説明

継目部分における複数の打抜刃の固定方法及び該方法を用いて作製したシート打抜型

【課題】 打抜刃の交換を繰り返しても、継目部分における複数の打抜刃の保持力が低下することのない固定方法及びこの方法を用いて作製したシート打抜型を提供することである。
【解決手段】
木製の基板1上に打ち抜くべき形状にレーザー加工等によりスリット状の溝を形成し、2枚の打抜刃2の継目部分3となる箇所の近傍には溝穴4を形成する。上記スリット状の溝に打抜刃2を埋め込んだ後、固化材を流し込んで固化させ、これにより2枚の打抜刃2は互いに突き合わせた状態で基板1に強固に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継目部分における複数の打抜刃の固定方法及び該方法を用いて作製したシート打抜型に関し、より詳細には、複数の打抜刃を突き合わせた継目部分におけるこれらの打抜刃を固定する方法及びこの固定方法を用いて作製したシート打抜型に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、段ボール、樹脂製のシート等のシート材は、種々の形状に打ち抜くことにより、食品用トレイ、紙箱、段ボール箱等の様々な用途に使用されている。このようなシート材の打ち抜きには、打ち抜くべき平面形状に沿って配された打抜刃をベニヤ板・樹脂板等の基板上に固定した打抜型が使用され、この打抜型とまな板として機能する受台との間でシート材が押し切られる。このような打抜型にはトムソン刃と称される帯状の刃が用いられ、この刃は、基板に形成されたスリット状の溝に沿って埋め込むことにより基板に固定される。基板に形成される溝は平面視で打ち抜くべき形状と同じ形状にレーザー加工により形成される(特許文献1)。
【0003】
図4は、シート打抜型の平面図であり、打ち抜くべき形状に従って配置された打抜刃2が木製の基板1上に固定されている。打抜刃2は上述のように基板1上にレーザー加工により形成されたスリット状の溝に埋め込まれている。図4に示すように、打抜刃2は角を丸めた矩形に配置され、左右の長辺の上部にそれぞれV字状の切り込みを形成するための継目部分3を有している。図3(a)は継目部分3の近傍における打抜刃2の配置を表す斜視図であり、継目部分3では2枚の打抜刃2を同一方向に曲げてその端部を突き合わせた配置となっている。図3(b)は図3(a)の継目部分3の平面図、図3(c)は正面図である。図3(a)〜(c)に示すように、継目部分3の部分では2つの打抜刃2のそれぞれは同じ方向に曲げられ、端部が互いに当接するように突き合わせて固定されている。このような打抜刃2の配置により、打ち抜かれたシート材には切り込みが形成され、2枚のシート材を袋状にシールした後の袋の破り口として使用される。
【0004】
しかしながら、このような打抜型を用いてシート材の打ち抜きを繰り返し行うと、ベニヤ板等の基板1の打抜刃2に対する保持力が弱くなってくる。また、打ち抜きの回数を重ねると次第に打抜刃2が磨耗しあるいは破損して、打抜刃2を交換することが必要となる。打抜刃2の交換をする場合、消耗した打抜刃を基板から抜いて、新たに打抜刃2を溝に埋め込むことになるが、このような打抜刃2の交換は、基板に形成されている溝の打抜刃2に対する保持力を低下させることになり、交換の回数を重ねると、更に保持力の低下が促進されることになる。また、打ち抜き加工を繰り返すと、加工対象物のシート材の繊維等が解けて粉状になったもの(紙粉等)が2枚の打抜刃2の間に徐々に詰まり、これが2枚の打抜刃2を押し広げて隙間が生じるように作用する。刃先間に隙間が生じるとその部分は切れ残り切れ不良を招くことになる。
【0005】
このような打抜刃の保持力低下の問題は、安価なベニヤ板を基板として用いた場合に見られるが、より耐久性の高い樹脂製の基板を用いた場合にも問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−138267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するものであり、本発明の目的は、打ち抜き加工及び打抜刃の交換を繰り返しても、継目部分における複数の打抜刃の保持力が低下することのない固定方法及びこの方法を用いて作製したシート打抜型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の打抜刃の継目部分の固定方法は、シート材を所定形状に打ち抜くための複数の打抜刃を突き合わせた継目部分における前記複数の打抜刃の固定方法であって、前記基板における前記継目部分とその周囲に溝穴を形成し、該溝穴に固化材を流し込んで固化させることにより前記複数の打抜刃を前記基板に固定することを特徴とする。
【0009】
