説明

継手と軸の結合構造

【課題】結合筒部と軸との間の回転方向のガタを小さくして、ステアリングホイールの操舵感を向上させることを可能にした継手と軸の結合構造を提供する。
【解決手段】結合筒部7の内周面71には、係合部としてのキー溝77が形成されている。キー溝77は、スリット72に対して180度異なる位相に形成されている。軸8の外周面には、キー溝77に係合する被係合部としてのキー85が形成されている。結合筒部7と軸8との間に大きな回転トルクが作用すると、キー85からキー溝77に力が加わる。ボルト74の締付け力が小さくてもスリット72には回転トルクは作用しないため、キー85とキー溝77との間にはガタが生じず、結合筒部7と軸8との間の回転方向の剛性は低下せず、ステアリングホイールの操舵感が低下する恐れはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は継手と軸の結合構造、特に、ステアリング装置のステアリングシャフトの回転を伝達する自在継手と軸を連結する継手と軸の結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前輪を操舵するステアリング装置では、ステアリングホイールの操作で回転するステアリングシャフトの動きを、自在継手を介してステアリングギヤの入力軸に伝達している。
【0003】
ステアリングホイールの動きは、ステアリングコラム内に回転自在に設けたステアリングシャフトおよび中間シャフトを介してステアリングギアに伝達され、ステアリングギアによって車輪の方向を操舵する。通常、ステアリングシャフトとステアリングギアの入力軸とは、互いに同一直線上に設けることが出来ない。
【0004】
このため従来から、ステアリングシャフトとステアリングギアへの入力軸との間に中間シャフトを設け、この中間シャフトの端部とステアリングシャフト、および、中間シャフトの端部とステアリングギアの入力軸の端部とを、自在継手を介して結合することにより、同一直線上に存在しないステアリングシャフトと入力軸との間での動力伝達が行えるようにしている。
【0005】
このような自在継手は、軸を嵌合するための内周面を備えた結合筒部と、この結合筒部の内周面に貫通するスリットを挟んで結合筒部と一体に設けられた一対のフランジ部を備えている。そして、フランジ部に形成されたボルト孔にボルトを内嵌して締付けることにより、結合筒部の内周面を縮径して、軸の外周面を結合筒部の内周面で締め付けて固定するようにしている。
【0006】
また、軸の外周には軸方向の所定位置に略U字形の凹部が形成され、ボルトが凹部を挿通することにより、軸が結合筒部から抜け出そうとすると、ボルトの軸部外周が凹部に当接して、軸が結合筒部から抜け出すのを防止している。従って、軸を結合筒部に組み付ける際には、この凹部とボルト孔が整合するように組み付けることが必要で、組み付け作業時間を短縮するために、凹部とボルト孔の整合を容易に行うための工夫が行われている。
【0007】
図6は特許文献1の継手と軸の結合構造を示し、凹部とボルト孔の整合を容易に行うようにした継手と軸の結合構造である。図6に示す継手と軸の結合構造は、自在継手5のヨーク6と軸8とから構成されている。図6(b)に示すヨーク6には、筒状の結合筒部7が形成され、結合筒部7の右側には、図示しない二股状のアーム部が一体的に形成され、このアーム部に形成された円孔に、軸受を介して十字軸が挿入され、この十字軸を介して、他方の図示しないヨークが結合されている。
【0008】
結合筒部7の円筒状の内周面71に、図6(b)の左側から、内周面71の中心軸線711に平行に、円柱状の軸8を挿入する。結合筒部7には、結合筒部7の外周面73から内周面71に連通するスリット(切り割り)72が形成されている。結合筒部7には、ボルト74のボルト軸部741を挿入するためのボルト孔75が形成されている。また、結合筒部7には、ボルト74の雄ねじ742をねじ込むための雌ねじ(図示せず)が、ボルト孔75と同心状に形成されている。
【0009】
軸8の外周面には、上記スリット72に係合するキー81が形成されている。キー81の幅W2は、スリット72の溝幅W1よりも若干狭く形成されて、すきまばめ嵌合になっている。また、軸8の外周面には、略U字形の凹部82が形成されている。凹部82は、軸8の中心軸線83に直交し、かつ、ボルト孔75の中心軸線751に平行に形成され、キー81を分断して形成されている。
【0010】
軸8が結合筒部7の内周面71の軸方向の正規位置(軸8の段差面84が結合筒部7の左端面76に当接した位置)に達していれば、ボルト軸部741が凹部82を挿通する。従って、軸8が結合筒部7の内周面71から抜け出そうとすると、ボルト軸部741の外周が凹部82に当接して、軸8が結合筒部7の内周面71から抜け出すのを防止する。
【0011】
結合筒部7の内周面71に軸8を挿入し、ボルト孔75に、図6の右側からボルト74を挿入し、雌ねじに雄ねじ742をねじ込む。すると、結合筒部7が弾性変形してスリット72の溝幅が狭まり、軸8の外周面を結合筒部7の内周面71で強く締付けて固定する。スリット72の溝幅が狭まるため、スリット72にキー81がガタ無く締付けられ、結合筒部7と軸8との間で回転トルクを伝達する。
【0012】
特許文献1に示す継手と軸の結合構造は、結合筒部7と軸8との間に大きな回転トルクが作用すると、キー81からスリット72に力が加わる。ボルト74の締付け力が小さいと、スリット72の溝幅が大きくなって、スリット72とキー81との間にガタが生じる。そのため、結合筒部7と軸8との間に回転方向のガタが生じて、ステアリングホイールの操舵感が低下する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2009−545480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、結合筒部と軸との間の回転方向のガタを小さくして、ステアリングホイールの操舵感を向上させることを可能にした継手と軸の結合構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明は、軸を嵌合するための内周面を備えた結合筒部を有する継手、上記結合筒部の内周面に結合筒部の軸方向に平行に挿入され、結合筒部の内周面に回転トルクを伝達可能に内嵌する外周面を有する軸、上記結合筒部に形成され、結合筒部の外周面から内周面に貫通するスリット、上記結合筒部に形成されたボルト孔にボルト軸部を内嵌し、上記スリットの間隔を狭めて、上記結合筒部の内周面を縮径し、上記軸の外周面を結合筒部の内周面で締め付けるボルト、上記軸の外周面に上記ボルト孔の位相と同一の円周上の位相に形成され、上記軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、上記ボルトに係合して軸が結合筒部から抜け出すのを防止する凹部、上記結合筒部の内周面に上記スリットの位相とは異なる円周上の位相に形成され、上記軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、軸に回転トルクを伝達可能に係合する係合部、上記軸の外周面に上記係合部の位相と同一の円周上の位相に形成され、上記軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、係合部に係合する被係合部を備えたことを特徴とする継手と軸の結合構造である。
【0016】
第2番目の発明は、第1番目の発明の継手と軸の結合構造において、上記結合筒部の係合部が、内周面の軸方向に平行に形成されたキー溝であり、上記軸の被係合部が、軸の軸方向に平行に形成され上記キー溝に係合するキーであることを特徴とする継手と軸の結合構造である。
【0017】
第3番目の発明は、第1番目の発明の継手と軸の結合構造において、上記結合筒部の係合部が、内周面の軸方向に平行に形成されたキーであり、上記軸の被係合部が、軸の軸方向に平行に形成され上記キーに係合するキー溝であることを特徴とする継手と軸の結合構造である。
【0018】
第4番目の発明は、第2番目から第3番目までのいずれかの発明の継手と軸の結合構造において、上記結合筒部の係合部は、上記スリットに対して180度異なる位相に形成され、上記結合筒部の内周面には、上記スリットの円周上の両側近傍にキー溝が形成され、上記軸の外周面には、上記軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、上記キー溝に係合するキーが形成されていることを特徴とする継手と軸の結合構造である。
【0019】
第5番目の発明は、第4番目の発明の継手と軸の結合構造において、上記結合筒部は自在継手のヨークに一体的に形成されていることを特徴とする継手と軸の結合構造である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の継手と軸の結合構造は、結合筒部に形成されたボルト孔にボルト軸部を内嵌し、スリットの間隔を狭めて、結合筒部の内周面を縮径し、軸の外周面を結合筒部の内周面で締め付けるボルトと、軸の外周面にボルト孔の位相と同一の円周上の位相に形成され、軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、ボルトに係合して軸が結合筒部から抜け出すのを防止する凹部と、結合筒部の内周面にスリットの位相とは異なる円周上の位相に形成され、軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、軸に回転トルクを伝達可能に係合する係合部と、軸の外周面に係合部の位相と同一の円周上の位相に形成され、軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、係合部に係合する被係合部を備えている。
【0021】
従って、ボルトの締付け力が小さくてもスリットには回転トルクは作用しないため、内周面が軸の外周面を締付ける締付け力は低下しない。また、係合部と被係合部との間にはガタが生じず、結合筒部と軸との間の回転方向のガタが小さくなるため、ステアリングホイールの操舵感が低下する恐れはない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例の継手と軸の結合構造を有する自在継手を備えたステアリング装置の全体側面図である。
【図2】本発明の実施例1の継手と軸の結合構造を示す斜視図であり、(a)は軸の斜視図、(b)は結合筒部の斜視図である。
【図3】本発明の実施例2の継手と軸の結合構造を示す斜視図であり、(a)は軸の斜視図、(b)は結合筒部の斜視図である。
【図4】本発明の実施例3の継手と軸の結合構造を示す斜視図であり、(a)は軸の斜視図、(b)は結合筒部の斜視図である。
【図5】本発明の実施例4の継手と軸の結合構造を示す斜視図であり、(a)は軸の斜視図、(b)は結合筒部の斜視図である。
【図6】従来の継手と軸の結合構造を示す斜視図であり、(a)は軸の斜視図、(b)は結合筒部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施例1から実施例4を説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の実施例の継手と軸の結合構造を有する自在継手を備えたステアリング装置の全体側面図である。図1に示すように、本発明の実施例の継手と軸の結合構造を備えた自在継手を備えたステアリング装置は、車体後方側(図1の右側)にステアリングホイール11を装着可能なステアリングシャフト12と、このステアリングシャフト12を挿通したステアリングコラム13と、このステアリングシャフト12に補助トルクを付与する為のアシスト装置(操舵補助部)20と、このステアリングシャフト12の車体前方側(図1の左側)に、図示しないラック/ピニオン機構を介して連結されたステアリングギヤ30とを備える。
【0025】
ステアリングシャフト12は、雌ステアリングシャフト12Aと雄ステアリングシャフト12Bとを、回転トルクを伝達可能に、かつ軸方向に関して相対移動可能にスプライン嵌合している。従って、上記雌ステアリングシャフト12Aと雄ステアリングシャフト12Bとは、衝突時に、このスプライン嵌合部が相対移動して、全長を縮めることができる。
【0026】
また、上記ステアリングシャフト12を挿通した筒状のステアリングコラム13は、アウターコラム13Aとインナーコラム13Bとをテレスコピック移動可能に組み合わせている。そのため、ステアリングコラム13は、衝突時に軸方向の衝撃が加わった場合に、この衝撃によるエネルギを吸収しつつ全長が縮まる、所謂コラプシブル構造としている。
【0027】
