説明

給紙補助具、それを用いた印刷装置、および印刷方法

【課題】記録用紙の紙送り不良や紙詰まりを防止し、安定した印刷品質が確保する。
【解決手段】印刷情報が印刷される記録用紙Pを、印刷装置100に供給する給紙補助具10であって、前記記録用紙Pを載置する平面状のベースプレート12と、前記ベースプレート12と一部が接合され、接合部16を支点として開閉自在に構成される紙押さえ部14とを備え、前記紙押さえ部14には、前記記録用紙Pの印刷領域Eを露出させる開口部18と、前記開口部18の位置情報および前記記録用紙Pの印刷領域情報を含む情報が記載された情報マーキング25が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に記録用紙を供給する給紙補助具、それを用いた印刷装置、および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産活動や商取引活動において、記録用紙の一つの形態としての伝票用紙が用いられている。伝票用紙とは、会社や商店などで、物の移動(物流)や金銭の出入などの取引内容を記入する一定の様式を備えた紙片である。取引に関する責任を明らかにし、後日の証拠ともなり得る。また、伝票用紙は、物の移動に伴って物と一緒に移動する場合が多い。物が複数の拠点を移動する場合は、複数の複写用紙からなる伝票用紙を用いて、各拠点ごとに、納入、処理内容、発送などの情報を伝票用紙の所定欄に追記して、一枚を切り離し記録(証拠)として保管する。
【0003】
このような伝票用紙の一例として、ロイコ染料等の顕色反応を利用したノーカーボン用紙や、用紙の裏面にカーボンインクを塗布したカーボン用紙を複数枚重ね合わせたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。ノーカーボン用紙は、用紙の裏面に粒子状の混合反応液を詰め込んだカプセル物質が一面に塗布され、複写面である表面には発色剤が塗布されている。積層されたノーカーボン用紙は、圧力が加えられると、裏面のカプセル物質が圧力で押しつぶされ、表面の発色剤と化学反応して圧力部分を発色させることができる。
【0004】
上述の伝票用紙に情報を記録するためには、例えば、インパクトプリンターと呼ばれる印刷装置が用いられる。インパクトプリンターは、ドットインパクトヘッドと呼ばれる印刷機構を有している。ドットインパクトヘッドは、画素(ドット)に対応する細い金属ピンを電磁石で吸引もしくは開放して押し出すことができる。インパクトプリンターは、紙送り機構により紙送りされる伝票用紙に対して、ドットインパクトヘッドの金属ピンを、インクを含浸させたインクリボンを介して、叩き付けて伝票用紙に所定の情報を重ね印刷する(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
従来、伝票用紙は、発行元でインパクトプリンターを用いて詳細な情報を印刷して、移送された各拠点で必要な情報を伝票用紙の所定欄に手書き等で追記し、一枚を記録として保管することが一般的であった。近年、生産活動や商取引活動が複雑化、多様化しており、各拠点で追記される情報量が増加している。そのため、各拠点でインパクトプリンターを備え各拠点ごとに伝票用紙に必要情報を追記印刷したいという要望が多く出てきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−322334号公報
【特許文献2】特開平7−300265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、複数枚の複写用紙からなる伝票用紙は、物の移動に伴って物と一緒に移送される場合が多い。そのため、伝票用紙は、移送過程でしわ、折れ、破れ等の損傷が発生する場合がある。また、損傷を防ぐため封筒に入れて移送する場合は、折って封筒に入れる。そのため、伝票用紙に畳み折れが発生してしまう場合がある。しわ、折れ、破れ等が発生した伝票用紙をインパクトプリンターで印刷しようとすると、紙送り経路の隙間やドットインパクトヘッドに伝票用紙が引っかかり、紙送り不良や紙詰まりの原因となる。また、伝票用紙とドットインパクトヘッドとのギャップが確保できず、安定した印刷品質が確保できないとの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
(適用例1)印刷情報が印刷される記録用紙を、印刷装置に供給する給紙補助具であって、前記記録用紙を載置する平面状のベースプレートと、前記ベースプレートと一部が接合され、接合部を支点として開閉自在に構成される紙押さえ部と、を備え、前記紙押さえ部には、前記記録用紙の印刷領域を露出させる開口部と、前記開口部の位置情報および前記記録用紙の印刷領域情報を含む情報が記載された情報マーキングと、が形成されていることを特徴とする給紙補助具。
【0010】
(適用例2)前記記録用紙は、複写機能を有する用紙が複数枚積層されるとともに、一枚ずつ分離可能な冊子状の複写用紙であることを特徴とする上記の給紙補助具。
【0011】
(適用例3)前記記録用紙は複数の前記印刷領域を有し、前記紙押さえ部の前記開口部からは、複数の前記印刷領域のうちの任意の前記印刷領域が露出していることを特徴とする上記の給紙補助具。
【0012】
これらの構成によれば、拠点間を移送され、しわ、折れ、破れ等の不具合が発生した記録用紙を、ベースプレートと紙押さえ部との間に挟みこみ不具合を矯正することができる。そして、紙押さえ部に設けられた開口部から記録用紙の印刷されるべき印刷領域を露出させることができる。そのため、しわ、折れ、破れ等が発生した記録用紙を印刷装置で印刷する場合、紙搬送経路の隙間やドットインパクトヘッドに記録用紙が引っかかることを防止できるとともに、ドットインパクトヘッドとのギャップを確保することができる。その結果、記録用紙の紙送り不良や紙詰まりを低減させることができ、安定した印刷品質を得ることができる。さらには、開口部の位置情報および記録用紙の印刷領域情報を情報マーキングで開示することができる。
【0013】
(適用例4)記録用紙に対して印刷情報を印刷する印刷装置であって、前記記録用紙の印刷領域が開口部から露出するように、前記記録用紙を収納する上記の給紙補助具を、紙搬送経路に沿って搬送する紙送り部と、前記紙搬送経路に沿って設置されるとともに、前記紙送り部によって搬送される前記給紙補助具の紙押さえ部に形成された情報マーキングを読み取る情報読み取り部と、前記紙搬送経路に沿って設置されるとともに、前記紙送り部によって搬送される前記給紙補助具の前記開口部から露出する前記記録用紙の前記印刷領域に印刷情報を印刷する印刷部と、を備え、前記情報読み取り部で読み取られた読み取り情報に基づいて、印刷すべき前記印刷領域を決定し前記印刷領域に印刷情報を印刷することを特徴とする印刷装置。
【0014】
(適用例5)前記記録用紙は、複写機能を有する用紙が複数枚積層されるとともに、一枚ずつ分離可能な冊子状の複写用紙であることを特徴とする上記の印刷装置。
