説明

網戸ネット

【課題】框材の内側に、網戸ネットを取り付けて網戸を構成するための網戸ネットであって、長期間にわたって劣化することなく、抗菌、防虫、防汚作用を維持でき、かつ製造が容易な網戸ネットを提供すること。
【解決手段】網戸ネットの線材を、光触媒粒子物質よりなる光触媒粒子を含有した合成樹脂材料により形成し、さらに、前記光触媒粒子の表面の一部は、前記光触媒粒子の光触媒機能に対して不活性な不活性物質により被覆されているようにし、その他の部分は被覆されていないようにして、光触媒粒子の表面において光触媒機能が発現されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網戸ネットに関するものであり、より詳しくは、抗菌、防虫、防汚等の機能を備えた網戸ネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から網戸ネットは、住宅、ビル、工場等の建物に平井する蝿や蚊、その他の害虫の侵入による虫害を防止するために用いられている。この網戸ネットは、一般に、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレンなどの合成樹脂材料で形成したモノフィラメント線材を経糸及び緯糸に使用して網目が15〜30メッシュ程度の平織またはからみ織により織って網戸ネットを構成し、該網戸ネットを框材の内側に取り付けて網戸を構成する。
【0003】
この網戸は、長期にわたって屋外に設置されるため、様々な汚れが付着する。この汚れには油脂成分なども含まれており、雨などによる自然洗浄や水洗程度の洗浄では、汚れを除去するのは不可能である。また、この汚れを放置しておくと、汚れが蓄積してゆくばかりでなく、特に合成樹脂材料で形成された網戸ネットには黴が生育することが多くある。そうすると、建物の美観を損ねるばかりでなく、衛生上も非常に問題である。
【0004】
また、上記のような汚れを洗剤等により洗浄すればよいのであるが、非常に面倒な作業であるばかりでなく、汚れを十分に落とすことは非常に困難なことが多い。
【0005】
そこで、このような問題点を解決するために、網戸ネットの線材の表面に、光触媒機能を有する物質を含む薄膜をコーティングして網戸ネットを構成するようにしたものがある(特許文献1)。
【0006】
この網戸ネットによれば、TiO2等の光触媒物質が有する光触媒機能により、確かに汚れや黴などが付着しにくい。すなわち、光触媒物質に太陽光や蛍光灯などの光が照射されると、この光触媒物質の表面に正孔や電子が生じて光触媒機能を発現し、水や様々な有機物が分解される。また、前記正孔の作用により水が酸化されてOHラジカルを生じ、電子の作用により空気中の酸素が還元されてO2ラジカルを生ずる。これら活性酸素は優れた殺菌作用を有しており、その結果、黴などが生じ難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−195647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のとおりポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂材料で構成された網戸ネットの線材の表面に光触媒物質を含む薄膜をコーティングすると、その光触媒作用により、線材を構成する合成樹脂材料自体をも少なからず分解してしまう。
【0009】
したがって、それゆえ上記のような網戸ネットを作製するには、網戸ネットの線材の表面に、先ず光触媒作用を遮断するバリヤー層を形成し、その上に光触媒物質を含む薄膜をコーティングする必要があった。それゆえ、網戸ネットが非常に高価なものとなり、また製造工程も複雑なものとなっていた。
【0010】
本発明は、上記の問題点を克服するためになされたものであり、長期間にわたって劣化することなく、抗菌、防虫、防汚作用を維持でき、かつ製造が容易な網戸ネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る網戸ネットは、光触媒粒子物質よりなる光触媒粒子を含有した合成樹脂材料からなる線材により形成された網戸ネットであり、前記光触媒粒子の表面の一部は、前記光触媒粒子の光触媒機能に対して不活性な不活性物質により被覆されていることを特徴とする。
【0012】
上記光触媒粒子としては、光触媒機能を発揮するものであればよく、例えば、TiO2、Fe23、Cu2O、In23、WO3、Fe2TiO3、PbO、V25、FeTiO3、Bi23、Nb23、SrTiO3、ZnO、BaTiO3、CaTiO3、KTaO3、SnO2、ZrO2等などが適宜使用できる。本発明に係る網戸ネットにおいては、高い光触媒機能を発揮でき、経済性に優れ、しかも取り扱いが容易であることから、TiO2(二酸化チタン)を用いるのが好ましい。また、酸化チタンの中でも活性の高いアナターゼ型の二酸化チタンがより好適である。
【0013】
さらに、上記不活性物質としては、例えば、シリカやアパタイトなど、上記光触媒粒子の表面に付着可能であり、該光触媒粒子の光触媒機能に対して不活性なものであれば好適に使用できる。
【0014】
本発明に係る網戸ネットによれば、光触媒粒子を網戸ネットの線材の素材である合成樹脂に含有させて構成するので、従来の網戸ネットのように、網戸ネットの線材の表面に、先ず光触媒作用を遮断するバリヤー層を形成し、その上に光触媒物質を含む薄膜をコーティングするという2層構造をとる必要がない。それゆえ、網戸ネットの製造工程が簡易なものとなる。また、網戸ネットを安価に提供できるようになる。また、当該光触媒粒子は、その表面の一部が上記不活性物質で被覆されているので、網戸ネットの線材を構成する合成樹脂を分解しにくく、したがって網戸ネットの線材が劣化しにくい。それゆえ、長期間にわたって抗菌、防虫、防汚作用を維持できる。
