絶縁被覆導線製造方法
【課題】構造が簡単で、かつ、絶縁被覆材料を導線に対して被覆すること
【解決手段】
断面が矩形状である導線2と絶縁被覆材料3を、金型開口部112から押出成形し、導線2の外周に絶縁被覆材料3を被覆した加工前絶縁被覆導線1を製造する絶縁被覆導線製造工程と、加工前絶縁被覆導線1に曲げ加工を行い曲げ部N2を有する加工後絶縁被覆導線10を形成する曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2の外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みが、曲げ部M2の内周側M25の絶縁被覆材料3の厚みよりも厚い加工前絶縁被覆導線1を製造することにより、加工前絶縁被覆導線1を曲げた時に加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みと曲げ部N2の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みが同じにすることができる。
【解決手段】
断面が矩形状である導線2と絶縁被覆材料3を、金型開口部112から押出成形し、導線2の外周に絶縁被覆材料3を被覆した加工前絶縁被覆導線1を製造する絶縁被覆導線製造工程と、加工前絶縁被覆導線1に曲げ加工を行い曲げ部N2を有する加工後絶縁被覆導線10を形成する曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2の外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みが、曲げ部M2の内周側M25の絶縁被覆材料3の厚みよりも厚い加工前絶縁被覆導線1を製造することにより、加工前絶縁被覆導線1を曲げた時に加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みと曲げ部N2の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みが同じにすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面が矩形状である導線を、金型開口部から搬出することにより、前記導線の外周に絶縁被覆材料を被膜させた絶縁被覆導線を製造する絶縁被覆導線製造工程と、前記絶縁被覆導線に曲げ部を形成する曲げ加工を行う曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転電機の固定子あるいは固定子等に用いられる、断面が矩形状である導線の外周に絶縁被覆膜を被覆させた絶縁被覆導線が曲げ加工されてきた。
例えば、図15に示すように、図12の加工前絶縁被覆導線100を180度の曲げ加工後絶縁被覆導線103とする加工を行うことがある。図13に、図12の曲げ部Q2にあたるGG断面を示し、図14に、図12の直線部Q3にあたるHH断面を示す。また、図16に、図15の曲げ部S2にあたるII断面を示す。また、図17に、図15の直線部S3にあたるJJ断面を示す。
図12に示す曲げ加工工程を行う前の加工前絶縁被覆導線100の曲げ部Q2の断面は、図13に示すように外周側Q21、内周側Q22、側面側Q23の導線101に被覆している絶縁被覆材料102の厚みが全周にわたって均一である。また、図14に示すように直線部Q3の断面も、外周側Q24、内周側Q25、側面側Q26の導線101に被覆している絶縁被覆材料102の厚みが全周にわたって均一である。直線部Q1も直線部Q3と同様であるため説明を割愛する。
【0003】
しかし、図12に示す加工前絶縁被覆導線100を曲げ加工することにより形成された図15に示す加工後絶縁被覆導線103の断面は、以下のようになるため問題となる。
すなわち、図17に示す直線部S3の断面は曲げ加工による変形を伴わないため、外周側Q24、内周側Q25、側面側Q26の導線101に被覆している絶縁被覆材料102の厚みが全周にわたって均一のままである。直線部S1も変形を伴わないため同様である。
他方、曲げ部S2は曲げ加工により変形を伴うため、曲げ部S2の外周側S21は伸びる。そのため、絶縁被覆材料102が伸び外周側S21の表面積が大きくなるため厚みが薄くなる。反対に曲げ部S2の内周側S22は圧縮され縮むため絶縁被覆材料102の表面積が小さくなるため縮み厚みが厚くなる。
絶縁被覆膜の厚さが薄くなると絶縁抵抗が小さくなるため問題となる。また、絶縁被覆膜の厚さが厚くなると、必要な絶縁性能に対し過剰品質となるためコストが余分にかかり無駄が多くなるためコストが高くなり問題となる。
【0004】
そこで、絶縁被覆導線を曲げ加工する方法として、特許文献1に示すものがある。
特許文献1においては、曲げ加工を行う前に、絶縁被覆導線の曲げ部のうち圧縮変形により形状の変化が大きい内周側に対して、圧縮加工を行う。圧縮加工は具体的には、曲げ部の内周側の導線及び絶縁被覆膜の寸法を小さくすることにより内周側の導線及び絶縁被覆膜が圧縮により膨らんだ場合に、膨らまない外周側の導線と絶縁被覆膜と同じ膨らみになるように圧縮加工をする。
それにより、絶縁被覆導線を曲げ加工したとしても、内周側の導線及び絶縁被覆膜と外周側の導線及び絶縁被覆膜の厚みが同じになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−148791号公報
【特許文献2】特開平6−189482号公報
【特許文献3】実開2006−100039号公報
【特許文献4】特開2008−043026号公報
【特許文献5】特開2009−232607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明には、以下の問題があった。
特許文献1の発明は、曲げ加工を行う前に、圧縮加工を行わなければならない。圧縮加工は、導線に絶縁被覆膜を被膜する工程とは、全く別個の工程であるため、新たに圧縮加工工程を追加しなければならない。圧縮加工工程を追加すると、生産効率が悪くなりコスト増につながるため問題となる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、絶縁被覆膜を導線に被覆する工程において、絶縁被覆膜の厚みを変えることで曲げ加工後の絶縁被覆導線の被覆膜の幅をほぼ均一にすることができる絶縁被覆導線製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様における絶縁被覆導線製造方法は、以下の構成を有する。
(1)断面が矩形状である導線を、金型開口部から搬出することにより、前記導線の外周に絶縁被覆材料を被膜させた絶縁被覆導線を製造する絶縁被覆導線製造工程と、前記絶縁被覆導線に曲げ部を形成する曲げ加工を行う曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、前記絶縁被覆導線製造工程により製造された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みよりも厚いこと、を特徴とするものである。
(2)(1)に記載する絶縁被覆導線製造方法において、前記曲げ加工工程により曲げ加工された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みとほぼ同じになること、を特徴とするものである。
(3)(1)に記載する絶縁被覆導線製造方法において、前記絶縁被覆導線製造工程により製造された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の側面側の前記絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント厚いこと、前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の側面側の前記絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント薄いこと、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