【0015】
これらの構成によれば、拠点間を移送され、しわ、折れ、破れ等の不具合が発生した記録用紙に対して印刷装置で情報を印刷する場合、給紙補助具のベースプレートと紙押さえ部との間に記録用紙を挟みこみ不具合を矯正し、紙押さえ部に設けられた開口部から記録用紙の印刷領域を露出させて情報を印刷することができる。そのため、印刷装置の紙搬送経路の隙間やドットインパクトヘッドに記録用紙が引っかかることを防止できるとともに、ドットインパクトヘッドとのギャップを確保することができる。その結果、記録用紙の紙送り不良や紙詰まりを低減させることができ、印刷品質の安定した印刷装置を提供することができる。さらには、給紙補助具の紙押さえ部の情報マーキングを情報読み取り部で読み取ることにより、開口部の位置情報や記録用紙の印刷領域情報を取得することができ、印刷の位置ずれを低減させることができるとともに、その部分を印刷部まで効率的に移動させることができる。その結果、印刷効率を向上させることができる。
【0016】
(適用例6)記録用紙に対して印刷情報を印刷する印刷方法であって、記録用紙の印刷領域が開口部から露出するように、前記記録用紙を、上記の給紙補助具にセットする給紙補助具セット工程と、前記給紙補助具を、紙搬送経路に沿って搬送する給紙補助具搬送工程と、前記紙搬送経路に沿って搬送される前記給紙補助具の紙押さえ部に形成された情報マーキングを読み取る情報読み取り工程と、前記情報読み取り工程で読み取られた読み取り情報に基づいて、搬送される前記給紙補助具の前記開口部から露出する前記記録用紙の前記印刷領域に対して、印刷すべき前記印刷領域を決定して当該前記印刷領域に印刷情報を印刷する印刷工程と、を有することを特徴とする印刷方法。
【0017】
(適用例7)前記記録用紙は、複写機能を有する用紙が複数枚積層されるとともに、一枚ずつ分離可能な冊子状の複写用紙であることを特徴とする上記の印刷方法。
【0018】
これらの方法によれば、拠点間を移送され、しわ、折れ、破れ等の不具合が発生した記録用紙に対して情報を印刷する場合、給紙補助具のベースプレートと紙押さえ部との間に記録用紙を挟みこみ不具合を矯正し、紙押さえ部に設けられた開口部から記録用紙の印刷領域を露出させて情報を印刷することができる。そのため、印刷装置の紙搬送経路の隙間やドットインパクトヘッドに記録用紙が引っかかることを防止できるとともに、ドットインパクトヘッドとのギャップを確保することができる。その結果、記録用紙の紙送り不良や紙詰まりを低減させることができ、印刷品質の安定した印刷方法を提供することができる。さらには、給紙補助具の紙押さえ部の情報マーキングを情報読み取り部で読み取ることにより、開口部の位置情報や記録用紙の印刷領域情報を取得することができ、印刷の位置ずれを低減させることができるとともに、その部分を印刷部まで効率的に移動させることができる。その結果、印刷効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】記録用紙としての伝票用紙の構造を説明する図。
【図2】伝票用紙の書式の例を示す図。
【図3】産業廃棄物の移動を例にとったときの伝票用紙の流れを示す図。
【図4】インパクトプリンターの概略構成を示す図。
【図5】インパクトプリンターの主要構成を示すブロック図。
【図6】給紙補助具を説明する図。
【図7】給紙補助具を用いた印刷方法の流れを示すフローチャート。
【図8】給紙補助具に伝票用紙をセットする方法を説明する図。
【図9】第2実施例における給紙補助具の構造を説明する図。
【図10】第3実施例における給紙補助具の構造を説明する図。
【図11】第4実施例における給紙補助具の構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施例)
(記録用紙としての伝票用紙について)
本実施例の給紙補助具により給紙される記録用紙としての伝票用紙について図1から図3を参照して説明する。図1は、記録用紙としての伝票用紙の構造を説明する図であり、(a)は、伝票用紙の概観斜視図、(b)は、(a)のy矢視図、(c)は、伝票用紙の初期の形態である。図2は、伝票用紙の書式の例を示す図である。図3は、産業廃棄物の移動を例にとったときの伝票用紙の流れを示す図である。図1および図2に示すY方向は、伝票用紙がインパクトプリンターで印刷されるときの紙送り方向を示し、X方向は、Y方向に対して直交する方向を示している。
【0021】
図1(a)、(b)に示すように、伝票用紙Pは、例えば、第1票P1から第6票P6までの6枚で構成されている。第1票P1は、裏面P1bに混合反応液を詰め込んだカプセル物質が塗布されているノーカーボン用紙である。第2票P2から第5票P5は、表面P2a〜P5aに例えばロイコ染料等の発色剤が塗布され、裏面P1b〜P5bに混合反応液を詰め込んだカプセル物質が塗布されたノーカーボン用紙である。第6票P6は、表面P6aに例えばロイコ染料等の発色剤が塗布されたノーカーボン用紙である。
【0022】
伝票用紙Pは、第1票P1から第6票P6までの6枚が、図1中X方向左端でY方向に沿って接着剤により糊付けされた第1糊付け部N1が形成され冊子状を呈している。伝票用紙Pは、第1糊付け部N1に対して平行に形成されたミシン目Mで、それぞれ一枚ずつ切り離し可能な構造となっている。また、伝票用紙Pには、Y方向上辺の近傍にX方向に所定の間隔を空けてファイリング用のファイル穴32が2つ形成されている。なお、伝票用紙Pは、上述のノーカーボン用紙で構成される例に限定されない。伝票用紙Pの裏面P1b〜P5bにカーボンインクを塗布したカーボン用紙であっても良い。
【0023】
図2に示すように、第1票P1から第6票P6の表面P1a〜P6aには、各種情報を記入する記載欄が予め印刷されている。本実施例では、例えば、産業廃棄物を処理する際に用いられる伝票用紙Paを例にとり説明する。なお、伝票用紙Paは、産業廃棄物管理票とも呼ばれ、例えば、産業廃棄物とともに移送される。図2に示すように伝票用紙Paには、例えば、図3に示す排出業者(依頼者)G1用の記載欄Aとして、交付年月日、交付番号、排出業者名および場所、廃棄物の種類および数量、処分方法等の欄が上段に設けられている。その下段には、それぞれの作業を受託する業者用の記載欄Eとして、第1および第2運搬業者G2,G4に関する記載欄B1,B2、中間処理業者G3に関する記載欄C、最終処理業者G5に関する記載欄D等が設けられ、それぞれ業者名、住所、運搬先や保管場所もしくは処理を行った年月日や場所、その他特記事項を記載できるようになっている。
【0024】
(伝票の扱いおよび流れについて)
