給紙装置
【課題】 ホッパー10内に積層された用紙群1の一番下に位置する用紙2を取り出す際に、2枚以上の用紙が重なって取り出されてしまう障害を適切に防止できる給紙装置を提供する。
【解決手段】 積層された多数枚の用紙群1を保持するとともに、底部に用紙を取り出すための取出口10aが設けられたホッパー10と、用紙群1の一番下に位置する一枚の用紙2を吸着して、ホッパー10の取出口10aから取り出す吸着パッド20と、を備える。そして、ホッパー10の前部には、用紙群1の前端部をガイド面に突き当てて保持する前部突き当てガイド11と、用紙群1の前部底面を引っ掛けて支持する前部底面支持部材13と、が設けてあり、さらにホッパー10に保持された用紙群1の前端部に対して紙面垂直方向の振動を与える振動器50と、用紙群1の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射ユニット60と、を備える。
【解決手段】 積層された多数枚の用紙群1を保持するとともに、底部に用紙を取り出すための取出口10aが設けられたホッパー10と、用紙群1の一番下に位置する一枚の用紙2を吸着して、ホッパー10の取出口10aから取り出す吸着パッド20と、を備える。そして、ホッパー10の前部には、用紙群1の前端部をガイド面に突き当てて保持する前部突き当てガイド11と、用紙群1の前部底面を引っ掛けて支持する前部底面支持部材13と、が設けてあり、さらにホッパー10に保持された用紙群1の前端部に対して紙面垂直方向の振動を与える振動器50と、用紙群1の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射ユニット60と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積み上げられた用紙を下から一枚ずつ取り出して供給する下取り方式の給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層された用紙を下側から一枚ずつ取り出す下取り方式の給紙装置は、給紙動作を止めることなく用紙を上から補給できるため、印刷や製本など多くの紙工装置で採用されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この種の給紙装置は、積層用紙の下層には上部に積み重ねられた用紙の重量がかかっているので、用紙の積層量が多いと最下層の用紙を取出す際に、その直上に重なり合う用紙が摩擦や静電気などで張り付いてしまい、複数枚の用紙が一緒に取り出される、いわゆる重送と称する動作不良や、ひいては積層用紙のホッパ内からの脱落といった障害を引き起こしてしまうおそれがあった。
【0003】
そこで、特許文献2に開示された給紙装置では、噴射口を積層されたシート束の先端縁に対向するように配置した空気噴射ノズルが設けてあり、吸引ヘッドがシートを吸着する前に空気を噴射して、積層されたシートの相互間に空気を吹き込み、シート相互間を分離しやすくしている。
【0004】
しかしながら、このように積層されたシート束の先端縁に圧縮空気を吹き付けても、取り出し対象となる一番下に位置するシートには多数枚の積層されたシートの重量が作用しているため、吹き付けた圧縮空気が跳ね返されてしまう。したがって、一番下に位置するシートとそれに重なり合うすぐ上側のシートとの間を、空気層によって分離できる状態には至らず、高い確立で2枚以上の用紙が重なって取り出されてしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願平3−079526号(実開平5−022428号)のCD−ROM(特に、段落0006から段落0017まで及び図1から図3までを参照。)。
【特許文献2】実願昭55−146508号(実開昭57−069350号)のマイクロフィルム(特に、明細書第8ページ5行目から14行目まで並びに第2図及び第3図を参照。)。
【特許文献3】特表2001−522340号公報(特に、第22ページ2行目から10行目まで及び図6を参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、ホッパー内に積層された用紙群の一番下に位置する用紙を取り出す際に、2枚以上の用紙が重なって取り出されてしまう障害を適切に防止できる給紙装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、積層された多数枚の用紙群を保持するとともに、底部に用紙を取り出すための取出口が設けられたホッパーと、
用紙群の一番下に位置する一枚の用紙を吸着して、ホッパーの取出口から取り出す吸着パッドと、を備えた給紙装置において、
ホッパーの前部には、用紙群の前端部をガイド面に突き当てて保持する前部突き当てガイドと、用紙群の前部底面を引っ掛けて支持する前部底面支持部材と、が設けてあり、
吸着パッドは、用紙群の一番下に位置する一枚の用紙に対し、その前部底面付近を吸着して下方へ引き出すことで、当該用紙を前部底面支持部材から離脱させて取出口から取り出す構成であり、
更に、ホッパーに保持された用紙群の前端部に対して紙面垂直方向の振動を与える振動器と、
用紙群の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記構成の本発明によれば、用紙群を紙面垂直方向に振動させることで、積層された用紙の一枚一枚をばらけさせ、その状態でさらに圧縮空気を用紙群の前端面に吹き付けるので、効果的に圧縮空気が用紙の間に入り込んで空気の層が形成される。そのため、吸着パッドで取り出される一番下に位置する一枚の用紙に対し、その上に重なっていた隣接用紙が貼り付いたまま重なって送り出されるという障害の発生を抑制することができる。
【0009】
ここで、本発明は、前部突き当てガイドと前部底面支持部材を、それぞれ独立して設け、前部底面支持部材に対して振動器の振動を与え、一方、前部突き当てガイドには当該振動を伝えない構成とすることができる。
【0010】
かかる構成により、前部底面支持部材によって支持された用紙群の前部底面に対し、振動器からの紙面垂直方向の振動が伝えられることで、圧縮空気が吹き付けられる用紙群の前端面を効率的に浮き上がらせることができる。しかも、前部突き当てガイドには振動器からの振動を伝えない構成とすることで、ホッパー内での用紙群の位置ずれを防ぎ、用紙の一定位置を吸着パットが吸着して安定した用紙の取り出しを実現することができる。
【0011】
また、本発明は、振動器は、用紙群に対して斜め前後方向の振動を伝える配置をもって前部突き当てガイドに装着され、ホッパーに保持された用紙群の前端部に対し、紙面垂直方向の振動に加えて紙面内前後方向の振動を与える構成とすることもできる。
【0012】
用紙群に伝えられる斜め前後方向の振動は、用紙群の紙面垂直方向に作用する分力と、紙面に平行な方向の分力とに分解することができる。このうち、紙面垂直方向に作用する分力は、既述したように圧縮空気が吹き付けられる用紙群の前端面を効率的に浮き上がらせる作用効果がある。また、紙面に平行な方向の分力は、用紙群の前端部を前部突き当てガイドに繰り返し衝突させて用紙の一枚一枚をばらけさせる作用効果がある。これらの各分力による作用効果が複合されて、いっそう効率的に用紙間の重なり合った状態が解きほぐされる。そして、圧縮空気の吹き付けと相俟って、用紙の重なり合った取り出しが適切に防止される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、ホッパー内に積層された用紙群の一番下に位置する用紙を取り出す際に、2枚以上の用紙が重なって取り出されてしまう障害を適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る給紙装置の平面図である。
【図2】給紙装置の前部を拡大して示す側面図と制御系を示すブロック図とを重ね合わせて示す図である。
【図3】中央前部突き当てガイドとその周辺構造を拡大して示す斜視図である。
【図4】制御回路による各構成要素の制御動作を説明するための図である。
【図5】図4に続く、制御回路による各構成要素の制御動作を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る給紙装置の平面図である。
【図7】第2実施形態に係る給紙装置の前部を拡大して示す側面図と制御系を示すブロック図とを重ね合わせて示す図である。
【図8】第2実施形態に係る中央前部突き当てガイドとその周辺構造を拡大して示す斜視図である。
【図9】第2実施形態に係る制御回路による各構成要素の制御動作を説明するための図である。
