説明

給紙装置及び画像形成装置

【課題】寸法の異なる定型紙であっても適応でき、2枚送りなどの誤動作を簡単に回避しえ、しかもコストが安価で実用性の高い給紙装置、及び、画像形成装置を提供すること。
【解決手段】画像形成装置を構成する給紙装置Aの給紙部1は、多数枚の紙2を重ねて収納するものであって、紙送り方向F1でみた後方に紙押さえ部10を有している。紙送り部1において、駆動部20を構成する回転軸26は、紙収納部16の上方であって、且つ、紙送り方向F1の前方に配置されており、アーム部25は、回転軸26を、紙送り方向F1、及び、逆方向F2に移動可能に支持している。紙送りローラ21は、回転軸26に取り付けられ、紙収納部16と向き合う下側でみた回転方向が、逆方向F2になる。案内板22は、紙送り方向F1の前方に備えられ、下側の板面と、紙送りローラ21の外周面との間に紙送り路が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、イメージスキャナ等の画像形成装置において装着される給紙装置、及び、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の給紙装置としては、従来より、種々の構造のものが提案され、実用に供されている。例えば、特許文献1は、所謂「コーナ爪方式」の給紙装置を開示しており、特許文献2は、フリクションパット方式の給紙装置を開示し、更に、特許文献3は、FRR方式と称される給紙装置を開示している。しかし、これらの従来技術には、それぞれの固有の構造に基づいて発生する問題点を抱えている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されたコーナ爪方式の給紙装置では、紙寸法が異なる毎に、爪位置の異なるカセットを用意しなければならず、また、給紙コロの位置及び回転半径も変えなければならない。
【0004】
特許文献2に開示されたフリクションパット方式の給紙装置は、特許文献1に開示された技術の持つ問題点を解決しているが、フリクションパッドと給紙コロとの間に、2枚の紙が挟まった場合、フリクションパッドによって下側の紙に摩擦停止が掛かるため、その上ですべる上側の紙との間で、異音を生じる。
【0005】
特許文献3に開示されたFRR方式の給紙装置も、特許文献1に開示された技術の持つ問題点を解決しているが、ピックアップローラの他に、2枚送りを防止する手段として、フィードローラとリバースローラとを組み合わせた紙送りローラ構造を必要とし、その分だけコスト高になる。しかも、2枚の紙が送られたときにリバースローラを逆回転させるため、フィードローラとリバースローラとの間に2枚の紙が送られたときの両ローラ間圧力と、1枚の紙が送られたときのローラ間圧力とを識別しなければならないという圧力検知の難しさを克服しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−38233号公報
【特許文献2】特開2004−224519号公報
【特許文献3】特開平9−240852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、寸法の異なる定型紙であっても適応できる給紙装置及び画像形成装置を提供することである。
【0008】
本発明のもう一つの課題は、ピックアップ時の誤動作による2枚送りや歪みなどの不具合を回避しうる給紙装置及び画像形成装置を提供することである。
【0009】
本発明の更にもう一つの課題は、コストが安価で、しかも実用性の高い給紙装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明に係る給紙装置は、給紙部と、紙送り部とを含む。給紙部は、多数枚の紙を重ねて収納するものであって、紙送り方向でみた後方に紙押さえ部を有する。
【0011】
紙送り部は、駆動部と、紙送りローラと、案内板とを備えており、駆動部は、アーム部と、回転軸とを有している。回転軸は、給紙部の紙収納部の上方であって、且つ、紙送り方向でみた前方に配置されており、アーム部は、回転軸を、紙送り方向、及び、紙送り方向とは逆方向に移動可能に支持している。