図3に示す排出業者G1は、図2に示す伝票用紙Paの上段の排出業者G1用の記載欄Aに必要な情報を、後述するインパクトプリンターで印刷記載する。このとき、伝票用紙Paは、例えば、図1(c)に示すように、伝票用紙Paの図1(c)中X方向左右に紙送り用の穴部30が設けられた第2および第3糊付け部N2,N3がY方向に沿って形成され、伝票用紙Paとの境界にはそれぞれミシン目Mが形成されている。上記を1組とし、複数の伝票用紙PaがY方向に連続して形成され、それぞれの伝票用紙Paの境界にはX方向に沿ってミシン目Mxが形成され、いわゆるファンホールド紙となっている。このような形態になっていることによって、スプロケット方式の紙送り機構を有するインパクトプリンターで連続して印刷することができる。
【0025】
伝票用紙Paは、ノーカーボン用紙やカーボン用紙からなる複写構造になっているため、情報は、第1票P1から第6票P6の表面P1a〜P6aに印刷もしくは複写される。なお、このとき、受託業者を指定する場合は下段の受託業者用の記載欄に業者名を予め印刷しても良いし、処理に関する指示内容がある場合はその内容を一部印刷しても良い。排出業者G1は、印刷された複数の伝票用紙Paをミシン目Mxでそれぞれ分断するとともに、第2および第3糊付け部N2,N3を切り離し、1組の伝票用紙Pを作成する。そして、排出業者G1は、印刷された伝票用紙Paの第1票P1を控えとして切り離し保管して、伝票用紙Paの残りの部分を産業廃棄物とともに第1運搬業者G2に渡す。なお、上記説明において、起票時に伝票用紙Paがファンホールド紙(連票)になっている場合について説明したが、これに限定されない。伝票用紙Paは、起票時にすでに単票状態であってもよい。
【0026】
第1運搬業者G2は、この伝票用紙Paを受け取り、産業廃棄物を中間処理業者G3に運搬する。このとき、第1運搬業者G2は、産業廃棄物の運搬にかかる諸情報を伝票用紙Paの第2票P2の欄B1に記入する。諸情報とは、例えば、第1運搬業者G2の業者名、住所、運搬先、運搬した年月日、その他特記事項等である。第1運搬業者G2は、伝票用紙Paの第2票P2を控えとして切り離し保管して、伝票用紙Paの残りの部分を産業廃棄物とともに中間処理業者G3に渡す。
【0027】
中間処理業者G3は、この伝票用紙Paを受け取り、産業廃棄物に対して必要な処理、例えば分類・分別を行う。このとき、中間処理業者G3は、産業廃棄物の中間処理にかかる諸情報を伝票用紙Paの第3票P3の欄Cに記入する。諸情報とは、例えば、中間処理業者G3の業者名、住所、処理内容、処理した年月日、その他特記事項等である。中間処理業者G3は、伝票用紙Paの第3票P3を控えとして切り離し保管して、伝票用紙Paの残りの部分を産業廃棄物とともに第2運搬業者G4に渡す。
【0028】
第2運搬業者G4は、この伝票用紙Paを受け取り、産業廃棄物を最終処理業者G5に運搬する。このとき、第2運搬業者G4は、産業廃棄物の運搬にかかる諸情報を伝票用紙Paの第4票P4の欄B2に記入する。諸情報とは、例えば、第2運搬業者G4の業者名、住所、運搬先、運搬した年月日、その他特記事項等である。第2運搬業者G4は、伝票用紙Paの第4票P4を控えとして切り離し保管して、伝票用紙Paの残りの部分を産業廃棄物とともに最終処理業者G5に渡す。
【0029】
最終処理業者G5は、この伝票用紙Paを受け取り、産業廃棄物に対して必要な処理、例えば粉砕・再生加工・廃棄等を行う。このとき、最終処理業者G5は、産業廃棄物の最終処理にかかる諸情報を伝票用紙Paの第5票P5の欄Dに記入する。諸情報とは、例えば、最終処理業者G5の業者名、住所、処理内容、処理した年月日、その他特記事項等である。最終処理業者G5は、伝票用紙Paの第5票P5を控えとして切り離し、伝票用紙Paの残りの部分、すなわち最後の1枚である第6票P6を依頼者である排出業者G1に郵送する。
【0030】
排出業者G1は、郵送された第6票P6の内容を確認して、依頼した各業者が必要な作業を滞りなく実施したか否か、すなわち産業廃棄物が適正に処理されたか否かを判断する。また、必要があれば、発行時の控えである第1票P1の内容とつき合わせて判断する。そして、第1票P1および第6票P6を証拠として保管する。
【0031】
なお、上記フローは、一例であり、産業廃棄物の種類等によって、様々な変形、バリェーションがある。途中の工程においても、伝票用紙Paの一部を依頼者である排出業者G1に郵送する場合もあり得る。また、中間処理業者G3が産業廃棄物を仕分けして、中間処理業者G3が、伝票用紙Paを新たに起票する場合もあり得る。
【0032】
従来、各業者は、必要情報を手書きで記入するのが一般的であった。この場合、書き手により筆圧の強弱や字の巧拙の違いがあり、多数枚の複写用紙から構成される伝票用紙Paは後ろの伝票に行くに従って判読しづらくなってしまう。近年、生産活動や商取引活動が複雑化、多様化しており、各拠点で追記される情報量が増加している。そのため、各拠点ごとにインパクトプリンターを備え、伝票用紙に必要情報を追記印刷したいという要望が増えてきた。
【0033】
(印刷装置の全体構成について)
ここで上述の伝票用紙に情報を印刷する印刷装置について、図4を参照して説明する。なお、ここでは印刷装置としてインパクトプリンターを適用した場合を例にとり説明する。図4は、インパクトプリンターの概略構成を示す図であり、(a)は上面から見た概略平面図、(b)は正面から見た概略断面図、(c)は側面から見た図(b)のf矢視図である。なお、図4に示すX方向およびY方向は、図1に示すX方向およびY方向と同一な方向を示しており、Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向である。また、図面では、説明を分かりやすくするために、一部を省略したり、各構成等を誇張して図示している。
【0034】
図4に示すように、インパクトプリンター100は、ドットインパクトヘッド90、プラテン95およびヘッド移動機構110を含む印刷部125(図5参照)と、紙送り部120と、リボンカセット150と、検出機構160とを備えている。
【0035】
ドットインパクトヘッド90は、図示しない金属ピンが伝票用紙Pa側(図4中Z方向下面)に対向するように、図中X方向に架設されたヘッド支持軸111に軸支されている。ドットインパクトヘッド90は、上記金属ピンを図示しない電磁石で吸引もしくは開放して押し出すことができる。ヘッド移動機構110は、タイミングベルト113と、駆動プーリ114と、従動プーリ115と、図示しないモーターとを備えている。タイミングベルト113は、ドットインパクトヘッド90が係止されており、駆動プーリ114と従動プーリ115とに張設されている。駆動プーリ114は、モーターの出力軸に接続されている。そのため、モーターが作動すると、ドットインパクトヘッド90は、インパクトプリンター100に架設されたヘッド支持軸111に案内されて、図中X方向に往復移動する。
【0036】
