説明

絶縁体材料およびそれを製造する方法

絶縁材料中に埋設された真空充填中空アルベオールでは、減圧された孔の高ブレークダウン電圧を使用する軽量絶縁材料、すなわちパッシェンの法則の最小値未満の真空のアルベオールが得られる。絶縁材料中に埋設された加圧中空アルベオールでは、加圧された孔の高ブレークダウン電圧を使用する軽量絶縁材料、すなわちパッシェンの法則の最小値よりも大きな圧力のアルベオールが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁体材料、絶縁体装置、絶縁体材料および絶縁体装置を製造する方法に関し、さらに絶縁体材料に埋設されるアルベオール(泡室)、特に絶縁体材料および絶縁体装置、それを製造する方法に関し、これにより、改良された軽量絶縁体材料および絶縁体装置が提供される。
【背景技術】
【0002】
特定の用途では、軽量の絶縁体材料が必要であり、特に、高電圧部が高速で回転することにより、部材に半径方向の高加速度が生じるような、例えばコンピュータ断層撮像装置のような大きな加速度に晒される場合には、軽量の絶縁体材料が必要となる。従って、移動質量を低減させ、大きな半径方向の加速度による力を弱めるためには、軽量材料が必要となる。欧州特許第EP1176856号において、例えばエポキシ樹脂をベースとする固体高電圧絶縁材料の場合、フィラーの一種として、軽量、中空のミクロ球が使用されることが知られている。最適な高電圧構成には、これらの中空ミクロ球の設計パラメータをバランスさせることが必要となる。ミクロ球を例えばガラスのような所与の材料によって最軽量化する場合、壁厚の薄い比較的大きな中空ミクロ球を使用して、これらのミクロ球を、フィラーとしてのエポキシ樹脂と、硬化剤および結合剤のような他の添加剤とに添加することにより、最軽量の全体重量を得ることが有益である。
【0003】
しかしながら、ミクロ球の直径は、誘電強度に影響を及ぼし、直径が大きくなる程、部分放電(PD)のため、電気的強度は低下する。これは、中空ミクロ球を充填する気体形態における気体空間内の電場の増大により、固体材料の内側を取り囲む気体内で生じる。これらの部分放電は、ある点火電圧から始まり、これは、中空ミクロ球内の加速ギャップでの気体圧力に依存し、イオン化過程が開始されると、ミクロ球の内表面に衝突して、電子雪崩につながる。この過程は、部分放電プロセス理論として、良く知られている。ある時間にわたるあるエネルギーから、部分放電によって生じるこの電気エロージョン過程は、最初に、壁厚に依存して、例えば中空ミクロ球のガラス壁を崩壊させ、次に、周囲のエポキシ樹脂マトリクスが崩壊し、絶縁材料の全崩壊につながる。また、これらの影響は、他の固体絶縁材料でも知られており、例えば、高分子絶縁材料を有する高電圧電源ケーブルでも生じる。
【0004】
これらの部分放電を防止するため、直径、および中空ミクロ球内の加速ギャップを低減して、部分放電が生じなくなるようにする必要がある。通常、中空ミクロ球は、製品過程に応じて、例えばN2、CO2、SO2等の気体で充填されるため、部分放電の点火電圧の計算に、いわゆるパッシェンの法則が利用できる。点火電圧は、小さな加速ギャップおよび低圧の場合、気体圧力pと加速ギャップ距離dの積に反比例する。ここで加速ギャップは、中空球の直径に対応する。
【0005】
これは、圧力または直径の一方をゼロにしたとき、部分放電を抑制する最大の点火電圧が得られることを意味する。点火電圧は、公称電圧よりも高くする必要があり、公称電圧は、内部電圧分配器によって、特定のミクロ球に分割された全消費から得られる。これは、部分放電ブレークダウンの理論に対応する。
【0006】
直径を抑制することは、気体充填体積と壁の厚さの関係を悪化させることを意味し、これにより、全ハイブリッド材料の重量に近づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第EP1176856号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のことから、本発明の課題は、重量および誘電強度に関して、十分な特性を有する高電圧絶縁材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。有意な実施例は、従属請求項に含まれている。
【0010】
本発明の一例では、孔を取り囲む壁を有するアルベオールが提供され、アルベオールの壁は、気体分子は当該アルベオールの前記壁を通過し、高分子分子は、当該アルベオールの外側から内側に侵入することが遮蔽される寸法のポアを有する。
【0011】
多孔質壁構造を有するアルベオールを使用すること、N2、CO2、SO2のような気体分子が通過し得る直径のポアを有すること、および通常の熱硬化性材料、例えばエポキシ樹脂とその硬化剤成分の高分子分子鎖が通過できないよう、ポアを十分に小さくすることにより、これらのアルベオールを、絶縁材料内のフィラーとして使用することができる。アルベオールを減圧し、アルベオールの孔からアルベオール内の気体を排出させることも可能である。同時に、高分子分子の侵入を回避して、真空を維持することもできる。
【0012】
本発明の一実施例では、アルベオールは、気体分子がアルベオールの内部から外部に通過し得る寸法のポアを有し、気体分子は、N2、CO2、およびSO2からなる群で構成される。
【0013】
気体分子は、アルベオールの壁内のポアの直径を定める目的のために示されており、特に、前述の気体は、中空ガラス球のようなアルベオールの製造時に生じるため示されているに過ぎないことに留意する必要がある。また、アルベオールは、他の気体分子を通過し得るポアを有しても良い。特にこれらの気体分子は、中空アルベオールの製造時に生じるものであっても良い。アルベオールは、複数のサブキャビティを有する開放多孔質泡の構造と見なされ、ポアの寸法は、各気体分子の有効断面積を考慮した寸法であることに留意する必要がある。減圧過程は、膜を介した拡散と類似するものと見なされ得る。ポアの断面積は、気体分子の種類および温度に依存し、すなわち、気体分子の形状寸法は、例えば、1nm(ナノメートル)よりも小さくても良く(例えばN2分子の直径は、約0.31nmであり、O2分子の直径は、約0.36nmである)、分子の有効断面積は、より大きくても良い。すなわち、ポアの形状寸法は、各分子の幾何直径よりも大きく設計され、ポアにおいて、気体分子が通過することが可能になる。当業者によるポア寸法の適正な設計は、実際の仕様を考慮して行われる。
【0014】
本発明の一実施例では、ポアは、高分子分子がアルベオールの外側から内側に入ることを遮蔽する寸法を有し、高分子分子は、エポキシ樹脂および/またはポリエステル樹脂と対応する硬化剤成分、シリコーンゴム、熱硬化性材料、熱可塑性材料、ならびにシリコーンオイルおよび/または天然油を含む材料の群から選定される。
【0015】
また、天然油のような高分子分子の不規則鎖は、本発明に関する高分子分子と見なされることに留意する必要がある。また、数モノマーセルのみからなる極めて短い高分子分子も考慮される。
【0016】
本発明の一実施例では、アルベオールの壁は、ガラス、セラミック、フェノール樹脂および/またはアクリロニトリル共重合体を含む材料群から選定された材料で構成される。
【0017】
これらの材料により、アルベオール用の多孔質壁構造の設計に良好な特性が提供され、ポアに気体分子を通過させることが可能となる。
【0018】
本発明の一実施例では、アルベオールは、実質的に球形または楕円形の形状を有する。球および楕円形により、高フィールド場適用形状において、良好な特性が提供される。また、アルベオール内の孔は、複数のサブキャビティを有する開放ポア構造であっても良いことに留意する必要がある。しかしながら、他のいかなる外形状のアルベオールを使用しても良い。
【0019】
本発明の一実施例では、アルベオールは、5μm(ミクロン)から500μmの直径を有し、これは、10μmから200μmであることが好ましく、80μmから160μmであることがより好ましい。
【0020】
例えば球または楕円の、そのような直径を有するアルベオールでは、アルベオールの孔での電気的ブレークダウンを抑制することに適した真空に適用することができるとともに、フィラーとしてアルベオールを含む絶縁体の全重量を抑制することができる。アルベオールの壁は、約0.5μmから5μmの厚さを有し、これは、好ましくは1μmから2μmである。
【0021】
本発明の一実施例では、マトリクス材料と複数のアルベオールとを有する絶縁体材料が提供され、このアルベオールは、パッシェンの法則の最小値に対応する圧力よりも低い圧力に減圧される。
【0022】
本発明の一実施例では、圧力は、パッシェンの法則の最小値のブレークダウン電圧の2倍のブレークダウン電圧を表す、パッシェンの法則における圧力に相当する圧力以下である。
【0023】
実際、当業者は、所望のブレークダウン電圧に対する真空度を適正に選定することができる。
【0024】
パッシェンの法則は、ブレークダウン電圧と、圧力とギャップの直径の積との関係を示したものである。パッシェンの法則によれば、ブレークダウン電圧は、圧力と直径の積が極めて低くなった場合、あるいは直径と圧力の積が極めて大きくなった場合、上昇する。その間の場合、ブレークダウン電圧は、最小値を示す。従って、一定の直径のギャップを提供する場合、ブレークダウン電圧を増加させるためには、圧力を極めて大きくまたは極めて小さくする必要がある。ブレークダウン電圧を高めるため、しばしば、パッシェンの法則の最小値に対応する圧力よりも大きい圧力が使用される。しかしながら、本発明では、アルベオールが減圧され、この圧力は、パッシェンの法則の最小値に相当する圧力未満の圧力に対応する、パッシェンの法則曲線の範囲にされる。従って、アルベオールの充填に使用される、温室効果に影響を及ぼす六フッ化硫黄SF6のような気体は不要となり、さらに、適当な圧力の真空の適用により、減圧されたアルベオールで得られるものと同様の効果を得ることができる。
【0025】
一実施例では、絶縁体材料に使用されるアルベオールは、孔を覆う壁を有するアルベオールであり、アルベオールの壁は、前述のように、気体分子はアルベオールの内側から外側に通過し得るが、高分子分子はアルベオールの内側から外側への移動が遮蔽される寸法のポアを有する。
【0026】
従って、アルベオールは、マトリクス材料と混合され、その後、減圧されても良い。アルベオールの壁により、気体は逸散し、大きな高分子分子は、アルベオールの外側から内側への侵入が遮蔽されるためである。マトリクス材料は、適当な粘性を有し、発生気体泡は、マトリクス材料から逸散することができる。
【0027】
一実施例では、マトリクス材料は、エポキシ樹脂および/またはポリエステル樹脂と対応する硬化剤、シリコーンゴム、熱硬化性材料、熱可塑性材料、シリコーン油、および/または天然油を有する材料群から選定された材料である。
【0028】
これらの材料は、高電場強度に関して良好な特性を有し、フィラー材料としてのアルベオールを埋設するマトリクス材料として使用され得る。これらの材料は、少なくとも一時的には流体であるため、これらの材料により、真空印加の下、アルベオールに含まれる気体は、逸散することができ、減圧されたアルベオールが提供される。しかしながら、他のいかなる高電圧絶縁材料を、特にSF6のような絶縁性気体中において使用しても良い。
【0029】
一実施例では、アルベオールの圧力は、5×10exp(-1)mbarから5×10exp(-2)mbarの間である。
【0030】
適当な寸法のアルベオールにより、これらの圧力によって、十分な真空が提供され、ブレークダウン電圧は、パッシェンの法則およびパッシェン曲線のそれぞれに対するものよりも高く維持される。
【0031】
一実施例では、圧力は、マトリクス材料の蒸気圧よりも大きい。
【0032】
従って、マトリクス材料の液体溶媒成分において、マトリクス材料の劣化につながる気化が抑制される。
【0033】
本発明の一実施例では、圧力は、マトリクス材料の成分が相互に分解する圧力よりも高い。
【0034】
従って、マトリクス材料は、適正な状態に維持され、マトリクス材料またはその成分の分解により、構造が崩壊することはない。
【0035】
本発明の一実施例では、圧力は、マトリクス材料のブレークダウン電圧に対応するブレークダウン電圧を表す、パッシェンの法則の圧力に対応する圧力以下である。
【0036】
従って、絶縁体材料のブレークダウン強度は、マトリクス材料または減圧アルベオールの配置に関して、一定に維持される。特に、そのような真空では、部分放電のリスクがない、絶縁体材料の最大誘電強度が得られる。
【0037】
本発明の一実施例では、絶縁材料は、流体である。従って、作動の間、熱伝導のため、または絶縁材料のフィルタ処理のため、絶縁材料を移動させることが可能となる。
【0038】
本発明の一実施例では、絶縁材料は、固体である。
【0039】
従って、不純物材料の蓄積による繊維ブレークダウンが回避される。ゴム弾性材料は、固体材料と見なされることに留意する必要がある。
【0040】
本発明の一実施例では、アルベオールと絶縁材料の間の体積比は、40%から74%の間であり、特に、60%から68%の間である。
【0041】
体積比が大きくなると、絶縁材料が軽くなる。等寸法の球の六角最大密度は、約74%であるが、異なる寸法のアルベオールを使用した場合、体積比は、74%よりも大きくなり得る。
【0042】
本発明の一実施例では、外形状によって表される所定の形態を有する絶縁体装置が提供され、この外形状は、マトリクス材料と複数のアルベオールとを有する絶縁体材料で充填され、このアルベオールは、パッシェンの法則の最小値に対応する圧力未満の圧力に減圧される。
【0043】
従って、前述のような、新たな絶縁体材料で構成された、特定の形態を有する絶縁体装置を提供することが可能となる。
【0044】
本発明の一実施例では、絶縁体材料は、固体であり、その外形は、固体絶縁体材料の表面である。
【0045】
これは、絶縁体装置が、成形体、射出成形体、またはバルク材料からの機械加工体として製造されても良いことを意味する。
【0046】
一実施例では、外形は、孔を形成する外側シェルによって提供され、この孔は、流体または気体の絶縁体材料で充填される。
【0047】
従って、所定の形状を有する絶縁体装置に、流体絶縁性材料が提供され、例えば、熱輸送のための流体の移動が可能となる。またマトリクス材料は、例えば絶縁ガスSF6のような気体であっても良く、これにより、軽量化絶縁配置が可能となる。アルベオールの体積比を高く設定することにより、流体または気体が対流によって移動することを遮断するアルベオールの高充填密度のため、マトリクス材料が流体であるか気体であるかによらず、熱対流が回避される。
【0048】
本発明の一実施例では、絶縁体材料は、固化するように適合される。
【0049】
従って、絶縁体材料は、製造の間、液体または流体で適用されても良いが、所定の時間後に固化され、固体絶縁体装置が得られる。固体または固化した絶縁体は、絶縁体として機能する他、機械的支持としても機能する。
【0050】
本発明の一実施例では、外側シェルは、外気雰囲気に対して気密材料で構成される。
【0051】
従って、絶縁材料から外部大気環境を遠ざけることが可能となり、アルベオール内に真空が維持され、特にマトリクス材料が、数年または数10年のような長期にわたって、真空を維持できない場合も、アルベオール内に真空が維持される。外気が絶縁材料の構造内に侵入することを回避することができる。
【0052】
一実施例では、絶縁体装置は、コンピュータ断層撮像装置の回転ガントリーの使用に適合される。
【0053】
このため、絶縁体装置は、コンピュータ断層撮像装置の回転ガントリーの作動中、例えば、大きな遠心力の下で移動し得る可動部分を有さないように設計されても良い。回転ガントリーの加速の影響を受ける部分は、通常の重力の数10倍の範囲であっても良い。流体または気体マトリクス材料中のアルベオールの十分に大きな充填密度により、遠心力または重力の下、アルベオールが移動することを抑制することができる。
【0054】
本発明の一実施例では、本発明による絶縁体装置を有するコンピュータ断層撮像装置が提供される。
【0055】
本発明の一実施例では、絶縁体材料を製造する方法が提供され、この方法は、マトリクス材料と複数のアルベオールとを混合するステップを有し、アルベオールは、パッシェンの法則の最小値に対応する圧力未満の圧力に減圧される。
【0056】
従って、絶縁材料には、重量および誘電強度に関して、得良好な特性が提供される。
【0057】
本発明の一実施例では、アルベオールは、孔を取り囲む壁を有するアルベオールであり、アルベオールの壁は、気体分子がアルベオールの内側から外側に通過し、高分子分子がアルベオールの外側から内側に侵入することを遮蔽する寸法のポアを有する。
【0058】
本発明の一実施例では、アルベオールは、マトリクス材料との混合前に減圧化される。
【0059】
これは、例えば、マトリクス材料の粘性が低い場合に有益であり、アルベオールをマトリクス材料中に埋設させた後、減圧処理を行う必要がなくなる。
【0060】
本発明の一実施例では、アルベオールは、マトリクス材料と混合されてから、減圧処理される。
【0061】
従って、マトリクス材料は、マトリクス材料として使用される他、アルベオールの減圧処理後に、アルベオールのポアをシールするシール材料としても使用される。マトリクス材料の粘性により、気体泡が移動することができる場合、アルベオール内の気体は、逸散し、マトリクス材料で生じても良い。
【0062】
本発明の一実施例では、エポキシ樹脂および対応する硬化剤成分が混合される前に、第1の量のアルベオールがエポキシ樹脂と混合され、第2の量のアルベオールが、対応する硬化剤成分と混合される。
【0063】
従って、製造処理の間の時間が節約され、特に、エポキシ樹脂の設置および硬化に必要な時間が抑制される。従って、アルベオールをエポキシ樹脂および硬化剤成分と混合するために必要な時間のそれぞれを、エポキシ樹脂の混合段階および設置段階の間に提供する必要がなくなる。
【0064】
本発明の一実施例では、エポキシ樹脂の硬化は、減圧アルベオールの内部圧力に対応する圧力で行われる。
【0065】
従って、アルベオールのポアが大きくても、すなわち高分子分子鎖がアルベオールの孔に侵入し得る場合でも、設置過程の間、外側の真空圧力によって、マトリクス材料がアルベオールのポア開口から離され、エポキシ樹脂の設置後に、高分子分子鎖がアルベオールの孔に侵入するほど柔軟になることはない。
【0066】
本発明の一実施例では、圧力は、マトリクス材料の成分が相互に分解する圧力よりも高い。