【図10】図9に続く、制御回路による各構成要素の制御動作を説明するための図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る給紙装置の変形例を、図7に対応して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図5は本発明の第1実施形態を示す図で、図1は本発明の第1実施形態に係る給紙装置の平面図、図2はその給紙装置の前部を拡大して示す側面図と制御系を示すブロック図とを重ね合わせて示す図である。
【0016】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る給紙装置は、ホッパー10と、複数の吸着パッド20と、一対の給紙ローラ30、31と、制御回路40とを含んでいる。
さらに、ホッパー10は、前部突き当てガイド11、12と、前部底面支持部材13、14と、後部底面支持板15と、後部位置決めガイド16とを構成要素として有している。このホッパー10は、積層された多数枚の用紙群1を保持するためのものである。積層された多数枚の用紙群1は、底面の後部領域を後部底面支持板15に配置されるとともに、前部底面の一部を前部底面支持部材13により下から支持され、かつ前端面を前部突き当てガイド11、12に当接した状態で、ホッパー10内に保持される。また、用紙群1の後端面は、後部位置決めガイド16によって位置決めされる。
ホッパー10の底部は、前端部と後部底面支持板15との間が開口して用紙の取出口10aを形成している。
【0017】
前部突き当てガイド11、12は、用紙群1の前端部を後述するガイド面に突き当てて保持する。本実施形態では、前部突き当てガイド11、12は、ホッパー10の前端中央部に設けた中央前部突き当てガイド11と、この中央前部突き当てガイド11を中心として左右の対称位置に設けた一対の前角部突き当てガイド12とで構成してある。
図3は中央前部突き当てガイド11とその周辺構造を拡大して示している。
【0018】
各突き当てガイド11、12には、用紙群1の前端面に当接させる並列ガイド面11a、12aが形成してある。各突き当てガイド11、12の並列ガイド面11a、12aは、同一平面上に配置してある。これらの並列ガイド面11a、12aは、図1に波線1Aで示すように、四角形状の用紙群1の一辺を前端に配置して当該前端を突き当て保持する機能を有している。
また、本実施形態のホッパー10は、図1に波線1Bで示すように、四角形状の用紙群1の角部を前端に配置して保持することもできるようになっている。すなわち、本実施形態の給紙装置は、用紙の一辺から送り出す給紙方式(直方出し)と、用紙の角部から送り出す給紙方式(菱形出し)のいずれかを選択して実行できるようになっている。後者の給紙方式は、例えば製本工程において印刷物や書籍を梱包する際の当て紙の給紙に利用されている。
【0019】
そこで、中央前部突き当てガイド11には、直角ガイド面11bがさらに形成してある。直角ガイド面11bは、並列ガイド面11aを通る仮想平面に対し45°の角度で交叉して斜め後方に延びるとともに、互いに直角に交わる2つのガイド面によって形成されている。四角形状の用紙群1の角部は、この直角ガイド面11bに当接して保持される。
【0020】
後部位置決めガイド16は、中央前部突き当てガイド11の後方に設けてあり、後部底面支持板15の上面に対して直角に突き出す一対の支持柱16aによって、用紙群1の後端を位置決め保持する構成となっている。これらの支持柱16aによって、用紙群1が図1の波線1Aで示す配置であっても、また同図の波線1Bで示す配置であっても、用紙群1の後端に相当する一辺または角部に接触して位置決めする機能を有している。
後部位置決めガイド16は、前後方向に移動調整自在であり、締結レバー16bの回動操作をもって移動後の位置に固定される。
【0021】
前部底面支持部材13、14は、中央前部突き当てガイド11と組み合わされた中央前部底面支持部材13と、前角部突き当てガイド12と組み合わされた前角部底面支持部材14とで構成してある。このうち、前角部底面支持部材14は、前角部突き当てガイド12に固定した平板で形成され、前角部突き当てガイド12の下端からホッパー10の取出口10aに沿って水平に延出している。そして、当該平板の上面が用紙群1の前部底面を引っ掛けて支持する支持面14aとなっている。これら前角部突き当てガイド12と前角部底面支持部材14は、装置本体の支持枠101に固定されている。
【0022】
図3に示すように、中央前部底面支持部材13は、平板をL字状に湾曲形成した形状となっており、湾曲部よりも一方側の平板部分を支持板部13aとしてホッパー10の取出口10aに沿って水平に配置してあり、他方側を基板部13bとして鉛直に配置してある。支持板部13aの上面は、用紙群1の前部底面を引っ掛けて支持する支持面となっている。
また、中央前部底面支持部材13の内部側には、中央前部突き当てガイド11を非接触で配置するための切欠き口13cが形成してある。
【0023】
中央前部突き当てガイド11は、並列ガイド面11a及び直角ガイド面11bが、中央前部底面支持部材13における支持板部13aの上面(支持面)と直交して近接配置されるように、前部底面支持部材13の切欠き口13cへ本体部分を入り込ませて配置してある。ただし、この配置状態において中央前部突き当てガイド11と前部底面支持部材13との間には一定の隙間が設けられ、互いに非接触となっている。
【0024】
複数の吸着パッド20は、ホッパー10の下方へ移動し用紙群1の一番下に位置する一枚の用紙を吸着するとともに、当該移動位置からさらに移動して当該用紙をホッパー10の取出口10aから取り出す機能を有している。こられの吸着パッド20は、図示しない駆動モータからの駆動力をもって移動する。また、吸着パッド20は、図示しない真空ポンプによる吸引作用をもって吸着面に負圧の状態が形成され、用紙の下面を吸着する。
図1に示すように複数の吸着パッド20は、横一列に並べて配置してあり、それらが一体に移動する。なお、用紙群1が図1の波線1Bで示すように配置される場合は、中央の吸着パッド20のみで最下面にある用紙の前端角部近傍を吸着する。
【0025】
一対の給紙ローラ30、31は、駆動ローラ30と従動ローラ31からなり、従動ローラ31は駆動ローラ30に対して接離する方向に移動自在となってる。この従動ローラ31は、図示しない駆動モータの駆動力をもって移動する。一対の給紙ローラ30、31は、吸着パッド20でホッパー10から取り出されてきた用紙の前部を把持し、駆動ローラ30の回転に伴い当該用紙を次工程に送り出す。
【0026】
さて、本実施形態の給紙装置は、ホッパー10に保持された用紙群1を振動させる振動器50と、用紙群1の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射ユニット60(圧縮空気噴射手段)とを備えている。
【0027】
振動器50には公知の各種バイブレータが適用できるが、好ましくは直線的な振動を発生する構成のものを使用して、ホッパー10に保持された用紙群1に対し紙面垂直方向の振動を伝える配置をもって、中央前部底面支持部材13における基板部13bの背面に装着してある。
【0028】
図3に示すように、振動器50は、防振ゴム51を介して装置本体の支持枠102に固定してある。すなわち、中央前部底面支持部材13は、防振ゴム51及び振動器50を介して支持枠102に固定されている。
一方、中央前部突き当てガイド11は、装置本体の別の支持枠103に固定してある。すなわち、中央前部突き当てガイド11と中央前部底面支持部材13は、それぞれ独立して設けてあり、振動器50は中央前部底面支持部材13に対して振動を伝え、中央前部突き当てガイド11には当該振動を伝えない構成となっている。
この構成により、中央前部底面支持部材13によって支持された用紙群1の前部底面に対し、振動器50からの紙面垂直方向の振動が伝えられることで、用紙群1の前端面を効率的に浮き上がらせることができる。しかも、中央前部突き当てガイド11には振動器50からの振動を伝えない構成とすることで、ホッパー10内での用紙群1の位置ずれを防ぐことができる。
【0029】
圧縮空気噴射ユニット60は、前部突き当てガイド11、12のガイド面11a、12a、11bにおける下部領域に開口する噴射ノズル61(図3参照)と、当該噴射ノズル61に圧縮空気を供給する空気供給源62(図2参照)と、これらを連通させる配管63とを含む構成である。空気供給源62は、例えば空気圧送ポンプで構成され、噴射ノズル61の中空部内に配管63を通して圧縮空気を送り込む。送り込まれた圧縮空気は、噴射ノズル61から用紙群1の前端面に向かって噴射される。
【0030】
用紙群1は、上述したように振動器50から受ける紙面垂直方向の振動によって各用紙が小刻みに押し上げられて、各用紙間がばらけており、その状態で前端面に圧縮空気が噴射されると、当該圧縮空気が各用紙間に入り込み空気層を形成する。
