説明

給紙装置及び画像形成システム

【課題】本発明の目的は、重送及び給紙不良の防止に優れ、多種多様な用紙を用いるプリントオンデマンド市場の要求を達成可能なエア吸着給紙装置を提供すること。
【解決手段】用紙が前記搬送ベルトに吸着された状態で複数の搬送ベルトの少なくともひとつを他の搬送ベルトに対し相対的に変位させるベルト変位手段を備えることによって、重送防止及び給紙性能に優れた給紙装置の提供を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙載置台に積載した用紙の束を1枚ずつ分離して給紙する給紙装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンター等の画像形成装置には、大量の用紙を給紙可能なエア捌き吸着給紙装置が用いられている。エア捌き吸着給紙装置は、積載された用紙の側面に空気を吹き付けて用紙を浮上させ、空気が吸引させる吸気口が形成された孔開きベルトに用紙を吸着させ、該ベルトを回転駆動して用紙を搬送するものである。
【0003】
従来、上記のエア捌き吸着給紙装置は同一サイズ及び紙種の用紙を大量に給紙する用途に使われた。しかし、近年、製版行程を得ずにコンピュータ等で作成されたデータを直接印刷する、プリントオンデマンドと称される印刷市場が拡大すると、印刷分野で用いられる多種多様な用紙を大量に給紙することが可能なエア捌き吸着給紙装置の要求が強くなっている。
【0004】
特に、多種多様な用紙を1枚ずつ搬送ベルトに吸着して順次送り出し、重送が確実に防止可能な、エア吸着給紙装置が求められている。
【0005】
エア吸着給紙装置の重送防止について、以下に示すいくつかの文献に提案されている。
【0006】
特許文献1に記載の給紙装置は、トレイ上に積載されている用紙を吸引ベルトにより吸引して最上位の用紙から順次送り出す給紙装置で、用紙をさばく(分離する)ために、用紙の側方から空気を吹き付ける機構(ノズル)が設けられている。このノズルから用紙に空気を吹き付ける角度を変えることができ、用紙が薄い場合には角度を大きくして用紙に当たる風量を小さくして舞い上がるのを防止し、用紙が厚い場合には角度を小さくして当たる風量を大きくして確実にさばけるようにしている。
【0007】
特許文献2に記載の給紙装置は、トレイ上に積載されている用紙の最上位を複数の吸引フィンガーで吸着して持ち上げて、幅方向に配設された複数の孔あきベルトに空気吸引で吸着しながら搬送する給紙装置である。
【0008】
特に、ベルトの間に下方に突出したコルゲーションを設けて、ベルトに吸着された1枚目用紙に曲げ(しわ)を形成して、1枚目と一緒に吸着している2枚目用紙を1枚目から分離して、重送を防止するものである。更に、用紙搬送方向の上流側にエアナイフ(空気吹きつけノズル)を設けて、空気の吹き付けにより1枚目と2枚目の分離を補助するものである。
【0009】
特許文献3に記載の給紙装置は、トレイ上に積載されている用紙束の上方に吸引装置が配設されている。吸引装置には、幅方向に張架され多数の孔付きの複数の搬送ベルトと、搬送ベルトの内側に配置されたダクトと、ダクト内を減圧する吸引ファンと、を有し、用紙束の最上位用紙を複数の搬送ベルトに吸着して用紙を順次送り出す給紙装置である。
【0010】
特に、複数の搬送ベルトの間で下方に突出させたり、埋没させたり、作動部材(コルゲート)を作動させるコルゲート作動機構を有しており、コルゲートの突出時に搬送ベルトに吸着した1枚目用紙に曲げ(しわ)を形成して、吸着している2枚目用紙を1枚目用紙と分離させて重送を防止するものである。コルゲートを埋没させてから搬送ベルトを回動させることによって、1枚目用紙の曲げ(しわ)を取り除いてから1枚目用紙を下流側に搬送するために用紙のシワ等の発生もなく確実な重送防止が可能であると提案するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平05−24692号公報
【特許文献2】特開平10−203663号公報
【特許文献3】特開2007−1744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の給紙装置ではノズルの角度及び空気吹き付けの強度を適正化にすることによって重送防止においてある程度の改善を図ることができる。
【0013】
ところが、上記のプリントオンデマンド市場では、更なる高い性能の重送防止性能を有する重送防止技術、及び当該技術を用いたエア捌き吸着給紙装置が希求されている。
【0014】
特許文献2に記載の給紙装置では、1枚目用紙が突出したコルゲートによって波打ち形状を成すために、2枚目用紙が1枚目用紙から離れて波打ちのない平坦な姿勢を取り、重送防止が効果的に達成される。しかしながら、滑らかで薄い用紙で重送防止が可能な突出量のコルゲートにすると、つぎのような給紙不良の問題が発生した。
【0015】
その1;1枚目用紙が波打ち状態で下流側の用紙搬送部に送られて、用紙搬送部で紙シワ、紙折れ、あるいは用紙詰り等の給紙不良が発生した。
【0016】
その2;滑らかで薄い用紙が重送しない程度にコルゲートを突出すると、厚紙では波打ちのために用紙の柔軟性が損なわれて給紙部において紙詰まり、あるいは紙曲がり等の給紙不良が発生した。
【0017】
特許文献3に記載の給紙装置では、コルゲートを突出させた状態下で1枚目用紙が孔あきベルトに吸着する。次に2枚目用紙が分離した状態でコルゲートを埋没させることによって、用紙の波打ちがほぼ解消された状態で1枚目用紙を下流側の搬送部(搬送ロール部)に搬送させる。従って、紙シワ、紙折れ、あるいは用紙詰り等の給紙不良の発生もなく重送防止が図れると記載されている。