【0067】
従って、マトリクス材料の分解および劣化が回避され、マトリクス材料の誘電効果に対する十分な信頼性が維持される。
【0068】
本発明の一実施例では、絶縁材料は、減圧アルベオールの内部圧力に対応する圧力環境下で、射出成形されても良い。
【0069】
従って、射出成型法により、絶縁装置を製造することが可能となり、射出成形過程の完了後、樹脂が設置されるまで、高分子分子を含まないアルベオールの孔が維持される。
【0070】
また絶縁材料および絶縁装置は、断熱体に使用しても良いことに留意する必要がある。
【0071】
また、前述の特徴は、本発明の範囲から逸脱しないで、組み合わせても良いことに留意する必要がある。
【0072】
本発明の主旨は、パッシェンの法則による極めて低い圧力において高ブレークダウン電圧を利用することにより、比較的簡単な方法で、重量、誘電強度、および機械的強度に関して最適化された高電圧絶縁性材料を提供することである。
【0073】
本発明のこれらのおよび他の態様は、以降に示された実施例を参照することにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】パッシェンの法則によるパッシェン曲線を示した図である。
【図2】2つの異なる寸法の分子とアルベオールを示した図である。
【図3】マトリクス材料に埋設されたアルベオールを有する絶縁材料の構造を示した図である。
【図4】マトリクス材料中のアルベオールの形状および対応する容量を示した図である。
【図5】外形状を有する絶縁装置を示した図である。
【図6】外形状として外側シェルを有する絶縁体装置を示した図である。
【図7】コンピュータ断層撮像装置を示した図である。
【図8】本発明の一実施例による方法を示した図である。
【図9】本発明の別の実施例による方法を示した図である。
【図10】本発明の別の実施例による方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
添付図面を参照して、本発明の一実施例を示す。
【0076】
図1には、パッシェンの法則によるパッシェン曲線を示す。パッシェンの法則は、ブレークダウン電圧Ubと、圧力pと距離dの積との関係を示すものである。パッシェンの法則によれば、ブレークダウン電圧Ubは、以下の式で表される:
【0077】
【数1】

Ubは、ブレークダウン電圧であり、pは、形状内の圧力であり、dは、2つの電極間の距離であり、これは、例えばアルベオールの直径と見なされ得る。γは、第3タウンゼント係数であり、材料定数を表し、通常の値は、γ=0.01乃至0.1であり、c1およびc2は、気体および電極の材料を表す材料定数である。図1に示すパッシェンの法則では、ブレークダウン電圧は、気体に依存し、空気の場合、最小値は、0.4Pa×mとなる。pdが大きくなると、Ubは、ほぼ直線的に増加する。これは、高圧では、自由経路長が短くなり、ブレークダウン電圧の上昇につながるためである。
【0078】
pdが小さい場合、雪崩効果はほとんど生じない。これは、自由経路長が距離dよりも大きくなるためである。パッシェン曲線の最小値では、自由経路長および距離dは、ほぼ等しくなる。
【0079】
アルベオール内の圧力を、パッシェン曲線の最小値の左側に選定することにより、すなわち減圧アルベオールを提供することにより、アルベオール内のブレークダウン電圧を高めることが可能となり、部分放電を抑制することができる。部分放電は、気体圧力および加速ギャップ寸法に依存した、ある点火電圧で開始される。アルベオール内の圧力を低減することにより、イオン化過程および雪崩効果が抑制され、電子雪崩によるアルベオールの内表面の衝突が回避される。
【0080】
図2には、孔12を取り囲む壁11を有するアルベオール10を示す。アルベオールの壁は、ポア13を有する。図2においては、一つのポアしか示されていないが、アルベオールは、複数のポアを有しても良い。ポア13は、気体分子4がアルベオール10の内側から外側に通過することができ、高分子分子5がアルベオール10の外側から内側に侵入することを遮蔽する寸法を有する。通常、分子は、球構造を有さず、図2において4および5で示した素子は、小さな分子4がポア13を通過することができ、5で示された大きな分子は、アルベオール10の孔12に侵入することはできないことを示すための説明用のため球形で示されているに過ぎないことに留意する必要がある。気体分子は、N2、CO2、およびSO2で構成された群から選定されても良い。これらの気体は、特に、中空ガラス球のようなアルベオールの製造過程で存在するものである。一方、高分子分子5は、エポキシ樹脂および/またはポリエステル樹脂と対応する硬化剤成分、シリコ−ン樹脂、熱硬化性材料、熱可塑性材料、シリコーン油および/または天然油を含む材料の群から選定される。
【0081】
気体分子は、前述のものよりも大きな気体分子であっても良いことに留意する必要がある。また高分子分子は、前述の材料の分子よりも小さくても良い。
【0082】
ポアの寸法は、マトリクス材料への使用が予定される、存在するガス分子および存在する高分子の観点からの仕様により定められる。
【0083】
アルベオールは、ガラス、セラミック、フェノール樹脂、および/またはアクリロニトリル共重合体を含む群から選定された材料で形成されても良い。アルベオールは、実質的に球形または楕円形であっても良いが、ポア寸法が前述のような寸法を逸脱しない限り、いかなる他の外形状も可能であることに留意する必要がある。また、アルベオールの孔は、さらにサブキャビティを有しても良いことに留意する必要がある。例えば、アルベオールの孔は、開放多孔質泡であっても良く、サブキャビティ間の開口は、少なくとも、前述のようなポア寸法を有し、これにより、特定の気体分子は、各サブキャビティから排出され、パッシェンの法則によるブレークダウン電圧が増大する。また、サブキャビティは、この形状に限られるものではないが、球または楕円形状を有しても良い。サブキャビティが、自由経路長に対して、十分に小さな直径を有する場合、サブキャビティ内の圧力は、パッシェンの法則に属する値よりも大きくなり、すなわち十分に小さな直径では、サブキャビティは、パッシェンの条件に適合するような排気がなされなくなる。