本実施形態では、噴射ノズル61を前部突き当てガイド11、12のガイド面11a、12a、11bにおける下部領域に開口させてあるので、圧縮空気は用紙群1の下部に集中的に吹き付けられ、その結果、用紙群1の下層にある用紙へ作用する用紙重量圧が軽減される。したがって、吸着パッド20で取り出される一番下に位置する一枚の用紙に対し、その上に重なっていた隣接用紙が貼り付いたまま重なって送り出される障害を防止できる。
【0031】
しかも、一番下に位置する用紙2とその上に重なっていた隣接用紙との間に空気層が形成される結果、用紙群1の前部底面を前部底面支持部材13が広い接触面積で支持していても、吸着パッド20が一番下に位置する用紙2のみを当該前部底面支持部材13の支持領域から引き抜いて取り出し、その上に隣接する用紙はそのまま前部底面支持部材13に支持される状態を保つことが可能となる。よって、ホッパー10からの用紙群1の脱落も効果的に防止することができる。
【0032】
なお、質量の多い用紙や硬い用紙など、小刻みな振動によって充分に浮き上がって用紙間が離間するような性状の用紙に対しては、圧縮空気噴射ユニット60の作動を停止して圧縮空気の噴射を省略することも可能である。
【0033】
ところで、先に提示した特許文献3には、積層された紙葉類等の用紙(同文献では「扁平物」と称している)を、その底部に配置したベルトコンベヤによってシート面と平行に引き出す構成の給紙装置が開示されている。この特許文献3には、インパルス発生器を設け、紙葉類堆積物に対して堆積方向を横切る方向(すなわち、ベルトコンベヤによる引き出し方向と平行)に衝撃パルスを作用させることで、用紙と用紙との間の静止摩擦を低減し、ベルトコンベヤによる一番下の用紙の取り出しを容易にする構成も開示されている。
【0034】
しかし、かかる特許文献3に開示されたインパルス発生器は、ベルトコンベヤによる用紙の引き出し方向に合わせて、紙面に平行な方向の衝撃パルスを用紙に作用させる構成となっているので、かかる衝撃パルスではホッパー内の用紙が浮き上がることはない。したがって、仮に特許文献3に開示されたインパルス発生器で用紙を振動させながら、当該用紙に圧縮空気を吹き付けても、効果的に圧縮空気が用紙の間に入り込めず、空気層が形成されない。
ゆえに、既述した特許文献1及び2と特許文献3を組み合わせても、本発明の作用効果を得ることはできない。また、効果的に用紙間に空気層を形成するためには、用紙群1において圧縮空気を吹き付ける端面(本実施形態では前端面)に振動を加えることが有効であるが、かかる構成は特許文献1乃至3のいずれにも示唆されていない。
【0035】
図2に示す制御回路40は、上述した吸着パッド20の移動と吸引、振動器50の駆動、空気供給源62からの圧縮空気の供給、従動ローラ31の移動および駆動ローラ30の回転をそれぞれ制御する。
【0036】
次に、制御回路40によるこられ各構成要素の制御動作について、図4および図5を主に参照して説明する。
まず、図4(a)に示すように吸着パッド20が待機位置にある状態で、振動器50を駆動して用紙群1の前部底面に紙面垂直方向の振動を与えるとともに、空気供給源62から噴射ノズル61に圧縮空気を供給して、用紙群1の前端部に吹き付ける。これにより、用紙群1の特に前部において各用紙が小刻みに浮き上がって各用紙間がばらけ、当該各用紙間に圧縮空気が入り込んで空気層を形成する。
【0037】
続いて、同図(b)に示すように吸着パッド20を移動させ、取出口10aを介して、ホッパー10に保持された用紙群1の一番下に位置する用紙2の底面を吸着する。そして、図5(a)に示すように吸着パッド20を後退させると、吸着した用紙2が撓みながら下方へ移動し、それに伴い当該用紙の前端部が前部底面支持部材13から引き抜かれる。さらに、吸着パッド20を移動させて、同図(b)に示すように、ホッパー10から取り出した用紙2の前端部近くを駆動ローラ30の周面に配置する。その後、従動ローラ31を移動させて、駆動ローラ30と協働して用紙2の前端部近くを把持するとともに、駆動ローラ30を回転駆動して用紙を次工程に送り出す。
【0038】
〔第2実施形態〕
図6は本発明の第2実施形態に係る給紙装置の平面図、図7は給紙装置の前部を拡大して示す側面図と制御系を示すブロック図とを重ね合わせて示す図である。
【0039】
これらの図に示すように、本実施形態に係る給紙装置は、ホッパー10と、複数の吸着パッド20と、一対の給紙ローラ30、31と、制御回路40とを含んでいる。
さらに、ホッパー10は、前部突き当てガイド11、12と、前部底面支持部材13、14と、後部底面支持板15と、後部位置決めガイド16とを構成要素として有している。このホッパー10は、積層された多数枚の用紙群1を前傾姿勢で保持するためのものである。積層された多数枚の用紙群1は、底面の後部領域を後部底面支持板15に配置されるとともに、前部底面の一部を前部底面支持部材13、14により下から支持され、かつ前端面を前部突き当てガイド11、12に当接した状態で、ホッパー10内に保持される。また、用紙群1の後端面は、後部位置決めガイド16によって位置決めされる。
ホッパー10の底部は、前端部と後部底面支持板15との間が開口して用紙の取出口10aを形成している。
【0040】
前部底面支持部材13、14と後部底面支持板15は、それぞれの上面を同一仮想平面上に配置してある。前部底面支持部材13、14と後部底面支持板15は、当該仮想平面が水平面に対し前方に向かって下方に傾いた傾斜面となるように設定してある。これにより前部底面支持部材13、14と後部底面支持板15に載置された用紙群1は、前傾姿勢となる。
【0041】
前部突き当てガイド11、12は、装置の支持枠110に防振ゴム51を介して装着されており、用紙群1の前端部を後述するガイド面に突き当てて保持する。本実施形態では、前部突き当てガイド11、12は、ホッパー10の前端中央部に設けた中央前部突き当てガイド11と、この中央前部突き当てガイド11を中心として左右の対称位置に設けた一対の前角部突き当てガイド12とで構成してある。
図8は中央前部突き当てガイド11とその周辺構造を拡大して示している。
【0042】
これら各突き当てガイド11、12には、用紙群1の前端面に当接させる並列ガイド面11a、12aが形成してある。各突き当てガイド11、12の並列ガイド面11a、12aは、同一平面上に配置してある。これらの並列ガイド面11a、12aは、図6に波線1Aで示すように、四角形状の用紙群1の一辺を前端に配置して当該前端を突き当て保持する機能を有している。また、本実施形態のホッパー10は、図6に波線1Bで示すように、四角形状の用紙群1の角部を前端に配置して保持することもできるようになっている。すなわち、本実施形態の給紙装置は、用紙の一辺から送り出す給紙方式(直方出し)と、用紙の角部から送り出す給紙方式(菱形出し)のいずれかを選択して実行できるようになっている。後者の給紙方式は、例えば製本工程において印刷物や書籍を梱包する際の当て紙の給紙に利用されている。
【0043】
そこで、中央前部突き当てガイド11には、直角ガイド面11bがさらに形成してある。直角ガイド面11bは、並列ガイド面11aを通る仮想平面に対し45°の角度で交叉して斜め後方に延びるとともに、互いに直角に交わる2つのガイド面によって形成されている。四角形状の用紙群1の角部は、この直角ガイド面11bに当接して保持される。
【0044】
後部位置決めガイド16は、中央前部突き当てガイド11の後方に設けてあり、後部底面支持板15の上面に対して直角に突き出す一対の支持柱15aによって、用紙群1の後端を位置決め保持する構成となっている。これらの支持柱15aによって、用紙群1が図6の波線1Aで示す配置であっても、また同図の波線1Bで示す配置であっても、用紙群1の後端に相当する一辺または角部に接触して位置決めする機能を有している。
後部位置決めガイド16は、前後方向に移動調整自在であり、締結レバー15bの回動操作をもって移動後の位置に固定される。
【0045】
前部底面支持部材13、14は平板で構成され、中央前部突き当てガイド11および前角部突き当てガイド12のそれぞれの下端からホッパー10の取出口10aに沿って延出している。前部底面支持部材13、14の上面は、用紙群1の前部底面を支える支持面を形成しており、この上面(支持面)は用紙群1の脱落防止に十分効果のある広い接触面積を確保している。
前部底面支持部材13、14には、例えば長孔とこれに係合する凸部で構成されたスライド調整機構(図示せず)を有しており、同調整機構をもって前部突き当てガイド11、12の下端からホッパー10の取出口10aに沿った延出長さをスライド調整できるようになっている。また、前部底面支持部材13、14は、スライド調整後の位置にねじ等の締結具によって固定される。このスライド調整機構によって、ホッパー内に積層配置する用紙の性状(厚み・目・素材)による撓み力の差を考慮して支持面積を調整することができる。例えば、腰の弱い用紙では広く、逆に腰の強い用紙のときは狭くすることが好ましい。
【0046】
