説明

絶縁構造体

【課題】 高電圧素子同士が最小の絶縁距離で配置されることが可能な絶縁構造体を提供することにある。
【解決手段】 本発明の絶縁構造体は、第1の電気素子(27)の一方の長手方向に固着され、所定の絶縁強度を有する板状の第1の樹脂構造体(25a)と、この第1の樹脂構造体と対向する位置で前記第1の電気素子の他方の長手方向に固着され、板状の第2の樹脂構造体(25b)と、前記第1の電気素子の双方の短手方向に固着され、絶縁強度を有するL字状の第3の樹脂構造体(23d、23e)と、前記第1の電気素子の双方の短手方向に所定間隔の空隙(24c〜24h)を有して固着され、絶縁強度を有する板状の第4の樹脂構造体(23a、23c)と、前記第2の樹脂構造体と前記第1の電気素子との接着面の背面に前記第2の樹脂構造体の略中央部に固着され、絶縁強度を有する板状の第5の樹脂構造体(23b)と、から成るセルを具備し、前記第1の電気素子の直交する方向に沿って前記セルを複数配列し、それぞれのセルを固着し形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータX線高電圧発生装置などの高電圧回路の回路素子を個々に収容する絶縁構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高電圧スイッチ同士はそれぞれ絶縁紙を介して絶縁される。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2001-284097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1では、絶縁紙を接着加工して絶縁構造体を形成する。この接着加工では、接着する絶縁紙間に接着剤を一様に塗布する技術が必要である。また、接着加工において、接着剤が一様に塗布できたとしても、その乾燥後に絶縁紙の撓みなどの要因からその加工精度がばらつくことを防げない。そこで、特許文献1に開示された絶縁構造体は接着加工によって形成されているため、各高電圧スイッチ間の絶縁に対し所定の絶縁距離を超える距離を確保しておかなければならない。
従って、上記特許文献1では、高電圧スイッチ同士が最小の絶縁距離で配置されることによって絶縁構造体を小型化するための配慮がされていなかった。
【0004】
本発明の目的は、高電圧素子同士が最小の絶縁距離で配置されることが可能な絶縁構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の絶縁構造体は、第1の電気素子(27)の一方の長手方向に固着され、所定の絶縁強度を有する板状の第1の樹脂構造体(25a)と、この第1の樹脂構造体と対向する位置で前記第1の電気素子の他方の長手方向に固着され、前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有する板状の第2の樹脂構造体(25b)と、前記第1の電気素子の双方の短手方向に固着され、前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有するL字状の第3の樹脂構造体(23d,23e)と、前記第1の電気素子の双方の短手方向に所定間隔の空隙(24c〜24h)を有して固着され、前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有する板状の第4の樹脂構造体(23a,23c)と、前記第2の樹脂構造体と前記第1の電気素子との接着面の背面に前記第2の樹脂構造体の略中央部に固着され、前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有する板状の第5の樹脂構造体(23b)と、から成るセルを具備し、前記第1の電気素子の直交する方向に沿って前記セルを複数配列し、それぞれのセルを固着し形成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高電圧素子同士が最小の絶縁距離で配置されることが可能な絶縁構造体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の絶縁構造体について図1乃至図3を用いて説明する。本発明の絶縁構造体を採用したインバータ式X線発生装置の構成は特許文献1に開示されている。
図1は本発明の一実施形態を説明するための絶縁構造体の構成例を示す図であって、1枚分の高圧スイッチを含む回路基板を収容する樹脂部材の構造(「セル」ともいう)の一例を示す図、図2は図1の絶縁構造体を複数配列した一例を示す図、図3は図1に補強部材を設けた一例を示す図である。
【0008】
樹脂部材22は、設置面に配置される基体23d及び23eと、基体23d及び23eに井桁状に取り付けられる基板支持部材25aと、基板支持部材25aに取り付けられる基板保護板26を有している。樹脂部材22は、さらに、基板保護板26に取り付けられる回路基板支持部材25bと、回路基板支持部材25bを挟むように井桁状に取り付ける柱23a,23cと、回路基板支持部材25bの中間部分に対し井桁状に取り付ける柱23bとを有している。開口部24c〜24hは、樹脂部材22を絶縁油に浸けたとき、前記回路基板から発生される熱を循環するために設けられる。この加工法の一例は柱23a,23cを取り付けた後に開口部24c〜24hを切削して空隙を設ける。高電圧スイッチ回路基板27は、基板保護板26に沿って実装する。基板保護板26は、前記第1の電気素子と略同じ大きさで前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有し、第1の電気素子を絶縁するために固着する蓋の機能を果たしている。これによって、図2のように複数配列された場合、特に最終端に配置される第1の電気素子とその周辺に配置される物体との電気的絶縁を行っている。
【0009】
樹脂部材22は、変性ポリフェニレンエーテル(M-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが材料となっている。この材料が選択される理由は部品の高密度化、高性能化の影響で発熱が多くなって耐熱性の要求も高くなっている。また、もう一つの理由は、熱による寸法変化や変形も回避し、加えて難燃性も強く要求されるためである。
【0010】