【0018】
ところが、用紙は伸縮性を有するものではなく、実際にコルゲートを用紙から退避させて埋没させても、ベルトに吸着した1枚目用紙における波打ちの高さに大きな変化が見られない。従って、特許文献2に記載の給紙装置と同様に、滑らかで薄い用紙が重送しない程度にコルゲートを突出させると、用紙搬送部で紙シワ、紙折れ、あるいは紙詰まり等の給紙不良が発生した。
【0019】
また、用紙の種類に応じてコルゲートの突出量を適切に変えることができるために、特許文献2に記載の給紙装置に比較すると、重送防止と給紙不良防止の両立性に優れるものである。ところが、多種多様な用紙を用いるプリントオンデマンド市場では、様々な用紙に対して適正なコルゲートの突出量を事前に把握することは実質的に困難であるために、操作者が給紙不良等の発生状況に照らしながら試行錯誤しているという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、重送防止及び給紙性能に優れ、多種多様な用紙を用いるプリントオンデマンド市場の要求を達成可能な給紙装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的は、下記に記載する発明により達成する。
【0022】
1.用紙を積載する用紙載置台と、
前記用紙載置台に積載された用紙の上方に位置し、空気の負圧によって複数の搬送ベルトの吸着面に用紙を吸着した状態で前記複数の搬送ベルトを用紙搬送方向に回動して用紙を搬送する吸着搬送手段と、
を備える給紙装置であって
用紙が前記吸着面に吸着された状態で、前記搬送ベルトの吸着面の少なくともひとつを他の搬送ベルトの吸着面に対して相対的に変位させ、前記用紙に局部的な歪みを形成して前記用紙に密着する他の用紙を前記用紙から分離するベルト変位手段を有することを特徴とする給紙装置。
【0023】
2.前記ベルト変位手段は、用紙が前記搬送ベルトの吸着面に吸着された状態で、相対的に変位させた前記吸着面の位置関係を相対的に変位させる以前の位置関係に戻し、前記用紙の局部的な歪みを取り除くことを特徴とする前記1に記載の給紙装置。
【0024】
3.前記搬送ベルトの吸着面の少なくともひとつを他の前記搬送ベルトに対して相対的に変位させる方向が用紙搬送方向であることを特徴とする前記1又2に記載の給紙装置。
【0025】
4.前記搬送ベルトの吸着面の少なくともひとつを他の前記搬送ベルトに対して相対的に変位させる方向が前記用紙搬送方向と直交する用紙幅方向であることを特徴とする前記1又2に記載の給紙装置。
【0026】
5.前記複数の搬送ベルトの各々をそれぞれ独立に回動可能な駆動部を有し、
前記ベルト変位手段は、前記搬送ベルトの少なくともひとつが他の前記搬送ベルトに対して異なる距離を回動させるよう、前記駆動部を作動することを特徴とする前記3に記載の給紙装置。
【0027】
6.前記用紙幅方向に移動可能に支持され、前記複数の搬送ベルトを前記用紙搬送方向に回動可能に支持する複数のベルト支持部を有し
前記ベルト変位手段は、前記搬送ベルトの少なくともひとつが他の前記搬送ベルトに対して近づくよう、前記ベルト支持部を前記用紙幅方向に移動させることを特徴とする前記4に記載の給紙装置。
【0028】
7.前記吸着搬送手段に対し前記用紙搬送方向の下流に位置し、前記吸着搬送手段に吸着された用紙の端部に空気を吹き付ける送風手段を有することを特徴とする前記1から6までの何れか1項に記載の給紙装置。
【0029】
8.前記1から7までの何れか1項に記載の給紙装置と、前記給紙装置から搬送された用紙上に画像形成する画像形成装置とを備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、用紙が複数の搬送ベルトに吸着された状態で複数の搬送ベルトの一方を他方に対して相対的に変位させるベルト変位手段を備え、重送防止及び給紙性能に優れた給紙装置の提供を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】画像形成装置、画像読取装置、自動原稿送り装置、大容量給紙装置から構成された画像形成装置の全体構成図。
【図2】本発明に係る給紙装置の要部を示す斜視図。
【図3】本発明に係る第1実施形態の給紙装置を示す正面中央断面図。
【図4】本発明に係る第1実施形態の給紙装置を示す側面図。
【図5】第1実施形態の重送防止機構の下で吸着搬送手段60に吸着された1枚目用紙P1の姿勢を示す模式図。
【図6】吸着搬送手段60に吸着された1枚目用紙P1と1枚目用紙P1に密着している2枚目用紙P2の姿勢を示す模式図。
【図7】本発明に係る給紙装置要部の制御を司る制御部100を示すブロック図。
【図8】第2の実施形態に係る重送防止機構を示す側面図。
【図9】ベルト間隙変更機構の要部を示す側面図。
【図10】第2実施形態の重送防止機構の下で吸着搬送手段60に吸着された1枚目用紙P1の姿勢を示す模式図。
【図11】第1の実施形態に係る給紙装置主要部の動作を示すタイムチャート。
【図12】第2の実施形態に係る給紙装置主要部の動作を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明の実施の形態を図面により説明するが、本発明は、以下に説明する実施の形態に限られるものではない。
【0033】
[画像形成装置]
図1は、画像形成装置A、画像読取装置SC、自動原稿送り装置DF、大容量給紙装置LTから構成された画像形成装置の全体構成図である。
【0034】
図示の画像形成装置Aは、感光体(像担持体)1、帯電手段2、像露光装置3、現像装置4、転写手段5、クリーニング手段6、等から成る画像形成部と、定着装置7及び用紙搬送系と、から構成されている。
