巻線T1はこの空間において自由なままである。X軸とほぼ位置合わせされた、織機Lの挿入システムAが設けられ、該挿入システムAは、緯糸Yを断続的に引き出し(矢先が1つの矢印Cによって示される)、各々の緯糸Yを織機Lの中に挿入する。挿入のためそれぞれの正確な緯糸の長さを測定するために、挿入システムAと一方の側における支持体Sから自由になった巻線パッケージ部分Bとの間に、及び/又は、他方の側における該支持体Sの端部領域に、機械的組立体H及びGを設けることができる。それらの組立体H、Gは、製織サイクルに適応して制御される。X軸と本質的に同軸の自由な巻線パッケージ部分Bから引き出された緯糸Yは、いかなるバルーン形成もなしに、それぞれの最初の巻線を引き出し方向に消費し、ほぼ半径方向内向きに進み、さらに軸線方向に進んで、例えば、最終的に自由な巻線パッケージ部分Bのすべての巻線T1が挿入の終了時に消費できるようにされる。その後、次に続く挿入のための次に続く巻線パッケージ部分が自由になる。
【0051】
巻線T及び巻線パッケージ部分Bからなる巻線パッケージは、丸いか又は多角形の管状構成である。少なくとも巻線パッケージ部分Bにおいて、巻線T1は、多かれ少なかれ互いに密集して接触しており、順序良く配置され、ほぼ同じ形状を有する。巻線パッケージの直径Dは、巻線の曲率が、緯糸材料の曲率を記憶するのに最小の自然で強制されない能力に少なくともほぼ対応するように選択される。
【0052】
図2は、曲率を記憶するのに最小の自然で強制されない能力の意味するところを示す。緯糸材料Yの部分Eは、滑らかな表面5上に置かれている。部分Eの両方の端部3、4が、互いに矢印1の方向に動かされ、その後、解放される。部分Eは、特有の弾力性により、点線矢印2の方向に図示された位置まで戻り、この位置において、該部分は残留した湾曲を有し、該湾曲の半径RNが、この緯糸材料の曲率を記憶するのに最小の自然で強制されない能力に対応するものである。この湾曲の半径RNは、図1における巻線パッケージの直径Dのほぼ半分に対応する。
【0053】
図3は、本方法を実行するための別の変形を概略的に説明する。ほぼ連続的な巻き付けプロセスによって、その上に緯糸の巻線パッケージが形成された内部支持体Sは、後方の静止要素6と、前方に(引き出し方向に)配置された要素8とを有し、該要素8は、内側に移動させることができ、かつ例えば各々のヒンジ7を介して要素6と連結することができる。点線矢印9の方向の運動のための対応する制御システムを用いて、支持体Sの要素8を内側に移動させることによって、巻き付けプロセス中に前方に押される巻線T1は、図1に示されるものと同様に引き出しのために自由になる。
【0054】
図4において、支持体Sは、例えば、ケージ状に設けられた要素10を、該要素10を支持するキャリア11上に含み、かつ、幾つかの場合においては静止リテーナ12も含む。キャリア11を矢印13の方向に引き戻すことによって、所望の数の巻線が、引き出しのために支持体Sから自由になる。或いは、リテーナ12を前方に押すことによって巻線を自由にすることも可能であろう。
【0055】
図5及び図6は、本方法のさらに別の変形を示す。支持体Sは、静止支持体部分S1からなり、巻き付け要素Wは、ほぼ連続的な巻き付け運動Rの助けによって、該支持体部分上に巻線T、T1をもつ巻線パッケージを形成する。支持体部分Sの前の引き出し方向において、さらに別の、例えば、同軸の補助支持体S2が設けられる。補助支持体S2は、内側に開放されており、キャリア14に連結されたケージのような構成を成すロッド形状の要素15を含む。要素15は、キャリア14が図5に示される位置にある限り、支持体部分S1を引き出し方向に延長する。幾つかの場合において、静止ストリッパ部材を設けることができるが、該部材は如何なる場合にも必ず必要というわけではない。支持体部分S1が一杯になることによって所定の数の巻線T1が支持体部分S2上に管状構成で形成されるとすぐに、キャリア14は、要素15と共に矢印17の方向に迅速に引き離される。この動作により巻線T1が自由になる。緯糸Yは、次に、引き出し方向における最初の巻線から、内向きにかつ引き出し方向に、内部貫通開口部が形成されたストリッパ部材16及びキャリア14を通して進む。
【0056】
図6において、巻線T1は既に自由である。支持体部分S2は、右端位置に調整されている。矢印Cによって示される緯糸Yの引き出しにより、自由な巻線T1は、支持体部分S1へと後方に連続して消費されていく。その後、支持体部分S2は再び図5に示される位置に戻され、支持体部分S1が再び一杯になることにより、巻線T1を管状構成にすることができ、支持体部分S1から押しやることができる。
【0057】
