説明

給紙装置

【課題】 印刷用紙の紙粉等をムラなく除去し、印刷用紙をスムースに搬送することが可能な給紙装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 この給紙装置は、その丈夫に印刷用紙Sを載置するための紙置き台10と、ローラ対12、13、および一対のローラ14間に巻回された無端ベルト15から構成される搬送機構と、実線で示す位置と仮想線で示す位置との間を往復移動するサッカー18と、ブラシローラ21と、ブラシローラ21を包囲する集塵ダクト22と、集塵ダクト22内に配設されるドクターブレード23と、集塵ダクトに接続される真空ポンプと、を備える。ブラシローラ21は、少なくともそのブラシの先端が搬送される印刷用紙Sの上面に接触するように配置され、ブラシローラ21の周速度は、印刷用紙Sの搬送速度以上の周速度となるように調整されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙置き台上に載置された印刷用紙の上面をサッカーにより吸着保持して印刷ユニットに搬送する給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような給紙装置において、特許文献1および特許文献2に記載のように印刷用紙に付着した紙粉や裏写り防止のためのパウダーを除去する装置が公知となっている。
【0003】
すなわち、特許文献1には、印刷用紙に対して空気を吹き付けるノズルと、印刷用紙に摺接するように配設されたブラシとを備える装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、印刷物としてのダンボールの表面に接触した状態で遊転自在に配設された回転ブラシロールと、回転ブラシロールの下流側に配置される紙粉吸引用の真空ノズルとを備える装置が記載されている。
【特許文献1】特開2002−210919
【特許文献2】特開2001−038880
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、ブラシが固定されているため、紙粉の大きさや印刷用紙の状態の変化に対応することができず、紙粉等の除去にムラが生じる場合がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の装置では、回転ブラシロールは、搬送される印刷物によって従動回転し、その回転を調整することができない。このため、一般的な商業印刷に用いる比較的薄い印刷用紙の場合には、この回転ブラシロールによって給紙が阻害される可能性がある。
【0007】
この発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、印刷用紙の紙粉等をムラなく除去し、比較的薄い印刷用紙であってもスムースに搬送することが可能な給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、紙置き台上に載置された印刷用紙の上面をサッカーにより吸着保持して印刷ユニットに搬送する給紙装置であって、少なくともそのブラシ毛の先端が搬送される印刷用紙の上面に接触し、当該印刷用紙の搬送速度以上の周速度で回転するブラシローラと、前記ブラシローラを包囲する集塵ダクトと、前記集塵ダクトに接続される吸引手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の給紙装置において、前記ブラシローラの印刷用紙に対する当接圧を調整する当接圧調整手段を備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の給紙装置において、印刷用紙の情報に基づいて、前記ブラシローラの印刷用紙に対する当接圧を調整するように、前記当接圧調整手段を制御する制御部を備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の給紙装置において、前記ブラシローラの周速度を調整する周速度調整手段を備える。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の給紙装置において、印刷用紙の情報に基づいて、前記ブラシローラの周速度を調整するように、前記周速度調整手段を制御する制御部を備える。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の給紙装置において、少なくとも前記ブラシローラのブラシ毛の先端と当接するドクターブレードを備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6に記載の給紙装置において、前記ブラシローラの静電気を除去するための除電手段を備える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、少なくともそのブラシ毛の先端が搬送される印刷用紙の上面に接触し、印刷用紙の搬送速度以上の周速度で回転するブラシローラと、ブラシローラを包囲する集塵ダクトと、集塵ダクトに接続される吸引手段と、を備えることから、印刷用紙の紙粉等をムラなく除去し、印刷用紙をスムースに搬送することが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、ブラシローラの印刷用紙に対する当接圧を調整する当接圧調整手段を備えることから、印刷用紙の種類の変更にかかわらず、印刷用紙の紙粉等をムラなく除去し、印刷用紙をスムースに搬送することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、印刷用紙の情報に基づいて、ブラシローラの印刷用紙に対する当接圧を調整するように、当接圧調整手段を制御する制御部を備えることから、印刷用紙の種類の変更等に応じて簡易に印刷用紙の紙粉等をムラなく除去し、印刷用紙をスムースに搬送することが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、ブラシローラの周速度を調整する周速度調整手段を備えることから、印刷用紙の種類の変更にかかわらず、印刷用紙をスムースに搬送することが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、印刷用紙の情報に基づいて、ブラシローラの周速度を調整するように、周速度調整手段を制御する制御部を備えることから、印刷用紙の種類の変更等に応じて簡易に印刷用紙をスムースに搬送することが可能となる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、少なくとも前記ブラシローラのブラシ毛の先端と当接するドクターブレードを備えることから、ブラシローラに付着した紙粉等を有効的に除去することが可能となる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、ブラシローラの静電気を除去するための除電手段を備えることから、効率よく印刷用紙の紙粉等を除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はこの発明に係る給紙装置の側面図であり、図2はその正面図である。
【0023】
この給紙装置は、その上部に印刷用紙Sを載置するための紙置き台10と、ローラ対12、13および一対のローラ14間に巻回された無端ベルト15から構成される搬送機構と、図1において実線で示す位置と仮想線で示す位置との間を往復移動するサッカー18と、印刷用紙Sの上面の高さを検出するためのセンサ41と、ブラシローラ21と、ブラシローラ21を包囲する集塵ダクト22と、集塵ダクト22内に配設されるドクターブレード23と、集塵ダクトに接続される図示しない真空ポンプ45(図5参照)と、を備える。
【0024】
印刷用紙Sの上面の高さを検出するためのセンサ41は、少なくとも、印刷用紙Sにおけるサッカー18側の端部部分において、中央部と両端部の印刷用紙Sの高さ位置を検出しうる構成となっている。このセンサ41は、サッカー18の近傍に配設されることが好ましい。なお、このセンサ41として、非接触で印刷用紙Sの高さ位置を検出し得る超音波センサーや光学センサー等を採用することができる。
【0025】
紙置き台10は、図示しないモータの駆動により印刷用紙Sの増減に応じて上下方向に移動可能となっている。
【0026】
ローラ対12、13および一対のローラ14は、図2に示す回転モータ42に接続され、同期して回転可能な構成となっている。
【0027】
図3はブラシローラ21周辺を拡大して示す側面図であり、図4はその正面図である。
【0028】
ブラシローラ21は、その中心軸を中心にしてブラシ毛が螺旋面を形成するように並ぶ螺旋ブラシから構成される。また、静電気の発生を防止するため、このブラシローラ21のブラシ毛として、馬や豚等の自然毛や、カーボンブラシ等の導電性材料を利用することが好ましい。
【0029】
このブラシローラ21は、当接圧調整手段としての図示しない駆動モータ44(図5参照)に接続され、その高さ位置が調整可能となっている。すなわち、ブラシローラ21の印刷用紙に対する当接圧が調整可能となっている。このため、印刷用紙Sの種類が変更された場合であっても、駆動モータ44の駆動により、ブラシローラ21を少なくともそのブラシの先端が搬送される印刷用紙Sの上面に接触するように配置することが可能となる。これにより、印刷用紙Sに付着する紙粉等をムラなく除去することが可能となる。
【0030】
また、ブラシローラ21の当接圧はブラシローラ21の回転速度とともに印刷用紙Sの搬送性にも影響を与え、当接圧が高すぎるとジャム等の搬送不良を生じる場合があった。また、印刷用紙Sに当接するブラシローラ21の当接圧が印刷用紙Sの幅方向で大きく異なる場合には印刷用紙Sに蛇行が生じることもわかった。したがって、ブラシローラ21の当接圧と回転速度とは印刷用紙の種類と搬送速度(印刷速度)に対応して搬送不良が生じないような速度設定を実験的に求めておき、後述するROM101等に格納しておくのが好ましい。これにより、例えば印刷用紙Sの紙の厚さ、紙のサイズ、紙種等に応じてブラシローラ21の当接圧と回転速度とを最適な条件に調整することができる。また、さらに当接圧調整手段としてブラシローラ21の左右の両軸端側をそれぞれ個別の駆動モータ44により印刷用紙S面に向かって接離移動するように構成し、ブラシローラ21の左右の当接圧のバランスの調整をとることができるようにしてもよい。
【0031】
また、このブラシローラ21は、図2に示す回転モータ43に接続されて回転可能な構成となっており、回転モータ43を制御することにより、このブラシローラ21の周速度が調整可能となっている。このため、印刷用紙Sの種類が変更された場合であっても、周速度を調整することにより、印刷用紙Sをスムースに搬送することが可能となる。なお、このブラシローラ21の周速度は、印刷用紙Sの搬送速度以上の周速度となるように調整されている。このため、印刷用紙Sがブラシローラ21により詰まったり、停止したりすることを防止することが可能となる。
【0032】
なお、出願人の実験では、印刷用紙Sの搬送速度に対して120乃至200%の周速度でブラシローラ21を回転駆動させるようにしたところ搬送不良を生じることなく良好に紙粉等を除去でき、特に回転速度が速いほど紙粉等を多く除去することができた。ただし、ブラシローラ21の回転速度を速くするほど印刷用紙Sの後端がブラシローラ21に巻き上げられる傾向にあるため、例えばコシの弱い薄手の印刷用紙を使用する場合には、ブラシローラ21の後流側に印刷用紙Sの巻き上げ防止のための案内ガイドを別途備えることが好ましい。
【0033】
さらに、このブラシローラ21は、その静電気を除去するための除電手段として、電気的にアースに接続される構成となっている。このため、ブラシローラ21に付着した紙粉等を容易に除去することができ、ブラシローラ21が常に清潔に維持される。これにより、効率よく印刷用紙Sの紙粉等を除去することが可能となる。
【0034】
ドクターブレード23は、ブラシローラ21のブラシ毛の先端と当接する。このため、ブラシローラ21が回転すると、ブラシ毛に付着した紙粉等がドクターブレード23により跳ね飛ばされ、常にブラシローラ23を清潔に維持することが可能となる。
【0035】
集塵ダクト23は、ブラシローラ21を包囲するように配置され、図示しない真空ポンプ45(図5参照)に接続されている。このため、ブラシローラ21に付着した紙粉等を真空ポンプ45の駆動により吸引することが可能となる。
【0036】
なお、この集塵ダクト23は、印刷ユニット等の固定された壁面24に穿設された長穴25にピン26で固定されている。したがって、この集塵ダクト23の固定位置は、ピン26を手動で調整することにより変更可能であるが、ブラシローラ21の当接圧調整手段としての駆動モータ44により、ブラシローラ21と一体的に高さ位置を調整するようにしてもよい。このため、印刷用紙Sの種類が変更された場合であっても、印刷用紙Sの搬送経路を阻むことなく、印刷用紙Sをスムースに搬送することが可能となる。
【0037】
図5は、この発明に係る給紙装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【0038】
この給紙装置は、装置の制御に必要な動作プログラムや印刷用紙の種類に応じてブラシローラ21の当接圧や回転速度を設定する条件が格納されたROM101と、制御時にデータが一時的にストアされるRAM102と、論理演算を実行するCPU103とを有する制御部100とを備える。この制御部100は、印刷用紙Sの上面の高さを検出するためのセンサ41、図2に示す回転モータ42、43、ブラシローラ21の当接圧調整手段としての駆動モータ44、および、集塵ダクト22に接続される真空ポンプ45と、インターフェース104を介して接続されている。なお、この実施形態においては、印刷用紙Sの種類に基づいて、ブラシローラ21の当接圧および周速度を自動的に調整するように、駆動モータ44および回転モータ42が制御される構成となっている。
【0039】
このような給紙装置においては、紙置き台10上の印刷用紙Sは、サッカー18によりその上面の端縁付近を吸着保持され、ローラ対12に狭持される位置まで搬送される。そして、この印刷用紙Sは、ローラ対12、13および無端ベルト15から構成される搬送機構により、印刷ユニットまで搬送される。印刷用紙Sが搬送機構により搬送される間に、印刷用紙Sの上面に付着した紙粉等は、ブラシローラ21により掃われ、あるいは、ブラシローラ21に付着し、印刷用紙Sから除去される。このようにしてブラシローラ21に付着した紙粉等は、ブラシローラ21のブラシ毛がドクターブレード23と当接しながら回転することにより、ブラシローラ21から除去される。そして、ブラシローラ21により掃われ、あるいは、ブラシローラ21から除去された紙粉等は、集塵ダクト23に接続された真空ポンプ45の駆動により、集塵ダクト23の外へ排出される。
【0040】
これにより、この発明に係る給紙装置によれば、印刷用紙Sの紙粉等をムラなく除去し、印刷用紙Sをスムースに搬送することが可能となる。
【0041】
なお、上述した実施形態においては、ブラシローラ21と搬送機構とは回転モータ42と回転モータ43との別個の駆動源により駆動する構成を採用しているが、ブラシローラ21は搬送機構の駆動源と同一の駆動源により駆動する構成としてもよい。この場合には、ブラシローラ21への駆動の伝達に使用されるギヤと搬送機構への駆動の伝達に使用されるギヤとのギヤ比を変更することにより、それぞれの周速度を変更することが可能となる。
【0042】
また、上述した実施形態においては、ブラシローラ21の除電手段として、ブラシローラ21が電気的にアースに接続される構成を採用しているが、放電によりイオン化した空気をファンで帯電物に吹き付けることによって帯電物の静電気を中和するイオンブロアを集塵ダクト22に接続する構成を採用してもよい。
【0043】
また、上述した実施形態において、当接圧調整手段としてブラシローラ21が駆動モータ44によって上下動される構成を採用しているが、その他圧電駆動等の精密駆動素子による上下動や、もしくは手動によりブラシローラ21の高さ位置を変更可能な手段を採用してもよい。
【0044】
さらに、必要により、印刷用紙の両面に対して本発明のブラシローラ21を備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明に係る給紙装置の側面図である。
【図2】この発明に係る給紙装置の正面図である。
【図3】ブラシローラ21周辺を拡大して示す側面図である。
【図4】ブラシローラ21周辺を拡大して示す正面図である。
【図5】この発明に係る給紙装置の主要な電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0046】
10 紙置き台
12 ローラ対
13 ローラ対
14 一対のローラ
15 無端ベルト
18 サッカー
21 ブラシローラ
22 集塵ダクト
23 ドクターブレード
24 壁
25 長穴
26 ピン
41 センサ
42 回転モータ
43 回転モータ
44 駆動モータ
45 真空ポンプ
100 制御部
101 ROM
102 RAM
103 CPU
104 インターフェース
S 印刷用紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙置き台上に載置された印刷用紙の上面をサッカーにより吸着保持して印刷ユニットに搬送する給紙装置であって、
少なくともそのブラシ毛の先端が搬送される印刷用紙の上面に接触し、当該印刷用紙の搬送速度以上の周速度で回転するブラシローラと、
前記ブラシローラを包囲する集塵ダクトと、
前記集塵ダクトに接続される吸引手段と、
を備えることを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給紙装置において、
前記ブラシローラの印刷用紙に対する当接圧を調整する当接圧調整手段を備える給紙装置。
【請求項3】
請求項2に記載の給紙装置において、
印刷用紙の情報に基づいて、前記ブラシローラの印刷用紙に対する当接圧を調整するように、前記当接圧調整手段を制御する制御部を備える給紙装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の給紙装置において、
前記ブラシローラの周速度を調整する周速度調整手段を備える給紙装置。
【請求項5】
請求項4に記載の給紙装置において、
印刷用紙の情報に基づいて、前記ブラシローラの周速度を調整するように、前記周速度調整手段を制御する制御部を備える給紙装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の給紙装置において、
少なくとも前記ブラシローラのブラシ毛の先端と当接するドクターブレードを備える給紙装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6に記載の給紙装置において、
前記ブラシローラの静電気を除去するための除電手段を備える給紙装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−298591(P2006−298591A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124446(P2005−124446)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】