説明

絹ごし豆腐製造装置及び絹ごし豆腐製造方法

【課題】豆乳と液体苦汁を均一に且つ短時間に攪拌混合する技術を開発する。
【解決手段】断面方形の容器に収納された豆乳と液体苦汁とを攪拌する攪拌具であって、攪拌板と攪拌板に取り付けられた柄から構成され、攪拌板は、容器断面よりやや小さく、4隅に切欠きが形成され、中央部に穴が設けられており、柄は、攪拌板の上面に取り付けられていることを特徴とする攪拌具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐製造技術に関する。特に、絹ごし豆腐の製造に適した技術に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐の製造は、豆乳に凝固剤を加えて混合し、凝固させて製品を製造する。
凝固剤を豆乳に添加して混合する場合、凝固剤の種類によって、豆乳が固まる時間がコントロールできる。凝固時間が短いと豆乳と凝固剤が均一に混合する前に凝固が始まり、均一な豆腐ができない。木綿豆腐は、不均一豆腐や崩れた豆腐でも型に入れて重しをして、脱水して成形するので、凝固ムラが問題になることは少ない。
一方、絹ごし豆腐は、豆乳が固まった状態で製品となるので、凝固ムラは製品の品質に大きな影響を与える。
海水から抽出された塩化マグネシウムや塩化ナトリウムを主成分とする液体苦汁を凝固剤として使用した場合は、液体苦汁は水に溶けやすく、凝固反応が早いため、扱いが難しい反面、大豆の味を引き出した豆腐ができる。豆乳と接触した後短時間に凝固反応が始まるので、高品質の豆腐を製造することは難しかった。
凝固反応を遅くする凝固剤が開発されている。例えば、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトン、硫酸マグネシウム、苦汁加工品等が存在する。硫酸カルシウムは水に溶けにくく、豆乳と混ぜ合わせた後、凝固する反応が遅いため、使いやすい凝固剤である。保水力が高く、滑らかな豆腐ができる。薄い豆乳でも固めやすいため、歩留まりがいい、つまり少ない大豆で多くの豆腐を作ることができる。グルコノデルタラクトンは凝固反応が遅いため、安定して固めることができる。型くずれしにくい滑らかな豆腐ができるため、絹ごし豆腐を作るのに適している。
塩化マグネシウムを油膜で覆い油中水型のエマルジョンとして凝固時間を遅くした豆腐用凝固剤も開発されている(特許文献1:特開2006−6183号公報参照)。
【0003】
豆乳を入れた容器に凝固剤を投入し、攪拌具で攪拌される。攪拌後静置して豆乳を凝固させて豆腐を製造する。この攪拌混合は、手作業あるいは機械化がされている。
特許文献2(特開2007−228853号公報)には、豆乳を容器に供給する供給流路にて苦汁を混合することにより、均一に混合する方法が提案されている。この装置例を図8(特許文献2に記載された符号をそのまま表記し、本願発明とは関係がない)に示す。
特許文献3(特開2001−352931号公報)には、豆乳とニガリの混合体が流路内を通過する際に、衝突、分散、合流、蛇行、渦流等が組合わさった複雑な状態で流動させることで、混合体に、攪拌槽内の循環作用に加え、同時に高い剪断作用を与えて、豆腐とニガリを混合させる装置が開示されている。この装置例を図9(特許文献2に記載された符号をそのまま表記し、本願発明とは関係がない)に示す。
特許文献4(特開平9−9900号公報)には、豆乳容器に対して攪拌板を上下に昇降させて豆乳とニガリを混合させる装置が開示されている。この装置例を図10(特許文献3に記載された符号をそのまま表記し、本願発明とは関係がない)に示す。
本出願人は、苦汁供給メーカーとして、海洋深層水由来の豆腐製造用苦汁を特許文献5(特開2001−224326号公報)に提案している。
凝固剤として、液体苦汁を使用することは、操作性の観点から少ないが、近年風味及び甘みの面で液体苦汁を使用した豆腐はニガリ豆腐と称されて注目されている。このニガリ豆腐の製造は、豆乳と液体苦汁を短時間で均一混合しなければならない。そのため、綺麗なニガリ豆腐を製造するには、凝固反応時間を遅延させるために豆乳の温度を低くして手作業で均一混合させるなどの工夫をしている。手作業は熟練が必要で、日々同じ豆腐作ることは極めて困難で生産性が低く、高価な豆腐となっている。
従来の豆乳攪拌機を用いて、豆乳に液体苦汁を加えて攪拌すると均一に豆乳と苦汁が混合される前に凝固が始まり、表面が荒れたり、豆腐中に気泡が多く残ったりして綺麗な豆腐が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−6183号公報
【特許文献2】特開2008−48863号公報
【特許文献3】特開2008−161344号公報
【特許文献4】特開2007−167180号公報
【特許文献5】特開2001−224326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は豆乳と液体苦汁を均一に且つ短時間に攪拌混合する技術を開発することを目的とする。そして、その技術を応用して綺麗な絹ごし豆腐を製造する豆腐製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
攪拌板を用いて豆乳と液体苦汁を攪拌混合する技術に注目して、研究開発を行った結果、攪拌板の形状が混合状態に大きく影響することを知見した。本発明は、特定に形状、構造の攪拌板を開発することにより、豆乳と液体苦汁を短時間に均一に混合する技術とそれを用いた綺麗な絹ごし豆腐を製造する器具、装置を提案する。
本発明の主な構成は次のとおりである。
【0007】
1.断面方形の容器に収納された豆乳と液体苦汁とを攪拌する攪拌具であって、