図3から図6までの方法の変形により、例えばジェット織機の場合において、例えば挿入された緯糸の長さを自身で測定することができない挿入システムAのために、緯糸の長さを測定するための組立体H、Gを用いることができる。例えば支持体Sと直接に協働する組立体Hは、緯糸材料Yをキャッチすることにより挿入を終わらせるために用いられる停止要素をもつ制御された停止装置とすることができ、他方の組立体Gは、型開ストロークにより挿入を開始する制御された糸クランプとすることができる。
【0058】
すべての上述された方法の変形において、巻き付けプロセスによって生成された巻線パッケージは、巻き付けプロセス自身によって前方に押される。これに代わり又はこれに追加する形で、巻線を前方に運ぶ前進要素又は前進組立体も、さらに用いることができる。これはさらに、隣接する糸の巻線間に分離(ピッチ)をもつ支持体S上で作動させることも可能である。
【0059】
安全のために(図1において点線で示される)、機械式(又は空気式)表面案内装置Fを、支持体Sから自由になった巻線パッケージ部分Bのために設けることができる。表面案内装置は自由な巻線上に作用するが、外側からだけ作用する。表面案内装置Fによるサスペンション(位置維持)は、必要不可欠ではないが、しかしながら、自由な巻線パッケージ部分Bの崩壊又は下降を防ぐために有利となることがある。さらに、自由な巻線パッケージ部分Bの上だけに及び外側から係合する手段を設けることが可能であり、該手段は、最初の巻線T1が自由な巻線パッケージ部分Bにおける引き出し側において前方に傾くことを抑える。表面案内装置Sによるこれらの手段及びサスペンションは、緯糸Yを巻線パッケージ部分BのX軸方向に中央内向きに引き出す間の、巻線T1のバルーン形成なしの消費に対する如何なる影響も有さない。直径Dは、例えば、約30mmの範囲とすることができる。しかしながら、特別の糸の品質は、より大きな若しくはより小さな直径Dを要求することがある。経験により、多種多様な糸の品質及び番手は、半径約15mmの湾曲に対応する、非常に類似した最小の自然で強制されない曲率を記憶することができる。
【0060】
本方法は、ジェット織機のためだけでなく、例えば、グリッパ織機、レピア織機及びプロジェクタイル織機に用いることも意図される。
【0061】
図7は、本方法を実行するための給糸装置18を示す。給糸装置18の幾つかの詳細が図8、図9、図10、図11及び図13に示される。図7の給糸装置18は、例えば糸Yを、ジェット織機、例えば空気ジェット織機の中に送る働きをし、該装置の挿入システムAは、緯糸の長さを自身で測定することができない。この理由のために、組立体H、Gが給糸装置18に設けられる。
【0062】
巻き付け要素Wの駆動モータMは、ハウジングに受け入れられる。巻き付け要素Wは、静止支持体Sに対して回転し、該支持体Sは、周方向に分布され引き出し方向Xにほぼ平行して延び自由端をもつロッド19を有する一種のロッド・ケージとして形成される。組立体Hは、支持体Sの下側に設けられ、図8から図10を用いて詳細に説明され、組立体Gは、支持体Sの下流に設けられ、制御された糸クランプ20によって構成される。
【0063】
糸クランプ20は、補助駆動装置21によって、引き出し方向Xに対して垂直に配向されたピボット軸線21’の周りを前後にピボット運動する。糸クランプ20は、管状突出部41、及び緯糸のためのノッチ形のクランプ領域42を備える。突出部41は、外側から、支持軸の延長線の本質的に下で、ピボット軸線21’に対して垂直に延びる。二重矢印22は、糸クランプ22が、補助駆動装置21によって、どのように前後に調整されるのかを示す。回転する補助駆動装置21は、例えば、迅速に反応するステップ・モータを含む。或いは、糸クランプ20を引き出し方向に平行に、かつ二重矢印22に対応して往復運動させる、直線駆動装置の組立体を設けることができる。案内表面Fは、支持体Sと軸方向に重なり、糸の巻線パッケージ、又は、自由にされた糸の巻線パッケージ部分のためにそれぞれ働く。本実施形態においては、案内表面Fは、必要であれば、自由な糸の巻線パッケージ部分を案内し、かつ支持するために、下側及び両側に配置される。
【0064】
基本的には、挿入の終了段階において、例えば、図示されていない別個のアクチュエータを用いて、又はさらに補助駆動装置21を用いて、糸クランプ20を糸の移動空間から一時的に取り外し、例えば図7における位置Qに移動させることが役立つであろう。或いは、シールドを短時間だけクランプ領域42の上に移動することができる。さらに別の代替的手法として、恒久的なデフレクタをそこに設けることができる。それらの手段は、挿入の終了時に糸が糸クランプ20によって誤ってキャッチされることを妨げる。
【0065】
図8は、給糸装置18の変形の半径断面図である。本実施形態においては、組立体Hは支持体Sの下に設けられ、移動可能な停止要素24を有する停止装置によって構成される。支持体Sのロッド19は、静止キャリア23に自由に片持ち様式で設けられる。巻き付け要素Wは、支持体SWの周りを回転する。キャリア13は、例えば、巻き付け要素Wの駆動シャフト上に回転可能に支持されるが、図示されていないソレノイド装置は、キャリア23が駆動シャフトによって回転されることを妨げ、該キャリア23を静止したままにする。