このような本発明の構成によれば、固化材が溶融状態で打抜刃の形状に応じて溝穴に充填され、その後固化するので、打抜刃を基板に強固に保持することができる。また、打抜刃の交換に際しては、打抜刃を固化材とともに取り除き、新しい打抜刃を設置して再度その溝穴に固化材を流し込むことにより、打抜刃に対する保持力を低下させることなく打抜刃を交換することができる。
【0010】
このような本発明の構成は、前記継目部分において2枚の打抜刃が鋭角を成すように突き合わされて配置されている場合に高い効果を発揮する。このような2枚の打抜刃が鋭角を成す構成においては、打ち抜き後の前記シート材にはV字状の切り込みが形成される。
【0011】
固化材としては、熱、紫外線、電子線、化学反応等により硬化する樹脂やこれらに金属粉を配合したもの、冷却により固化する熱可塑性樹脂や鉛などの低融点金属を用いることができる。これらの固化材のうち、食品や医薬品の包装材の製造に使用しても安全であるという観点から、主剤及び硬化剤からなるエポキシ樹脂が好ましく、また、固化後の打抜刃に対する保持力が大きいという観点から、このエポキシ樹脂にアルミニウム粉を配合したものが更に好ましい。
【0012】
本発明のシート打抜型は、シート材を所定形状に打ち抜くための複数の打抜刃と、該複数の打抜刃を固定するための基板とを備えたシート打抜型であって、前記複数の打抜刃を突き合わせた継目部分とその周囲に溝穴が形成されており、該溝穴には前記継目部分における前記複数の打抜刃を固定するための固化材が充填されていることを特徴とする。
【0013】
また、上記シート打抜型においても、前記継目部分において2枚の打抜刃が鋭角を成すように突き合わされて配置されている場合に高い効果を発揮する。また、固化材としても、上記と同様のものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複数の打抜刃の固定方法及びシート打抜型によれば、固化材が打抜刃の形状に応じて溝穴に充填された後固化するので、打抜刃が基板に強固に保持され得る。また、打抜刃の交換に際しては、打抜刃と溝穴内の固化材とを取り除き、次に新しい打抜刃を設置して再度その溝穴に固化材を流し込むことにより、容易に打抜刃を交換することができ、しかも打抜刃に対する保持力を低下させることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート打抜型の平面図である。
【図2】図1の継目部分における打抜刃の固定方法を示す平面図である。
【図3】(a)は図1の継目部分における複数の打抜刃の配置を示す斜視図、(b)は継目部分3の平面図、(c)は正面図である。
【図4】従来のシート打抜型の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係るシート打抜型の平面図である。本発明のシート打抜型は、木製の基板1と、基板1上に固定された打抜刃2とを有している。打抜刃2は、レーザー加工等により基板1上に形成されたスリット状の溝に埋め込まれて固定されている。打抜刃2の平面視の配置は、打ち抜くべきシート材の平面形状と同じである。図1に示すように、打抜刃2は角を丸めた矩形に配置され、左右の長辺の上部にそれぞれV字状の切り込みを形成するための継目部分3を有している。継目部分3の近傍における打抜刃2の配置は、前述の図3に示すものと同様であり、同図(a)に示すように、2枚の打抜刃2のそれぞれが同一方向に曲げられ、それぞれの端部を突き合わせて鋭角を成す配置となっている。図3(b)は継目部分3の平面図であり、同図(b)に示すように、打抜刃2のそれぞれの端部には切欠面2aが形成されている。これらの切欠面2aを互いに突き合わせることにより、図3(c)の正面図に示すように、2枚の打抜刃2の間に隙間を生ずることはない。また、2枚の打抜刃2の刃先2bは、切れ目なく連続して配置されることになる。これにより、打ち抜き後のシート材は継目部分3において繋がることなく完全に切り離される。
【0018】
本実施形態においては、2枚の打抜刃2は、継目部分3において以下のようにして固定される。まず、基板1上に、前述のように打抜刃2を固定するためのスリット状の溝をレーザー加工等により打ち抜くべき形状に形成する。次に、基板1上の継目部分3の近傍の領域に、図2(a)に示すように、矩形の溝穴4を形成する。この溝穴4は、基板1の表面から裏面に貫通するように形成されている。本実施形態では溝穴4は矩形としたが、打抜刃2が突き合わされているV字形状の部分が含まれればどのような形状でもよく、例えば、円形、楕円形などとしてもよい。次に、打抜刃をスリット状の溝に設置した後、溝穴4に固化材である2剤混合型のアルミニウム粉含有エポキシ樹脂(商品名:デブコンF、発売元:日本デブコン株式会社)を流し込む。エポキシ樹脂は2枚の打抜刃2を固定するとともに溝穴4内を満たし、硬化後に打抜刃2を強固に保持することとなる。
【0019】
本実施形態のシート打抜型では、継目部分3において2枚の打抜刃2は溝穴4に充填したアルミニウム粉含有エポキシ樹脂により強固に保持されているので、打ち抜き加工を繰り返すことにより、加工対象物であるシート材の繊維等が解けて粉状になったもの(紙粉等)が生じても、2枚の打抜刃2の間に挟まり難く、また、挟まったとしても2枚の打抜刃2の間には容易に隙間は生じないので、被加工物であるシート材を確実に打ち抜くことができる。また、打ち抜きを繰り返し行うことにより基板1の打抜刃2の保持力が低下した場合や、打抜刃2が磨耗しあるいは破損した場合には、溝穴4内のエポキシ樹脂を打抜刃2とともに基板1から抜き去ることにより、容易に打抜刃2を交換することが可能となる。新たな打抜刃2の基板1への固定に際しては、前述と同様に溝穴4に硬化前の2剤混合型のアルミニウム粉含有エポキシ樹脂を流し込むことにより、打抜刃2に対する保持力を低下させることなく打抜刃2を交換することができる。
【0020】
なお、上記では基板1としてベニヤ板からなる木製のものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば樹脂製の基板であっても、同様の効果が得られる。また、本実施形態では固化材として2剤混合型のアルミニウム粉含有エポキシ樹脂を使用したが、これに限らず、例えば熱可塑性樹脂などの樹脂も固化材として使用してもよく、更には低融点の金属も固化材として使用することができる。更に、本実施形態では2枚の打抜刃2を突き合わせた継目部分におけ固定方法について説明したが、本発明は、打抜刃を強固に保持したい箇所であれば何れの部分にも適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明によれば、打抜刃2の交換を繰り返してもその保持力が低下せず、しかも加工対象物の繊維等が挟まることがないので、包装資材等の分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 基板
2 打抜刃
2a 切欠面
2b 刃先
3 継目部分
4 溝穴
5 固化材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を所定形状に打ち抜くための複数の打抜刃を突き合わせた継目部分における前記複数の打抜刃の固定方法であって、前記基板における前記継目部分とその周囲に溝穴を形成し、該溝穴に固化材を流し込んで固化させることにより前記複数の打抜刃を前記基板に固定することを特徴とする複数の打抜刃の固定方法。
【請求項2】
前記継目部分において2枚の打抜刃が鋭角を成すように突き合わされて配置され、打ち抜き後の前記シート材にはV字状の切り込みが形成されることを特徴とする請求項1に記載の複数の打抜刃の固定方法。
【請求項3】
前記固化材は、主剤及び硬化剤からなるエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複数の打抜刃の固定方法。
【請求項4】
前記固化材は、金属粉を配合した樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の複数の打抜刃の固定方法。
【請求項5】
シート材を所定形状に打ち抜くための複数の打抜刃と、該複数の打抜刃を固定するための基板とを備えたシート打抜型であって、前記複数の打抜刃を突き合わせた継目部分とその周囲に溝穴が形成されており、該溝穴には前記継目部分における前記複数の打抜刃を固定するための固化材が充填されていることを特徴とするシート打抜型。
【請求項6】
前記継目部分において2枚の打抜刃が鋭角を成すように突き合わされて配置されており、打ち抜き後の前記シート材にはV字状の切り込みが形成されることを特徴とする請求項5に記載のシート打抜型。
【請求項7】
前記固化材は、主剤及び硬化剤からなるエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項5又は6に記載のシート打抜型。
【請求項8】
前記固化材は、金属粉を配合した樹脂であることを特徴とする請求項5乃至7の何れか一項に記載のシート打抜型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−22670(P2013−22670A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158633(P2011−158633)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(592190383)株式会社黒岩 (9)
【Fターム(参考)】