上記絶縁被覆導線製造方法の作用及び効果について説明する。
断面が矩形状である導線を、金型開口部から搬出することにより、導線の外周に絶縁被覆材料を被膜させた絶縁被覆導線を製造する絶縁被覆導線製造工程と、絶縁被覆導線に曲げ部を形成する曲げ加工を行う曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、絶縁被覆導線製造工程により製造された絶縁被覆導線の曲げ部の外周側の絶縁被覆材料の厚みが、曲げ部の内周側の絶縁被覆材料の厚みよりも厚いことにより、絶縁被覆導線を曲げた時に曲げ部の内周側は圧縮され表面積が減ることにより絶縁被覆材料の厚みが厚くなり、曲げ部の外周側は伸ばされ表面積が増えることにより絶縁被覆材料の厚みが薄くなることで、ほぼ同じ厚みにすることができる。
曲げ部の内周側、外周側、側面側と全周にわたり均一にすることができる。また、曲げ部と第1直線部及び第2直線部の内周側、外周側、側面側とを全周にわたり均一にすることができる。全周にわたり均一にすることができることにより、
また、曲げ部の外周側の絶縁被覆材料の厚みを厚くすることができる。そのため、絶縁抵抗が大きい絶縁被覆材料が薄い部分はなくなり、最終製品であるモータの性能を向上させることができる。
また、曲げ部の内周側の絶縁被覆材料の厚みを薄くすることができる。そのため、絶縁被覆材料の使用量を減少させることができるため、絶縁被覆導線を製造するコストを低減することができる。
また、新たな加工工程を追加することなく、必須の絶縁被覆導線の被覆工程により絶縁被覆導線を曲げた時に曲げ部の内周側の絶縁被覆材料の厚みと曲げ部の外周側の絶縁被覆材料の厚みが同じにすることができる。そのため、生産効率を下げることなく、コストを低減した絶縁被覆導線を製造することができる。
また、絶縁被覆導線の曲げ部の外周側は、10パーセントから30パーセント円周が伸びる。そのため、曲げ部の外周側の絶縁被覆材料の厚みを、曲げ部の側面側の絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント厚くすることにより、外周側の絶縁被覆材料の厚みが側面側の絶縁被覆材料の厚みとほぼ同じになる。また、絶縁被覆導線の曲げ部の内周側は10パーセントから30パーセント円周が縮む。そのため、曲げ部の内周側の絶縁被覆材料の厚みを、曲げ部の側面側の絶縁被覆材料の厚みより10パーセントから30パーセント薄くすることにより、内周側の絶縁被覆材料の厚みが側面側の絶縁被覆材料の厚みとほぼ同じになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の本実施例1に係る曲げ加工前の絶縁被覆導線の正面図である。
【図2】本発明の本実施例1に係る図1の第1直線部のAA断面図である。
【図3】本発明の本実施例1に係る図1の曲げ部のBB断面図である。
【図4】本発明の本実施例1に係る図1の第2直線部のCC断面図である。
【図5】本発明の本実施例1に係る曲げ加工後の絶縁被覆導線の正面図である。
【図6】本発明の本実施例1に係る図5の第1直線部のDD断面図である。
【図7】本発明の本実施例1に係る図5の曲げ部のEE断面図である。
【図8】本発明の本実施例1に係る図5の第2直線部のFF断面図である。
【図9】本発明の本実施例1に係る絶縁被覆導線製造装置の一部断面上面図である。
【図10】本発明の本実施例1に係る図9の射出成型部のKK断面図である。
【図11】本発明の本実施例1に係るガイドローラ治具の外観斜視図である。
【図12】従来技術に係る曲げ加工前の絶縁被覆導線の正面図である。
【図13】従来技術に係る図12の曲げ部のGG断面図である。
【図14】従来技術に係る図12の直線部のHH断面図である。
【図15】従来技術に係る曲げ加工後の絶縁被覆導線の正面図である。
【図16】従来技術に係る図15の曲げ部のII断面図である。
【図17】従来技術に係る図15の直線部のJJ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る絶縁被覆導線製造方法により製造される加工前絶縁被覆導線1、及び絶縁被覆導線製造方法に用いる絶縁被覆導線製造装置5の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
<絶縁被覆導線の全体構成>
(曲げ加工前の絶縁被覆導線)
図1に、曲げ加工前の加工前絶縁被覆導線1の正面図を示す。図2に、図1の第1直線部M1のAA断面図を示す。図3に、図1の曲げ部M2のBB断面図を示す。図4に、図1の第2直線部M3のCC断面図を示す。
図1に示すように、加工前絶縁被覆導線1は線状のものである。図1においては、図面の都合上一部のみを示すが、本実施形態においては線状のものであるため、図1の加工前絶縁被覆導線1が連続した形状となる。図2乃至図4に示すように、加工前絶縁被覆導線1は、断面矩形状をなす。
図2に示すように、加工前絶縁被覆導線1の内部には、銅線等である導線2が挿通している。導線2は、断面矩形状をなす。
【0013】
導線2の全周の外周には、絶縁被覆材料3が被覆されている。絶縁被覆材料3は、絶縁性を確保するためのもので、エナメル層(PAI、PA等)や熱可塑性樹脂等によるものである。
図2に示す本実施例の加工前絶縁被覆導線1の第1直線部M1においては、絶縁被覆材料3は、外周側M21、内周側M22、側面側M23の全てで均一に50μm被膜している。同様に、図4に示す本実施例の加工前の加工前絶縁被覆導線1の第2直線部M3においては、絶縁被覆材料3は、導線2の外周側M27、内周側M28、側面側M29の全てで均一に50μm被膜している。
【0014】
他方、図3に示す本実施例の曲げ加工後に曲げ部となる曲げ部M2においては、外周側M24に対する絶縁被覆材料3の厚みが、内周側M25に対する絶縁被覆材料3の厚みよりも厚く形成されている。
また、側面側M26に対する絶縁被覆材料3の厚みと比較して、外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みは厚く形成されている。外周側M24の厚みは、側面側M26の厚みと比較して10パーセント〜30パーセント程度厚く形成されている。
他方、側面側M26に対する絶縁被覆材料3の厚みと比較して、内周側M25の厚みは薄く形成されている。内周側M25の厚みは、側面側M26の厚みと比較して10パーセント〜30パーセント程度薄く形成されている。
【0015】
本実施例においては、側面側M26の厚みは、第1直線部M1の外周側M21、内周側M22、側面側M23、及び第2直線部M2の外周側M27、内周側M28、側面側M29の絶縁被覆材料3の厚みと同じく50μmに形成されている。
外周側M24の厚みは、側面側M26の厚みである50μmよりも約20パーセント厚く60μmに形成されている。また、内周側M25の厚みは、側面側M26の厚み50μmよりも約20パーセント薄く40μmに形成されている。
【0016】
(曲げ加工後の絶縁被覆導線)
図5に、曲げ加工後の加工後絶縁被覆導線10の正面図を示す。図6に、図5の第1直線部のDD断面図を示す。図7に、図5の曲げ部のEE断面図を示す。図8に、図5の第2直線部のFF断面図に示す。
図5に示す曲げ加工後の加工後絶縁被覆導線10は、図1に示す曲げ加工前の加工前絶縁被覆導線1を曲げ加工により加工したものである。その特徴は、図5に示すように、曲げ部N2を有することにある。本実施形態においては、曲げ部N2は180度の角度を持つが、加工後絶縁被覆導線10の使用態様により角度は何度であってもよい。
