説明

絶縁コイル

【課題】絶縁層の厚さを必要以上に厚くすることなく耐電圧特性を向上させ且つ放熱性にも優れた絶縁コイルを提供すること。
【解決手段】コイル導体と、マイカ層シートを補強材にバインダ樹脂で接着させた絶縁テープをコイル導体に巻回し熱硬化性樹脂を含浸して硬化した絶縁層とを備える絶縁コイルであって、補強材が、特定の範囲の平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤を、絶縁層中の樹脂成分に対して8重量%以上70重量%以下の量で含有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性及び耐電圧特性に優れた絶縁コイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高出力の回転電機では、発生した熱を効率良く放熱するため、絶縁コイルの熱伝導率を向上させる必要があり、従来、絶縁コイルの絶縁被覆に高熱伝導性の絶縁材料を用いることが試みられている。
【0003】
高熱伝導性の絶縁材料で絶縁されたコイルとして、ガラス繊維織布に固着されたマイカフレーク層と、このマイカフレーク層間の空間に配置され且つ無機粒子を含有する含浸樹脂とからなる絶縁材料で導体が絶縁されたコイルが知られている。この無機粒子は、5W/mK以上の熱伝導率を有し、少なくとも90重量%が0.1〜15μmの粒径を有するものであり、具体的には、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、炭化珪素等である。
【0004】
このような絶縁コイルは、例えば、以下に示す方法で製造されている。第1の方法としては、コイル導体に巻回する前の、ガラス繊維織布に固着されたマイカフレーク層からなる絶縁テープに液状樹脂を含浸して、この樹脂が含浸された絶縁テープの表面に、無機粒子をコーティングし、この無機粒子がコーティングされた絶縁テープをコイル導体に巻回する方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
さらに、第2の方法としては、コイル導体に巻回する前の、ガラス繊維織布に固着されたマイカフレーク層からなる絶縁テープに、高熱伝導率な無機粒子を含有する液状樹脂をコーティングし、無機粒子含有樹脂がコーティングされた絶縁テープをコイル導体に巻回する方法である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−110929号公報(特に、第4頁〜第6頁)
【特許文献2】特開平11−206056号公報(特に、第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術の絶縁コイルにおいて高い熱伝導性を達成しようとすると、絶縁テープを巻回してなる絶縁層におけるマイカフレーク層間に、熱伝導率が小さいガラス繊維及び樹脂だけではなく、無機粒子を多量に存在させる必要がある。しかしながら、そのような絶縁テープでは、無機粒子を含む層が厚くなり、結果として絶縁層そのものが厚くなる。
【0008】
絶縁コイルの耐電圧特性は、一般に、絶縁層中のマイカフレーク層の層数に依存し、この層数が多いほど耐電圧特性が優れる。しかし、絶縁コイルは、回転電機の固定子のスロット溝に挿入されるため、絶縁コイルの絶縁層の厚さは制限されており、上記従来技術では、無機粒子を含む層が厚くなり、絶縁層中のマイカフレーク層の層数を減らさざるを得ず、耐電圧特性が低下したり、また、絶縁テープの柔軟性が不十分となり、絶縁テープをコイル導体に沿って巻回することが困難となるという問題があった。
【0009】
従って、本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、絶縁層の厚さを必要以上に厚くすることなく耐電圧特性を向上させ且つ放熱性にも優れた絶縁コイルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コイル導体と、マイカ層シートを補強材にバインダ樹脂で接着させた絶縁テープを該コイル導体に巻回し熱硬化性樹脂を含浸して硬化した絶縁層とを備える絶縁コイルであって、該補強材が、15μm以上70μm以下の平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤を、該絶縁層中の樹脂成分に対して8重量%以上70重量%以下の量で含有することを特徴とする絶縁コイルである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、絶縁層の厚さを必要以上に厚くすることなく耐電圧特性を向上させることができ且つ放熱性にも優れる絶縁コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1による絶縁コイルの模式断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1による絶縁コイルの作製に用いる絶縁テープの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による絶縁コイルの模式断面図である。