紙送り部120は、図中Y方向に延びる紙搬送経路121に沿って、図5に示す第1紙送り機構135と、図4に示す第2紙送り機構130と、第3紙送り機構140とから構成されている。紙搬送経路121は、図4中Y(−)方向を紙挿入側としY(+)方向を紙排出側として、紙案内下123および紙案内上124にZ方向上下をガイドされ、ほぼフラットに形成されている。なお、図4に示すように、紙案内下123は、インパクトプリンター100の外部に延在し、伝票用紙Paの受けとなっている。第1紙送り機構135(図4に示さず)は、ファンホールド状の伝票用紙Paをインパクトプリンター100に導入するスプロケット方式の紙送り機構であり、上述の排出業者G1での印刷工程で使用される。
【0037】
第2紙送り機構130は、いわゆるフリクション方式の紙送り機構であり、紙搬送経路121を挟んで図中Z方向に法線圧接する円柱形状の駆動ローラー132と円柱形状の従動ローラー134とから構成されている。駆動ローラー132は、Z方向下方向に配設され、図示しない紙送りモーターから動力を受けて図中矢印m方向に回動する。第3紙送り機構140は、いわゆるフリクション方式の紙送り機構であり、紙搬送経路121を挟んで図中Z方向に法線圧接する円柱形状の駆動ローラー142と円柱形状の従動ローラー144とから構成されている。駆動ローラー142は、Z方向下方向に配設され、図示しない紙送りモーターから動力を受けて図中矢印m方向に回動する。そのため、紙送り部120は、紙搬送経路121に挿入された伝票用紙PaをY(+)方向に搬送することができる。
【0038】
ドットインパクトヘッド90は、紙搬送方向(Y方向)において上述の第2紙送り機構130と第3紙送り機構140との間に配置される。なお、紙搬送経路121を挟んでドットインパクトヘッド90の金属ピンが対向する面(Z方向下面)には、所定のプラテンギャップを空けて、X方向に延びる板状のプラテン95が配置されている。
【0039】
リボンカセット150は、インクを含浸させた長尺エンドレスのインクリボン152を内部に収納しており、インクリボン152の所定の範囲はリボンカセット150の2つの腕154間に張設されている。このリボンカセット150は、インパクトプリンター100に設けられた図5に示すリボン送り機構155に取り付けられている。インクリボン152の張設部分は、ドットインパクトヘッド90の金属ピンが収納されるヘッドノウズ90a近傍に配置され、リボン送り機構155によりX方向に沿って移動させられる。
【0040】
検出機構160は、用紙検出器162と、情報読み取り部164とから構成されている。用紙検出器162は、図4に示すように、紙搬送経路121の紙挿入口近傍、すなわち第2紙送り機構130の従動ローラー134手前に紙搬送経路121に沿って設けられている。用紙検出器162は、例えば、光を透過もしくは反射する光検出器であり、伝票用紙Paの有無もしくは端面を検出する。情報読み取り部164は、図4に示すように、第2紙送り機構130の従動ローラー134のドットインパクトヘッド90側に紙搬送経路121に沿って設けられている。情報読み取り部164は、CIS(Contact Image Sensor;コンタクトイメージセンサー)やCCD(電荷結合素子)等の光学式の画像読み取り素子を備えたスキャナー装置166を備えている。このスキャナー装置166は、複数の画像読み取り素子がライン状に配置され、伝票用紙Paもしくは給紙補助具に印刷された情報を読み取ることができる。
【0041】
このように構成されたインパクトプリンター100は、後述する制御部からの制御信号を受けて、紙送り部120により搬送される伝票用紙Paに対して、ドットインパクトヘッド90の金属ピンを、インクを含浸させたインクリボン152を介して、叩き付けて伝票用紙Paに所定の情報を重ね印刷することができる。
【0042】
(印刷装置の制御について)
次に、印刷装置としてのインパクトプリンターの制御系について、図5を参照して説明する。図5は、インパクトプリンターの主要構成を示すブロック図である。
図5に示すように、インパクトプリンター100は、ドットインパクトヘッド90と、ヘッド移動機構110、紙送り部120、リボン送り機構155、および検出機構160とからなるプリンター機構部200と、これらを統括制御する制御装置300と、を備えている。
【0043】
制御装置300は、制御系の主要部となる制御部310と、ドットインパクトヘッド90を駆動制御するヘッドドライバー312と、ヘッド移動機構110、リボン送り機構155および紙送り部120を駆動するモータードライバー314と、インターフェース部316とを備えている。制御部310は、CPU(Central Processing Unit)320と、情報処理部322と、メモリー部324を備えている。CPU320は、図示しない操作系や検出系からの入力信号処理、印刷処理等の各種処理を実行する。情報処理部322は、情報読み取り部164で読み取られた各種情報を処理する。
【0044】
メモリー部324は、図示しないRAM(Random Access Memory)、ROM(Read-Only Memory)等を含んだ構成を有している。RAMは、情報読み取り部164で読取られた読み取り情報や、ホストコンピューター330からインターフェース部316を介して入力される印刷データ等の各種データを一時的に格納したり、CPU320によって実行される印刷処理等のプログラムを一時的に展開したりする。ここで、印刷データは、ドットインパクトヘッド90で伝票用紙Paに印刷すべきパターンを指示するものである。
【0045】
ヘッドドライバー312は、CPU320からの指令に基づいて、ドットインパクトヘッド1の金属ピンを個別またはグループ別に制御する。モータードライバー314は、CPU320からの指令に基づいて、ヘッド移動機構110、リボン送り機構155および紙送り部120のそれぞれのモーターを個別に制御する。インターフェース部316は、ホストコンピューター330から受け取った印刷データ等を制御部310に出力したり、制御部310から受け取った各種情報をホストコンピューター330に出力したりする。
【0046】
(給紙補助具について)
本実施例にかかる給紙補助具について、図6を参照して説明する。図6は、給紙補助具を説明する図であり、(a)は、給紙補助具の概略斜視図であり、(b)は、給紙補助具に伝票用紙をセットした状態を示す図である。
【0047】
産業廃棄物の移動に伴って移送される伝票用紙Paは、移送過程でしわ、折れ、破れ等の損傷が発生する場合がある。また、各業者において、伝票用紙Paに必要情報を記載して、1枚を控えとして切り離す。このとき、間違えて他の業者部分まで切り離してしまう場合、すなわち伝票用紙Paがバラバラになってしまう場合もあり得る。この場合は、クリップ等で伝票用紙Paの残りの部分を仮止めする。すなわち、複写部分の印字位置がずれてしまう場合もあり得る。
【0048】
また、伝票用紙Paは、発行元の業者において図1(c)に示す紙送り用の穴部30が設けられた第2および第3糊付け部N2,N3が切り離されている。そのため、インパクトプリンター100に設けられているスプロケット方式の第1紙送り機構135を使用することができない。すなわち、フリクションフィード方式の第2紙送り機構130および第3紙送り機構140で伝票用紙Paを送らざるを得ない。この場合、例えば、伝票用紙Paのしわ、折れ、破れ等が、紙搬送経路121の隙間やドットインパクトヘッド90に引っかかり、紙送り不良や紙詰まりの原因となる。