【0035】
用紙搬送系は、給紙カセット10、第1給紙手段11、第2給紙手段12、排紙手段14、搬送路切換手段15、循環再給紙手段16、反転排紙手段17を有する。
【0036】
自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿dは、給紙手段により画像読取装置SC上に搬送され、画像読取装置SCで片面又は両面の画像がイメージセンサCCDに読み込まれる。イメージセンサCCDからアナログ信号が画像処理部20に出力される。
【0037】
画像処理部20は、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行い、所定のタイミングで像露光装置3に画像信号を出力する。
【0038】
画像形成部において、感光体1に対し、帯電手段2により電荷(本実施の形態では負帯電)が付加され、像露光装置3からのレーザ光照射により静電潜像が形成され、現像装置4により静電潜像が顕像化されてトナー像(本実施の形態のではトナーは負電荷である)が形成される。次いで、給紙カセット10に収容された用紙Pが第1給紙手段11から搬送される。用紙Pは、レジストローラから成る第2給紙手段12でトナー像との同期がとられて搬送され、転写手段5でトナー像が転写される。その後、トナー像が定着装置7で用紙上に定着され、用紙Pは排紙手段14により装置外に排出される。
【0039】
一方、転写後に感光体1に残余した残トナーはクリーニング手段6により除去される。
【0040】
なお、両面コピーの場合は、第1面に画像形成された用紙Pは、循環再給紙手段16に送り込まれて反転され、再び画像形成部において第2面に画像形成後、排紙手段14により装置外に排出される。反転排紙の場合は、通常の排紙通路から分岐した用紙Pは、反転排紙手段17においてスイッチバックして表裏反転された後、排紙手段14により装置外に排出される。
【0041】
[給紙装置]
画像形成装置Aに接続された本発明に係る大容量給紙装置LTは、給紙装置本体30、送風手段としての第1送風手段40及び第2送風手段50、吸着搬送手段60等を有し、大量の用紙Pを収容して、画像形成装置Aに用紙Pを1枚ずつ給送する。
【0042】
給紙装置本体30は、用紙載置台31、用紙先端規制部材32、用紙後端規制部材33、ガイドレール34を有する。用紙載置台31は3段に構成され、各用紙載置台31は、ガイドレール34により大容量給紙装置LTのから引き出し可能に構成されている。例えば、大容量給紙装置LTには、第1段のトレイに1300枚、第2段及び第3段のトレイに1850枚を収容でき、全体として6000枚程度の用紙を収容できる。
【0043】
図2は本発明に係る給紙装置本体30の要部を示す斜視図で、図3は給紙装置本体30の正面断面図で、図4は給紙装置本体30の側面図である。
【0044】
図2の吸着搬送手段60は、実際に給紙装置本体30に設置された位置より、用紙搬送方向の下流側に矢印bだけ水平にシフトした仮の位置で示されている。
【0045】
図2に示すように、用紙束Psと最上位の用紙P1は、用紙載置台31の上に載置され、図示しない機構により用紙載置台31と共に昇降可能に収容されている。
【0046】
一対の用紙側端規制手段70は用紙搬送方向と直交する幅方向において用紙束Psを規制するものであり、用紙束Psの側端に近接する用紙側端規制部材71を内側に有している。用紙側端規制手段70は、用紙の幅方向において相対距離が自在に変更でき、用紙サイズに対応して用紙束Psの幅方向の位置を規制している。
【0047】
用紙側端規制手段70は、用紙の送り方向に十分に長く、剛性強度の大きい箱形構造を成しており、用紙束Psの最上部においても用紙側端規制部材71と用紙の側端との間隙を広い範囲の用紙サイズに対しても所定範囲以下に保持可能である。
【0048】
用紙先端規制部材32は、用紙載置台31上の用紙束Psの先端を規制するものであり、給紙装置本体30に固設している。
【0049】
用紙後端規制部材33は、用紙Pの長さ方向に移動自在で、用紙Pの送り方向後端の位置を規制するものであり、用紙送り方向に変位可能に給紙装置本体30に支持されている。用紙側端規制部材71と用紙後端規制部材33は、後述の風の吹き付けで浮上された用紙Pも常に規制できるような高さと形状を備えている。
【0050】
また、図3に示すように、用紙後端規制部材33には、用紙載置台上に積載された用紙束の最上部の高さを検知する用紙高さセンサPS3が配置されている。
【0051】
用紙載置台31上に積載された用紙束Psの最上位は、後述の制御手段によって用紙高さセンサPS3の信号に基づき空気の吹き付けが受けられる最適な高さに維持される。つまり、図3に示す用紙高さセンサPS3の検知結果に基づき図示しない昇降モータを駆動させ用紙載置台31を上昇させて、常に用紙の最上部を所定の高さに維持するような制御を行っている。
【0052】
<空気の吹き付けによる用紙捌き機構>
図2に示すように、用紙束Psの最上部に用紙搬送方向及び用紙の幅方向から風が吹き付けられている。用紙の幅方向は矢印A1、A2で示す2つの方向をあり、用紙搬送方向についても矢印B1、B2に示す方向がある。
【0053】
《第1送風手段》
図2及び図3に示すように、幅方向から用紙束Psの上部に風を吹き付ける第1送風手段40は、用紙載置台31の両側面に配設されている。第1送風手段40は、用紙側端規制手段70に配設されている。第1送風手段40は送風ファン41とガイド板42等で構成さている。矢印A1、A2で示す風の吹き付けは、用紙側端規制手段70の用紙側端規制部材71に配設された第1送風口72から用紙束Psの上部に風を吹き付けている。図4に示すように、送風ファン41は吹出口を上向きにして用紙側端規制手段70に取り付けられている。上向きに排出された空気は、ガイド板42により90°向きを変えられ、用紙側端規制部材71の第1送風口72から水平方向に吹き出される。