攪拌板と攪拌板に取り付けられた柄から構成され、
攪拌板は、容器断面よりやや小さく、4隅に切欠きが形成され、中央部に穴が設けられており、
柄は、攪拌板の上面に取り付けられていることを特徴とする攪拌具。
2.中央部の穴の面積は、隅の4箇所の切欠きの面積の合計よりも大きいことを特徴とする1.記載の攪拌具。
3.攪拌板の基本形は、豆乳収納用の容器より5〜15mm小さい方形としたことを特徴とする1.又は2.記載の攪拌具。
4.上部が開放した直方体の豆乳収納用の容器と3.記載の攪拌具を備えたことを特徴とする絹ごし豆腐製造器具。
5.上部が開放した直方体の豆乳収納用の容器を載置する容器載置機構、攪拌具、攪拌具昇降機構、容器の四隅に液体苦汁を供給する液体苦汁供給機構、制御機構を備えた豆乳と液体苦汁を攪拌混合する豆腐製造装置であって、
攪拌板は、容器断面よりやや小さく、4隅に切欠きが形成され、中央部に穴が設けられており、
容器載置機構に対して攪拌具が上下方向に昇降可能に取り付けられており、
制御機構は、容器載置機構の所定位置に豆乳収納用の容器が設置された状態において、攪拌具を上方待機状態から豆乳液の上部に没入する上部位置まで下降させ、攪拌具が前記上部位置に停止した状態で、液体苦汁を容器の四隅に向けて供給し、液体苦汁添加直後に攪拌具を豆乳液の上部位置と下部位置との間を所定回数上下に昇降させ、その後攪拌具を豆乳収納用の容器の上方に待機させること
を特徴とする豆腐製造装置。
6.制御機構は、攪拌時間あるいは攪拌速度、攪拌動作位置の設定が可能であることを特徴とする5.記載の豆腐製造装置。
7.制御機構の攪拌時間制御は、液体苦汁添加後から攪拌具昇降機構の起動時間の設定
が可能であることを特徴とする6.記載の豆腐製造装置。
8.制御機構は、攪拌具昇降機構の攪拌動作において加速時間、減速時間を設定できることを特徴とする6.又は7.記載の豆腐製造装置。
9.容器に70〜90℃の高温の豆乳を収納し、1.記載の攪拌具を豆乳上面から挿入し攪拌板が豆乳上部に没入した位置で待機し、液体苦汁を攪拌板の切欠き部に添加し、攪拌具が豆乳液内部にて上下に昇降する攪拌動作を液体苦汁添加後3.5秒以内行い、その後該攪拌板を豆乳上方へ引き抜いて豆乳と液体苦汁を攪拌混合する方法。
10.容器に70〜90℃の高温の豆乳を収容し、1.記載の攪拌具を豆乳上面から挿入し攪拌板が豆乳上部に没入した位置で待機し、液体苦汁を攪拌板の切欠き部に添加し、攪拌具が豆乳液内部にて上下に昇降する攪拌動作を液体苦汁添加後3.5秒間以内行い、その後該攪拌板を豆乳上方へ引き抜いて、豆乳と液体苦汁を攪拌混合し、その後静置状態において豆乳を凝固させて絹ごし豆腐を製造する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、豆乳と液体苦汁を均一に且つ短時間に攪拌混合できる攪拌板を開発した。本発明の攪拌板を使用することにより、豆乳と液体苦汁を短時間に均一に攪拌することができ、綺麗な絹ごし豆腐を製造することができる。この技術を応用した豆腐製造装置を提供する。
液体苦汁を豆乳に添加後から攪拌を開始する起動時間及び攪拌終了までの動作時間を短時間に行うことができるので、搾汁した高温(70〜90℃)の豆乳をそのまま用いて凝固させる事ができる。搾汁した高温の豆乳を低温化させることなく、搾汁工程から直接液体苦汁添加工程へ移行させることができるので、豆腐製造時間が短縮し、省エネルギーであり、かつ、豆乳の劣化を防ぎ、風味と甘み、硬さも兼ね備えた絹ごし豆腐を製造できる。
豆乳は、隅の4箇所の切欠き部からの流れと、中央開口の流れによって大きく攪拌されて、添加された液体苦汁が素早く均一に豆乳内に分散する。特に、4箇所の切欠き部の合計面積より中央開口の面積を大きくすることにより、分散性を向上させることができる。そして、綺麗な豆腐が製造できる。
攪拌装置は、液体苦汁添加後の攪拌板起動時間を設定できることにより、手作業では困難な、添加後すぐの攪拌をコントロールすることができる。また、攪拌板の上下攪拌速度について、豆乳濃度が変われば粘性が変化する事や人が作業する場合は速度にムラができる。そこで決まった豆乳濃度に対して、攪拌速度を設定しておけば安定した絹ごし豆腐が製造できる。
また、攪拌装置は、攪拌をさせる位置の設定について、攪拌位置を設定できる事により、豆乳の粘性の違いによって攪拌状態が変化した場合に、調整をする事で安定した綺麗な絹ごし豆腐が製造できる。また、浅い・深いとわず様々な缶の形状に対応できる。
本発明は、安定した動作・ニガリ添加後からの動作時間を短くできた事で、高温(70〜90℃)の豆乳で凝固させるができてニガリ豆腐でありながら風味と甘みに加え、硬さも兼ね備えた豆腐を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の攪拌具の概略図。
【図2】攪拌試験の概略図。
【図3】試験に用いた攪拌板の平面形状を示す。
【図4】実施例1と実施例3の柄の取付け位置を示した模式図。
【図5】豆腐製造装置の概略図。
【図6】豆腐製造装置の制御系統を示す概略図。
【図7】一般的な豆腐の製造工程を示す図。
【図8】特許文献2に開示された装置の例を示す図。
【図9】特許文献3に開示された装置の例を示す図。
【図10】特許文献4に開示された装置の例示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、攪拌板、攪拌器具、攪拌装置、攪拌方法、豆腐製造方法を提案する。