【0049】
また、伝票用紙Paとドットインパクトヘッド90とのギャップが確保できず、インクリボン152の安定走行を妨げたり、ドットインパクトヘッド90の金属ピンがインクリボン152に引っ掛かり金属ピンの損傷につながったりすることもあり得る。また、リボンや機構部に伝票用紙Paが接触して、伝票用紙Paにインクや油類による汚れ発生することもあり得る。また、複数枚の単票からなる伝票用紙Paを駆動ローラー132,142と従動ローラー134,144との間に挟持して送るため、各単票の位置がずれてしまい、十分な紙送り量が確保されなかったり、印刷位置がずれてしまったりする。さらには、重要な伝票用紙Paそのものを破損してしまうことがあり得る。
【0050】
上述の課題に対して、発明者らは検討を重ね、このような伝票用紙Paに対しても良好な紙送りおよび印刷位置精度等の印刷品質を確保できる給紙補助具を発明した。
図6(a)に示すように、給紙補助具10は、ベースプレート12と紙押さえ部14とを有する。本実施例において、ベースプレート12は、上述の伝票用紙Paより大きい面積を有する四角形の平板状に形成されている。紙押さえ部14は、ベースプレート12とほぼ同じ大きさか、もしくは若干小さい面積の四角形の平板状に形成されている。紙押さえ部14とベースプレート12とは、紙押さえ部14の四角形の一辺とベースプレート12の四角形の一辺とを共通な接合部16として開閉自在に接合されている。なお、紙押さえ部14とベースプレート12とは、異なる部材として形成されヒンジ等の接合部材によって接合されていても良いし、例えば、紙等の同一な部材で一体に形成され接合部16で折り曲げられて開閉自在に形成されていても良い。
【0051】
図6(a)、(b)に示すように、紙押さえ部14には、平板部分に四角形形状の開口部18が1つ設けられている。この開口部18の位置および大きさは、給紙補助具10が伝票用紙Paを正しい位置に挟み込んだときに、各委託業者が必要情報を記入する記載欄E(記載欄B1,C,B2,D)の部分を含む大きさおよび位置である。また、紙押さえ部14の接合部16の近傍には、情報マーキングとしての、例えば、バーコード25が印刷されている。このバーコード25は、種々の情報を表わすことができる。本実施例では、バーコード25は、例えば、図3に示すどの業者が使用する給紙補助具10であるのか、開口部18から露出する記載欄Eのうちいずれの記載欄B1,C,B2,Dに情報を印刷すべきか、給紙補助具10のサイズ等の情報とともに印刷すべき記載欄B1,C,B2,Dの位置情報等の情報を含んでいる。また、紙押さえ部14には、ベースプレート12との接合部16のX方向の略中央に、ベースプレート12にわたる、接合部16を底辺とする略三角形状の切り欠き部22が設けられている。
【0052】
(印刷方法について)
次いで、上述の給紙補助具を用いた印刷方法について、図7および図8を参照して説明する。図7は、給紙補助具を用いた印刷方法の流れを示すフローチャートであり、図8は、給紙補助具に伝票用紙をセットする方法を説明する図である。
図7に示すように、この印刷方法は、伝票用紙セット工程S1と、給紙補助具搬送工程としての給紙補助具搬入工程S2および給紙補助具搬出工程S5と、情報読み取り工程S3と、印刷工程S4と、を有する。
【0053】
図7に示す伝票用紙セット工程S1では、給紙補助具10に対して伝票用紙Paをセットする。図8(a)に示すように、接合部16を支点として給紙補助具10の紙押さえ部14を開放する。そして、図8(b)に示すように、各拠点において入手したしわ、折れ、破れ等が発生した図2に示す伝票用紙Paを、伝票用紙Paの上辺24が接合部16の開閉線16aに対して密着するように押し付けてY方向の位置合わせしつつ配置する。その後、紙押さえ部14を閉じる。図8(c)に示すように、閉じた状態の給紙補助具10は、紙押さえ部14の開口部18から図2に示す伝票用紙Paの各委託業者が必要情報を記入する記載欄Eの部分が露出し、伝票用紙Paのその他の部分が紙押さえ部14に覆われた状態になる。
【0054】
ただし、伝票用紙Paは、しわ、折れ、破れ等が発生し厚み方向に凹凸状態となっている場合がある。この場合、ベースプレート12と紙押さえ部14とで平面的に押さえると、凹凸部が矯正され伝票用紙Paが所定の位置から移動してしまう可能性がある。このような状態が発生したときは、紙押さえ部14とベースプレート12との接合部16に設けた切り欠き部22で、露出している伝票用紙Paを指で保持して移動させ、開口部18から露出している記載欄Eの位置を確認して適正な位置になるように矯正する。このとき、開口部18の大きさは、記載欄Eの全体の大きさと略等しいことが望ましい。このようにすることによって、伝票用紙PaのX方向もしくはY方向の位置決めができる。
【0055】
図7に示す給紙補助具搬入工程S2では、伝票用紙Paが正しい位置に挟持された給紙補助具10を、図4に示すインパクトプリンター100の紙搬送経路121に位置する紙案内下123の延在部123aに、図6に示す給紙補助具10の接合部16が向かうように配置する。そして、給紙補助具10をインパクトプリンター100に挿入する。このとき、インパクトプリンター100の紙挿入口に配設された用紙検出器162は、給紙補助具10の切り欠き部22における伝票用紙Paの有無、伝票用紙Paがある場合は伝票用紙Paの先端を検知する。次いで、図5に示す制御装置300のモータードライバー314からの制御信号により第2紙送り機構130および第3紙送り機構140のモーターが駆動され、図4に示す駆動ローラー132,142が図中矢印m方向に回転する。その結果、給紙補助具10(伝票用紙Pa)は、紙搬送経路121に沿って、Y(+)方向に所定の速度で搬送される。
【0056】
図7に示す情報読み取り工程S3では、情報読み取り部164を用い、紙搬送経路121に沿って搬送される給紙補助具10の紙押さえ部14に印刷された情報マーキングとしてのバーコード25の情報、例えば、給紙補助具10のサイズ、種類および印刷すべき位置等の情報を読み取る。ここでは、給紙補助具10が、例えば、図3に示す中間処理業者G3が用いる給紙補助具10であるとする。よって、図2に示す伝票用紙Paの記載欄Cに必要情報を印刷すべきであることがわかる。なお、この処理は図5に示す制御部310の情報処理部322で行われる。
【0057】