図1において、実施の形態1による絶縁コイルは、コイル導体1と、マイカ層シート2を補強材3にバインダ樹脂で接着させた絶縁テープ4を、絶縁コイルの最外層が絶縁テープ4の補強材3となるようにコイル導体1に巻回し熱硬化性樹脂を含浸して硬化した絶縁層5とを備える。図2は、この絶縁テープ4の部分拡大模式断面図である。図2において、補強材3は、マイカ層シート2を支持し補強するものである。補強材3は、補強基材6と、補強基材6の隙間に充填された凝集無機充填剤7及び樹脂8とから構成されている。
【0014】
マイカ層シート2は、集成マイカ箔やフレークマイカ箔等のマイカ箔と、このマイカ箔を結合させる樹脂とからなる。この樹脂には、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等が用いられる。
【0015】
補強基材6としては、凝集無機充填剤7を充填することができる隙間を有するものであればよく、ガラスクロス、ポリイミドフィルム(例えばカプトン(登録商標)フィルム)、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。これらの中でも、ガラスクロスは、絶縁テープ4の引張強さを高め、絶縁テープ4をコイル導体1に巻回し易くし、また、絶縁層5の熱伝導率を大きくできるという点で好ましい。また、補強基材6の好ましい目開き率は、80%以上98%以下である。また、補強基材6の厚さは、通常、20μm以上50μm以下の範囲であるが、中でも、熱伝導率及び耐電圧特性という点で、凝集無機充填剤7の平均二次粒子径の0.6倍以上2倍以下とすることが好ましい。
【0016】
補強基材6の隙間に充填される樹脂8としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0017】
凝集無機充填剤7は、マイカより熱伝導率が大きい無機粒子の凝集体、具体的には5W/m・K以上の熱伝導率を有する無機粒子の凝集体である。このような凝集無機充填剤7の具体例としては、窒化ホウ素粒子凝集体、窒化アルミニウム粒子凝集体、窒化珪素粒子凝集体、酸化アルミニウム粒子凝集体、酸化マグネシウム粒子凝集体、酸化ベリリウム粒子凝集体、炭化珪素粒子凝集体が挙げられる。これらの凝集無機充填剤7は、1種類を用いてもよいし、複数種のものを混合して用いてもよい。また、凝集無機充填剤7は、同種の無機粒子を2個以上凝集固着させたものでもよいし、異種の無機粒子を2個以上凝集固着させたものでもよい。
【0018】
凝集無機充填剤7の平均二次粒子径(凝集体の平均粒子径)は、15μm以上70μm以下であることが必要であり、好ましくは17μm以上60μm以下である。凝集無機充填剤7の平均二次粒子径が15μm未満である場合、所望の熱伝導率を得ることができず、また補強基材6の隙間から流出してしまう。一方、凝集無機充填剤7の平均二次粒子径が70μm超である場合、絶縁層5の厚みが必要以上に厚くなる上に、作製された絶縁テープ4を巻き取る際あるいはコイル導体1に絶縁テープ4を巻回する際にマイカ層を破損させてしまう。なお、凝集無機充填剤7を解凝集させたときの平均粒子径(平均一次粒子径)は、50μm以下であることが好ましい。
このような特定の平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤7を用いることにより、樹脂8と凝集無機充填剤7の表面との接触面積が大きくなり、特に凝集無機充填剤7の内部に樹脂8が入り込み、マイカ層シート2と補強材3との接着強度が向上する。また、凝集無機充填剤7は、コイル導体1に絶縁テープ4を巻回する際に適度に解凝集されるので、補強材3から脱落することなく、補強材3内で分散される。そして、凝集無機充填剤7は、その後の熱硬化性樹脂の含浸工程、コイル加圧工程及び硬化工程でも補強材3から流出することなく、補強材3中に存在し続ける。
【0019】
凝集無機充填剤7の充填量は、絶縁層5中の樹脂成分(マイカ層シート2の作製に使用した樹脂、マイカ層シート2を補強材3に接着するのに使用した樹脂及び含浸された熱硬化性樹脂)に対して、8重量%以上70重量%以下であることが必要であり、好ましくは10重量%以上60重量%以下である。凝集無機充填剤7の充填量が8重量%未満である場合、所望の熱伝導率を得ることができない上に、絶縁層5における樹脂成分比率が多くなって層厚が厚くなり、結果的に所望の熱伝導率を得ることができない。一方、凝集無機充填剤7の充填量が70重量%超である場合、絶縁層5の厚みが必要以上に厚くなる上に、絶縁テープ4が硬くなるので、作製した絶縁テープ4を巻き取る際にマイカ層を破損させてしまったり、コイル導体1に絶縁テープ4を巻回することが困難となり、また、凝集無機充填剤7が補強材3から脱落してしまう。
【0020】
