説明

網膜、黄斑、および視覚路の障害の処置のための低強度光療法

細胞、および特に視覚路障害の処置のためのシステムおよび方法を開示する。より具体的には、開示された本発明は、様々な視覚障害を処置するための網膜上皮細胞の光調節および/または光若返りを対象とする。視覚路障害の影響を低減する、または逆戻りさせるための網膜細胞の処置方法は、網膜細胞へ非常に低いエネルギーフルエンスを送達するために適用される狭帯域多色光源を用いる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、とりわけ疾患、急性および慢性環境因子または傷害、ならびに老化に起因する視覚路障害または機能不全を処置するためのシステムおよび方法に関する。例証的には、本発明は、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、遺伝性視神経症、視覚路(視神経、網膜、網膜動脈、角膜など)の障害、白内障、およびヒト視覚装置の他の障害を含む、もしくは起因する障害を軽減する、または逆戻りさせる、または修復するために網膜色素上皮細胞を光調節する低強度光療法を用いうる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
低レベル光療法は、レーザー、フラッシュランプなどを用いるもののような高エネルギー方法によって最善がもたらされると以前に考えられていた多くの型の処置に取って替わるものになってきている。例えば、光力学的療法、レーザーおよび他の高エネルギー光処置は、皮脂腺の活性、発毛に関連した皮膚障害を低減または除去するための効果的処置方法、創傷治癒、ならびに皺および細い皺の低減、瘢痕除去などの皮膚状態の処置であると考えられていた。
【0003】
当業者は、酸化的ストレスおよびミトコンドリア機能または機能不全が、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、加えてレーベル遺伝性視神経症および多くの他の視覚路の障害を含む、多数の網膜、視覚路、および視神経の疾患の発症に関与していると推測している。ミトコンドリア機能の減少はまた、メタノール中毒に関連していることが主張されている。メタノール中毒は網膜および視神経への毒性傷害を生じ、しばしば、失明に至る。メタノールへの毒物曝露は、結果として、ギ酸アシドーシス、代謝性アシドーシス、視覚毒性、昏睡、および極端な場合では、死の発生を生じうる。視覚障害は、メタノール摂取後18〜48時間の間に発生しうる。症状は、霧視またはぼけ視から完全な失明までの範囲でありうる。急性および慢性メタノール曝露の両方は、臨床的に網膜機能不全および視神経損傷を生じることが示されている。他の化学物質が類似した障害を生じうる。
【0004】
ギ酸は、メタノール中毒に生じる網膜および視神経毒性の原因である毒性代謝産物である。ギ酸は、全真核生物のミトコンドリア電子伝達システムの終末酵素である、チトクロムcオキシダーゼを阻害しうる既知のミトコンドリア毒素である。チトクロムオキシダーゼは、ほとんどすべての細胞、特に網膜および脳を含む高酸化的器官の細胞、の適切な機能にとって不可欠の重要なエネルギー産生酵素である。
【0005】
発光ダイオード(LED)アレイなどの低エネルギー源を用いる狭帯域多色光を用いる光調節は、全体として参照により本明細書に組み入れられている米国特許第6,663,659号(McDaniel)(特許文献1)に例証されているように、創傷治癒を促進する、心臓における虚血性傷害からの回復を向上させる、および多くの皮膚関連障害を改善することが示されている。さらに、細胞レベルにおいて、低エネルギーフルエンスの光の使用は、細胞増殖、コラーゲン合成、および細胞からの成長因子の放出、遺伝子発現の変化、ならびにDNA損傷の修復までも含む、重要な生物学的効果を生じうる。
【0006】
研究により、660nm(<4J/cm2)におけるLED光調節が、培養細胞における細胞増殖を刺激し、かつ創傷治癒を有意に向上させうることが実証されている。しかしながら、広範囲に及ぶ臨床的用途にもかかわらず、光調節の有益な作用の原因である機構は完全には理解されていない。これに対する可能性のある説明は、ミトコンドリアのチトクロムが光エネルギーの光アクセプターとして働きうること;および、さらに、他の受容体がこの光の生物学的効果の媒介物として働きうることである。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,663,659号(McDaniel)
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明の方法は、視覚路における標的細胞を、約300nm〜約1600nmの間の少なくとも1つの主放射波長を有する1つまたは複数の光源に曝露する段階;および約10J/cm2未満のエネルギーフルエンスを標的細胞へ送達する段階を含みうる。光源は、それぞれ約400nm〜約900nmの主放射波長を放射しうる。標的細胞へ送達されるエネルギーフルエンスは、約1ナノジュール/cm2〜約1ジュール/cm2でありうる。
【0009】
本発明の適切な光源は、発光ダイオード、レーザー、レーザーダイオード、色素レーザー、メタルハライドランプ、フラッシュランプ、機械的フィルター処理蛍光光源、機械的フィルター処理白熱もしくはフィラメント光源、またはそれらの組み合わせから選択されうる。複数の光源が用いられる場合、それらは同じまたは異なる型であってもよい。
【0010】
本発明の一つの態様において、2つの光源が用いられうる。第一の光源は、約590nmの主放射波長で放射し、第二の光源は約870nmの主放射波長の光を放射する。光源は、標的細胞で受け取られる場合、約1ナノジュール/cm2〜約1J/cm2;約0.05J/cm2〜約0.15J/cm2、または単に約0.10J/cm2のエネルギーフルエンスを送達しうる。
【0011】
光源は、パルス波様式または連続波様式で作動しうる。例えば、パルス様式において、光源はパルスコードに従って光を放射する。1つのパルスコードは250/100/100 であり、すなわち250ミリ秒間「オン」、100ミリ秒間「オフ」、およびパルスが100回繰り返される。
【0012】
本発明の他の態様において、光源は、酸化的ストレスを低減もしくは除去する、内耳障害を処置する、片頭痛を処置する、セルライトを低減もしくは除去する、または下に記載された様々な細胞障害および機能不全を処置するために適用されうる。
【0013】
好ましい態様の詳細な説明
以下の詳細な説明は、現在最良と思われる本発明を実施するための形態についてである。この説明は、限定的意味にとられるべきではなく、単に、本発明の一般的原理を例証することを目的としてなされるだけである。本発明の範囲は、添付された特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0014】
好ましい態様において、本発明は、視覚および眼の障害を処置するための方法を対象とする。具体的には、処置は、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、遺伝性視神経症、視覚路(視神経、網膜、網膜動脈、角膜など)の障害、白内障、およびヒト視覚装置の他の障害を含む、もしくは起因する障害を軽減する、または逆戻りさせるために、網膜色素上皮細胞および視覚路の他の部分を光調節するのに用いられうる。
【0015】
網膜色素上皮細胞(RPE)の処置は、酸化的ストレス、フリーラジカル、傷害、または炎症を引き起こして、その結果細胞へのストレスまたは機能不全を生じる刺激または環境因子への曝露中の、例えば、紫外線、青色光、および、フリーラジカルにより引き起こされる酸化的ストレスにより網膜細胞へ引き起こされる損傷の影響を低減する、または逆戻りさせることができる。そのような損傷は、成人の約10%が発症する病気であり、先進国において失明の主要な原因である黄斑変性症へと導きうる。
【0016】
抗酸化ビタミンの使用が有望であるとはいえ、現在の処置は、黄斑変性症と戦うのに最小の効果しか示さない。他の最新治療は、血管成長を刺激する遺伝子発現(例えば、VEGF)の活性を減少させようと試みている。しかしながら、本発明は、予想外にも、先行技術方法と比較して、特にフリーラジカルにより生じる細胞損傷または細胞死を制御および低減することに関して重要な利点および優れた結果を生じることが見出されており、それにより、薬物の使用なしに有意な抗酸化様効果を提供する。もう一つの効果は、VEGF遺伝子の活性の発現を低下させることであった。
【0017】
本発明の例証的な態様において、黄斑変性症は、罹患細胞の光療法での処置により低減されうる、および場合によっては逆戻りさえしうる。その治療は、一般的に、低強度光療法(low-intensity light therapy)、またはLILTとして記載される。そのような治療に用いられる最も一般的な光源は、発光ダイオードなどの多色放射の狭帯域源である。しかしながら、有機LED、フラッシュランプ、レーザー、レーザーダイオード、色素レーザー、フィラメント源、および蛍光源などの他の光の型が用いられうる。光源の選択は、所望の処置により決定されうる。例えば、脳の処置が望まれる場合には、頭蓋骨を貫通して処置を受ける細胞または標的組織へ低エネルギーフルエンスを送達するために光源では大きなエネルギーフルエンスを必要とするため、フラッシュランプなどの高エネルギー光源が用いられうる。同様に、以後、他に規定がない限り、本明細書に挙げられるエネルギーフルエンスは、標的化される組織、細胞、または処置される他の生物学的構造により知覚されるエネルギーの量(ワットx時間)を指す。
【0018】
一例として、大きな衝撃音は、一時的聴力損失(長時間曝露後、永久的になる可能性がある)を引き起こすことが知られている。この特性は、聴覚または聴力伝導路内の特定の細胞においてフリーラジカル放出により引き起こされる酸化的ストレスである。パーソナルメディア装置(例えば、mp3プレーヤー)などの装置に関連した本技術の可能性のある用途。そのような装置の高聴音量での長期使用は、永久的聴力損失につながる一時的聴力損失を引き起こす場合もある。
【0019】
