説明

継手構造

【課題】2つの部材の接合作業の作業効率を向上して工期短縮を図る。
【解決手段】2つの部材1,2の接合を雄型継手3と雌型継手5との係合により行う。雄型継手3は、先端側に設けた頭部9の基端側に係合凹部11を設けた雄型継手本体7を有する。雌型継手5は、接合棒7を挿入可能な挿入孔35を有するハウジング21、挿入孔35の内周面35aから径方向外側に窪む収容部37に収容され挿入孔35の径方向に移動可能な球体23、及び、これを内周面35aよりも径方向内側に突出させるように付勢する球体付勢手段27を有する。そして、接合棒7が挿入孔35に挿入された際に、球体23が球体付勢手段27の付勢力によって係合凹部11に向けて付勢され、収容部37及び係合凹部11に跨って配されることで、収容部37及び係合凹部11を係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等を構築するセグメント等の部材同士を接合するための継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル等を構築するセグメント同士を接合するための継手構造として、例えば下記特許文献1乃至3に記載されたものがある。特許文献1に記載された継手構造では、セグメントの接合面に設けられた雌型継手として、断面略コ字状の抑え金具内に先端部を開閉可能に開口させたクリップ形状の雌部が設けられ、雌部の開口には雄型継手の雄部を受け入れ易いように隙間を確保したスペーサが嵌め込まれている。
そして継手の締結時においては、拡径頭部を有する雄部を雌部の開口内に挿入することでスペーサを押し外して雌部内に嵌め込み、開口部で雄部の拡径頭部を締め込んで固定するようにしている。
また、特許文献2に開示された継手構造では、雌部材のハウジング内に設けた角筒状の係止部材が内側に雄部材の接合棒を係合保持するための溝部を有すると共に係止部材は2〜4個に分割されている。これら分割された係止部材はハウジングとの間に設けた板バネによって互いに接合・縮径する方向に付勢されている。そして、セグメント同士の接合に際して、接合棒の拡径頭部を雌部材の溝部内に押し込むと、係止部材は板バネの付勢力に抗して外側に押し広げられて接合棒の進入を許容し、その後、板バネの付勢力で複数の係止部材は縮径されて接合棒を係止する。これによって雄部材と雌部材を接合することになる。
【0003】
また、特許文献3に記載された継手構造では、雄型継手金具はその接合棒が先端テーパ部とくびれ部を有している。雌型継手金具は円筒状のハウジングの接合面側に拡径した保持空間を有しており、保持空間内に一対の略三日月状の係止部材が対向して配設され、その外側に設けた板バネによって係止部材は互いに接合する方向に付勢されている。
そして、雄型継手金具の接合棒を雌型継手金具の保持空間内に挿入することで係止部材が板バネの付勢力に抗して拡径され、先端テーパ部が通過すると係止部材が板バネの付勢力によって縮径してくびれ部に係止することで雌型継手金具と雄型継手金具を接合することになる。
【特許文献1】特許第3351767号公報
【特許文献2】特開平9−88490号公報
【特許文献3】特開2001−90485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の継手構造においては、雄部(接合棒)を雌部(係止部材)内に挿入する際に、これら雄部と雌部との間にすべり摩擦が生じて、前記挿入の抵抗が大きくなるため、部材の接合作業の作業効率が低下するという問題があり、例えばトンネルの工期の短縮を十分に達成できない虞がある。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、接合作業の作業効率を向上して工期短縮を図ることが可能な継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決してこのような目的を達成するために、本発明に係る継手構造は、雄型継手と雌型継手とを係合して、前記雄型継手を有する第1部材と前記雌型継手を有する第2部材とを互いに接合する継手構造であって、前記雄型継手は、前記第1部材の接合面から突出して先端側に設けた頭部の基端側に、その外周面からその径方向内側に窪む係合凹部を設けた雄型継手本体を備え、前記雌型継手は、前記第2部材に固定されて前記雄型継手本体を挿入可能な挿入孔を有するハウジングと、前記挿入孔の内周面から径方向外側に窪む収容部に収容されて前記挿入孔の径方向に移動可能とされた球体と、該球体を前記内周面よりも径方向内側に突出させるように付勢する球体付勢手段と、を備え、前記雄型継手本体が前記挿入孔に挿入された際に、前記球体が前記球体付勢手段の付勢力によって前記係合凹部に向けて付勢されると共に、前記収容部及び前記係合凹部に跨って配されることを特徴とする。