【0015】
尚、光触媒粒子の一部が光触媒機能に対して不活性な不活性物質により被覆されているが、その他の部分は被覆されていないことで、光触媒粒子の表面において光触媒機能が発現され、その機能を十分に発揮させることができる。
【0016】
また、本発明に係る網戸ネットにおいては、光触媒粒子は、可視光応答型光触媒粒子であるのが好ましい。このようにすれば、紫外光のみならず、可視光をも活用して高い光触媒機能を発現させることができる。
ここで可視光とは、380nm以上の波長、より具体的には380nm〜800nmの波長の光を指す。
【0017】
また可視光応答型光触媒とは、前記可視光により励起される性質を有する光触媒をいう。このような可視光応答型光触媒としては、例えば、既に例示した光触媒物質の結晶に窒素原子及び/又は硫黄原子を含有したものが挙げられる。
【0018】
この「窒素原子及び/又は硫黄原子を含有した」とは、光触媒の粒子における光触媒結晶中の本来金属原子又は酸素原子が存在する位置の少なくとも一つに窒素原子又は硫黄原子が存在する状態、すなわち光触媒結晶中に含まれる金属原子又は酸素原子のうち少なくとも一つが窒素原子又は硫黄原子で置換された状態の化合物と、光触媒結晶中の結晶格子間に窒素原子又は硫黄原子がドープされた状態の化合物とのいずれの概念をも包含することを意図する。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明に係る網戸ネットによれば、網戸ネットの線材が光触媒粒子を含有した合成樹脂材料により形成され、前記光触媒粒子の表面の一部が、前記光触媒粒子の光触媒機能に対して不活性な不活性物質により被覆されているので、長期間にわたって劣化することなく、抗菌、防虫、防汚作用を維持でき、かつ、製造が容易となる。また、安価な網戸ネットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る網戸ネットを利用した網戸の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る網戸ネットの線材の概略断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る網戸ネットを利用した網戸の一実施形態を示すものであり、アルミ等で作製された左右および上下の枠材31を略矩形状に形成してなる框材3の内側に、網戸ネット2を取り付けて網戸を構成している。
【0023】
この網戸ネット2の線材21の材料としては、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂などの合成樹脂材料を適宜選択して使用できる。
【0024】
この線材の合成樹脂材料は、不活性物質層5で表面の一部を被覆された光触媒粒子4を含有している。この実施形態における光触媒粒子4は、酸化チタンを利用している。この酸化チタンは、チタン原子及び/又は酸素原子の一部を窒素原子及び/又は硫黄原子に置換した所謂窒素ドープ型及び/又は硫黄ドープ型の酸化チタンを利用することにより、波長380nm以上の可視光によっても高い光触媒機能を発現できる。さらに、この窒素ドープ型及び/又は硫黄ドープ型の酸化チタンに対して、鉄、銅などの金属イオンを導入して更に光触媒機能を高めたものも好適に使用できる。
【0025】
不活性物質層5を構成する不活性物質は、上述のとおり光触媒粒子4の表面に付着可能であり、該光触媒粒子4の光触媒機能に対して不活性なものであればよく、例えば、モンモリロナイト、タルク、シリカゲル、シリカゾル、ケイ酸塩、炭化ケイ素、酸化アルミニウム(アルミナ)、ゼオライト、ジルコニア、セラミックス、アパタイト、チタンアパタイト、酸化マグネシウム(マグネシア)、コーディライト、セピオライト、水酸化カルシウム、或いはこれらの混合物若しくは複合体等が好適に使用できる。
【0026】
不活性物質層5を光触媒粒子の表面に形成するには、上記のような不活性物質を水などの溶媒に分散させてその溶液中に光触媒粒子4を所定の時間浸漬して光触媒粒子4の表面に不活性物質が点在する結晶状に析出させたり、マスクメロン状のネット構造として析出させたりする方法がある。あるいは、シランカップリング剤により光触媒粒子3を被覆した後、高温で焼成することでシランカップリング剤に含まれる有機成分を気化させ、細孔を形成する等の方法によることもできる。
【0027】
以上のようにして形成した不活性物質層5を有する光触媒粒子4を、網戸ネット2の線材2の材料である合成樹脂と混合し、線材21を成形する。そして、形成した線材21を経糸及び緯糸に使用して平織またはからみ織により網目に織って網戸ネット2を構成し、該網戸ネット2を框材3の内側に取り付けて網戸1を構成する。
【符号の説明】
【0028】
1 網戸
2 網戸ネット
3 框材
4 光触媒粒子
5 不活性物質層




【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒性物質を含有した合成樹脂材料からなる線材により形成された網戸ネットであり、
前記光触媒物質の表面の一部は、前記光触媒物質の光触媒機能に対して不活性な不活性物質により被覆されていることを特徴とする網戸ネット。
【請求項2】
光触媒粒子は、可視光応答型光触媒粒子であることを特徴とする請求項1記載の網戸ネット。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−242340(P2010−242340A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90780(P2009−90780)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】