【0012】
紙送りローラは、回転軸に取り付けられ、紙収納部と向き合う下側でみた回転方向が、紙送り方向とは逆方向になるように回転駆動されるものである。案内板は、給紙部において紙送り方向でみた前方に備えられ、下側の板面と、紙送りローラの外周面との間に紙送り路が形成される。
【0013】
本発明に係る給紙装置の作用効果について、紙送り動作に沿って説明すると、まず、駆動部を構成する回転軸は、給紙部の紙収納部の上方であって、且つ、紙送り方向でみた前方に配置されており、アーム部によって、紙送り方向とは逆方向に移動可能に支持されている。従って、紙収納部に重ねられた多数枚の紙から最上層紙をピックアップする場合、回転軸をアーム部によって逆方向に繰り出すことにより、回転軸上に取り付けられた紙送りローラを、最上層紙に接触させることができる。
【0014】
次に、紙送りローラは、紙収納部と向き合う下側でみた回転方向が、紙送り方向とは逆方向になるように回転駆動されるものであるから、最上層紙に接触した状態で回転駆動することにより、最上層紙に対し、逆方向への送りをかけることができる。
【0015】
ここで、給紙部は、紙送り方向でみた後方に紙押さえ部を有しているから、最上層紙には、その後方が紙押さえ部により抑えられた状態で、逆方向への送りがかかる。その結果、紙送り方向でみた最上層紙の前端が逆方向に移動するにつれ、前端と後端との間には、上向きのループが形成される。その後、最上層紙の前端は、紙送りローラの上側まで移動し、その外周から外れた瞬間に、ループの反発力により紙送りローラの上面に乗り上がり、紙送り路に送り込まれる。このようにループの反発力を利用する構成によると、最上層紙の前端が均一に押し出されるから、左右のずれや歪み(歪み等)のない状態で、紙送り路に送り込むことができる。
【0016】
上述した紙送り路は、給紙部において、紙送り方向でみた前方に備えられる案内板の下側の板面と、紙送りローラの外周面との間に形成される隙間であるから、紙送り路を搬送中の最上層紙の上方(表面側)には、案内板が存在する。従って、案内板により、最上層紙が紙送り路から飛び出す不具合が回避される。しかも、紙送り路を搬送中の最上層紙において、案内板に対面する表面側には余分な圧力はかからない。違う言葉で表現すれば、前記最上層紙は、裏面側にのみ配置された紙送りローラから紙送りを受けることにより、紙送りローラの上面を滑る状態となるから、搬送中の最上層紙に歪み等は生じない。
【0017】
紙送り路でみた紙送りローラの回転方向は、下側でみた回転方向とは逆方向、即ち、予め定められた紙送り方向に一致する。これにより、最上層紙の一枚だけが、紙送り路の前方に送られることになる。通常、紙送り路の前方には搬送ローラが備えられており、紙送り路に送り込まれた最上層紙の前端は、搬送ローラに突き当たる。すでに説明したように、最上層紙は、裏面側でのみ紙送りローラによる紙送りを受け、紙送りローラの上面を滑る状態となっているから、仮に、ピックアップ時、及び、紙送り路を搬送中の最上層紙に歪み等が生じたとしても、前端が搬送ローラに突き当たることにより歪み等が解消され、端面揃えが終了する。
【0018】
端面揃えが終了した後、最上層紙の前端は、搬送ローラによって捕えられ、ハイスピードで搬送される。このとき、最上層紙は、紙送りローラの上面を滑る状態となっているから、紙送りローラから搬送ローラへ受け渡し途中の最上層紙にも歪み等は生じない。
【0019】
上述した紙送り動作は、紙寸法が変わっても、同様に実行される。従って、寸法の異なる定型紙であっても適応できる。しかも、紙送りローラによる紙送り動作は、基本的には、最上層紙に対してのみ働くのであるから、2枚送りや歪みなどの誤動作は生じ難い。
【0020】
さらに、紙送り路は、紙送りローラと案内板とによって構成できるから、コストが安価で、しかも実用性も高くなる。具体的に、紙送り路を搬送中の最上層紙は、紙送りローラの上面を滑る状態となり、前端が搬送ローラに突き当たることにより端面揃えが終了するから、端面揃えのため部品、例えばリバースローラやループ検知器などが不要となる分だけコストが安価となり、実用性も高くなる。
【0021】
また、最上層紙が、完全に送り出されないうちに、最上層紙の下の紙(次上層紙)が、紙送りローラによる送り作用を受け、紙送り路に入りこむ2枚送りの不具合は、最上層紙に対して送りをかけた後に、当該紙送りローラを紙送り方向に移動(退避)させることによって回避することができる。すなわち、回転軸は、アーム部によって、紙送り方向に移動可能に支持されているから、すでに説明した最上層紙の紙送り動作において、紙送りローラを、次上層紙に接触する前に、紙送り方向へ移動(退避)させることができる。このように本発明では、2枚送りを回避するための部品、例えばフリクションパッドやリバースローラなどが不要となる分だけコストが安価となり、実用性も高くなる。
【0022】
本発明において、2枚送りを回避するもう一つの有効な手段は、給紙部の底面に、凸部を設ける構成である。凸部は、紙収納部の底面を横切るように設けられ、多数枚の紙の中間部分を、積み重ね方向に突出させる。この構成では、底面からみた凸部の突出高さを適宜調節することにより、最上層紙に対する紙送りローラの接触位置を調節することが可能であるから、2枚送りなどの誤動作を簡単に回避しうる給紙装置及び画像形成装置を提供することができる。
【0023】
本発明に係る給紙装置は、複写機、ファクシミリ、イメージスキャナ等の画像形成装置に適用される。これにより、本発明に係る給紙装置の有する効果を奏する画像形成装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)寸法の異なる定型紙であっても適応できる給紙装置及び画像形成装置を提供することができる。
(2)ピックアップ時の誤動作による2枚送りや歪みなどの不具合を回避しうる給紙装置及び画像形成装置を提供することができる。
(3)コストが安価で、しかも実用性の高い給紙装置及び画像形成装置を提供することができる。
【0025】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る給紙装置について一部を省略して示す平面図である。
【図2】本発明に係る給紙装置とその紙送り動作を説明する部分断面図である。
【図3】図2に示した後の紙送り動作を説明する図である。
【図4】図3に示した後の紙送り動作を説明する図である。
【図5】図4に示した後の紙送り動作を説明する図である。
【図6】図5に示した後の紙送り動作を説明する図である。
【図7】図6に示した後の紙送り動作を説明する図である。
【図8】本発明に係る給紙装置を組み込んだ画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1乃至図8において同一符号は、同一又は対応部分を示すものとする。また、図1乃至図8の説明において、紙3の積み重ね方向と、給紙部1の高さ方向とは、それぞれ一致するから符号Tに統一して示す。
【0028】
図1〜図8の給紙装置(A)は、給紙部1と、紙送り部2とを含む。給紙部1は、多数枚の紙3を重ねて収納するものであって、金属その他の材料によって構成されたカセットの形態となっており、底板11の周縁に側板12〜15が立設され、底板11及び側板12〜15によって囲まれた平面視四角形の紙収納部16に、その容積に応じた多数枚の紙3が収納された状態になっている。
【0029】
また、給紙部1は、開口部17を有し、開口部17は、積み重ね方向Tでみた底板11の反対側において、紙収納部16を外部に開口している。紙3は、開口部17を通じて紙収納部16に収納される。紙3は、A系列、B系列のような定型紙であり、画像形成に適した材質を持つ。紙3は、紙送り方向F1でみた後端が、同じく紙送り方向F1でみた後方に位置する側板13に突き当たることにより、逆方向F2への移動が制限されている。
【0030】