【0054】
また、第1送風口72及び第1送風手段40は用紙側端規制手段70に取り付けられており用紙側端規制部材71と一体に移動可能であり、用紙サイズの変更に対応して常に用紙束Psに対し一定の位置関係を維持可能にしている。
【0055】
図3で示すように、第1送風口72に対し用紙送り方向の上流側に位置する用紙側端規制部材71の壁面に複数の排気口73を有しており、浮上した用紙が姿勢を大きな歪みが生じないようにしている。
【0056】
《第2送風手段》
次に、用紙の送り方向における用紙載置台31の下流側に配設する用紙分離手段としての第2送風手段50について、図2、図3に基づき説明する。
【0057】
第2送風手段50は、電動ファン51と電動ファン51に接続する送風ガイド52により構成されている。第2送風手段50は、送風ガイド52の第2送風口53Aからを用紙載置台に積載する用紙束の先端・最上部に対して空気を吹き付けている。電動ファン51は送風ガイド52内に取り付けられている。送風ガイド52の上部には、用紙搬送方向の下流側に向いた第2送風口53Aを有している。第2送風口53Aからの風の吹き出しは図2の矢印B1に示すように用紙搬送方向の下流側に水平に向かっている。
【0058】
第2送風口53Aから吹き出される風は、用紙束Psの最上部の用紙Pを捌き浮上させるための風であり、用紙束Psの前端上部に吹き付けられている。
【0059】
また、送風ガイド52の上部には、第2送風口53Aの下流側に第3送風口53Bを有し、第3送風口53Bは上方に向いて開口している。第3送風口53Bからの風は、図2の矢印B2に示すように上流側を搬送する用紙に対し吹き付けるように斜め上方に向いている。第3送風口から吹き出される風は、吸着搬送手段60に吸着され搬送される用紙を1枚に分離するためのものであり、吸着搬送手段60の搬送ベルト63に吹き付けられている。
【0060】
送風ガイド52は、図3に示すように第2送風口53Aと電動ファン51とを連結する、あるいは第3送風口53Bと電動ファン51と連結するダクト構造に形成している。ダクトは第1ダクト54Aと第2ダクト54Bとに分岐している。そして、分岐点にはシャッタ55を有し、シャッタ55は第1ダクト54A及び第2ダクト54Bに流れる風量を切替可能にするものである。
【0061】
第2送風手段は、シャッタ55の切替によって、第1ダクト54Aの先にある第2送風口53Aから空気を吹き出す用紙捌き浮上手段として、あるいは第2ダクト54Bの先にある第3送風口53Bから空気を吹き出す用紙分離手段として機能するものである。
【0062】
非図示のソレノイドで図3に示すように送風切替手段としてのシャッタ55を作動させることによって、用紙分離手段としての機能を作動状態・停止状態に、あるいは用紙浮上手段として機能を停止状態・作動状態に切り替えられるものである。つまり、第2送風手段50は切替可能な2つの機能を備える。用紙Pを浮上させる用紙浮上手段と、用紙Pを分離させる用紙分離手段とを兼ね備えている。
【0063】
<吸着搬送手段>
本発明の第1実施形態に係る吸着搬送手段60は、図3に示すように用紙載置台に積載する用紙束Psの上方に位置し用紙搬送方向の下流側に配設され、大容量給紙装置LTの上部支持部材81に固定される。
【0064】
図2及び図4に示すように、吸着搬送手段60は、用紙搬送方向に直交する幅方向に配設された複数の用紙搬送手段61を有する。(ここではふたつの用紙搬送手段で構成されている。)
各用紙搬送手段61は、搬送ベルト63と、各搬送ベルト63を回動可能に支持するベルト支持部62と、搬送ベルト63の回動を駆動するベルト駆動部64と、複数の搬送ベルトの内側に用紙幅方向に配設された吸引手段65を有する。
【0065】
ベルト支持部62は、上部支持部材81に固定された支持部材621と、支持部材621に回動可能に支持された1つの大径ローラ622と2つの小径ローラ623で構成されている。図示のように搬送ベルト63は大径ローラ622と2つの小径ローラ623によって回動可能に張設されている。
【0066】
ベルト駆動部64は、支持部材621に固設され、大径ローラ622の軸に直結された一対のベルト駆動モータ(以下第1ベルト駆動モータM2A及び第2ベルト駆動モータM2Bと称す)で構成されて、搬送ベルト63を各々独立に回動可能にしている。
【0067】
搬送ベルト63は、図示のように多数の小径の貫通孔が穿設されている。
【0068】
吸引手段65は、吸引ダクト651と、吸引ダクト651内における給紙装置の後方側に配設された吸引ファン652を有する。
【0069】
吸引ダクト651は2つの支持部材621に固設され、複数の搬送ベルト63の内側を用紙幅方向に貫通している。従って、吸引ファン652が作動すると、吸引ダクト651内は空気が負圧になっている。
【0070】
また、吸引ダクト651の下部には、搬送ベルト63の各々に対向して複数の開口65A(図3)を有する。開口65Aは、吸着搬送手段60及び搬送ベルト63の空気吸引の位置を定めるものである。
【0071】
吸引ダクト651内の空気が負圧になると、開口65Aに対面する搬送ベルト63の吸着面は多数の貫通孔を介してエア吸引力で浮上した用紙を吸着する。その結果、搬送ベルト63と最上位の用紙P1の間にはエア吸引力に比例する摩擦力が形成されている。
【0072】
