説明

継手構造、継手方法及び減衰力可変ダンパ

【課題】長手形状の挿入部材を被挿入部材に挿入して連結させる継手技術に関し、二つの部品を簡単・確実に連結させることができる継手構造を提供する。
【解決手段】継手構造において、長手形状の先端の外周部分が長手方向に延出してなる突出部23が形成されている挿入部材20と、挿入部材20を挿入させる挿入孔35の終端に、突出部23が当接する当接面36及びこの当接面36から径方向外側に延びる連続面を含む環状溝37が形成されている被挿入部材30と、を連結するために、挿入部材20を被挿入部材30に圧入し、当接面36に当接した突出部23を変形させて環状溝37に係止させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長手形状の挿入部材を被挿入部材に挿入して連結させる継手技術に関し、特に、道路車両等における車体の振動を減衰させる減衰力可変ダンパに適用される継手技術に関する。
【背景技術】
【0002】
それぞれ別々に機械加工された二つの部品を簡単・確実に連結させるために様々な方式が提案されている。被挿入部材に連結される中空の挿入部材(管状体)の内側又は外側のいずれか一方に高圧液体が存在し、この高圧液体が反対側に漏れるのを防止する公知の継手技術として、次のようなものが存在する。
図4(a)は、公知の継手構造において、挿入部材2と被挿入部材3とが連結する前の状態を示している。挿入部材2の先端部2aと、被挿入部材3の挿入孔3aとは、互いに略反転形状に加工され、図4(b)に示されるように連結すると、周面が相互に密着するように構成される。
【0003】
Cリング4は、先端部2aの外周面に刻設された帯状溝2bに遊嵌し、被挿入部材3の挿入孔3aの開口に挿入される際に、一時的に縮径して被挿入部材3の内周面を付勢しながら摺接する。そして、被挿入部材3の内周面に刻設された環状溝3bに到達した位置において、Cリング4は、形状回復して、この環状溝3bに係合する。このようにしてCリング4は、挿入部材2及び被挿入部材3の抜止作用を発揮する。
【0004】
Oリング5は、挿入部材2の先端部2aのさらに先端の縮径部2cに配置された状態で、被挿入部材3の挿入孔3aに挿入されると、当接面3cに押圧されて変形する。これにより、Oリング5は、挿入部材2及び被挿入部材3の接触する隙間を封止して、通路2dに充填される高圧液体が外側に液漏することがない。
【特許文献1】特開2002−295756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、Cリング4が配置される帯状溝2bは、肉薄円筒に成型される先端部2aの外周面に設けられる切欠である。このために、繰り返し応力による疲労破断を回避するための安全設計により部品が大型化・重量化する問題がある。さらに、このCリング4を挿入部材2に取り付ける工程そのものが製品の生産性を低下させる要因となる。また、Cリング4を取り付けることを失念した場合は、事後的な発見が困難で、挿入部材2が抜け落ちて初めてCリング4の不在が発見されるといった問題がある。
本発明は前記した問題を解決することを課題とし、Cリング4を用いることなく、二つの部品を簡単・確実に連結させ継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、継手構造において、長手形状の先端の外周部分が長手方向に延出してなる突出部が形成されている挿入部材と、前記挿入部材を挿入させる挿入孔の終端に、前記突出部が当接する当接面及びこの当接面から径方向外側に延びる連続面を含む環状溝が形成されている被挿入部材と、を連結するために、前記挿入部材を前記被挿入部材に圧入し、前記当接面に当接した前記突出部を変形させて前記環状溝に係止させることを特徴とする。
【0007】
このように発明が構成されることによって、Cリングを用いることなく挿入部材と被挿入部材とを連結させることができる。これにより、Cリングの入れ忘れを防止することができるとともに、連結に必要な部品点数を削減し、作業工程を簡略化し、生産性を向上させることができる。
突出部は、挿入部材の挿入前は軸方向に延出しているが、被挿入部材に挿入されてから径方向外側に塑性変形し環状溝を係止する。これにより、軸方向の負荷に対し、環状溝に係止される突出部の変形部位が、前記挿入部材の移動を規制するので、抜け落ちが防止される。
また挿入部材を被挿入部材に挿入する際に、特に突出部がこの挿入を阻害することもないので、組み付けも容易である。
【0008】
さらに発明は、継手構造において、前記突出部の内周面は、前記挿入部材の挿入方向に向かって拡径した形状であることを特徴とする。
【0009】
このように発明が構成されることによって、挿入部材の突出部が、被挿入部材の当接面に押圧されて、径方向外側に向かう変形が容易になり、環状溝にしっかり係止され、抜け止め機能が向上する。
