説明

絶縁用カバーシート

【課題】 本発明は、電線などの接続部分や口出し部分などに被せて絶縁被覆するための絶縁用カバーシートに関し、その作業性の向上を図ったものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、片面側に粘着層20を設けた矩形などの絶縁ベースシート10と、絶縁ベースシート10の粘着層20上に少なくとも2分割で貼り付けられたメイン離型紙30とこのメイン離型30より粘着領域が小さいサブ離型紙40からなり、メイン離型紙30が非粘着状態の折返片31を有する絶縁用カバーシートS1にあり、使用時、先ず、サブ離型紙40を剥ぎ取り、絶縁ベースシート10を仮止め接着し、この後、絶縁ベースシート10を、被覆対象部分に添え、この状態で、折返片31を引っ張ることで、簡単に被覆接着作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線などの接続部分や口出し部分などに被せて絶縁被覆するための絶縁用カバーシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線などの接続部分にあっては、接続後、適当な絶縁処理を施すことが必要となる。このため、従来から、その接続部分に対応した専用タイプなどの絶縁用カバーが提供されている(特許文献1〜2)。
【特許文献1】実開昭57−073896号
【特許文献2】実公平06−031613号
【0003】
しかし、より一般的なものとしては、例えば図8に示すように、片面側に粘着層2を設けた矩形の絶縁ベースシート1とこの絶縁ベースシート1の粘着層2上に離型紙3を設けたもの(絶縁用カバーシート)が提案されている。
この絶縁用カバーシートSは、その使用時、離型紙3を剥ぎ取り、例えば図9に示すような、電線(ケーブル:撚り線)5において、作業対象の電線5aを取り出して、図10に示すような、その接続部分5bに被覆するには、絶縁用カバーシートSの一側縁部側を、粘着層2により、貼り付け、この後、残りの絶縁用カバーシートSを巻き付けるようにして被覆している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のように、予め離型紙3を粘着層2の全面に渡って剥ぎ取ると、巻き付け作業時、この粘着層2が、他の電線側に接着したり、シートが折れ曲がる形で粘着層2同士が接着するなどの問題があった。このような不測の接着があると、接着し直したりする必要があるわけであるが、これがなかなか剥がれなかったりして、結構面倒であった。また、粘着層2同士が接着した場合には、粘着層同士の強力な接着力により、剥離困難となって、シート自体を破棄しなければならないことも多々あった。いずれにしても、これらの事態が生じると、作業性の大幅な低下は避けられなかった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、少なくとも離型紙部分を2分割して、メイン離型紙とサブ離型紙とし、メイン離型紙側に折返片を設けることにより、上記したような従来の問題点を解消するようにした絶縁用カバーシートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明は、片面側に粘着層を設けた矩形などの絶縁ベースシートと、前記絶縁ベースシートの粘着層上に少なくとも2分割で貼り付けられたメイン離型紙と当該メイン離型より粘着領域が小さいサブ離型紙からなり、前記メイン離型紙が非粘着状態の折返片を有することを特徴とする絶縁用カバーシートにある。
【0007】
請求項2記載の本発明は、前記メイン離型紙の折返片が、メイン離型紙の延長部分からなり、かつ、前記サブ離型紙との隣接境界部分から折られていることを特徴とする請求項1記載の絶縁用カバーシートにある。
【0008】
請求項3記載の本発明は、前記メイン離型紙の折返片が、前記絶縁ベースシートの粘着範囲外に延びる引張部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁用カバーシートにある。
【0009】
請求項4記載の本発明は、前記メイン離型紙が、2以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の絶縁用カバーシートにある。
【0010】
請求項5記載の本発明は、前記サブ離型紙が、引剥部を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の絶縁用カバーシートにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の絶縁用カバーシートによると、以下のような効果が得られる。
使用にあたって、先ず、粘着領域の小さいサブ離型紙を先に剥ぎ取り、その粘着層を、被覆対象物である、電線などの接続部分の外周に接着(粘着)させて、一種の仮止め接着を行う。この後、メイン離型紙側のシート部分を、電線などの接続部分の外周に軽く添わせて、メイン離型紙の折返片を引っ張れば、メイン離型紙が剥がれ、メイン離型紙側の粘着層が、簡単に電線などの接続部分の残部外周に接着される。
つまり、仮止め接着後、メイン離型紙の折返片を引っ張ることで、簡単に所望の被覆物に絶縁被覆させることができる。このとき、サブ離型紙の粘着領域は小さく設定してあるため、その仮止め接着を、簡単かつ正確に行うことができる。また、このとき、メイン離型紙は貼り付けられたままで、非剥離状態にあるため、メイン離型紙側の粘着領域が、他の電線側などに接着したり、シートの粘着層同士が接着するなどの問題も根本的に解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明に係る絶縁用カバーシートの一例を示したものである。
図中、絶縁用カバーシートS1は、片面側に粘着層20を設けた矩形の絶縁ベースシート10と、この絶縁ベースシート10の粘着層20上に2分割で貼り付けられたメイン離型紙30とサブ離型紙40からなる。
【0013】
サブ離型紙40は、図示のように、メイン離型紙30より粘着領域が小さく(少なくともメイン離型紙の粘着領域の同等以下)してなり、本例では、絶縁ベースシート10の図中左縁部寄りの粘着層20上に狭い幅で貼り付けてある。
一方、メイン離型紙30は、サブ離型紙40の粘着領域以外の広い部分(残部)、即ち、絶縁ベースシート10の図中左縁部途中から右縁部に掛けての粘着層20上に幅広く貼り付けてある。このメイン離型紙30は、粘着層20に直接貼着される貼着部31の他に、粘着層20に対して、非粘着状態となる折返片32を有する。
【0014】
この折返片32は、例えば、貼着部31の延長部分で形成することが好ましく、サブ離型紙40との隣接境界部分Lを起点として、折り返してある。この折返片32の幅(長さ)は、特に限定されないが、好ましくは図示のように、絶縁ベースシート10の粘着範囲外にまで延ばして、この延長部分を、剥離時、作業者が引っ張るための引張部32aとしておくとよい。
【0015】
上記絶縁ベースシート10の大きさは、被覆対象物、例えば電線などの接続部分や口出し部分などに被せられる矩形の大きさであればよい。その材質も特に問わないが、プラスチックフィルム、樹脂含浸や樹脂塗布による複合型の繊維地や布地、紙地、これらの単独態様の生地、さらには、ゴムシート(フィルム)、ゴム含浸やゴム塗布による複合型の繊維地や布地、紙地などであればよい。なお、絶縁ベースシート10の形状は、上記矩形に限定されず、多少の変形矩形であってもよい。勿論用途によっては、楕円形や円形、菱形、さらには、これらの変形形状であってもよい。また、上記粘着層20は、粘着材料の塗布層や浸漬層(粘着液槽への浸漬で形成した層)、或いは、粘着フィルム層(粘着フィルムを貼り付けた層)などとして形成する。
【0016】
上記メインやサブの離型紙30、40のベース地は、通常紙地を用いるが、紙地に限定されず、例えば樹脂フィルムを用いることも可能である。このベース地の片面側には、通常粘着層20側とは接着されない非接着性の離型層を設けるものとするが、粘着層20側と接着されない、離型材料を混合させた混合紙地や、非接着性の樹脂フィルムの場合、離型層を省略することも可能である。
【0017】
このようにしてなる、絶縁用カバーシートS1を、例えば、図2に示すように、被覆対象物である、電線50の被覆材として使用する場合には、先ず、サブ離型紙40を剥がす。そして、サブ離型紙40の剥ぎ取られた粘着層20部分を、所望の部位(例えば内部導体51の接続部分を跨いだ左右の被覆層52の部分間)に仮止め接着させる。
この仮止め接着は、サブ離型紙40の剥ぎ取られた粘着層20部分以外は、未だメイン離型紙30が貼り付けられたままであるため、メイン離型紙30側の粘着層20に邪魔されることなく行うことができる。つまり、メイン離型紙30側の粘着層20が、他の部分に接着したり、粘着層20同士が接着するなどの懸念は全くない。
また、仮止め接着自体も、粘着領域が狭いことから、試し感覚で気軽に行うことができる。仮に仮止め箇所が、目的の接着箇所から多少ずれても、粘着領域が狭いことで、容易に剥ぎ取って、やり直すことができる。つまり、良好な作業性が得られる。
【0018】
この仮止め接着後は、図示のように、メイン離型紙30が貼り付けられたままで、絶縁ベースシート10を、電線50の外周(内部導体51の左右の被覆層52の部分間)に巻き付けるようにして軽く添える。この巻き込みは、上記した仮止め接着により、適正な位置決め(位置取り)が行っているため、単に機械的に巻き添えるのみでよい。従って、この作業も、簡単に行うことができる。
【0019】
次に、この軽く添えた状態で、メイン離型紙30の絶縁ベースシート10外に突出している(はみ出している)引張部32aを、矢印方向Aに引っ張ればよい。
そうすると、メイン離型紙30の折返片32が、電線50の外周8(被覆層52)を滑って引き出される一方、この引き出しによって、粘着層20に貼り付けられているメイン離型紙30の貼着部31も、サブ離型紙40との隣接境界部分Lを起点として、剥離しつつ繰り出される
【0020】
従って、このメイン離型紙30の貼着部31の繰り出しに合わせて、作業者が、外部から絶縁ベースシート10を押圧すれば、メイン離型紙30側の粘着層20が、電線50の外周に所望の形で接着される。一方、メイン離型紙30は、折返片32から貼着部31へと一緒に連なって取り出される。これらの作業は、特に面倒な点はなく、簡単に行うことができる。
【0021】
従来、離型紙を全部剥ぎ取った状態で、絶縁ベースシートを巻き付ける場合、被覆対象物の外周に綺麗に巻き添えることが難しく、シート部分に皺が生じたり、不要な空気が取り残されたりして、綺麗な接着ができないことが多かった。
しかし、上記絶縁用カバーシートS1の場合、メイン離型紙30の折返片32の引っ張りにより、貼着部31が徐々に剥がれるため、簡単な外部からの押圧により、皺が生じたり、不要な空気が取り残されたりすることなく、綺麗な接着が得られる。つまり、接着不良の大幅な低減が期待でき、良好な作業性が得られる。
また、このとき、絶縁ベースシート10が巻き付けられた状態で、メイン離型紙30が取り除かれるため、作業環境からの不要な異物や埃などの侵入が効果的に防止される。
結果として、これにより、綺麗な状態の粘着層20が確保され、この綺麗な粘着層20により接着されるため、強固な接着力が得られる。
【0022】
図3〜図4は、本発明に係る絶縁用カバーシートの他の例を示したものである。
図3の絶縁用カバーシートS2は、メイン離型紙30が、引張部32aのない折返片32からなる場合で、図4の絶縁用カバーシートS3は、メイン離型紙30自体が、さらに2分割された場合である。なお、他の基本的な部分は、上記図1の絶縁用カバーシートS1の場合と同構成である。
【0023】
図3の絶縁用カバーシートS2では、引張部32aがないので、図1の絶縁用カバーシートS1と同様、図2に示す、電線50の被覆材として使用する場合には、サブ離型紙40の剥ぎ取り、その仮止め接着後、絶縁ベースシート10を、電線50の外周に軽く巻き添えつつ、同時に、メイン離型紙30の折返片32を徐々に引っ張る。
これにより、メイン離型紙30の貼着部31が徐々に剥がれるため、作業者が貼着部31の剥ぎ取りに合わせて、絶縁ベースシート10を外側から押圧すれば、絶縁ベースシート10の粘着層20が、電線50の外周に接着される。
この場合、図1の絶縁用カバーシートS1に比較して、多少慣れが必要であるが、基本的には、良好な作業性が得られる。このときは、折返片32が引張部となる。
なお、折返片32の長さは、絶縁ベースシート10の粘着領域より短くとも、実用的てきには特に支障はない。
【0024】
図4の絶縁用カバーシートS3の場合、折返片32が2個(枚)あるが、それぞれの折返片32には、引張部32aがあるため、図1の絶縁用カバーシートS1と同様、図2に示す、電線50の被覆材として使用する場合には、図1の絶縁用カバーシートS1と全く同様にして、行うことができる。つまり、電線50の内側の引張部32aから、次々と引っ張ることによって、簡単に接着作業を行うことができる。
なお、2枚の折返片32にあっては、引張部32aのないものとの組み合わせや、引張部32aのないもののみとすることもできる。引張部32aのない折返片32の場合は、図3の絶縁用カバーシートS2の場合と同時にして行えばよい。
この絶縁用カバーシートS3は、メイン離型紙30側の粘着領域が、より広い(長い)場合において、有用となる。粘着領域が広いと、その分折返片32が長くなり、1枚の折返片32だと、それに対応して、繰り出さし長さが長くなり過ぎるため、取扱性が低下する恐れがあるからである。従って、また、3個以上とすることも可能である。
【0025】
図5〜図7は、さらに本発明に係る絶縁用カバーシートの他の例を示したものである。これらの絶縁用カバーシートS4〜S6は、いずれもサブ離型紙40の剥離性を高めるため、その一部(例えばコーナー部)に引剥部41〜43を設けたものである。なお、他の基本的な部分は、上記図1の絶縁用カバーシートS1の場合と同構成である。
引剥部41は、粘着層20の一部を取り除いて非粘着状態とした場合、引剥部42は、サブ離型紙40の一部からのミニ折返片を形状した場合、引剥部43は、サブ離型紙40の一部からの延長片を形成した場合である。
いずれもサブ離型紙40の剥離にあたって、この部分を捲ったり、引っ張るなどすれば、簡単にサブ離型紙40を剥がすことができる。従来、サブ離型紙40の密着性が良好であるほと、サブ離型紙40自体の剥ぎ取りが難しくなるという問題があったが、引剥部41〜43により、この点が解消される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る絶縁用カバーシートの一例を示した斜視図である。
【図2】図1の絶縁用カバーシートの使用態様を示した縦断面図である。
【図3】本発明に係る絶縁用カバーシートの他の例を示した斜視図である。
【図4】本発明に係る絶縁用カバーシートの他の例を示した斜視図である。
【図5】本発明に係る絶縁用カバーシートの他の例を示した部分斜視図である。
【図6】本発明に係る絶縁用カバーシートの他の例を示した部分斜視図である。
【図7】本発明に係る絶縁用カバーシートの他の例を示した部分斜視図である。
【図8】従来の絶縁用カバーシートを示した斜視図である。
【図9】図8の絶縁用カバーシートの使用態様を示した概略説明図である。
【図10】図8の絶縁用カバーシートによる絶縁被覆部を示した側面図である。
【符号の説明】
【0027】
S1〜S6・・・絶縁用カバーシート、10・・・絶縁ベースシート、20・・・粘着層、30・・・メイン離型紙、31・・・貼着部、32・・・折返片、32a・・・引張部、40・・・サブ離型紙、41〜43・・・引剥部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面側に粘着層を設けた矩形などの絶縁ベースシートと、前記絶縁ベースシートの粘着層上に少なくとも2分割で貼り付けられたメイン離型紙と当該メイン離型より粘着領域が小さいサブ離型紙からなり、前記メイン離型紙が非粘着状態の折返片を有することを特徴とする絶縁用カバーシート。
【請求項2】
前記メイン離型紙の折返片が、メイン離型紙の延長部分からなり、かつ、前記サブ離型紙との隣接境界部分から折られていることを特徴とする請求項1記載の絶縁用カバーシート。
【請求項3】
前記メイン離型紙の折返片が、前記絶縁ベースシートの粘着範囲外に延びる引張部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の絶縁用カバーシート。
【請求項4】
前記メイン離型紙が、2以上であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の絶縁用カバーシート。
【請求項5】
前記サブ離型紙が、引剥部を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の絶縁用カバーシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−205837(P2009−205837A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44371(P2008−44371)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】