説明

給紙装置及び画像形成装置

【課題】簡単作業で給紙圧の変更・調整ができ、しかもシンプルな構成で安価な給紙装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】底板を有する給紙カセットを備えた給紙装置であり、給紙カセット20の用紙Pの送り出し方向下流側にアーム部材25が回動可能に装着され、そのアーム部材25と底板22とに掛け渡されて取り付けられた加圧スプリング27の弾性力により底板22が持ち上げられ、アーム部材25には加圧スプリング27の弾性力を変更する複数の係止ピン28a,28b,28cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆積載置されたシート状記録媒体を1枚ずつ給紙する給紙装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ、もしくはこれら機器の少なくとも2つの機能を有する複合機等の画像形成装置にあっては、給紙カセットもしくは給紙トレイに堆積載置された記録媒体としての用紙を1枚ずつ給紙する給紙装置が備えられている。この種の給紙装置として、給紙トレイに積層された用紙をピックアップローラにより繰り出して搬送経路に送り出す、ローラ給紙方式の給紙装置が知られている。
【0003】
かかるローラ給紙方式の給紙装置では用紙をピックアップローラに一定の圧力で押し付ける必要があり、用紙を載置している底板をバネにより押し上げて給紙圧を発生させている。このとき、必要な給紙圧は用紙の種類によって異なり、一般に用紙が厚くなるにしたがって給紙圧を大きく、逆に薄くなるにしたがって給紙圧を小さくしなければならないとされている。そして、給紙圧が適正圧より大き過ぎると重送が発生し、逆に給紙圧が適正圧より小さ過ぎると不送りが発生してしまうが、通常の画像形成装置の給紙圧は一般的に使用されている普通紙厚に対応する値になるように設計されている。
【0004】
しかし、ユーザーによっては給紙装置が対応している給紙圧の範囲外の給紙圧が必要な、薄紙または厚紙を主体として使用したいという要望がある場合がある。これらの用紙を給紙しようとすると通常の給紙圧では重送や不送りが発生する場合があるため、このような場合は用紙に合わせて給紙装置の給紙圧を変更する必要がある。
【0005】
特許文献1には、給紙圧を調整することができるカセット給紙装置が開示されている。しかし、特許文献1の給紙圧変更手段では変更のための作業が複雑であり、手間がかかり過ぎるという問題があった。すなわち、特許文献1の第1の実施例では給紙圧を発生させる加圧スプリングの支持具を取り外して付け替えることで変更しているが、加圧スプリングを完全に給紙カセットから外して作業するので手間がかかる。また、特許文献1に記載されている第2の実施例では加圧スプリングのらせん状の溝に落とし込む距離を調整して給紙圧を変更している。かかる方法であると、スプリングを回すだけで調整することができるため作業が簡単そうに思える。しかし、実際に作業を行おうとすると、カセットの本体から底板を取り外さねばならず、この底板の着脱が大変に手間のかかる作業であった。
【0006】
さらに、特許文献1の給紙装置では作業性に問題に加えて底板が加圧スプリングによって常にピックアップローラ側に持ち上げられた状態になっているため、カセットに用紙を積載しにくくその枚数も少なくなってしまうという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来の問題を解消し、簡単作業で給紙圧の変更・調整ができ、しかもシンプルな構成で安価な給紙装置及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、積層された記録媒体を載置可能で、かつ、記録媒体の送り出し方向下流側が持ち上げ可能な底板を有する給紙カセットと、該給紙カセットが給紙位置に装着されたとき、該底板の持ち上げ部分の上方に対向配置された送り出し手段とを有し、該給紙カセットが給紙位置に装着されると、前記底板を前記記録媒体が前記送り出し手段に当接可能な状態に持ち上げられる給紙装置において、前記給紙カセットの記録媒体の送り出し方向下流側に支持部材が回動可能に装着され、その支持部材と前記底板とに掛け渡されて取り付けられた弾性部材の弾性力により前記底板が持ち上げられ、前記支持部材には該弾性部材の弾性力を変更可能な複数の取り付け部が設けられていることを特徴とする給紙装置を提案する。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、積層された記録媒体を載置可能で、かつ、記録媒体の送り出し方向下流側が持ち上げ可能な底板を有する給紙カセットと、該給紙カセットが給紙位置に装着されたとき、該底板の持ち上げ部分の上方に対向配置された送り出し手段とを有し、該給紙カセットが給紙位置に装着されると、前記底板を前記記録媒体が前記送り出し手段に当接可能な状態に持ち上げられる給紙装置において、前記給紙カセットの記録媒体の送り出し方向下流側に支持部材が回動可能に装着され、その支持部材と前記底板とに掛け渡されて取り付けられた弾性部材の弾性力により前記底板が持ち上げられ、前記底板には該弾性部材の弾性力を変更可能な複数の取り付け部が設けられていることを特徴とする給紙装置を提案する。
【0010】
なお、本発明は、前記弾性部材が引張りコイルばねであり、前記支持部材及び底板との取り付けが引張りコイルばねのフックによる引掛けで取り付けられると有利である。
【0011】
さらに、本発明は、前記支持部材が弾性作用位置と待機位置との間を回動可能に装着された支持アームであり、該支持アームは前記給紙トレイが給紙位置に装着されると、待機位置から前記弾性部材を介して底板を持ち上げる弾性作用位置に回動されると有利である。
【0012】
また、上記の目的を達成するため、本発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の給紙装置を搭載することを特徴とする画像形成装置を提案する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、底板持ち上げ手段が給紙カセットの記録媒体の送り出し方向下流側に回動可能に装着された支持部材と、該支持部材と底板とに掛け渡されて取り付けられる弾性部材とを有し、支持部材には該弾性部材の弾性力を変更する複数の取り付け位置が設けられているので、該弾性部材の取り付け位置のかけ替えのみで給紙圧を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る給紙装置を備える画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】その給紙装置の給紙カセットを示す説明図である。
【図3】給紙カセットの主要部の分解斜視図である。
【図4】給紙カセットの主要部の斜視図である。
【図5】係止ピンの位置関係を示す説明図である。
【図6】給紙圧を強くした状態を示す説明図である。
【図7】給紙圧を弱くした状態を示す説明図である。
【図8】本発明に係る給紙装置の他の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
図1は、本発明に係る給紙装置を搭載した画像形成装置の全体外略図である。
ここに示した画像形成装置はインクジェットプリンタであって、プリンタ本体1のほぼ中央上部には記録媒体としての用紙Pに印字する記録部2、その下方に用紙Pを給紙する給紙部10が設けられている。記録部2には、シアンC,マゼンタM,イエロY,ブラックBの各色のインクをそれぞれ収納した4個のインクカートリッジと複数のノズル列を備え、各インクカートリッジからインクが供給されるインクジェットヘッド3と、インクカートリッジとインクジェットヘッド3を搭載しガイドロッド4に案内されて主走査方向に移動するキャリッジ5と、印字する用紙Pを搬送する搬送ベルト6とを有している。また、給紙部10は後に詳述する給紙カセット20、該給紙カセット20に積載された用紙Pを送り出す半月状の給紙コロ11及び分離パッド12を有している。
【0016】
ホスト装置から送られる画像データを用紙Pに印字するときは、給紙コロ11により用紙Pが搬送ガイド13を介して搬送ベルト6に搬送され、搬送ベルト6は図示していない帯電手段によって帯電されていることにより、用紙Pを静電吸着する。搬送ベルト6上の用紙Pは、キャリッジ5によって主走査方向に移動するインクジェットヘッド3からインク滴を吐出して1行分の記録が行われると搬送ベルト6により副操作方向へ移動され、この動作を繰り返すことによって画像データに応じた文字や画像が用紙Pに記録される。そして、記録を終えた用紙Pは給紙部10の上部の排紙部7に排紙される。
【0017】
図2は給紙部10に着脱可能に装着される給紙カセット20の横断面図を示している。
給紙カセット20には、カセット本体21に一端はピン23を介して軸支され、他端、すなわち給紙方向下流側が回動して上下動可能に装着された底板22が設けられ、用紙Pは底板22上に堆積載置される。また、カセット本体21の給紙方向の下流側には支軸24を介して回動可能に装着された支持部材としてのアーム部材25が設けられている。このアーム部材25はその一端側の側面形状がTの字状に形成されたT字部26が形成され、該T字部26には底板22の係止部22aに取り付けられた弾性部材としての加圧スプリング27が係止される係止ピン28として構成された複数の取り付け位置が設けられている。アーム部材25の他端側には脚部29が形成され、上記支軸24は中央よりやや脚部29に近づいた位置に設けられている。このアーム部材25は、図2に示すプリンタ本体1から取り出されている状態では加圧スプリング27の作用で支軸24を中心として反時計方向の回動力が付勢されるが、図示していないストッパによって脚部29がほぼ水平になる位置に弾性保持されている。そして、給紙カセット20がプリンタ本体1に図1に示す矢印A方向からの挿し込み装着がされると、脚部29が給紙カセット20の挿入方向の面と対向する位置に設けられた湾曲板14に当たり、その湾曲形状に沿って支軸24を中心として時計方向に回動される。この回動によって加圧スプリング27を介して底板22の先端側が持ち上げられ、積載された用紙Pの上面が給紙コロ11に圧接することにより適当な給紙圧が得られる。
【0018】
このように構成されるアーム部材25は、図3及び図4に示すように、2枚の板材25aを、適宜隙間を介して組み合わせたもので、上記係止ピン28は板材25a間に取り付けられている。本実施の形態において、係止ピン28が3本設けられ、3本の係止ピン28a,28b,28cは底板22の係止部22aからの距離が異なる位置に設けられていることにより、加圧スプリング27の半円状に形成されているフック27fを3本の係止ピン28a,28b,28cの何れに係止させるかによって給紙圧、用紙Pが給紙コロ11に当接する圧力の大きさを調整することができる。本実施形態では、図1に示す中央の係止ピン28bに加圧スプリング27のフック27fを係止させている場合、普通紙と呼ばれる用紙に適した圧力に設定され、図6に示すように右側の最も遠い係止ピン28aに係止させた場合には厚紙に、図7に示すように左側の最も近い係止ピン28cに係止させた場合には薄紙にそれぞれ適した給紙圧が得られるように予め設定されている。
【0019】
また、3本の係止ピン28a,28b,28cは何れのピンに加圧スプリング27のフック27fを係止させても、係止されていないピンが加圧スプリング27の動きを邪魔しないように、図5に示すように底板22の係止部22aの位置と各ピン28a,28b,28cとを結ぶ直線がそれぞれの自己以外の係止ピン28と交差しない位置になるように配置されている。