【0084】
アルベオールは、5μmから500μmの直径を有し、これは、10μmから200μmであることが好ましく、80μmから160μmの間であることがより好ましい。直径が大きくなると、パッシェンの法則の点から高いブレークダウン電圧を得るため、真空圧力をより低くする必要があることに留意する必要がある。必要なブレークダウン電圧を維持するには、圧力pと距離dの積は、一定に維持される必要があるからである。従って、大きな直径または距離dでは、アルベオールの孔内での大きな自由経路長を相殺するため、大きな圧力pが必要となる。しかしながら、直径が大きくなると、壁厚と直径の間の比、さらにはアルベオールの相対比重が好適となり、これにより絶縁配置の総量が低下する。アルベオールの最適直径は、前述のパッシェンの法則の関係を考慮して、要求に応じて選定されることに留意する必要がある。
【0085】
図3には、マトリクス材料20に埋設された複数のアルベオール10を有する絶縁材料の構造の一実施例を示す。アルベオールは、パッシェンの法則の最小値に対応する圧力未満の圧力に減圧される。必ずしも必要ではないが、アルベオールは、異なる寸法であっても良く、さらに特定のオーダーを有しても良いことに留意する必要がある。異なる寸法のアルベオールは、一つの絶縁材料に使用されても良い。
【0086】
アルベオールは、前述のようなアルベオール、すなわち、孔を取り囲む壁を有するアルベオールであって、アルベオールの壁は、前述のような寸法のポアを有しても良い。しかしながら、予め減圧されたアルベオールを埋設しても良い。
【0087】
図4には、マトリクス材料20内のアルベオール10を示す。また、図4には、マトリクス材料21の第1の部分、アルベオール10を取り囲むマトリクス材料22の第2の部分、およびマトリクス材料23の第3の部分の容量を表すキャパシタの等価回路を示す。通常、マトリクス材料は、気体が充填されたアルベオールに比べて大きな誘電率を有し、マトリクス材料C1およびC3の等価回路のキャパシタでは、等価キャパシタC2よりも大きなεrが考慮される。等価キャパシタC2の誘電率εrは、アルベオール内が真空のため、約1である必要がある。誘電配置密度の連続性のため、アルベオールのキャパシタC2内の電界強度は、マトリクス材料の等価キャパシタC1およびC3よりも大きい。従って、アルベオール内の真空は、より大きな電界強度を有する。従って、本発明の一実施例では、アルベオール内の真空度は、アルベオール10がマトリクス材料の限界フィールド強度に相当する電界強度に対抗し得る程度であっても良い。従って、アルベオールは、減圧化され、作動の間、高誘電力が維持される。
【0088】
マトリクス材料20は、エポキシ樹脂および/またはポリエステル樹脂と対応する硬化剤成分、熱硬化性材料、熱可塑性材料、シリコーン油および/または天然油を含む材料群から選定された材料で構成されても良い。これらの材料は、相互適合性があり、その混合物が、高分子材料とマトリクス材料に悪影響を及ぼさない限り、混合されても良いことに留意する必要がある。アルベオール10内の圧力は、例えば5×10exp(-1)mbarから5×10exp(-2)mbarの間であっても良い。さらに、あるいはこれとは別に、圧力は、マトリクス材料の蒸気圧よりも高くても良い。マトリクス材料の蒸気圧よりも低い圧力では、例えば特定の成分の分解等により、マトリクス材料に劣化および悪影響が生じる。
【0089】
さらに、あるいはこれとは別に、圧力は、マトリクス材料のブレークダウン電圧に対応するブレークダウン電圧を表す、パッシェンの法則における圧力に対応する圧力以下であっても良く、これは、前述の図4において示されている。
【0090】
絶縁材料、すなわちマトリクス材料とアルベオールとの混合物は、気体または流体であっても良く、例えば、絶縁体で充填された孔が提供される。固体絶縁材料は、例えば、エポキシ樹脂および/またはポリエステル樹脂と対応する硬化剤成分、シリコーンゴム、または熱硬化性材料、または熱可塑性材料で形成されても良い。また、シリコーンゴムは、架橋剤と混合された流体シリコーンであっても良いことに留意する必要がある。固体絶縁材料は、機械加工可能な材料であっても良く、絶縁装置の特定の形状を製造することができる。また、絶縁材料は、固体絶縁装置を得るため射出成形されても良く、絶縁材料は、材料の射出成形後に、固化するように適合される。
【0091】
アルベオールと絶縁材料の間の体積比は、例えば、40%から74%の間であっても良い。または特に、60%から68%の間であっても良い。六方稠密密度は、約0.74=74%であるが、アルベオールと絶縁材料の間に、より大きな体積比を得ることもできる。これは、六方稠密状態に充填されたアルベオール同士の間の空間を充填する、異なる寸法のアルベオールを提供することにより可能となる。また、他のフィラー材料により、高い体積比を得ても良い。
【0092】
図5には、外形状によって表される所定の形態を有する絶縁体装置を示す。前述のように、この外形状は、絶縁体材料で充填される。図5の一実施例では、絶縁体材料は、固体で示され、外形状は、固体絶縁体材料の表面である。特に、前述のようなポアを有するアルベオールにおいて、アルベオールの真空を維持するため、マトリクス材料は、気密マトリクス材料とされ、これによりアルベオールが確実に被覆される。またこれは、絶縁体材料の本体部分を除去することにより行われても良い。しかしながら、気密状態ではないマトリクス材料を提供することもできる。この場合、外側シェルは、気密シェルとして設計される。
【0093】
図6には、孔を形成する外側シェルによって外形状が得られる絶縁体装置を示す。この孔は、絶縁体材料で充填される。この絶縁体材料は、流体または気体のマトリクス材料を有しても、真空であっても良く、外側シェルにより、全絶縁体の必要形状が提供される。しかしながら、絶縁体材料の各マトリクス材料が気密ではない場合、絶縁体材料のフィラーは、例えば固体であっても良い。
【0094】
実際には、外側シェル33は、絶縁体の外形状31として機能する他、例えばエポキシ樹脂および/もしくはポリエステル樹脂と対応硬化剤成分、または架橋されるシリコーンのような、固化され得る流体絶縁体材料が充填された形態として、機能しても良い。従って、絶縁体装置30の孔32は、成形形態として使用される。外側シェル33は、射出成形絶縁体装置の形態としても使用され得ることに留意する必要がある。
【0095】
外側シェルは、気密材料で構成されても良く、これは、外側大気環境に対して、すなわち大気環境中にある分子に対して、気密性である。絶縁体装置の外側シェルは、外側に絶縁性が必要な場合、絶縁体材料で構成されても良い。また、実際には、外側シェルは、導電性材料で構成されても良く、例えば、アース電位との信頼性のある接続が提供され、絶縁体装置の孔内に、所定の分布が得られる。
【0096】
また、絶縁体装置30は、コンピュータ断層撮像装置50の回転ガントリー40への使用に適合されても良い。このため、絶縁体装置は、コンピュータ断層撮像装置の回転ガントリーの作動中に生じる、半径方向の遠心力による高加速度に対して安定である必要がある。
【0097】
図8、9、10には、本発明の一実施例を示す。
【0098】
絶縁体材料を製造する方法は、マトリクス材料20と複数のアルベオール10とを混合するステップS1を有しても良い。アルベオールは、パッシェンの法則の最小値に対応する圧力未満の圧力に減圧され、あるいは特に、パッシェンの最小値のブレークダウン電圧の2倍のブレークダウン電圧を表す圧力に減圧される。図8には、当該方法の実施例を示す。マトリクス材料と混合する前に、S2でアルベオールは、減圧される。アルベオールは、孔を取り囲む壁を有するアルベオールであっても良く、このアルベオールの壁は、気体分子がアルベオールの内側から外側に通過し、高分子分子がアルベオールの外側から内側に侵入することを遮蔽する寸法のポアを有する。実際には、アルベオールは、マトリクス材料と混合された後に、マトリクス材料とアルベオールとの混合物に真空を適用することにより、減圧されても良い。これは、図9に示されている。真空の適用により、アルベオール内に含まれる気体は、ポアを通過し、包囲気体は、気体泡として、マトリクス材料内に生じる。
【0099】
マトリクス材料と混合する前にアルベオールを減圧すると、アルベオールは、減圧され、混合過程の間、真空が維持される。従って、アルベオールとマトリクス材料の混合前に、マトリクス材料と減圧アルベオールの双方が真空下に維持され、既に混合されたアルベオールとマトリクス材料の減圧過程中に、アルベオールから逸散した気体によって生じる、後のマトリクス材料での気体泡、および気体による被覆を回避することができる。換言すれば、アルベオールは、例えば、第1のタンクにおいて減圧化され、マトリクス材料は、第2のタンク内で真空に維持され、アルベオールの減圧処理後に、アルベオールは、例えば、第1のタンクから、溝によって第2のタンクに提供され、第1のタンク、第2のタンク、および接続溝の完全なシステムが、気密化される。通常、アルベオールは、アルベオールが減圧化されるまで、マトリクス材料から離した状態にされ、その後、アルベオールとマトリクス材料とが混合される。
【0100】
別の実施例では、エポキシ樹脂と対応する硬化剤成分とが混合されるS4の前に、第1の量のアルベオールは、S1aにおいて、真空下で、エポキシ樹脂と混合され、第2の量のアルベオールは、S1bにおいて、真空下で、対応する硬化剤成分と混合される。エポキシ樹脂の硬化は、減圧されたアルベオールの内部圧力に対応する圧力で生じる。従って、アルベオール内での真空条件の崩壊を回避することができ、硬化されたエポキシ樹脂により、アルベオールのポアを閉止することができ、真空気密なアルベオールが得られる。また、エポキシ樹脂が硬化するときの圧力は、マトリクス材料の成分、すなわちエポキシ樹脂および/または硬化剤成分が分解するときの圧力よりも高い。また、エポキシ樹脂の代わりに、ポリエステル樹脂および対応する硬化剤成分を使用しても良い。シリコーンおよび対応する架橋剤でも同様であり、シリコーンゴムが得られる。
【0101】
減圧および混合プロセスの後、S3において、混合物は、例えば、成形または射出成形により処理される。射出成形プロセスは、例えば、減圧されたアルベオールの内部圧力に対応する圧力の雰囲気で行われても良い。これは、完全な混合物、および絶縁体材料の射出成形による成形体を含む射出成形プロセスにおいて、パッシェン曲線の適正な範囲内に留まるように、気密が維持されることを意味し、これにより、絶縁材料の気体空間におけるブレークダウン電圧に関して、十分な特性が維持される。
【0102】
例えば、N2、CO2、SO2のような気体分子は通過するが、例えばエポキシ樹脂およびその硬化剤成分のような、通常の熱硬化性材料の高分子鎖は、通過することができない程の小さな直径を有する、多孔質中空ミクロ球の形態の多孔質アルベオールを使用することにより、改良された絶縁材料が提供される。エポキシ/硬化剤混合物を真空下で撹拌する前に、例えばミクロ球の形態のアルベオールを真空下に置くことにより、アルベオールのポアは、密閉され、アルベオールに真空が維持される。この混合物を真空下で成形することにより、そのようなシステムが固体絶縁最終製品となり、例えば中空ミクロ球の形態の、真空充填中空アルベオールで充填された、固体絶縁材料が得られる。この結果、アルベオールで充填された固体高電圧絶縁材料が得られ、アルベオールは、それぞれ、真空で充填される。パッシェンの法則に基づいて、球内、あるいはアルベオールに、大きな最大誘電強度が得られる。アルベオールの固体壁は、例えば、ガラス製、セラミック製、または、例えばエポキシもしくは他の熱硬化性もしくは熱可塑性材料のような樹脂マトリクス製である。例えば、アルベオールの壁およびマトリクス材料は、同じ材料であっても良い。
【0103】
さらに、シリカまたは他のフィラーを使用しても良い。この場合、極めて軽量で好適な材料強度が得られるという利点がある。
【0104】
SF6(六フッ化硫黄)分子が、例えばアルベオールの外側から内側に通過し得る寸法の壁に、さらに別のポアが提供されても良い。圧力は、1barから10barの間であっても良く、これは、3barから6barであることが好ましい。また、アルベオールは、上昇した前述の圧力下で、マトリクス材料とともに混合され、および/または撹拌されても良い。また、エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂と対応硬化剤成分を使用する場合、硬化処理は、前記圧力下で実施されても良い。実際には、使用気体分子に対して、パッシェン曲線の最小値での圧力と直径の積よりも大きな圧力と直径が得られなければ、他の種類の気体分子(例えばN2)が使用されても良い。
【0105】
圧力と直径の積が、パッシェン曲線の最小値に対応する圧力と直径の積に比べて、大きくなったり、小さくなったりしなければ、アルベオールの減圧、または適正な絶縁ガスによるアルベオールの充填の双方によって、ブレークダウン電圧が増大することに留意する必要がある。換言すれば、前述のアルベオールの選択により、改良された絶縁材料が得られる。
【0106】
また、アルベオールに使用される材料およびマトリクス材料、凝集の状態、ならびに充填密度は、減圧されたアルベオールに関する実施例と同様であっても良いことに留意する必要がある。加圧アルベオールが埋設された絶縁体材料および絶縁体装置を製造する方法のステップは、減圧アルベオールが埋設された絶縁体材料および絶縁体装置を製造するステップと類似していても良い。低圧力の代わりに、高圧力が適用される。
【0107】
また、絶縁体装置の実施例は、加圧アルベオールを使用するように適用でき、真空気密シェルは、耐圧シェルに置換されても良いことに留意する必要がある。
【0108】
本発明は、例えば、コンピュータ断層撮像装置のX線機器、および他の用途、例えば航空機のような、特に、良好な誘電特性を有する軽量絶縁材料が必要な用途に使用される。本発明は、断熱体に使用されても良い。
【0109】
「有する」という用語は、他の素子またはステップを排斥するものではなく、「一つの」という用語は、複数のものを排斥するものではないことに留意する必要がある。また、異なる実施例に関して記載された素子は、組み合わされても良い。
【0110】
請求項内の参照符号は、その請求項を限定するものと解してはならないことに留意する必要がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔を取り囲む壁を有するアルベオールであって、
当該アルベオールの前記壁は、気体分子は当該アルベオールの前記壁を通過し、高分子分子は、当該アルベオールの外側から内側に侵入することが遮蔽される寸法のポアを有することを特徴とするアルベオール。
【請求項2】
前記ポアは、気体分子が当該アルベオールの前記内側から前記外側に通過することができ、
前記気体分子は、N2、CO2、SO2からなる群から選定されることを特徴とする請求項1に記載のアルベオール。
【請求項3】
前記ポアは、高分子分子が当該アルベオールの前記外側から前記内側に侵入することを遮蔽する寸法を有し、
前記高分子分子は、エポキシ樹脂と対応する硬化剤成分、熱硬化性材料、シリコーンゴム、熱可塑性材料、シリコーン油、および/または天然油を有する材料群から選定される
ことを特徴とする請求項1または2に記載のアルベオール。
【請求項4】
当該アルベオールの前記壁は、ガラス、セラミック、フェノール樹脂、および/またはアクリロニトリル共重合体を含む材料群から選定された材料で構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のアルベオール。
【請求項5】
当該アルベオールは、実質的に球形および/または楕円形の形状を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のアルベオール。
【請求項6】
当該アルベオールは、5μmから500μmの間の直径を有し、好ましくは10μmから200μm、より好ましくは80μmから160μmの直径を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のアルベオール。
【請求項7】
マトリクス材料と複数のアルベオールとを有する絶縁体材料であって、
前記アルベオールは、パッシェンの法則の最小値に相当する圧力未満の圧力に減圧されることを特徴とする絶縁体材料。
【請求項8】
前記圧力は、パッシェンの法則の前記最小値のブレークダウン電圧の2倍のブレークダウン電圧を表す、パッシェンの法則における圧力に相当する圧力以下であることを特徴とする請求項7に記載の絶縁体材料。
【請求項9】
前記アルベオールは、前記請求項1乃至6のいずれかに記載のアルベオールであることを特徴とする請求項7または8に記載の絶縁体材料。
【請求項10】
前記マトリクス材料は、エポキシ樹脂および/またはポリスチレン樹脂と対応する硬化剤成分、熱硬化性材料、シリコーンゴム、熱可塑性材料、シリコーン油、および/または天然油を有する材料群から選定された材料であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項11】
前記圧力は、5×10exp(-1)mbarから5×10exp(-2)mbarの間であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項12】
前記圧力は、前記マトリクス材料の蒸気圧よりも高いことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項13】
前記圧力は、前記マトリクス材料の成分が相互に分解する圧力よりも高いことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項14】
前記圧力は、前記マトリクス材料のブレークダウン電圧に相当するブレークダウン電圧を表す、パッシェンの法則における圧力に相当する圧力以下であることを特徴とする請求項7乃至13のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項15】
当該絶縁体材料は、流体であることを特徴とする請求項7乃至14のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項16】
当該絶縁材料は、固体であることを特徴とする請求項7乃至15のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項17】