【0007】
この構成の継手構造において、雄型継手本体を挿入孔に挿入する際には、球体付勢手段の付勢力により球体を雄型継手本体の頭部の外周面に押し付ければよい。そして、この状態において雄型継手本体をさらに挿入方向に進行させると、雄型継手本体の頭部によって、球体が球体付勢手段の付勢力に抗して径方向外側に押し付けられる。その後、球体が前記頭部の外周面を乗り越えると、球体が収容部及び係合凹部に跨って配されるため、この球体によって雄型継手本体とハウジングとが係合し、これによって前記第1部材及び前記第2部材が互いに接合される。
ここで、上述した挿入の際には、球体が雄型継手本体の頭部の外周面上を転動するため、球体と頭部の外周面との間には転がり摩擦のみが生じる。したがって、この継手構造においては、挿入の際に従来のすべり摩擦と比較して小さい抵抗で雄型継手本体をハウジングに係合させることができる。
【0008】
また、前記継手構造においては、前記雄型継手本体の挿入前の状態において前記球体付勢手段による径方向内側への前記球体の付勢を規制して前記球体を前記収容部内に保持する規制部材を備えていてもよく、この場合には、前記雄型継手本体を前記挿入孔に挿入する際に、前記雄型継手本体が前記規制手段による前記球体の径方向内側への移動規制を解除すればよい。
【0009】
この規制部材を設けておくことで、雄型継手本体を挿入する前に球体が収容部から出てしまうことを確実に防止できる。また、雄型継手本体を挿入孔に挿入する際に、容易かつ確実に球体を頭部や係合凹部の外周面に押し付けることができる。
【0010】
さらに、前記継手構造においては、前記収容部が前記内周面の周方向にわたって形成されると共に、前記球体が前記周方向にわたって複数配列されてもよい。
【0011】
この場合には、球体付勢手段の付勢力によって複数の球体を雄型継手本体の頭部や係合凹部の周方向全体にわたって押し付けることができるため、例えば、雄型継手本体を挿入する際に、挿入孔の軸線と雄型継手本体の軸線とが相互にずれていても、この誤差を吸収するように、すなわち、雄型継手本体の軸線が挿入孔の軸線に略一致するように雄型継手本体を挿入孔内に案内することができる。したがって、雄型継手本体の挿入を容易に行うことができる。
【0012】
また、前記継手構造においては、前記収容部が、前記挿入孔の軸線に沿って前記内周面に連ねて形成され、前記内周面側から前記軸線に沿って漸次拡径するテーパ内周面を有し、前記ハウジング内に、前記球体を介して前記テーパ内周面に対向配置されて前記雄型継手本体を挿通可能な挿通孔を有する円環プレート部が設けられ、該円環プレート部が、前記球体付勢手段によって前記軸線に沿って前記テーパ内周面に向けて付勢されてもよい。
【0013】
この構成の場合には、複数の球体が円環プレート部によってテーパ内周面に押し付けられることで、球体が径方向内方に付勢されることになる。そして、球体がテーパ内周面に複数配されていても、1つの円環プレート部で複数の球体を押し付けることができるため、球体付勢手段を構成する弾性体の数を少なくするなど、球体付勢手段を簡素に構成することが可能となる。
【0014】
さらに、前記継手構造においては、前記球体が接触する前記円環プレート部の一端面に、該円環プレート部の径方向に延びて各球体の一部を収容可能とするガイド溝部が形成されていてもよい。
【0015】
このガイド溝部は、各球体のハウジングや円環プレート部の径方向への移動は許容するが、各球体のハウジングや円環プレート部の周方向への移動を規制することができる。したがって、複数のガイド溝部を円環プレート部の一端面においてその周方向にわたって均等に形成しておくことで、複数の球体を前記周方向にわたって均等に配置することができる。
以上のことから、球体付勢手段は、円環プレート部及び複数の球体を介して、雄型継手本体の係合凹部の外周面をその周方向にわたって均等に押さえつけることができ、結果として、継手構造として安定した引張荷重を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来よりも小さい抵抗で雄型継手本体をハウジングに挿入してこれらを相互に係合できるため、部材の接合作業の作業効率を向上させることが可能となり、特に、トンネルの工期短縮を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1から図5を参照し、本発明に係る継手構造の第1実施形態について説明する。なお、ここで説明する継手構造は、例えばセグメントリング同士をトンネルの軸方向に接合するためのリング間継手として使用するものである。