また、補強材3には、上記した凝集無機充填剤7とともに、10μm以下の平均一次粒子径を有する補助無機充填剤を充填してもよい。平均一次粒子径が10μm超の補助無機充填剤を併用すると、絶縁層5の厚みが必要以上に厚くなってしまう恐れがあるので好ましくない。また、絶縁層5に必要な樹脂8の量が増え、結果的に熱伝導率が低くなる恐れもある。更に、作製された絶縁テープ4を巻き取る際あるいはコイル導体1に絶縁テープ4を巻回する際にマイカ層を破損させてしまう恐れもある。このような平均一次粒子径を有する補助無機充填剤は、15μm以上70μm以下の平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤7の存在により、補強材3から流出することなく、補強材3中に存在することとなる。また、補助無機充填剤は、凝集無機充填剤7の間隙にも存在することとなるので、熱伝導率の向上に寄与する。
【0021】
10μm以下の平均一次粒子径を有する補助無機充填剤を併用する場合、補強材3に含有される凝集無機充填剤7との総量が、絶縁層5中の樹脂成分に対して20重量%以上70重量%以下となるようにすることが望ましい。
【0022】
次に、本実施の形態による絶縁コイルの製造方法について説明する。
本実施の形態絶縁コイルは、マイカ層シート2を補強基材6にバインダ樹脂で接着させた接着シート体の補強基材側に、凝集無機充填剤7と樹脂8とを含有するスラリーを塗布して補強基材6の隙間に凝集無機充填剤7と樹脂8とを充填し、絶縁テープ4を得、この絶縁テープ4を絶縁テープ4のマイカ層シート側がコイル導体側となるようにコイル導体1の外周部に半重ね巻で巻回し、次いで、巻回された絶縁テープ4(主絶縁層と呼ぶことがある)に液状熱硬化性樹脂を含浸し、所定の型で押さえ、硬化炉にて加熱し、熱硬化性液状樹脂を硬化させて絶縁層5を形成することにより製造することができる。液状熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、マレイミド樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0023】
上記スラリーの塗布方法は、特に限定されるものではなく、スプレー塗装、ロール塗装等が挙げられる。上記スラリーには、硬化剤、硬化促進剤等を添加してもよい。しかし、主剤と硬化剤と硬化促進剤とを混合すると補強基材6内で硬化反応が進行して絶縁テープ4が硬くなり、作製した絶縁テープ4を巻き取ることが困難となったり、あるいはコイル導体1に巻回することが困難となる。また、スラリーの塗工性を向上させるために有機溶剤を用いることもできる。この場合、スラリー塗布後に、有機溶剤を揮発させることが望ましい。
【0024】
凝集無機充填剤7と上述した10μm以下の平均一次粒子径を有する補助無機充填剤とを併用する場合、凝集無機充填剤7と樹脂8と10μm以下の平均一次粒子径を有する補助無機充填剤とを含有するスラリーを補強基材6に塗布して補強材3内に充填してもよいし、凝集無機充填剤7と樹脂8とを含有するスラリー塗布後に、10μm以下の平均一次粒子径を有する補助無機充填剤と樹脂8とを含有するスラリーを更に塗布して補強材3内に充填してもよい。
【0025】
本実施の形態による絶縁コイルは、マイカ層シートより熱伝導率が大きい補強材(高熱伝導層と呼ぶことがある)が絶縁層に設けられているので、熱伝導性が優れている。また、絶縁コイル作製時に使用する絶縁テープは柔軟性が高く無機充填剤を含む層の厚さを薄くできるので、絶縁コイルの絶縁層の厚さを必要以上に厚くすることなく、優れた耐電圧特性を確保することができる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の絶縁コイルについて、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。
〔実施例1〕
集成マイカ粉を水中分散し、その分散液を抄紙機にて抄造して集成マイカ箔を作製した。この集成マイカ箔に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂{商品名:エピコート(登録商標)834(ジャパンエポキシレジン(株))}100重量部とナフテン酸亜鉛10重量部とメチルエチルケトン400重量部とを混合した樹脂組成物を、ロールコータ法により塗布するとともに、集成マイカ箔を仮の支持材である幅1000mm、厚さ0.02mmで所定の長さのポリエステルフィルムに貼合わせ、マイカ層の仕上がり厚さが0.1mmのマイカ層シートを作製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂{商品名:エピコート(登録商標)834(ジャパンエポキシレジン(株))}100重量部とナフテン酸亜鉛10重量部とメチルエチルケトン1000重量部とを混合した樹脂組成物を、補強基材である幅1000mm、厚さ50μm、目開き率97%で所定の長さのガラスクロスに、ロールコータ法により塗布した後、有機溶剤を揮発させ、樹脂付着ガラスクロスシートを作製した。
次に、上記マイカ層シートのマイカ層面に、上記樹脂付着ガラスクロスシートを貼合わせた。このようにして貼合わされたものを、60℃の熱ロールで加圧し、マイカ層シートに樹脂付着ガラスクロスシートを圧着させた。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂{商品名:エピコート(登録商標)834(ジャパンエポキシレジン(株))}とナフテン酸亜鉛とを混合し、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)を添加し、メチルエチルケトンを用いて希釈し、凝集無機充填剤のスラリーを調製した。なお、表1における無機充填剤の充填量は、絶縁層中の樹脂成分に対する割合である。
このスラリーをスプレー法により、上記マイカ層シートと樹脂付着ガラスクロスシートとの接合体における樹脂付着ガラスクロスシート面に塗布した後、有機溶剤を揮発させ、60℃の熱ロールで加圧し、ポリエステルフィルムとマイカ層シートと補強材とからなる絶縁シートを得た。この絶縁シートを幅30mmに切断し、絶縁テープとした。
次に、ポリエステルフィルムを取り除いた絶縁テープを、マイカ層シート面をテストバー(コイル導体)側にして、半重ね巻きで、50mm×12mm×1140mmのテストバーに巻回し、主絶縁層を形成した。この際、マイカ層の破損は起こらず、巻回性は良好であった。さらに、この絶縁テープからなる主絶縁層に、真空加圧含浸方式により、ビスフェノールA型エポキシ樹脂{商品名:エピコート(登録商標)828(ジャパンエポキシレジン(株))}とメチルテトラヒドロ無水フタル酸硬化剤{商品名:HN−2200(日立化成工業(株))}とからなる熱硬化性樹脂組成物を含浸させた。この主絶縁層を、4.26mmの絶縁厚さになるように治具を用いて型締めし、乾燥炉で加熱して、樹脂を硬化することによりテスト用絶縁コイルを作製した。
【0027】
次に、得られたテスト用絶縁コイルの絶縁層の熱伝導率と耐電圧特性とを評価した。
絶縁層の熱伝導率はテスト用絶縁コイルの絶縁層から切り出した試験片について、熱伝導率測定装置{型式:TXP−03(三鬼科学システム(株))}を用いて測定した。
耐電圧特性は、テスト用絶縁コイルの絶縁層から切り出した試験片について、25℃において、ステップバイステップ法により電圧を印加し、絶縁破壊がおこる電圧から求めた。結果を表2に示す。
【0028】
〔実施例2及び3〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)をスラリーに配合する以外は実施例1と同様にして、テスト用絶縁コイルを作製した。いずれの実施例においても、マイカ層の破損は起こらず、巻回性は良好であった。得られたテスト用絶縁コイルにおける絶縁層の熱伝導率と耐電圧特性とを表2に示す。
【0029】
〔実施例4〜9〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)及び平均一次粒子径を有する補助無機充填剤(窒化ホウ素粒子)をスラリーに配合する以外は実施例1と同様にして、テスト用絶縁コイルを作製した。いずれの実施例においても、マイカ層の破損は起こらず、巻回性は良好であった。得られたテスト用絶縁コイルにおける絶縁層の熱伝導率と耐電圧特性とを表2に示す。
【0030】
〔実施例10〜14〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)をスラリーに配合して凝集無機充填剤のスラリーを塗布した後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂{商品名:エピコート(登録商標)834(ジャパンエポキシレジン(株))}とナフテン酸亜鉛とを混合し、表1に示す平均一次粒子径を有する補助無機充填剤(窒化ホウ素粒子)を添加し、メチルエチルケトンを用いて希釈して得られた補助無機充填剤のスラリーを塗布する以外は実施例1と同様にして、テスト用絶縁コイルを作製した。いずれの実施例においても、マイカ層の破損は起こらず、巻回性は良好であった。得られたテスト用絶縁コイルにおける絶縁層の熱伝導率と耐電圧特性とを表2に示す。
【0031】
〔比較例1〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤をスラリーに配合する以外は実施例1と同様にして、テスト用絶縁コイルを作製した。テスト用絶縁コイルの作製時にマイカ層の破損は起こらず、巻回性は良好であった。得られたテスト用絶縁コイルにおける絶縁層の熱伝導率と耐電圧特性とを表2に示す。
【0032】
〔比較例2〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)及び平均一次粒子径を有する補助無機充填剤(窒化ホウ素粒子)をスラリーに配合する以外は実施例1と同様にして、テスト用絶縁コイルを作製した。テスト用絶縁コイルの作製時にマイカ層の破損は起こらず、巻回性は良好であった。得られたテスト用絶縁コイルにおける絶縁層の熱伝導率と耐電圧特性とを表2に示す。
【0033】
〔比較例3〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)をスラリーに配合して凝集無機充填剤のスラリーを塗布した後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂{商品名:エピコート(登録商標)834(ジャパンエポキシレジン(株))}とナフテン酸亜鉛とを混合し、表1に示す平均一次粒子径を有する補助無機充填剤(窒化ホウ素粒子)を添加し、メチルエチルケトンを用いて希釈して得られた補助無機充填剤のスラリーを塗布する以外は実施例1と同様にして、絶縁テープを作製した。この絶縁テープを用いてテスト用絶縁コイルを作製しようとしたところ、巻回する際にマイカ層の破損が起こった。
【0034】
〔比較例4〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)をスラリーに配合して凝集無機充填剤のスラリーを塗布した後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂{商品名:エピコート(登録商標)834(ジャパンエポキシレジン(株))}とナフテン酸亜鉛とを混合し、表1に示す平均一次粒子径を有する補助無機充填剤(窒化ホウ素粒子)を添加し、メチルエチルケトンを用いて希釈して得られた補助無機充填剤のスラリーを塗布する以外は実施例1と同様にして、テスト用絶縁コイルを作製した。テスト用絶縁コイルの作製時にマイカ層の破損は起こらず、巻回性は良好であった。得られたテスト用絶縁コイルにおける絶縁層の熱伝導率と耐電圧特性とを表2に示す。
【0035】
〔比較例5〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)をスラリーに配合する以外は実施例1と同様にして、テスト用絶縁コイルを作製した。テスト用絶縁コイルの作製時にマイカ層の破損は起こらず、巻回性は良好であった。得られたテスト用絶縁コイルにおける絶縁層の熱伝導率と耐電圧特性とを表2に示す。
【0036】
〔比較例6〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)をスラリーに配合する以外は実施例1と同様にして、絶縁テープを作製した。この絶縁テープを用いてテスト用絶縁コイルを作製しようとしたところ、巻回する際にマイカ層の破損が起こった。
【0037】
〔比較例7〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)をスラリーに配合する以外は実施例1と同様にして、テスト用絶縁コイルを作製した。テスト用絶縁コイルの作製時にマイカ層の破損は起こらず、巻回性は良好であった。得られたテスト用絶縁コイルにおける絶縁層の熱伝導率と耐電圧特性とを表2に示す。
【0038】
〔比較例8〕
表1に示す補強基材を用い、表1に示す平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤(窒化ホウ素粒子凝集体)をスラリーに配合する以外は実施例1と同様にして、絶縁テープを作製した。この絶縁テープを用いてテスト用絶縁コイルを作製しようとしたところ、巻回する際にマイカ層の破損が起こった。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表2の結果から分かるように、実施例1〜14の絶縁コイルは、優れた熱伝導性と耐電圧特性とを有している。これに対し、比較例1、2、4、5及び7の絶縁コイルはいずれも、熱伝導率が低かった。また、比較例3、6及び8では絶縁テープを巻回する際にマイカ層の破損が起こった。
【符号の説明】
【0042】
1 コイル導体、2 マイカ層シート、3 補強材、4 絶縁テープ、5 絶縁層、6 補強基材、7 凝集無機充填剤、8 樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル導体と、マイカ層シートを補強材にバインダ樹脂で接着させた絶縁テープを該コイル導体に巻回し熱硬化性樹脂を含浸して硬化した絶縁層とを備える絶縁コイルであって、該補強材が、15μm以上70μm以下の平均二次粒子径を有する凝集無機充填剤を、該絶縁層中の樹脂成分に対して8重量%以上70重量%以下の量で含有することを特徴とする絶縁コイル。
【請求項2】
前記補強材が、10μm以下の平均一次粒子径を有する補助無機充填剤を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の絶縁コイル。
【請求項3】
前記補強材に含有される前記凝集無機充填剤と前記補助無機充填剤との総量が、前記絶縁層中の樹脂成分に対して20重量%以上70重量%以下であることを特徴とする請求項2に記載の絶縁コイル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate