説明

絶縁性液体が充填された電気機器の相対湿度を判定するための方法および装置

絶縁性液体(2)および気体(3)を含むコンテナ(1)と、コンテナの気体(3)と外部環境の気体との連通を可能にし、且つ通過する気体の脱水を行なう連通ユニット(4)とを備える絶縁性液体が充填された電気機器(20)の相対湿度を判定する方法であって、コンテナ(1)内の気体(3)の相対湿度を継続的に測定して記憶するステップと、特定の期間の前記記憶した湿度測定値に基づいて気体(3)の相対湿度の平均値を計算するステップと、気体(3)の相対湿度の前記平均値及び均衡状態での気体(3)の相対湿度と絶縁性液体(2)の相対湿度の関係に基づいて絶縁性液体(2)の相対湿度を判定するステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性液体および気体を含むコンテナと、コンテナの気体と外部環境の気体との連通を可能にしかつ連通ユニットを通過する気体の脱水を行なう連通ユニットとを備える、絶縁性液体が充填された電気機器の相対湿度を判定するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器、タップ切換器または開閉装置など絶縁性液体が充填された電気機器は、隔離および冷却が必要とされる用途で使用される機器である。好適な誘電および冷却特性を備えた絶縁性液体の中に電気ユニットが沈められる。電気ユニットは、絶縁性液体、および空気、水素ガスなどの気体を含むコンテナの中に封入される。液体に沈められた電気ユニットを備えたコンテナを絶縁性液体および気体を含む拡張タンクに接続することもできる。絶縁性液体の表面は、絶縁性液体と気体の間に境界面を有する。
【0003】
絶縁性液体の相対湿度の値は、絶縁性液体が充填された電気機器の機能にとって重要である。絶縁性液体の相対湿度は、特定の温度での絶縁性液体の水分含有量と可能な最大水分含有量の比である。電気ユニットをすっかり覆っている絶縁性液体の相対湿度が高すぎる場合、絶縁性液体が充填された電気機器の不具合が生じる恐れがある。絶縁性液体の相対湿度の変化は、絶縁性液体の誘電耐性に大きな影響を与える。絶縁性液体の相対湿度が高い状態では絶縁性液体の誘導耐性は低くなる。絶縁性液体の誘導耐性は、例えば電気ユニットの電極からの金属粒子など絶縁性液体内の粒子汚染によっても影響を受ける。絶縁性液体の誘導耐性が低い場合、電気ユニット内でフラッシュオーバーが生じる可能性があり、これは電気機器の機能にダメージを与えるまたは機能を限定する場合がある。
【0004】
経験によると、高圧機器の絶縁性液体は一定の間隔で分析され維持される。絶縁性液体の相対湿度を判定する目的で絶縁性液体中の水分量を測定するために、絶縁性液体のサンプルを採取することもできる。絶縁性液体を交換し絶縁性液体のサンプルを採取する作業は時間がかかり、したがって電気機器の作動コストがより高くなる結果となる。あるいは絶縁性液体の中に水分センサを配置してもよい。しかしながら液体内の水分を測定するには高価なセンサが必要である。
【0005】
電気機器は作動される際に熱を生成し、これは温度の局所的上昇を引き起こす。これは特に、機械的接触スイッチが切換地点間で高電位によって継続的に開閉されるタップ切換器および同様の開閉装置に当てはまる。切換動作の間絶縁性液体を気体内に分解することができ、これは解放される必要がある。したがってコンテナは外部環境と連通する必要がある。外部環境とは、コンテナを取り巻く空気などの、絶縁性液体が充填された電気機器を取り巻く環境である。外部環境の気体との連通は通常、脱水通気口などの連通ユニットを介して行なわれる。
【0006】
この連通ユニットによってコンテナの気体と外部環境の連通が可能になる。これにより気体が連通ユニットを通過することができ、コンテナ内の圧力が外部環境の圧力に保たれる。絶縁性液体が例えば電気ユニットによって加熱される際、絶縁性液体が膨張し、コンテナ内の気体が連通ユニットを介して外部環境に押し出される。反対に絶縁性液体が冷却される際、絶縁性液体の容積は減少し、外部環境からの気体が連通ユニットを介してコンテナ内に入ることが許される。さらに連通ユニットは、連通ユニットを通過する気体を脱水する機能を有する、すなわち連通ユニットは、コンテナと外部環境の間を通る気体の水分を取り除く能力を有する。連通ユニットの機能が不十分な場合、絶縁性液体中の相対湿度が上昇する可能性があり、これは電気機器の不具合につながる恐れがある。
【0007】