【0066】
停止要素24は、ピンの形状であり、引き出し方向Xに対して垂直なヒンジ軸線を有するヒンジ28を介して、ソレノイド駆動装置26(直線駆動装置)のアーマチャ25に連結され、それにより該停止要素24は、示される解放位置と係合位置との間で二重矢印27の方向に往復運動可能となる。係合位置において、停止要素24の自由端は、1つのロッド19のカットアウトか又は縦方向ガイド31と係合する。図8における縦方向ガイド31の左端部に停止部32が設けられ、該停止部は、緯糸が支持体S上の巻線からさらに引き出されることを係合停止要素24が妨げる停止位置を定める。停止要素24の自由端は、例えば、ヒンジ28において二重矢印29の方向に往復運動することができる。停止部30は、図8に示される停止要素24のホーム位置を定める。ホーム位置において、停止要素は、示される解放位置から上方に縦方向ガイド31に至ることができ、これにより該ガイドは、巻き付け要素Wから出て行く糸の前に、かつ、最初の糸の巻線が既に支持体S上にある、引き出し方向における少なくとも最初の糸の巻線の後ろに配置される。糸の巻線がさらに形成されている間、ヒンジ28のおかげで、停止要素24は、軸方向に大きくなる糸の巻線パッケージによって、停止部32で停止位置に引っ掛かるまで共に運ばれる。挿入は、引き出される緯糸が停止要素24に引っ掛かるとすぐに終わる。挿入が終わった後に、停止要素24は、ソレノイド駆動装置26によって解放位置に再び引き戻され、糸の巻線パッケージが支持体Sをさらに覆い尽くすこと、又は再び緯糸を引き出すことができるようになる。停止要素24を図8に示される定位置に戻すために動力駆動装置33が設けられ、該装置は、停止要素24に対して静止しており、例えば制御されたソレノイド33とすることができる。ソレノイド33は、停止要素24を戻さなければならないときにのみ作動する。停止要素24は、挿入の終了を制御するだけでよい。挿入の始まりは、糸クランプ20によって制御される。
【0067】
図9及び図10は、停止要素24を有する詳細な変形を示し、該要素のヒンジ28は、弾力性のあるヒンジ部分28’によって構成されており、該ヒンジ部分は、すべての方向への移動可能性を与える。ヒンジ部分28’は、例えば、エラストマー部分からなる。図10に示される停止位置から図9に示されるホーム位置に戻る停止要素24の調整は、ヒンジ部分28’特有の弾力性によって、いわば自動的に行われる。ばね部分28’におけるばね作用は、停止要素24を前方に運ぶ糸の巻線パッケージへの抵抗をできるだけ小さくするために、できるだけ弱くあるべきである。図9に示されるように、磁石部分35との相互作用によって停止要素24のホーム位置を確実にするために、永久磁石33を安全のため設けることができる。
【0068】
この実施形態においては、支持体S又はロッド19のそれぞれに隣接して、該ロッド19の外側から間隔がおかれ、また停止要素24のための縦方向ガイド31’を含む静止構造体34が設けられている。ロッド19内に、または2つのロッドの間に、縦方向ガイドとして又は停止要素24のための通過経路として、カットアウト39が形成される。構造体34内に、停止部32’としてリテーナ36が設けられ、該リテーナは制動要素を定め、図11を用いて説明される。リテーナ36は、停止要素24の停止位置を定めなければならず、停止要素24と協働して給糸装置18の制動装置を構成する。
【0069】
図11における断面図は、縦方向ガイド31’が、糸の巻線パッケージが停止要素24を前方に運ぶ間に係合停止要素24を案内するスロットであることを示す。横方向案内ノッチ38は、支持体Sのほぼ周方向に配向されるか、又は引き出し方向に対して斜め方向に配向され、リテーナ36は、ばね37の力に逆らって移動可能である。リテーナ36は、一方では停止位置を定めるための停止部32’を形成し、他方では制動(ダンピング)要素を構成し、該制動要素は、停止要素24を介して減速された緯糸の反力によって、第1キャッチ位置kから制動ストロークに亘り第2キャッチ位置lまで弾性的に移動することができる。このストローク中に運動エネルギーが放散され、それにより挿入の終了時の糸張力の上昇が緩やかになるか、又は上昇が避けられる。
【0070】
図示されていない代替的な実施形態においては、反力及び弾力性により、停止要素24自身を支持体Sのほぼ周方向に移動させることができ、また、制動(ダンピング)装置を直接、構成することができる。
【0071】