本発明者は、搾汁した高温状態の豆乳をそのまま用いて液体苦汁を添加して豆腐を製造する技術の研究開発を行ってきた。高温状態の豆乳と液体苦汁の凝固反応は短時間に急速に進むために、短時間に両者を均一に混合する研究を行った。鋭意研究開発を行った結果、攪拌動作と攪拌板の形状によって、豆腐の品質が大きく影響を受けることに気がつき、各種検討した結果、効果的な動作及び形状を特定することができたので、本発明を提案する。
本発明は、四隅を切り欠き、中央部に穴を開けた攪拌板を提案する。この攪拌板を上下動させることにより、容器に充填された豆乳と添加された液体苦汁を均一に混合できる。さらに、この攪拌板を装置に取り付けた混合装置を提供する。これにより、攪拌動作をコントロールすることができて、品質の安定した絹ごし豆腐を市場に供給することができる。
【0011】
本発明の攪拌具は、断面方形の容器に収納された豆乳と添加された液体苦汁とを攪拌する攪拌具であって、攪拌板と攪拌板に取り付けられた柄から構成され、攪拌板は、容器断面よりやや小さく、4隅に切欠きが形成され、中央部に穴が設けられており、柄は、攪拌板の上面に取り付けられていることを特徴とする攪拌具である。攪拌板の縁と容器の側壁との間隔として5〜15mmのクリアランスを設ける。上部が開放した直方体の豆乳収納用の容器とこの攪拌具を組み合わせた絹ごし豆腐製造器具とする。
【0012】
攪拌板を上下動させる駆動機構に装着した攪拌装置を提供する。この攪拌装置に豆乳供給機構、液体苦汁供給機構、制御機構、さらに豆乳充填用の容器を搬入・搬出する載置機構を設けることにより、豆乳と液体苦汁の攪拌装置および豆腐製造装置を構成する。
上部が開放した直方体の豆乳収納用の容器を載置する容器載置機構、攪拌具、攪拌具昇降機構、容器の四隅に液体苦汁を供給する液体苦汁供給機構、制御機構を備えた豆乳と液体苦汁を攪拌混合する豆腐製造装置であって、攪拌板は、容器断面よりやや小さく、4隅に切欠きが形成され、中央部に穴が設けられており、容器載置機構に対して攪拌具が上下方向に昇降可能に取り付けられており、制御機構は、容器載置機構の所定位置に豆乳収納用の容器が設置された状態において、攪拌具を上方待機状態から豆乳液の上部に没入する上部位置まで下降させ、攪拌具が前記上部位置に停止した状態で、液体苦汁を容器の四隅に向けて供給し、液体苦汁添加直後に攪拌具を豆乳液の上部位置と下部位置との間を所定回数上下に昇降させ、その後攪拌具を豆乳収納用の容器の上方に待機させる豆腐製造装置である。この豆腐製造装置は、絹ごし豆腐製造に適している。
【0013】
液体苦汁は、海水から食塩を析出させたあとの残液であって、主成分は塩化マグネシウムである。液状なので本発明では液状苦汁と表現する。苦汁の成分は、主に塩化マグネシウムや塩化ナトリウムで、その他カリウム、鉄などのミネラルを含んでいる。この液体苦汁は、油中水型のエマルジョンに加工された加工苦汁は含まれない。また、苦汁以外の豆腐用の凝固剤も含まれない。本発明では、この海水由来の液状苦汁を使用に適した絹ごし豆腐の製造技術を提供する。ただし、短時間に均一に混合できるので、液状苦汁以外の凝固剤に対しても使用可能な技術である。
豆乳は、大豆由来の煮呉を搾汁して得られた高温の豆乳を対象とする。高温の豆乳と前記の液体苦汁の凝固反応は急速に進展するので、短時間に均一に混合する必要がある。ただし、凝固時間に余裕のある低温化した豆乳でも利用可能である。
絹ごし豆腐は、箸でつまめる硬さが望ましい。豆乳の濃度及び温度、液体苦汁の添加量などの製造条件は、箸でつまむことができる硬さを目安にして調製する。
【0014】
<豆腐製造工程>
100℃付近に加熱された状態の大豆粉砕物(呉)からおからを分離して搾汁された豆乳は、80℃以上の高温である。この80℃前後の豆乳に液体苦汁を添加すると、添加直後から凝固反応が始まるので、数秒で均一混合しないと、ムラのある豆腐となり、絹ごし豆腐としては粗悪な品質となる。なお、木綿豆腐は、崩れた豆腐であっても、圧搾して成形するので十分使用可能である。
一般的な絹ごし豆腐と木綿豆腐の製造工程を図7に示す。
この製造工程では、絹ごし豆腐と木綿豆腐と表現されているが、木綿豆腐は、脱水に使った布の織り目の痕が付いている。絹ごし豆腐は、脱水せず凝固した状態そのものである。
原料である大豆から不良大豆を取り除き、水洗する。大豆を水に浸漬し、水分を含ませる。水分を含んだ大豆を細かく砕いて生呉を得る。生呉を加熱蒸気などにより煮て煮呉を得る。100℃前後に加熱し、大豆タンパクなど凝固しやすい成分を最大に溶出させるために行う。煮呉を絞りにかけ、おからと豆乳に分離する。
絹ごし豆腐を製造する場合は、豆乳を容器に入れ、更に苦汁などの凝固剤を入れて攪拌し凝固させる。20〜40分放置し、固まった絹ごし豆腐が出来上がる。凝固した豆腐を容器から出し、製品の大きさにカットする。カットした豆腐を所要時間水に晒し、包装する。攪拌が足りないと豆腐は均一に固まらない。また過度な攪拌や、攪拌後素早く静止出来ないと絹ごし豆腐特有の「つるっと」した舌触りが損なわれてしまう。このシルク「絹」のような「つるっと」した舌触りから木綿豆腐に対して絹ごし豆腐と呼ばれる。
木綿豆腐を製造する場合は、容器に豆乳を入れ、苦汁などの凝固剤を入れて攪拌し凝固させる。凝固したものを崩し、型枠容器に入れて圧搾する。圧搾されて水分が調整された豆腐を型枠容器から出し、製品の大きさにカットする。カットした豆腐を所要時間水に晒し、包装する。
【0015】
<攪拌板、攪拌具>
攪拌具は、攪拌板に柄が取り付けられている。豆乳が充填される豆乳収納用の容器は、300〜400g/1個に小分けされる豆腐の大きさに適したカットができる従来使用されているサイズの大きさを基本とする。例えば、容器は上部が開放された直方体であり、水平断面が300〜350mm×260〜320mmである。深さは、300mm程度である。豆乳の充填深さは、100〜250mm程度とする。なお、容器の大きさはこれに限定されるわけではない。