典型的には、パーソナルメディアプレーヤーは、「小型イヤホン(ear buds)」または小さなヘッドホンを有する。そのようなヘッドホンの末端に、炎症および酸化的ストレスを受けやすい細胞に達するように外耳道および鼓膜を通って有効量の光を投与する能力があるエネルギーフルエンスを放射することができるLEDを装着することにより、MP3プレーヤーなどのパーソナル装置は、聴力低下のリスク無しに用いられうる。そのような本発明の使用は、業務用聴覚保護装置、および被験体が何時間も高音量に曝される場合、聴力を保護するための他の装置へ拡大されうる。そのような装置はまた、他の原因、加えて、耳鳴り(耳の中で鳴り響く音)および平衡障害および感染からの聴力損失を処置するために用いられうる。
【0020】
もう一つの例は、大きな音への長時間曝露に起因する一時的聴力損失または耳鳴りを低減するために、抗酸化薬の代わりに、または抗酸化薬と共に、低強度光の使用を含みうる。「耳鳴り」または一時的聴力損失が有毛細胞または聴覚神経における酸化的ストレスによると推測されているため、鼓膜を渡って低エネルギーフルエンスを送達することは、理論に縛られるつもりはないが、有毛細胞または聴覚神経が高強度音波、または他の環境的傷害、もしくは化学療法に用いられるものなどの毒剤への曝露に曝される場合に生じるフリーラジカルを中和することによりそのような酸化的ストレスをさらに低減または除去しうる。光調節は、細胞損傷の影響を逆戻りさせる、修復する、または相殺するように遺伝子発現を変化させるために用いられうる。さらに、特定の薬学的処置は、患者において聴力低下を引き起こすことが知られている。本発明は、そのような薬物の影響を低減する、または逆戻りさせる、またはその影響から保護するために適用されうる。
【0021】
本発明により提供されうる他の医学的処置には、脳へ直行的に低エネルギーフルエンスをもたらす篩板を通じた光の適用;内部組織および器官または冠動脈へエネルギーフルエンスを送達する光ファイバーまたは内視鏡による光の送達;ならびに、様々な歯および歯周状態を処置する口および歯肉へ直接的な光の送達が挙げられうる。光はまた、鼻道または副鼻腔中へ、外部的または内部的に投与されうる。同様に、甲状腺(様々な甲状腺障害について)、免疫機能を制御するための胸腺などは、直接的に、または皮膚を通して処置されうる。
【0022】
本発明の好ましい態様において、患者の視覚系の任意の構成要素を上記の光処置の治療効果に曝す。「視覚系」とは、限定されるわけではないが、角膜、虹彩、水晶体、網膜、視神経、視神経交叉、外側膝状核、硝子体、網膜動脈、上丘、視蓋前域核、副視覚系、眼運動系、視床枕、視放線、視覚皮質、および連合性視覚皮質分野を含むものとする。
【0023】
視覚系の曝露は、眼の中へ向けられた光で処置し、それに従って、角膜、水晶体、虹彩、網膜、および視神経頭に照射することにより行われうる。または、装置は、光が、頭蓋骨の後部を通して、または視覚皮質を照射して、または頭の側面もしくは天辺を通して、向けられように配置され、それに従って、視覚系または脳の他の構成要素に照射することができる。しかしながら、この場合、光が標的に達する前に通過しなければならない皮膚、骨などの量により、標的組織へ非常に低いエネルギーフルエンスを送達するためにずっと高いエネルギーフルエンスが供給源により放射されなければならず、それにより、標的が、光調節処置について本明細書で示されたパラメーターによる臨床的に望ましい光の用量を受けることを可能にする。または、光の送達は、それを皮膚の下に、または頭蓋骨を通って脳の中へ(例えば、良性または悪性腫瘍の増殖を遅らせるまたは止めるために)、直接的に適用することにより、より「直接的」でありうる。
【0024】
視覚機能の回復もしくは保護を観察および/または定量化するために、視覚機能を評価する任意の通常の方法が用いられうる。
【0025】
角膜の擦過傷の処置の治療評価項目には、角膜がフルオレセイン染色の欠如が挙げられる。網膜傷害または疾患について、治療評価項目測定には以下が挙げられる:(1)眼底または眼の奥の外観の評価である眼底検査または眼底撮影(網膜および視神経は特殊レンズを用いることにより観察されうることに留意されたい);(2)網膜の厚さ(断面構造)を測定する光コヒーレンス・トモグラフィー;(3)光刺激に対する網膜における桿体および錐体光受容体の電気的応答を測定するフラッシュ、フリッカー、または多焦点の網膜電図記録;(4)色覚検査に対する頭皮電極から記録される脳の視覚野の電気的応答を測定することによる網膜−膝状体線条体経路の整合性にアクセスする視覚誘発皮質電位;および(5)視力表(スネレン式)視力検査表を用いる視力評価。上記方法により測定される網膜の改善または保護が見られると考える。
【0026】
視神経について、治療評価項目測定には、視神経が投射するLGNまたは上丘の領域からの視覚誘発皮質電位の測定、ならびに視神経(脳神経2)および動眼神経(脳神経3)の完全性を検査する瞳孔対光反射検査が挙げられる。
【0027】
視覚機能の改善の治療評価項目(視覚系の他の構成要素−視神経、LGN視覚路などへの疾患または傷害のLED改善を測定すること)は、好ましくは、視覚認知処理が正確に完了していることを保証するのに重要な視覚機能の評価のための標準化された評定としての役割を果たす一連の検査の使用を含む。これらには、視力(遠方および読み取り)、コントラスト感度機能、視野、動眼機能視覚的注視および走査の評価を含む。
【0028】
網膜および視覚機能検査のより詳細な説明は、限定されるわけではないが、以下の方法を含む。動的(ゴールドマン)視野測定法(「視野測定法」は、周辺視野の定量的検査である)。自動(コンピューター化)視野測定法は、自動的に視野の所定の領域へ投射される光のスポットを用いる。検査は、周辺視野の各領域において見ることができる最も薄暗い光が見出されるまで続ける。これらの視野検査は重要な情報を提供する。臨界フリッカー融合頻度(CFF)は、視神経の一定の速度でインパルスを伝達する能力を検査するために患者がフリッカー光を見ることを必要とする。この検査は、視神経損傷による視覚損失を同定するのに非常に有用であることが証明されている。
【0029】
赤外線ビデオ瞳孔記録は、より正確な診断がなされるように、暗闇の中で瞳孔をはっきり見る方法である。それはまた、瞳孔異常の局所的な虹彩の原因を同定するために虹彩に光を通過させるためにも用いられうる。
【0030】
網膜電図写真は、光に応答した網膜全体の電気的活動を記録し、網膜の桿体および錐体が正しい様式で発しているかどうかを決定するのを助ける通常のERG(網膜電図)である。多焦点ERG(MERG)は、様々な少しの網膜を連続的に照射することにより一度に約百個のERGを分析する。それは、目眩がするような情報の洪水を分類するためにコンピューターを用い、その後、それは、すべてのそれらの異なる領域の電気的活動(光に応答した)に基づいて、網膜の様々な部分の感度のマップを提示する。このマップが視野測定法からのマップと一致する場合には、問題は網膜にあり、視神経または脳にはない。
【0031】
多焦点視覚誘発電位(MVEP)。MERG刺激を用いて、脳における視覚路が損傷されているかどうかを伝える情報を頭皮から集めることができる。コンピューター制御された赤外線感受性瞳孔記録は、どれくらいの損傷が視覚系にあるかを定量化するために異なる型の光に応答した瞳孔運動をモニタリングするのに用いられる方法である。
【0032】
コンピューター制御された「瞳孔」視野測定法は、眼がどれくらい良く光を見るかの客観的指標として視野に提示される小さな光に応答した瞳孔運動を用いる方法である。眼球運動のコンピューター記録は、瞳孔運動をモニタリングするために用いられうる。しかし、それはまた同時に両眼の小さな運動を記録する能力を有し、それらが共について行って注視の様々な方向へ正常な運動をするかどうかを見る。
【0033】
光コヒーレンス・トモグラフィー(OCT)−眼の奥の網膜を見て、網膜のすべての四分円から生じて視神経につながる神経層の厚さを測定する装置。この神経線維層は、視神経を冒す疾患の性質に依存して、厚くなる、薄くなる、または正常でありうる。イシハラ(Ishihara)色覚検査カード−色覚評価に用いられる。様々な型の色覚異常を有する個体への同定可能な数またはパターンとして現れる色の点に関する検査チャート。
【0034】
網膜は、別個の層に配置された異なる細胞型で構成される複雑な感覚器官である。「網膜機能」という用語は、(1)光刺激によるこれらの層の活性化および(2)細胞の維持に必要とされる過程を指すために用いられる。異なる疾患は、選択的様式で網膜層または細胞型を冒しうる。先天性停止性夜盲症は、桿体媒介性視覚路における視覚信号の伝達に影響を及ぼし、色覚異常は、錐体経路のみ影響を及ぼす。他の疾患は、網膜上の限定された位置の両方の光受容体型に影響を及ぼしうる。例は、シュタルガルト病および加齢性黄斑変性症などの黄斑栄養失調症である。緑内障または視神経症などの他の疾患は、内網膜の表面に位置する神経節細胞に主として影響を及ぼすようである。
【0035】
これらの網膜疾患の一つにおける治療的介入の効力の評価は、それゆえに、特定の障害に依存する。先天性停止性夜盲症は、約30分間、暗闇に適応した患者における全領域網膜電図により最良に評価される。逆に、錐体機能の欠如である、色覚異常は、明順応条件下で、錐体機能を単離する急速フリッカーフラッシュ刺激を用いる全領域網膜電図により最良に評価される。黄斑の疾患は、多焦点ERGにおいて明らかであるが、全領域では明らかではない。これは、数十万個の光受容体を有する黄斑が、合計1200万個またはそれ以上の光受容体である全領域ERG信号にわずかに寄与するという事実による。こういう訳で、シュタルガルト病または加齢性黄斑変性症を処置するための介入の治療効力の評価は、多焦点ERGにより最良に達成される。全領域ERGも多焦点ERGも神経節細胞層からの有意な寄与を含まない。緑内障またはレーバー遺伝性視神経症の進行に影響を及ぼす介入の評価は、それゆえに、視覚皮質応答が神経節細胞機能に完全に依存しているため、およびERGはこれらの疾患において影響を受けないため、視覚誘発皮質電位を用いる。
【0036】
生じる特定の問題は、ミトコンドリア機能障害および網膜毛細血管細胞死に関連する。例えば、糖尿病性網膜症においては、酸化的ストレスが糖尿病患者の網膜で増加し、失明をもたらすこともある。本処置は、これらの型の障害の薬学的処置に対する効果的な代替法、または併用法を提供しうる。
【0037】