図1に示すように、本実施形態における継手構造では、第1セグメント(第1部材)1に雄型継手3が設けられ、第2セグメント(第2部材)2の主桁板15に雌型継手5が設けられている。
【0018】
雄型継手3は、第1セグメント1の接合面1aから突出する略円柱状の接合棒(雄型継手本体)7の後端側に第1セグメント1に固定するための雄ねじ部8を形成して構成されている。接合棒7は、その先端側から頭部9、係合凹部11及び基部13を順次形成して略棒状に形成されている。
接合棒7の頭部9には、その先端側から後端側に向けて漸次径寸法が大きくなるテーパ形状のテーパ部9aと、テーパ部9aの後端側に連なって径寸法が一定の円柱部9bとから構成されている。ここで、接合棒7の基部13は、円柱部9bと同じ径寸法とされている。
【0019】
そして、係合凹部11は、接合棒7の軸線O1に沿ってこれら円柱部9bと基部13との間に形成されており、接合棒7の周方向にわたって円柱部9b及び基部13の外周面から窪んで形成されたものである。
なお、係合凹部11に連なる円柱部9bの後端面9cは、円柱部9bの外周面側から係合凹部11に向けて滑らかに凹む曲面形状に形成されている。また、係合凹部11に連なる基部13の先端面13cは係合凹部11に向かうテーパ面形状に形成されている。
【0020】
一方、雌型継手5は、図1〜3に示すように、第2セグメント2の主桁板15の裏面側に固定されており、ハウジング21、複数の球体23,23,・・・、円環プレート部25、球体用コイルばね(球体付勢手段)27及びキャップ(規制部材)29を備えている。
ハウジング21は、主桁板15の裏面側に固定される筒状体31と蓋体33とから構成されており、蓋体33は、筒状体31、前述した複数の球体23,23,・・・、円環プレート部25、球体用コイルばね27及びキャップ29を覆い隠すカップ状に形成され、その開口端が主桁板15の裏面側に固定されている。
【0021】
筒状体31は、その長手方向に貫通して接合棒7を挿入可能な断面円形状の挿入孔35を有しており、挿入孔35には、その周方向にわたって内周面35aから径方向外側に窪む収容部37が形成されている。この収容部37は、前記内周面35aから挿入孔35の軸線O2に沿って接合棒7の挿入方向の先端側に向かうにしたがい漸次拡径するテーパ内周面37aと、テーパ内周面37aからさらに挿入孔35の軸線O2に沿って主桁板15から離間する方向に連ねて形成され径寸法が一定とされた大径内周面37bとによって構成されている。なお、この実施形態においては、収容部37が軸線O2に沿って主桁板15から離間する方向に開口している。
【0022】
複数の球体23は、周方向にわたって円環状に形成された収容部37に収容されており、前記周方向にわたって配列されている。また、円環板状に形成された円環プレート部25は、これら球体23を介してテーパ内周面37aに対向配置されており、接合棒7を挿通可能な挿通孔25aを有している。なお、円環プレート部25は、その外形寸法が大径内周面37bの内径寸法よりもよりも小さく設定され、収容部37内に配されている。
さらに、円環プレート部25のうち球体23が接触する一端面25bには、その内周縁から径方向外側に向けて延びるスリット(ガイド溝)25cが球体23と同じ数だけ形成されており、円環プレート部25の厚さ方向に貫通している。また、これら複数のスリット25cは円環プレート部25の周方向にわたって等間隔に配されている。このように形成された各スリット25cの幅寸法は球体23の径寸法よりも小さいため、各スリット25cには各球体23の一部が収容可能となっており、この収容状態においては、球体23の前記周方向の移動が規制され、前記径方向への移動が可能となる。
【0023】
以上のように形成された円環プレート部25は、球体用コイルばね27によって前記軸線O2に沿ってテーパ内周面37aに付勢されている。すなわち、球体用コイルばね27は、円環プレート部25とこれに対向配置される蓋体33の天板部33aとの間に配置されており、この球体用コイルばね27を軸線O2方向に圧縮した状態で配置しておくことで、円環プレート部25をテーパ内周面37aに向けて付勢することが可能となる。