【0010】
さらに発明は、オイルが充填されたシリンダの内周面に摺接しつつ自在に移動するとともに二つに仕切った前記オイルを相互に移動させる連通部が設けられているピストンと、前記ピストンに先端が連結するとともに前記シリンダに貫通し側周面が摺接するロッドとを、備える減衰力可変ダンパにおいて、前記ロッドを前記挿入部材とし前記ピストンを前記被挿入部材とした継手構造を備えることを特徴とする。
【0011】
このように発明が構成されることによって、道路車両等における車体の振動を減衰させる減衰力可変ダンパにおけるロッド及びピストンの連結は、セルフクリンチングによることになる。これにより、減衰力可変ダンパは、Cリングを用いなくともロッド及びピストンの抜止効果が発揮されるため、組み付けが容易になる。さらに、Cリングを用いない構造であるために、このCリングを設置する帯状溝をロッド側に設ける必要がなく、この帯状溝からの疲労破断を設計面において考慮する必要性がなくなる。
【0012】
さらに発明は、前記減衰力可変ダンパにおいて、前記オイルは磁性粒子を含む磁性流体又は磁気粘性流体であって、前記ピストンは前記連通部を移動する前記オイルに磁界を与えるコイルが巻回され、前記ロッドは前記コイルに給電する配線を通す中空構造を有し、前記給電に応じて前記オイルの粘性抵抗を変化させ減衰力を可変させることを特徴とする。
【0013】
このように発明が構成されることによって、挿入部材(ロッド)は、帯状溝を設けず、セルフクリンチングにより被挿入部材(ピストン)に連結される。これにより、疲労破断を防止するための設計負担が軽減され、コイル給電用の配線の管状通路が設けられているロッドの壁厚を薄肉に成形することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、Cリングを用いることなく、二つの部品を簡単・確実に連結させることができる継手構造が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)は、第1実施形態において連結前の挿入部材20A及び被挿入部材30Aを示し、図1(b)は連結後の継手構造体10Aの断面を示している。
なお、以下において、第1実施形態に係る部材を示す符号には添字Aが、第2実施形態に係る部材を示す符号には添字Bが付されているが、両者を特に区別する必要がないときは、この添字を省略して記載する。
継手構造体10Aは、挿入部材20を被挿入部材30の挿入孔35に圧入し、両部材を連結させた構造となっている。
【0016】
挿入部材20は、長手形状を有し、その先端の外周部分が長手方向に延出してなる突出部23が形成されている。この突出部23の内周面23aは、挿入部材20Aの挿入方向に向かって拡径した形状であり、本実施形態では円錐側面形状をとっている。なお、挿入部材20の断面は、特に限定されないが、円形、矩形不定形のいずれの場合も取り得る。
【0017】
被挿入部材30は、挿入部材20を挿入させる挿入孔35の終端に、突出部23が当接する当接面36及びこの当接面36から径方向外側に延びる連続面を含む環状溝37が形成されている。
この挿入孔35の内径は、挿入部材20の外径に対して、プラス公差になるように設定される。これにより、挿入部材20は、その外周面が挿入孔35の内周面に締り嵌めされて被挿入部材30との結合がより堅固になる。ただし、この締り嵌めによる結合は、接触面における摩擦力に依存するものであるので、大きな力が挿入方向と逆方向に作用した場合には、被挿入部材30及び挿入部材20が互いにずれるか抜け落ちる場合がある。
【0018】
当接面36は、図中矢印方向から挿入される挿入部材20の突出部23が当接し、さらに圧入されることにより、図1(b)に示されるように、突出部23を径方向外側に塑性変形させるものである。このように、突出部23が径方向外側に向かって変形するように、当接面36は、図示されるように径方向外側に向かって下り傾斜を有していることが好ましい。しかし、前記したように突出部23の内周面23aが挿入方向に向かって拡径した形状を有していれば、そのような下り傾斜が当接面36に形成されていなくても、突出部23は径方向外側に向かって変形しやすくなる。
【0019】
環状溝37は、当接面36から径方向外側に延びる連続面を含むようにして形成され、変形した突出部23を収容する空間である。この当接面36に当接した突出部23は、当接面36からの連続面に案内されながら径方向外側に向かって変形する。そして、図1(b)に示されるように、変形した突出部23が環状溝37にしっかり係止されることにより、挿入方向と逆方向に大きな力が作用した場合であっても、挿入部材20及び被挿入部材30を互いにずれることなく抜け止め機能を発揮する。
また、変形し環状溝37に収容された突出部23の部分は、加工硬化により強度が向上しているために、逆挿入方向の応力に対する降伏値も高い性質を備える。