吸引ファン652は常時作動しており、上記で説明した用紙捌き機構により浮上中の最上用紙P1は搬送ベルト63からエア吸引力を受ける。なお、吸引ファン652によって吸引ダクト651内に吸入された空気は、矢印C1のように給紙装置の奥に配設された排気口65Bを介して外部に排気される。
【0073】
図3に示すように、吸引ダクト651の開口65Aの近傍に、最上位の用紙Pが搬送ベルト63の吸着面に吸着されたか否かを検知する用紙吸着センサPS1が配設されている。
【0074】
<本発明に係る第1実施形態の重送防止機構・・・ベルト変位手段>
本発明の第1実施形態に係る重送防止機構は、複数の搬送ベルト63と、それぞれ独立に速度が可変制御可能な第1ベルト駆動モータM2A及び第2ベルト駆動モータM2Bと、非図示のベルト変位手段とを有する。
【0075】
ベルト変位手段は、吸着搬送手段60に用紙Pが吸着された状態、つまり用紙Pが複数の搬送ベルト63の吸着面に吸着された状態において、ベルト駆動モータM2Aのみを駆動して一方の搬送ベルト63のみを用紙搬送方向に回動させて、搬送ベルト63の少なくともひとつの吸着面を他の搬送ベルトの吸着に対して用紙搬送方向における異なる位置に変位させる。そして、用紙Pに局部的な歪み(紙シワ)を形成して用紙Pに密着している他の用紙を用紙Pから分離して重送防止を可能にしている。
【0076】
更に、ベルト変位手段は、吸着搬送手段60に用紙Pが吸着された状態、つまり用紙Pが複数の搬送ベルト63の吸着面に吸着された状態において、一方のベルト駆動モータM2Aを駆動して一対の搬送ベルトを元の位置に戻して用紙Pに形成された紙シワを取り除く。
【0077】
用紙搬送のタイミングになると、複数のベルト駆動モータの作動により複数の搬送ベルト63は同一速度で回動する。用紙Pは用紙搬送方向(矢印a)に搬送され、画像形成装置Aへ送り込まれる。第1ベルト駆動モータM2A及び第2ベルト駆動モータM2Bは、用紙搬送方向に用紙Pが片寄りなく搬送されるよう、予め調整されている。ここでは、駆動パルス数の総和で用紙Pの搬送距離が規定できるステッピングモータを用いている。
【0078】
<用紙排出部>
図3に示すように、給紙装置本体30の出口側には用紙排出部があり、吸着搬送手段60によって搬送された用紙Pを画像形成装置Aに確実に搬送する主動及び従動の2つの搬送ローラからなる搬送ローラ対39が配設されている。
【0079】
搬送ローラ対39の軸と搬送ローラ駆動モータM1と連結し回転する駆動軸38との間にクラッチCL1を有する。クラッチCL1は、駆動軸38から搬送ローラ対39の軸への駆動の伝達を切替る駆動切替手段である。
【0080】
また、用紙搬送方向における吸着搬送手段60と搬送ローラ対39の間で、且つ搬送ベルト63の近傍に、通過する用紙Pの先端を検知する用紙フィードセンサPS2に配設される。
【0081】
<制御部>
図7は、本発明に係る給紙装置の制御部100のブロック図である。
【0082】
制御部100は、CPUからなり用紙の搬送制御及び曲がり矯正手段のメインを司る演算制御部101と、プログラムを記憶しているROM102と、演算制御部101が行う演算制御に使用されるRAM103と、制御部100の指示(信号)に基づきモータ及びソレノイド等を駆動する駆動回路104と、バス105とを有する。
【0083】
用紙吸着センサPS1、用紙フィードセンサPS2は、制御部100の非図示の入力インタフェースに接続している。
【0084】
駆動回路104は、図3のシャッタ55を作動するソレノイドSL1及び、図2、図4で示した各モータ、吸引ファン652等のファンを駆動する回路である。
【0085】
演算制御部101は、用紙を一枚ずつ画像形成装置A側に搬送されるよう、所定の制御プログラムに基づき適宜駆動回路104に指令(信号)を出力して第1及び第2ベルト駆動モータM2A、M2B等のモータ及びファンを作動するものである。従って、演算制御部101には、上記重送防止機構のベルト変位手段101Aを有している。
【0086】
なお、M3は、後で詳しく説明する本発明に係る第2の実施形態におけるベルト変位手段に用いられるベルトシフトモータである。
【0087】
<重送防止機構の原理>
次に、本発明に係る重送防止機構(第1の実施形態)の原理について、図5を用いて以下に詳しく説明する。
【0088】
図5は、吸着搬送手段60に吸着された最上位用紙(以下、1枚目用紙P1と称す)の姿勢を示す模式図であり、図5は吸着搬送手段60に吸着した1枚目用紙P1を下方から見たものである。一点鎖線に囲まれた領域は、搬送ベルト63の吸着面に対応する領域を示しており、図5(a)は、吸着搬送手段60の搬送ベルト63に吸着した1枚目用紙P1の状態図で、Dは2つの搬送ベルト63の幅方向における間隙である。
【0089】
重送防止機構のベルト変位手段101Aは、1枚目用紙P1が複数の搬送ベルト63の吸着面に吸着された状態で、搬送ベルト63の少なくともひとつの吸着面を他の搬送ベルト63の吸着面に対し用紙搬送方向に相対的に変位させて、1枚目用紙P1の先端側に局部的な歪み(紙シワ)が形成されるよう、一方のベルト駆動モータであるところの第1ベルト駆動モータM2Aのみを用紙搬送方向に駆動させるものである。
【0090】
ここでは、吸着搬送手段60に2つの搬送ベルト63を有しているが、3つ以上の搬送ベルト63を用いることも可能である。
【0091】
図5(b)の実線は、一方のベルト駆動モータの駆動後における1枚目用紙P1の姿勢を示す。破線は、一方のベルト駆動モータの駆動前における用紙P1の姿勢を示す。Wは紙シワを示し、Lは一方の搬送ベルト63の他方に対する変位量である。
【0092】
図6は1枚目用紙P1と1枚目用紙に密着している2枚目用紙P2の姿勢を示す模式図であり、吸着搬送手段60の下流側から見たものである。