曲げ部N2の外周側N24の円周は、曲げ加工されることにより伸び、曲げ部M2の中心に中心線をとった場合の外周側M24の中心線の円周と比較して10パーセントから30パーセント伸びる。また、曲げ部N2の内周側N25の円周は、曲げ加工されることにより縮み、曲げ部M2の内周側M25の中心線の円周と比較して10パーセントから30パーセント縮む。
【0017】
図6に示す本実施例の加工後絶縁被覆導線10の第1直線部N1においては、絶縁被覆材料3は、外周側N21、内周側N22、側面側N23の全てで均一に50μm被膜している。同様に、図8に示す本実施例の加工後の加工後絶縁被覆導線10の第2直線部N3においては、絶縁被覆材料3は、導線2の外周側N27、内周側N28、側面側N29の全てで均一に50μm被膜している。
第1直線部N1及び第2直線部N3においては、加工前絶縁被覆導線1の第1直線部M1及び第2直線部M3と比較して、絶縁被覆材料3の厚みに変化は生じない。第1直線部N1及び第2直線部N3に関しては、曲げ加工がされる曲げ部N2と異なり、なんら引張力及び圧縮力が掛からないため絶縁被覆材料3の厚みに変化は生じないためである。
【0018】
他方、図7に示す本実施例の曲げ加工後の曲げ部N2においては、外周側N24に対する絶縁被覆材料3の厚みが、内周側N25に対する絶縁被覆材料3の厚みとほぼ同じになる。本実施例においては、外周側N24の厚みが50μmであり、内周側N25の厚みがほぼ同じく50μmとなる。側面側N26は、伸び及び圧縮することがないため、厚みは加工前と変わらず50μmである。
すなわち、曲げ部N2は曲げ加工をされることにより、曲げ部N2の外周側N24は伸び、曲げ部N2の外周側N24の表面積が増えるため絶縁被覆材料3もともに表面積が増え膜厚が60μmから50μmに約20パーセント程度薄く伸ばされる。他方、曲げ部N2の内周側N25は圧縮され曲げ部N2の内周側N25の表面積が減るため絶縁被覆材料3とともに表面積が減り膜厚が40μmから50μmに約20パーセント程度厚くなる。それにより、外周側N24、内周側N25、及び側面側N26の絶縁被覆材料3の厚みがほぼ同じになる。
【0019】
加工前絶縁被覆導線1は曲げ加工を行うことにより加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の外周側の円周は、10パーセントから30パーセント伸びる。そのため、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2の外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みを、曲げ部M2の側面側M26の絶縁被覆材料3の厚みより10パーセント〜30パーセント厚くする。それにより、加工後の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みが側面側N26の絶縁被覆材料3の厚みとほぼ同じにすることができるのである。
また、加工前絶縁被覆導線1は曲げ加工を行うことにより加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25は、10パーセントから30パーセント円周が縮む。そのため、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みを、曲げ部N2の側面側N26の絶縁被覆材料3の厚みより10パーセントから30パーセント薄くする。それにより、内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みが側面側N26の絶縁被覆材料3の厚みとほぼ同じにすることができるのである。
【0020】
加工前絶縁被覆導線1を曲げ、加工後絶縁被覆導線10に加工した後において、曲げ部N2の内周側N25の厚みと外周側N26の厚みをほぼ同じにすることができる。それにより、曲げ部N2の外周側N24に対する絶縁被覆材料3の厚みを厚くすることができる。したがって、絶縁抵抗を低くすることができるため、最終製品であるモータの性能を向上させることができる。
また、曲げ部N2の内周側N25に対する絶縁被覆材料3の厚みを薄くすることができる。そのため、絶縁被覆材料3の使用量を減少させることができ、絶縁被覆導線を製造するコストを低減することができる。
また、新たな圧縮加工工程等を追加することなく、必須の絶縁被覆導線の被覆工程により絶縁被覆導線を曲げた時に曲げ部N2の内周側N25に対する絶縁被覆材料3の厚みと曲げ部N2の外周側N24に対する絶縁被覆材料3の厚みが同じにすることができる。そのため、生産効率を下げることなく、コストを低減した加工後絶縁被覆導線10を製造することができる。
【0021】
<絶縁被覆導線製造装置の全体構成>
図9に絶縁被覆導線製造装置5の正面図を示す。図10に、図9に示す射出成型部40のKK断面図を示す。図11に、第1ガイドローラ治具20の外観斜視図を示す。
図9に示すように、絶縁被覆導線製造装置5は、第1ガイドローラ治具20、第2ガイドローラ治具30、及び、射出成型部40を有する。第1ガイドローラ治具20と第2ガイドローラ治具30の間に、射出成型部40が備えられている。第1ガイドローラ治具20と第2ガイドローラ治具30の間には導線2が引張され、導線2は射出成型部40内を挿通している。
導線2は図9中、左側から右側へと流れる。
図9に示すように、射出成型部40は、成型金型41、常用のニップル42を有する。
成型金型41は、絶縁被覆材料3が流入する中空円錐台凹部である流入部411が形成されている。流入部411の中空円錐台凹部の中心軸線上に金型開口部412が形成されている。
図10に示すように、金型開口部412は、断面矩形状の形状をしている。図10においては、金型開口部412の中心を導線2が挿通しており、導線2の全周にわたり均一に絶縁被覆材料3が被覆している。図中、金型開口部412の上面412Aが加工前絶縁被覆導線1の外周側にあたり、下面412Bが内周側にあたり、側面412Cが側面側にあたる。したがって、金型開口部412に対して導線2の位置を制御することにより、内周側、外周側、側面側の絶縁被覆材料3の厚みを変更することができる。
【0022】
図11に示すように、第1ガイドローラ治具20には、上下ガイドローラ21、左右ガイドローラ22、上面膜厚測定器23、側面膜厚測定器24、上下サーボモータ25、及び、左右サーボモータ26を有する。
上下サーボモータ25は、上下ガイドローラ21を駆動するためのモータであり、左右サーボモータ26は、左右ガイドローラ22を駆動するためのモータである。
上面膜厚測定器23及び側面膜厚測定器24は、非接触式のレーザ、赤外線、超音波等のセンサにより被覆膜の厚みをリアルタイムに計測し、被覆膜が所定の範囲内にあるか否かを判断する。被覆膜が所定の範囲にない場合には、導線2の上下左右方向の位置を変化させて被覆膜を所定の位置に戻し、位置決めを行う。なお、測定方法は、導線2の上面の2か所、下面の1か所、右側面の1か所、左側面の1か所の絶縁被覆材料の被膜幅を測定することで、膜厚を計ることができる。
第1ガイドローラ治具20について説明したが、第2ガイドローラ治具30の構成も同様であるため説明を割愛する。
【0023】
<絶縁被覆導線製造装置の作用効果>
導線2は、第1ガイドローラ治具20と第2ガイドローラ治具30により引張された状態であり、図示しないリールにより図9中の左側から右側に移動させる。
導線2は、ニップル42の誘導穴422を挿通する。導線2は、第1ガイドローラ治具20、及び、第2ガイドローラ治具30により位置制御されることで、金型開口部412を挿通する場所を変更することができる。
【0024】
本実施形態においては、図1に示す加工前絶縁被覆導線1の第1直線部M1が挿通する場合には、導線2が図10に示す金型開口部412の中心を挿通するように、第1ガイドローラ治具20、及び、第2ガイドローラ治具30により位置制御する。具体的には、金型開口部412の上下方向は、上面412Aと下面412Bから同じ距離の位置に位置するように制御し、左右方向は、左右の側面412Cから同じ距離の位置に位置するように制御する。
それにより、導線2が金型開口部412を挿通する際に、流入部411から流入した絶縁被覆材料3が導線2に被膜する。図2に示すように、第1直線部M1に対して絶縁被覆材料3が全周にわたって均一に50μm被膜させることができる。
【0025】
続いて、図1に示す加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2が挿通する場合、導線2の上下方向では、図10に示す金型開口部412の中心より下面412Bに近い位置に位置するように制御する。また、導線2は、左右方向では、金型開口部412の中心に位置するようにし左右の側面412Cから同じ距離の位置に位置するように制御する。以上の位置制御は、第1ガイドローラ治具20、及び、第2ガイドローラ治具30により位置制御を行う。
それにより、図3に示すように、曲げ部M2の外周側M24に対する絶縁被覆材料3の厚みが、内周側M25に対する絶縁被覆材料3の厚みよりも厚く形成することができる。
また、側面側M26に対する絶縁被覆材料3の厚みと比較して、外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みは厚く形成されている。外周側M24の厚みは、側面側M26の厚みと比較して10パーセント〜30パーセント程度厚く形成することができる。
他方、側面側M26に対する絶縁被覆材料3の厚みと比較して、内周側M25の厚みは薄く形成されている。内周側M25の厚みは、側面側M26の厚みと比較して10パーセント〜30パーセント程度薄く形成することができる。
【0026】
本実施例においては、側面側M26の厚みは、第1直線部M1の外周側M21、内周側M22、側面側M23、及び第2直線部M2の外周側M27、内周側M28、側面側M29の絶縁被覆材料3の厚みと同じく50μmに形成することができる。
外周側M24の厚みは、側面側M26の厚みである50μmよりも約20パーセント厚く60μmに形成することができる。また、内周側M25の厚みは、側面側M26の厚み50μmtよりも約20パーセント薄く40μmに形成することができる。
【0027】
本実施形態においては、図1に示す加工前絶縁被覆導線1の第2直線部M3が挿通する場合には、導線2が図10に示す金型開口部412の中心を挿通するように、第1ガイドローラ治具20、及び、第2ガイドローラ治具30により位置制御する。具体的には、金型開口部412の上下方向は、上面412Aと下面412Bから同じ距離の位置に位置するように制御し、左右方向は、左右の側面412Cから同じ距離の位置に位置するように制御する。
それにより、導線2が金型開口部412を挿通する際に、流入部411から流入した絶縁被覆材料3が導線2に被膜する。図4に示すように、第1直線部M1に対して絶縁被覆材料3が全周にわたって均一に50μm被膜させることができる。
【0028】
加工後絶縁被覆導線10を図示しない、クランク及びクランプを使用して曲げ工程を行う。クランプにより加工後絶縁被覆導線10を挟み込み、曲げ部N2の中心にクランクを押し当て、クランプを移動させることで曲げ工程を行う。曲げ工程の際に、クランクが曲げ部N2の内周側N25に当接するが、内周側N25が曲げ加工により圧縮され絶縁被覆材料3が圧縮するため、内周側N25の絶縁被覆材料3が厚くなることには何ら影響はない。
【0029】
以上詳細に説明したように、本実施形態においては以下の作用効果を有する。
すなわち、断面が矩形状である導線2と絶縁被覆材料3を、金型開口部112から押出成形し、導線2の外周に絶縁被覆材料3を被覆した加工前絶縁被覆導線1を製造する絶縁被覆導線製造工程と、加工前絶縁被覆導線1に曲げ加工を行い曲げ部N2を有する加工後絶縁被覆導線10を形成する曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2の外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みが、曲げ部M2の内周側M25の絶縁被覆材料3の厚みよりも厚い加工前絶縁被覆導線1を製造することにより、加工前絶縁被覆導線1を曲げた時に加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みと曲げ部N2の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みが同じにすることができる。
また、加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みを厚くすることができる。そのため、隣接する導線2との電気的な漏れが生じることがなくなり、最終製品であるモータの性能を向上させることができる。
また、加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みを薄くすることができる。そのため、絶縁被覆材料3の使用量を減少させることができるため、加工後絶縁被覆導線10を製造するコストを低減することができる。
また、新たな加工工程を追加することなく、必須の導線2に対する絶縁被覆材料3の被覆工程により加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みと曲げ部N2の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みが同じにすることができる。そのため、生産効率を下げることなく、コストを低減した加工前絶縁被覆導線1を製造することができる。
【0030】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で色々な応用が可能である。
例えば、本実施形態においては、加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の角度を180度としたが、絶縁被覆材料の使用態様により角度を変更することができる。また、角度が変更された場合においては、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2の外周側M24及び内周側M25の絶縁被覆材料3の厚みを変更する。例えば、角度が小さくなった場合には、外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みを実施例と比較して薄くする。また、内周側M25の絶縁被覆材料3の厚みを実施例と比較して厚くする。ただし、外周側M24の厚みが内周側M25の厚みと比較して厚いことに変更はない。
【符号の説明】
【0031】
1 加工前絶縁被覆導線
2 導線
3 絶縁被覆材料
5 絶縁被覆導線製造装置
10 加工後絶縁被覆導線
N2 曲げ部
N24 外周側
N25 内周側
112 金型開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面が矩形状である導線を、金型開口部から搬出することにより、前記導線の外周に絶縁被覆材料を被膜させた絶縁被覆導線を製造する絶縁被覆導線製造工程と、前記絶縁被覆導線に曲げ部を形成する曲げ加工を行う曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転電機の固定子あるいは固定子等に用いられる、断面が矩形状である導線の外周に絶縁被覆膜を被覆させた絶縁被覆導線が曲げ加工されてきた。
例えば、図15に示すように、図12の加工前絶縁被覆導線100を180度の曲げ加工後絶縁被覆導線103とする加工を行うことがある。図13に、図12の曲げ部Q2にあたるGG断面を示し、図14に、図12の直線部Q3にあたるHH断面を示す。また、図16に、図15の曲げ部S2にあたるII断面を示す。また、図17に、図15の直線部S3にあたるJJ断面を示す。
図12に示す曲げ加工工程を行う前の加工前絶縁被覆導線100の曲げ部Q2の断面は、図13に示すように外周側Q21、内周側Q22、側面側Q23の導線101に被覆している絶縁被覆材料102の厚みが全周にわたって均一である。また、図14に示すように直線部Q3の断面も、外周側Q24、内周側Q25、側面側Q26の導線101に被覆している絶縁被覆材料102の厚みが全周にわたって均一である。直線部Q1も直線部Q3と同様であるため説明を割愛する。
【0003】
しかし、図12に示す加工前絶縁被覆導線100を曲げ加工することにより形成された図15に示す加工後絶縁被覆導線103の断面は、以下のようになるため問題となる。
すなわち、図17に示す直線部S3の断面は曲げ加工による変形を伴わないため、外周側Q24、内周側Q25、側面側Q26の導線101に被覆している絶縁被覆材料102の厚みが全周にわたって均一のままである。直線部S1も変形を伴わないため同様である。
他方、曲げ部S2は曲げ加工により変形を伴うため、曲げ部S2の外周側S21は伸びる。そのため、絶縁被覆材料102が伸び外周側S21の表面積が大きくなるため厚みが薄くなる。反対に曲げ部S2の内周側S22は圧縮され縮むため絶縁被覆材料102の表面積が小さくなるため縮み厚みが厚くなる。
絶縁被覆膜の厚さが薄くなると絶縁抵抗が小さくなるため問題となる。また、絶縁被覆膜の厚さが厚くなると、必要な絶縁性能に対し過剰品質となるためコストが余分にかかり無駄が多くなるためコストが高くなり問題となる。
【0004】
そこで、絶縁被覆導線を曲げ加工する方法として、特許文献1に示すものがある。
特許文献1においては、曲げ加工を行う前に、絶縁被覆導線の曲げ部のうち圧縮変形により形状の変化が大きい内周側に対して、圧縮加工を行う。圧縮加工は具体的には、曲げ部の内周側の導線及び絶縁被覆膜の寸法を小さくすることにより内周側の導線及び絶縁被覆膜が圧縮により膨らんだ場合に、膨らまない外周側の導線と絶縁被覆膜と同じ膨らみになるように圧縮加工をする。
それにより、絶縁被覆導線を曲げ加工したとしても、内周側の導線及び絶縁被覆膜と外周側の導線及び絶縁被覆膜の厚みが同じになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−148791号公報
【特許文献2】特開平6−189482号公報
【特許文献3】実開2006−100039号公報
【特許文献4】特開2008−043026号公報
【特許文献5】特開2009−232607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明には、以下の問題があった。
特許文献1の発明は、曲げ加工を行う前に、圧縮加工を行わなければならない。圧縮加工は、導線に絶縁被覆膜を被膜する工程とは、全く別個の工程であるため、新たに圧縮加工工程を追加しなければならない。圧縮加工工程を追加すると、生産効率が悪くなりコスト増につながるため問題となる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、絶縁被覆膜を導線に被覆する工程において、絶縁被覆膜の厚みを変えることで曲げ加工後の絶縁被覆導線の被覆膜の幅をほぼ均一にすることができる絶縁被覆導線製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様における絶縁被覆導線製造方法は、以下の構成を有する。
(1)断面が矩形状である導線を、金型開口部から搬出することにより、前記導線の外周に絶縁被覆材料を被膜させた絶縁被覆導線を製造する絶縁被覆導線製造工程と、前記絶縁被覆導線に曲げ部を形成する曲げ加工を行う曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、前記絶縁被覆導線製造工程により製造された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みよりも厚いこと、を特徴とするものである。
(2)(1)に記載する絶縁被覆導線製造方法において、前記曲げ加工工程により曲げ加工された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みとほぼ同じになること、を特徴とするものである。
(3)(1)に記載する絶縁被覆導線製造方法において、前記絶縁被覆導線製造工程により製造された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の側面側の前記絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント厚いこと、前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の側面側の前記絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント薄いこと、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
上記絶縁被覆導線製造方法の作用及び効果について説明する。
断面が矩形状である導線を、金型開口部から搬出することにより、導線の外周に絶縁被覆材料を被膜させた絶縁被覆導線を製造する絶縁被覆導線製造工程と、絶縁被覆導線に曲げ部を形成する曲げ加工を行う曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、絶縁被覆導線製造工程により製造された絶縁被覆導線の曲げ部の外周側の絶縁被覆材料の厚みが、曲げ部の内周側の絶縁被覆材料の厚みよりも厚いことにより、絶縁被覆導線を曲げた時に曲げ部の内周側は圧縮され表面積が減ることにより絶縁被覆材料の厚みが厚くなり、曲げ部の外周側は伸ばされ表面積が増えることにより絶縁被覆材料の厚みが薄くなることで、ほぼ同じ厚みにすることができる。
曲げ部の内周側、外周側、側面側と全周にわたり均一にすることができる。また、曲げ部と第1直線部及び第2直線部の内周側、外周側、側面側とを全周にわたり均一にすることができる。全周にわたり均一にすることができることにより、
また、曲げ部の外周側の絶縁被覆材料の厚みを厚くすることができる。そのため、絶縁抵抗が大きい絶縁被覆材料が薄い部分はなくなり、最終製品であるモータの性能を向上させることができる。
また、曲げ部の内周側の絶縁被覆材料の厚みを薄くすることができる。そのため、絶縁被覆材料の使用量を減少させることができるため、絶縁被覆導線を製造するコストを低減することができる。
また、新たな加工工程を追加することなく、必須の絶縁被覆導線の被覆工程により絶縁被覆導線を曲げた時に曲げ部の内周側の絶縁被覆材料の厚みと曲げ部の外周側の絶縁被覆材料の厚みが同じにすることができる。そのため、生産効率を下げることなく、コストを低減した絶縁被覆導線を製造することができる。
また、絶縁被覆導線の曲げ部の外周側は、10パーセントから30パーセント円周が伸びる。そのため、曲げ部の外周側の絶縁被覆材料の厚みを、曲げ部の側面側の絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント厚くすることにより、外周側の絶縁被覆材料の厚みが側面側の絶縁被覆材料の厚みとほぼ同じになる。また、絶縁被覆導線の曲げ部の内周側は10パーセントから30パーセント円周が縮む。そのため、曲げ部の内周側の絶縁被覆材料の厚みを、曲げ部の側面側の絶縁被覆材料の厚みより10パーセントから30パーセント薄くすることにより、内周側の絶縁被覆材料の厚みが側面側の絶縁被覆材料の厚みとほぼ同じになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の本実施例1に係る曲げ加工前の絶縁被覆導線の正面図である。
【図2】本発明の本実施例1に係る図1の第1直線部のAA断面図である。
【図3】本発明の本実施例1に係る図1の曲げ部のBB断面図である。
【図4】本発明の本実施例1に係る図1の第2直線部のCC断面図である。
【図5】本発明の本実施例1に係る曲げ加工後の絶縁被覆導線の正面図である。
【図6】本発明の本実施例1に係る図5の第1直線部のDD断面図である。
【図7】本発明の本実施例1に係る図5の曲げ部のEE断面図である。
【図8】本発明の本実施例1に係る図5の第2直線部のFF断面図である。
【図9】本発明の本実施例1に係る絶縁被覆導線製造装置の一部断面上面図である。
【図10】本発明の本実施例1に係る図9の射出成型部のKK断面図である。
【図11】本発明の本実施例1に係るガイドローラ治具の外観斜視図である。
【図12】従来技術に係る曲げ加工前の絶縁被覆導線の正面図である。
【図13】従来技術に係る図12の曲げ部のGG断面図である。
【図14】従来技術に係る図12の直線部のHH断面図である。
【図15】従来技術に係る曲げ加工後の絶縁被覆導線の正面図である。
【図16】従来技術に係る図15の曲げ部のII断面図である。
【図17】従来技術に係る図15の直線部のJJ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る絶縁被覆導線製造方法により製造される加工前絶縁被覆導線1、及び絶縁被覆導線製造方法に用いる絶縁被覆導線製造装置5の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
<絶縁被覆導線の全体構成>
(曲げ加工前の絶縁被覆導線)
図1に、曲げ加工前の加工前絶縁被覆導線1の正面図を示す。図2に、図1の第1直線部M1のAA断面図を示す。図3に、図1の曲げ部M2のBB断面図を示す。図4に、図1の第2直線部M3のCC断面図を示す。
図1に示すように、加工前絶縁被覆導線1は線状のものである。図1においては、図面の都合上一部のみを示すが、本実施形態においては線状のものであるため、図1の加工前絶縁被覆導線1が連続した形状となる。図2乃至図4に示すように、加工前絶縁被覆導線1は、断面矩形状をなす。
図2に示すように、加工前絶縁被覆導線1の内部には、銅線等である導線2が挿通している。導線2は、断面矩形状をなす。
【0013】
導線2の全周の外周には、絶縁被覆材料3が被覆されている。絶縁被覆材料3は、絶縁性を確保するためのもので、エナメル層(PAI、PA等)や熱可塑性樹脂等によるものである。
図2に示す本実施例の加工前絶縁被覆導線1の第1直線部M1においては、絶縁被覆材料3は、外周側M21、内周側M22、側面側M23の全てで均一に50μm被膜している。同様に、図4に示す本実施例の加工前の加工前絶縁被覆導線1の第2直線部M3においては、絶縁被覆材料3は、導線2の外周側M27、内周側M28、側面側M29の全てで均一に50μm被膜している。
【0014】
他方、図3に示す本実施例の曲げ加工後に曲げ部となる曲げ部M2においては、外周側M24に対する絶縁被覆材料3の厚みが、内周側M25に対する絶縁被覆材料3の厚みよりも厚く形成されている。
また、側面側M26に対する絶縁被覆材料3の厚みと比較して、外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みは厚く形成されている。外周側M24の厚みは、側面側M26の厚みと比較して10パーセント〜30パーセント程度厚く形成されている。
他方、側面側M26に対する絶縁被覆材料3の厚みと比較して、内周側M25の厚みは薄く形成されている。内周側M25の厚みは、側面側M26の厚みと比較して10パーセント〜30パーセント程度薄く形成されている。
【0015】
本実施例においては、側面側M26の厚みは、第1直線部M1の外周側M21、内周側M22、側面側M23、及び第2直線部M2の外周側M27、内周側M28、側面側M29の絶縁被覆材料3の厚みと同じく50μmに形成されている。
外周側M24の厚みは、側面側M26の厚みである50μmよりも約20パーセント厚く60μmに形成されている。また、内周側M25の厚みは、側面側M26の厚み50μmよりも約20パーセント薄く40μmに形成されている。
【0016】
(曲げ加工後の絶縁被覆導線)
図5に、曲げ加工後の加工後絶縁被覆導線10の正面図を示す。図6に、図5の第1直線部のDD断面図を示す。図7に、図5の曲げ部のEE断面図を示す。図8に、図5の第2直線部のFF断面図に示す。
図5に示す曲げ加工後の加工後絶縁被覆導線10は、図1に示す曲げ加工前の加工前絶縁被覆導線1を曲げ加工により加工したものである。その特徴は、図5に示すように、曲げ部N2を有することにある。本実施形態においては、曲げ部N2は180度の角度を持つが、加工後絶縁被覆導線10の使用態様により角度は何度であってもよい。
曲げ部N2の外周側N24の円周は、曲げ加工されることにより伸び、曲げ部M2の中心に中心線をとった場合の外周側M24の中心線の円周と比較して10パーセントから30パーセント伸びる。また、曲げ部N2の内周側N25の円周は、曲げ加工されることにより縮み、曲げ部M2の内周側M25の中心線の円周と比較して10パーセントから30パーセント縮む。
【0017】
図6に示す本実施例の加工後絶縁被覆導線10の第1直線部N1においては、絶縁被覆材料3は、外周側N21、内周側N22、側面側N23の全てで均一に50μm被膜している。同様に、図8に示す本実施例の加工後の加工後絶縁被覆導線10の第2直線部N3においては、絶縁被覆材料3は、導線2の外周側N27、内周側N28、側面側N29の全てで均一に50μm被膜している。
第1直線部N1及び第2直線部N3においては、加工前絶縁被覆導線1の第1直線部M1及び第2直線部M3と比較して、絶縁被覆材料3の厚みに変化は生じない。第1直線部N1及び第2直線部N3に関しては、曲げ加工がされる曲げ部N2と異なり、なんら引張力及び圧縮力が掛からないため絶縁被覆材料3の厚みに変化は生じないためである。
【0018】
他方、図7に示す本実施例の曲げ加工後の曲げ部N2においては、外周側N24に対する絶縁被覆材料3の厚みが、内周側N25に対する絶縁被覆材料3の厚みとほぼ同じになる。本実施例においては、外周側N24の厚みが50μmであり、内周側N25の厚みがほぼ同じく50μmとなる。側面側N26は、伸び及び圧縮することがないため、厚みは加工前と変わらず50μmである。
すなわち、曲げ部N2は曲げ加工をされることにより、曲げ部N2の外周側N24は伸び、曲げ部N2の外周側N24の表面積が増えるため絶縁被覆材料3もともに表面積が増え膜厚が60μmから50μmに約20パーセント程度薄く伸ばされる。他方、曲げ部N2の内周側N25は圧縮され曲げ部N2の内周側N25の表面積が減るため絶縁被覆材料3とともに表面積が減り膜厚が40μmから50μmに約20パーセント程度厚くなる。それにより、外周側N24、内周側N25、及び側面側N26の絶縁被覆材料3の厚みがほぼ同じになる。
【0019】
加工前絶縁被覆導線1は曲げ加工を行うことにより加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の外周側の円周は、10パーセントから30パーセント伸びる。そのため、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2の外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みを、曲げ部M2の側面側M26の絶縁被覆材料3の厚みより10パーセント〜30パーセント厚くする。それにより、加工後の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みが側面側N26の絶縁被覆材料3の厚みとほぼ同じにすることができるのである。
また、加工前絶縁被覆導線1は曲げ加工を行うことにより加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25は、10パーセントから30パーセント円周が縮む。そのため、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みを、曲げ部N2の側面側N26の絶縁被覆材料3の厚みより10パーセントから30パーセント薄くする。それにより、内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みが側面側N26の絶縁被覆材料3の厚みとほぼ同じにすることができるのである。
【0020】
加工前絶縁被覆導線1を曲げ、加工後絶縁被覆導線10に加工した後において、曲げ部N2の内周側N25の厚みと外周側N26の厚みをほぼ同じにすることができる。それにより、曲げ部N2の外周側N24に対する絶縁被覆材料3の厚みを厚くすることができる。したがって、絶縁抵抗を低くすることができるため、最終製品であるモータの性能を向上させることができる。
また、曲げ部N2の内周側N25に対する絶縁被覆材料3の厚みを薄くすることができる。そのため、絶縁被覆材料3の使用量を減少させることができ、絶縁被覆導線を製造するコストを低減することができる。
また、新たな圧縮加工工程等を追加することなく、必須の絶縁被覆導線の被覆工程により絶縁被覆導線を曲げた時に曲げ部N2の内周側N25に対する絶縁被覆材料3の厚みと曲げ部N2の外周側N24に対する絶縁被覆材料3の厚みが同じにすることができる。そのため、生産効率を下げることなく、コストを低減した加工後絶縁被覆導線10を製造することができる。
【0021】
<絶縁被覆導線製造装置の全体構成>
図9に絶縁被覆導線製造装置5の正面図を示す。図10に、図9に示す射出成型部40のKK断面図を示す。図11に、第1ガイドローラ治具20の外観斜視図を示す。
図9に示すように、絶縁被覆導線製造装置5は、第1ガイドローラ治具20、第2ガイドローラ治具30、及び、射出成型部40を有する。第1ガイドローラ治具20と第2ガイドローラ治具30の間に、射出成型部40が備えられている。第1ガイドローラ治具20と第2ガイドローラ治具30の間には導線2が引張され、導線2は射出成型部40内を挿通している。
導線2は図9中、左側から右側へと流れる。
図9に示すように、射出成型部40は、成型金型41、常用のニップル42を有する。
成型金型41は、絶縁被覆材料3が流入する中空円錐台凹部である流入部411が形成されている。流入部411の中空円錐台凹部の中心軸線上に金型開口部412が形成されている。
図10に示すように、金型開口部412は、断面矩形状の形状をしている。図10においては、金型開口部412の中心を導線2が挿通しており、導線2の全周にわたり均一に絶縁被覆材料3が被覆している。図中、金型開口部412の上面412Aが加工前絶縁被覆導線1の外周側にあたり、下面412Bが内周側にあたり、側面412Cが側面側にあたる。したがって、金型開口部412に対して導線2の位置を制御することにより、内周側、外周側、側面側の絶縁被覆材料3の厚みを変更することができる。
【0022】
図11に示すように、第1ガイドローラ治具20には、上下ガイドローラ21、左右ガイドローラ22、上面膜厚測定器23、側面膜厚測定器24、上下サーボモータ25、及び、左右サーボモータ26を有する。
上下サーボモータ25は、上下ガイドローラ21を駆動するためのモータであり、左右サーボモータ26は、左右ガイドローラ22を駆動するためのモータである。
上面膜厚測定器23及び側面膜厚測定器24は、非接触式のレーザ、赤外線、超音波等のセンサにより被覆膜の厚みをリアルタイムに計測し、被覆膜が所定の範囲内にあるか否かを判断する。被覆膜が所定の範囲にない場合には、導線2の上下左右方向の位置を変化させて被覆膜を所定の位置に戻し、位置決めを行う。なお、測定方法は、導線2の上面の2か所、下面の1か所、右側面の1か所、左側面の1か所の絶縁被覆材料の被膜幅を測定することで、膜厚を計ることができる。
第1ガイドローラ治具20について説明したが、第2ガイドローラ治具30の構成も同様であるため説明を割愛する。
【0023】
<絶縁被覆導線製造装置の作用効果>
導線2は、第1ガイドローラ治具20と第2ガイドローラ治具30により引張された状態であり、図示しないリールにより図9中の左側から右側に移動させる。
導線2は、ニップル42の誘導穴422を挿通する。導線2は、第1ガイドローラ治具20、及び、第2ガイドローラ治具30により位置制御されることで、金型開口部412を挿通する場所を変更することができる。
【0024】
本実施形態においては、図1に示す加工前絶縁被覆導線1の第1直線部M1が挿通する場合には、導線2が図10に示す金型開口部412の中心を挿通するように、第1ガイドローラ治具20、及び、第2ガイドローラ治具30により位置制御する。具体的には、金型開口部412の上下方向は、上面412Aと下面412Bから同じ距離の位置に位置するように制御し、左右方向は、左右の側面412Cから同じ距離の位置に位置するように制御する。
それにより、導線2が金型開口部412を挿通する際に、流入部411から流入した絶縁被覆材料3が導線2に被膜する。図2に示すように、第1直線部M1に対して絶縁被覆材料3が全周にわたって均一に50μm被膜させることができる。
【0025】
続いて、図1に示す加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2が挿通する場合、導線2の上下方向では、図10に示す金型開口部412の中心より下面412Bに近い位置に位置するように制御する。また、導線2は、左右方向では、金型開口部412の中心に位置するようにし左右の側面412Cから同じ距離の位置に位置するように制御する。以上の位置制御は、第1ガイドローラ治具20、及び、第2ガイドローラ治具30により位置制御を行う。
それにより、図3に示すように、曲げ部M2の外周側M24に対する絶縁被覆材料3の厚みが、内周側M25に対する絶縁被覆材料3の厚みよりも厚く形成することができる。
また、側面側M26に対する絶縁被覆材料3の厚みと比較して、外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みは厚く形成されている。外周側M24の厚みは、側面側M26の厚みと比較して10パーセント〜30パーセント程度厚く形成することができる。
他方、側面側M26に対する絶縁被覆材料3の厚みと比較して、内周側M25の厚みは薄く形成されている。内周側M25の厚みは、側面側M26の厚みと比較して10パーセント〜30パーセント程度薄く形成することができる。
【0026】
本実施例においては、側面側M26の厚みは、第1直線部M1の外周側M21、内周側M22、側面側M23、及び第2直線部M2の外周側M27、内周側M28、側面側M29の絶縁被覆材料3の厚みと同じく50μmに形成することができる。
外周側M24の厚みは、側面側M26の厚みである50μmよりも約20パーセント厚く60μmに形成することができる。また、内周側M25の厚みは、側面側M26の厚み50μmtよりも約20パーセント薄く40μmに形成することができる。
【0027】
本実施形態においては、図1に示す加工前絶縁被覆導線1の第2直線部M3が挿通する場合には、導線2が図10に示す金型開口部412の中心を挿通するように、第1ガイドローラ治具20、及び、第2ガイドローラ治具30により位置制御する。具体的には、金型開口部412の上下方向は、上面412Aと下面412Bから同じ距離の位置に位置するように制御し、左右方向は、左右の側面412Cから同じ距離の位置に位置するように制御する。
それにより、導線2が金型開口部412を挿通する際に、流入部411から流入した絶縁被覆材料3が導線2に被膜する。図4に示すように、第1直線部M1に対して絶縁被覆材料3が全周にわたって均一に50μm被膜させることができる。