さらに、網膜の機能を客観的に測定するために設計された臨床的眼科に用いられるいくつかの異なる検査がある。網膜は、眼に入る光を視覚皮質における活動電位へ変換するためにいくつかの機能を実行しなければならない。光による網膜層の活性化は、非侵襲性に記録されうる視覚系の様々なレベルで電場の発生を生じる。理論的には、光療法は、ATP生成およびアポトーシスなどの侵襲に対する基本的細胞応答に影響を及ぼすように思われるため、幅広い範囲の疾患に有益でありうる。従って、光療法について恩恵を受けうるすべての疾患を評価するのに適切である検査は一つもないと考えられる。
【0038】
例証として、LEDのアレイは、罹患細胞へエネルギーフルエンスを送達しうる1つまたは複数の波長の光を放射するために用いられうる。細胞は、光調節および/または光発生を惹起するのに臨床的に有効なエネルギーフルエンスだが、レーザーなどの高エネルギー光源により引き起こされうる過剰な光曝露による細胞への損傷を与えるには十分ではない光を供給される。図1および2に示されているように、5つのカテゴリーの光調節処置がある。細胞に「エネルギーを与える」ための光若返りがある。光制御は、細胞への信号を制御する、または送る。光再活性化は、プログラム細胞死を遅らせる、停止する、もしくは逆戻りさせる、または場合によっては、壊死細胞を蘇生させる、ために用いられうる。光再生は、細胞を分化させるために用いられうる。そして、光再制御は、機能不全または損傷した細胞を修復するために用いられうる。
【0039】
例証的なLEDのアレイは、罹患細胞へ光の連続波(CW)を送達するために用いられうる、または有益な処置を提供するために決定されたコードに従って「パルス」されうる。例えば、パルスコードは、各パルスの長さ、各パルス間の時間、パルスの数によって参照されうる。例えば、「250/100/100」のパルスコードは、持続時間が250ミリ秒間で、100ミリ秒間、隔てられ、かつ100回、繰り返されるパルスを指す。そのようなパルスコードは、25秒間の連続波処置として同じエネルギーフルエンスを送達しうる。
【0040】
LEDアレイは、複数の波長、単一波長を放射するLEDエミッターを含みうる、またはアレイは、1つより多い波長が処置に用いられる場合には、複数の型のエミッターを含みうる。各LEDは、一般的に、約300nm〜1600nmの間の主放射波長で放射する。アレイは、スペクトルの可視部および/または赤外部を放射するLEDの組み合わせを含みうる。エミッターは、パルスを設定しうる、長時間、光の連続波を放射しうる、および同時にまたは順々に放射しうる。送達される総エネルギーフルエンスは、処置される特定の苦悩に依存するが、一般的に、網膜細胞の過剰曝露による可能性のある負の影響を回避するために約10J/cm2未満である。光が標的に間接的に投与される場合、供給源におけるフルエンスは、約10J/cm2よりずっと高くありうるが、供給源によって知覚されるフルエンスは、光源と標的細胞の間の組織、骨、または他の構造による光の吸収および散乱により非常に低くありうる。場合によっては、標的細胞により知覚されるフルエンスは、小さくも数ナノジュールであり、それでも処置は効果的でありうる。
【0041】
本発明の例証的態様は、250/100/100のパルスコードを有する4.0mW/cm2の力で放射する、または約0.1J/cm2を送達する、例えば、590nmおよび870nmの黄色光およびIR光の組み合わせの使用を含みうる。2/1/1〜約1000/1000/1000の範囲であるパルスコードが、網膜細胞へ処置光の臨床的有効量を送達するために用いられうるが、ナノ秒に達していないほどの持続時間でのパルスは、特定の状況において効果的な処置を供給すると考えられており、それゆえに、これらのパルスコードは単に実例にすぎず、可能性のあるコードを網羅するものではない。
【0042】
図3および4に示されているように、特に効果的な処置計画は、より低い波長の光と組み合わせてUVA1光を送達しうる。黄斑変性症の処置に有用な本発明の一つの態様において、0.1J/cm2のエネルギーフルエンスは、250/100/100パルスコードに従うパルス源によるか、または25秒間の連続的曝露によるかのいずれかで患者の眼(網膜色素上皮細胞)に送達されうる。いずれの処置も標的細胞へ同一のエネルギーフルエンスを送達する;しかしながら、図に示されているように、特定の細胞はパルス波および連続波処置に対して異なって応答することが見出されている。そのうえ、図3に示されているように、処置の間の時間は、方法の効力に影響を及ぼしうる。
【0043】
さらに、処置のためのアレイ内での光源の組み合わせでありうるが、様々な様式の組み合わせが用いられうる。例えば、下の実施例に示されているように、より効率的な処置を達成するために複数の波長を組み合わせることが望ましい場合がある。複数の波長は、可視スペクトルにおける光の組み合わせ、可視光および赤外光もしくは紫外光の組み合わせ、または非可視光の組み合わせを含みうる。本発明の一つの例証的態様において、黄色光および赤外光の組み合わせが、赤外領域(>700nm)における光により生じる熱での660nm光により達成される処置を増強するために用いられうる。
【0044】
標的細胞は、単一のLEDまたはLEDのアレイから放射される1つまたは複数の波長のLEDに曝され、LEDのそれぞれは、約300nm〜約1600nmの範囲での1つまたは複数の波長の光を放射しうる。様々なパラメーター(パルス持続時間、エネルギー、単一または複数のパルス、パルス間の間隔、パルスの総数など)は、細胞と相互作用するのに十分な累積エネルギーを送達するように用いられうる。これは結果として、光調節性手段、光熱性手段、またはそれらの組み合わせを通して、細胞活性の向上を生じうる。さらに、複数の光源が用いられる場合、各源の強度の比率は、残りの光源のそれぞれに対して選択されるべきである。例えば、本発明の一つの例証的使用は、3つの光源を用いうる。光源は、590nm、660nm、および870nmの主放射波長を有しうる。特定の型の処置について、光の「パルスコード」は、結果として、各源の同時的または連続的使用のパターンのいくつでも生じうるが、同じまたは異なるパルスコード(または連続波)を用いる処置は、各源の動作電力の違いによって変わりうる。「湿性」黄斑変性症の処置について、光源のそれぞれは、同じまたは異なる電力で作動しうる。他の場合、任意の個々の供給源の電力は、残りの光源のそれぞれに対して異なりうる。
【0045】
2つの完全に異なるレーザー、LED、または光線が、同じ光学機械を通して異なるパラメーターで実質的に同時に送達されうる。例えば、1つの光線が主として放出するために、または活性化するために送達され、第二光線が主として処置するために送達されうる。付加的または相補的な効果は、約660nmの波長を有する赤色光および約880nmの波長を有するもう一つの光の使用などの2つの光線を同時に用いることにより達成されうる。または、ミトコンドリアのチトクロムまたはDNAにより応答される波長に一致するように第一波長を、標的受容体に応答するように第二波長を選択することが、有益であることが見出されうる。
【0046】
可能な運転パラメーターのいくつかの例には、再生しうる、刺激されうる、阻害されうる、または破壊されうる細胞への電磁放射線の波長、電磁放射線のパルスの持続時間(パルス幅)、パルスの数、繰り返し率またはパルス間隔とも呼ばれるパルス間の持続時間が挙げられうる。処置の間の間隔は、何時間、何日間、何週間、何ヶ月間などの長い間でありうる;および処置の総数は、個々の患者の応答により決定される。さらに、複数の波長の同時または順番にのいずれかの組み合わせを用いる処置計画が用いられうる。そのうえ、生体組織で測定される(典型的には、平方センチメートルあたりのジュール、平方センチメートルあたりのワットなどで測定される)場合の放射線のエネルギー強度、細胞、組織、または皮膚のpH、皮膚温度、および外因性発色団(局所的でありうる、注射されうる、超音波と共に押し込まれうる、または全身性でありうる)と用いられる場合には光源での適用から処置までの時間は、処置の性質により決定され、実施例にさらに例証されている。
【0047】
波長−各標的細胞もしくは細胞内成分、またはその中の分子結合は、特定の電磁もしくは光吸収ピークまたは極大を示す少なくとも1つの固有かつ特徴的な「作用スペクトル」を有する傾向にある。例えば、図3は、単層組織培養におけるヒト線維芽細胞の1つの系の吸収スペクトルを示す。異なる細胞系(同じ細胞の、例えば、3人の異なる患者由来の線維芽細胞)は、それらの吸収スペクトルにおいていくつかの違いを示し、それに従って、(単色光ではなく)狭帯域多色光を用いることはまた、最適な臨床効果を生じるのに有用である。これらの細胞または細胞内成分が、吸収ピークまたは極大に対応する波長で照射される場合、エネルギーは光量子から移動され、標的に吸収される。送達されるエネルギーの特定の特徴は、細胞効果を決定する。これらのパラメーターの組み合わせの複雑性は、先行技術において多くの混乱を生じていた。基本的には、波長は、標的細胞または細胞内成分、または組織、または外因性発色団の吸収極大とおおまかに相関するべきである。場合によっては、1つより多い極大を同じまたは異なる処置日において、同時にまたは連続的にのいずれかで標的化することが望ましい場合もある。複数の極大作用スペクトルの存在は、所定の細胞または細胞内成分または外因性発色団について一般的であり、異なる波長極大照射は異なる結果を生じうる。
【0048】
波長域が過度に広い場合には、所望の光調節効果は意図されたものから変化しうる。それゆえに、広帯域非コヒーレントの強い光源は、複数の狭帯域エミッターの使用と対照的に、本発明との使用に特定されたものより望ましくない可能性がある。レーザーダイオードもまた、主帯域近くの狭い波長域を有する多色性である、すなわち、それらは狭帯域多色性装置−主波長近くを対称的に、または非対称的にのいずれかで狭帯域の放射の電磁気を放射する装置である。本発明の目的のために、主波長近くの約100ナノメートル未満+/-の帯域幅の電磁放射線を放射する任意の装置が、狭帯域の多色性エミッターであるとみなされうる。LEDは、非単色性であると同時に、狭帯域多色性エミッターとみなされるような狭帯域で放射する。狭帯域は、わずかに異なる波長の光子が放射されるのを可能にする。これは、特定の望ましい複数の光子相互作用を生じるために有益である可能性がありうる。対照的に、たいていの市販のレーザーは、光の単一の波長で光を放射し、単色性とみなされる。先行技術によるレーザーの使用は、コヒーレント、すなわち、それらの電磁放射線の単色性特性に頼っていた。
【0049】