攪拌板の基本は、容器内寸の縦横辺に対して5〜15mm小さい長方形の薄い板を基本形とする。さらに、7〜13mm小さくすることが好ましい。
この基本形から、四隅の三角形に切り落とした切欠きが形成され、中央部を開口して穴を形成する。切欠き三角形の2辺は、基本形の各辺長に対して、10〜20%とする。10〜15%程度が望ましい。攪拌板の四隅の切欠き部に向けて液状苦汁が添加される。
中央開口は、ほぼ方形であって、基本形の辺長に対して25〜40%とする。29〜34%程度が望ましい。開口の隅はRに形成されていても良い。
例えば、上記の容器の場合は、280〜330mm×240〜300mmの長方形が基本形となる。切欠きの三角形は、30〜70mm×25〜60mm程度にする。中央開口は、65〜130mm程度とする。容器の大きさ及び豆乳の充填量は、容器から豆腐を抜き出して、小分けにカットするハンドリング性を考慮して決定される。絹ごし用の柔らかい豆腐を大きく作ると、取り扱いが難しく、カット作業の困難性、崩れるリスクなどがあるので、上記のような大きさが望ましい。
この平板状の攪拌板の上面に操作用の柄となる支柱を取り付ける。柄は、攪拌板の上下動にしたがって発生する豆乳の攪拌流の妨げにならない位置を選択する。支柱は左右の短辺中央を結ぶライン上で左右に設ける。左右の側縁に支柱を設けることが望ましい。
攪拌具1の例を図1に示す。図1(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図を示す。攪拌板2には柄3の下部31が取り付けられている。攪拌板と柄の取付け位置は、バランス良く操作できる箇所とする。特に、攪拌板2の短辺中央部が適している。攪拌板2は長方形などの薄板であり、4つの隅部は斜めにカットされて切欠き23が形成されている。中央部には開口された穴24が一つ形成されている。
攪拌板2は、豆乳充填容器の水平断面よりもやや小さな大きさに形成される。容器の内面に対して5〜15mm程度小さな寸法とされる。
柄3は、細長い平板あるいは丸棒で構成され、下部31は「n」型であって、その上に操作用の上部柄32が形成されている。下部31の横杆33の高さは、豆乳の水深よりも大きくすることが好ましい。攪拌後の豆乳は速やかに静かになった状態で、凝固反応が進むことが肌理の細かな豆腐を製造するために重要である。横杆33は豆乳に侵入しない程度の高さに設けて、豆乳を余分にかき回す必要は無い。左右の上部柄32の上端部は横杆33で、連結されて把持部を形成することができる。あるいは、上端部は攪拌装置に装着することができる。
四隅の切欠き23と中央の穴24との関係は、4つの切欠きの合計面積よりも穴の面積を大きく形成する。攪拌板の上下動に伴い、切欠きと中央の穴を通して豆乳が流動することになる。この切欠き23が形成された空間に液体苦汁を添加する。
中央の穴からの流動量が四隅の切欠き部からの流動量より大きくなり、均一な攪拌混合が進む。攪拌板の形状、穴の位置、数、形状について各種検討したが、隅部に切欠きを設け、中央部に穴を設けた形状が優れた攪拌性を示した。
中央部の穴は、円形から方形の形状とする。直径あるいは辺の長さは、攪拌板の長辺の長さの25〜40%程度とする。
厳密には柄の取付け位置も攪拌流の流れに影響を与えることが確認された。攪拌板の上面中間部に設けるよりも、側辺に設けると均一な攪拌混合ができ、豆腐の品質も向上する。
攪拌具の例を図1に示している。この例は、280mm×320mm、四隅の切欠きは、40mm×40mmの三角形である。中央開口の穴は100×100mmとしてある。柄を構成する支柱は短辺の側縁中央に設けてある。
【0016】
この攪拌器具の操作は、高温の豆乳を容器に充填し、豆乳がかぶる程度の位置まで攪拌板を容器内に挿入し、その後所定量の液体苦汁を攪拌板の四隅の切欠き部に向けて添加し、添加直後に攪拌板を容器の底面に向けて降下させ、上下動を1から数回行った後、攪拌板を豆乳液から引き抜いて、攪拌を終了する。上下動は液体苦汁添加後3.5秒以内に攪拌が終了することが好ましい。攪拌板の押し下げ位置は、容器底面より上にして、豆乳が攪拌板の下側に残った状態とする。
豆腐製造にあっては、豆乳濃度、豆乳温度、液体苦汁の添加量などを調製する。豆腐の製造工程にも示すように、搾汁された豆乳は80℃以上の高温であり、この高温の状態で液体苦汁を添加して、凝固させることにより風味が豊かなおいしい絹ごし豆腐を作ることができる。本発明では、この高温状態の豆乳が使える技術を提供する。
攪拌板の四隅の切欠き部に投入された液体苦汁は、攪拌板の押し下げに伴い切欠き部から上昇する豆乳の流れに乗り移動する。一方、中央部の穴から上昇する豆乳の流れとぶつかり乱流となって拡散する。攪拌板が最下端に達し、上昇するのに伴い、豆乳は四隅の切欠きと中央の穴を通して下方に移動する。この場合も、中央の穴の流量が大きいので、液体苦汁も中央から拡散する量が多くなる。
隅部に供給された液体苦汁は、中央部からの優勢な流れに影響されて、攪拌され全体に均一に拡散し混合されると想定される。これに対して、攪拌板の中間に多数の穴を形成した従来例では、その穴の付近の豆乳が主にその穴を通過することとなり、全体に拡散することがないと考えられる。細長いスリットを複数設けた場合でも、そのスリットから移動する豆乳は、カーテンのようになって、隣の水流との混合が進まないと想定される。
本願発明の、攪拌板は、流速の速い液流が発生する四隅の切欠き部に液体苦汁を投入し、中央の優勢な液流によって、液体苦汁が豆乳全体に均一分散され、上下に移動することによって、速やかに全体に攪拌混合されると推測される。四隅に液体苦汁を添加することも、四方から拡散が進むために、全体への回りを早くすることができる要因である。