このように円環プレート部25とテーパ内周面37aとの間に挟まれた球体23は、円環プレート部25のスリット25cによって前記周方向への移動が規制され、球体用コイルばね27の付勢力によってスリット25cに沿って径方向内側に付勢される。
【0024】
キャップ29は、略円筒形状に形成されており、接合棒7を挿入する前の状態において複数の球体23の径方向内側に配されている。このキャップ29は、筒状体31の挿入孔35や円環プレート部25の挿通孔25aを通過できるように、その外径寸法が、これら挿入孔35や挿通孔25aの内径寸法よりも小さく形成されている。また、キャップ29の外周面29aは、挿入孔35の内周面よりも径方向内側に突出した球体23の一部の表面に面接触するように、球体23の形状に対応する凹面状に形成されている。すなわち、このキャップ29は、接合棒7の挿入前の状態において、球体用コイルばね27による球体23の径方向内側への付勢を規制して、球体23を収容部37内に保持する役割を果たしている。
そして、以上のように構成された雌型継手5を固定した主桁板15には、その厚さ方向に貫通してハウジング21の挿入孔35を外方に連通する孔部15aが穿孔されている。また、主桁板15には、雌型継手5の上下方向位置に支持板41,41が固定され、さらに、各支持板41,41にはアンカー部材42,42が溶接等で固定されている。
【0025】
以上のように構成された継手構造において、2つのセグメント1,2を接合する場合には、図1に示すように、2つのセグメント1,2を対向させると共に雌型継手5に対して雄型継手3をほぼ同軸状に保持しながら、雄型継手3の接合棒7を第2セグメントの主桁板15の孔部15aから雌型継手5の挿入孔35に挿入すればよい。
この挿入の際には、接合棒7のテーパ部9aの先端側が複数の球体23を保持しているキャップ29の内側に挿入され、テーパ部9aの中途部がキャップ29に当接する。その後、接合棒7をさらに挿入方向に押し込むことで、図4に示すように、キャップ29が接合棒7のテーパ部9aと共に円環プレート部25の挿通孔25aを通過する。すなわち、キャップ29による球体23の径方向内側への移動規制が解除される。
そして、複数の球体23はキャップ29の外周面から接合棒7のテーパ部9aの外周面に移動し、さらに、円柱部9bの外周面に移動する。ここで、各球体23は接合棒7の頭部9によって球体用コイルばね27の付勢力に抗して径方向外側に押し付けられ、これに伴って円環プレート部25も軸線O2方向に沿って接合棒7の挿入方向に移動する。
【0026】
そして、接合棒7をさらに挿入方向に押し込んで、球体23が円柱部9bの外周面を乗り越えると、図5に示すように、各球体23が球体用コイルばね27の付勢力により径方向内側に付勢されて接合棒7の係合凹部11に入り込む。この状態においては、球体23が筒状体31の収容部37と接合棒7の係合凹部11に跨って配されるため、この球体23によって接合棒7と筒状体31とが係合し、これによって2つのセグメント1,2が互いに接合される。
なお、上述した挿入の際には、球体23が接合棒7の頭部9の外周面上を転動するため、球体23と頭部9の外周面との間には転がり摩擦のみが生じる。また、この挿入に際して、各球体23は円環プレート部25のスリット25c(図3参照)にも入り込んでいるため、筒状体31の周方向には移動しない。
【0027】
上述のように本実施形態による継手構造によれば、接合棒7の挿入の際には、球体23と接合棒7の頭部9との間には転がり摩擦のみが生じるため、従来のすべり摩擦と比較して小さい抵抗で接合棒7をハウジング21に係合させることができる。したがって、セグメント1,2の接合作業の作業効率を向上させることが可能となり、特に、トンネルの工期短縮を図ることができる。
また、球体23を挿入孔35の周方向にわたって複数配列することで、接合棒7の頭部9や係合凹部11の周方向全体にわたって押し付けることができる。このため、例えば、接合棒7を挿入する際に、挿入孔35の軸線O2と接合棒7の軸線O1とが相互にずれていても、この誤差を吸収するように、すなわち、接合棒7の軸線O1が挿入孔35の軸線O2に略一致するように接合棒7を挿入孔35内に案内することができる。したがって、接合棒7の挿入を容易に行うことができる。
【0028】
さらに、雌型継手5に円環プレート部25を設けると共に筒状体31にテーパ内周面37aを形成することで、1つの球体用コイルばね27だけで複数の球体23を径方向内側に付勢することが可能となる。すなわち、雌型継手5を簡素に構成することができる。
