説明

絶縁電線カバー

【課題】電線の導体部の外径に対し自在に適合し、且つ、横ズレ時の強度を確保できるリブを有するヒンジタイプの絶縁電線カバーを提供する。
【解決手段】2つ割れのカバー本体の長手方向の各片側が互いにヒンジにより連結され、他の片側の一方はフックを、他方はフック孔をそれぞれ有する。2つ割れのカバー本体の内側には、絶縁被覆の切断部にそれぞれ嵌合する2つの横ズレ防止用のリブを有し、リブは嵌合し、且つ、電線の導体部の外径に対し自在に適合する嵌合部と、嵌合部の導体部の長手方向へのズレに対する強度を確保する矩形柱形の支持部とから構成される。支持部は矩形柱形の底面をなす矩形の長辺側の中心線と、2つ割れのカバー本体の内側の長手方向の中心線とが重なるように対向し、且つ、嵌合部の先端部が互いに両側の絶縁被覆の切断部に嵌合する位置に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線の絶縁被覆が部分的に除去された箇所を再度絶縁処理する補修用カバーに係り、詳しくは、架線工事を行うため絶縁被覆が部分的に除去された箇所を修復するための、ヒンジタイプの絶縁電線カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒンジタイプの電線絶縁カバーは、2つ割れの本体を電線に挟み込み、フックにて固定されるため、電線に対しての横ズレ防止については、電線被覆剥取り溝に嵌合するリブを設けるか、あるいはカバー内面に電線の外径に対応した粘着層を設けていた。図6は、従来のヒンジタイプの電線絶縁カバーの構造図である。図6a−1において、従来の電線絶縁カバー200−1の2つ割れのカバー本体1、2は、ヒンジ30により結合されて開閉が自在に行え、フック20およびフック孔25により、2つ割れの本体1、2が閉じられて固定される。また本体1、2の内部には、電線被覆剥取り溝をなす電線の被覆部45に嵌合する横ズレ防止用の複数のリブ50が設けられている。
【0003】
図6a−2は、電線絶縁カバー200−1が閉じられた状態を示し、2つ割れのカバー本体1、2が閉じられ、フック20およびフック孔25により固定されている。このときリブ50は、それぞれ対となって対向している。図6b−1は、横ズレ防止用の複数のリブ40が、電線被覆剥取り溝をなす電線の被覆部45と嵌合し、電線の導体部40に密着して、電線絶縁カバー200−1が閉じられた状態を示している。図6b−2は、リブ50が、それぞれ対となって対向し、電線の導体部40に密着した状態を示している。
【0004】
図7は、従来の他のヒンジタイプの電線絶縁カバーの構造図である。図7a−1において、従来の他の電線絶縁カバー200−2の2つ割れの本体1、2は、ヒンジ30により結合されて開閉が自在に行え、フック20およびフック孔25により、2つ割れの本体1、2が閉じられて固定される。また本体1、2の内部には、電線の被覆部45の外径に対応した複数の両面粘着テープ60が設けられている。
【0005】
図7a−2は、他の電線絶縁カバー200−2が閉じられた状態を示し、2つ割れのカバー本体1、2が閉じられ、フック20およびフック孔25により固定されている。このとき両面粘着テープ60は、それぞれ対となって対向している。図7b−1は、横ズレ防止用の両面粘着テープ60が、電線の被覆部45に密着して、他の電線絶縁カバー200−2が閉じられた状態を示している。図7b−2は、両面粘着テープ60が、それぞれ対となって対向し、電線の被覆部45に密着した状態を示している。
【0006】
図6、7から明らかなように、従来の電線絶縁カバー200−1においては電線の導体部40、従来の他の電線絶縁カバー200−2においては電線の被覆部45の外径に対してサイズの共用ができず、各サイズに対応したカバーがそれぞれ必要となっていた。また粘着テープを設けた場合は、再利用ができない欠点があった。
【0007】
特許文献1には、略半筒状とされた両側一対のカバー部材1a・1bよりなり、該各カバー部材1a・1bはその長手方向に沿ってその一側がヒンジ2を介して開閉自在に連結されると共に、同他側が係着部材3・5を介して係着自在とされてなる電線補修用カバーであって、上記両側のカバー部材1a・1b内周面にはその径方向に向けて弾性を有する所要数の縦突片8a・8bが各々対向状に突設されると共に、一方のカバー部材1b内周面にはその長手方向に向けて該縦突片8a・8bに対応すべく横突片7が突設された構成よりなる、旨の記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−264917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、電線の導体部の外径に対し自在に適合し、且つ、横ズレ時の強度を確保できるリブを有するヒンジタイプの絶縁電線カバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の絶縁電線カバーは、電線の絶縁被覆が部分的に除去された箇所を修復するための、ヒンジタイプの絶縁電線カバーであって、2つ割れのカバー本体の長手方向の各片方の端部が、互いにヒンジにより連結され、他の片方の端部の一方はフックを、他方はフック孔をそれぞれ有し、2つ割れのカバー本体の内側には、電線の絶縁被覆が部分的に除去された箇所の両側の絶縁被覆の切断部にそれぞれ嵌合する2つの横ズレ防止用のリブを有し、リブは、嵌合し、且つ、電線の導体部の外径に対し自在に適合する嵌合部と、嵌合部の導体部の長手方向へのズレに対する強度を確保する矩形柱状の支持部とから構成され、支持部は、矩形柱状の底面をなす矩形の長辺側の中心線と、2つ割れのカバー本体の内側の長手方向の中心線とが重なるように対向し、且つ、嵌合部の先端部が互いに両側の絶縁被覆の切断部に嵌合する位置に設置され、嵌合部は、支持部である矩形柱状の上部から、互いに両側の絶縁被覆の切断部に向かうべく、上向きに一体化されてなり、且つ、電線の絶縁被覆が部分的に除去された電線の導体部に接触する面は、導体部に適合する所定の曲率を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の絶縁電線カバーのリブは、電線の絶縁被覆が部分的に除去された箇所の両側の絶縁被覆の切断部に嵌合し、且つ、電線の導体部の外径に対し自在に適合する嵌合部と、嵌合部の導体部の長手方向へのズレに対する強度を確保する矩形柱状の支持部とから構成され、支持部は、矩形柱状の底面をなす矩形の長辺と2つ割れのカバー本体の内側の長手方向の中心線とが平行で、中心線の両側に長手方向に離れ、且つ、嵌合部の各片方の側面が互いに両側の絶縁被覆の切断部に嵌合する位置に設置され、嵌合部は、支持部である矩形柱状の上部から、互いに2つ割れのカバー本体の割れて開放された方向に向かうべく、Jの字形状に一体化されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の絶縁電線カバーのリブの導体部の長手方向へのズレに対する強度を確保する支持部の厚さは、電線の絶縁被覆が部分的に除去された箇所の両側の絶縁被覆の切断部に嵌合し、且つ、電線の導体部の外径に対し自在に適合する嵌合部の厚さ以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、絶縁電線の絶縁被覆が部分的に除去された箇所を修復するため、電線の導体部の外径に対し自在に適合し、且つ、横ズレ時の強度を確保できるリブを有するヒンジタイプの絶縁電線カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施例による絶縁電線カバーの構造図。
【図2】本発明の第1の実施例による絶縁電線カバーと電線との嵌合図。
【図3】本発明の第2の実施例による絶縁電線カバーの構造図。
【図4】本発明の第2の実施例による絶縁電線カバーと電線との嵌合図。
【図5】本発明の絶縁電線カバーの実装状態を示す実装図。
【図6】従来の絶縁電線カバーの構造図。
【図7】従来の他の絶縁電線カバーの構造図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施例による絶縁電線カバーの構造図である。図1a−1において、絶縁電線カバー100−1は、2つ割れのカバー本体1、2の長手方向の各片側が、互いにヒンジ30により連結されて成る。また、カバー本体1、2の他の片側の一方はフック20を、他方はフック孔25をそれぞれ有している。このフック20及びフック孔25は、カバー本体1、2が電線の絶縁被覆が部分的に除去された箇所に装着されて閉じられると、その状態を保持して固定する。
【0016】
また、カバー本体1、2の内側には、図5において説明する電線の絶縁被覆45が部分的に除去された箇所の両側の絶縁被覆の切断部にそれぞれ嵌合する2つの横ズレ防止用のリブ10を有している。このリブ10は、それぞれ絶縁被覆の切断部と嵌合すると共に電線の導体部40の外径に対し自在に適合する嵌合部12と、嵌合部12の電線の導体部40の長手方向へのズレに対する強度を確保する矩形柱状の支持部11とから構成されている。図1a−2は、カバー本体1、2が閉じられて、フック20及びフック孔25により固定された状態を示している。
【0017】
再び図1a−1において、支持部11は、矩形柱状の底面をなす矩形の長辺側の中心線と、2つ割れのカバー本体1、2の内側の長手方向の中心線とが重なるように対向し、且つ、嵌合部12の先端部が互いに両側の絶縁被覆45の切断部に嵌合する位置に設置されている。
【0018】
図1bは、図1a−1の切断線A−Aにおいて切断された切断面を示し、嵌合部12は、支持部11である矩形柱状の上部から、互いにカバー本体1、2の両側の口元方向の絶縁被覆45の切断部に向かうべく、上向きに一体化されている。また、電線の絶縁被覆45が部分的に除去された電線の導体部40に接触する面は、導体部40に適合する所定の曲率を有している。これにより、嵌合部12の先端部は、電線の導体部40の外径を安定して捉えることができ、より確実な嵌合を得ることが可能となる。
【0019】
また、リブ10の導体部40の長手方向へのズレに対する強度を確保する支持部11の厚さは、互いに両側の絶縁被覆45の切断部に嵌合し、且つ、電線の導体部40の外径に対し自在に適合する嵌合部12の厚さ以上である。これにより、支持部11はリブ10の導体部40の長手方向へのズレを安定して支えることができ、嵌合部12の厚さは支持部11の厚さ以下であるため、電線の導体部40の外径を柔軟に安定して捉えることができ、より確実な嵌合を得ることが可能となる。また嵌合部12の厚さは、先端部に向かって、嵌合の強度を失わない程度に次第に薄くしても良い。
【0020】
図2は、本発明の第1の実施例による絶縁電線カバーと電線との嵌合状態を示す嵌合図である。図2a−1は、電線の外径が細い場合の嵌合状態を示し、嵌合部12の先端部は絶縁被覆45の切断部に嵌合しているが、電線の外径が細いため、嵌合の強度を失わない程度に支持部11に向かってギャップが生じている。図2a−2は、電線の外径が太い場合の嵌合状態を示し、嵌合部12の先端部は絶縁被覆45の切断部に嵌合すると共に、電線の導体部40外径に完全に密着している。図2bは、図2a−1のB方向から見たリブ10の矢視図を示している。嵌合部12の電線の導体部40に接する面は、導体部40に適合する所定の曲率を有している。
【0021】
図3は、本発明の第2の実施例による絶縁電線カバーの構造図である。絶縁電線カバー100−2は、図1a−1における2つ割れのカバー本体1、2と同じ構造であるため、説明を省略する。図3a−1において、リブ15は、それぞれ絶縁被覆の切断部と嵌合すると共に電線の導体部40の外径に対し自在に適合する嵌合部17と、嵌合部17の電線の導体部40の長手方向へのズレに対する強度を確保する矩形柱状の支持部16とから構成されている。図3a−2は、カバー本体1、2が閉じられて、フック20及びフック孔25により固定された状態を示している。
【0022】
支持部16は、矩形柱状の底面をなす矩形の長辺と2つ割れのカバー本体1、2の内側の長手方向の中心線とが平行で、中心線の両側に前記長手方向に離れ、且つ、嵌合部17の各片側面が互いに両側の絶縁被覆の切断部に嵌合する位置に設置されている。また、嵌合部17は、支持部16である矩形柱状の上部から、互いにカバー本体1、2の割れて開放された方向に向かうべく、Jの字形状に一体化されて成る。
【0023】
また、リブ15の導体部40の長手方向へのズレに対する強度を確保する支持部16の厚さは、互いに両側の絶縁被覆45の切断部に嵌合し、且つ、電線の導体部40の外径に対し自在に適合する嵌合部17の厚さ以上である。これにより、支持部16はリブ15の導体部40の長手方向へのズレを安定して支えることができ、嵌合部17の厚さは支持部16の厚さ以下であるため、電線の導体部40の外径を柔軟に安定して捉えることができ、より確実な嵌合を得ることが可能となる。また嵌合部17の厚さは、先端部に向かって、嵌合の強度を失わない程度に次第に薄くしても良い。
【0024】
図4は、本発明の第2の実施例による絶縁電線カバーと電線との嵌合図である。図4aは、電線の外径が細い場合の嵌合状態を示し、嵌合部17の先端部は絶縁被覆45の切断部に嵌合しているが、電線の外径が細いため変形が少なく、Jの字形状がやや垂れ下がった形状となっている。図4bは、電線の外径が太い場合の嵌合状態を示し、電線の外径が太いため変形が多く、Jの字形状がより強調された形状となっている。いずれにおいても、電線の導体部40の外径の違いに対応して、柔軟な完全密着が可能となる。
【0025】
図5は、本発明の絶縁電線カバーの実装状態を示す実装図である。図5a−1は、図2の電線の外径が細い場合と太い場合との中間的な太さの電線に対する嵌合状態を示している。このため、電線の導体部40と嵌合部12とのギャップも中間的なギャップとなっている。図5a−2は、カバー本体1、2が電線に装着され、閉じられて、フック20及びフック孔25により固定された状態を示している。図5b−1は、図4の電線の外径が細い場合と太い場合との中間的な太さの電線に対する嵌合状態を示している。図5b−2は、カバー本体1、2が電線に装着され、閉じられて、フック20及びフック孔25により固定された状態を示している。このように、嵌合部12の変形は中間的となり、通常のJの字形状となっている。
【0026】
以上説明したように本発明によれば、電線の導体部の外径に対し自在に適合し、且つ、横ズレ時の強度を確保できるリブを有するヒンジタイプの絶縁電線カバーが可能となる。これにより、電線のサイズ毎に対応したカバーを必要とせず、再利用もできるため、経済効果の高いヒンジタイプの絶縁電線カバーを提供することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 2つ割れのカバー本体1
2 2つ割れのカバー本体2
10 リブ
11 支持部
12 嵌合部
15 リブ
16 支持部
17 嵌合部
20 フック
25 フック孔
30 ヒンジ
40 電線の導体部
45 電線の被覆部
50 リブ
60 両面粘着テープ
100−1 本発明の第1の実施例による絶縁電線カバー
100−2 本発明の第2の実施例による絶縁電線カバー
200−1 従来の電線絶縁カバー
200−2 従来の他の電線絶縁カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の絶縁被覆が部分的に除去された箇所を修復するための、ヒンジタイプの絶縁電線カバーであって、
2つ割れのカバー本体の長手方向の各片側が、互いにヒンジにより連結され、
他の片側の一方はフックを、他方はフック孔をそれぞれ有し、
前記2つ割れのカバー本体の内側には、前記電線の絶縁被覆が部分的に除去された箇所の両側の絶縁被覆の切断部にそれぞれ嵌合する2つの横ズレ防止用のリブを有し、
前記リブは、前記嵌合し、且つ、前記電線の導体部の外径に対し自在に適合する嵌合部と、前記嵌合部の前記導体部の長手方向へのズレに対する強度を確保する矩形柱状の支持部とから構成され、
前記支持部は、前記矩形柱状の底面をなす矩形の長辺側の中心線と、前記2つ割れのカバー本体の内側の長手方向の中心線とが重なるように対向し、且つ、前記嵌合部の先端部が互いに前記両側の絶縁被覆の切断部に嵌合する位置に設置され、
前記嵌合部は、前記支持部である前記矩形柱状の上部から、互いに前記両側の絶縁被覆の切断部に向かうべく、上向きに一体化されてなり、且つ、前記電線の絶縁被覆が部分的に除去された電線の導体部に接触する面は、前記導体部に適合する所定の曲率を有することを特徴とする絶縁電線カバー。
【請求項2】
前記リブは、前記嵌合し、且つ、前記電線の導体部の外径に対し自在に適合する嵌合部と、前記嵌合部の前記導体部の長手方向へのズレに対する強度を確保する矩形柱状の支持部とから構成され、
前記支持部は、前記矩形柱状の底面をなす矩形の長辺と前記2つ割れのカバー本体の内側の長手方向の中心線とが平行で、前記中心線の両側に前記長手方向に離れ、且つ、前記嵌合部の各片側面が互いに前記両側の絶縁被覆の切断部に嵌合する位置に設置され、
前記嵌合部は、前記支持部である前記矩形柱状の上部から、互いに前記2つ割れのカバー本体の割れて開放された方向に向かうべく、Jの字形状に一体化されてなることを特徴とする請求項1に記載の絶縁電線カバー。
【請求項3】
前記リブの前記導体部の長手方向へのズレに対する強度を確保する前記支持部の厚さは、前記嵌合し、且つ、前記電線の導体部の外径に対し自在に適合する嵌合部の厚さ以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁電線カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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