図12は、支持体S(ラメラまたはブラシ)に関連する引き止め要素39を示し、該要素39は、支持体Sの前端又は緯糸とそれぞれ協働するために引き出し方向斜め下向きに延びており、該緯糸は、ちょうど停止位置における停止要素24でキャッチされたところである。引き止め要素39は、実際に、挿入の終わりに向かうときだけ糸に作用して該糸の速度を減らすために、例えば二重矢印40の方向に前後に調整可能である。
【0072】
図13は、図7の制御された糸クランプ20の構造を示す。管形の突出部41がハウジング47に固定され、該ハウジングは、糸クランプを図示されるクランプ位置から図示されていない受動位置に調整するように働くソレノイド駆動装置48、49を受け入れる。突出部41の外向きに開口したノッチの境界面43と、突出部41の中に摺動可能に収容されたボルト45の肩部に設けられたクランプ表面44によって、ノッチの形状のクランプ領域42が定められる。ボルト45は、ばね46の力によってクランプ方向に負荷される。ばね46は最終的に、緯糸Yを保持するように働く。プランジャの形状のアーマチャ49がソレノイド駆動装置48に設けられる。アーマチャは、ソレノイド48が励磁されない限り、図13に示される初期位置で休止する。この初期位置において、アーマチャ49は、ボルト45から中間距離50だけ離間される。中間距離50は、アーマチャ49がソレノイド48の励磁によって迅速に加速し、次いで存分な激しさでボルト45に当たり、これにより保持された緯糸Yが急に解放されるようにする(開いている時間は1ミリ秒の範囲)。
【0073】
糸クランプ20は、織機から送信されたトリガ信号によって、図13に示されるクランプ位置から受動位置に調整される。この調整により、緯糸Yが引き出しのために解放され、挿入サイクルが始まる。一方、例えば、停止要素24は、詳細に示されていない給糸装置の制御システムから生成された信号によって、糸クランプ20がクランプ位置にされた後の時点で、係合停止位置から引き戻される。幾つかの場合においては、給糸装置の制御装置の信号も糸クランプ20を制御するのに用いることができる。停止要素24をホーム位置から係合位置に調整することも、例えば、糸の巻線の巻き付けの計数が目標とする値に到達するとすぐに、給糸装置の制御装置の信号によって制御することができる。給糸装置の静止部分に置かれたホールセンサHS(図8)は、例えば、糸の巻線の巻き付けを数える働きをすることができる。ホールセンサは、巻き付け要素Wに設けられた永久磁石PMと位置合わせすることができる。
【0074】
給糸装置18によって実行される方法は、2つの後続する挿入サイクル(ノッチI’)について、図14を用いて説明される。横軸は、時間t又は織機の回転角度のそれぞれを示し、縦軸は特に、2つの対向する方向における組立体H、Gの移動ストロークを表す。
【0075】
ノッチI’の水平な下側の部分は、その間に糸の消費が起こらない時間を表し、曲線の弧状部分は、その間に挿入システムAによって所定の緯糸の長さが織機の織杼口の中に挿入される挿入をそれぞれ表す。
【0076】
曲線IIは、組立体Hの、すなわち停止要素24の、解放位置aと係合位置bとの間のほぼ半径方向の調整を示す。曲線IIIは、組立体Gの、すなわち糸クランプ20の境界面43に対するクランプ表面44の、クランプ位置dと受動位置cとの間の、突出部41の縦方向における調整を示す。曲線IVは、図8に示されるものと同様なホーム位置fと、図10に示されるものと同様な停止位置との間の、引き出し方向への及び該方向とは反対の方向への、組立体Hにおける停止要素24の移動を示す。曲線Vは、組立体Gの、すなわち糸クランプ20の、図7の二重矢印22の方向、すなわち、糸クランプ20が支持体Sに最も遠い位置gから中間位置hを越えて支持体Sに最も近い位置iになるまでの間の、引き出し方向に及び該方向とは反対の方向における調整を示す。
【0077】
曲線IIによると、解放位置にある挿入前の停止要素24は、時点t1で係合位置bに調整され、より明確には、曲線IVによると、巻き付け要素Wに近接したホーム位置fにある。ここで引き続き新しい糸の巻線が形成され、曲線IVによると、該巻線によって運ばれる停止要素24は、時点t3までに徐々に停止位置eに到達する。時点t1で停止要素24が係合位置bに調整されたとき、曲線IIIによると、糸クランプ20は依然としてクランプ位置dにあり、該糸クランプ20は、依然として緯糸を保持する。曲線Vによると、糸クランプ20は、この間、依然として支持体Sから最も大きな距離をもつ位置gにある。例えば、時点t2でトリガ信号が送信される。糸クランプ20は、ここで受動位置cに調整される。挿入が始まる。受動位置において、糸クランプ20が徐々に中間位置hに移動され、曲線Vによると、該糸クランプ20は時点t4で中間位置hに到達する。時点t3で挿入が終わることになる。曲線IVによると、停止要素24は停止位置eに到達して停止し、これにより緯糸がキャッチされる。挿入が終了する。曲線IIIによると、時点t4で糸クランプ20は再びクランプ位置dに調整され、これにより糸クランプ20が再び糸を保持する。