特許文献1は、油で絶縁された電気器具用の除湿器を示す。器具の筐体と除湿器内のヒータの間に水分センサが配置される。水分センサからの情報は、除湿器内のヒータを制御するのに使用される。ヒータは除湿器を再生させる機能を有する。しかしながら除湿器は、油の中の相対湿度を判定する能力を持っていない。さらに除湿器の水分を除去する能力をテストする手段も開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US20060162304号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、絶縁性液体が充填された電気機器の相対湿度を判定するための方法を提供することである。
【0010】
この目的は請求項1によって定義される方法によって得られる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような方法は、コンテナ内の気体の相対湿度を継続的に測定して記憶するステップと、特定の期間の該記憶した湿度測定値に基づいて気体の相対湿度の平均値を計算するステップと、気体の相対湿度の該平均値と、均衡状態での気体の相対湿度と絶縁性液体の相対湿度の関係とに基づいて絶縁性液体の相対湿度を判定するステップとを含む。
【0012】
相対湿度とは物質の水分含有量の度合いである。気体の相対湿度は、特定の温度での気体の水分含有量と可能な最大水分含有量との比である。気体と絶縁性液体とを備える閉鎖系での均衡状態において、気体から絶縁性液体への拡散とその逆とは釣り合っている。この均衡状態において、気体の相対湿度と絶縁性液体の相対湿度との間には一定の関係がある。この関係は温度依存性である。連通ユニットがあることよって、絶縁性液体が充填された機器は均衡状態ではない半開放系であり、したがって該関係は有効ではない。しかしながら絶縁性液体の相対湿度の変化は、気体の相対湿度の変化の割合と比べてゆっくりと生じる。気体の相対湿度の平均値はコンテナの仮定の均衡状態を表すものであり、絶縁性液体の相対湿度を判定するために本発明によって使用される。したがって気体の相対湿度の該平均値と、均衡状態での気体の相対湿度と絶縁性液体の相対湿度の該関係に基づいて絶縁性液体の相対湿度が判定される。
【0013】
相対湿度の平均値は、コンテナの仮定の均衡状態を表す値である。平均値は、一定の期間記憶された複数の測定値に基づいて計算することができる。平均値の例は、算術平均値、中央値、加重平均値、切り捨て平均値または仮定の均衡状態の相対湿度を表す他の値である。同様の方法で温度測定の平均値を計算することができる。
【0014】
本発明は、絶縁性液体の相対湿度を判定するという利点を有する。したがって絶縁性液体のサンプルを採取するまたはメンテナンス計画に従って絶縁性液体を交換する等の手順はもはや不要であり、これにより電気機器の作動コストが削減される。さらに本発明は、気体の相対湿度を測定するセンサ(これは液体内の水分含有量を直接測定する水分センサより低価格である)を使用して絶縁性液体の相対湿度を測定することができるという利点を有する。これにより本発明によって費用効率の高い絶縁性液体の相対湿度の判定が可能になり、絶縁性液体が充填された機器のコストが削減される。
【0015】
本発明の一実施形態によると、方法はさらに、判定された絶縁性液体内の相対湿度が特定の値を超えた場合に絶縁性液体の異常を示すステップを含む。これにより絶縁性液体の相対湿度が所望されるものより高くなり、電気機器の機能が低下する危険性が生じていることが示される。絶縁性液体の異常が示される際、絶縁性液体を乾燥させるか、または相対湿度が十分に低い新しい絶縁性液体と交換する必要がある。
【0016】
本発明の一実施形態によると、方法はさらに、コンテナ内の絶縁性液体の温度を継続的に測定して記憶するステップと、特定の期間の該記憶した温度測定値に基づいてコンテナ内の温度の平均値を計算するステップと、温度の平均値に応じて均衡状態における気体の相対湿度と絶縁性液体の相対湿度との関係を生成するステップと、生成された関係に基づいて絶縁性液体の相対湿度を判定するステップとを含む。
【0017】
気体の相対湿度と絶縁性液体の相対湿度の関係を生成することによって、この関係を選択するまたは計算するのにコンテナ内の温度の平均値が使用される。これにより絶縁性液体内の相対湿度のより正確な値を判定することができる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、方法はさらに、一日を超える、好ましくは2−3日の一定の期間内の記憶された湿度測定値に基づいて相対湿度の平均値を判定するステップを含む。絶縁性液体の相対湿度の変化は、気体の相対湿度の変化と比べてゆっくりと生じることから、1日を超える一定の期間の計算された相対湿度の平均値は気体の相対湿度の変動を捉える。したがって絶縁性液体内の相対湿度のより正確な値を判定することができる。