給紙部1において、紙3の後方には、押さえ板101、及び、押さえ棒102よりなる押さえ部10が配置されている。押さえ棒102は、軸方向の両端が、向かい合う側板14、15に軸回転可能に取り付けられており、押さえ板101は、一端縁が押さえ棒102に結合されている。この構成によると、紙収納部16に収納された紙3の枚数に応じて押さえ棒102が回転し、押さえ板101の他端縁が最上層紙31の表面に接触し続けることで、最上層紙31の後方領域に対し、下向きの押圧力が与えられる。この押圧力は、紙送りの障害とならず、かつ、後で述べるループLP1形成において、その反発力により、最上層紙31の後半部が持ち上がらない値に選定される。
【0031】
さらに、給紙部1は、凸部18を有している。図1の凸部18は、例えば金属材料などで構成された棒状であって、高さ方向Tからみて底板11を横切るように設けられ、軸方向の両端が向かい合う側板14、15に取り付けられている。
【0032】
凸部18は、紙3の最上層紙31を紙送りローラ21と接触可能な高さ位置に突出させるために取り付けられるものである。すなわち、凸部18は、高さ方向Tからみて紙送りローラ21の移動終了位置(P2)の付近であって、且つ、底板11の内面から所定の高さ位置に取り付けられる。この構成により、紙収納部16に収納された紙3は、紙送り方向F1でみた中間部分のみが、凸部18の付近を頂点として積み重ね方向Tに持ち上げられ、少なくとも最上層紙31が開口部17の外に突出される。
【0033】
紙送り部2は、駆動部20と、紙送りローラ21と、案内板22と、遮蔽板23とを備え、給紙部1を構成する開口部17の上方であって、且つ、紙送り方向F1でみた前方に配置されている。
【0034】
駆動部20は、一対のガイド板24、24と、一対のアーム部25、25と、回転軸26とを有している。一対のガイド板24、24は、板面の面内にガイド溝240を有し、側板14、15の外側に配置されている。ガイド溝240は、ガイド板24を厚み方向に貫通し、高さ方向Tでみた開口部17の上部において、開口部17に沿って紙送り方向F1、及び、紙送り方向F1とは逆方向F2に伸びている。
【0035】
回転軸26は、紙収納部16の上方であって、且つ、紙送り方向F1でみた前方に配置されている。具体的に、回転軸26は、一対のガイド溝240、240を貫通しており、少なくとも一端に図示しない回転駆動装置が接続されることにより、軸回転可能となっている。アーム部25は、図示しない駆動装置が接続されることにより、回転軸26を、紙送り方向F1、及び、逆方向F2に往復移動可能に支持している。
【0036】
紙送りローラ21は、紙収納部16において、その上方に配置され、紙収納部16と向き合う下側でみた回転方向が、逆方向F2となるように回転駆動される。以下、説明の都合上、紙送りローラ21の回転方向をF2として説明する。
【0037】
紙送りローラ21は、回転軸26に取り付けられている。図1乃至図8からは必ずしも明らかではないが、紙送りローラ21と、回転軸26との連結部分には、いわゆるワンウェイクラッチが備えられている。このワンウェイクラッチは、紙送りローラ21に対し、紙送り方向F1でみて、回転軸26の回転駆動速度より早い紙送り速度となる負荷がかかったとき、同負荷に逆らわず、紙送りローラ21を紙送り方向F1へ無負荷で回転させる機構である。
【0038】
紙送りローラ21は、これまで提案され、実用に供されているものから、適宜選択して使用することができる。好ましくは、内部に空洞を持ち、外周の変形量の大きなものを用いる。図示の紙送りローラ21は、外周円形状であるが、必ずしも、それに限定されるものではない。外周の一部に平坦面を有するようなものであっても、使用できる可能性がある。
【0039】
案内板22は、紙送り方向F1でみた給紙部1の前方において、高さ方向Tでみた紙送りローラ21の上側に添えられており、高さ方向Tでみた案内板22の下側の板面と、紙送りローラ21の外周面との間には隙間が形成される。この隙間は、紙送り路として用いられるものであるから、少なくとも送られる紙3の厚み寸法以上であって、好ましくは送られる紙3の厚み寸法よりも広くなるように設定すべきである。
【0040】