波長はまた、組織侵入度を決定しうる。所望の波長が標的細胞、組織、または器官に達することは重要である。無傷の皮膚の組織侵入度は、潰瘍性または熱傷した皮膚の組織侵入度と異なり、擦りむいた、もしくは酵素的に剥離された、または任意の方法により角質層の少なくとも一部を除去された皮膚についてとも異なりうる。
【0050】
エネルギー密度−エネルギー密度は、照射中に送達されるエネルギー量に対応し、エネルギー強度および光強度とも呼ばれる。最適な「用量」は、パルス持続時間および波長により影響を及ぼされる。従って、これらは相関しており、パルス持続時間は非常に重要である。一般的に、高エネルギーは阻害を生じ、より低いエネルギーは刺激を生じる。
【0051】
パルス持続時間−照射の曝露時間は非常に重大な意味をもち、所望の効果、および標的細胞、細胞内成分、外因性発色団組織または器官によって異なる(例えば、0.5マイクロ秒〜10分間がヒト線維芽細胞にとって効果的でありうるが、より長いまたはより短い時間もまた成功裡に用いられうる)。
【0052】
連続波(CW)対パルス−例えば、最適なパルス持続時間はこれらのパラメーターにより影響を受ける。一般的に、エネルギー所要量は、パルス様式が用いられる場合には、連続波(CW)様式と比較して異なる。一般的に、パルス様式はある特定の処置計画に好ましく、CW様式はその他のものに好ましい。
【0053】
周波数(パルスの場合)−例えば、より高い周波数は阻害性である傾向にあり、一方、より低い周波数は刺激性である傾向にあるが、例外は起こりうる。
【0054】
負荷サイクル−これは、光が反復サイクルを出力し、それにより照射が、インターパルス遅延(処置セッションが一連のパルスを含む場合、パルス間の時間)とも本明細書で呼ばれる、定期的な間隔で繰り返される装置である。
【0055】
適切な処置計画の適用は、処置される細胞傷害または障害の型に依存しうる。例えば、いくつかの急性細胞傷害は、酸化的ストレスにより引き起こされるフリーラジカルの増殖により特徴付けられる。抗酸化薬はそのような苦悩に対して役に立ちうるが、光療法は、これおよび慢性細胞障害の効果的な処置であることが見出されている。慢性細胞障害は、いくつかの環境因子への継続的曝露後に示されるものでありうる−長期間にわたって平均より高いレベルのUV放射に曝されている者(例えば、漁師)に目にされる白内障の発生率の増加など。細胞障害の型−慢性(または変性)または急性に依存して、処置計画は異なりうる。さらに、急性細胞傷害と光処置の開始の間にある時間も同様に、最も効果的な処置を決定するのに大きな影響を及ぼしうることが見出されている。
【0056】
理論に縛られるつもりはないが、細胞死(壊死)の前に、傷害されている細胞はプログラム細胞アポトーシスを起こすと考えられている。これは、細胞壊死が生じるまでに細胞の機能が様々な段階を経験する(すなわち、ミトコンドリアDNAにより少なくとも部分的に支配された前もってプログラムされた細胞の自己破壊連鎖)期間である。以前には、いったんプログラムアポトーシスが開始したならば、避けられない結果は壊死であると考えられていた。しかしながら、図5に示されているように、光療法は、アポトーシスを停止させうる、または逆戻りまでさせることができ、それにより正常な細胞活性を回復させうることが示されている。
【0057】
黄斑障害の効果的な処置方法であることに加えて、本発明はまた、セルライト、片頭痛、卒中、心臓発作、および他の医学的状態の低減のための用途を有する。加えて、光療法は、移植のための採取された臓器を保存および調製するために用いられる抗酸化化合物の代わりに、または抗酸化化合物を増強するために、用いられうる。
【0058】
本明細書に記載されている使用に適した光源のいずれかを用いて、脂肪細胞が光調節されうる。光調節は、セルライトにおいて局所的微小環境を増加させ、細胞の代謝活性を変化させる。局所的微小環境、代謝もしくは酵素活性の増強、またはそれらの組み合わせは光調節手段により生じうる。処置を増強するために、前に記載されているような局所的発色団のいずれかが用いられうる、または非発色性組成物が、低強度光療法を含む光調節方法のいずれかと共に用いられうる。さらに光熱手段が、単独で、または光調節手段と共に、外因性発色団の使用有りまたは無しで、脂肪細胞を破壊するために用いられうる。
【0059】
動物および植物の両方の多くの生体は、それらの細胞への環境的損傷に対するそれらの主要な防御機構の一つとしてDNA修復システムを有する。このシステムは、細菌および酵母から昆虫、両生類、齧歯類、およびヒトまでの範囲の全部ではないが多くの生体に存在する。このDNA機構は、細胞死、突然変異、およびDNAをコピーすることにおけるエラーまたは永久的DNA損傷を最小限にするための過程に関与するものである。これらの型の環境的ならびに疾患および薬物関連DNA損傷は老化および癌に関与している。
【0060】
これらの癌の一つ、皮膚癌は、自然太陽光への環境的曝露により生じるDNAへの紫外線損傷に起因する。ほとんど全部の生体は、免れがたく、太陽光、およびそれに従って、これらの損傷UV光線に曝される。生じる損傷は、ピリミジン二量体と呼ばれるDNAの構造の変化である。これは、DNA構造を変化させて、それが皮膚細胞によってもうこれ以上、読まれることができない、またはコピーされることができない。これは、遺伝子および腫瘍発生および免疫系の適切な機能に影響を及ぼす。
【0061】
フォトリアーゼと呼ばれる酵素は、損傷したDNAの本来の構造および機能を回復させるのを助ける。興味深いことに、フォトリアーゼは光により活性化される・・・・・その後、紫外線により損傷されたDNAを修復するように作用する。暗闇において、それは、UV光により生成されたシクロブタンピリミジン二量体に結合し、それを2つの隣接するピリミジンへ変換し(もうこれ以上、これらを連結する二量体はない)、それに従って、DNA損傷は修復される。このDNA損傷の直接的逆戻りは「光再活性化」と呼ばれる。青色光への曝露によるフォトリアーゼは、光エネルギーを吸収し、このエネルギーを用いて、二量体を「開裂」し、それに従って、正常なDNA構造を回復させる。なお、DNA修復の他の機構も存在する。
【0062】
フォトリアーゼ修復機構は、現時点では十分には理解されていないが、本質的にいかなる生体源由来の天然の、または合成の、または遺伝子改変のフォトリアーゼも、ヒトおよび獣医用および植物の適用を含む他の生物体に利用されうる。限定されるわけではないが、他の環境的損傷または毒素、薬物、疾患、癌に対する化学療法、癌、微小重力および宇宙旅行関連損傷、ならびに種々の他の原因などの因子を含む、紫外線以外の因子により生じるDNA損傷もまた修復されうる。
【0063】
そのような天然由来、もしくは人工的に生成された、もしくは遺伝子改変のフォトリアーゼ酵素または関連酵素、またはDNAもしくはRNA修復のために機能する他のタンパク質の使用は幅広い種類の用途を有する。例えば、疾患の太陽光/紫外線により損傷された皮膚を処置する、および皮膚癌を修復する、逆戻りさせる、減少させる、または皮膚癌のリスクを別な方法で低下させる能力は、重度に日光損傷した皮膚を有する、前癌皮膚病変を有する、もしくは皮膚癌を有する人々のための治療的処置として、または予防的手段としてのいずれかで用いられうる。
【0064】
この原理は、皮膚細胞および皮膚癌に対してだけでなく、非常に幅広い範囲の皮膚および内部障害、疾患、機能不全、遺伝的障害、損傷、ならびに腫瘍および癌に適用する。実際、いかなる生細胞も、光療法と組み合わせてのフォトリアーゼまたは類似したタンパク質での処置から有益な効果を生じる可能性がある。
【0065】
本来、フォトリアーゼを活性化する光は典型的には天然の太陽光に由来するが、本質的にはいかなる光源でも、レーザーおよび非レーザー、狭帯域またはより広い帯域幅の源でも、適切な波長および処置パラメーターが選択された場合には、フォトリアーゼを活性化できる。従って、選択的日焼け止め剤を通してフィルター処理された天然の太陽光が、生来のフォトリアーゼおよび体外から適用されたフォトリアーゼの両方を活性化するために用いられうる。もう一つの処置選択肢は、フォトリアーゼを適用し、その後、適切な波長域およびパラメーターに制御された光源曝露で処置することである。幅広い種類の光源が利用されることができ、これらの範囲は本出願の他の所に記載されている。例えば、低エネルギーマイクロワット狭帯域であるが、多スペクトルのLED光源または混合波長を有するアレイが利用されうる。もう一つの態様は、415nm+/-20nmの主波長を有するフィルター処理したメタルハライド光源であり、1〜100ミリワット出力における1〜30分間の曝露が利用されうる。そのような曝露は、フォトリアーゼを含む外用剤の適用から数分〜数日間後に起こる。
【0066】
もう一つの例は、環境的損傷を有する皮膚における細胞の修復であるが、皮膚癌へ導く細胞を修復するのではなく、皮膚の老化(光老化)へ導く細胞がこの治療の標的となる。一つの態様において、日焼けで損傷している同類線維芽細胞がフォトリアーゼで処置され、その後、フォトリアーゼが、フォトリアーゼのDNA修復機構を発動させるために青色光で光調節される、すなわち光再活性化である。これは、構造の修復、およびそれに従って、線維芽細胞DNAの正常な機能を可能にし、それゆえに、コラーゲンおよびエラスチンおよびヒアルロン酸およびマトリックス基質などのタンパク質を産生して皮膚の外観を引き締まって弾力性があり、かつ若々しくさせるこれらの線維芽細胞の正常な機能および増殖を可能にし、それに従って、皮膚における老化防止または皮膚の若返り効果を生じる、加えて、皮膚の構造および健康な機能を向上させる。
【0067】
この光再活性化過程に関与する様々な補因子もまた、この過程の効率をさらに増強または向上させるために局所的または全身的のいずれかで加えられうる。いったん細胞が正常な機能を回復したならば、これらのタンパク質の産生に必要とされる他の補因子もまた、老化防止または皮膚若返り過程を増強するために局所的または全身的に加えられうる。上記のフォトリアーゼおよび/または補因子の両方の送達は、皮膚透過性を増加させるために、または皮膚バリアを渡って皮膚および下層組織の中への輸送を増加させるために、超音波を利用することにより増強されうる。皮膚の角質層の一部の除去もまた、これらの局所適用作用物質の透過および送達を増強するために、単独で、または超音波と組み合わせて、用いられうる。加えて、角質層を除去する、または変化させるそのような方法は、光の透過もしくは光の効率を援助することができる、または電池式LED源などの家庭用装置を含むより低い電力の光源の使用を可能にすることができる。