図7に示す印刷工程S4では、情報読み取り工程S3で読み取られた情報に基づいて決定した伝票用紙Paの記載欄Cに必要情報を印刷する。なお、記載欄Cは、紙押さえ部14の開口部18から、しわ、折れ等が矯正された状態で露出している。ドットインパクトヘッド90が設けられた位置に、給紙補助具10に挟持された伝票用紙Paの記載欄Cが到達するまで紙送り部120により紙送りを行う。所定の位置に到達した段階で、ヘッド移動機構110によりドットインパクトヘッド90をX方向に移動させながら、図5に示す制御装置300のヘッドドライバー312によってドットインパクトヘッド90を駆動し、金属ピンをインクリボン152を介して叩き付けて伝票用紙Paに必要情報を重ね印刷する。このとき、中間処理業者G3によって印刷される情報は、例えば、中間処理業者G3の業者名、住所、処理内容、処理した年月日、その他特記事項等である。
【0058】
この場合、印刷すべき位置が決定しているため、ドットインパクトヘッド90が設けられた位置に給紙補助具10に挟持された伝票用紙Paの記載欄Cに到達するまで、給紙補助具10をY方向に早送りすることができる。また、X方向においても、印刷すべき位置が決定しているため、ヘッド移動機構110によりドットインパクトヘッド90を高速で移動させることができる。すなわち、X方向、Y方向において、いわゆるロジカルシーキング方式で、給紙補助具10およびドットインパクトヘッド90の位置決めをすることができる。
【0059】
図7に示す給紙補助具搬出工程S5では、印刷工程S4で所定の記載欄(記載欄C)に必要情報が印刷された伝票用紙Paは、給紙補助具10に挟持された状態で、第2紙送り機構130および第3紙送り機構140によりY(+)方向に所定の速度で搬送され、インパクトプリンター100の外部に搬出される。中間処理業者G3は、印刷された伝票用紙Paの第3票P3を控えとして切り離し保管して、伝票用紙Paの残りの部分を産業廃棄物とともに第2運搬業者G4に渡す。なお、この作業は、その他の受託業者においても同等である。
【0060】
以下、本実施例の効果を記載する。
(1)本実施例は、給紙補助具10を用い、しわ、折れ、破れ等の不具合が発生した伝票用紙Paを、ベースプレート12と紙押さえ部14との間に挟みこみ、不具合すなわち伝票用紙Pa厚み方向の凹凸状態を矯正した状態でインパクトプリンター100で情報を印刷することができる。また、紙押さえ部14に設けられた開口部18から伝票用紙Paの印刷部分(業者の記載欄E)のみ露出させ印刷することができる。そのため、しわ、折れ、破れ等が発生した伝票用紙Paがインパクトプリンター100の紙搬送経路121の隙間やドットインパクトヘッド90に伝票用紙Paが引っかかることを防止できるとともに、ドットインパクトヘッド90とのギャップを確保することができる。その結果、伝票用紙Paの紙送り不良や紙詰まりを低減させることができ、安定した印刷品質を得ることができる。
【0061】
(2)本実施例は、給紙補助具10を用い、ベースプレート12と紙押さえ部14との間に挟持された伝票用紙Paを、接合部16に設けられた切り欠き部22を用い、切り欠き部22から露出した伝票用紙Paの部分を指で保持して伝票用紙Paを移動させ、伝票用紙Paを適正な位置に配置することができる。すなわち、凹凸状態が矯正された状態で伝票用紙Paの位置を調整することができ、紙押さえ部14の開口部18から伝票用紙Paの業者の記載欄Eを正しい位置で露出させることができる。そのため、しわ、折れ、破れ等の不具合が発生した伝票用紙Paであっても、同一サイズの印刷物として取り扱うことができるとともに、正しい印刷位置に複写印刷することができる。
【0062】
(3)本実施例は、給紙補助具10に設けられた情報マーキングとしてのバーコード25に、給紙補助具10のサイズ、種類および印刷すべき位置等の情報を記憶させることができる。そして、インパクトプリンター100の情報読み取り部164を用い、紙搬送経路121に沿って搬送される給紙補助具10の紙押さえ部14に印刷された情報マーキングとしてのバーコード25の情報、例えば、給紙補助具10のサイズ、種類および印刷すべき位置等の情報を読み取ることができる。情報読み取り部164で読み取られた情報に基づいて決定した伝票用紙Paの印刷部分に必要情報を印刷することができる。印刷部分が決定されているため、いわゆるロジカルシーキング方式で印刷部分にすばやく効率的に印刷することができる。
【0063】
(4)本実施例は、給紙補助具10を用いベースプレート12と紙押さえ部14との間に伝票用紙Paを挟み印刷する構造をとっているため、印刷時に伝票用紙Paが汚染することや損傷することを低減させることができる。
【0064】
(第2実施例)
ここで、第2実施例の給紙補助具について図9を参照して説明する。図9は第2実施例における給紙補助具の構造を説明する図である。第2実施例は、第1実施例に対して、紙押さえ部の構造が異なる例である。第1実施例と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、給紙補助具10aは、複数の開口部18i(iはaからdのいずれか)を有する。開口部18iは、第1運搬業者G2が必要情報を印刷する記載欄B1に対応する開口部18aと、中間処理業者G3が必要情報を印刷する記載欄Cに対応する開口部18bと、第2運搬業者G4が必要情報を印刷する記載欄B2に対応する開口部18cと、最終処理業者G5が必要情報を印刷する記載欄Dに対応する開口部18dとから構成されている。
【0066】
紙押さえ部14の接合部16の近傍に付与されている情報マーキングとしてバーコード25は、図3に示すどの業者が使用する給紙補助具10aであるのか、開口部18a〜18dの内のいずれの開口部18iから露出する記載欄Eに情報を印刷すべきか、給紙補助具10aのサイズ等の情報とともに印刷すべき開口部18a〜18dの位置情報等の情報を含んでいる。
【0067】
図7に示す情報読み取り工程S3では、情報読み取り部164を用い、紙搬送経路121に沿って搬送される給紙補助具10aの紙押さえ部14に印刷された情報マーキングとしてのバーコード25の情報、例えば、給紙補助具10aのサイズ、種類および印刷すべき位置等の情報を読み取る。ここでは、給紙補助具10aが、例えば、図3に示す中間処理業者G3が用いる給紙補助具10aであるとする。よって、図2に示す伝票用紙Paの記載欄Cに必要情報を印刷すべきであることがわかる。なお、この処理は図5に示す制御部310の情報処理部322で行われる。
【0068】
図7に示す印刷工程S4では、情報読み取り工程S3で読み取られた情報に基づいて決定した伝票用紙Paの記載欄Cに必要情報を印刷する。なお、記載欄Cは、紙押さえ部14の開口部18bから、しわ、折れ等が矯正された状態で露出している。ドットインパクトヘッド90が設けられた位置に、給紙補助具10aに挟持された伝票用紙Paの記載欄Cが到達するまで紙送り部120により紙送りを行う。所定の位置に到達した段階で、ヘッド移動機構110によりドットインパクトヘッド90をX方向に移動させながら、図5に示す制御装置300のヘッドドライバー312によってドットインパクトヘッド90を駆動し、金属ピンをインクリボン152を介して叩き付けて伝票用紙Paに必要情報を重ね印刷する。
【0069】