【0093】
ベルト変位手段101Aによって紙シワが形成されると、1枚目用紙P1に2枚目用紙P2が強く密着しているような場合でも、2枚目用紙P2は図6に示す紙シワWを起点に広がるように1枚目用紙P1から分離する。分離範囲は、図6(a)の状態から図6(b)の状態に至る。
【0094】
具体的には、吸着搬送手段60、又は搬送ベルト63の吸着面に用紙Pが吸着しているか否かを判定し、その結果が『用紙吸着』になると、ベルト変位手段は、用紙が吸着した状態で、第1ベルト駆動モータM2Aのみを順方向に所定量回転させて一方の搬送ベルト63のみを回動させ、第1ベルト駆動モータM2Aが所定量回転する間に第2ベルト駆動モータM2Bをホールド状態に維持させて他の搬送ベルトの回動を阻止させる。
【0095】
その結果、一方の搬送ベルト63の吸着面を他の搬送ベルトの吸着面に対し確実に相対的に変位させて、用紙P1に局部的な歪み(紙シワ)を形成して用紙P1に密着した用紙の分離を実現した。
【0096】
ここでは、一方の搬送ベルト63のみを用紙搬送の順方向に回動させているが、用紙搬送の逆方向に回動させてもよい。また、搬送ベルト63の少なくひとつを回動量において他の搬送ベルト63と異なるよう、複数の搬送ベルトを回動させるようにしもよい。
【0097】
また、一方の搬送ベルト63の変位量Lは、両搬送ベルト63の間隙D(図5に示す)によっても適宜定まるものである。間隙Dが50mm程度の場合には、変位量Lは2〜5mmの範囲である。
【0098】
ベルト変位手段101Aは、用紙P1を排紙部へ給送する前に、図5(c)に示すように、1枚目用紙P1が両搬送ベルト63の吸着面に吸着された状態で第1ベルト駆動モータM2Aのみを逆方向に回転させて、一方の搬送ベルト63のみを逆方向に回動させる。その間、第2ベルト駆動モータB2Bをホールド状態に維持させて他の搬送ベルトの回動を阻止させている。
【0099】
ぞの結果、用紙P1が搬送ベルト63の吸着面に吸着された状態で、相対的に変位させた複数の搬送ベルト63の位置関係を相対的に変位させる以前の位置関係に確実に戻して用紙P1に形成された局部的な歪み(紙シワ)を取り除き、紙詰まり等の給紙不良の防止を可能にした。
【0100】
図5(c)の実線は、一方の搬送ベルト63が変位以前の位置に戻った後における1枚目用紙P1の姿勢を示す。破線は戻る前の姿勢を示す。図示のように1枚目用紙P1の紙シワWが取り除かれる。
【0101】
なお、上記のベルト変位手段101Aによって密着状態の用紙が一度分離されると通常では元の密着状態に復帰せず、2枚目用紙P2が1枚目用紙P1に再度密着するようなことはない。従って、1枚目用紙P1の紙シワが取り除く処理を行っても重送防止に悪影響はなく、重送防止および給紙性能に優れた給紙装置の提供を可能にした。
【0102】
<補助機構>
また、第2送風手段50によって吸着搬送手段60に空気流(図2の矢印B2)を吹き付ける機構は、ベルト変位手段101Aによって形成された1枚目用紙P1からの2枚目用紙P2の分離を促進し、速やかに分離範囲を拡大するものである。従って、上記の重送防止機構と組み合わせると、一層の重送防止性能及び給紙安定性能を発揮する。
【0103】
<本発明に係る第1実施形態の用紙搬送タイムチャート>
図11は、本発明に係る第1実施形態の給紙装置要部の動作タイミングを示すタイムチャートである。重送防止に関係する要部の動作タイミングに関し以下に説明する。
【0104】
横軸は時間である。そして、Ta1は第1枚目給紙において用紙P1が吸着搬送手段に吸着する吸着タイミングであり、Ta2は第2枚目給紙における用紙の吸着タイミングである。Tf1は第1枚目給紙において吸着搬送手段60が用紙P1を画像形成装置側への搬送を開始する用紙搬送開始タイミングであり、Tf2は第2枚目給紙における用紙搬送開始タイミングである。
【0105】
画像形成装置からの給紙指令を受けると、給紙動作を開始(図示の“スタート”)し、吸引ファン652及び第1送風手段の送風ファン41(図7)、第2送風手段の電動ファン51(図7)を作動して用紙載置台31上に載置された用紙束の最上部用紙を浮上させる。
【0106】
1枚目用紙P1が吸着搬送手段60に吸着されて、用紙吸着センサPS1が“用紙吸着”を検知すると、ベルト変位手段101A(図7)は第1ベルト駆動モータM2Aを正転させるベルト変位の動作と、ベルト変位の動作後に第1ベルト駆動モータM2Aを逆転させるベルト変位解除の動作とからなる重送防止の動作を行う。
【0107】
重送防止の動作が実施された後に第1枚目給紙における用紙搬送開始タイミングになると、第1ベルト駆動モータM2Aと第2ベルト駆動モータM2Bが同時に駆動される。
【0108】
また、重送防止の補助機構としての第2送風手段は、用紙吸着タイミングになるとソレノイドSL1によるシャッタ55(図3)の切替によって用紙浮上状態から用紙分離状態に変わる。そして、用紙フィードセンサPS2が用紙P1を検知すると、浮上状態に変わる。第2枚目以降の給紙において上記と同様の動作が行われ、重送のない給紙が繰り返し遂行される。
【0109】
第1ベルト駆動モータM2Aの縦軸は、モータ軸の回転速度であり、図11に示す斜線部の面積は用紙P1が第1ベルト駆動モータによって用紙搬送方向に搬送される一方の搬送ベルトの他方に対する変位量L(図5)に対応する。従って、図示のように正転時の斜線部面積と逆転時の斜線部面積は等しい。
【0110】
[本発明に係る第2実施形態の重送防止機構]
本発明に係る第2実施形態の重送防止機構は、複数の搬送ベルト63と、複数の搬送ベルト63を用紙幅方向に相互に近接及び離間可能に移動するベルト間隙変更機構と、ベルト変位手段101Aとを有する。