【0019】
本発明の別の目的は、絶縁性液体が充填された電気機器の不具合を示すことである。この目的は、絶縁性液体の異常を示すステップと、連通ユニットの不具合を示すステップとを含む方法によって得られる。これら2つの異常を組み合わせたものを使用することによって、電気機器の現在および将来の両方の状態の信頼できる診断が示される。これは電気機器の安全な作動につながる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、方法はさらに、第1の温度と第2の温度の間で絶縁性液体の温度が低下し、かつ第1の温度と第2の温度の差が特定の値より大きくなるときを検知するステップと、第1の温度と第2の温度におけるコンテナ内の気体の相対湿度の差を計算するステップと、該計算された相対湿度の差に基づいて連通ユニットの不具合を示すステップとを含む。
【0021】
温度低下の状況で絶縁性液体が冷却され、これにより絶縁性液体の密度が高まり絶縁性液体の容積が縮小する。コンテナ内の圧力を外部環境の圧力と同じに保つために、外部環境からの気体が連通ユニットを介してコンテナに入ってくることが許される。検知された温度低下の状況で、連通ユニットを介してコンテナ内に入ることが許された気体の相対湿度が連通ユニットの脱水機能を利用して下げられる。したがって作動中の連通ユニットが連通ユニットを通過する気体の相対湿度を低下させる。連通ユニットが、連通ユニットを通過する気体の相対湿度を全く低下させない、またはそれが不十分である場合、連通ユニットの不具合が生じている。
【0022】
計算された第1の温度と第2の温度での相対湿度の差に基づいて、連通ユニットの不具合が示される。好ましくは、方法はさらに、計算された第1の温度と第2の温度での相対湿度の差が特定の値を下回るとき連通ユニットの不具合を示すステップを含む。連通ユニットに不具合がある状況では、連通ユニットを通過する気体から相対湿度を低下させる連通ユニットの能力は所望されるものより低くなる。これにより、コンテナの絶縁性液体の相対湿度が電気機器の機能を危険な状態にする一定レベルを超えて上昇しうる。この実施形態によって連通ユニットの不具合を示すことが可能になり、これにより電気機器の安全な作動を保証することができる。
【0023】
本発明の別の目的は、絶縁性液体が充填された電気機器の相対湿度を判定する装置を提供することである。
【0024】
この目的は、請求項8によって定義される装置によって得られる。
【0025】
このような装置は、コンテナ内の気体の相対湿度を継続して測定するように構成された第2センサと、第2センサから測定値を受信してこれを記憶し、一定の期間の該記憶された湿度測定値に基づいて気体内の相対湿度の平均値を計算し、気体内の相対湿度の該平均値と、均衡状態の気体の相対湿度と絶縁性液体の相対湿度の関係とに基づいて絶縁性液体の相対湿度を判定するように構成された演算器とを備える。
【0026】
演算器は、測定データを記憶しこれを処理する機能を有する装置である。処理されたデータと、均衡状態の気体の相対湿度と絶縁性液体の相対湿度の関係に基づいて絶縁性液体が充填された機器の不具合を示すことができる。
【0027】
本発明による方法および装置は有利には、タップ切換器の不具合を検知するのに使用される。
【0028】
タップ切換器は、変圧器巻線に沿って接続地点を有する電気機器である。これにより二次側の電圧制御を可能にする目的で、変圧器巻線にスイッチを入れる回数を調節することができる。タップ切換器は、隔離および冷却を目的として絶縁性液体の中に沈められる電気機器である。
【0029】
本発明の種々の実施形態の記載によっておよび添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1a】本発明の一実施形態による装置を含む絶縁性液体が充填された機器の一例を示す図である。
【図1b】拡張タンクに接続された絶縁性液体が充填された機器の一例を示す図である。