案内板22は、摩擦抵抗の小さな滑りのよい材料で構成することが好ましい。図示の案内板22は、プラスチック板によって構成されており、紙送りローラ21の外周面に向かい合う下面が平坦な平面となっている。案内板22は、紙送り方向F1でみた後端が、紙送りローラ21の外側に突き出るような大きさにする。紙送り方向F1でみた後端側の突出量は、紙送り動作を考慮した寸法に設定すべきである。
【0041】
遮蔽板23は、紙送り方向F1でみた給紙部1の前方において、側板12の中間部分に備えられ、案内板22と高さ方向に間隔T1を隔てて向かい合っている。間隔T1は、紙送りローラ21の直径寸法に応じて設定され、この間隔T1により、案内板22と、遮蔽板23との相対向面間に紙送りローラ21の収納空間、及び、退避空間が形成される。
【0042】
遮蔽板23は、摩擦抵抗の小さな滑りのよい材料で構成することが好ましい。図示の遮蔽板23は、プラスチック板によって構成されており、紙収納部16に向かい合う下面が平坦な平面となっている。遮蔽板23は、紙送り方向F1でみた後端が、紙送りローラ21の外側に突き出るような大きさにする。紙送り方向F1でみた後端側の突出量は、紙送り動作を考慮した寸法に設定すべきである。
【0043】
次に、図1の給紙装置の紙送り動作について、改めて図2乃至図7を参照して説明する。まず、図2に示すように、給紙部1の内部である紙収納部16に、多数枚の紙3を積層して収納配置する。多数枚の紙3のうち、少なくとも最上層紙31は、凸部18によって、紙送り方向F1でみた中間部が、開口部17から積み重ね方向Tに突出し、紙送りローラ21に接触可能な状態となっている。また、最上層紙31において、紙送り方向F1でみた前端は、遮蔽板23に下面側に入り込むことによって、開口部17からの突出が規制され、紙送り方向F1でみた後端は、押さえ板101による抑えによって、開口部17からの突出が規制されている。
【0044】
次に、紙送りに当たり、図2の紙収納部16に重ねられた多数枚の紙3から最上層紙31をピックアップする場合、アーム部(25)によって、回転軸26、及び、回転軸26上の紙送りローラ21を、収納位置P1から逆方向F2に繰り出す。このとき紙送りローラ21は、回転が規制された状態で繰り出される。繰り出された紙送りローラ21は、図3に示すように、移動終了位置P2において、最上層紙31の表面に接触することにより、最上層紙31には、後方側、即ち、逆方向F2への押し圧力が加わる。その結果、紙送り方向F1でみた最上層紙31の前端と後端との間には、上向きのループLP1が形成される。このループLP1は、最上層紙31の表面に対する紙送りローラ21の圧接箇所を始点とし、最上層紙31の後端と側板13との接触箇所を終点とするものである。
【0045】
図3に示した状態の後、回転軸26、及び、回転軸26上の紙送りローラ21を、図示しないモータによって逆方向F2に回転駆動させることにより、最上層紙31には、その後方が紙押さえ部10により抑えられた状態で、逆方向F2への送りがかかる。その結果、図4に示すように、後方側への送り量と共に、紙送り方向F1でみた最上層紙31の前端が後退してゆき、ループLP1が積み重ね方向Tに次第に膨らんでゆく。ループLP1の反発力は、押さえ板101の押し圧力によって押さえられるので、最上層紙31の後端側が、ループLP1の反発力によって持ち上がるようなことは起こらない。他方、最上層紙31の下の紙(次上層紙32)は、表面が最上層紙31の裏面に接触しているので、紙送りローラ21と直接接触している最上層紙31とは異なり、ループは生じない。また、仮に、次上層紙32にループ(LP2)が形成されたとしても、次上層紙32の表面が、最上層紙31の裏面を滑ることで、ループ(LP2)はループLP1より小さくなる。
【0046】
図4に示した状態の後、最上層紙31の前端は、ループLP1の反発力によって紙送りローラ21に突き当たった状態で、紙送りローラ21の回転F2とともに移動する。ここで、紙送りローラ21が移動終了位置P2で回転し続けると、紙送りローラ21の外周面と、最上層紙31の表面との接触が外れたとき、紙送りローラ21が次上層紙32の表面に接触し、2枚送りが発生することとなる。そこで、紙送りローラ21は、最上層紙31の表面との接触が外れ、前端を保持する状態となったとき、その回転F2によって最上層紙31の前端を保持しながら、紙送り方向F1への移動(退避)を開始する。図5に示す紙送りローラ21の退避位置において、次上層紙32の表面は、開口部17の開口端縁よりも下側にあり、紙送りローラ21との非接触関係にある。
【0047】
紙送りローラ21は、図5に示した状態の後も、回転F2を継続しながら、収納位置P1まで退避し続ける。他方、最上層紙31の前端は、紙送りローラ21の回転F2に沿って紙送りローラ21の上側に移動する。そして、最上層紙31は、前端が紙送りローラ21の外周面から外れた瞬間に、図6に図示するように、ループLP1の反発力、又は、ばね性により紙送りローラ21の上面に乗り上がる。ここで、ループLP1は、側板13に対し最上層紙31の後端が線状に接触して支えられているから、紙送りローラ21の外周から外れた瞬間に生じる反発力により、最上層紙31の前端が均一に押し出され、左右のずれや歪み(歪み等)のない状態で、紙送りローラ21の上面に乗り上がり、案内板22の下面と、紙送りローラ21の外周面との隙間(紙送り路)に送り込まれる。
【0048】
紙送り路でみた紙送りローラ21の外周の運動方向(回転方向)は、下側の外周の回転方向(F2)とは逆の方向、即ち、予め定められた紙送り方向F1に一致する。従って、図6に示した状態のあと、最上層紙31の一枚だけが、紙送り路の前方に向かって、紙送り方向F1の方向に送られることになる。ここで、紙送り路を搬送中の最上層紙31の上方(表面側)には、案内板22が存在するから、この案内板22により、最上層紙31が紙送り路から高さ方向Tに飛び出す不具合が回避される。しかも、紙送り路を搬送中の最上層紙31において、案内板22に対面する表面側には余分な圧力はかからない。違う言葉で表現すれば、最上層紙31は、裏面側にのみ配置された紙送りローラ21から紙送りを受ける。このとき最上層紙31が受ける紙送りローラ21の紙送り力は、紙送りローラ21表面のグリップ力に基づく必要最小限度のものであるから、最上層紙31は、いわば紙送りローラ21の上面を滑る状態となる。
【0049】
図7に示すように、紙送り路の前方には、搬送ローラ対42が備えられており、紙送り路に送り込まれた最上層紙31は、前端が搬送ローラ対42に突き当たることにより歪み等が解消され、端面揃えが終了する。図7の搬送ローラ対42は、少なくとも最上層紙31の前端が突き当たってから、端面揃えが修了するまでの間は回転が規制され、無回転状態となっている。すなわち、上述した最上層紙31の端面揃えは、前端が部分的に無回転状態の搬送ローラ対42に突き当たった後、さらに紙送りローラ21による紙送りを受け、紙送りローラ21の上面を滑りながら逆方向F2に押し戻されることにより歪み等が徐々に解消され、前端の全縁が搬送ローラ対42に均等に突き当たる状態となったときに、終了する。
【0050】
図7の後、回転を開始した搬送ローラ対42によって最上層紙31の前端が捕えられ、紙送り方向F1へハイスピードで搬送される。搬送ローラ対42の回転開始タイミングは、紙送りローラ21の径寸法及び回転速度から導かれる紙送り量に応じて適宜設定される。一例として、搬送ローラ対42の回転開始タイミングは、ピックアップされた最上層紙31の前端が搬送ローラ対42に到達し、前端の全縁が搬送ローラ対42に均等に突き当たるまでに必要な紙送りローラ21の総回転数と、その所要時間から逆算して設定することができる。
【0051】
図1の給紙装置、及び、図2乃至図7を参照して説明した給紙装置の紙送り動作は、紙寸法が変わっても、同様に実行される。従って、寸法の異なる定型紙であっても適応できる。しかも、紙送りローラ21による紙送り動作は、基本的には、最上層紙31に対してのみ働くのであるから、2枚送りや歪みなどの誤動作による不具合は生じ難い。本実施形態の具体的構成と、前記不具合の回避効果との関係について、以下、詳細に説明する。
【0052】
まず、回転軸26は、アーム部25によって逆方向F2に移動可能に支持されているから、最上層紙31をピックアップする場合、回転軸26をアーム部25によって逆方向F2に繰り出すことにより、回転軸26に取り付けられた紙送りローラ21を、最上層紙31に接触させることができる。しかも、紙送りローラ21は、紙収納部16と向き合う下側でみて、逆方向F2になるように回転駆動されるから、最上層紙31に接触した状態で回転駆動することにより、最上層紙31に対し、逆方向F2への送りをかけることができる。
【0053】
ここで、給紙部1は、紙押さえ部10を有しているから、最上層紙31には、その後方が紙押さえ部10により抑えられた状態で、逆方向F2への送りがかかり、上向きのループLP1が形成される。本実施形態は、このループLP1の反発力を利用して、最上層紙31の前端を紙送り路に送り込むことにより、最上層紙31の前端を均一に押し出し、左右のずれや歪み(歪み等)などの不具合を回避する点に特徴の一つがある。
【0054】
紙送り路は、案内板22の下側の板面と、紙送りローラ21の外周面との間に形成される隙間である。すなわち、紙送り路は、紙送りローラ21と案内板22とによって構成できるから、コストが安価で、しかも実用性も高くなる。
【0055】
さらに、紙送り路を搬送中の最上層紙31の表面側には、案内板22が存在するから、この案内板22により、最上層紙31が、紙送り路から高さ方向Tに飛び出すなどの不具合が回避される。しかも、案内板22に対面する最上層紙31の表面側には余分な圧力はかからないため、搬送中に歪み等は生じない。
【0056】
紙送り路に送り込まれた最上層紙31は、前端が搬送ローラ対42に突き当たることにより歪み等が解消され、端面揃えが終了する。このように最上層紙31の端面揃えが、搬送ローラ対42への突き当たりによって終了する構成によると、端面揃えのため部品、例えばリバースローラやループ検知器などが不要となる分だけコストが安価となり、実用性も高くなる。
【0057】
端面揃えが終了した後、最上層紙31の前端は、搬送ローラ対42によって捕えられ、ハイスピードで搬送される。このとき、最上層紙31は、紙送りローラ21の上面を滑る状態となっており、しかも、紙送りローラ21と回転軸26との連結部分にはワンウェイクラッチが備えられているから、紙送りローラ21から搬送ローラ対42へ受け渡し途中の最上層紙31にも歪み等は生じない。
【0058】
最上層紙31が、完全に送り出されないうちに、次上層紙32が、紙送りローラ21による送り作用を受け、紙送り路に入りこむ2枚送りの不具合は、最上層紙31に対して送りをかけた後に、紙送りローラ21を紙送り方向F1に移動(退避)させることで回避される。すなわち、回転軸26は、アーム部25によって、紙送り方向F1に移動可能に支持されているから、すでに説明した最上層紙31の紙送り動作において、紙送りローラ21を、次上層紙32に接触する前に紙送り方向F1へ移動(退避)させることができる。このように本実施形態では、2枚送りを回避するための部品、例えばフリクションパッドやリバースローラなどが不要となる分だけコストが安価となり、実用性も高くなる。
【0059】
さらに、図1乃至図7の給紙装置において、2枚送りを回避する特徴的な手段として、凸部18を有する点、及び、遮蔽板23を有する点が挙げられる。凸部18は、底板11を横切るように設けられ、多数枚の紙3の中間部分を、積み重ね方向Tに突出させる。この構成によると、底板11からみた凸部18の突出高さを適宜調節することにより、最上層紙31に対する紙送りローラ21の接触位置、及び、ループLP1の始点を調節することが可能であるから、2枚送りなどの誤動作を簡単に回避しうる給紙装置を提供することができる。
【0060】
また、遮蔽板23は、給紙部1において紙送り方向F1でみた前方において、案内板22と高さ方向に間隔T1を隔てて備えられている。この構成では、紙送り方向F1への移動(退避)した紙送りローラ21が、間隔T1に退避することにより、次上層紙32に対する紙送りローラ21の接触が、遮蔽板23によって完全に断たれるから、2枚送りなどの誤動作を簡単に回避しうる給紙装置を提供することができる。
【0061】
図8には、図1乃至図7を参照して説明した給紙装置Aを組み込んだ画像形成装置が図示されている。この画像形成装置は、底面に脚部41を備えた筐体40の内部に、搬送ローラ対42や画像形成部43などを有している。搬送ローラ対42における紙搬送方向の上流であってやや下方には、本発明に係る給紙装置Aが設けられている。給紙装置Aからみて、紙搬送方向の下流側には、レジストローラ44、画像形成部43、定着ユニット45、排紙ローラ46がその順に配置されている。
【0062】
画像形成部43は、カートリッジ47、光学ユニット48、転写ローラ48を有している。カートリッジ47は、紙搬送経路の上方に配置されており、光学ユニット48によってその動作が制御されている。転写ローラ48は、紙搬送経路を挟んでカートリッジ47と対向する位置に配置されている。さらに、この他、画像形成装置の筐体40内には、電源ユニット5や、内部冷却用のファン6などが配置されている。
【0063】
図8に示した画像形成装置は、本発明に係る給紙装置Aを有するから、給紙装置Aの有する利点をそのまま享受することができる。
【0064】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。例えば、凸部18は、紙収納部16に収納されている紙3の中間部分を積み重ね方向Tに突出させるために備えられるものであるから、側板14、15ではなく、底板11に立設するなど、同目的を達成しうる範囲で取り付け場所を適宜変更することができる。
【0065】
さらに言えば、紙収納部16に収納されている紙3の収納枚数は、使用と補充とによって増減するから、凸部18の高さ位置は、収納枚数の増減に応じて変更可能であることが好ましい。凸部18の高さ位置を変更する構成として、側板14、15への取り付け位置を変えたり、凸部18に弾性体を取り付けて上向きの付勢力を与えるなど、周知の技術を用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
A 給紙装置
1 給紙部
10 紙押さえ部
16 紙収納部
18 凸部
2 紙送り部
20 駆動部
21 紙送りローラ
22 案内板
3 紙
31 最上層紙
32 次上層紙
F1 紙送り方向
F2 逆方向
T 積み重ね方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙部と、紙送り部とを含む給紙装置であって、
前記給紙部は、多数枚の紙を重ねて収納するものであって、紙送り方向でみた後方に紙押さえ部を有しており、
前記紙送り部は、駆動部と、紙送りローラと、案内板とを備えており、
前記駆動部は、アーム部と、回転軸とを有しており、
前記回転軸は、前記給紙部の紙収納部の上方であって、且つ、前記紙送り方向でみた前方に配置されており、
前記アーム部は、前記回転軸を、前記紙送り方向、及び、前記紙送り方向とは逆方向に移動可能に支持しており、
前記紙送りローラは、前記回転軸に取り付けられ、前記紙収納部と向き合う下側でみた回転方向が、紙送り方向とは逆方向になるように回転駆動されるものであり、
前記案内板は、前記給紙部において前記紙送り方向でみた前方に備えられ、下側の板面と、前記紙送りローラの外周面との間に紙送り路が形成される、
給紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載された紙送り装置であって、前記給紙部は、凸部を有し、
前記凸部は、前記紙収納部の底面を横切るように設けられ、前記多数枚の紙の中間部分を、積み重ね方向に突出させる、
給紙装置。
【請求項3】
給紙装置を有する画像形成装置であって、前記給紙装置は、請求項1又は2に記載されたものでなる、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107754(P2013−107754A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255057(P2011−255057)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(593066760)株式会社タクミ精工 (6)
【Fターム(参考)】