そして、上記インナーコラム13Bの車体前方側端部を、ギヤハウジング21の車体後方側端部に圧入嵌合して固定している。また、上記雄ステアリングシャフト12Bの車体前方側端部を、このギヤハウジング21の内側に通し、アシスト装置20の図示しない入力軸の車体後方側端部に連結している。
【0028】
ステアリングコラム13は、その中間部を支持ブラケット14により、ダッシュボードの下面等、車体18の一部に支承している。また、この支持ブラケット14と車体18との間に、図示しない係止部を設けて、この支持ブラケット14に車体前方側に向かう方向の衝撃が加わった場合に、この支持ブラケット14が上記係止部から外れ、車体前方側に移動するようにしている。
【0029】
また、上記ギヤハウジング21の上端部も、上記車体18の一部に支承している。また、本実施例の場合には、チルト機構及びテレスコピック機構を設けることにより、上記ステアリングホイール11の車体前後方向位置、及び、高さ位置の調節を自在としている。このようなチルト機構及びテレスコピック機構は、従来から周知であり、本発明の特徴部分でもない為、詳しい説明は省略する。
【0030】
上記ギヤハウジング21の車体前方側端面から突出した出力軸23は、自在継手(上側自在継手)4を介して、中間シャフト15の後端部に連結している。また、この中間シャフト15の前端部に、別の自在継手(下側自在継手)5を介して、ステアリングギヤ30のピニオン軸(以下軸と呼ぶ)8を連結している。中間シャフト15は、雄中間シャフト(雄シャフト)15Aの車体前方側に、雌中間シャフト(雌シャフト)15Bの車体後方側が外嵌し、回転トルクを伝達可能に、かつ、軸方向に関して相対移動可能に嵌合している。
【0031】
図示しないピニオンが、軸8の下端(車体前方側端部)に形成されている。また、図示しないラックが、このピニオンに噛み合っており、ステアリングホイール11の回転が、タイロッド31を移動させて、図示しない車輪を操舵する。
【0032】
アシスト装置20のギヤハウジング21には、電動モータ26のケース261が固定され、この電動モータ26の図示しない回転軸にウォームが結合されている。出力軸23には図示しないウォームホイールが取り付けられ、このウォームホイールに電動モータ26の回転軸のウォームが噛合っている。
【0033】
また、出力軸23の中間部の周囲には、図示しないトルクセンサが設けられている。上記ステアリングホイール11からステアリングシャフト12に加えられるトルクの方向と大きさを、トルクセンサで検出し、この検出値に応じて、電動モータ26を駆動し、ウォームとウォームホイールから成る減速機構を介して、出力軸23に、所定の方向に所定の大きさで補助トルクを発生させる。補助トルクを発生させるアシスト装置は、電動式に限定されるものではなく、油圧式のアシスト装置でもよい。
【0034】
図2は、本発明の実施例1の継手と軸の結合構造を示す斜視図であり、(a)は軸の斜視図、(b)は結合筒部の斜視図を示し、図1の自在継手5の一方のヨーク6と軸8との結合部に適用した例を示す。図2に示すように、本発明の実施例1の継手と軸の結合構造を有する自在継手5のヨーク6には、筒状の結合筒部7が形成され、結合筒部7の右側には、図示しない二股状のアーム部が一体的に形成され、このアーム部に形成された円孔に、軸受を介して十字軸が挿入され、この十字軸を介して、図1のヨーク6が結合されている。
【0035】
結合筒部7の円筒状の内周面71に、図2(b)の左側から、内周面71の中心軸線711に平行に、円柱状の軸8を挿入する。結合筒部7には、結合筒部7の外周面73から内周面71に連通するスリット(切り割り)72が形成されている。結合筒部7には、ボルト74のボルト軸部741を挿入するためのボルト孔75が形成されている。また、結合筒部7には、ボルト74の雄ねじ742をねじ込むための雌ねじ(図示せず)が、ボルト孔75と同心状に形成されている。
【0036】
また、軸8の外周面には、略U字形の凹部82が形成されている。凹部82は、軸8の中心軸線83に直交し、かつ、ボルト孔75の中心軸線751に平行に形成されている。軸8が結合筒部7の内周面71の軸方向の正規位置(軸8の段差面84が結合筒部7の左端面76に当接した位置)に達していれば、ボルト軸部741が凹部82を挿通する。従って、軸8が結合筒部7の内周面71から抜け出そうとすると、ボルト軸部741の外周が凹部82に当接して、軸8が結合筒部7の内周面71から抜け出すのを防止する。