【図2】特定の温度での均衡状態における、気体の相対湿度と絶縁性液体の相対湿度の関係の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1aは、本発明の一実施形態による機器の不具合を検知するための装置を含む、絶縁性液体が充填された機器20の一例を示す。絶縁性液体が充填された機器20は、絶縁性液体2および気体3を含むコンテナ1を有する。絶縁性液体2は好適な誘電および冷却特性を有する。絶縁性液体2の表面は、絶縁性液体2と気体3との間に境界面を形成する。絶縁性液体が充填された機器20はさらに、コンテナ1の中に封入され絶縁性液体2内に完全に沈められたタップ切換器などの電気ユニット8を含む。電気ユニット8は、熱が生成され絶縁性液体2を気体内に分解することができる働きをもつ。絶縁性液体が充填された機器20は脱水通気口などの連通ユニット4を備え、これはコンテナ1のへりに配置される。連通ユニット4によってコンテナの気体3と縁性液体が充填された電気機器20を取り巻く気体との連通が可能になる。これにより絶縁性液体が充填された機器20内に生成された気体を解放させることができ、気体3の圧力が縁性液体が充填された機器20を取り巻く気体と同じ圧力に保たれる。連通ユニット4はさらに、連通ユニット4を通過する気体の脱水を行なう機能を有する。これによりコンテナ1内の気体3の相対湿度が十分に低いことが保証され、その結果コンテナ1内の絶縁性液体2の相対湿度も同様に低いレベルに維持される。
【0032】
図1aはまた、本発明の一実施形態の機器20の不具合を検知するための装置の一例を示す。図1aの装置は、絶縁性液体が充填された電気機器20の不具合を検知する機能を有する。装置は、第1に絶縁性液体2の異常と、第2に連通ユニット4の不具合と2つの別々の不具合を検知することができる。絶縁性液体2の相対湿度が特定の値を超え、絶縁性液体2の隔離および冷却特性が低下し、その結果絶縁性液体が充填された機器20の機能が危険な状態になったとき、絶縁性液体2の異常が示される。連通ユニット4の不具合は、連通ユニット4を通過する気体の脱水機能が低下しその結果絶縁性液体2の相対湿度が上昇するリスクが生じたとき示される。
【0033】
図1aに示される機器の不具合を検知する装置は、温度センサ5と、相対湿度センサ6とを備える。温度センサ5は、コンテナ1内の絶縁性液体の温度を継続して測定するように構成される。いくつかの実施形態において、温度センサ5はコンテナ1内の液体2内に配置される。温度センサ5は、例えばサーミスター、サーモカップル、または温度を継続して測定することができる任意の他のセンサであってよい。相対湿度センサ6は、コンテナ1内の気体3の相対湿度を継続して測定するように構成される。相対湿度センサ6は、絶縁性液体2の表面からある程度離れてコンテナ1内の気体3中に配置される。好ましい実施例では、相対湿度センサ6は連通ユニット4に近接して配置される。相対湿度センサ6は、例えば容量性高分子センサ、または様々な気体の中で相対湿度を継続して測定することができる任意の他のセンサであってよい。
【0034】
図1bは、コンテナ1が、電気ユニット8を含むメインコンテナと、絶縁性液体2と気体3の交わる部分を含む拡張タンクと、を備える絶縁性液体が充填された機器20を示す。これにより電気ユニット8が常に絶縁性液体2の中に沈められることを保証することができる。示される例では、メインコンテナ内および拡張タンク内などコンテナ内の複数の場所で温度が測定される。これによりコンテナ全体を表す絶縁性液体内の温度変化を判定することができる。
【0035】
機器の不具合を検知するための装置はさらに、絶縁性液体が充填された電気機器20の外に配置された演算器10を備える。演算器は、中央処理装置(CPU)などのプロセッサと、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他のタイプの記憶媒体などの記憶媒体とを備える。演算器10は、温度センサ5および相対湿度センサ6から測定値を受信しこれを記憶するように構成される。
【0036】
演算器10はさらに、記憶した測定値が処理されるいくつかのタスクを実行するように構成される。処理された測定値は、絶縁性液体が充填された電気機器20の不具合を検知しこれを示すタスクを実行するために演算器10によって使用される。
【0037】
演算器10の主なタスクは、本発明による請求項において定義される方法を実施するためのものである。図3は、本発明の一実施形態による方法およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図である。フローチャートの各ブロックはコンピュータプログラム指示によって履行することができることを理解されたい。方法の第1ステップにおいては、温度センサ5および相対湿度センサ6から温度および相対湿度(RH)の測定値が受信され記憶される(ブロック30)。測定が行なわれたのが特定の期間より短かった場合、この方法において処理する前により多くの測定値を受信し記憶する必要がある(ブロック32)。特定の時間窓に測定値が記憶され、その結果特定の値より古い測定値はこの方法から除外される。この期間の継続期間は好ましくは、絶縁性液体が充填された電気機器20の作動中の温度および相対湿度の変動を捉えるのに十分な長さ、例えば2−3日である。
【0038】