【0068】
フォトリアーゼを得るための様々な供給源が存在する。これらは、生来の天然のフォトリアーゼ、他の生体由来の化合物を含みうる(すなわち、例えば、細菌由来、もしくは酵母由来、もしくはプランクトン再導出、または合成もしくは遺伝子改変などのフォトリアーゼを用いることができ、有益な効果がこのようにフォトリアーゼを引き出された同じ種に限定されないため、それらをヒト皮膚に用いうる)。一つの既知のフォトリアーゼは、アナシスチス・ニードランス(Anacystis nidulans)由来であるが、他は細菌由来でありうる。実際、酵母は、ヒトに用いられうるフォトリアーゼで自分自身を保護し、他の微生物、植物、昆虫、両生類、および動物源が存在する。
【0069】
フォトリアーゼ酵素は、還元型FAD因子から環境的曝露により生じたピリミジン二量体への光誘起電子移動により機能する。抗酸化剤などのフリーラジカルインヒビターまたはクエンチャーの使用もまた、フォトリアーゼ治療を補うために用いられうる。他の光活性化発色団が、光源、および標的もしくは支持細胞または組織をさらに増強させる、刺激する、光調節する、光活性化する、または光阻害して、最も効果的な処置を促進するように適切に選択されたパラメーターを用いて、利用されうる。
【0070】
フリーラジカル細胞損傷の多くの原因が存在する。一つの態様において、創傷治癒は、抗酸化剤、細胞成長因子、細胞の直接的光調節(光活性化)、およびフォトリアーゼによる光再活性化の組み合わせを利用することにより促進されうる。適切な補因子および補因子の任意の不足の補充での局所的または全身的治療はさらに、創傷治癒を増強できる。例えば、慢性下腿潰瘍創傷は、ビタミンE、ビタミンC、およびグルタチオンの抗酸化混合物、加えて脂肪酸およびケト酸などの補因子で処置されることができ、線維芽細胞および上皮細胞を光刺激するように選択されたパラメーターを有するLEDアレイを用いる低レベル光療法もまた、フォトリアーゼおよび青色光療法での処置を受けることができ、それに従って、創傷治癒を大いに促進し、かつ別の方法では処置できなかったであろう創傷または火傷を治す。
【0071】
フォトリアーゼおよび光療法の可能性のある使用は以下を含む:脊髄傷害および疾患を含む神経損傷または疾患の処置または修復または逆戻り;癌または放射線療法および化学療法を含む癌処置関連の問題;子宮頚部形成異常および食道異形成(バレット食道)および肺、口腔、粘膜などの他の上皮由来細胞または器官障害など;限定されるわけではないが、黄斑変性症、白内障などを含む眼関連疾患。
【0072】
光調節または生来のフォトリアーゼもしくは体外から適用された天然もしくは合成もしくは遺伝子改変のフォトリアーゼによるフラビンラジカル光還元/DNA修復での、DNA(またはRNA)損傷のフォトリアーゼ媒介光修復または光再活性化の非常に幅広い健康および商業的用途がある。局所、経口、または全身的投与されるフォトリアーゼ、およびまたそれらの補因子、またはDNAが修復される細胞の補因子の添加はさらに、これらの適用を増強する。超音波援助型送達を介して、皮膚の角質層の変化を介して、および/または特殊な剤形を介して、または特殊な送達媒体もしくはカプセル化を介して局所的なそのような物質の送達の促進は、この過程へのなおさらなる強化である。
【0073】
細胞の分子時計ならびに動物および植物の生物時計または概日リズム時計−すなわち、生体において太陽日/夜リズムに対する生物体応答を制御する機構−を光調節するチトクロムなどの青色光光受容体もある。これらのタンパク質光受容体には、ビタミンBに基づいたチトクロムが挙げられる。ヒトは、直接的、または間接的に光調節(すなわち、光活性化または光阻害)されうる、現在同定されている2つのチトクロム遺伝子を有する。
【0074】
臨床的用途には、「時差ぼけ」、交代勤務などの概日リズム障害の処置だけでなく、不眠症、睡眠障害、免疫機能不全障害、宇宙飛行関連、長期の水中居住、および動物における概日リズムの他の障害の処置も挙げられる。概日性問題はまた、植物界を含む多くの他の生体について存在する。
【0075】
いぼは、光熱的または非熱的のいずれかの光調節技術、または両方の組み合わせで外因性または内因性発色団を用いて処置されうる。内因性発色団の好ましい態様の例には、いぼの血管血液供給のいずれかの方法でのターゲティングが挙げられる。もう一つの好ましい態様は、そのような発色団のいぼ、またはその血液供給、または支持組織への局所適用される、または注射される、または超音波によって増強される送達の使用で、その後の発色団の光調節または光熱的活性化を含む。
【0076】
一つのそのような例は、本出願の他の所で記載されたものと類似したクロロフィル局所製剤であるが、より高い濃度で、かついぼ治療およびいぼの解剖学的位置に最適化された媒体および粒子サイズのものである(例えば、手のより厚い皮膚上のいぼは、膣のいぼについて用いられるものとは異なって製剤化されうる)。LED光源は、電池式ユニットの644nmでの家庭用に用いられることができ、局所処方が毎日、適用され、個々のいぼの処置はいぼが消えるまで適切なパラメーターで行われた。
【0077】
膣のいぼの局面では、膣腔全体が、医学的に実行される手順において適切に照射されうるように配置され、かつ任意で散乱されるLEDのアレイを有する円筒形装置がこの治療のもう一つの態様を表す。幅広い範囲の物質が主要発色団としてか、または補助的支援治療としてかのいずれかで利用されうる。これらの化合物は本出願の他の所で列挙されている。もう一つの態様において、免疫刺激物質が、外因性発色団有りまたは無しで光調節と共に利用される。さらにもう一つの態様において、狭帯域または広帯域のいずれかのより高い電力の光源が、上で概説されているような同じ発色団と共に利用されうるが、パラメーターは、発色団との相互作用が光調節ではなく、むしろ、いぼを損傷するまたは破壊するために、ただし周囲の関与しないおよび非支持組織に対して最小限の損傷である、激しい光熱効果であるように選択される。
【0078】
一つの態様において、クロロフィルおよびカロテノイド局所製剤が適用され、選択的日焼け止め剤有りまたは無しでの天然の太陽光が、局所製剤と相互作用するために用いられる。もう一つの態様は、他の医学的用途において安全に血管注射に用いられているインドシアニングリーンなどの色素の注射される、または超音波によって増強される局所送達を利用する。
【0079】
丘疹落屑性、湿疹性および乾癬性、アトピー性皮膚炎、ならびに関連した皮膚障害が、同じ光調節または内因性もしくは外因性発色団との光熱的相互作用により改善されうる、制御されうる、低減されうる、または一掃までされうる。本出願においていぼおよび他の障害について概説された方法は、そのような治療に用いられうる。超音波の使用は、この群の疾患におけるより鱗屑性の障害に特に有用であり、酵素剥離、および落屑性皮膚を穏やかに除去する他の方法も同様である。光の乾癬への透過は、例えば、現行の治療に関して主要な問題を示す。薬物および局所的作用物質の浸透は、同様に、主要な治療上の課題である。乾癬の上部の乾燥皮膚が除去された場合には、これは乾癬の斑または病変の増殖をさらに刺激することはよく知られている。それにもかかわらず、除去は、薬物が浸透すること、および光が透過することを可能にするために必要とされる。現在、ほとんどすべての乾癬光療法は、紫外線であり、従って、皮膚癌およびまた光老化のリスクは、生涯にわたる繰り返される紫外線光療法に関して、非常に有意性が高い。また、そのような治療は、典型的には、大きな領域、または身体全体までも処置することを含む(大きな光療法ユニットに立つことは、直立している日焼けベッドにいることと同様である)。従って、乾癬病変を有する皮膚が処置されるだけでなく、すべての正常な関与しない皮膚もまた典型的には、損傷性紫外線に曝される。
【0080】
さらに、典型的な乾癬処置は、ソラレンと呼ばれる経口薬の使用を含む。これらの薬物はDNAを架橋結合し、光活性化される。従って、DNA損傷は、紫外線自身(太陽光だが、主に紫外線Aの光の中に出ているのと同様)により生じるだけでなく、加えて、ソラレン薬によって生じたDNA損傷がある。子どもにおける安全性は明らかな懸案事項であり、妊娠した、または出産女性における使用も同様である。
【0081】
本出願に列挙された大部分の作用物質などの局所用光活性化外因性発色団の使用はDNA損傷のリスクを示さず、また一般的に、非常に安全な生成物である−多くは、クロロフィルなどの天然であり、子どもならびに妊娠および出産適齢期の女性において安全に用いられうる。加えて、処置は、皮膚全体だけでなく網膜および他の組織も活性化する経口ソラレン薬の使用と違って、局所的作用物質が適用された所でのみ活性化される。この治療に用いられる光は、力が弱いだけでなく、それは大部分が可視光または赤外光であって紫外線ではない、すなわちDNA損傷を生じない。
【0082】
従って、本明細書に記載されたものなどの外因性光活性化発色団の光調節または光熱的活性化の使用は、安全性および効率において重要な利点を示す。
【0083】
上記のフォトリアーゼの態様はまた、乾癬などの疾患に対するいくつかの用途を有する。乾癬の一部の症例は、身体の大量の表面積に及ぶ非常に広範囲であり、他の公知の治療に抵抗性である可能性があるためである。伝統的な乾癬光療法に曝された、処置されない領域への、または身体領域すべてへの局所製剤の適用は、フォトリアーゼおよび青色光療法での治療後処置を受けることができる−これを紫外線乾癬光療法に対する一種の「解毒剤」とみなし、正常組織へのDNA損傷の修復は、乾癬治療後すぐに促進された。従って、将来における皮膚癌および光老化のリスクを有意に低減した。
【0084】
もう一つの態様は、職業上の日光曝露の長い一日からの帰宅後の、または偶発的な日焼け後の夜におけるそのようなフォトリアーゼ調製物の使用を含む。フォトリアーゼを含むスプレーまたはローションが適用され、その後、皮膚における急性損傷したDNAの光修復/光再活性化が実行されうる−そしてこれは、大きいビーム直径家庭用治療ユニットを用いて行うことができ−この反応を生じるのに十分な、適切なパラメーターにおける所望の波長を含む白色光源によって実施されうる。さらに、抗酸化皮膚用製剤もまた、紅斑および他の日焼けの望ましくない影響を最小限にするために適用されうる。一つのそのような態様は、ビタミンC、ビタミンE、およびグルタチオン、ならびに遊離脂肪酸および1つまたは複数のケト酸の組み合わせでの以前に記載された調製物である。類似した製剤は、これらの作用物質を含みうるが、列挙された3つの抗酸化剤のうちの1つまたは2つのみを利用しうる。
【0085】
インビトロの受精過程もまた、外因性発色団有りまたは無しでの光調節により促進されうる。全体として参照により本明細書に組み入れられている、「Method and Apparatus for Photomodulation of Living Cells」というタイトルの米国特許出願第09/894,899号に対応する出願に記載されているように、これは、細胞または細胞内成分自身を簡単に標的化することができる。
【0086】
これは、胚の受精および/もしくは成長のより高い成功率、またはこの過程における他の望ましい効果をもたらしうる。一つの態様において、LED光源は、受精を促進するように、動物もしくはヒトの精子、または遺伝子改変の胚もしくはそれらのサブコンポーネントを処置するために用いられうる。
【0087】
もう一つの態様において、光調節と組み合わされたフォトリアーゼまたは他の光修復性もしくは光活性化DNA修復タンパク質もしくは物質は、胚組織においてDNA損傷を「修正」し、それに従って、正常またはより正常な胚を生成するために利用されうる。これは、インビトロまたは子宮内で行われうる(適切な光パラメーターの微細な光ファイバー送達を利用して、すなわち光は、光ファイバー装置を導入するリスク無しに身体の外側から子宮の中へ送達されうる)。
【0088】
光調節が重要な恩恵として利用されうるもう一つの過程は、任意の生体由来の幹細胞の増殖、成長、分化などの刺激においてである。幹細胞成長および組織もしくは器官もしくは構造への分化、または注入、移植など(およびそのような移入後のそれらの引き続いての成長)のための細胞培養が、促進または増強または制御または阻害されうる。そのような幹細胞の起源は、任意の生きている組織または生体由来でありうる。ヒトにおいて、これらの態様のための幹細胞は、ヒト身体における任意の源由来でありうるが、典型的には、骨髄、血液、胚、胎盤、胎児、臍帯、または臍帯血が起源であり、天然で生成されうるか、またはインビボ、エクスビボ、もしくはインビトロのいずれかで、遺伝子変化もしくは操作もしくは改変有りもしくは無しで、人工的に生成されうるかのいずれかでありうる。そのような組織は、任意の起源の任意の生物源由来でありうる。
【0089】
視覚系ならびに具体的には、網膜および網膜色素上皮細胞および光受容体細胞の再生のための幹細胞分化を含め、幹細胞は、光調節により光活性化または光阻害されうる。一時的な局所的非破壊性細胞内熱変化は、膜変化または立体構造的変化のような影響に寄与しうるが、この過程は温度上昇をほとんどまたは全く伴わない。
【0090】
波長または波長の帯域幅は、選択的光調節において重要な因子の一つである。パルス的または連続的曝露、パルス(および暗い「オフ」時間)の持続時間および周波数、ならびにエネルギーも、加えて、ありとあらゆる補因子、酵素、触媒、もしくは光調節される過程の他の構成単位の存在、非存在、または不足もまた因子である。
【0091】
光調節は、幹細胞の分化、それらの増殖および成長、それらの運動性、ならびに最終的にはそれらが産生もしくは分泌するもの、およびそのような産生の特定の活性化もしくは阻害の路または経路を制御または指揮できる。
【0092】
光調節は、遺伝子または遺伝子群を上方制御または下方制御でき、酵素を活性化または不活化でき、DNA活性および他の細胞制御機能を調節できる。
【0093】
幹細胞の光調節についての本発明者らの類比は、特定のセットのパラメーターが幹細胞の分化または増殖または他の活性を活性化または阻害することができることである。強盗警報キーパッドが、警報信号を送る(活性化する)、または解除する(阻害または不活化する)ための、警報信号を送信して作動開始する固有の「コード」を有するように、幹細胞の光調節に関しても同様の一連の事象が存在する。
【0094】
同じ波長を有する異なるパラメーターは、非常に多様な効果を生じ、反対の効果さえ生じる。異なるパラメーターの光調節が同時に実行される場合、異なる効果が生じうる(ピアノで単一のキー対和音をひくことのように)。異なるパラメーターが連続的または逐次的に使用される場合、効果はまた異なり、実際、時間間隔に依存して、前の光調節のメッセージを無効にしうる(強盗警報を取り消すように)。
【0095】
いくつかの用途のための非常に狭い帯域幅を有しうるように−実質的に、生物活性を有するスペクトル間隔を有するように−帯域幅を選択するため、光調節の波長の選択は重要である。選択される帯域幅も同様である。一般的に、光調節は、フラビン、チトクロム、鉄-硫黄複合体、キニーネ、ヘム、酵素、および他の遷移金属リガンド結合構造を標的化するが、これらに限定されない。
【0096】
これらは、光アクセプター分子の「アンテナ」としての光合成におけるクロロフィルおよび他の色素と同様に働く。これらの光アクセプター部位は、本出願に記載されたものだけでなく、ラジオ周波数、マイクロ波、電気刺激、磁場を含む電磁気源から光子を受け、また偏光状態により影響を受けうる。電磁放射源の組み合わせもまた用いることができる。
【0097】
低強度光療法(LILT)においてでさえ、光アクセプター分子によって受け取られる光子エネルギーは化学結合に影響を及ぼすのに十分であり、それに従って、光アクセプター分子に「エネルギーを与え」、次にそれが移動し、このエネルギー信号を増幅する場合もある。「電子シャトル」はこれを輸送して、最終的にATPを生成し(または阻害し)、ミトコンドリアは、それに従って、細胞にエネルギーを与える(例えば、増殖または分泌活性のために)。これは、生じる細胞応答が幅広い、または非常に特異的でありうる。細胞の健康およびそれらの環境は、光調節への応答に大いに影響を及ぼしうる。例には、低酸素症、適切な補因子もしくは成長因子の過剰または欠乏または分配、薬物曝露(例えば、特定の抗コレステロール薬からの還元型ユビキノン)または抗酸化状態、疾患などが挙げられる。
【0098】
生細胞内で「優先権」を確立する、まだ知られていない機構は光調節されうる。これは、初期胚または幹細胞集団の分化までも含みうる。外因性光活性化発色団もまた、単独で、または外因性発色団と組み合わせて用いられうる。先天性の遺伝的エラーもしくは欠陥、またはまれであるが望ましいもしくは有益な形質を有する遺伝子変化または改変の幹細胞は、それらの類似した「正常な」幹細胞とは異なるパラメーターの「組み合わせ」を必要としうる、または同じパラメーターの組み合わせを用いる場合には、異なる細胞応答を生じうる。光調節の様々な方法または当技術分野において公知の他の技術を用いて、より特異的な細胞効果が、光調節されるいくつかの「チャネル」を「ブロックすること」により生じうる。
【0099】
例えば、旧式のジュークボックスを考えてみると、適切なボタンを選択した場合、非常に特異的かつ固有のレコードまたは歌の再生を生じる一連の事象を発動するであろう。しかしながら、ボタンを押すためにほうきを与えられたとしたら、選択されるべき所望のボタン以外全部をブロックしなければならない。同様に、直接隣接したボタンを押すことは、所望の結果を生じない。
【0100】
細胞への効果の大きさもまた、波長に非常に依存しうる(他のパラメーターが同じ場合)。一つのそのような例は、302nm光対365nm光でのDNAにおける化学結合の照射の間の対比であり、302nm光は、スペクトルをほんの短い距離だけ上がる365nmより約5000倍多いDNAピリミジン二量体を生じる。波長を変化させることはまた、これらの二量体の比率または型を変えうる。従って、光調節または光化学的反応における外見的には微妙な変化は、細胞効果において、細胞下レベルで、またはDNAもしくは遺伝子発現に関してさえも非常に大きく、かつ非常に有意な違いを生じうる。
【0101】
最後の類比は、光調節パラメーターが、幹細胞へ特定の「指令」を伝達するために「モールス式符号」に非常に類似していることである。これは、幹細胞が発達するまたは分化する細胞、組織、または器官の型をガイドする、または指示する、およびそれらの成長を刺激する、増強する、または促進する(またはそれらを未分化のままに保つ)など実際面で膨大な可能性をもっている。
【0102】
光調節のもう一つの適用は、セルライトの処置においてである。セルライトは、特定の解剖学的領域(最も一般的には大腿部および臀部上)に、特定の皮膚の外観を表す一般的な状態であり、美容上望ましくないと広くみなされている。セルライトは、皮膚、ならびに、主に脂肪および支持組織における循環もしくは微小循環の異常または代謝異常に関わりうる、下にある軟組織および脂肪の特定の解剖学的構造の結果である。脂肪細胞(adipocytes)(fat cells)またはそれらの周囲の支持構造および血液供給の、単独または組み合わせての光調節または光熱的処置は、セルライトの出現を低減しうる、ならびに/またはセルライトに関わる組織の構造および機能を正常化しうる。
【0103】
脂肪細胞の光調節は、脂肪細胞自身、それらのミトコンドリア、もしくは脂肪細胞電子伝達システムもしくは呼吸鎖内の他の標的、または他の細胞内成分などの内因性発色団を用いて行われうる。外因性の光または電磁気的活性化発色団もまた光調節(光活性化または光阻害)されうる、または光熱的相互作用も起こりうる。そのような発色団の例は、本明細書の他の所で列挙されており、標的組織、または脂肪細胞、または周囲の血管へ局所的にまたは全身的に導入されうる。外部的または内部的に適用される超音波の使用は、発色団の送達を促進するためにか、または局所的循環を変化させるためにか、または熱効果を供給するためにか、または破壊的効果を供給するためにか、またはこれらの作用の任意の組み合わせのいずれかで利用されうる。
【0104】
一つの態様において、発色団は、皮膚透過性を増強する、およびまた輸送を促進するために外部超音波を用いて大腿部上の皮膚の下にある脂肪層へ送達される。単独で、または超音波と組み合わせての角質層の変化は、発色団の送達をさらに促進できる。様々な技術からの外部メッセージ治療は、処置過程を増強するために用いられうる。もう一つの態様において、発色団は、光での処置の前に、脂肪層へ注射される。超音波有りまたは無しでのいくつかの光療法は、セルライトまたは他の組織により影響を及ぼされている領域において循環もしくは微小循環、または局所的代謝過程を光調節する、または光熱的にもしくは超音波によって増加させる、または別な形で変化させるために用いられうる。適切な光パラメーターは、標的脂肪細胞、血管、外因性発色団などについて選択される。セルライトにおける標的組織の一部は、例えば、皺または座瘡より深くあるため、典型的には、光が標的組織に達するのに十分深く透過するように、十分長い光の波長が利用されなければならない。