また、円環プレート部25に複数のスリット25cを形成することで、複数の球体23を挿入孔35の周方向にわたって均等に配置・保持することができる。したがって、球体用コイルばね27は、円環プレート部25及び複数の球体23を介して、接合棒7の係合凹部11の外周面をその周方向にわたって均等に押さえつけることができ、結果として、継手構造として安定した引張荷重を得ることができる。
さらに、雌型継手5にキャップ29を設けておくことで、接合棒7の挿入前に球体23が筒状体31の収容部37から出てしまうことを確実に防止できる。
【0029】
次に本発明の他の実施形態について説明するが、上述した第1実施形態と同一又は同様の部材、部品については同一の符号を用いて説明する。
図6は、本発明の第2実施形態による継手構造を示しているが、雄型継手3は第1実施形態のものと同一であり、雌型継手5の円環プレート部及び球体用コイルばねのみが相違しているため、これについて説明する。
図6に示すように、この実施形態における円環プレート部51は、第1実施形態の円環プレート部25と同様に挿通孔52aを有する円環板部52と、その外周縁から筒状体31の外側まで接合棒7の挿入方向に延びる円筒部53と、その先端から筒状体31の外側まで径方向に突出するフランジ部54とを一体に形成して構成されている。なお、円環板部52には、第1実施形態の円環プレート部25と同様のスリットが形成されている。
【0030】
また、球体用コイルばね(球体付勢手段)55は、この円環プレート部51のフランジ部54と主桁板15との間に設けられており、図示例の状態において、円環プレート部51を主桁板15側に付勢するように、その両端がフランジ部54及び主桁板15に固定されている。
この構成の継手構造においても第1実施形態と同様の効果を奏する。また、この継手構造の場合には、球体用コイルばね55が筒状体31の外周側に配されているため、第1実施形態の場合と比較して、接合棒7の挿入方向に沿う蓋体33の寸法を短くすることもできる。
【0031】
次いで、図7から図10は、本発明の第3実施形態による継手構造を示しているが、雄型継手3は第1実施形態のものと同一であり、雌型継手5のキャップ29に係る構成のみが相違しているため、これについて説明する。
図7から図10に示すように、この実施形態に係るキャップ29は、蓋体33の天板部33aとの間に設けられた保持用コイルばね(保持用付勢手段)61によって、軸線O2に沿って接合棒7の挿入方向と逆向きに付勢されている。なお、保持用コイルばね61の付勢力は、図10に示すように接合棒7が挿入されていない状態においてキャップ29が球体23の移動を規制する位置からずれない程度の強さに調整されている。
このように構成することで、図7に示すように、接合棒7が筒状体31に係合した状態においては、キャップ29が保持用コイルばね61の付勢力によって接合棒7の先端に保持されることになる。
【0032】
なお、本実施形態においては、天板部33aに軸線O2に沿って接合棒7の挿入方向に窪む凹部63が形成され、この凹部63に保持用コイルばね61の一部が収容されている。すなわち、凹部63によって保持用コイルばね61の位置ずれを防止している。また、図7に示すように、接合棒7の後端側に形成された雄ねじ部8の一部は、第1セグメント1の接合面1aから突出している。そして、接合棒7が雌型継手5に挿入された状態においては、第1セグメント1と第2セグメント2との間に隙間を形成できるようになっている。
【0033】
このように保持用コイルばね61を設けることで、接合棒7が誤って雌型継手5に挿入されたとしても、接合棒7を引き抜いて雌型継手5を再利用することが可能となる。
すなわち、接合棒7を雌型継手5から引き抜く際には、はじめに図8に示すように、雄ねじ部8を切断して、接合棒7を第1セグメント1から切り離す。次いで、接合棒7の後端側から取外し用筒状体65を挿入し、取外し用筒状体65の挿入方向の先端を複数の球体23に当接させる。
ここで、取外し用筒状体65としては、その内径が接合棒7の外径寸法よりも大きく、かつ、その外径が主桁板15の孔部15aやハウジング21の挿入孔35の内径寸法よりも小さいものを使用する。これにより、取外し用筒状体65の内側に接合棒7を挿入しながら、取外し用筒状体65を主桁板15の挿入孔15a及びハウジング21の挿入孔35に挿入することができる。また、取外し用筒状体65の先端は、各球体23の中心よりも筒状体31の径方向内側(軸線O2に近い側)において球体23に当接させる。
【0034】
そして、取外し用筒状体65の先端を複数の球体23にさらに押し付けると、図9に示すように、各球体23は球体用コイルばね27の付勢力に抗して径方向外側に押し付けられ、接合棒7の係合凹部11から離間することになる。すなわち、接合棒7と雌型継手5との係合状態が解除され、図10に示すように、接合棒7を雌型継手5から引き抜くことができる。
ここで、キャップ29は保持用コイルばね61によって接合棒7の引き抜き方向に付勢されているため、接合棒7の引き抜きに伴って、軸線O2に沿って接合棒7の引き抜き方向に移動する。そして、接合棒7及び取外し用筒状体65を引き抜くことで、複数の球体23は接合棒7のテーパ部9aの外周面からキャップ29の外周面29aに移動する。
これにより、キャップ29が複数の球体23の径方向内側に配され、球体用コイルばね27による球体23の径方向内側への付勢を規制する。すなわち、雌型継手5を接合棒7の挿入前の状態に戻して、再利用することができる。
【0035】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、保持用コイルばね61を備える第3実施形態の構成は、第2実施形態の構成にも適用することができる。
また、球体23を径方向内側に付勢する球体付勢手段や、キャップ29を接合棒7の引き抜き方向に付勢する保持用付勢手段としては、球体用コイルばね27,55や保持用コイルばね61の他にも例えばゴムや中空ウレタン等の他の弾性体も挙げられる。
【0036】
また、雌型継手5が第2実施形態の円環プレート部51を備える場合には、球体用コイルばね55等の球体付勢手段を別途設けずに、球体23を筒状体31のテーパ内周面37aに付勢する球体付勢手段を円環プレート部51自体により構成してもよい。すなわち、円環プレート部51のフランジ部54を蓋体33の天板部33aに固定しておき、フランジ部54に対して円環板部52を弾性変形可能に形成してもよい。
具体的には、例えば図11に示すように、スリット52cによって分割された円環板部52の扇形状部57をフランジ部54に対して円環板部52の板厚方向に弾性変形可能とすればよい。すなわち、各扇形状部57を板ばねとして形成すればよい。
【0037】
さらに、円環プレート部25,51には厚さ方向に貫通するスリット25c,52cが形成されるとしたが、例えば図11のように円環プレート部51自体を球体付勢手段として構成しない場合には、少なくとも円環プレート部25のうち球体23が接触する一端面25bからその厚さ方向に窪み、円環プレート部25の径方向に延びて各球体23の一部を収容可能なガイド溝部が形成されていればよい。
【0038】
また、筒状体31は、収容部37が接合棒7の挿入方向の先端側に開口するように配置されるとしたが、これに限ることは無く、例えば収容部37が接合棒7の挿入方向の基端側に開口するように配置されるとしてもよい。この場合には、テーパ内周面37aから挿入孔35の軸線O2に沿って主桁板15に向けて球体23、円環プレート部25、及び球体用コイルばね27を配置すればよい。そして、この構成では、球体用コイルばね27を円環プレート部25と主桁板15の裏面側との間に配置することで、円環プレート部25を接合棒7の挿入方向の先端側に付勢できるため、この付勢力によって球体23を径方向内側に付勢することが可能となる。
【0039】
さらに、係合凹部11は接合棒7の周方向にわたって円柱部9bや基部13の外周面から窪んで形成されるとしたが、少なくとも球体23を収容できるように、前記周方向の一部において前記外周面から径方向内側に窪んで形成されていればよい。
また、雌型継手5にはキャップ29が設けられるとしたが、特に設けなくても構わない。この場合には、例えば、複数の球体23を径方向内側に付勢する付勢力を利用して、相互に隣り合う球体23同士で支え合えばよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態による継手構造を示すものであり、雄型継手と雌型継手とを分離状態で示す説明図である。
【図2】図1の雌型継手を接合棒の挿入方向前方側から見た一部破断正面図である。
【図3】図1の雌型継手を構成する円環プレート部を示す正面図である。
【図4】図1の継手構造において、雌型継手に対して雄型継手の接合棒を挿入する途中段階を示す説明図である。