複数の吸着パッド20は、ホッパー10の下方へ移動し用紙群1の一番下に位置する一枚の用紙を吸着するとともに、当該移動位置からさらに移動して当該用紙をホッパー10の取出口10aから取り出す機能を有している。こられの吸着パッド20は、図示しない駆動モータからの駆動力をもって移動する。また、吸着パッド20は、図示しない真空ポンプによる吸引作用をもって吸着面に負圧の状態が形成され、用紙の下面を吸着する。
図6に示すように複数の吸着パッド20は、横一列に並べて配置してあり、それらが一体に移動する。なお、用紙群1が図6の波線1Bで示すように配置される場合は、中央の吸着パッド20のみで最下面にある用紙の前端角部近傍を吸着する。
【0047】
一対の給紙ローラ30、31は、駆動ローラ30と従動ローラ31からなり、従動ローラ31は駆動ローラ30に対して接離する方向に移動自在となってる。この従動ローラ31は、図示しない駆動モータの駆動力をもって移動する。一対の給紙ローラ30、31は、吸着パッド20でホッパー10から取り出されてきた用紙の前部を把持し、駆動ローラ30の回転に伴い当該用紙を次工程に送り出す。
【0048】
さて、実施形態の給紙装置は、ホッパー10に保持された用紙群1を振動させる振動器50と、用紙群1の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射ユニット60(圧縮空気噴射手段)とを備えている。
【0049】
振動器50には公知の各種バイブレータが適用できるが、好ましくは直線的な振動を発生する構成のものを使用して、ホッパー10に保持された用紙群1に対し斜め前後方向の振動を伝える配置をもって前部突き当てガイド11に装着する。すなわち、図9(a)に矢印Pで示すような方向の振動を、前部突き当てガイド11を介してホッパー10に保持された用紙群1に伝える構成としてある。この方向の振動力は、用紙面と平行な分力P1と、用紙面と垂直な分力P2に分解できる。そして、用紙面と垂直な分力P2は、積層された各用紙に対して小刻みにそれらを押し上げるように作用して、各用紙間をばらけさせる。さらに、紙面に平行な方向の分力P1は、用紙群1の前端部を前部突き当てガイド11に繰り返し衝突させて用紙の一枚一枚をばらけさせる。
【0050】
圧縮空気噴射ユニット60は、前部突き当てガイド11のガイド面11a、11bにおける下部領域に開口する噴射ノズル61(図8参照)と、当該噴射ノズル61に圧縮空気を供給する空気供給源62(図7参照)と、これらを連通させる配管63とを含む構成である。空気供給源62は、例えば空気圧送ポンプで構成され、噴射ノズル61の中空部内に配管63を通して圧縮空気を送り込む。送り込まれた圧縮空気は、噴射ノズル61から用紙群1の前端面に向かって噴射される。
【0051】
用紙群1は、上述したように振動器50から受ける振動によって各用紙が小刻みに押し上げられて、各用紙間がばらけており、その状態で前端面に圧縮空気が噴射されると、当該圧縮空気が各用紙間に入り込み空気層を形成する。本実施形態では、噴射ノズル61を前部突き当てガイド11のガイド面11a、11bにおける下部領域に開口させてあるので、圧縮空気は用紙群1の下部に集中的に吹き付けられ、その結果、用紙群の下層にある用紙へ作用する用紙重量圧が軽減される。
したがって、吸着パッド20で取り出される一番下に位置する一枚の用紙に対し、その上に重なっていた隣接用紙が貼り付いたまま重なり合って送り出される障害を防止できる。しかも、一番下に位置する用紙2とその上に重なっていた隣接用紙との間に空気層が形成される結果、上述したように用紙群1の前部底面を前部底面支持部材13、14が広い接触面積で支持していても、吸着パッド20が一番下に位置する用紙2のみを当該前部底面支持部材13、14の支持領域から引き抜いて取り出し、その上に隣接する用紙はそのまま前部底面支持部材13、14に支持される状態を保つことが可能となる。よって、ホッパー10からの用紙群1の脱落も効果的に防止することができる。
【0052】
図7に示す制御回路40は、上述した吸着パッド20の移動と吸引、振動器50の駆動、空気供給源62からの圧縮空気の供給、従動ローラ31の移動および駆動ローラ30の回転をそれぞれ制御する。
次に、制御回路40によるこられ各構成要素の制御動作について、図9および図10を主に参照して説明する。
まず、図9(a)に示すように吸着パッド20が待機位置にある状態で、振動器50を駆動して用紙群1に振動を与えるとともに、空気供給源62から噴射ノズル61に圧縮空気を供給させる。これにより、上述したとおり用紙群1の各用紙が小刻みに浮き上がって各用紙間がばらけ、当該各用紙間に圧縮空気が入り込んで空気層を形成する。
【0053】
続いて、同図(b)に示すように吸着パッド20を移動させ、取出口10aを介して、ホッパー10に保持された用紙群1の一番下に位置する用紙2の底面を吸着する。そして、図10(a)に示すように吸着パッド20を後退させると、吸着した用紙2が撓みながら下方へ移動し、それに伴い当該用紙の前端部が前部底面支持部材13、14から引き抜かれる。さらに、吸着パッド20を移動させて、同図(b)に示すように、ホッパー10から取り出した用紙2の前端部近くを駆動ローラ30の周面に配置する。その後、従動ローラ31を移動させて、駆動ローラ30と協働して用紙2の前端部近くを把持するとともに、駆動ローラ30を回転駆動して用紙を次工程に送り出す。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に表現された技術思想に基づき種々の形態による実施が可能であることは勿論である。
例えば、上述した第2実施形態の変形例として、図11に示すように、ホッパー10内で用紙群1を水平配置するとともに、振動器50によって用紙群1の前端部に対しその紙面垂直方向への振動を伝える構成とすることもできる。
【0055】
また、上述した第1実施形態では、振動器50を中央前部底面支持部材13にのみ装着したが、必要に応じて前角部底面支持部材14にも振動器50を装着して振動を伝える構成としてもよい。同様に、第2実施形態では、振動器50を中央前部突き当てガイド11にのみ装着したが、必要に応じて前角部突き当てガイド12にも振動器50を装着して振動を伝える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:用紙群、2:一番下に位置する用紙、
10::ホッパー、11:中央前部突き当てガイド(前部突き当てガイド)、12:前角部突き当てガイド(前部突き当てガイド)、11a,12a:並列ガイド面、11b:直角ガイド面、13:中央前部底面支持部材(前部底面支持部材)、13a:支持板部、13b:基板部、13c:切欠き口、14:前角部底面支持部材(前部底面支持部材)、15:後部底面支持板、16:後部位置決めガイド、16a:支持柱、16b:締結バー、
20:吸着パッド
30:駆動ローラ(給紙ローラ)、31:従動ローラ(給紙ローラ)、
40:制御回路、
50:振動器、51:防振ゴム、
60:圧縮空気噴射ユニット、61:噴射ノズル、62:空気供給源、63:配管
101,102,103,110:支持枠、
【技術分野】
【0001】
この発明は、積み上げられた用紙を下から一枚ずつ取り出して供給する下取り方式の給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層された用紙を下側から一枚ずつ取り出す下取り方式の給紙装置は、給紙動作を止めることなく用紙を上から補給できるため、印刷や製本など多くの紙工装置で採用されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この種の給紙装置は、積層用紙の下層には上部に積み重ねられた用紙の重量がかかっているので、用紙の積層量が多いと最下層の用紙を取出す際に、その直上に重なり合う用紙が摩擦や静電気などで張り付いてしまい、複数枚の用紙が一緒に取り出される、いわゆる重送と称する動作不良や、ひいては積層用紙のホッパ内からの脱落といった障害を引き起こしてしまうおそれがあった。
【0003】
そこで、特許文献2に開示された給紙装置では、噴射口を積層されたシート束の先端縁に対向するように配置した空気噴射ノズルが設けてあり、吸引ヘッドがシートを吸着する前に空気を噴射して、積層されたシートの相互間に空気を吹き込み、シート相互間を分離しやすくしている。
【0004】
しかしながら、このように積層されたシート束の先端縁に圧縮空気を吹き付けても、取り出し対象となる一番下に位置するシートには多数枚の積層されたシートの重量が作用しているため、吹き付けた圧縮空気が跳ね返されてしまう。したがって、一番下に位置するシートとそれに重なり合うすぐ上側のシートとの間を、空気層によって分離できる状態には至らず、高い確立で2枚以上の用紙が重なって取り出されてしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願平3−079526号(実開平5−022428号)のCD−ROM(特に、段落0006から段落0017まで及び図1から図3までを参照。)。