【0105】
様々な局所的または全身的作用物質もまた、セルライト低減処置を増強するために用いられうる。これらの一部には、本明細書に記載された、および本明細書で前に記載されている代謝性または脂肪細胞相互作用に対する様々な補因子が挙げられる。
【0106】
発毛を阻害するための追加の局所的作用物質には、オルニチンデカルボキシラーゼのインヒビター、血管内皮成長因子(VEGF)のインヒビター、ホスホリパーゼA2のインヒビター、S-アデノシルメチオニンのインヒビターが挙げられる。これらのうちの具体的な例には、限定されるわけではないが、カンゾウ、リコカロンA、ジェネステイン、ダイズイソフラボン、フィトエストロゲン、ビタミンD、および誘導体、類似体、結合体、天然型もしくは合成型、または遺伝子改変もしくは遺伝子変化の、もしくは免疫学的なこれらの作用物質との結合体が挙げられる。
【0107】
また、上でセルライトについて記載された同じ局所的作用物質、外因性光活性化発色団、および処置はまた、発毛を低下させるための方法へ本明細書で組み入れられている。有毛部皮膚の循環または微小循環を増加させることはまた、当業者に公知の任意の方法により単に血管拡張を生じさせることにより、達成されうる。そのような血管拡張を生じるために用いられうる局所的作用物質のいくつかの例には、限定されるわけではないが、以下が挙げられる:トウガラシ、チョウセンニンジン、ニコチンアミド、ミノキシジルなど。
【0108】
本明細書に開示された本発明の任意の態様に従って、局所的または全身的に投与されうる他の組成物には、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンK、ビタミンF、レチンA(トレチノイン)、アダパレン、レチノール、ヒドロキノン、コウジ酸、成長因子、エキナセア、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、漂白剤、αヒドロキシ酸、βヒドロキシ酸、サリチル酸、抗酸化三つ組化合物、海草誘導体、塩水誘導体、抗酸化剤、フィトアントシアニン、エピガロカテキン-3-没食子酸、植物性栄養素、植物性産物、草本産物、ホルモン、酵素、ミネラル(a mineral)、遺伝子改変物質、補因子、触媒、老化防止物質、インスリン、微量元素(イオン性カルシウム、マグネシウムなどを含む)、ミネラルウォーター(minerals)、ロゲイン(Rogaine)、発毛刺激物質、発毛阻害物質、染料、天然または合成メラニン、メタロプロテイナーゼインヒビター、プロリン、ヒドロキシプロリン、麻酔物質、クロロフィル、銅クロロフィリン、クロロプラスト、カロテノイド、バクテリオクロロフィル、フィコビリン、カロテン、キサントフィル、アントシアニンおよび誘導体、サブコンポーネント、ならびに天然および合成の両方の上記の類似体、ならびにそれらの混合物が挙げられうる。
【0109】
本発明は、以下の実施例としてさらに例証される。
【0110】
実施例1
座瘡低減−連続的処置
本発明の非切除LILT(「低強度光療法(Low Intensity Light Therapy」)を受けた患者の前の写真および後の写真を見る盲検の専門採点者のチームが、顔面野に隆起した目に見える座瘡の大域的な改善に得点を付ける。
【0111】
6人の女性を、最初、彼女らの皮膚を活性成分として重量で約2.5%の銅クロロフィリンを含む局所的組成物で処置することにより、座瘡を低減するように処置する。処置は、局所的組成物で処置された患者の皮膚の標的領域に連続的に作動し、全顔面適用範囲を与える、すなわち患者の顔全体が光源からの光に曝される、フィルター処理した蛍光を当てる段階を含む。結果として、10.0J/cm2の総エネルギー曝露を生じる、処置セッションあたり15分間の11ミリワットの強度の光での顔全体への12週間にわたる3回の処置。熱傷害は、標的発色団の間に含まれる血管に生じる(しかし、皮膚創傷ケアは必要とされない)。座瘡における平均低減は表1に示されている。光源は、410nm〜420nmの範囲での主放射波長を有し、415nmに中心がある。
【0112】
【表1】

【0113】
実施例2
座瘡低減−パルス処置
本発明の非切除LILT(「低強度光療法(Low Intensity Light Therapy」)を受けた患者の前の写真および後の写真を見る盲検の専門採点者のチームが、顔面野上の目に見える座瘡の大域的な改善に得点を付ける。
【0114】
6人の女性を、最初、活性成分として2.0%クロロフィルa、2.0%クロロフィルb、および5%カロテノイドの混合物を含む局所的組成物を、処置に先行する2週間の間毎晩、夜に1回、彼女らの皮膚に接触させることにより、座瘡について処置する。レーザーダイオード処置は、局所的組成物で処置された患者の皮膚の標的領域に、800msecのパルス幅および1hz(1秒あたり1パルス)のパルス周波数を有するレーザーダイオード光を当てる段階を含む。3つのパルスが投与される。10cmビーム直径を有する2500ミリワット/cm2の範囲の強度での400nmレーザーダイオードでの顔全体への12週間にわたる6回の処置。座瘡における平均低減は表2に示されている。
【0115】
【表2】

【0116】
実施例3
座瘡および座瘡瘢痕低減の組み合わされた連続波/パルス処置
顔面野において活性座瘡および座瘡瘢痕を示す3人の女性を、5ミクロンまたはそれ未満の直径を有するマイクロスポンジの担体懸濁液において活性成分クロロフィルを含む局所的組成物と共に用いられる本発明の非切除方法に従う処置を受ける前および後の瘢痕隆起、肌のきめ、および瘢痕鮮明度における改善について試験する。測定値は、訓練を受けた医療関係者により行われる主観的評価を利用することにより採られる。局所的処置は、リポソーム担体(または、5ミクロンの平均直径を有するマイクロスポンジが用いられうる)に約5%カロテノイドを含むカロテノイド組成物を顔面野の皮膚へ適用し、処置を開始する前の約15〜20分間、それを角質層に浸透させておく段階を含む。処置過程における第一段階は、約415nm+/-5nmの主放射波長、すなわち放射ピーク、および100mW/cm2のエネルギー出力を有するフィルター処理したメタルハライドランプからの連続波に約10分間、顔面野を曝すことである。その後、患者の顔面野をパルスLED処置に曝すが、その処置は、標的発色団線維芽細胞およびそれらの細胞内成分に、250msecのパルス幅および250msecのパルス間隔を有するLED光を90パルス、当てる段階を含む。前に記載されているようなメタルハライドランプ、および590nm多色LED、すなわち、約590nmの放射ピークを有し、かつ約585nm〜約595nmの範囲、1.05〜2.05μワットの範囲の強度での医学的に有用な光を発するLED、で顔全体への12週間にわたる6回の処置。さらに、処置は、熱傷害の閾値より下の皮膚温度に維持する。座瘡瘢痕鮮明度における平均改善は表3に示されている。本発明に従って、この二重源処置方法は、活性座瘡を処置するためのメタルハライド光源、および座瘡瘢痕の鮮明度を低減または消去するためのLED源を用いる。
【0117】
【表3】

【0118】
実施例4
座瘡瘢痕低減−パルス処置
本発明の非切除LILT(「低強度光療法(Low Intensity Light Therapy」)を受けた患者の前の写真および後の写真を見る盲検の専門採点者のチームが、目に見える座瘡瘢痕の大域的な改善に得点を付ける。
【0119】
6人の女性を、座瘡瘢痕鮮明度の低減について試験した。LED処置は、250msecのパルス幅および250msecのパルス間隔を有するLED光を90パルスの時間、患者の皮膚に当てる段階を含む。1.0〜2.0μワットの範囲の強度での590nm多色LEDでの顔全体への16週間にわたる8回の処置。+/-5〜15nmの帯域幅を有するため、LEDはそれゆえに、575nm〜605nmの波長範囲で光を生じる。さらに、処置は、熱傷害の閾値より下の皮膚温度に維持する。目に見える座瘡瘢痕における平均低減は表4に示されている。
【0120】
【表4】

【0121】
実施例5
座瘡低減−連続光
光熱的および光調節的処置の組み合わせによる座瘡を処置するための方法は、座瘡細菌の存在を低減し、その結果として、顔面野における座瘡の存在の実質的低減を生じるために用いられる。この例において、二重発色団、座瘡における生来の天然のポルフィリンおよび外因性発色団が標的化される。
【0122】
前処理は、局所的に適用される発色団を用いて行われる。この例において、局所的発色団は、Na Cuクロロフィリンおよびカロテノイドの水溶液であり、皮膚に適用される。皮膚を、最初、低残渣洗浄溶液で洗浄し、その後、pH調整した収斂ローションを、皮膚壊死組織片および角質層の一部を除去するために酵素マスクの5〜10分間適用により適用する。局所的発色団を適用し、顔全体を5分間および肩を5分間、カバーするようにマッサージ様動作を用いて25%の負荷サイクルおよび1.5ワット出力を用いる3メガヘルツ超音波エミッターで発色団の送達を促進する。その後、少しの過剰ローションも除去する。この例に用いられた洗浄溶液は、少なくとも40%のアセトン、酢酸エチル、またはエチル/イソプロピルアルコール溶媒、浸透増強剤としての約1%〜約4%のサリチル酸、および保湿剤として含まれる約5%グリセリンを含むべきである。
【0123】
420nmの主放射を有するフィルター処理した蛍光源を、10ジュール/cm2の強度で連続して20分間、放射するように設定する。患者の顔全体および上背を、6回の処置セッションのそれぞれの間中、重複を最小限に抑えて処置し、それぞれは2週間の間隔をあける。座瘡における約85%低減が観察される。
【0124】
実施例6
家庭用装置および処置
実施例5の処置方法が行われる。患者は、手持ち式LED装置を含む家庭用装置、重量で約2%のクロロフィルおよび重量で約2%のカロテノイドの水溶液を含むローション、ならびに波長選択性日焼け止め剤を用いて自宅で処置を続ける。
【0125】