図3に示される方法の以下の部分において、記憶した測定値に基づいて気体3の相対湿度と、コンテナ1内の温度の平均値が計算される(ブロック34)。平均値の例は、算術平均値、中央値または他のタイプの平均値である。気体の相対湿度の平均値は、コンテナ1の仮定の均衡状態を表す。平均温度は、均衡状態の気体3の相対湿度と絶縁性液体2の相対湿度の関係を選択するのに使用され、さらにこの関係を表す。関係は、いくつかの記憶した関係から選択される(ブロック36)。あるいは関係は平均温度に基づいて計算することができる。これにより絶縁性液体の相対湿度のより正確な値を判定することができる。
【0039】
図2は、特定の温度での均衡状態の気体3の相対湿度と絶縁性液体2の相対湿度の関係の一例を示す。x軸上に気体3の相対湿度が示されている。y軸上に絶縁性液体2の相対湿度が呈示されている。この関係は温度依存性である。関係は、気体3から絶縁性液体2への水の拡散とその逆の状況との均衡状態を表している。絶縁性液体2の相対湿度の変化は、気体3の相対湿度の変化の割合と比べてゆっくりと生じることから、気体3の相対湿度の平均値はコンテナ1の仮定の均衡状態を表す。これにより図2に示される関係は、計算された気体3の相対湿度の平均値と共に絶縁性液体2の相対湿度を判定するのに使用することができる。
【0040】
例えば図2に示される関係を利用して気体3の相対湿度の平均値を想定すると、0.5で計算されている。この関係から絶縁性液体2の相対湿度を同一の相対湿度値、すなわち0.5と判定することができる。
【0041】
図3に示される方法の次の部分で、気体3の相対湿度の平均値と選択された関係に基づいて絶縁性液体の相対湿度(RH)が判定される(ブロック38)。判定された絶縁性液体の相対湿度が特定の値より大きい場合、絶縁性液体2の異常が示される(ブロック42)。これにより例えば警告が生成され、または絶縁性液体が充填された電気機器20が停止され、絶縁性液体2を相対湿度が低い絶縁性液体と取り替えることができる。絶縁性液体の相対湿度が特定の値を超えない場合、連通ユニット4を通過する気体から相対湿度を低下させる連通ユニット4の能力が、図3に示される方法によってテストされる。このテストは、特定の値を超える温度の低下が生じた場合に行なうことができる(ブロック44)。このような温度低下が検知されない場合、方法は終了する(ブロック52)。特定の値より大きな温度低下が検知されると、外部環境からの気体がコンテナ1へ取り込まれる。温度低下におけるコンテナ内の気体3の相対湿度の差が計算される(ブロック46)。計算された相対湿度の差が特定の値を超える場合、連通ユニット4の不具合が示される(ブロック50)。そうでなければ方法が再開される(ブロック52)。このように絶縁性液体が充填された電気機器20をその作動中監視することができる。
【0042】
本発明は開示の実施形態に限定されるのではなく、以下の特許請求の範囲の範囲内で変更および修正されてよい。例えば本発明は、絶縁性液体2の不具合のみを示す能力を備えることができる。相対湿度は、示されるのに特定のレベルを超える必要はない、あるいは判定された絶縁性液体2の相対湿度を別々に提示することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体および気体を含むコンテナと、前記コンテナの前記気体と外部環境の気体との連通を可能にし、かつ通過する気体の脱水を行なう連通ユニットとを備える絶縁性液体が充填された電気機器の相対湿度を判定する方法であって、
前記コンテナ内の前記気体の相対湿度を継続的に測定して記憶するステップと、
特定の期間の前記記憶した湿度測定値に基づいて前記気体の相対湿度の平均値を計算するステップと、
前記気体の相対湿度の前記平均値と、均衡状態での前記気体の相対湿度と前記絶縁性液体の相対湿度の関係とに基づいて、前記絶縁性液体の相対湿度を判定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記絶縁性液体の前記判定された相対湿度が特定の値を超える場合、前記絶縁性液体の異常を示すステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンテナの前記絶縁性液体の温度を継続的に測定して記憶するステップと、
前記期間における前記記憶した温度測定値に基づいて、前記コンテナ内の温度の平均値を計算するステップと、
前記温度の平均値に応じて均衡状態における前記気体の相対湿度と前記絶縁性液体の相対湿度との関係を生成するステップと、
前記生成された関係に基づいて、前記絶縁性液体の相対湿度を判定するステップと