曲線IVによると、閉じられた糸クランプ20は、その後、中間位置hから支持体Sに最も近い位置iに移動され、これにより該糸クランプが停止要素24と該糸クランプ20との間の糸部分を弛緩する。曲線IIによると、時点t4で糸が弛緩された後に、停止要素24が解放位置に移動される。この移動は、糸が既に弛緩されているので、糸に対する顕著な摩擦なしで、及び糸のジャーク運動なしで行われる。曲線IVによると、停止要素24が解放位置に到達するとすぐに、該停止要素24は、動力駆動装置33によって、時点t1におけるホーム位置fに到達するまで、停止位置eから巻き付け要素Wに近いホーム位置fに移される。次に、停止要素24は、時点t2で次の挿入が始まる前に、係合位置b(曲線II)に再び調整される。停止要素24が曲線IIにおける時点t5で解放位置に移された後に、糸クランプ20は、曲線Vによると、支持体Sに最も近い位置iから位置gまで引き出し方向に徐々に移動され、該位置gにおいて、糸クランプは(曲線IIIによると)時点t2まで、すなわち挿入が始まるまで糸を保持する。
【0078】
曲線Vによると、糸クランプ20は、最初に位置gから中間位置hに徐々に調整され、該糸クランプ20は時点t4で中間位置hに到達する。そのときだけ、及び停止要素24が解放位置に調整された後に、位置iへのさらなる調整が実行される。
【0079】
或いは、糸クランプ20は、曲線Vとは異なり、時点t2とt3の間にほぼ位置gに残っていてもよい。この場合、糸クランプ20は、最初に時点t4の後に位置iに向けて一ストロークで調整され、該クランプが時点t5で又はそのすぐ前に位置iに到達する。
【0080】
1つの停止要素24しかない場合には、解放可能な緯糸の長さだけを、支持体S(直径D’)の周方向の長さの整数の倍数とすることができる。緯糸の長さを織機の織幅に適応させるために、直径D’は可変でなくてはならない。この目的のために、及び図15及び図16によると、支持体Sは可変の直径をもつように設計される。ロッド19は、グループになっていることが好ましく、静止キャリア23のガイドにおいて半径方向に移動可能なフィンガ51に設けられる。フィンガ51のそれぞれの半径方向の調整位置は、少なくとも1つの締め付けねじ52によって固定される。各々のフィンガ51は、個々の調整偏心装置53を有し、支持体Sの直径D’を無段階に変えることを可能にする。調整偏心装置は、フィンガ51のカットアウト56を貫通する調整偏心部分55を含む。調整偏心部分55の機能は、図16を参照して説明される。
【0081】
偏心部分55は、具体的には(周方向の溝61に係合する図示されていない安全要素によってしかるべき位置に固定された)回転可能な部分58によって、図16におけるキャリア23の軸線57の周りに回転可能に支持される。調整偏心部分55は、その偏心軸線が回転軸線57に対してずらされている偏心部分59と、回転ツールに係合するためのハンドル60とを備える。偏心部分59は、フィンガ51のほぼ周方向に延びるカットアウト56に、好ましくは滑りばめ状態で係合する。調整偏心部分55を、例えば制限された180°の回転範囲に亘って転向させることにより、各々のフィンガ51についての全体の調整範囲が定められる。調整は、締め付けねじ52を最初に緩めた後に行われる。締め付けねじ52を再び締めることによって、新しい調整位置が固定される。
【0082】
或いは、その偏心部分59がキャリア23のカットアウトの中にある状態で係合するように、カットアウト56と同様の(図示されていない)調整偏心部分55だけをフィンガ51に回転可能に支持することができる。
【0083】
図17は、本方法により、多数の巻線がどのように糸の巻線パッケージに形成されるのかを概略的に示す。多数の巻線は、幾つかの緯糸の長さに対応する。各々の緯糸部分の長さを定めるために、幾つかの停止要素24’が設けられ、該要素は、便宜上、糸の巻線パッケージと共に引き出し方向に移動し、かつ選択された巻線T’と係合するようにすることができる。巻線T’は、例えば、事前に巻き付け要素W(二重矢印63)の近くに配置された、1つの大きめの巻線T’を形成する装置62によって、隣接する巻線Tより大きく形成される。それぞれの選択された停止要素24’が、引き出し方向の下流に位置するすべての巻線T’の挿入を終わらせるために、大きい巻線T’の1つと係合する。その後、この停止要素24’は、例えば、次の挿入が始まると直ぐに転向運動によって解放位置に戻され、該次の挿入は、後続する係合停止要素24’によって終わらされる。
【0084】
図18において、停止要素24’がフック状に形成され、回転可能な軸受に保持される。停止要素24’は、ギヤのリムによって、係合位置と解放位置との間で前後に転向することができる。図17における矢印64は、前方に運ばれる糸の巻線パッケージと停止要素24との移動を示す。