【特許文献2】実願昭55−146508号(実開昭57−069350号)のマイクロフィルム(特に、明細書第8ページ5行目から14行目まで並びに第2図及び第3図を参照。)。
【特許文献3】特表2001−522340号公報(特に、第22ページ2行目から10行目まで及び図6を参照。)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、ホッパー内に積層された用紙群の一番下に位置する用紙を取り出す際に、2枚以上の用紙が重なって取り出されてしまう障害を適切に防止できる給紙装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、積層された多数枚の用紙群を保持するとともに、底部に用紙を取り出すための取出口が設けられたホッパーと、
用紙群の一番下に位置する一枚の用紙を吸着して、ホッパーの取出口から取り出す吸着パッドと、を備えた給紙装置において、
ホッパーの前部には、用紙群の前端部をガイド面に突き当てて保持する前部突き当てガイドと、用紙群の前部底面を引っ掛けて支持する前部底面支持部材と、が設けてあり、
吸着パッドは、用紙群の一番下に位置する一枚の用紙に対し、その前部底面付近を吸着して下方へ引き出すことで、当該用紙を前部底面支持部材から離脱させて取出口から取り出す構成であり、
更に、ホッパーに保持された用紙群の前端部に対して紙面垂直方向の振動を与える振動器と、
用紙群の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記構成の本発明によれば、用紙群を紙面垂直方向に振動させることで、積層された用紙の一枚一枚をばらけさせ、その状態でさらに圧縮空気を用紙群の前端面に吹き付けるので、効果的に圧縮空気が用紙の間に入り込んで空気の層が形成される。そのため、吸着パッドで取り出される一番下に位置する一枚の用紙に対し、その上に重なっていた隣接用紙が貼り付いたまま重なって送り出されるという障害の発生を抑制することができる。
【0009】
ここで、本発明は、前部突き当てガイドと前部底面支持部材を、それぞれ独立して設け、前部底面支持部材に対して振動器の振動を与え、一方、前部突き当てガイドには当該振動を伝えない構成とすることができる。
【0010】
かかる構成により、前部底面支持部材によって支持された用紙群の前部底面に対し、振動器からの紙面垂直方向の振動が伝えられることで、圧縮空気が吹き付けられる用紙群の前端面を効率的に浮き上がらせることができる。しかも、前部突き当てガイドには振動器からの振動を伝えない構成とすることで、ホッパー内での用紙群の位置ずれを防ぎ、用紙の一定位置を吸着パットが吸着して安定した用紙の取り出しを実現することができる。
【0011】
また、本発明は、振動器は、用紙群に対して斜め前後方向の振動を伝える配置をもって前部突き当てガイドに装着され、ホッパーに保持された用紙群の前端部に対し、紙面垂直方向の振動に加えて紙面内前後方向の振動を与える構成とすることもできる。
【0012】
用紙群に伝えられる斜め前後方向の振動は、用紙群の紙面垂直方向に作用する分力と、紙面に平行な方向の分力とに分解することができる。このうち、紙面垂直方向に作用する分力は、既述したように圧縮空気が吹き付けられる用紙群の前端面を効率的に浮き上がらせる作用効果がある。また、紙面に平行な方向の分力は、用紙群の前端部を前部突き当てガイドに繰り返し衝突させて用紙の一枚一枚をばらけさせる作用効果がある。これらの各分力による作用効果が複合されて、いっそう効率的に用紙間の重なり合った状態が解きほぐされる。そして、圧縮空気の吹き付けと相俟って、用紙の重なり合った取り出しが適切に防止される。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、ホッパー内に積層された用紙群の一番下に位置する用紙を取り出す際に、2枚以上の用紙が重なって取り出されてしまう障害を適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る給紙装置の平面図である。
【図2】給紙装置の前部を拡大して示す側面図と制御系を示すブロック図とを重ね合わせて示す図である。
【図3】中央前部突き当てガイドとその周辺構造を拡大して示す斜視図である。
【図4】制御回路による各構成要素の制御動作を説明するための図である。
【図5】図4に続く、制御回路による各構成要素の制御動作を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る給紙装置の平面図である。
【図7】第2実施形態に係る給紙装置の前部を拡大して示す側面図と制御系を示すブロック図とを重ね合わせて示す図である。
【図8】第2実施形態に係る中央前部突き当てガイドとその周辺構造を拡大して示す斜視図である。
【図9】第2実施形態に係る制御回路による各構成要素の制御動作を説明するための図である。
【図10】図9に続く、制御回路による各構成要素の制御動作を説明するための図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る給紙装置の変形例を、図7に対応して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図5は本発明の第1実施形態を示す図で、図1は本発明の第1実施形態に係る給紙装置の平面図、図2はその給紙装置の前部を拡大して示す側面図と制御系を示すブロック図とを重ね合わせて示す図である。
【0016】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る給紙装置は、ホッパー10と、複数の吸着パッド20と、一対の給紙ローラ30、31と、制御回路40とを含んでいる。
さらに、ホッパー10は、前部突き当てガイド11、12と、前部底面支持部材13、14と、後部底面支持板15と、後部位置決めガイド16とを構成要素として有している。このホッパー10は、積層された多数枚の用紙群1を保持するためのものである。積層された多数枚の用紙群1は、底面の後部領域を後部底面支持板15に配置されるとともに、前部底面の一部を前部底面支持部材13により下から支持され、かつ前端面を前部突き当てガイド11、12に当接した状態で、ホッパー10内に保持される。また、用紙群1の後端面は、後部位置決めガイド16によって位置決めされる。
ホッパー10の底部は、前端部と後部底面支持板15との間が開口して用紙の取出口10aを形成している。
【0017】
前部突き当てガイド11、12は、用紙群1の前端部を後述するガイド面に突き当てて保持する。本実施形態では、前部突き当てガイド11、12は、ホッパー10の前端中央部に設けた中央前部突き当てガイド11と、この中央前部突き当てガイド11を中心として左右の対称位置に設けた一対の前角部突き当てガイド12とで構成してある。
図3は中央前部突き当てガイド11とその周辺構造を拡大して示している。
【0018】
各突き当てガイド11、12には、用紙群1の前端面に当接させる並列ガイド面11a、12aが形成してある。各突き当てガイド11、12の並列ガイド面11a、12aは、同一平面上に配置してある。これらの並列ガイド面11a、12aは、図1に波線1Aで示すように、四角形状の用紙群1の一辺を前端に配置して当該前端を突き当て保持する機能を有している。
また、本実施形態のホッパー10は、図1に波線1Bで示すように、四角形状の用紙群1の角部を前端に配置して保持することもできるようになっている。すなわち、本実施形態の給紙装置は、用紙の一辺から送り出す給紙方式(直方出し)と、用紙の角部から送り出す給紙方式(菱形出し)のいずれかを選択して実行できるようになっている。後者の給紙方式は、例えば製本工程において印刷物や書籍を梱包する際の当て紙の給紙に利用されている。
【0019】
そこで、中央前部突き当てガイド11には、直角ガイド面11bがさらに形成してある。直角ガイド面11bは、並列ガイド面11aを通る仮想平面に対し45°の角度で交叉して斜め後方に延びるとともに、互いに直角に交わる2つのガイド面によって形成されている。四角形状の用紙群1の角部は、この直角ガイド面11bに当接して保持される。
【0020】
後部位置決めガイド16は、中央前部突き当てガイド11の後方に設けてあり、後部底面支持板15の上面に対して直角に突き出す一対の支持柱16aによって、用紙群1の後端を位置決め保持する構成となっている。これらの支持柱16aによって、用紙群1が図1の波線1Aで示す配置であっても、また同図の波線1Bで示す配置であっても、用紙群1の後端に相当する一辺または角部に接触して位置決めする機能を有している。
後部位置決めガイド16は、前後方向に移動調整自在であり、締結レバー16bの回動操作をもって移動後の位置に固定される。
【0021】