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記相対湿度の平均値が、1日を超える特定の期間の間に記憶された湿度測定値に基づいている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の温度と第2の温度の間で前記絶縁性液体の温度が低下し、かつ第1の温度と第2の温度の差が特定の値より大きくなることを検知するステップと、
第1の温度と第2の温度における前記コンテナ内の前記気体の相対湿度の差を計算するステップと、
前記計算された相対湿度の差に基づいて前記連通ユニットの不具合を示すステップと
をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記計算された相対湿度の差が特定の値を下回るとき前記連通ユニットの不具合が示される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
タップ切換器の不具合を検知することを目的とした請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法の利用。
【請求項8】
絶縁性液体(2)および気体(3)を収容するコンテナ(1)と、前記コンテナの前記気体(3)と外部環境の気体との連通を可能にし、通過する気体の脱水を行なう連通ユニット(4)とを備える、絶縁性液体が充填された電気機器(20)の相対湿度を判定するための装置であって、
前記気体(3)の相対湿度を継続して測定するように構成された第2センサ(6)と、
前記第2センサ(6)から測定値を受信してこれを記憶し、一定期間の前記記憶された湿度測定値に基づいて前記気体(3)内の相対湿度の平均値を計算し、前記気体(3)の相対湿度の前記平均値と、均衡状態での前記気体の相対湿度と前記絶縁性液体の相対湿度の関係とに基づいて、前記絶縁性液体(2)の相対湿度を判定するように構成された演算器(10)と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
前記演算器(10)が、前記絶縁性液体(2)の前記判定された相対湿度が特定の値を超える場合に前記絶縁性液体(2)の不具合を示すように構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
第1センサ(5)が前記コンテナの前記絶縁性液体の温度を継続して測定するように構成されており、
前記演算器(10)が、前記第1センサ(5)および前記第2センサ(6)から測定値を受信してこれを記憶し、一定期間の前記記憶された温度測定値に基づいて前記コンテナ内の温度の平均値を計算し、前記温度の平均値に応じて均衡状態における前記気体の相対湿度と前記絶縁性液体の相対湿度との関係を生成し、前記気体(3)内の相対湿度の前記平均値と、均衡状態における前記気体(3)の相対湿度と前記絶縁性液体(2)の相対湿度との前記形成された関係とに基づいて、前記絶縁性液体(2)の相対湿度を判定するように構成されていることを特徴とする、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記演算器(10)が、前記第1センサ(5)および前記第2センサ(6)から測定値を受信してこれを記憶し、第1の温度と第2の温度の間で前記絶縁性液体(2)の温度が低下し、かつ第1の温度と第2の温度の差が特定の値より大きくなるときを検知し、第1の温度と第2の温度における前記コンテナ内の前記気体(3)の相対湿度の差を計算し、前記計算された相対湿度の差に基づいて前記連通ユニット(4)の不具合を示すように構成されていることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記絶縁性液体が充填された電気機器(20)がタップ切換器であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項に記載の装置。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−520254(P2011−520254A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506630(P2011−506630)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053150
【国際公開番号】WO2009/132893
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(508254509)エービービー テクノロジー エルティーディー. (8)
【Fターム(参考)】