【図5】図1の継手構造において、雌型継手に対して雄型継手の接合棒を挿入した後の状態を示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態による継手構造を示すものであり、雄型継手と雌型継手とを分離状態で示す説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態による継手構造を示すものであり、雌型継手に対して雄型継手の接合棒を挿入した後の状態を示す説明図である。
【図8】図7の継手構造において、雌型継手に対して接合棒を引き抜く途中段階を示す説明図である。
【図9】図7の継手構造において、雌型継手に対して接合棒を引き抜く途中段階を示す説明図である。
【図10】図7の継手構造において、雌型継手に対して接合棒を引き抜いた後の状態を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施形態による継手構造において、雌型継手を構成する円環プレート部を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 第1セグメント(第1部材)
2 第2セグメント(第2部材)
3 雄型継手
5 雌型継手
7 接合棒(雄型継手本体)
9 頭部
11 係合凹部
21 ハウジング
23 球体
25 円環プレート部
25a 挿通孔
25b 一端面
25c スリット(ガイド溝部)
27 球体用コイルばね(球体付勢手段)
29 キャップ(規制部材)
35 挿入孔
35a 内周面
37 収容部
37a テーパ内周面
51 円環プレート部
52a 挿通孔
52c スリット(ガイド溝部)
55 球体用コイルばね(球体付勢手段)
O1 軸線
O2 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型継手と雌型継手とを係合して、前記雄型継手を有する第1部材と前記雌型継手を有する第2部材とを互いに接合する継手構造であって、
前記雄型継手は、前記第1部材の接合面から突出して先端側に設けた頭部の基端側に、その外周面からその径方向内側に窪む係合凹部を設けた雄型継手本体を備え、
前記雌型継手は、前記第2部材に固定されて前記雄型継手本体を挿入可能な挿入孔を有するハウジングと、前記挿入孔の内周面から径方向外側に窪む収容部に収容されて前記挿入孔の径方向に移動可能とされた球体と、該球体を前記内周面よりも径方向内側に突出させるように付勢する球体付勢手段と、を備え、
前記雄型継手本体が前記挿入孔に挿入された際に、前記球体が前記球体付勢手段の付勢力によって前記係合凹部に向けて付勢されると共に、前記収容部及び前記係合凹部に跨って配されることを特徴とする継手構造。
【請求項2】
前記雄型継手本体の挿入前の状態において前記球体付勢手段による径方向内側への前記球体の付勢を規制して前記球体を前記収容部内に保持する規制部材を備え、
前記雄型継手本体を前記挿入孔に挿入する際に、前記雄型継手本体が前記規制手段による前記球体の径方向内側への移動規制を解除することを特徴とする請求項1に記載の継手構造。
【請求項3】
前記収容部が、前記内周面の周方向にわたって形成されると共に、前記球体が、前記周方向にわたって複数配列されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の継手構造。
【請求項4】
前記収容部が、前記挿入孔の軸線に沿って前記内周面に連ねて形成され、前記内周面側から前記軸線に沿って漸次拡径するテーパ内周面を有し、
前記ハウジング内に、前記球体を介して前記テーパ内周面に対向配置されて前記雄型継手本体を挿通可能な挿通孔を有する円環プレート部が設けられ、
該円環プレート部が、前記球体付勢手段によって前記軸線に沿って前記テーパ内周面に向けて付勢されていることを特徴とする請求項3に記載の継手構造。
【請求項5】
前記球体が接触する前記円環プレート部の一端面に、該円環プレート部の径方向に延びて各球体の一部を収容可能とするガイド溝部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−150073(P2009−150073A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327233(P2007−327233)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【出願人】(591160279)小林工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】