【0111】
図8は重送防止機構の要部を示す概略図(側面図)であり、図9はベルト間隙変更機構の要部を示す上面図である。
【0112】
<ベルト間隙変更機構>
ベルト間隙変更機構67は複数の搬送ベルト63の用紙幅方向における間隙Dを変えるものであり、重送防止機構の要部である。換言すると、複数の搬送ベルト63をそれぞれ用紙搬送方向に回動可能に支持する複数のベルト支持部62を用紙幅方向に変位可能に支持するものである。
【0113】
図8に示すように、給紙装置本体に支持された2つの支持棒673と、ベルト支持部62の支持部材621に固設され2つの支持棒673が嵌合される4つの軸受674を有し、搬送ベルト63を回動可能に支持する一対のベルト支持部62は用紙幅方向に移動可能に支持されている。
【0114】
また、図9に示すように、支持部材621に固設され用紙幅方向に平歯G1が形成された一対の平歯部材671と、給紙装置本体に固設された上部支持部材81(図8)の軸受676で回転可能に支持されたシフト歯車672と有する。そして、シフト歯車672は、互いに対向する一対の平歯部材671の平歯G1に噛合ている。
【0115】
シフト歯車672が矢印a1の方向に回転すると、一対の平歯部材671は、互いに用紙幅方向における異なる方向(矢印b1及び矢印c1)に移動する。
【0116】
図8に示すように、シフト歯車672の軸679は一方の平歯プーリー675に連結され、ベルトシフトモータM3の軸678は他方の平歯プーリー675に連結されている。一対の平歯プーリー675は平歯ベルト677で連係される。シフト歯車672はベルトシフトモータM3で駆動され、その回転(量、向き)が規定される。
【0117】
従って、一対の搬送ベルト63の間隙DはベルトシフトモータM3の軸678の回転(量、向き)により変更可能である。
【0118】
<第2実施形態のベルト変位手段>
重送防止機構のベルト変位手段101Aは、1枚目用紙P1がふたつの搬送ベルト63の吸着面に吸着された状態で、ベルト間隙変更機構67のベルトシフトモータM3を駆動させ、シフト歯車672を矢印a1の方向に所定回転させて、一対のベルト支持部62を矢印b1及びc1に示すように用紙幅方向に移動させる。換言すると、用紙P1が搬送ベルト63の吸着面に吸着された状態で一対の搬送ベルトの間隙DをD1からD2(D1>D2)に狭めて、搬送ベルト63の少なくとのひとつの吸着面を他の搬送ベルト63の吸着面に対し用紙幅方向において相対的に変位させる。その結果、用紙P1に局部的な歪み(紙シワ)を形成して用紙P1に密着した用紙の分離を実現した。
【0119】
図10は、図5と同様に吸着搬送手段60に吸着された1枚目用紙P1の姿勢を示す模式図であり、図10に基づき用紙分離の作用を説明する。図10(a)は、待機位置に待機している搬送ベルト63に吸着した1枚目用紙P1の姿勢を示している。D1は、用紙搬送時に位置する2つの搬送ベルト63の間隙を示す。
【0120】
図10(b)の実線は、ベルト変位手段101Aにより搬送ベルト63がD1に変位した後における1枚目用紙P1の姿勢を示し、破線は、変位以前における用紙P1の姿勢を示す。Wは紙シワを示す。紙シワWは第1実施形態と異なり用紙P1の後半部までに及ぶ。D2は、変位後における2つの搬送ベルト63の間隙を示す。
【0121】
紙シワの形成による2枚目用紙P2の分離効果は、図6を用いて説明した内容と同一であり、省略する。
【0122】
ここでは、搬送ベルト63の間隙Dの変位量(D1−D2)は、適宜定まるものであるが、D1が50mm程度の場合、変位量(D1−D2)は1〜3mmの範囲である。
【0123】
ベルト変位手段101Aは、用紙P1を排紙部へ給送する前に図10(c)に示すように用紙P1が搬送ベルト63の吸着面に吸着された状態で、ベルトシフトモータM3を逆方向に所定量回転させて、相対的に変位された搬送ベルト63の吸着面の位置関係を相対的に変位される以前の位置関係に戻し、搬送ベルトの相対的な変位を解除させている。
【0124】
その結果、紙詰まり等の給紙不良の防止を確実にし、重送防止及び給紙性能に優れた給紙装置の提供を可能にする。
【0125】
図10(c)の実線はベルト変位解除後における1枚目用紙P1の姿勢を示し、破線は解除前における用紙P1の姿勢を示す。図示のように1枚目用紙P1の紙シワが取り除かれている。
【0126】
なお、第1の実施形態の記載で示した補助機構は本実施形態でも同様の作用と効果を有し、その説明は省略する。
【0127】
<第2実施形態における用紙搬送のタイムチャート>
図12は、本発明に係る第2実施形態の給紙装置要部の動作タイミングを示すタイムチャートである。第1実施形態と重複する内容を省略して、重送防止要部の動作タイミングについて以下に説明する。
【0128】
1枚目用紙P1が吸着搬送手段60の搬送ベルト63の吸着面に吸着され、用紙吸着センサPS1によって“用紙吸着”が検知されると、ベルト変位手段101A(図7)は、ベルトシフトモータM3を駆動させて図9に示すようにシフト歯車672を時計方向(矢印a1)に回転させるベルト変位動作と、ベルト変位の動作後にベルトシフトモータM3を逆駆動させてシフト歯車672を反時計方向(矢印a1の逆方向)に回転させるベルト変位解除動作とからなる重送防止の動作を行う。
【0129】
ベルトシフトモータM3の縦軸は、モータ軸の回転速度であり、図11に示す斜線部の面積は、図5に示す搬送ベルト63の間隙Dの変位量(D1−D2)に対応する。つまり、ベルト変位手段101Aは、図示のように時計方向回転時の斜線部面積と反時計方向回転時の斜線部面積が等しくなるよう、ベルトシフトモータM3を駆動する。
【0130】