【0028】
加工後絶縁被覆導線10を図示しない、クランク及びクランプを使用して曲げ工程を行う。クランプにより加工後絶縁被覆導線10を挟み込み、曲げ部N2の中心にクランクを押し当て、クランプを移動させることで曲げ工程を行う。曲げ工程の際に、クランクが曲げ部N2の内周側N25に当接するが、内周側N25が曲げ加工により圧縮され絶縁被覆材料3が圧縮するため、内周側N25の絶縁被覆材料3が厚くなることには何ら影響はない。
【0029】
以上詳細に説明したように、本実施形態においては以下の作用効果を有する。
すなわち、断面が矩形状である導線2と絶縁被覆材料3を、金型開口部112から押出成形し、導線2の外周に絶縁被覆材料3を被覆した加工前絶縁被覆導線1を製造する絶縁被覆導線製造工程と、加工前絶縁被覆導線1に曲げ加工を行い曲げ部N2を有する加工後絶縁被覆導線10を形成する曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2の外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みが、曲げ部M2の内周側M25の絶縁被覆材料3の厚みよりも厚い加工前絶縁被覆導線1を製造することにより、加工前絶縁被覆導線1を曲げた時に加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みと曲げ部N2の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みが同じにすることができる。
また、加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みを厚くすることができる。そのため、隣接する導線2との電気的な漏れが生じることがなくなり、最終製品であるモータの性能を向上させることができる。
また、加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みを薄くすることができる。そのため、絶縁被覆材料3の使用量を減少させることができるため、加工後絶縁被覆導線10を製造するコストを低減することができる。
また、新たな加工工程を追加することなく、必須の導線2に対する絶縁被覆材料3の被覆工程により加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の内周側N25の絶縁被覆材料3の厚みと曲げ部N2の外周側N24の絶縁被覆材料3の厚みが同じにすることができる。そのため、生産効率を下げることなく、コストを低減した加工前絶縁被覆導線1を製造することができる。
【0030】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で色々な応用が可能である。
例えば、本実施形態においては、加工後絶縁被覆導線10の曲げ部N2の角度を180度としたが、絶縁被覆材料の使用態様により角度を変更することができる。また、角度が変更された場合においては、加工前絶縁被覆導線1の曲げ部M2の外周側M24及び内周側M25の絶縁被覆材料3の厚みを変更する。例えば、角度が小さくなった場合には、外周側M24の絶縁被覆材料3の厚みを実施例と比較して薄くする。また、内周側M25の絶縁被覆材料3の厚みを実施例と比較して厚くする。ただし、外周側M24の厚みが内周側M25の厚みと比較して厚いことに変更はない。
【符号の説明】
【0031】
1 加工前絶縁被覆導線
2 導線
3 絶縁被覆材料
5 絶縁被覆導線製造装置
10 加工後絶縁被覆導線
N2 曲げ部
N24 外周側
N25 内周側
112 金型開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が矩形状である導線を、金型開口部から搬出することにより、前記導線の外周に絶縁被覆材料を被膜させた絶縁被覆導線を製造する絶縁被覆導線製造工程と、前記絶縁被覆導線に曲げ部を形成する曲げ加工を行う曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、
前記絶縁被覆導線製造工程により製造された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みよりも厚いこと、
を特徴とする絶縁被覆導線製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する絶縁被覆導線製造方法において、
前記曲げ加工工程により曲げ加工された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みとほぼ同じになること、
を特徴とする絶縁被覆導線製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載する絶縁被覆導線製造方法において、
前記絶縁被覆導線製造工程により製造された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の側面側の前記絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント厚いこと、
前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の側面側の前記絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント薄いこと、
を特徴とする絶縁被覆導線製造方法。
【請求項1】
断面が矩形状である導線を、金型開口部から搬出することにより、前記導線の外周に絶縁被覆材料を被膜させた絶縁被覆導線を製造する絶縁被覆導線製造工程と、前記絶縁被覆導線に曲げ部を形成する曲げ加工を行う曲げ加工工程と、を備える絶縁被覆導線製造方法において、
前記絶縁被覆導線製造工程により製造された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みよりも厚いこと、
を特徴とする絶縁被覆導線製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載する絶縁被覆導線製造方法において、
前記曲げ加工工程により曲げ加工された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みとほぼ同じになること、
を特徴とする絶縁被覆導線製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載する絶縁被覆導線製造方法において、
前記絶縁被覆導線製造工程により製造された前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の外周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の側面側の前記絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント厚いこと、
前記絶縁被覆導線の前記曲げ部の内周側の前記絶縁被覆材料の厚みが、前記曲げ部の側面側の前記絶縁被覆材料の厚みより10パーセント〜30パーセント薄いこと、
を特徴とする絶縁被覆導線製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−69344(P2012−69344A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212427(P2010−212427)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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