前記アルベオールと前記絶縁材料の間の体積比は、40%から74%の範囲であり、好ましくは、60%から68%であることを特徴とする請求項7乃至16のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項18】
外形状によって表される所定の形態を有する絶縁体装置であって、
前記外形状は、前記請求項6乃至17のいずれか一つに記載の絶縁体材料で充填されることを特徴とする絶縁体装置。
【請求項19】
前記絶縁体材料は、固体であり、前記外形状は、前記固体絶縁体材料の表面であることを特徴とする請求項17に記載の絶縁体装置。
【請求項20】
前記外形状は、孔を形成する外側シェルによって与えられ、
前記孔は、絶縁体材料で充填され、該絶縁体材料は、流体および/または気体および/または真空であることを特徴とする請求項18に記載の絶縁体装置。
【請求項21】
前記絶縁体材料は、固化するように適合されていることを特徴とする請求項20に記載の絶縁体装置。
【請求項22】
前記外側シェルは、外気環境に対して、真空気密材料で構成されることを特徴とする請求項20または21に記載の絶縁体装置。
【請求項23】
前記請求項18乃至22のいずれか一つに記載の絶縁体装置を有するコンピュータ断層撮像装置であって、
前記絶縁体装置は、当該コンピュータ断層撮像装置の回転ガントリーへの使用に適合されることを特徴とするコンピュータ断層撮像装置。
【請求項24】
絶縁体材料を製造する方法であって、
マトリクス材料と複数のアルベオールとを混合するステップを有し、
前記アルベオールは、パッシェンの法則の最小値に相当する圧力未満の圧力に減圧されることを特徴とする方法。
【請求項25】
前記アルベオールは、前記請求項1乃至6のいずれか一つに記載のアルベオールであることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アルベオールは、前記マトリクス材料と混合される前に減圧されることを特徴とする請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記アルベオールは、前記マトリクス材料と混合された後に減圧されることを特徴とする請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
エポキシ樹脂と対応する硬化剤成分とが混合される前に、
第1の量のアルベオールを前記エポキシ樹脂と混合し、第2の量のアルベオールを前記対応する硬化剤成分と混合することを特徴とする請求項25乃至27のいずれか一つに記載の方法。
【請求項29】
前記混合するステップ、および前記エポキシ樹脂を硬化させるステップは、前記減圧されたアルベオールの内部圧力に相当する圧力で実施されることを特徴とする請求項25乃至28のいずれか一つに記載の方法。
【請求項30】
前記圧力は、マトリクス材料の成分が相互に分解する圧力よりも高いことを特徴とする請求項25乃至29のいずれか一つに記載の方法。
【請求項31】
前記絶縁材料は、前記減圧されたアルベオールの内部圧力に相当する圧力の環境下で、射出成形されることを特徴とする請求項26乃至30のいずれか一つに記載の方法。
【請求項32】
請求項7乃至17のいずれか一つに記載の絶縁体材料、または請求項18乃至23のいずれか一つに記載の絶縁体装置の、断熱体としての使用。
【請求項33】
前記ポアは、気体分子が当該アルベオールの外側から内側に通過する寸法を有し、
前記気体分子は、N2およびSF6からなる群から選定されることを特徴とする請求項1に記載のアルベオール。
【請求項34】
マトリクス材料と複数のアルベオールとを有する絶縁体材料であって、
前記アルベオールは、パッシェンの法則の最小値に相当する圧力を超える圧力に加圧されることを特徴とする絶縁体材料。
【請求項35】
前記圧力は、パッシェンの法則の最小値のブレークダウン電圧の2倍のブレークダウン電圧を示す、パッシェンの法則における圧力に相当する圧力以上であることを特徴とする請求項34に記載の絶縁体材料。
【請求項36】
前記アルベオールは、請求項1乃至6または33に記載のアルベオールであることを特徴とする請求項34または35に記載の絶縁体材料。
【請求項37】
前記圧力は、1barから10barの間であり、好ましくは3barから6barの間であることを特徴とする請求項34乃至36のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項38】
前記圧力は、前記マトリクス材料のブレークダウン電圧に対応するブレークダウン電圧を表す、パッシェンの法則における圧力に相当する圧力以上であることを特徴とする請求項34乃至37のいずれか一つに記載の絶縁体材料。
【請求項39】
絶縁体材料を製造する方法であって、
マトリクス材料と複数のアルベオールとを混合するステップを有し、
前記アルベオールは、パッシェンの法則の最小値に相当する圧力を超える圧力に加圧されることを特徴とする方法。
【請求項40】
前記アルベオールは、前記マトリクス材料と混合する前に加圧されることを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記混合するステップ、および前記エポキシ樹脂を硬化するステップは、前記加圧されたアルベオールの内部圧力に相当する圧力で実施されることを特徴とする請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記絶縁材料は、前記加圧されたアルベオールの内部圧力に対応する圧力の環境下で、射出成形されることを特徴とする請求項39乃至41のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−521550(P2010−521550A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553255(P2009−553255)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国際出願番号】PCT/IB2008/050863
【国際公開番号】WO2008/110979
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】