【0017】
豆乳の濃度が12%以上になると、液の動き方に違いがでるので、攪拌の速度をコントロールする。また、豆乳の濃度によって粘性も変化し豆乳中に気泡が巻き込まれやすくなるので、所定速度に達するまでの加速時間、攪拌板が所定速度から停止するまでの減速時間を上げたり下げたりして調整する必要がある。
液体苦汁を使用した場合、豆乳の温度によって出来方に違いがでてくる。豆乳が65〜74℃では、攪拌回数を増やして均一に攪拌する為の時間を十分にとることができる。豆乳が75〜85℃では、短時間でのニガリと豆乳の均一混合が必要となる。
このような、豆乳濃度、温度、使用する液体苦汁の種類に応じて、攪拌速度、加減速時間を調整して、品質が良く一定の品質の絹ごし豆腐を製造するには、攪拌板のみならず攪拌板を機械的にコントロールする装置の開発が重要である。
【0018】
本発明に用いられる豆腐用の豆は、通常豆腐に用いられている豆を使用することができる。タンパク質含有量が多い大豆が適している。日本産及び外国産の大豆が使用可能である。
豆腐用に適しているとされている日本産の大豆は、例えば、フクユタカ、青丸くん、アキシロメ、あきたみどり、あやこがね、あやみどり、エンレイ、おおすず、オクシロメ、きぬさやか、キヨミドリ、ギンレイ、クロダマル、ことゆたか、サチユタカ、里のほほえみ、シュウレイ、スズカリ、すずこがね、すずさやか、タチホマレ、タチユタカ、たまうらら、タンレイ、つぶほまれ、つやほまれ、トモユタカ、ナカセンナリ、ニシノムスメ、ハタユタカ、ふくいぶき、フクミノリ、ほうえん、むらゆたか、リュウホウなどがある。
【0019】
<攪拌装置>
本発明は、短時間に均一な攪拌を機械的にできる。
攪拌装置は、機枠に豆乳充填用容器載置台、攪拌具を上下動させる駆動機構、液体苦汁供給機構及び制御機構を少なくとも備えている。さらに、豆乳供給機構、液体苦汁計量機構、豆乳充填用容器の搬送機構を備えていることが好ましい。制御機構は、少なくとも、攪拌具の上下動の位置及び回数の設定ができるようにする。さらに、上下動のスピード、攪拌具の攪拌動作中の位置制御、豆乳の供給量設定、液体苦汁の供給量設定、液体苦汁の添加タイミング、攪拌具起動タイミング、豆乳充填用容器の搬入・搬出制御のコントロールができることが好ましい。さらに、豆乳の温度計測、豆乳濃度計測、豆乳液面レベル感知等の機器類を備えても良い。
【0020】
上部が開放した直方体の豆乳収納用の容器を載置する容器載置機構、攪拌具、攪拌具昇降機構、容器の四隅に液体苦汁を供給する液体苦汁供給機構、制御機構を備えた豆乳と液体苦汁を攪拌混合する絹ごし豆腐製造装置であって、攪拌板は、容器断面よりやや小さく、4隅に切欠きが形成され、中央部に穴が設けられており、容器載置機構に対して攪拌具が上下方向に昇降可能に取り付けられている。
容器載置機構には、容器を搬送する機構を付設して、容器の搬入、搬出を行うことができる。攪拌後の豆乳が凝固反応を静かに進めるために20〜40分程度静かにして養生する必要がある。攪拌後搬出された豆乳が充填された容器は、静置用の棚などに並べられて安定した凝固時間を確保する。所定時間後、凝固した豆腐を水中に開放し、カットし小分けした状態で水にさらす。
制御機構は、容器載置機構の所定位置に豆乳収納用の容器が設置された状態において、攪拌具を上方待機状態から豆乳液の上部に没入する上部位置まで下降させ、攪拌具が前記上部位置に停止した状態で、液体苦汁を容器の四隅に向けて供給し、液体苦汁添加直後に攪拌具を豆乳液の上部位置と下部位置との間を所定回数上下に昇降させ、その後攪拌具を豆乳収納用の容器の上方に待機させる攪拌機構の制御を行う。さらに、容器搬送機構や豆乳充填機構の操作を制御する機能を付加することができる。
制御機構には、自動制御と手動制御と、充填量、豆乳温度計測表示、操作スピードなど各種の表示器、設定器を設けることができる。
【0021】
[攪拌板の形状による試験]
1.6種類の攪拌板を作成して、絹ごし豆腐を作成して評価した。
試験に用いた攪拌板の平面形状を図3に示す。図3(a)は第1実施例の図、(b)は第2実施例の図、(c)は第3実施例の図、(d)は比較例1の図、(e)は比較例2の図、(f)は比較例3の図、(g)は比較例4の図をそれぞれ示している。
攪拌板の基本形状は、長辺320mm×巾280mmとした。 攪拌板は、豆乳収納容器の内寸法より10mm小さくしてあり、これは、豆乳収納容器の約87.8%の面積である。四隅の切欠きは、40mm×40mmであり、豆乳収納容器の面積の約3.1%である。実施例2をのぞき、中央部の開口面積は、豆乳収納容器の約9%とした。攪拌板の開口面積は、豆乳容器に対する攪拌板の開口面積は、実施例1、比較例2〜4が23〜25%に設定し、実施例2は、開口面積が17.2%、比較例1は21.2%に設定されている。
柄は、短辺部の側縁中央に取り付けた。
実施例1: 基本形状は長辺320mm×巾280mm、四隅の切欠き40mm×40 mm、中央穴100mm×100mm、角30mmR(図3(a)参照)
実施例2: 基本形状は長辺320mm×巾280mm、四隅の切欠き40mm×40 mm、中央穴直径50mm(図3(b)参照)
比較例1: 基本形状は長辺320mm×巾280mm、四隅の切欠き 無し、中央穴 100mm×100mm、角30mmR(図3(d)参照)
比較例2: 基本形状は長辺320mm×巾280mm、四隅の切欠き40mm×40 mm、長辺部に2つの長蛇円形開孔約65cm(図3(e)参照)
比較例3: 基本形状は長辺320mm×巾280mm、四隅の切欠き40mm×40 mm、対角線上に4つの長蛇円形開孔約28cm(図3(f)参照)