患者は、クロロフィル含有局所用溶液を、座瘡瘢痕について以前に処置された領域へ1日1回、好ましくは、ただし必ずというわけではないが、朝に適用する。さらに、患者は、自然の太陽光が処置過程をさらに援助するのを可能にするために約400nm〜約420nmおよび600nm〜約660nmの範囲の波長を有する放射の通過を可能にするように製剤化されること以外、当技術分野において公知のものの典型的な日焼け止め剤を適用する。カロテノイドは、太陽光から受け取られた紫外線からの損傷に対する皮膚の保護を提供する。最後に、患者は、手持ち式のLED装置を1日1〜2回、用いる。LED装置は、約644nm+/-5nmの主放射を有する放射線を連続波において約20マイクロワットのエネルギー出力で放射する。各処置セッションは、座瘡病変についての活性座瘡病変を約2分間カバーする。座瘡瘢痕の鮮明度におけるさらなる低減が観察される。座瘡瘢痕低減における追加の改善は、前の実施例に記載されているように1.0〜2.0μワットの範囲の強度の590nm多色LEDを用いて達成されうる。
【0126】
実施例7
混合LEDパネル処置アレイ
LEDアレイは、活性座瘡を処置するための415nmの主放射を有する青色LED、および座瘡瘢痕を処置するための590nmの主放射を有する黄色LEDの両方を含む。皮膚は、実施例5に記載されているのと同じ様式で前処理される。LEDアレイは、その後、患者の顔面野全体をカバーするように配置され、青色光(415nm)の20分間の連続波、ならびに250ミリ秒間のオンおよび250ミリ秒間のオフでパルスされる黄色光(590nm)の曝露を用いる。約100個のパルスが送達される。
【0127】
実施例8
皮脂腺サイズの低下
活性酒さ性座瘡および多数の皮脂腺肥厚病変を示す女性の皮膚は、415nm+/-5nmに中心を有する主放射および100mW/cm2のエネルギー出力を有するメタルハライド光源で、活性成分としてクロロフィルおよびカロテノイドを含む局所適用される組成物で処置された後約10分間、処置される。2.0%クロロフィルaおよびb、6.0%カロテノイド(カロテンおよびキサントフィル)、ならびに1.5%フィコビリンの混合物が用いられる。すべてのパーセンテージは重量による。3回の処置が2週間間隔で施される。目視検査は、40%〜60%の皮脂腺サイズの低下を示す。
【0128】
実施例9
座瘡細菌のパルス処置
LEDアレイは、活性座瘡を処置するための415nmの主放射を有する青色LED、および座瘡瘢痕を処置するための590nmの主放射を有する黄色LEDの両方を含む。皮膚は、実施例5に記載されているのと同じ様式で前処理される。LEDアレイは、その後、患者の顔面野全体をカバーするように配置され、青色光(415nm)の20分間の連続波、ならびに250ミリ秒間のオンおよび250ミリ秒間のオフでパルスされる黄色光(590nm)の曝露を用いる。約100個のパルスが送達される。
【0129】
現在開示された態様は、すべての点において例証的かつ非限定的としてみなされるべきであり、本発明の範囲は、前述の記載よりむしろ、添付された特許請求の範囲により示されており、特許請求の範囲の意味および均等の範囲内に入るすべての変化は、それゆえに、それに含まれることを意図される。
【0130】
UV傷害細胞の処置
図5は、UVA1光曝露(360nm〜400nm)により傷害された細胞の応答を測定するための実験の結果を示した。UVA1光に曝露され、かつ1.4J/cm2のエネルギーフルエンスを受けた細胞は、約52%の死亡率を示した。UVA1光への曝露から8分後、590nmおよび870nmで(同時に)の本発明に従う二重波長パルス処置で処置された細胞は、細胞活性における回復を示し、結果として、5%未満の細胞死率を生じた。UVA1光に加えて、二重波長処置の組み合わせで処置された細胞は、幾分、回復したが、約34%の細胞死率を生じた。
【0131】
実施例11
黄斑変性症の処置
図7および8は、本発明による湿性黄斑変性症の処置の効果を示す。処置は、高齢の女性について行われ、250/100/100パルスコードを用いる590nmおよび870nmで(同時に)の本発明に従う二重波長パルス処置を用いた。図8は、図7の写真から2週間後に撮られた、被験体の眼における変化を示す。処置は、週に2回、施され、以後、被験体は、視覚的認識および知覚における改善を報告した。
【図面の簡単な説明】
【0132】
本発明の好ましい態様の詳細な説明は、添付された図面を参照してなされる。
【0133】
【図1】様々な光調節過程およびそれらの予想される細胞への効果を示す図である。
【図2】様々な光調節過程、および各過程が適用可能でありうる細胞の状態を示す。
【図3】ヒト皮膚における様々な因子についての特定の処置の効力の比較を示す。
【図4】本発明の様々な処置を受けた培養ヒト網膜色素上皮細胞におけるVEGFの相対発現を示す。
【図5】本発明の様々なLILT処置による処置後に急性UV傷害に曝されていた細胞の応答を示すグラフである。
【図6】ヒト聴覚系の説明図である。
【図7】湿性黄斑変性症を患っている患者の、本発明による処置前の眼の写真である。
【図8】本発明による2週間の処置後の図6の患者の眼の写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視覚路における標的細胞を、約300nm〜約1600nmの間の少なくとも1つの主放射波長を有する1つまたは複数の光源に曝露する段階;および
約10J/cm2未満のエネルギーフルエンスを標的細胞へ送達する段階
を含む方法。
【請求項2】
約400nm〜約900nmの主放射波長を有する単一の光源を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
標的細胞に送達されるエネルギーフルエンスが約1ナノジュール/cm2〜約1ジュール/cm2である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の光源が、発光ダイオード、レーザー、レーザーダイオード、色素レーザー、メタルハライドランプ、フラッシュランプ、機械的フィルター処理蛍光光源、機械的フィルター処理白熱もしくはフィラメント光源、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
2つまたはそれ以上の光源を含み、かつ標的細胞が2つまたはそれ以上の光源に同時にまたは連続的に曝露される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
第一光源が約590nmの主放射波長を放射し、かつ第二光源が約870nmの主放射波長を放射する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
標的細胞で受け取られるエネルギーフルエンスが約1ナノジュール/cm2〜約1J/cm2である、請求項1または6記載の方法。
【請求項8】
標的細胞で受け取られるエネルギーフルエンスが約0.05J/cm2〜約0.15J/cm2である、請求項1または6記載の方法。
【請求項9】
光源がパルスされている、請求項1または6記載の方法。
【請求項10】
光源が連続波を放射する、請求項1または6記載の方法。
【請求項11】
光源が、250ミリ秒間オン、約100ミリ秒間オフでパルスされている、請求項9記載の方法。
【請求項12】
光源が約10秒〜約120秒間放射する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
光源が約1回〜約1000回パルスされている、請求項11記載の方法。
【請求項14】
光源が約25秒間放射する、請求項12記載の方法。
【請求項15】
光源が約100回パルスされている、請求項13記載の方法。
【請求項16】
酸化的ストレスを受けた細胞を、約300nm〜約1600nmの間の少なくとも1つの主放射波長を有する1つまたは複数の光源に曝露する段階;および
約10J/cm2未満のエネルギーフルエンスを標的細胞へ送達する段階
を含む方法であって、
酸化的ストレスを受けている細胞により放出されるフリーラジカルの量の減少が観察される、方法。
【請求項17】
約400nm〜約900nmの主放射波長を有する単一の光源を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
標的細胞に送達されるエネルギーフルエンスが約1ナノジュール/cm2〜約1ジュール/cm2である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
1つまたは複数の光源が、発光ダイオード、レーザー、レーザーダイオード、色素レーザー、メタルハライドランプ、フラッシュランプ、機械的フィルター処理蛍光光源、機械的フィルター処理白熱もしくはフィラメント光源、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項20】
急性もしくは慢性傷害または変性変化を受けている細胞を、約300nm〜約1600nmの間の少なくとも1つの主放射波長を有する1つまたは複数の光源に曝露する段階;
約10J/cm2未満のエネルギーフルエンスを標的細胞へ送達する段階
を含む方法であって、
急性もしくは慢性傷害または変性変化を受ける前の細胞の機能の回復が観察される、方法。
【請求項21】
約400nm〜約900nmの主放射波長を有する単一の光源を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
標的細胞に送達されるエネルギーフルエンスが約1ナノジュール/cm2〜約1ジュール/cm2である、請求項20記載の方法。
【請求項23】
1つまたは複数の光源が、発光ダイオード、レーザー、レーザーダイオード、色素レーザー、メタルハライドランプ、フラッシュランプ、機械的フィルター処理蛍光光源、機械的フィルター処理白熱もしくはフィラメント光源、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−525141(P2009−525141A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553383(P2008−553383)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/002958
【国際公開番号】WO2007/092349
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(504177790)ライト バイオサイエンス,エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】