従って、ベルト変位動作によって、搬送ベルト63の間隙DをD1からD2(D1>D2)に変位させて、つまり、搬送ベルト63の少なくともひとつの吸着面を他の搬送ベルト63の吸着面に対し用紙幅方向に相対的に変位させて、搬送ベルトに吸着された用紙P1に紙シワを形成して用紙P1に密着した他の用紙を用紙P1から分離させている。
【0131】
そして、ベルト変位解除動作によって、搬送ベルト63の間隙DをD2からD1に変位させて、用紙幅方向に相対的に変位された搬送ベルト63の吸着面の位置関係を用紙幅方向に相対的に変位される以前の位置関係に戻して、用紙P1に形成された紙シワを取り除いている。
【0132】
なお、第1及び第2の実施形態では、用紙幅方向に一対の搬送ベルトを配設しているが、3つ以上の搬送ベルトを並べるようにしてもよい。
【0133】
また、第2の実施形態では、用紙が搬送ベルト63の吸着面に吸着された状態で、用紙幅方向に移動可能に支持された複数のベルト支持部62の少なくともひとつを他のベルト支持部62に対して用紙幅方向に相対的に変位させているが、用紙搬送方向に移動可能に支持された複数のベルト支持部62の少なくともひとつを他のベルト支持部62に対して用紙搬送方向に相対的に変位させるものであり、重送防止において第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0134】
換言すると、少なくともひとつの搬送ベルトの吸着面を他の搬送ベルトの吸着面に対して用紙搬送方向に相対的に変位させる重送防止技術であり、本発明の範囲である。
【符号の説明】
【0135】
30 給紙装置本体
31 用紙載置台
40 第1送風手段
50 第2送風手段
51 電動ファン
52 送風ガイド
53A 第2送風口
53B 第3送風口
60 吸着搬送手段
61 用紙搬送手段
62 ベルト支持部
621 支持部材
622 大径ローラ
623小径ローラ
63 搬送ベルト
64 ベルト駆動部
65 吸引手段
651 吸引ダクト
652 吸引ファン
67 ベルト間隙変更機構
100 制御部
101 演算制御部
101A ベルト変位手段
104 駆動回路
A 画像形成装置
LT 大容量給紙装置
P 用紙
Ps 用紙束
PS1 用紙吸着センサ
PS2 用紙フィードセンサ
M1 搬送ローラ駆動モータ
M2A 第1ベルト駆動モータ
M2B 第2ベルト駆動モータ
M3 ベルトシフトモータ
SL1 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を積載する用紙載置台と、
前記用紙載置台に積載された用紙の上方に位置し、空気の負圧によって複数の搬送ベルトの吸着面に用紙を吸着した状態で前記複数の搬送ベルトを用紙搬送方向に回動して用紙を搬送する吸着搬送手段と、
を備える給紙装置であって
用紙が前記吸着面に吸着された状態で、前記搬送ベルトの吸着面の少なくともひとつを他の搬送ベルトの吸着面に対して相対的に変位させ、前記用紙に局部的な歪みを形成して前記用紙に密着する他の用紙を前記用紙から分離するベルト変位手段を有することを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記ベルト変位手段は、用紙が前記搬送ベルトの吸着面に吸着された状態で、相対的に変位させた前記吸着面の位置関係を相対的に変位させる以前の位置関係に戻し、前記用紙の局部的な歪みを取り除くことを特徴とする請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトの吸着面の少なくともひとつを他の前記搬送ベルトに対して相対的に変位させる方向が用紙搬送方向であることを特徴とする請求項1又2に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトの吸着面の少なくともひとつを他の前記搬送ベルトに対して相対的に変位させる方向が前記用紙搬送方向と直交する用紙幅方向であることを特徴とする請求項1又2に記載の給紙装置。
【請求項5】
前記複数の搬送ベルトの各々をそれぞれ独立に回動可能な駆動部を有し、
前記ベルト変位手段は、前記搬送ベルトの少なくともひとつが他の前記搬送ベルトに対して異なる距離を回動させるよう、前記駆動部を作動することを特徴とする請求項3に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記用紙幅方向に移動可能に支持され、前記複数の搬送ベルトを前記用紙搬送方向に回動可能に支持する複数のベルト支持部を有し
前記ベルト変位手段は、前記搬送ベルトの少なくともひとつが他の前記搬送ベルトに対して近づくよう、前記ベルト支持部を前記用紙幅方向に移動させることを特徴とする請求項4に記載の給紙装置。
【請求項7】
前記吸着搬送手段に対し前記用紙搬送方向の下流に位置し、前記吸着搬送手段に吸着された用紙の端部に空気を吹き付ける送風手段を有することを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の給紙装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか1項に記載の給紙装置と、前記給紙装置から搬送された用紙上に画像形成する画像形成装置とを備えることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−6176(P2011−6176A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149693(P2009−149693)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】