前部底面支持部材13、14は、中央前部突き当てガイド11と組み合わされた中央前部底面支持部材13と、前角部突き当てガイド12と組み合わされた前角部底面支持部材14とで構成してある。このうち、前角部底面支持部材14は、前角部突き当てガイド12に固定した平板で形成され、前角部突き当てガイド12の下端からホッパー10の取出口10aに沿って水平に延出している。そして、当該平板の上面が用紙群1の前部底面を引っ掛けて支持する支持面14aとなっている。これら前角部突き当てガイド12と前角部底面支持部材14は、装置本体の支持枠101に固定されている。
【0022】
図3に示すように、中央前部底面支持部材13は、平板をL字状に湾曲形成した形状となっており、湾曲部よりも一方側の平板部分を支持板部13aとしてホッパー10の取出口10aに沿って水平に配置してあり、他方側を基板部13bとして鉛直に配置してある。支持板部13aの上面は、用紙群1の前部底面を引っ掛けて支持する支持面となっている。
また、中央前部底面支持部材13の内部側には、中央前部突き当てガイド11を非接触で配置するための切欠き口13cが形成してある。
【0023】
中央前部突き当てガイド11は、並列ガイド面11a及び直角ガイド面11bが、中央前部底面支持部材13における支持板部13aの上面(支持面)と直交して近接配置されるように、前部底面支持部材13の切欠き口13cへ本体部分を入り込ませて配置してある。ただし、この配置状態において中央前部突き当てガイド11と前部底面支持部材13との間には一定の隙間が設けられ、互いに非接触となっている。
【0024】
複数の吸着パッド20は、ホッパー10の下方へ移動し用紙群1の一番下に位置する一枚の用紙を吸着するとともに、当該移動位置からさらに移動して当該用紙をホッパー10の取出口10aから取り出す機能を有している。こられの吸着パッド20は、図示しない駆動モータからの駆動力をもって移動する。また、吸着パッド20は、図示しない真空ポンプによる吸引作用をもって吸着面に負圧の状態が形成され、用紙の下面を吸着する。
図1に示すように複数の吸着パッド20は、横一列に並べて配置してあり、それらが一体に移動する。なお、用紙群1が図1の波線1Bで示すように配置される場合は、中央の吸着パッド20のみで最下面にある用紙の前端角部近傍を吸着する。
【0025】
一対の給紙ローラ30、31は、駆動ローラ30と従動ローラ31からなり、従動ローラ31は駆動ローラ30に対して接離する方向に移動自在となってる。この従動ローラ31は、図示しない駆動モータの駆動力をもって移動する。一対の給紙ローラ30、31は、吸着パッド20でホッパー10から取り出されてきた用紙の前部を把持し、駆動ローラ30の回転に伴い当該用紙を次工程に送り出す。
【0026】
さて、本実施形態の給紙装置は、ホッパー10に保持された用紙群1を振動させる振動器50と、用紙群1の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射ユニット60(圧縮空気噴射手段)とを備えている。
【0027】
振動器50には公知の各種バイブレータが適用できるが、好ましくは直線的な振動を発生する構成のものを使用して、ホッパー10に保持された用紙群1に対し紙面垂直方向の振動を伝える配置をもって、中央前部底面支持部材13における基板部13bの背面に装着してある。
【0028】
図3に示すように、振動器50は、防振ゴム51を介して装置本体の支持枠102に固定してある。すなわち、中央前部底面支持部材13は、防振ゴム51及び振動器50を介して支持枠102に固定されている。
一方、中央前部突き当てガイド11は、装置本体の別の支持枠103に固定してある。すなわち、中央前部突き当てガイド11と中央前部底面支持部材13は、それぞれ独立して設けてあり、振動器50は中央前部底面支持部材13に対して振動を伝え、中央前部突き当てガイド11には当該振動を伝えない構成となっている。
この構成により、中央前部底面支持部材13によって支持された用紙群1の前部底面に対し、振動器50からの紙面垂直方向の振動が伝えられることで、用紙群1の前端面を効率的に浮き上がらせることができる。しかも、中央前部突き当てガイド11には振動器50からの振動を伝えない構成とすることで、ホッパー10内での用紙群1の位置ずれを防ぐことができる。
【0029】
圧縮空気噴射ユニット60は、前部突き当てガイド11、12のガイド面11a、12a、11bにおける下部領域に開口する噴射ノズル61(図3参照)と、当該噴射ノズル61に圧縮空気を供給する空気供給源62(図2参照)と、これらを連通させる配管63とを含む構成である。空気供給源62は、例えば空気圧送ポンプで構成され、噴射ノズル61の中空部内に配管63を通して圧縮空気を送り込む。送り込まれた圧縮空気は、噴射ノズル61から用紙群1の前端面に向かって噴射される。
【0030】
用紙群1は、上述したように振動器50から受ける紙面垂直方向の振動によって各用紙が小刻みに押し上げられて、各用紙間がばらけており、その状態で前端面に圧縮空気が噴射されると、当該圧縮空気が各用紙間に入り込み空気層を形成する。
本実施形態では、噴射ノズル61を前部突き当てガイド11、12のガイド面11a、12a、11bにおける下部領域に開口させてあるので、圧縮空気は用紙群1の下部に集中的に吹き付けられ、その結果、用紙群1の下層にある用紙へ作用する用紙重量圧が軽減される。したがって、吸着パッド20で取り出される一番下に位置する一枚の用紙に対し、その上に重なっていた隣接用紙が貼り付いたまま重なって送り出される障害を防止できる。
【0031】
しかも、一番下に位置する用紙2とその上に重なっていた隣接用紙との間に空気層が形成される結果、用紙群1の前部底面を前部底面支持部材13が広い接触面積で支持していても、吸着パッド20が一番下に位置する用紙2のみを当該前部底面支持部材13の支持領域から引き抜いて取り出し、その上に隣接する用紙はそのまま前部底面支持部材13に支持される状態を保つことが可能となる。よって、ホッパー10からの用紙群1の脱落も効果的に防止することができる。
【0032】
なお、質量の多い用紙や硬い用紙など、小刻みな振動によって充分に浮き上がって用紙間が離間するような性状の用紙に対しては、圧縮空気噴射ユニット60の作動を停止して圧縮空気の噴射を省略することも可能である。
【0033】
ところで、先に提示した特許文献3には、積層された紙葉類等の用紙(同文献では「扁平物」と称している)を、その底部に配置したベルトコンベヤによってシート面と平行に引き出す構成の給紙装置が開示されている。この特許文献3には、インパルス発生器を設け、紙葉類堆積物に対して堆積方向を横切る方向(すなわち、ベルトコンベヤによる引き出し方向と平行)に衝撃パルスを作用させることで、用紙と用紙との間の静止摩擦を低減し、ベルトコンベヤによる一番下の用紙の取り出しを容易にする構成も開示されている。
【0034】
しかし、かかる特許文献3に開示されたインパルス発生器は、ベルトコンベヤによる用紙の引き出し方向に合わせて、紙面に平行な方向の衝撃パルスを用紙に作用させる構成となっているので、かかる衝撃パルスではホッパー内の用紙が浮き上がることはない。したがって、仮に特許文献3に開示されたインパルス発生器で用紙を振動させながら、当該用紙に圧縮空気を吹き付けても、効果的に圧縮空気が用紙の間に入り込めず、空気層が形成されない。
ゆえに、既述した特許文献1及び2と特許文献3を組み合わせても、本発明の作用効果を得ることはできない。また、効果的に用紙間に空気層を形成するためには、用紙群1において圧縮空気を吹き付ける端面(本実施形態では前端面)に振動を加えることが有効であるが、かかる構成は特許文献1乃至3のいずれにも示唆されていない。
【0035】
図2に示す制御回路40は、上述した吸着パッド20の移動と吸引、振動器50の駆動、空気供給源62からの圧縮空気の供給、従動ローラ31の移動および駆動ローラ30の回転をそれぞれ制御する。
【0036】
次に、制御回路40によるこられ各構成要素の制御動作について、図4および図5を主に参照して説明する。
まず、図4(a)に示すように吸着パッド20が待機位置にある状態で、振動器50を駆動して用紙群1の前部底面に紙面垂直方向の振動を与えるとともに、空気供給源62から噴射ノズル61に圧縮空気を供給して、用紙群1の前端部に吹き付ける。これにより、用紙群1の特に前部において各用紙が小刻みに浮き上がって各用紙間がばらけ、当該各用紙間に圧縮空気が入り込んで空気層を形成する。
【0037】
続いて、同図(b)に示すように吸着パッド20を移動させ、取出口10aを介して、ホッパー10に保持された用紙群1の一番下に位置する用紙2の底面を吸着する。そして、図5(a)に示すように吸着パッド20を後退させると、吸着した用紙2が撓みながら下方へ移動し、それに伴い当該用紙の前端部が前部底面支持部材13から引き抜かれる。さらに、吸着パッド20を移動させて、同図(b)に示すように、ホッパー10から取り出した用紙2の前端部近くを駆動ローラ30の周面に配置する。その後、従動ローラ31を移動させて、駆動ローラ30と協働して用紙2の前端部近くを把持するとともに、駆動ローラ30を回転駆動して用紙を次工程に送り出す。