【0037】
結合筒部7の内周面71には、係合部としてのキー溝77が形成されている。キー溝77は、スリット72に対して180度異なる位相に形成されている。また、軸8の外周面には、キー溝77に係合する被係合部としてのキー85が形成されている。キー85は、凹部82に対して180度異なる位相に形成されている。キー85の幅W4は、キー溝77の溝幅W3よりも若干広く形成されて、しまりばめ嵌合になっている。キー85の幅W4を、キー溝77の溝幅W3よりも若干狭く形成し、キー85が微少な隙間を有してキー溝77と嵌合するようにしてもよい。なお、上では、キー溝77がスリット72に対して180度異なる位相をなすとしているが、これは180度に限らず90度、45度、135度などとすることも可能である。
【0038】
結合筒部7の内周面71に軸8を挿入し、キー溝77にキー85を係合させた後、ボルト孔75に、図2の右側からボルト74を挿入し、雌ねじに雄ねじ742をねじ込む。すると、結合筒部7が弾性変形してスリット72の溝幅が狭まり、軸8の外周面を結合筒部7の内周面71で強く締付けて固定する。スリット72の溝幅が狭まるため、結合筒部7の内周面71が縮径して、軸8の外周面を締付ける。
【0039】
結合筒部7と軸8との間に大きな回転トルクが作用すると、キー85からキー溝77に力が加わる。ボルト74の締付け力が小さくてもスリット72には回転トルクは作用しないため、内周面71が軸8の外周面を締付ける締付け力は低下しない。また、キー85とキー溝77との間にはガタが生じず、結合筒部7と軸8との間の回転方向のガタが小さくなるため、ステアリングホイールの操舵感が低下する恐れはない。
【実施例2】
【0040】
次に本発明の実施例2について説明する。図3は本発明の実施例2の継手と軸の結合構造を示す斜視図であり、(a)は軸の斜視図、(b)は結合筒部の斜視図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。実施例2は実施例1の変形例であって、結合筒部7の内周面71に、スリット72の円周上の両側近傍にキー溝を追加した例である。
【0041】
図3に示すように、結合筒部7には、実施例1と同様に、スリット72、ボルト孔75、キー溝77が形成され、軸8の外周面にも、実施例1と同様に、略U字形の凹部82、キー85が形成されている。実施例2では、結合筒部7の内周面71に、キー溝78、78が形成されている。キー溝78、78は、スリット72の円周上の両側近傍に形成されている。
【0042】
また、軸8の外周面には、キー溝78、78に係合するキー86、86が形成されている。キー86、86は、凹部82の円周上の両側近傍に形成されている。キー86、86の幅W6は、キー溝78、78の溝幅W5よりも若干広く形成されて、しまりばめ嵌合になっている。キー86、86の幅W6を、キー溝78、78の溝幅W5よりも若干狭く形成し、キー86、86が微少な隙間を有してキー溝78、78と嵌合するようにしてもよい。
【0043】
結合筒部7の内周面71に軸8を挿入し、キー溝77にキー85を係合させ、キー溝78、78にキー86、86を係合させた後、ボルト孔75に、図3の右側からボルト74を挿入し、雌ねじに雄ねじ742をねじ込む。すると、結合筒部7が弾性変形してスリット72の溝幅が狭まり、軸8の外周面を結合筒部7の内周面71で強く締付けて固定する。スリット72の溝幅が狭まるため、結合筒部7の内周面71が縮径して、軸8の外周面を締付ける。
【0044】
結合筒部7と軸8との間に大きな回転トルクが作用すると、キー85からキー溝77に力が加わり、キー86、86からもキー溝78、78に力が加わる。ボルト74の締付け力が小さくてもスリット72には回転トルクは作用しないため、内周面71が軸8の外周面を締付ける締付け力は低下しない。また、キー85とキー溝77との間にはガタが生じない。また、キー85と対向した位置に配置されたキー86、86とキー溝78、78も係合しているため、結合筒部7と軸8との間のガタが極めて小さくなるため、ステアリングホイールの操舵感が低下する恐れはない。
【実施例3】
【0045】