【0085】
糸クランプ20の下流の糸経路に、制御された糸ブレーキを設けることができる(図示せず)。
【0086】
挿入システムが自動的に、機械的に緯糸の長さを定めることができるような織機(プロジェクタイル織機、又はレピア織機)の場合には、組立体H、Gは省略できる。
【0087】
糸を自由な巻線パッケージ部分Bから引き出している間、最前列の巻線の糸は、最初に、さらにほぼ軸線方向に進む前に、直接ほぼ半径方向内向きに進む。糸の巻線間の付着と糸材料の弾力性及び活発性により、時折、殆ど全ての巻線が内向きに移動するか、又は糸が最前列の巻線から内向きに螺旋状に進むことがある。これは、時折、もつれが形成されることを意味し、活発な糸材料の場合においては、糸が交差する場所で完全にねじれる傾向があることを意味する。引き出し速度が高いと、そうしたもつれによって、結び目が生じたり、又は排除されずに挿入されることがある。これは、布地の不良を招いたり、又は挿入を妨害することがある。この理由のために、図19においては、もつれ抑制体70が設けられており、該抑制体が上述の作用を排除する。フィンガ51におけるロッド19は、キャリア23において支持体Sに取り付けられ、その周りを巻き付け要素Wが例えば矢印の方向に回転し、ある軸方向の長さと上述の直径D’とを有する支持表面を定める。もつれ抑制体68、70は、脚部69によってロッド19内の支持体Sに静止して固定される。もつれ抑制体68、70は、簡単に取り外し可能に挿入するか、又はねじ込むことができる。もつれ抑制体68、70は、支持体Sの前端を越えて、すなわちロッド19によって定められた前端を越えて、ほぼ支持体の軸線方向に延び、自由端71を有する。図示された実施形態においては、テーパした回転対称ピン70が設けられ、該ピンの直径は、支持表面の直径よりも著しく小さい。少なくとも自由端71は、支持表面の直径のほんの僅かに過ぎない直径をもつ。ピン70は、直線的な円錐状であるか、或いは凹状の又は凸状の母線を有することができる。それはさらに、先の尖った円錐状に、又は円柱としても形成することができる。ピンの被覆表面72は滑らかであるべきであり、幾つかの場合においては、該表面は、糸に対して出来るだけ小さい摩擦抵抗を生じさせるために、低摩擦のオーバーレイをもつこともできる。図示された実施形態においては、もつれ抑制体68は、その自由端71が引き出し方向に糸クランプ20の位置を越えたところまで達する。糸クランプ20は、支持体の軸線の外側の支持体Sから糸の引き出し経路に配置され、停止要素24から外れた糸が安全にクランプ部分42に到達するように停止要素24とほぼ位置合わせされる。図19はまた、停止要素24のための案内スロット31も示す。
【0088】
もつれ抑制体68のピン70の自由端71は、必ずしも糸クランプ20の下流にある必要はない。自由端71を、糸クランプ20の位置に正確に置くか、又はさらに糸クランプ20と支持体Sとの間に置くことも可能である。各々の場合において、もつれ抑制体68は、もつれがねじれたり、時折それらの下流で結び目が形成されたりすることが妨げられるように、支持体Sの前端を越えて突出するべきである。
【0089】
作動において、引き出された糸は、少なくとも時々、被覆表面72と接触することができる。もつれが進行し、該もつれがその交差位置の周りでねじれる傾向がある場合、例えば、活発な糸材料の場合には、これは、もつれ抑制体68の全体によって妨げられる。もつれは、ねじれることができずに、解かれて、解消されるか、又は排除される。驚くことに、もつれ抑制体68の特に建設的な効果は、挿入システムに入る糸の非常に穏やかな進行挙動である。
【0090】
もつれ抑制体68は、プラスチック材料又は金属から構成することができる。ピンの代わりに、幾つかの平行な又は円錐状に収束するワイヤ部等を用いることができる。述べられたように、円錐状のピン70は、その被覆表面72の凹状又は凸状の母線をもつように形成することができる。
【0091】
信頼性のある糸引き出しセンサ(図20及び図21)を配置して、引き出された巻線を検知するために、もつれ抑制体68を有利に用いることができる。図20においては、反射面73(例えば、鏡)が被覆表面72の上に又は該表面に置かれる。表面75は、光電センサ74、75と協働する。図21においては、ピン70に横方向の通路76が形成される。発光センサ74’、75’の検知ビームが横方向の通路76を通して導かれる。図20においては、各々の巻線は1通過毎に1度(1カウント)検知され、図21においては、各々の巻線は1通過毎に2度(2カウント)検知される。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明による方法、すなわち、緯糸部分を織機の中に挿入する方法の過程の略図である。
【図2】緯糸材料のいわゆる曲率を記憶するのに最小の強制されない能力を説明する概略的な斜視図である。