比較例4: 基本形状は長辺320mm×巾280mm、四隅の切欠き40mm×40 mm、穴5個配置 直径50mm(図3(g)参照)

【0022】
2.試験条件
(a)豆乳収納容器サイズ:長辺340mm×巾300mm×高さ200mm
(b)使用豆 :福岡産ふくゆたか100%
(c)豆乳製造:加熱はバッチ式の釜を使用
加熱温度97℃
消泡剤「クレトンパワー」花王(株)
(d)豆乳条件:使用量11kg/回
ブリックス濃度 14.0%(測定:手持屈折計)
温度 75℃(測定:デジタル温度計(熱電対直接式))
(e)液体苦汁条件:種類「室戸の潮にがり」赤穂化成(株)製
使用量115g/回
(f)液体苦汁添加:豆乳収納容器の4隅、
攪拌板がポジション1(POS1)の位置にあるときに添加
(g)攪拌板の制御
容器底面を基準として、高さポジション(POS)を変化させて、攪拌板 を昇降して、攪拌を行う。攪拌には、攪拌具を昇降させる攪拌装置を使用し た。
容器底面から220mmの高さを原点位置として、次の表の条件に従って 制御した。この際の豆乳と液体苦汁の攪拌時間は、3.5秒間である。
ポジション1(POS1)の位置で板を停止させ、液体苦汁を添加した。 その後、液体苦汁が豆乳に投入された時点から板の上下動作を開始させた。

【0023】
本試験の概略を、図2を参照して説明する。図2(a)は断面概略図を示し、(b)は平面視を図示している。
図示は実施例1を用いている。容器4と攪拌板2の間にはd1の間隔がある。攪拌板2は図1に記載された構成となっている。攪拌板2は最初は原点位置Ltのレベルにあり、豆乳がLmまで投入された時点でPOS1のレベルL1に降下させて一旦静止させ、液体苦汁を添加し、攪拌板をPOS2のレベルLbまでの降下動作m2、LbからレベルL1までの上昇動作m3によって攪拌板を上下動させ、さらにもう一回往復させて上昇動作m−upして攪拌板をPOS5の最初のレベルLtに上昇させて、攪拌を終了する。
攪拌板の横杆の高さ31hは、豆乳のレベルLmよりも高い位置になるように設定されている。
【0024】
【表1】

【0025】
(g)評価項目
評価項目は次の4項目である。評価基準は表2に示す。
評価に際しては、豆乳収納容器に出来た豆腐を専用のカット具で24丁にカットして 評価を実施した。
(1)缶内での凝固ムラの評価:豆乳充填容器内での凝固ムラの状態の観察
(2)1丁にカットした際の豆腐表面評価:カットした豆腐の表面を目視にて観察
(3)豆腐中に巻き込まれた気泡評価:カットした豆腐の表面の気泡数を計測
(4)豆腐破断強度の標準偏差:測定器「RHEO METER COMPAC-100II」(株)サン科学 製を使用して測定
サンプルは、収納容器の端と中央、端と中央の間の 3点の豆腐を使用
測定は、各サンプルの3箇所を測定して、合計9点 の破断強度の結果より偏差を計算
評価結果を表2に示す。
【0026】
【表2】

*1:空間率とは、収納容器の断面積に対して、攪拌板のない空間面積(板の切り欠 き、収納容器と板の間隔)の割合を示す。
【0027】
3.試験結果
試験結果は、表2に示すとおりである。本試験の結果、全体として、実施例1、実施例2及び比較例3に凝固ムラの発生が認められなかった。ただし、比較例3は、豆腐中に多くの気泡が認められ、外観が悪く食感も劣る原因となる。
実施例1は、隅に切欠きを設けた点で、比較例1と異なる形状をしている。比較例1は、凝固ムラが発生し、カットした豆腐の表面が荒れていて、絹ごし豆腐としては品質が落ちる。
比較例2は、隅に切欠きを設け、長辺に沿って長孔を2つ設けた形状である。豆腐の品質の向上が認められない。特に、一部に凝固ムラが認められた。
比較例3は、豆腐中の気泡が多く、豆腐の破断強度のバラツキも大きいので、外観が悪く、食感も劣る原因となる。
比較例4は、カットした表面の評価が悪く及び豆腐中の気泡数が多い。
実施例2は、中央に直径50mm(約20cmの穴が開けられており、比較例4は直径50mmの穴が5個あけられている。両者を比較すると、多数の穴を設けることが、攪拌ムラを解消することにはなっていないことが分かる。比較例3のように長孔を対角線上に配置することにより、攪拌ムラを解消できたが、気泡が多数発生し品質が低下することになる。おそらく、複数の穴が設けられた攪拌板では、それぞれの穴から出入りする液流が相互に混合する比率が小さいと考えられる。一方、中央開口が一つの場合は、四隅の切欠きと中央の開口からの流れに単純化されるので、攪拌が進むものと考えられる。特に、切欠きに対して中央開口からの液流が大きく優勢になることによって、中央部開口からできる乱流によって、素早く攪拌混合が進むと考えられる。
これらを総合して見ると、攪拌板の四隅に切欠き部を設け、攪拌板の中央部に穴を形成した形状が、高温の豆乳と液体苦汁を素早く均一に攪拌混合するために有効であることが判明した。そして、中央の穴は、四隅の切欠きの面積よりも大きい方が絹ごし豆腐の品質を向上させることが分かった。
【0028】
[柄の取付け位置に関する試験]
攪拌板に取り付ける柄が豆乳の攪拌流の流れに対して抵抗となっていることが観察された。そこで、攪拌ムラに対する柄の取付け位置による影響を検討した。
攪拌板の形状は、前記実施例1と同様とする。
柄は平板の棒状材を用いた。柄は、巾方向中央ライン状に左右2点で取り付けた。中央に126mm離れた位置(実施例3、図4(b)参照)と左右の側縁に取り付けた例(実施例1、図4(a)参照)とした。攪拌板から120mmの高さの位置に横杆を渡して補強した。横杆は豆乳に没入しない高さである。柄の取付け位置を示した模式図を図4に示す。図4(a)が実施例1、(b)が実施例3の柄の取付け位置を示している。
実施例3は、中央穴の巾が100mmであるので、中央穴の縁近くに取り付けられていることになる。