【0020】
次に、加圧スプリング27に給紙圧を変更するため、半円状に形成されているフック27fを係止させている係止ピン28の替える作業について説明する。
加圧スプリング27のフック27fを係止させている係止ピン28の替えは給紙カセット20をプリンタ本体1から取り外した状態で行う。このとき、加圧スプリング27は底板22の係止部22aと係止ピン28との距離が最も短い位置になるのでバネ力が最も弱い状態であり、加圧スプリング27を係止ピン28への着脱操作がし易い状況下にある。さらに、加圧スプリング27のフック27fを係止させている係止ピン28の替えは先の尖った工具、例えばドライバーや千枚通し等の工具を、係止ピン28の上方から操作してスプリング27のフック27fの付け替える。すなわち、係止ピン28の上方からのドライバ操作で、該係止ピン28からフック27fを外して所望の係止ピン28に再係止させるという簡単な作業で行うことができる。このとき、アーム部材25には工具を上方、もしくは斜め上方からスプリングフック27fにアクセスし易くするため、図3に示すT字部26の側部や図4に示すT字部26の頂部に、それぞれ工具の先端が入り込める空間26a,26bが形成されている。
【0021】
かくして、本給紙装置では加圧スプリング27の係止位置を適宜選択することで所望の給紙圧が得られる。しかも、給紙圧の変更は加圧スプリング27のフック27fの付け替えという簡単な作業で行い得る。
【0022】
図8は、本発明の他の実施形態を示す給紙カセット20の主要部の説明図で、本実施形態では加圧アーム25の3つの係止ピン28a,28b,28cに加えて、底板22に加圧スプリング27の2つの係止位置22a,22bを設けている。この係止位置22a,22bは給紙方向に前後して形成されることにより係止する位置によって給紙圧を変更することができる。したがって、3つの係止ピン28a,28b,28cと2つの係止位置22a,22bの組み合わせでより細かい給紙圧の設定が可能なるだけでなく、設定できる給紙圧の幅も拡大させることができる。
【0023】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態のみに限定されず各種改変することができるものである。例えば、図8の実施形態において、加圧アーム25の係止ピン28を1つで、底板22に加圧スプリング27の2つの係止位置を複数箇所設けても良い。
【符号の説明】
【0024】
10 給紙部
20 給紙カセット
22 底板
25 アーム部材
27 加圧スプリング
28 係止ピン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開平6−127710号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された記録媒体を載置可能で、かつ、記録媒体の送り出し方向下流側が持ち上げ可能な底板を有する給紙カセットと、該給紙カセットが給紙位置に装着されたとき、該底板の持ち上げ部分の上方に対向配置された送り出し手段とを有し、該給紙カセットが給紙位置に装着されると、前記底板を前記記録媒体が前記送り出し手段に当接可能な状態に持ち上げられる給紙装置において、
前記給紙カセットの記録媒体の送り出し方向下流側に支持部材が回動可能に装着され、
その支持部材と前記底板とに掛け渡されて取り付けられた弾性部材の弾性力により前記底板が持ち上げられ、
前記支持部材には該弾性部材の弾性力を変更可能な複数の取り付け部が設けられていることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
積層された記録媒体を載置可能で、かつ、記録媒体の送り出し方向下流側が持ち上げ可能な底板を有する給紙カセットと、該給紙カセットが給紙位置に装着されたとき、該底板の持ち上げ部分の上方に対向配置された送り出し手段とを有し、該給紙カセットが給紙位置に装着されると、前記底板を前記記録媒体が前記送り出し手段に当接可能な状態に持ち上げられる給紙装置において、
前記給紙カセットの記録媒体の送り出し方向下流側に支持部材が回動可能に装着され、
その支持部材と前記底板とに掛け渡されて取り付けられた弾性部材の弾性力により前記底板が持ち上げられ、
前記底板には該弾性部材の弾性力を変更可能な複数の取り付け部が設けられていることを特徴とする給紙装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給紙装置において、前記弾性部材が引張りコイルばねであり、前記支持部材及び底板との取り付けが引張りコイルばねのフックによる引掛けで取り付けられることを特徴とする給紙装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の給紙装置において、前記支持部材が弾性作用位置と待機位置との間を回動可能に装着された支持アームであり、該支持アームは前記給紙トレイが給紙位置に装着されると、待機位置から前記弾性部材を介して底板を持ち上げる弾性作用位置に回動されることを特徴とする給紙装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の給紙装置を搭載することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−188218(P2012−188218A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52778(P2011−52778)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】