【図3】変形例の詳細である。
【図4】変形例のさらなる詳細である。
【図5】引き出し開始前の変形例のさらなる詳細である。
【図6】引き出し開始後の図5の変形例の詳細である。
【図7】給糸装置の斜視図である。
【図8】図7の半径方向断面図である。
【図9】移動可能な停止要素が定位置にある別の実施形態の、図8の半径方向断面と同様な半径方向断面図である。
【図10】停止要素が別の位置にある同じ実施形態の図9と同様な半径方向断面図である。
【図11】図10における平面XI−XIの断面の詳細である。
【図12】さらに別の実施形態の概略図である。
【図13】例えば図7において用いられるような糸クランプの縦断面図である。
【図14】異なる曲線によって、本方法の間の相対的な関係における幾つかの構成要素の作動を示す線図である。
【図15】図7の詳細の斜視正面図である。
【図16】図15の詳細の拡大された斜視図である。
【図17】方法及び装置の変形例の概略図である。
【図18】図17の給糸装置の詳細の平面図である。
【図19】さらなる詳細の斜視図である。
【図20】変形例の詳細の斜視図である。
【図21】さらに別の変形例の斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機(L)用の給糸装置(18)であって、前記給糸装置は巻き付け要素(W)と機械式の緯糸長さ測定組立体(G,H)とを含み、前記巻き付け要素(W)は、静止したほぼドラムの形状の支持体(S)に対して回転可能であり、等しい形状の隣接して置かれた巻線(T、T1)からなる管状の糸の巻線パッケージであって少なくとも前記巻き付け要素(W)の巻き付け動作によって支持体(S)上で引き出し方向前方に運ばれる糸の巻線パッケージを形成し、前記緯糸長さ測定組立体(G,H)は、支持体(S)と協働するための少なくとも1つの停止要素(24)であって外側から糸の巻線を支持するように係合する径方向内側に変位された係合位置(b)と径方向に後退した糸の巻線と係合しない解放位置(a)との間で駆動装置(26)によって移動可能である停止要素(24)を含み、
停止要素(24)は、支持体(S)に対して引き出し方向に移動可能であり、停止要素(24)を径方向に後退した開放位置(a)から引き出し方向と反対に、巻き付け要素(W)に近い所定の終了位置(f)に移動させるために動力駆動装置(33)が設けられ、且つ、停止要素(24)は、径方向内側に移動された係合位置(b)にあるときには、終了位置(f)から引き出し方向に、前方に搬送された巻線パッケージの糸の巻線のみによって、所定の停止位置(e)に移動可能であることを特徴とする装置。
【請求項2】
支持体(S)の下流の糸経路に、糸クランプ(20)が、糸のクランプ位置(d)と糸を開放する受動位置(c)との間で調整可能に設けられ、糸クランプは、停止要素(24)をその解放位置(a)から係合位置(b)への移動に遅れるよう関連付けられて、糸クランプ(20)をクランプ位置(d)から受動位置(c)に移動するための、及び、停止要素(24)をその係合位置(b)から解放位置(a)への移動に先立つように関連付けられて、糸クランプ(20)を受動位置(c)から糸を保持するクランプ位置(d)に再調整するための駆動装置(48、46)を備えることを特徴とする請求項1に記載の給糸装置。
【請求項3】
糸クランプは、該糸クランプ(20)を引き出し方向及び反対方向に前後に移動するための補助駆動装置(21)を含み、且つ、補助駆動装置(21)と、糸クランプ(20)の駆動装置(48、46)と、停止要素(24)の駆動装置(26)とは、停止要素(24)の係合位置(b)から解放位置(a)への移動に先立つように関連付けられて、クランプ位置(d)にある糸クランプ(20)が、引き出し方向とは反対方向に停止要素(24)に向かって移動できるように直列的に制御されることを特徴とする請求項2に記載の給糸装置。
【請求項4】
ヒンジ(28)が、停止要素(24)と駆動装置(26)との間に設けられ、停止要素(24)は、支持体(S)か又は支持体(S)に隣接して配置される構造体(34)において、ヒンジ(28)の引き出し方向(X)に垂直に延びるヒンジ軸線の周りで、又は、引き出し方向に延びるガイド(30、31’)において、引き出し方向に移動可能に案内されることを特徴とする請求項1に記載の給糸装置。
【請求項5】
駆動装置(33)が、静止の且つ制御されたソレノイド(33’)を含み、該ソレノイド(33’)は、作動されたときに、引き出し方向とは反対方向に、停止要素(24)における磁気部分(33)において力を生成させることを特徴とする請求項1に記載の給糸装置。
【請求項6】
停止要素(24)の停止位置(e)を定めるための停止部(32、32’)が、支持体(S)か又は支持体(S)に隣接して配置された静止構造体(34)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の給糸装置。