この場合、印刷すべき記載欄B1,B2,C,Dのみが紙押さえ部14の開口部18iから露出している。そのため、伝票用紙Paのしわ、折れ、破れ等の不具合をより確実に矯正することができる。その結果、伝票用紙Paの紙送り不良や紙詰まりを低減させることができ、より安定した印刷品質を得ることができる。
【0070】
(第3実施例)
ここで、第3実施例の給紙補助具について図10を参照して説明する。図10は、第3実施例における給紙補助具の構造を説明する図である。第3実施例は、第1および第2実施例に対して、情報マーキングの構成が異なる例である。第1および第2実施例と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0071】
図10に示すように、給紙補助具10bは、開口部18以外にマーキング用開口部19を有する。また、図2に示すように、伝票用紙Paの第1票P1から第6票P6の表面P1a〜P6aには、図2中左上に、給紙補助具10bのサイズ、この用紙が排出業者G1、第1および第2運搬業者G2,G4、中間処理業者G3もしくは最終処理業者G5のいずれの業者が使用する用紙であるか、印刷すべき位置等の情報を表わすマークRが設けられている。マークRは、例えば、バーコードであっても良いし、OCRフォントであっても良い。給紙補助具10bのマーキング用開口部19の位置および大きさは、伝票用紙Paが給紙補助具10bの正しい位置に配置されたと仮定したときに伝票用紙PaのマークRと同様な位置であり、大きさはマークRの大きさを含む大きさである。すなわち、給紙補助具10bのマーキング用開口部19からは、上記のマークRが露出している。
【0072】
そして、図7に示す情報読み取り工程S3で、情報読み取り部164を用い、紙搬送経路121に沿って搬送される給紙補助具10bのマーキング用開口部19から露出しているマークRを読み取り、例えば、伝票用紙Paの種類および印刷すべき位置等の情報を得る。図7に示す印刷工程S4では、情報読み取り工程S3で読み取られた情報に基づいて決定した伝票用紙Paの記載欄B1,C,B2,Dのいずれかに必要情報を印刷する。
【0073】
この場合、印刷に必要な情報は伝票用紙Paに付与され、給紙補助具10bのマーキング用開口部19から露出している。そのため、給紙補助具10bは、様々な種類の伝票用紙Paに対応することができる。また、給紙補助具10bに対する伝票用紙Paの位置合わせを行うとき、開口部18から露出している記載欄Eの位置とともに、マーキング用開口部19から露出しているマークRの位置を用いることができる。従って、より正確な位置合わせを行うことができる。また、伝票用紙Paごとに印刷すべき位置の情報を取得することができるため、伝票用紙Paの適切な位置に印刷することができる。
【0074】
(第4実施例)
ここで、第4実施例の給紙補助具について図11を参照して説明する。図11は、第4実施例における給紙補助具の構造を説明する図である。第4実施例は、第1、第2および第3実施例に対して、伝票用紙の位置決め方法が異なる例である。第1、第2および第3実施例と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0075】
図11に示すように、給紙補助具10cは、ベースプレート12と紙押さえ部14との接合部16の近傍にX方向に所定の間隔を空けて、ベースプレート12と紙押さえ部14にわたる貫通穴40が2組設けられている。貫通穴40の位置および大きさは、給紙補助具10cが、伝票用紙Paを正しい位置に挟み込んだと仮定したときに、図2に示す伝票用紙Paに形成されたファイリング用のファイル穴32と略同じ大きさおよび位置である。
【0076】
この2つの貫通穴40は、伝票用紙Paを給紙補助具10cに挟み込み、紙押さえ部14とベースプレート12との接合部16に設けた切り欠き部22で、露出している伝票用紙Paを指で保持して移動させ、適正な位置になるように矯正するときの位置決めとして用いることができる。伝票用紙Paを間違えて切り離しバラバラになってしまった場合等に、給紙補助具10cの貫通穴40と伝票用紙Paのファイリング用のファイル穴32を合わせることによって、伝票用紙Paを正しい位置に挟み込むことができる。
【0077】
また、図4に示すインパクトプリンター100において、紙案内下123の延在部123aに2つの位置決めピン180を設けてある。位置決めピン180は、紙案内下123の延在部123aに給紙補助具10cを正しい位置に配置したと仮定したときに、図11に示す給紙補助具10cの貫通穴40と略同じ大きさおよび位置である。この位置決めピン180は、図示しない位置決めピン動作機構によって、図4中Z方向に上下動することができる。
【0078】
図7に示す給紙補助具搬入工程S2において、このような構成を有する給紙補助具10cを、図4に示すインパクトプリンター100の紙搬送経路121に位置する紙案内下123の延在部123aに配置するとき、位置決めピン180を位置決めピン動作機構によって紙案内下123の延在部123aより突出させ、位置決めピン180に給紙補助具10cの貫通穴40を勘合させる。給紙補助具10cをインパクトプリンター100に挿入するときは、位置決めピン180を位置決めピン動作機構によって紙案内下123の延在部123aよりZ方向下方向に移動させ、延在部123a内に収納する。このようにすることによって、インパクトプリンター100に給紙補助具10cを正しい位置にセットすることができ、給紙補助具10cと伝票用紙Paとの位置決めも同時にできる。
【0079】
(第5実施例)
ここで、第5実施例の給紙補助具について説明する。第1〜第4実施例と同様な構成および内容については、符号を等しくして説明を省略する。
【0080】
第5実施例の給紙補助具10dは、X方向の横幅(図6参照)が、図4に示すインパクトプリンター100の紙搬送経路121の紙案内下123および紙案内上124によって規制されるX方向のガイド幅と略同等に形成されている。この場合は、用紙幅の異なる複数種の伝票用紙Paに対しても、記載欄Eを紙押え部14の開口部18から露出させることができる。すなわち、インパクトプリンター100の印刷部125において、X方向における印刷すべき位置をほぼ固定することができる。そのため、ロジカルシーキング方式で印刷部分にすばやく効率的に印刷することができる。また、給紙補助具10dの横幅を、紙案内下123および紙案内上124のガイド幅に確実にガイドすることができる。そのため、斜行送り等の紙送り不良を防止することができ安定した紙送りを確保することができる。
【0081】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記実施例に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施例以外の変形例は、以下の通りである。
【0082】