【0020】
本発明によれば、挿入部材20及び被挿入部材30を剛に連結させる場合、挿入部材20を被挿入部材30の挿入孔35に圧入し、突出部23を終端に位置する当接面36に当接させて連続面に沿って変形させて、環状溝37に係止させるだけですむ(セルフクリンチング)。
これにより、連結に必要な部品点数を削減することができ、継手の作業工程を簡略化し、生産性を向上させることができる。
また突出部23が挿入部材20及び被挿入部材30の挿入時に、他の部材と干渉することもないので、組み付けも容易になる。
【0021】
<第2実施形態>
次に、図2及び図3を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
図2は第2実施形態におけるロッド20B(挿入部材20)及びピストン30B(被挿入部材30)が連結した継手構造を減衰力可変ダンパ10Bに採用したものの断面図である。図3は連結前のロッド20B及びピストン30Bの断面構造を示している。
以下の説明において、第2実施形態の構成要素のうち、第1実施形態の構成と共通するものについては、図1と同一の符号を付して、既にした説明を援用し記載を省略する。
【0022】
減衰力可変ダンパ10Bは、ロッド20Bを挿入部材20としピストン30Bを被挿入部材30とした継手構造を備えている。そして、この減衰力可変ダンパ10Bは、作動流体として磁気粒子がオイルに含まれる磁性流体又は磁気粘性流体(以下「MR流体」という)を採用し、このMR流体が充填された円筒状のシリンダ40と、シリンダ40内を第1室Pと第2室Qとに区画するピストン30Bと、ピストン30Bがシリンダ40の長手方向においてスライド自在となるように取り付けられるロッド20Bとを、備えている。
そして、第1室Pと第2室Qとは、ピストン30Bに設けられた連通部39により連通しており、MR流体はこの連通部39を通して第1室Pと第2室Qとの間で移動可能となっている。
【0023】
シリンダ40の図示略の第2室Q側の端部には、車輪側のトレーリングアームが連結し、ロッド20B側の図示略の端部には車体側のダンパベース(ホイールハウス上部)が連結している。そして、車両の走行中、車輪側が拾う振動は、シリンダ40の内部でピストン30Bが変位する際に流動するMR流体の粘性抵抗により、減衰されて車体側へ伝達される。
【0024】
オイルは磁性粒子を含む磁性流体又は磁気粘性流体(MR流体;Magneto-Rheological Fluid)であって、給電されたコイル31が発生する磁界により、オイルの粘性抵抗を変化させ減衰力可変ダンパ10Bの減衰力を可変することができる。
図示しない電源装置から配線31aを通してコイル31に電流を流すと、連通部39を流通しているMR流体に磁場が印加されると、MR流体に含まれる磁性粒子が鎖状クラスタを形成し、連通部39内を通過するMR流体の見かけ上の粘度が増大する。さらにコイル31に流す電流の大きさを制御するとMR流体に印加する磁場の大きさに応じて、減衰力を可変的に制御することができる。
【0025】
コイル31へ電流を供給するための2本の配線31aは、ピストンコア38に刻設された溝(図示略)、樹脂封止部35aを経由して、さらにロッド20Bに形成されている管状通路21を通って、ロッド20Bの他端(図示せず)から取り出され、図示しない電源装置等に接続される。
【0026】
図3を参照して説明を続ける。
ピストン30Bは、円筒状のピストンコア38と、ピストンコア38の外周面との間に一定間隙の連通部39が形成されるように同心状に配置されるピストンリング32と、このピストンコア38の両端にそれぞれ配置されるサイドカバー33,34と、から構成される。
そして、ピストン30Bは、オイルが充填されたシリンダ40の内周面40a(図2参照)に摺接しつつ自在にロッド20Bの軸方向(図3中左右方向)に移動することができる。さらにピストン30Bは、シリンダ40の内部を第1室Pと第2室Q(図2参照)とに仕切るとともに、貫通する連通部39によりオイルを相互に移動させることができる。さらに、ピストン30Bには、連通部39を移動するオイルに磁界を与えるコイル31が巻回されている。
【0027】
ピストンコア38は、良加工性で強磁性体である機械構造用炭素鋼等が材料として好適に用いられ、周方向に一定幅かつ一定深さで刻設される条溝38aと、この条溝38aに導線が巻回してなるコイル31と、中心軸に沿って穿設される挿入孔35とが設けられている。
挿入孔35は、ロッド20Bが挿入される側とは反対側の終端が、絶縁性の樹脂からなる樹脂封止部35aにより封止されている。そして、樹脂封止部35aに直近の挿入孔35の内周面には、当接面36及び環状溝37が形成されている。
【0028】
樹脂封止部35aとしては、接着剤として用いられるエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いるのが好適である。これによれば、ピストンコア38との密着性(接着性)が高いために、ピストンコア38と樹脂封止部35aとの境界に沿って、オイルが管状通路21に浸入することを防止することができるためである。
そのような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂,エポキシ樹脂,ユリア樹脂,メラミン樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,ポリウレタン,ポリイミド等が挙げられる。
【0029】
ピストンリング32は、シリンダ40(図2参照)の内周面40aに沿って摺動する部材であるため、摩擦摺動性能(例えば、耐摩耗性等)が考慮され、かつ強磁性である機械構造用炭素鋼等が材料として好適に用いられる。
ピストンリング32は、ピストンコア38の外周と所定の間隔を成す連通部39を隔てて同軸に配置されている。そして、コイル31に通電すると、その周囲のピストンリング32及びピストンコア38に閉ループの磁界が形成される。そして連通部39を通過するMR流体は、この磁界により鎖状クラスタを形成し、見かけ上の粘度が増大し、流動抵抗が向上することになる。
【0030】
サイドカバー33,34はアルミニウム等の非磁性材料で加工性に優れる材料が好適に用いられ、連通部39に連通する孔部33a,34aと、ロッド20Bが貫通する孔部33bとが設けられている。
サイドカバー33,34は、ピストンコア38を両端から同軸に挟持している。そして、ロッド20Bが貫通する側のサイドカバー33は、その外周がピストンリング32の縁端の薄肉成形部に嵌入している。また、反対側のサイドカバー34は、別体の固定螺子34bにより固定されている。この固定螺子34bは、その外周面がピストンリング32の縁端の薄肉成形部の内側面と螺合し、さらに薄肉成形部の先端が内側に加締められていることにより回り止めされている。
これにより、ピストンコア38は、ピストンリング32に対して、一定間隔の連通部39が形成される位置に固定されることになる。
このようにして、連通部39は、その両端に位置する孔部33a,34aとともに、第1室Pと第2室Qとを連通させて、MR流体を自在に流動させる。
【0031】
ロッド20Bは、その先端がピストン30Bの挿入孔35に連結するとともに、シリンダ40の端面(図示略)に貫通し、オイルが漏れないようにその側周面22aで封止しながら摺接している。このロッド20Bは、コイル31に給電する配線31aを通す管状通路21が軸方向に貫通した中空構造を有している。
ロッド20Bは、側周面22aの外径を絞って、挿入孔35の内周面に外接する段差部22bが形成されている。そして、この段差部22bの段差部分がサイドカバー33の孔部33bの縁部に当接することにより、ロッド20Bのピストン30Bに対する挿入量が規定される。
【0032】
ロッド20Bの先端のからは、突出部23が、その外周部分から長手方向に延出しており、当接面36に押圧されて変形し、環状溝37に係止される(図2の部分拡大部を参照)。図3の左側の部分拡大部に示されるように、突出部23の内側縁には挿入方向に向かって拡径した傾斜面が設けられている。この突出部23の傾斜面は、図3の右側の部分拡大部に示される当接面36の傾斜面に当接して、この突出部23の径方向外側に向かう塑性変形が滞らないように作用する。
なお、突出部23及び当接面36に設けられている傾斜面は必須の構成要素ではなく、いずれか一方、若しくは両方が存在しない場合もありうる。
また、ロッド20Bを貫通する管状通路21の開口縁部からは、内側突起部24が長手方向に延出しており、シールリングとしてのOリング5が配設されている。このOリング5は、樹脂封止部35aの露出面に押圧されて変形し、隙間を密閉する。
【0033】
Oリング5としては、アクリルゴムやフッ素ゴム等のゴムからなるものが好適に用いられる。このOリング5は、例えば、MR流体を構成するオイルが、ピストンコア38と樹脂封止部35aとの間に浸透して管状通路21へ漏れることや、或いは、ロッド20Bの外周に沿って浸入して管状通路21へ漏れることを、防止する機能を有する。
【0034】
管状通路21は、コイル31からの配線31aを、ロッド20Bを通して外部の電源装置に導くものであるので、図示略の反対側は外部に開口している。このために、シリンダ40内に封入されている高圧のオイルが管状通路21の一方の開口から漏れないようにするために、Oリング5による封止機能が充分に機能していることが要求される。
【0035】
このように減衰力可変ダンパ10Bが構成されることによって、ロッド20B及びピストン30Bの連結は、セルフクリンチングによることになる。このセルフクリンチング機構により、挿入部材(ロッド20B)の被挿入部材(ピストン30B)に対する抜け止め効果が充分に発揮される。これにより、減衰力可変ダンパ10Bは、疲労破断の開始点となる切欠をロッド20Bに設けることなく、ロッド20B及びピストン30Bの連結を確実にすることができる。
このことは、給電配線を外部に導く管状通路21が設けられることにより薄肉な管構造となるロッド20Bを採用し、MR流体の粘性抵抗を変化させ減衰力を可変する減衰力可変ダンパ10Bにおいて顕著な効果が認められる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の継手構造が採用される対象は、減衰力可変ダンパに限定されるものでなく、長手形状を有する挿入部材と、この挿入部材の先端部分を挿入する挿入孔が設けられた被挿入部材とを連結するものであれば、広く適用することができる。また、減衰力可変ダンパもMR流体の粘性抵抗を変化させ減衰力を可変するものに限定されるのでない。現在、広く利用される、シリンダの内部を移動するピストンと、このピストンに連結しピストンの移動方向に長手方向を揃えたロッドとから構成される減衰力可変ダンパにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る継手構造において、(a)は連結前の挿入部材及び被挿入部材を示し、(b)は連結後の挿入部材及び被挿入部材を示している。
【図2】第2実施形態における連結後のロッド(挿入部材)及びピストン(被挿入部材)の継手構造を減衰力可変ダンパに採用したものを示す断面図である。
【図3】第2実施形態の減衰力可変ダンパにおいて採用されるロッド(挿入部材)及びピストン(被挿入部材)の連結前の断面構造を示している。
【図4】従来例に係る継手構造において、(a)は連結前の挿入部材及び被挿入部材を示し、(b)は連結後の挿入部材及び被挿入部材を示している。
【符号の説明】
【0038】
5 Oリング
10A 継手構造体
10B 減衰力可変ダンパ
20,20A 挿入部材
20,20B ロッド(挿入部材)
21 管状通路
22a ロッドの側周面
23 突出部
23a 突出部の内周面
30,30A 被挿入部材
30,30B ピストン(被挿入部材)
31 コイル
31a 配線
32 ピストンリング
33 サイドカバー
35 挿入孔
35a 樹脂封止部
36 当接面
37 環状溝
38 ピストンコア
39 連通部
40 シリンダ
40a シリンダの内周面
P 第1室
Q 第2室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手形状の先端の外周部分が長手方向に延出してなる突出部が形成されている挿入部材と、
前記挿入部材を挿入させる挿入孔の終端に、前記突出部が当接する当接面及びこの当接面から径方向外側に延びる連続面を含む環状溝が形成されている被挿入部材と、を連結するために、
前記挿入部材を前記被挿入部材に圧入し、前記当接面に当接した前記突出部を変形させて前記環状溝に係止させることを特徴とする継手構造。
【請求項2】
前記突出部の内周面は、前記挿入部材の挿入方向に向かって拡径した形状であることを特徴とする請求項1に記載の継手構造。
【請求項3】
オイルが充填されたシリンダの内周面に摺接しつつ自在に移動するとともに二つに仕切った前記オイルを相互に移動させる連通部が設けられているピストンと、
前記ピストンに先端が連結するとともに前記シリンダに貫通し側周面が摺接するロッドと、を備え、
前記ロッドを前記挿入部材とし前記ピストンを前記被挿入部材とした前記請求項1又は請求項2に記載の継手構造を備えることを特徴とする減衰力可変ダンパ。
【請求項4】
前記オイルは磁性粒子を含む磁性流体又は磁気粘性流体であって、
前記ピストンは前記連通部を移動する前記オイルに磁界を与えるコイルが巻回され、
前記ロッドは前記コイルに給電する配線を通す管状通路を有し、
前記給電に応じて前記オイルの粘性抵抗を変化させ減衰力を可変させることを特徴とする請求項3に記載の減衰力可変ダンパ。
【請求項5】
挿入部材を被挿入部材の挿入孔に挿入して連結させる継手方法において、
前記挿入部材の先端の外周部分が長手方向に延出してなる突出部を前記挿入孔の終端に位置する当接面に当接させる工程と、
前記挿入部材を圧入し、前記突出部を前記当接面から径方向外側に延びる連続面に沿って変形させ、この連続面を含む環状溝に係止させる工程とを、含むことを特徴とする継手方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−101371(P2010−101371A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271923(P2008−271923)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】