【請求項7】
停止位置(e)にある停止要素(24)が、所定の弾性的な反力に対して、支持体(S)の周方向に偏向可能であることを特徴とする請求項1に記載の給糸装置。
【請求項8】
停止要素(24)が、ヒンジ(28)のばね性の部分(28’)による所定の反力に対して支持体(S)の周方向に偏向可能であることを特徴とする請求項7に記載の給糸装置。
【請求項9】
リテーナ(36)が、支持体(S)か又は支持体(S)に隣接して配置された静止構造体(34)に設けられ、リテーナ(36)は、停止位置(e)を定めるための停止部(32’)を形成し、リテーナ(36)は、停止要素(24)により、支持体(S)の周方向に、リテーナ(36)を付勢するバネ(37)の所定の弾性的な反力に対して変位可能であることを特徴とする請求項7に記載の給糸装置。
【請求項10】
糸クランプ(20)は、ノッチの形状の糸クランプ領域(42)を含む管状の小直径の突出部(41)を有し、突出部(41)は糸の巻線パッケージの外径(D)の軸方向投影の外側の支持位置から、糸の引き出し経路を通る引き出し方向を横切って支持体(S)の前端の近くに配置され、糸クランプ(20)の補助駆動装置(21)は、引き出し方向に対して及び突出部(41)の縦軸に対して垂直な回転軸線(21’)を有する回転駆動装置か、又は引き出し方向に本質的に平行な方の糸クランプの変位を生成するための直線変位駆動装置によって構成されることを特徴とする請求項2に記載の給糸装置。
【請求項11】
ノッチの形状のクランプ領域(42)が、突出部(41)における外向きに開口したノッチの境界表面(43)と、突出部(41)の中に縦方向に変位可能に収容されたボルト(45)のクランプ表面(44)とによって定められ、糸クランプ(20)のクランプ位置(d)にあるボルト(45)は、境界表面(43)に対するばね力(46)によって付勢されることを特徴とする請求項11に記載の給糸装置。
【請求項12】
糸クランプ(20)の駆動装置が、プランジャの形状のアーマチャ(49)を含む切換磁石(48)を含み、切換磁石に電流が供給されたときに、アーマチャ(49)は、ばね(46)の力に抗してボルト(45)に係合し、糸クランプ(20)のクランプ位置(d)においては、アーマチャ(49)とボルト(45)との間に所定の中間距離(50)が維持されることを特徴とする請求項11に記載の給糸装置。
【請求項13】
もつれ抑制体(68)が、支持体(S)の中心に設けられ、もつれ抑制体(68)は、支持体の軸線と引き出し方向にほぼ位置合わせされて支持体(S)から延び、もつれ抑制体(68)は、支持体(S)の前方に距離をおいた位置に配置された自由端(71)を有することを特徴とする請求項1に記載の給糸装置。
【請求項14】
もつれ抑制体(68)は、自由端(71)に向けてテーパした回転対称の被覆表面(72)を有し、糸の引き出しセンサ(73、74、75、74’、75’、76’)が、もつれ抑制体(68)に構造的に関連付けられることを特徴とする請求項13に記載の給糸装置。
【請求項15】
もつれ抑制体(68)が円錐状のピン(70)であることを特徴とする請求項13に記載の給糸装置。
【請求項16】
被覆表面(72)は滑らかであり、且つ低摩擦のオーバーレイを与えられていることを特徴とする請求項14に記載の給糸装置。
【請求項17】
巻き付け要素(W)と支持体(S)の表面との間に糸の前進要素が設けられ、前進要素は、ウォブル運動のために巻き付け要素(W)の回転と同期して駆動されることを特徴とする請求項1に記載の給糸装置。
【請求項18】
複数の糸の前進要素が、支持体(S)のロッド・ケージのロッド(19)の間に設けられ、前進要素は、巻き付け要素(W)と同期して該前進要素を前後に揺動するように駆動する共通の駆動装置に連結され、各々の前進要素は、前方移動の間においては、隣接するロッド(19)に対して及び該ロッドを外向きに越えて突出し、後方移動の間においては、隣接するロッド(19)に対して内向きに及びロッド(19)の後ろに戻ることを特徴とする請求項1に記載の給糸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−308870(P2007−308870A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190140(P2007−190140)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【分割の表示】特願2002−536124(P2002−536124)の分割
【原出願日】平成13年10月17日(2001.10.17)
【出願人】(302042106)イーロパ アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】