【0038】
〔第2実施形態〕
図6は本発明の第2実施形態に係る給紙装置の平面図、図7は給紙装置の前部を拡大して示す側面図と制御系を示すブロック図とを重ね合わせて示す図である。
【0039】
これらの図に示すように、本実施形態に係る給紙装置は、ホッパー10と、複数の吸着パッド20と、一対の給紙ローラ30、31と、制御回路40とを含んでいる。
さらに、ホッパー10は、前部突き当てガイド11、12と、前部底面支持部材13、14と、後部底面支持板15と、後部位置決めガイド16とを構成要素として有している。このホッパー10は、積層された多数枚の用紙群1を前傾姿勢で保持するためのものである。積層された多数枚の用紙群1は、底面の後部領域を後部底面支持板15に配置されるとともに、前部底面の一部を前部底面支持部材13、14により下から支持され、かつ前端面を前部突き当てガイド11、12に当接した状態で、ホッパー10内に保持される。また、用紙群1の後端面は、後部位置決めガイド16によって位置決めされる。
ホッパー10の底部は、前端部と後部底面支持板15との間が開口して用紙の取出口10aを形成している。
【0040】
前部底面支持部材13、14と後部底面支持板15は、それぞれの上面を同一仮想平面上に配置してある。前部底面支持部材13、14と後部底面支持板15は、当該仮想平面が水平面に対し前方に向かって下方に傾いた傾斜面となるように設定してある。これにより前部底面支持部材13、14と後部底面支持板15に載置された用紙群1は、前傾姿勢となる。
【0041】
前部突き当てガイド11、12は、装置の支持枠110に防振ゴム51を介して装着されており、用紙群1の前端部を後述するガイド面に突き当てて保持する。本実施形態では、前部突き当てガイド11、12は、ホッパー10の前端中央部に設けた中央前部突き当てガイド11と、この中央前部突き当てガイド11を中心として左右の対称位置に設けた一対の前角部突き当てガイド12とで構成してある。
図8は中央前部突き当てガイド11とその周辺構造を拡大して示している。
【0042】
これら各突き当てガイド11、12には、用紙群1の前端面に当接させる並列ガイド面11a、12aが形成してある。各突き当てガイド11、12の並列ガイド面11a、12aは、同一平面上に配置してある。これらの並列ガイド面11a、12aは、図6に波線1Aで示すように、四角形状の用紙群1の一辺を前端に配置して当該前端を突き当て保持する機能を有している。また、本実施形態のホッパー10は、図6に波線1Bで示すように、四角形状の用紙群1の角部を前端に配置して保持することもできるようになっている。すなわち、本実施形態の給紙装置は、用紙の一辺から送り出す給紙方式(直方出し)と、用紙の角部から送り出す給紙方式(菱形出し)のいずれかを選択して実行できるようになっている。後者の給紙方式は、例えば製本工程において印刷物や書籍を梱包する際の当て紙の給紙に利用されている。
【0043】
そこで、中央前部突き当てガイド11には、直角ガイド面11bがさらに形成してある。直角ガイド面11bは、並列ガイド面11aを通る仮想平面に対し45°の角度で交叉して斜め後方に延びるとともに、互いに直角に交わる2つのガイド面によって形成されている。四角形状の用紙群1の角部は、この直角ガイド面11bに当接して保持される。
【0044】
後部位置決めガイド16は、中央前部突き当てガイド11の後方に設けてあり、後部底面支持板15の上面に対して直角に突き出す一対の支持柱15aによって、用紙群1の後端を位置決め保持する構成となっている。これらの支持柱15aによって、用紙群1が図6の波線1Aで示す配置であっても、また同図の波線1Bで示す配置であっても、用紙群1の後端に相当する一辺または角部に接触して位置決めする機能を有している。
後部位置決めガイド16は、前後方向に移動調整自在であり、締結レバー15bの回動操作をもって移動後の位置に固定される。
【0045】
前部底面支持部材13、14は平板で構成され、中央前部突き当てガイド11および前角部突き当てガイド12のそれぞれの下端からホッパー10の取出口10aに沿って延出している。前部底面支持部材13、14の上面は、用紙群1の前部底面を支える支持面を形成しており、この上面(支持面)は用紙群1の脱落防止に十分効果のある広い接触面積を確保している。
前部底面支持部材13、14には、例えば長孔とこれに係合する凸部で構成されたスライド調整機構(図示せず)を有しており、同調整機構をもって前部突き当てガイド11、12の下端からホッパー10の取出口10aに沿った延出長さをスライド調整できるようになっている。また、前部底面支持部材13、14は、スライド調整後の位置にねじ等の締結具によって固定される。このスライド調整機構によって、ホッパー内に積層配置する用紙の性状(厚み・目・素材)による撓み力の差を考慮して支持面積を調整することができる。例えば、腰の弱い用紙では広く、逆に腰の強い用紙のときは狭くすることが好ましい。
【0046】
複数の吸着パッド20は、ホッパー10の下方へ移動し用紙群1の一番下に位置する一枚の用紙を吸着するとともに、当該移動位置からさらに移動して当該用紙をホッパー10の取出口10aから取り出す機能を有している。こられの吸着パッド20は、図示しない駆動モータからの駆動力をもって移動する。また、吸着パッド20は、図示しない真空ポンプによる吸引作用をもって吸着面に負圧の状態が形成され、用紙の下面を吸着する。
図6に示すように複数の吸着パッド20は、横一列に並べて配置してあり、それらが一体に移動する。なお、用紙群1が図6の波線1Bで示すように配置される場合は、中央の吸着パッド20のみで最下面にある用紙の前端角部近傍を吸着する。
【0047】
一対の給紙ローラ30、31は、駆動ローラ30と従動ローラ31からなり、従動ローラ31は駆動ローラ30に対して接離する方向に移動自在となってる。この従動ローラ31は、図示しない駆動モータの駆動力をもって移動する。一対の給紙ローラ30、31は、吸着パッド20でホッパー10から取り出されてきた用紙の前部を把持し、駆動ローラ30の回転に伴い当該用紙を次工程に送り出す。
【0048】
さて、実施形態の給紙装置は、ホッパー10に保持された用紙群1を振動させる振動器50と、用紙群1の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射ユニット60(圧縮空気噴射手段)とを備えている。
【0049】
振動器50には公知の各種バイブレータが適用できるが、好ましくは直線的な振動を発生する構成のものを使用して、ホッパー10に保持された用紙群1に対し斜め前後方向の振動を伝える配置をもって前部突き当てガイド11に装着する。すなわち、図9(a)に矢印Pで示すような方向の振動を、前部突き当てガイド11を介してホッパー10に保持された用紙群1に伝える構成としてある。この方向の振動力は、用紙面と平行な分力P1と、用紙面と垂直な分力P2に分解できる。そして、用紙面と垂直な分力P2は、積層された各用紙に対して小刻みにそれらを押し上げるように作用して、各用紙間をばらけさせる。さらに、紙面に平行な方向の分力P1は、用紙群1の前端部を前部突き当てガイド11に繰り返し衝突させて用紙の一枚一枚をばらけさせる。
【0050】
圧縮空気噴射ユニット60は、前部突き当てガイド11のガイド面11a、11bにおける下部領域に開口する噴射ノズル61(図8参照)と、当該噴射ノズル61に圧縮空気を供給する空気供給源62(図7参照)と、これらを連通させる配管63とを含む構成である。空気供給源62は、例えば空気圧送ポンプで構成され、噴射ノズル61の中空部内に配管63を通して圧縮空気を送り込む。送り込まれた圧縮空気は、噴射ノズル61から用紙群1の前端面に向かって噴射される。
【0051】
用紙群1は、上述したように振動器50から受ける振動によって各用紙が小刻みに押し上げられて、各用紙間がばらけており、その状態で前端面に圧縮空気が噴射されると、当該圧縮空気が各用紙間に入り込み空気層を形成する。本実施形態では、噴射ノズル61を前部突き当てガイド11のガイド面11a、11bにおける下部領域に開口させてあるので、圧縮空気は用紙群1の下部に集中的に吹き付けられ、その結果、用紙群の下層にある用紙へ作用する用紙重量圧が軽減される。
したがって、吸着パッド20で取り出される一番下に位置する一枚の用紙に対し、その上に重なっていた隣接用紙が貼り付いたまま重なり合って送り出される障害を防止できる。しかも、一番下に位置する用紙2とその上に重なっていた隣接用紙との間に空気層が形成される結果、上述したように用紙群1の前部底面を前部底面支持部材13、14が広い接触面積で支持していても、吸着パッド20が一番下に位置する用紙2のみを当該前部底面支持部材13、14の支持領域から引き抜いて取り出し、その上に隣接する用紙はそのまま前部底面支持部材13、14に支持される状態を保つことが可能となる。よって、ホッパー10からの用紙群1の脱落も効果的に防止することができる。
【0052】
図7に示す制御回路40は、上述した吸着パッド20の移動と吸引、振動器50の駆動、空気供給源62からの圧縮空気の供給、従動ローラ31の移動および駆動ローラ30の回転をそれぞれ制御する。
次に、制御回路40によるこられ各構成要素の制御動作について、図9および図10を主に参照して説明する。
まず、図9(a)に示すように吸着パッド20が待機位置にある状態で、振動器50を駆動して用紙群1に振動を与えるとともに、空気供給源62から噴射ノズル61に圧縮空気を供給させる。これにより、上述したとおり用紙群1の各用紙が小刻みに浮き上がって各用紙間がばらけ、当該各用紙間に圧縮空気が入り込んで空気層を形成する。
【0053】
続いて、同図(b)に示すように吸着パッド20を移動させ、取出口10aを介して、ホッパー10に保持された用紙群1の一番下に位置する用紙2の底面を吸着する。そして、図10(a)に示すように吸着パッド20を後退させると、吸着した用紙2が撓みながら下方へ移動し、それに伴い当該用紙の前端部が前部底面支持部材13、14から引き抜かれる。さらに、吸着パッド20を移動させて、同図(b)に示すように、ホッパー10から取り出した用紙2の前端部近くを駆動ローラ30の周面に配置する。その後、従動ローラ31を移動させて、駆動ローラ30と協働して用紙2の前端部近くを把持するとともに、駆動ローラ30を回転駆動して用紙を次工程に送り出す。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に表現された技術思想に基づき種々の形態による実施が可能であることは勿論である。
例えば、上述した第2実施形態の変形例として、図11に示すように、ホッパー10内で用紙群1を水平配置するとともに、振動器50によって用紙群1の前端部に対しその紙面垂直方向への振動を伝える構成とすることもできる。
【0055】
また、上述した第1実施形態では、振動器50を中央前部底面支持部材13にのみ装着したが、必要に応じて前角部底面支持部材14にも振動器50を装着して振動を伝える構成としてもよい。同様に、第2実施形態では、振動器50を中央前部突き当てガイド11にのみ装着したが、必要に応じて前角部突き当てガイド12にも振動器50を装着して振動を伝える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:用紙群、2:一番下に位置する用紙、
10::ホッパー、11:中央前部突き当てガイド(前部突き当てガイド)、12:前角部突き当てガイド(前部突き当てガイド)、11a,12a:並列ガイド面、11b:直角ガイド面、13:中央前部底面支持部材(前部底面支持部材)、13a:支持板部、13b:基板部、13c:切欠き口、14:前角部底面支持部材(前部底面支持部材)、15:後部底面支持板、16:後部位置決めガイド、16a:支持柱、16b:締結バー、
20:吸着パッド
30:駆動ローラ(給紙ローラ)、31:従動ローラ(給紙ローラ)、
40:制御回路、
50:振動器、51:防振ゴム、
60:圧縮空気噴射ユニット、61:噴射ノズル、62:空気供給源、63:配管
101,102,103,110:支持枠、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された多数枚の用紙群を保持するとともに、底部に用紙を取り出すための取出口が設けられたホッパーと、
前記用紙群の一番下に位置する一枚の用紙を吸着して、前記ホッパーの取出口から取り出す吸着パッドと、を備えた給紙装置において、
前記ホッパーの前部には、前記用紙群の前端部をガイド面に突き当てて保持する前部突き当てガイドと、前記用紙群の前部底面を引っ掛けて支持する前部底面支持部材と、が設けてあり、
前記吸着パッドは、前記用紙群の一番下に位置する一枚の用紙に対し、その前部底面付近を吸着して下方へ引き出すことで、当該用紙を前記前部底面支持部材から離脱させて前記取出口から取り出す構成であり、
更に、前記ホッパーに保持された用紙群の前端部に対して紙面垂直方向の振動を与える振動器と、
前記用紙群の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射手段と、を備えたことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記前部突き当てガイドと前部底面支持部材は、それぞれ独立して設けてあり、
前記振動器は、前記前部底面支持部材に対して振動を与え、前記前部突き当てガイドには当該振動を伝えない構成となっていることを特徴とする請求項1の給紙装置。
【請求項3】
前記振動器は、前記用紙群に対して斜め前後方向の振動を伝える配置をもって前記前部突き当てガイドに装着され、前記ホッパーに保持された用紙群の前端部に対し、紙面垂直方向の振動に加えて紙面内前後方向の振動を与える構成としてあることを特徴とする請求項1の給紙装置。
【請求項4】
前記前部突き当てガイドは、前記ホッパーの前端中央部と、当該前端中央部を中心として左右の対称位置に設けてあり、
これら各位置に設けられた前部突き当てガイドの各ガイド面が同一平面上に配置され、
さらに、前記前端中央部に設けられた前部突き当てガイドには、前記各ガイド面を通る平面に対し45°の角度で交叉して斜め後方に延びるとともに、互いに直角に交わる2つのガイド面が形成してあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の給紙装置。
【請求項1】
積層された多数枚の用紙群を保持するとともに、底部に用紙を取り出すための取出口が設けられたホッパーと、
前記用紙群の一番下に位置する一枚の用紙を吸着して、前記ホッパーの取出口から取り出す吸着パッドと、を備えた給紙装置において、
前記ホッパーの前部には、前記用紙群の前端部をガイド面に突き当てて保持する前部突き当てガイドと、前記用紙群の前部底面を引っ掛けて支持する前部底面支持部材と、が設けてあり、
前記吸着パッドは、前記用紙群の一番下に位置する一枚の用紙に対し、その前部底面付近を吸着して下方へ引き出すことで、当該用紙を前記前部底面支持部材から離脱させて前記取出口から取り出す構成であり、
更に、前記ホッパーに保持された用紙群の前端部に対して紙面垂直方向の振動を与える振動器と、
前記用紙群の前端面に向かって圧縮空気を噴射させる圧縮空気噴射手段と、を備えたことを特徴とする給紙装置。
【請求項2】
前記前部突き当てガイドと前部底面支持部材は、それぞれ独立して設けてあり、
前記振動器は、前記前部底面支持部材に対して振動を与え、前記前部突き当てガイドには当該振動を伝えない構成となっていることを特徴とする請求項1の給紙装置。
【請求項3】
前記振動器は、前記用紙群に対して斜め前後方向の振動を伝える配置をもって前記前部突き当てガイドに装着され、前記ホッパーに保持された用紙群の前端部に対し、紙面垂直方向の振動に加えて紙面内前後方向の振動を与える構成としてあることを特徴とする請求項1の給紙装置。
【請求項4】
前記前部突き当てガイドは、前記ホッパーの前端中央部と、当該前端中央部を中心として左右の対称位置に設けてあり、
これら各位置に設けられた前部突き当てガイドの各ガイド面が同一平面上に配置され、
さらに、前記前端中央部に設けられた前部突き当てガイドには、前記各ガイド面を通る平面に対し45°の角度で交叉して斜め後方に延びるとともに、互いに直角に交わる2つのガイド面が形成してあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の給紙装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−6696(P2013−6696A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193744(P2011−193744)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【特許番号】特許第4955119号(P4955119)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(596001014)富士油圧精機株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【特許番号】特許第4955119号(P4955119)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(596001014)富士油圧精機株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]