次に、図1の樹脂部材を複数枚分組み上げて絶縁組立体2を形成する例について図2を用いて説明する。
実際の高電圧スイッチ回路は、複数枚の高電圧スイッチ回路基板27を使用する。そこで、樹脂部材22は、図5に示すように、複数列配置して絶縁組立体2を形成する。図2では、高電圧スイッチ回路基板27が露出する形で説明しているが、実際の絶縁組立体2は基板保護板26で蓋をして、電気回路が絶縁組立体2の表面に存在しないようにしている。高電圧スイッチ回路は、基体23d〜23eの近傍に配置され、放電回路5の基板は符号28で示される空間に配置できるようにしている。この配置により、絶縁組立体2が絶縁油層に浸けられたとき、放電回路5より高電圧スイッチ回路基板27から発熱が多い関係から自然な対流が促されるようになっている。
【0011】
さらに、一つの樹脂部材22では、樹脂厚さを薄く製作しているため自立できないが、絶縁組立体2は樹脂構造体22を多数個重ねることにより、基体23d,23eの面の方向に自立することが可能となる。また、開口24c〜24hが絶縁油等の循環用に設けられており、樹脂部材22を重ねても開口24c〜24hが塞がらない構造となっているため、絶縁油が高電圧スイッチ回路6から発生する熱を効率良く冷却できる。
【0012】
また、図3のように、高電圧スイッチ回路基板用支持部29は、隣接する樹脂構造体22又は高電圧スイッチ回路基板27に働く応力に対し、複数の高電圧スイッチ回路基板27間の絶縁距離を保つように支持する。具体的には、前記複数配列されたセルに対し、前記第1の電気素子の端部に設けられ、隣接する第1の電気素子の背面の端部に到達する長さを有する支持部材29を設ける。支持部材29は、隣接配置される第1の電気素子同士を支持する。これにより、支持部材29は樹脂部材22同士を強固に取り付けることができ、絶縁組立体2の全体の強度を上げることが可能である。
【0013】
また、絶縁組立体2は表面が絶縁体で形成されているため、高電圧回路の電位を有する部分が表面に露出していない。よって、絶縁組立体2を収容し、そこに絶縁油の封入する容器は、導電性を考慮しなくてもよく、例えば金属材料などより広い材質のものから選択できる。
【0014】
以上説明した実施形態によれば、樹脂構造体22は井桁状に取り付けられるなど加工精度がばらつく要素が排除され、各高電圧スイッチ間の絶縁に対し最小の絶縁距離を確保すれば足りる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を説明するための絶縁構造体の構成例を示す図。
【図2】図1の絶縁構造体を複数配列した一例を示す図。
【図3】図1に補強部材を設けた一例を示す図。
【符号の説明】
【0016】
22 樹脂部材、23a〜23c 絶縁部材(柱)、23d〜23e 絶縁部材(基体)、24a〜24b 放電回路基板の設置空間、24c〜24h 開口部、25a〜25b 絶縁部材(基板支持部材)、26 絶縁部材(基板保護板)、27 高電圧スイッチ回路基板、28 放電回路基板用設置空間、29 高電圧スイッチ回路基板用支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電気素子の一方の長手方向に固着され、所定の絶縁強度を有する板状の第1の樹脂構造体と、
この第1の樹脂構造体と対向する位置で前記第1の電気素子の他方の長手方向に固着され、前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有する板状の第2の樹脂構造体と、
前記第1の電気素子の双方の短手方向に固着され、前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有するL字状の第3の樹脂構造体と、
前記第1の電気素子の双方の短手方向に所定間隔の空隙を有して固着され、前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有する板状の第4の樹脂構造体と、
前記第2の樹脂構造体と前記第1の電気素子との接着面の背面に前記第2の樹脂構造体の略中央部に固着され、前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有する板状の第5の樹脂構造体と、から成るセルを具備し、
前記第1の電気素子の直交する方向に沿って前記セルを複数配列し、それぞれのセルを固着し形成されたことを特徴とする絶縁構造体。
【請求項2】
前記複数配列された前記セルの最終端には、前記第1の電気素子と略同じ大きさで前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有し、前記最終端に配置される第1の電気素子を絶縁するために固着する蓋をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の絶縁構造体。
【請求項3】
前記第4の樹脂構造体に設けられる空隙は、前記第1の電気素子から発生される熱を放射することを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載の絶縁構造体。
【請求項4】
前記第1の電気素子が前記第3の樹脂構造体の近傍に配置され、その上方に前記第1の電気素子より発熱量の小さい第2の電気素子が配置されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の絶縁構造体。
【請求項5】
前記複数配列された前記セルに対し、前記第1の電気素子の端部に設けられ、隣接する第1の電気素子の背面の端部に到達する長さを有すると共に、前記第1の樹脂構造体と実質的に同じ絶縁強度を有し、隣接配置される第1の電気素子同士を支持する支持部材をさらに具備したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の絶縁構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−124887(P2007−124887A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261850(P2006−261850)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】