(第1変形例)上述の実施例では、給紙補助具10を用い複数の複写用紙からなる伝票用紙Paを印刷する場合について説明したが、これに限定されない。伝票用紙Paは、1枚の用紙からなる単票用紙Tであってもよい。例えば、小切手等は、発行元で金額等の情報が印刷され、市場に流通した後、銀行等で小切手の検収作業を行い、検収結果や支払日等の情報をその小切手に再印刷する場合がある。小切手は、流通過程において収納や流通状態によってしわ、折れ、破れ等の不具合が発生する場合がある。この場合でも、上述の実施例の給紙補助具10を用いることにより、しわ、折れ、破れ等の不具合が発生した単票用紙Tの紙送り、印刷における不具合を低減することができ、良好な印刷品質を提供することができる。
【0083】
(第2変形例)上述の実施例では、給紙補助具10を用い複写用紙からなる伝票用紙Paをインパクトプリンターで印刷する場合について説明したが、これに限定されない。他の方式の印刷装置、例えば、熱による顕色機能を利用したサーマルプリンターを用いて印刷してもよい。この場合、伝票用紙Pとしては、1枚目の単票P1は表面が熱により発色する感熱紙であり、単票P1の裏面に熱溶融タイプの感熱インクを塗布した用紙が適用される。その他、単票P2以降は、表面が普通紙であり裏面に熱溶融タイプの感熱インクを塗布した用紙が適用される。この場合でも、伝票用紙Pのしわ、折れ、破れ等の不具合を矯正し良好な印刷品質を提供することができる。
【0084】
(第3変形例)上述の実施例では、情報マーキングとしてバーコード25を、マークRとしてバーコードやOCRフォントを用いた場合を例にとり説明したがこれに限定されない。情報マーキングやマークRは、二次元コードであっても良いし、ICを用いても良い。情報が記憶され、情報読み取り部164でその情報が読み取れるものであれば良い。また、情報マーキングに含まれる情報として、例えば、業者名やその住所等と定型文に関する情報を記憶させても良い。この場合、図5に示す制御部310のメモリー部324に定型文を記憶させ、読み取り情報に基づいてその定型文をデータとして読み出しプリンター機構部で印刷することができる。
【0085】
上述の実施例では、給紙補助具10が紙製である場合について説明したが、これに限定されない。適度な摩擦係数を有する平板状の部材であり、インパクトプリンターで紙送りできる材質であればよい。また、本実施例では、伝票用紙Paが産業廃棄物管理票である場合を例にとり説明したがこれに限定されない。産業廃棄物管理票は、一実施例であって、宅配業者等が用いる配送伝票であっても良いし、物品を修理する際に用いられる修理伝票やその他の伝票であっても良い。
【符号の説明】
【0086】
10,10a,10b,10c…給紙補助具、12…ベースプレート、14…紙押さえ部、16…接合部、16a…開閉線、18,18i,18a〜d…開口部、19…マーキング用開口部、22…切り欠き部、25…情報マーキングとしてのバーコード、90…ドットインパクトヘッド、100…インパクトプリンター、110…ヘッド移動機構、120…紙送り部、150…リボンカセット、152…インクリボン、160…検出機構、300…制御装置、P,Pa…記録用紙としての伝票用紙、P1〜P6…単票、M…ミシン目、N…糊付け部、A,B1,B2,C,D,E…記載欄。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷情報が印刷される記録用紙を、印刷装置に供給する給紙補助具であって、
前記記録用紙を載置する平面状のベースプレートと、
前記ベースプレートと一部が接合され、接合部を支点として開閉自在に構成される紙押さえ部と、を備え、
前記紙押さえ部には、前記記録用紙の印刷領域を露出させる開口部と、前記開口部の位置情報および前記記録用紙の印刷領域情報を含む情報が記載された情報マーキングとが形成されていることを特徴とする給紙補助具。
【請求項2】
前記記録用紙は、複写機能を有する用紙が複数枚積層されるとともに、一枚ずつ分離可能な冊子状の複写用紙であることを特徴とする請求項1に記載の給紙補助具。
【請求項3】
前記記録用紙は複数の前記印刷領域を有し、前記紙押さえ部の前記開口部からは、複数の前記印刷領域のうちの任意の前記印刷領域が露出していることを特徴とする請求項1または2に記載の給紙補助具。
【請求項4】
記録用紙に対して印刷情報を印刷する印刷装置であって、
前記記録用紙の印刷領域が開口部から露出するように、前記記録用紙を収納する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の給紙補助具を、紙搬送経路に沿って搬送する紙送り部と、
前記紙搬送経路に沿って設置されるとともに、前記紙送り部によって搬送される前記給紙補助具の紙押さえ部に形成された情報マーキングを読み取る情報読み取り部と、
前記紙搬送経路に沿って設置されるとともに、前記紙送り部によって搬送される前記給紙補助具の前記開口部から露出する前記記録用紙の前記印刷領域に印刷情報を印刷する印刷部と、を備え、
前記情報読み取り部で読み取られた読み取り情報に基づいて、印刷すべき前記印刷領域を決定し前記印刷領域に印刷情報を印刷することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
前記記録用紙は、複写機能を有する用紙が複数枚積層されるとともに、一枚ずつ分離可能な冊子状の複写用紙であることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
記録用紙に対して印刷情報を印刷する印刷方法であって、
記録用紙の印刷領域が開口部から露出するように、前記記録用紙を、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の給紙補助具にセットする給紙補助具セット工程と、
前記給紙補助具を、紙搬送経路に沿って搬送する給紙補助具搬送工程と、
前記紙搬送経路に沿って搬送される前記給紙補助具の紙押さえ部に形成された情報マーキングを読み取る情報読み取り工程と、
前記情報読み取り工程で読み取られた読み取り情報に基づいて、搬送される前記給紙補助具の前記開口部から露出する前記記録用紙の前記印刷領域に対して、印刷すべき前記印刷領域を決定して前記印刷領域に印刷情報を印刷する印刷工程と、を有することを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
前記記録用紙は、複写機能を有する用紙が複数枚積層されるとともに、一枚ずつ分離可能な冊子状の複写用紙であることを特徴とする請求項6に記載の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−20293(P2011−20293A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165351(P2009−165351)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】