試験条件は、前記攪拌板の形状試験と同じである。
試験結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】
試験結果は、凝固ムラに及ぼす影響は小さいことが確認されたが、カットした豆腐の表面に荒れが部分的に認められた。この結果、柄の取付け位置は、中央穴から離して設けることが好ましく、側縁に設けることが望ましいといえる。
また、補強用に設ける横杆は、豆乳の液面から出没する高さにすると、豆乳に気泡が入り込むので、豆乳に接触しない高い位置とすることが望ましい。
【0031】
[攪拌板の外辺と容器の側壁との間隔試験]
実施例1の板を基準形状として、板の形状(四隅の切欠き40mm×40mm、中央穴100mm×100mm、角30mmR)は同様として、外径寸法のみを変更した板で絹ごし豆腐を製造して評価した。
試験条件は、前記攪拌板の形状試験と同じである。
実施例1:間隔10mm、板外径寸法は長辺320mm×巾280mm
実施例4:間隔 7mm、板外径寸法は長辺323mm×巾283mm
実施例5:間隔13mm、板外径寸法は長辺317mm×巾277mm
比較例5:間隔 5mm、板外径寸法は長辺325mm×巾285mm
比較例6:間隔15mm、板外径寸法は長辺315mm×巾275mm
試験結果を表4に示す。
【0032】
【表4】

【0033】
試験結果は、表4に示す通りである。本試験の結果、全体として、凝固ムラの発生は認められなかった。ただし、比較例5、6においては、部分的に外観が悪く、気泡も多くなる傾向にある。
実施例1を基準として、実施例4、比較例5は間隔を狭くしている。狭くした事により気泡が増加する傾向となる。おそらく、狭くした事により、管壁面からの液の対流量が減少するが、角及び中心からの対流量が増えた事により対流速度が増し、気泡が多くなったと考えられる。
実施例1を基準として、実施例5、比較例6は間隔を広くしている。広くした事により凝固ムラや豆腐表面の荒れが増加する傾向となる。おそらく、広くした事により、液体凝固剤を添加した四隅の対流量(対流速度)が低下して、それに伴い豆乳中への分散効果が低下して表面の荒れ、凝固ムラが発生したと考えられる。
これらを総合して見ると、間隔を適切な寸法で設ける事により、高温の豆乳に液体凝固剤を素早く分散させるのに有効であることが判明した。
【0034】
[攪拌時間による評価試験]
液体苦汁を豆乳に投入した際の凝固反応は早く、攪拌時間により凝固した豆腐を崩してしまう可能性がある。そこで、攪拌時間の影響について検証した。
攪拌板の形状は、実施例1の板と同様とした。
攪拌時間の変更については、下記の内容にて攪拌速度・停止時間及び攪拌回数を変更することで攪拌時間を変化させ、絹ごし豆腐を製造して評価した。試験攪拌動作条件を表5に示す。
試験条件は、前記攪拌板の形状試験と同じであり。
試験結果を表6に示す。
【0035】
【表5】

【0036】
【表6】

【0037】
試験結果は、攪拌時間によって豆腐に及ぼす影響は大きいことが確認された。この結果攪拌時間は、3.5s以内に設定することが望ましいといえる。
実施例1と比較例8を比較した場合、攪拌を増やして豆乳と液体苦汁をより均一に混合させようとすると豆腐表面の荒れ、気泡が多くなる傾向にある。これは、凝固した豆腐を攪拌により崩してしまい、豆腐の出来映えを悪くしていると考えられる。
また、比較例7は、攪拌2回目(POS3)の前に停止時間を設けて攪拌時間を長くした場合、凝固ムラと表面の荒れが増す傾向にある。これも比較例8と同様に、凝固した豆腐を攪拌により崩してしまい、豆腐の出来映えを悪くしていると考えられる。
【0038】
[豆腐製造装置の例]
豆腐製造装置5の例を図5、6に示す。図5は豆腐製造装置の側面図を示す。図6は、制御系統図を示す。
豆腐製造装置5は架台57上にローラーなどの搬送装置6を兼用する豆乳充填容器載置台、攪拌具1を上下動駆動する機構、液体苦汁供給機構、豆乳供給機構及びこれらを制御する制御部Cから構成されている。
架台57上に支柱56を垂直に設け、この支柱56にラック53とラックピニオンギア54を介して攪拌具1の柄3を装着するステイ52を取り付ける。ラックピニオンギア54は、モーターMによって駆動する。豆乳を豆乳タンク7から豆乳充填容器4に供給する豆乳供給ライン71、液体苦汁タンク8から液体苦汁を供給する液体苦汁供給ライン81が装着されている。
なお、昇降機構は、電動スライダ、空気圧制御など他の機構も採用することが可能である。
【0039】
制御部Cは、攪拌具1を昇降するモーターM、搬送装置6駆動、豆乳供給、液体苦汁供給をコントロールする。豆乳供給及び液体苦汁供給制御にはエアバルブが適している。
制御系統は、移送装置制御ライン101、位置検知信号ライン102、モーター制御ライン103、豆乳供給バルブ制御104、液体苦汁供給バルブ制御105から構成される。
攪拌具1は、容器の上方で待機レベルL2に位置し、豆乳充填容器4に豆乳が供給された後、豆乳の上部に侵入させてレベルL1まで降下させる。レベルL1の時点で液体苦汁を添加して、直後にレベルL1とレベルLb間を数回上下させて、待機レベルL2まで上昇させて、攪拌を終了する。このレベルは、待機レベルL2は、攪拌板の形状試験で用いた原点位置、POS1とPOS3はレベル1、POS2とPOS4はレベルLbに相当する。攪拌具1のコントロールは、スピード、レベル設定、昇降回数、液体苦汁添加後の起動時間などのコントロールを行う。
【0040】
全体のコントロールは、搬送されてきた容器4が所定位置に達したことをセンサーSで感知して、搬送装置6を停止させ、次いで豆乳エアバルブを操作して豆乳タンク7から豆乳供給ライン71を通して容器4に充填し、その後モーターMを駆動して、ラック&ピニオンを操作して攪拌板2をレベルL1まで降下させて一旦静止させ、素早く液体苦汁エアバルブを操作して苦汁タンク8から液体苦汁供給ライン81を通して容器4に充填し、その直後に攪拌板2を数回昇降させる。その後豆乳充填容器4を移送して、20〜40分静置して、凝固反応を進める。
制御系統には、さらに、豆乳の温度センサー、液体苦汁の温度センサー等必要な監視機器、制御系統を付加することができる。
【0041】
この装置によって、攪拌に適切な攪拌板を適切に攪拌コントロールすることができる。
また、豆乳の濃度によって粘性も変化し豆乳中に気泡が巻き込まれやすくなるので、所定速度に達するまでの加速時間、攪拌板が所定速度から停止するまでの減速時間を上げたり下げたりして調整する。
液体苦汁を使用した場合、豆乳の温度によって出来方に違いがでてくる。豆乳が65〜75℃では、攪拌回数を増やして均一に攪拌する為の時間を十分にとることができる。豆乳が75〜85℃では、短時間でのニガリと豆乳の均一混合が必要となる。
このような、豆乳濃度、温度、使用するニガリの種類に応じて、攪拌速度、加減速時間を調整して、品質が良く一定の品質の絹ごし豆腐を製造できる装置を提供できる。
【符号の説明】
【0042】
1 攪拌具
2 攪拌板
23 切欠き
24 穴
3 柄
31 下部
32 上部柄
33 横杆
4 容器
5 豆腐製造装置
52 ステイ
53 ラック
54 ピニオンギア
55 ギア
56 支柱
57 架台
6 搬送装置
7 豆乳タンク
71 豆乳供給ライン
8 液体苦汁タンク
81 液体苦汁供給ライン
101 移送装置制御ライン
102 位置検知信号ライン
103 モーター制御ライン
104 豆乳供給バルブ制御
105 液体苦汁供給バルブ制御

A エアバルブ
M モーター
C 制御部
S センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面方形の容器に収納された豆乳と液体苦汁とを攪拌する攪拌具であって、
攪拌板と攪拌板に取り付けられた柄から構成され、
攪拌板は、容器断面よりやや小さく、4隅に切欠きが形成され、中央部に穴が設けられており、
柄は、攪拌板の上面に取り付けられていることを特徴とする攪拌具。
【請求項2】
中央部の穴の面積は、隅の4箇所の切欠きの面積の合計よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の攪拌具。
【請求項3】
攪拌板の基本形は、豆乳収納用の容器より5〜15mm小さい方形としたことを特徴とする請求項1又は2記載の攪拌具。
【請求項4】
上部が開放した直方体の豆乳収納用の容器と請求項3記載の攪拌具を備えたことを特徴とする絹ごし豆腐製造器具。
【請求項5】
上部が開放した直方体の豆乳収納用の容器を載置する容器載置機構、攪拌具、攪拌具昇降機構、容器の四隅に液体苦汁を供給する液体苦汁供給機構、制御機構を備えた豆乳と液体苦汁を攪拌混合する豆腐製造装置であって、
攪拌板は、容器断面よりやや小さく、4隅に切欠きが形成され、中央部に穴が設けられており、
容器載置機構に対して攪拌具が上下方向に昇降可能に取り付けられており、
制御機構は、容器載置機構の所定位置に豆乳収納用の容器が設置された状態において、攪拌具を上方待機状態から豆乳液の上部に没入する上部位置まで下降させ、攪拌具が前記上部位置に停止した状態で、液体苦汁を容器の四隅に向けて供給し、液体苦汁添加直後に攪拌具を豆乳液の上部位置と下部位置との間を所定回数上下に昇降させ、その後攪拌具を豆乳収納用の容器の上方に待機させること
を特徴とする豆腐製造装置。
【請求項6】
制御機構は、攪拌時間あるいは攪拌速度、攪拌動作位置の設定が可能であることを特徴とする請求項5記載の豆腐製造装置。
【請求項7】
制御機構の攪拌時間制御は、液体苦汁添加後から攪拌具昇降機構の起動時間の設定
が可能であることを特徴とする請求項6記載の豆腐製造装置。
【請求項8】
制御機構は、攪拌具昇降機構の攪拌動作において加速時間、減速時間を設定できることを特徴とする請求項6又は7記載の豆腐製造装置。
【請求項9】
容器に70〜90℃の高温の豆乳を収納し、請求項1記載の攪拌具を豆乳上面から挿入し攪拌板が豆乳上部に没入した位置で待機し、液体苦汁を攪拌板の切欠き部に添加し、攪拌具が豆乳液内部にて上下に昇降する攪拌動作を液体苦汁添加後3.5秒以内に行い、その後該攪拌板を豆乳上方へ引き抜いて豆乳と液体苦汁を攪拌混合する方法。
【請求項10】
容器に70〜90℃の高温の豆乳を収容し、請求項1記載の攪拌具を豆乳上面から挿入し攪拌板が豆乳上部に没入した位置で待機し、液体苦汁を攪拌板の切欠き部に添加し、攪拌具が豆乳液内部にて上下に昇降する攪拌動作を液体苦汁添加後3.5秒間以内に行い、その後該攪拌板を豆乳上方へ引き抜いて、豆乳と液体苦汁を攪拌混合し、その後静置状態において豆乳を凝固させて絹ごし豆腐を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−200186(P2012−200186A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66872(P2011−66872)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【特許番号】特許第4796663号(P4796663)
【特許公報発行日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(592015802)赤穂化成株式会社 (29)
【Fターム(参考)】