次に本発明の実施例3について説明する。図4は本発明の実施例3の継手と軸の結合構造を示す斜視図であり、(a)は軸の斜視図、(b)は結合筒部の斜視図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。実施例3は実施例1の変形例であって、結合筒部7の内周面71に、キー溝の代わりにキーを形成した例である。
【0046】
図4に示すように、結合筒部7には、実施例1と同様に、スリット72、ボルト孔75が形成され、軸8の外周面にも、実施例1と同様に、略U字形の凹部82が形成されている。実施例3では、結合筒部7の内周面71には、係合部としてのキー79が形成されている。キー79は、スリット72に対して180度異なる位相に形成されている。
【0047】
また、軸8の外周面には、キー79に係合する被係合部としてのキー溝87が形成されている。キー溝87は、凹部82に対して180度異なる位相に形成されている。キー溝87の溝幅W8は、キー79の幅W7よりも若干狭く形成されて、しまりばめ嵌合になっている。キー溝87の溝幅W8を、キー79の幅W7よりも若干広く形成し、キー溝87が微少な隙間を有してキー79と嵌合するようにしてもよい。
【0048】
結合筒部7の内周面71に軸8を挿入し、キー79にキー溝87を係合させた後、ボルト孔75に、図4の右側からボルト74を挿入し、雌ねじに雄ねじ742をねじ込む。すると、結合筒部7が弾性変形してスリット72の溝幅が狭まり、軸8の外周面を結合筒部7の内周面71で強く締付けて固定する。スリット72の溝幅が狭まるため、結合筒部7の内周面71が縮径して、軸8の外周面を締付ける。
【0049】
結合筒部7と軸8との間に大きな回転トルクが作用すると、キー溝87からキー79に力が加わる。ボルト74の締付け力が小さくてもスリット72には回転トルクは作用しないため、内周面71が軸8の外周面を締付ける締付け力は低下しない。また、キー溝87とキー79との間にはガタが生じず、結合筒部7と軸8との間の回転方向のガタが小さくなるため、ステアリングホイールの操舵感が低下する恐れはない。
【実施例4】
【0050】
次に本発明の実施例4について説明する。図5は本発明の実施例4の継手と軸の結合構造を示す斜視図であり、(a)は軸の斜視図、(b)は結合筒部の斜視図である。以下の説明では、上記実施例と異なる構造部分についてのみ説明し、重複する説明は省略する。また、同一部品には同一番号を付して説明する。実施例4は実施例3の変形例であって、結合筒部7の内周面71に、スリット72の円周上の両側近傍にキー溝を追加した例である。
【0051】
図5に示すように、結合筒部7には、実施例3と同様に、スリット72、ボルト孔75、キー79が形成され、軸8の外周面にも、実施例1と同様に、略U字形の凹部82、キー溝87が形成されている。実施例4では、結合筒部7の内周面71に、キー溝78、78が形成されている。キー溝78、78は、スリット72の円周上の両側近傍に形成されている。
【0052】
また、軸8の外周面には、キー溝78、78に係合するキー86、86が形成されている。キー86、86は、凹部82の円周上の両側近傍に形成されている。キー86、86の幅W6は、キー溝78、78の溝幅W5よりも若干広く形成されて、しまりばめ嵌合になっている。キー86、86の幅W6を、キー溝78、78の溝幅W5よりも若干狭く形成し、キー86、86が微少な隙間を有してキー溝78、78と嵌合するようにしてもよい。
【0053】
結合筒部7の内周面71に軸8を挿入し、キー79にキー溝87を係合させ、キー溝78、78にキー86、86を係合させた後、ボルト孔75に、図5の右側からボルト74を挿入し、雌ねじに雄ねじ742をねじ込む。すると、結合筒部7が弾性変形してスリット72の溝幅が狭まり、軸8の外周面を結合筒部7の内周面71で強く締付けて固定する。スリット72の溝幅が狭まるため、結合筒部7の内周面71が縮径して、軸8の外周面を締付ける。
【0054】
結合筒部7と軸8との間に大きな回転トルクが作用すると、キー溝87からキー79に力が加わり、キー86、86からもキー溝78、78に力が加わる。ボルト74の締付け力が小さくてもスリット72には回転トルクは作用しないため、内周面71が軸8の外周面を締付ける締付け力は低下しない。また、キー溝87とキー79との間にはガタが生じない。また、キー溝87と対向した位置に配置されたキー86、86とキー溝78、78も係合しているため、結合筒部7と軸8との間のガタが極めて小さくなるため、ステアリングホイールの操舵感が低下する恐れはない。
【0055】
上記実施例では、結合筒部の一方にボルト孔75が形成され、他方に雌ねじが形成された自在継手に適用した例について説明したが、結合筒部の両方にボルト孔75、75を形成し、ボルト74の雄ねじ742にナットをねじ込むようにした自在継手に適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
11 ステアリングホイール
12 ステアリングシャフト
12A 雌ステアリングシャフト
12B 雄ステアリングシャフト
13 ステアリングコラム
13A アウターコラム
13B インナーコラム
14 支持ブラケット
15 中間シャフト
15A 雄中間シャフト
15B 雌中間シャフト
18 車体
20 アシスト装置
21 ギヤハウジング
23 出力軸
26 電動モータ
261 ケース
30 ステアリングギヤ
31 タイロッド
4 自在継手(上側自在継手)
5 自在継手(下側自在継手)
6 ヨーク
7 結合筒部
71 内周面
711 中心軸線
72 スリット(切り割り)
73 外周面
74 ボルト
741 ボルト軸部
742 雄ねじ
75 ボルト孔
751 中心軸線
76 左端面
77 キー溝
78 キー溝
79 キー
8 軸(ピニオン軸)
81 キー
82 凹部
83 中心軸線
84 段差面
85 キー
86 キー
87 キー溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸を嵌合するための内周面を備えた結合筒部を有する継手、
上記結合筒部の内周面に結合筒部の軸方向に平行に挿入され、結合筒部の内周面に回転トルクを伝達可能に内嵌する外周面を有する軸、
上記結合筒部に形成され、結合筒部の外周面から内周面に貫通するスリット、
上記結合筒部に形成されたボルト孔にボルト軸部を内嵌し、上記スリットの間隔を狭めて、上記結合筒部の内周面を縮径し、上記軸の外周面を結合筒部の内周面で締め付けるボルト、
上記軸の外周面に上記ボルト孔の位相と同一の円周上の位相に形成され、上記軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、上記ボルトに係合して軸が結合筒部から抜け出すのを防止する凹部、
上記結合筒部の内周面に上記スリットの位相とは異なる円周上の位相に形成され、上記軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、軸に回転トルクを伝達可能に係合する係合部、
上記軸の外周面に上記係合部の位相と同一の円周上の位相に形成され、上記軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、係合部に係合する被係合部を備えたこと
を特徴とする継手と軸の結合構造。
【請求項2】
請求項1に記載された継手と軸の結合構造において、
上記結合筒部の係合部が、内周面の軸方向に平行に形成されたキー溝であり、
上記軸の被係合部が、軸の軸方向に平行に形成され上記キー溝に係合するキーであること
を特徴とする継手と軸の結合構造。
【請求項3】
請求項1に記載された継手と軸の結合構造において、
上記結合筒部の係合部が、内周面の軸方向に平行に形成されたキーであり、
上記軸の被係合部が、軸の軸方向に平行に形成され上記キーに係合するキー溝であること
を特徴とする継手と軸の結合構造。
【請求項4】
請求項2から請求項3までのいずれかに記載された継手と軸の結合構造において、
上記結合筒部の係合部は、上記スリットに対して180度異なる位相に形成され、
上記結合筒部の内周面には、上記スリットの円周上の両側近傍にキー溝が形成され、
上記軸の外周面には、上記軸が結合筒部の所定の軸方向位置に挿入された時に、上記キー溝に係合するキーが形成されていること
を特徴とする継手と軸の結合構造。
【請求項5】
請求項4に記載された継手と軸の結合構造において、
上記結合筒部は自在継手のヨークに一体的に形成されていること
を特徴とする継手と軸の結合構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate