説明

緊張化した空中配線の形成方法、荷電粒子線プリズムとその製造方法、荷電粒子線の干渉縞を用いた観察方法、電子顕微鏡および電子顕微鏡における干渉縞の形成方法

【課題】緊張した微細な空中配線を形成する技術を提供する。
【解決手段】原料ガスを供給した領域に収束した第1の荷電粒子ビームを照射することにより空中配線530を形成し、第1の荷電粒子ビームの照射により形成された空中配線530に、第2の荷電粒子ビームIBを照射することにより空中配線530を緊張させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緊張化した空中配線を形成する技術と、当該空中配線を用いて荷電粒子を屈折させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電界放出型の電子線源を有する透過型電子顕微鏡において、電子線の経路上に電子線バイプリズムを設けることにより、電子線を分割および重畳し、電子線の干渉縞を形成することが行われる。このように形成された電子線の干渉縞は、重畳される電子線の位相差が変化することによってその形態が変化する。そのため、分割された電子線のうちの1つの電子線の経路上において試料が電子線と相互作用するように試料を配置することにより、電子線の位相のみが試料との相互作用により変化する場合においても、電子線と試料との相互作用の状況を観察することが可能となる。このような観察方法(電子線ホログラフィ)によれば、電子線の位相を変化させ振幅を変化させない電場や磁場等の状態を可視化することが可能となる。
【0003】
電子線ホログラフィにより観察を行う場合、干渉縞のコントラストを高くし、干渉が観察される領域(干渉領域)を広くするため、電子線を屈折させるための導電性のフィラメントをより細くするのが望ましい。しかしながら、従来の電子線バイプリズムのフィラメントは、溶融したガラス棒を引き延ばして引き延ばされたガラス上に金属を蒸着する方法、あるいは、白金(Pt)の単線を引き延ばす方法等により形成されてきた。このようにガラス棒や白金線の引き延ばしによりフィラメントを形成しても、形成されるフィラメントの直径は500nm近くとなり、コントラストの高さや干渉領域の広さを十分に向上させることは困難であった。また、ガラス棒や白金線の引き延ばしは、熟練した手作業により行われる。そのため、良好な電子線バイプリズムを工業的に生産することは困難であった。
【0004】
ところで、収束イオンビームを用いた化学蒸着法(FIB−CVD)により、直径がnmオーダの空中配線を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このFIB−CVD法によれば、電子線バイプリズムのフィラメントとして使用可能な細い空中配線を形成することが可能となると考えられる。
【0005】
しかしながら、このようなFIB−CVD法によっても、屈曲のない空中配線(フィラメント)を形成することは困難であった。フィラメントが屈曲している場合、外部の振動に伴ってフィラメントが振動することにより、電子線の経路に変化が生じ、電子線ホログラフィにおいて観察される干渉縞のコントラストが低下するおそれがある。また、電子線バイプリズムのほか、直径がnmオーダの緊張した空中配線を形成することも求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−69325号公報
【特許文献2】特開2002−317272号公報
【特許文献3】特開2001−107252号公報
【特許文献4】WO2004/077536号国際公開パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、緊張した微細な空中配線を形成する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
空中配線の形成方法であって、原料ガスを供給した領域に収束した第1の荷電粒子ビームを照射することにより空中配線を形成し、前記第1の荷電粒子ビームの照射により形成された空中配線に、第2の荷電粒子ビームを照射することにより前記空中配線を緊張させる空中配線の形成方法。この方法によれば、空中配線は収束した第1の荷電粒子ビームの照射位置に形成されるので、空中配線の微細化を図ることができるとともに、形成された空中配線が第2の荷電粒子ビームの照射により緊張する。そのため、緊張した微細な空中配線を形成することがより容易となる。
【0010】
[適用例2]
適用例1記載の空中配線の形成方法であって、前記空中配線の形成領域を収束した前記第2の荷電粒子ビームで走査することにより前記空中配線を緊張させる空中配線の形成方法。空中配線の形成領域を走査することにより、第2の荷電粒子ビームの平均照射量を低減することができるので、空中配線の緊張状態をより容易に制御することができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または2記載の空中配線の形成方法であって、前記第2の荷電粒子ビームは、イオンビームである空中配線の形成方法。荷電粒子ビームとしてイオンビームを用いることにより、空中配線に十分なエネルギを与えることができるので、より確実に空中配線を緊張させることが可能となる。
【0012】
[適用例4]
適用例1ないし3のいずれか記載の空中配線の形成方法であって、前記原料ガスは、炭素を含むガスである空中配線の形成方法。原料ガスとして炭素を含むガスを供給することにより、ダイヤモンド状炭素からなる空中配線が形成される。ダイヤモンド状炭素からなる空中配線には、導電性を持たせることが可能であるので、導電性を有し緊張した微細な配線を形成することがより容易となる。
【0013】
[適用例5]
適用例1ないし4のいずれか記載の空中配線の形成方法であって、前記第1の荷電粒子ビームは、イオンビームである空中配線の形成方法。一般に、ダイヤモンド状炭素の導電率は、ダイヤモンド状炭素に導入される不純物によって変化する。本適用例によれば、第1の荷電粒子ビームとしてイオンビームを用いることにより、ダイヤモンド状炭素に不純物を導入し、ダイヤモンド状炭素の導電率を制御することがより容易となる。
【0014】
[適用例6]
荷電粒子線を屈折させるための導電性のフィラメントを有する荷電粒子線プリズムの製造方法であって、間隙が設けられた導電性部材上に、前記間隙を渡すように導電性ワイヤを取り付ける工程と、前記間隙上において前記導電性ワイヤを切断することにより整列された導電性チップ対を形成する工程と、前記導電性チップ対に原料ガスを供給するとともに、前記原料ガスが供給された領域に収束した第1の荷電粒子ビームを照射して前記フィラメントを前記導電性チップ対間に形成する工程とを備える荷電粒子線プリズムの製造方法。荷電粒子線プリズムは、フィラメントを挟み込むように設けられた電極対と、フィラメントとの間に電圧を印加することにより作動する。これらの電極対は、通常、フィラメントに近接して設けられるので、フィラメントの電極対との間の位置関係を正確に設定することが求められる。また、フィラメントは、荷電粒子線の通過方向に対して垂直に配置されるのが望ましい。この適用例によれば、フィラメントが形成される導電性チップ対が、導電性ワイヤを切断することにより形成されるので、導電性チップ対を十分に高い精度で整列し、フィラメントの形成位置をより的確に設定することが可能となる。
【0015】
[適用例7]
適用例6記載の荷電粒子線プリズムの製造方法であって、さらに、前記フィラメントに第2の荷電粒子ビームを照射することにより前記フィラメントを緊張させる工程を備える荷電粒子線プリズムの製造方法。フィラメントに第2の荷電粒子ビームを照射してフィラメントを緊張させることにより、フィラメントの屈曲を抑制することができる。そのため、屈曲したフィラメントが振動することによる荷電粒子線の経路の変動を抑制することができる。
【0016】
[適用例8]
適用例6または7記載の荷電粒子線プリズムの製造方法であって、前記導電性チップ対を形成する工程は、電解エッチングにより前記導電性ワイヤを細線化する工程と、前記導電性ワイヤの細線化された部分を収束イオンビームにより切断する工程とを含む荷電粒子線プリズムの製造方法。導電性ワイヤを細線化して、細線化された部分を収束イオンビームにより切断することにより、導電性チップ対の形成に要する時間を低減するとともに、より的確な位置で導電性ワイヤを切断することが可能となる。
【0017】
[適用例9]
適用例6ないし8のいずれか記載の荷電粒子線プリズムの製造方法であって、前記原料ガスは、炭素を含むガスであり、前記フィラメントは、前記第1の荷電粒子ビームの照射により形成されるダイヤモンド状炭素からなる荷電粒子線プリズムの製造方法。ダイヤモンド状炭素からなる空中配線には、導電性を持たせることが容易であるので、緊張した微細なフィラメントを形成することがより容易となる。
【0018】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、空中配線の形成方法、荷電粒子線プリズムとその製造方法、その荷電粒子線プリズムあるいは荷電粒子線プリズムの製造方法を適用した荷電粒子線の干渉縞を用いた観察方法、それらの荷電粒子線プリズムおよび荷電粒子線プリズムを適用した電子線プリズムを有する電子顕微鏡および電子顕微鏡における干渉縞の形成方法等で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電子線ホログラフィ顕微鏡により電子線ホログラムが形成される様子を示す説明図。
【図2】電子線プリズムの形成工程を示す工程図。
【図3】電子線プリズムの形成工程を示す工程図。
【図4】タングステンワイヤの細線化処理方法を示す説明図。
【図5】FIB−CVD装置の構成を示す概略構成図。
【図6】タングステンチップ間に形成されたDLCワイヤの電子顕微鏡写真。
【図7】DLCワイヤの緊張化を行う様子を示す説明図。
【図8】DLCワイヤが緊張する様子を示す走査イオン顕微鏡写真。
【図9】DLCワイヤの構造が変化する様子を示す透過型電子顕微鏡写真。
【図10】従来と同径のフィラメントと本実施例のフィラメントとを用いて形成された電子線の干渉縞。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明する。
A.電子線ホログラフィ顕微鏡:
図1は、本発明の一実施例を適用する電子線ホログラフィ顕微鏡10により電子線ホログラムが形成される様子を示す説明図である。この電子線ホログラフィ顕微鏡10は、電子線照射装置100と、対物レンズ200と、電子線プリズム300とを備えている。なお、電子線ホログラフィ顕微鏡10は、像面に形成された像を観察面に拡大投影するための中間レンズおよび投影レンズと、観察面に拡大投影された像を取得する撮像装置とを有しているが、図1では、それらの図示を省略している。
【0021】
電子線照射装置100は、電子源110と、集束レンズ120とを有している。所定の加速電圧で加速され電子源110から射出された電子線は、集束レンズ120によってほぼ平行な電子線となる。ほぼ平行な電子線は、試料SPCが配置された試料面を通過して、対物レンズ200に入射する。対物レンズ200に入射した電子線は、一旦収束された後、電子線プリズム300に入射する。
【0022】
図1に示すように、試料SPCは、試料面のうちのほぼ半分の観察領域AOに配置される。試料SPCが配置された観察領域AOでは、入射した電子線が試料SPCと相互作用することにより、波動としての電子線(電子波)の位相や振幅が変化する。一方、試料面のうち試料SPCが配置されていない領域(真空領域)AVを通過した電子線は、試料SPCとの相互作用がないため、電子波の位相や振幅は変化しない。以下では、観察領域AOを通過した電子波を物体波Ψoとも呼び、真空領域AVを通過した電子波を参照波Ψrとも呼ぶ。
【0023】
電子線プリズム300は、導電性のフィラメント310と、フィラメント310を挟み込む一対の接地電極320とから構成されている。フィラメント310には、接地電極320に対して正の電圧が印加される。なお、図1では、接地電極320を平行平板として描いているが、接地電極320の形状はこの限りでない。一般に、接地電極320は、フィラメント310に面する側が平面となっていれば、種々の形状とすることが可能である。
【0024】
フィラメント310に正の電圧を印加することにより、負の電荷を持つ電子がフィラメント310に引き寄せられる。これにより、試料面を通過して電子線プリズム300に入射した電子線は、物体波Ψoと参照波Ψrとに分割され、分割された物体波Ψoと参照波Ψrとは互いに重畳されるように屈折し、物体波Ψoと参照波Ψrとが重畳される。
【0025】
このとき、電子源110から射出される電子線が可干渉であれば、像面において重畳された物体波Ψoと参照波Ψrとが干渉して、電子の干渉縞IFFが形成される。なお、可干渉な電子源としては、例えば、電界放出型の電子銃を用いることが可能である。このように形成される干渉縞IFFは、物体波Ψoと参照波Ψrとの位相差が変化することによりその形態が変化する。そのため、試料面において電子線が電場や磁場などと相互作用して物体波Ψoの位相が変化すると、干渉縞IFFに歪みが生じる。そこで、干渉縞の歪みを解析することにより、物体波Ψoの位相が再生され、位相差を生じさせる電場や磁場等の状態を可視化することが可能となる。なお、試料SPCにより電子線が遮られ、物体波Ψoの振幅が小さくなった場合には、試料の像ISPが像面に形成される。
【0026】
干渉縞の歪みを解析して物体波Ψoの位相を再生する処理は、像面に形成された干渉縞IFFを観察面に拡大投影した干渉縞に対して行われる。具体的には、像面に形成された干渉縞IFFは、中間レンズと投影レンズ(いずれも図示しない)とによって観察面に拡大投影される。観察面に拡大投影された干渉縞は、観察面に設けられた電荷結合素子(CCD)等の撮像装置(図示しない)により取得される。そして、撮像装置により取得された干渉縞をコンピュータや光学装置等を用いて処理することにより、物体波Ψoの位相を再生することができる。なお、像面に形成された干渉縞IFFは、中間レンズおよび投影レンズにより観察面に拡大投影される。そのため、これらの電子線レンズ群は、干渉縞を拡大する電子線光学系とも言うことができる。
【0027】
B.電子線プリズムの形成:
図2および図3は、電子線プリズム300(図1)を構成するフィラメント310の形成工程を示す工程図である。本実施例の電子線プリズム300の形成工程では、まず、フィラメント310を形成するためのホルダ510が準備される(図2(a))。ホルダ510は、円環板状の枠部512と、枠部512から内側に延びるフィラメント保持部514とを有する板状の部材である。ホルダ510は、銅やステンレス等、種々の金属材料で形成することが可能である。但し、ホルダ510の形状や材質は、必ずしもこの限りでない。一般的に、電子線の経路となる間隙を有し、導電性を有している部材であれば、ホルダの形状や材質を種々変更することも可能である。なお、電子線プリズム300の接地電極320は、枠部512に設けられた略半円形の穴516に挿入される。接地電極320の取付方法については、本発明と直接の関連がないため、その説明を省略する。
【0028】
次いで、図2(b)に示すように、フィラメント保持部514の間の空隙を渡すように、タングステンワイヤ520がホルダ510上に取り付けられる。タングステンワイヤ520とホルダ510とは、例えば、導電性ペーストや接着剤により取り付けられる。後述するように、タングステンワイヤ520は細線化される。そのため、タングステンワイヤ520としては、直径が100μm以下のワイヤを用いるのが好ましい。なお、ホルダ510上に取り付けられる導電性ワイヤとしては、導電性を有していれば、タングステンワイヤの他、種々の材質で形成されたワイヤを用いることが可能である。但し、電子線による損傷の影響がより小さい点と、後述する細線化が容易である点とで、タンタル(Ta)やモリブデン(Mo)等の高融点金属を用いるのがより好ましい。
【0029】
ホルダ510に取り付けられたタングステンワイヤ520は、図2(c)に示すように細線化処理が施される。細線化処理は、例えば、タングステンワイヤ520の中央部を電解エッチングすることによって行うことが可能である。
【0030】
図4は、電解エッチングによるタングステンワイヤ520の細線化処理の方法を示す説明図である。電解エッチングを行うためのエッチング装置600は、電極610と、電流制限装置620と、電源630とを有している。電極610は、棒状部612と、ドーナツ状の円環部614とを有している。円環部614には、タングステンワイヤ520を通すための空隙616が設けられている。電流制限装置620は、液体槽622と、2本の電極624,626とを有しており、2本の電極624,626のそれぞれの一部が浸るように、イオン導電性液体628(例えば、塩化ナトリウム(NaCl)水溶液)が液体槽622に入れられる。
【0031】
電解エッチングによる細線化処理では、まず、タングステンワイヤ520が取り付けられたホルダ510を固定し、タングステンワイヤ520を空隙616から円環部614に挿入して、円環部614がタングステンワイヤ520の中央部を取り囲むように電極610を配置する。次いで、電解液640(例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液)を円環部614に滴下し、タングステンワイヤ520の中央部と、円環部614とが、電解液640に浸されるように電極610を固定する。その後、ホルダ510と電極610とを電流制限装置620を介して電源630に接続して、ホルダ510と電極610との間に電圧を印加する。その結果、タングステンワイヤ520の中央部のみがエッチングされる。なお、図4の例では、イオン導電性液体628に2本の電極624,626を浸して電解液640を流れる電流を制限しているが、種々の方法で電解液640を流れる電流を制限することが可能である。例えば、電流制限装置620に換えて十分に抵抗値が大きい抵抗を挿入するものとしても良く、電流制限のための電子回路を挿入するものとしてもよい。
【0032】
タングステンワイヤ520の電解エッチングにより、図2(c)に示すように、タングステンワイヤ520の中央部が細くなり、中央に細線部522aを有するタングステンワイヤ520aが形成される。なお、細線部522aはより細い方が好ましく、電解エッチングは、例えば、細線部522aの直径が10μm以下となるまで行われる。
【0033】
次に、細線化されたタングステンワイヤ520aは、中央の細線部522aにおいて切断され、図3(a)のように、2つのタングステンチップ524,526が形成される。タングステンチップ524,526の形成は、例えば、収束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を細線部522a(図2(c))に照射することにより行うことができる。なお、タングステンチップ524,526の形成には、必ずしもFIBを用いる必要がない。例えば、電解エッチング処理をより長時間にわたって行うことにより、タングステンチップ524,526を形成することも可能である。但し、タングステンワイヤ520aの切断部位およびタングステンチップ524,526の先端形状をより適切に設定することが可能である点で、FIBを用いてタングステンチップ524,526を形成するのがより好ましい。
【0034】
タングステンチップ524,526が形成された後、図3(b)に示すように、2つのタングステンチップ524,526間にダイヤモンド状炭素(DLC:Diamond Like Carbon)のフィラメント530(以下、「DLCワイヤ530」とも呼ぶ)が形成される。DLCワイヤ530の形成は、FIBを用いた化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)により行うことができる。
【0035】
図5は、DLCワイヤ530の形成を行うためのFIB−CVD装置700の構成を示す概略構成図である。FIB−CVD装置700は、2つのガスノズル710と、FIB装置720と、ガスノズル710およびFIB装置720を制御する制御装置730とを備えている。タングステンチップ524,526が形成されたホルダ510は、FIB−CVD装置700のステージ740上に配置される。このステージ740を移動させることにより、ホルダ510の中心部は、FIB装置720の略直下に配置される。
【0036】
ガスノズル710からは、炭素源としての原料ガスSGが、タングステンチップ524,526に向かって放出される。本実施例では、原料ガスSGが2つのガスノズル710から対向して供給されることにより、タングステンチップ524,526近傍の原料ガスSGの圧力を高くすることが可能となっている。但し、ガスノズル710は、タングステンチップ524,526に原料ガスSGが供給可能であればよく、ガスノズル710の数は1以上の任意の数とすることができる。
【0037】
原料ガスSGとしては、フェナントレン(C1410)、タングステンヘキサカルボニル(W(CO)6)、フェロセン((C552Fe5)、トリメチルメチルシクロペンタジエニルプラチニウム((CH33(CH354)Pt)、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン([CH3(H)SiO]4)等の、炭素を含む種々のガスを用いることが可能である。
【0038】
FIB装置720からは、タングステンチップ524,526近傍にGa+イオンビームIBが照射される。Ga+イオンビームIBは、制御装置730がFIB装置720に設けられたイオンビームの偏向装置(図示しない)を制御することにより、一方のタングステンチップ524の先端から他方のタングステンチップ526の先端に向かって走査される。このとき、走査が開始されるタングステンチップ524の表面には、原料ガスSGの分子(ガス分子)が吸着している。吸着したガス分子は、イオンビームIBが照射されることにより分解し、分解により生成された炭素がタングステンチップ524上に堆積する。そして、堆積した炭素上においてもガス分子が吸着・分解され、炭素が順次堆積していくことにより、DLCワイヤ530が形成される。
【0039】
なお、本実施例では、DLCワイヤ530の形成をGa+イオンビームにより行っているが、DLCワイヤ530の形成は、種々の荷電粒子ビームを原料ガスの供給領域に照射することにより行うことが可能である。例えば、Si+やAu+等の金属イオンビーム、He+、Ne+、Ar+、Kr+等の不活性ガスイオンビーム、あるいは、電子線を照射することによりDLCワイヤを形成することも可能である。DLCワイヤ530は、ビームの照射部分から原料ガスSGを分解するための二次電子が放出されることにより形成されると考えられる。また、種々の粒子ビームの照射部分からは、通常、二次電子が放出される。そのため、DLCワイヤ530の形成は、収束させることが可能な任意の荷電粒子ビームを用いて行うことができる。但し、形成されたDLCワイヤの導電性を制御可能である点で、イオンビームを用いるのがより好ましい。
【0040】
図6は、タングステンチップ間に形成されたDLCワイヤの電子顕微鏡写真である。図6の電子顕微鏡写真は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて撮影した。図6(a)は、タングステンチップ間に形成されたDLCワイヤ全体の様子を示し、図6(b)は、DLCワイヤの中心部を拡大した様子を示している。
【0041】
DLCワイヤは、原料ガスとしてのフェナントレンの雰囲気中に、30keVのGa+イオンビームを照射することにより形成した。DLCワイヤの形成にあたっては、フェナントレンを1×10-4Paの圧力でFIB−CVD装置700のチャンバ内に供給した。また、Ga+イオンビームをスポット径5nmに収束させ、イオンビームの照射量(イオン電流)を1pAとした。DLCワイヤの形成に要する時間は、約90秒であった。
【0042】
図6(a)に示すように、DLCワイヤは、一方のタングステンチップの先端から、他方のタングステンチップの先端にわたって形成されている。このDLCワイヤの外径は、図6(b)の電子顕微鏡写真から判るように、約80nmとなった。また、形成されたDLCワイヤには、凹凸等が見られなかった。このように、FIB−CVDを用いる本実施例によれば、表面に凹凸がなく、直径が極めて小さいフィラメントを、短時間で形成することができる。
【0043】
また、本実施例では、タングステンワイヤ520を切断することによって形成されたタングステンチップ524,526を形成している。そのため、2つのタングステンチップ524,526は良好に整列された状態で形成される。そして、このように整列されたタングステンチップ524,526間にDLCワイヤ530を形成することにより、DLCワイヤ530の方向をより的確に設定することができる。上述のように、本実施例では、枠部512に設けられた略半円形の穴516(図2(a)参照)に電子線プリズム300の接地電極320(図1)が挿入される。従って、図2(b)に示すように、タングステンワイヤ520を2つのフィラメント保持部514に合わせて配置することにより、DLCワイヤ530(すなわち、図1のフィラメント310)と接地電極320との位置関係をより的確に設定することが可能となる。
【0044】
一般に、FIB−CVDにより形成されたDLCワイヤは、図3(b)に示すように、屈曲している。屈曲したDLCワイヤを電子線プリズム300(図1)のフィラメント310に用いると、フィラメント310は外部からの振動により振動する。フィラメント310が振動すると、振動に伴いフィラメント310付近での電子線の経路が変動し、干渉縞のコントラストが低下する。そのため、本実施例では、DLCワイヤ530の形成の後、図3(c)に示すように、DLCワイヤ530を緊張化して、タングステンチップ524,526間に直線的に張られたDLCワイヤ532を形成している。但し、DLCワイヤがほぼ直線的に形成されている場合には、緊張化を省略することも可能である。
【0045】
C.DLCワイヤの緊張化:
図7は、DLCワイヤの緊張化を行う様子を示す説明図である。DLCワイヤの緊張化は、FIB−CVDにより形成されたDLCワイヤ530に、Ga+イオンビームIBを照射することにより行われる。本実施例では、Ga+イオンビームIBの照射を、図5に示すFIB−CVD装置700を用いて行った。Ga+イオンビームIBの照射は、FIB−CVD装置700とは別の装置により行うことも可能である。但し、FIB−CVDにより形成されたDLCワイヤ530をそのまま緊張化することが可能である点で、FIB−CVD装置700を用いて緊張化するのがより好ましい。
【0046】
図7の破線で示すように、DLCワイヤ530の緊張化を行う場合、DLCワイヤ530を含む広い範囲がGa+イオンビームIBにより走査される。このようにGa+イオンビームIBを走査することにより、DLCワイヤ530に照射されるイオンビームIBの照射量すなわち平均イオン電流を低減することが可能となる。但し、イオンビームIBの走査を行うことなく、DLCワイヤ530全体にイオンビームを照射することも可能である。例えば、イオンビームの収束点をDLCワイヤ530から外す(デフォーカスする)ことにより、イオンビームを拡げるものとしてもよい。但し、イオンビームIBを走査することにより、平均イオン電流を低減することができ、DLCワイヤ530の緊張化の状態をより容易に制御することができる点で、イオンビームIBを走査するのがより好ましい。また、イオンビームIBを走査することにより、イオンビームの照射により発生する二次電子量を測定してDLCワイヤの形状を観察すること、すなわち、走査イオン顕微鏡(SIM:Scanning Ion Microscope)像を取得することが可能となり、DLCワイヤの緊張状況が確認できる点で、イオンビームを走査するのがより好ましい。
【0047】
なお、本実施例では、DLCワイヤ530の緊張化をGa+イオンビームIBにより行っているが、DLCワイヤ530の緊張化は、種々の荷電粒子ビームをDLCワイヤ530に照射することにより行うことが可能である。例えば、例えば、Si+やAu+等の金属イオンビーム、He+、Ne+、Ar+、Kr+等の不活性ガスイオンビーム、あるいは、電子線を照射することによりDLCワイヤ530を緊張化することも可能である。但し、電子線を照射する場合、十分なエネルギをDLCワイヤ530に与えるため、加速電圧を高く(例えば、5kV〜10kV)とするのが好ましい。
【0048】
図8は、Ga+イオンビームを照射することにより、DLCワイヤが緊張する様子を示すSIM写真である。図8のSIM写真は、20μm間隔の銅メッシュ間に形成したDLCワイヤを示している。図8(a)は、DLCワイヤの形成直後の様子を示しており、図8(b)および図8(c)は、時間の経過に伴うDLCワイヤの形状の変化を示している。図8の例では、イオン電流を200pAとして、銅メッシュの1コマの走査イオン顕微鏡像を取得している。図8(a)〜図8(c)に示すように、DLCワイヤにGa+イオンビームを照射することにより、屈曲しているDLCワイヤが緊張し、直線状のフィラメントになった。
【0049】
図9は、イオンビームを照射することにより、DLCワイヤの構造が変化する様子を示す透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)写真である。図9(a)は、緊張化処理を行わず、Ga+イオンビームによるFIB−CVDにより形成したままのDLCワイヤを示している。図9(b)および図9(c)は、図9(a)と同様に形成されたDLCワイヤに緊張化処理を施したDLCワイヤを示している。なお、図9(b)および図9(c)に示すDLCワイヤの緊張化処理は、照射するGa+イオンのイオン電流をそれぞれ1.3nAおよび5.2nAとし、緊張化処理の時間をそれぞれ5秒および3秒として行った。
【0050】
図9(a)に示すように、緊張化処理を行っていない状態では、直径が130nmのDLCワイヤの全体が略均一な構造となっている。図9(a)のDLCワイヤでは、FIB−CVDのイオンビームとしてGa+イオンビームを用いているため、DLCワイヤには、ガリウムと炭素とが含まれる。このDLCワイヤでは、略均一で炭素の結晶構造が現れていないことから、DLCワイヤ内部における原子の結合状態は、ガリウムと炭素との混合物が主体となっていると推定される。
【0051】
一方、図9(b)および図9(c)に示すように、緊張化処理を施すことにより、DLCワイヤの径が細くなるとともに、DLCワイヤの内部に非周期的な構造が現れる。このように、非周期的な構造が観察されることから、DLCワイヤの緊張化は、DLCワイヤに含まれるガリウムが流動あるいは蒸発し、DLCワイヤ内部において、炭素どうしが結合したC−C結合が増加していると推定される。このように、DLCワイヤの内部において、Ga−C結合よりも原子間距離が短いC−C結合が増加することにより、DLCワイヤはその径が細くなるとともに、長さが短くなるものと推定される。
【0052】
なお、図9(b)および図9(c)に示すように、Ga+イオンビームのイオン電流が1.3nAおよび5.2nAのいずれの条件においてもDLCワイヤの細径化が生じていることから、いずれの条件によってもDLCワイヤの緊張化を行うことができることが判った。
【0053】
D.DLCワイヤを用いた電子線プリズムの評価:
図10は、電子線プリズム300(図1)のフィラメント310として、従来と同径のフィラメントと本実施例のDLCワイヤとを用いて形成された電子線の干渉縞を示す説明図である。図10(a)は、比較例として従来と同径のフィラメント(フィラメント径400nm)を用いて形成された干渉縞を示し、図10(b)は、図6に示す本実施例のDLCワイヤ(フィラメント径80nm)を用いて形成された干渉縞を示している。いずれも、干渉縞を形成するときの電子線照射条件や、フィラメントに印加する電圧は同じである。各図の上段は、干渉縞IFF(図1)の拡大像である。各図の下段は、像面における電子線強度の分布を示すグラフであり、横軸は像面上の位置を表し、縦軸はそれぞれの位置における電子線強度を表している。
【0054】
図10(a)および図10(b)に示すように、DLCワイヤを用いることにより、従来と同径のフィラメントを用いた場合よりも干渉縞のコントラストが高くなった。また、各図において矢印で示す電子線強度が変動する範囲、すなわち、干渉領域は、従来と同径のフィラメントを用いた場合の約200nmから240nmまで広がった。このように、電子線プリズム300のフィラメント310としてDLCワイヤを用いることにより、干渉縞のコントラストが高くなるとともに、干渉範囲をより広くすることが可能となった。
【0055】
図10(b)に示すように、図6に示す緊張化処理を施したDLCワイヤを用いることにより良好な干渉縞を得ることが可能である。
【0056】
E.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
E1.変形例1:
上記実施例では、本発明を電子線バイプリズムに適用しているが、本発明は電子線バイプリズムの他、陽子線(すなわち、水素イオンビーム)やその他のイオンビームなどの種々の荷電粒子線を屈折させる荷電粒子線プリズムに適用することが可能である。
【0058】
E2.変形例2:
上記実施例では、電子線バイプリズムのフィラメントとして用いるため、DLCワイヤを形成しているが、本発明の緊張化方法は、DLCワイヤのみならず、FIB−CVD法により形成される種々のワイヤに適用することが可能である。例えば、FIB−CVD法により形成された、イオンビームを照射することにより、アモルファスシリコン(a−Si)ワイヤを緊張化することも可能である。なお、a−Siワイヤは、原料ガスとして、テトラエトキシシラン(TEOS:Tetraethoxysilane)等のシリコンを含むガスを用いることにより形成することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…電子線ホログラフィ顕微鏡
100…電子線照射装置
110…電子源
120…集束レンズ
200…対物レンズ
300…電子線プリズム
310…フィラメント
320…接地電極
510…ホルダ
512…枠部
514…フィラメント保持部
516…穴
520,520a…タングステンワイヤ
522a…細線部
524,526…タングステンチップ
530,532…DLCワイヤ
600…エッチング装置
610…電極
612…棒状部
614…円環部
616…空隙
620…電流制限装置
622…液体槽
624,626…電極
628…イオン伝導性液体
630…電源
640…電解液
700…CVD装置
710…ガスノズル
720…FIB装置
730…制御装置
740…ステージ
IB…イオンビーム
SG…原料ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中配線の形成方法であって、
原料ガスを供給した領域に収束した第1の荷電粒子ビームを照射することにより空中配線を形成し、
前記第1の荷電粒子ビームの照射により形成された空中配線に、第2の荷電粒子ビームを照射することにより前記空中配線を緊張させる
空中配線の形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の空中配線の形成方法であって、
前記空中配線の形成領域を収束した前記第2の荷電粒子ビームで走査することにより前記空中配線を緊張させる
空中配線の形成方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の空中配線の形成方法であって、
前記第2の荷電粒子ビームは、イオンビームである
空中配線の形成方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか記載の空中配線の形成方法であって、
前記原料ガスは、炭素を含むガスである
空中配線の形成方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか記載の空中配線の形成方法であって、
前記第1の荷電粒子ビームは、イオンビームである
空中配線の形成方法。
【請求項6】
荷電粒子線を屈折させるための導電性のフィラメントを有する荷電粒子線プリズムの製造方法であって、
間隙が設けられた導電性部材上に、前記間隙を渡すように導電性ワイヤを取り付ける工程と、
前記導電性ワイヤを切断することにより整列された導電性チップ対を形成する工程と、
前記導電性チップ対に原料ガスを供給するとともに、前記原料ガスが供給された領域に収束した第1の荷電粒子ビームを照射して前記フィラメントを前記導電性チップ対間に形成する工程と
を備える荷電粒子線プリズムの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の荷電粒子線プリズムの製造方法であって、さらに、
前記フィラメントに第2の荷電粒子ビームを照射することにより前記フィラメントを緊張させる工程を備える
荷電粒子線プリズムの製造方法。
【請求項8】
請求項6または7記載の荷電粒子線プリズムの製造方法であって、
前記導電性チップ対を形成する工程は、
電解エッチングにより前記導電性ワイヤを細線化する工程と、
前記導電性ワイヤの細線化された部分を収束イオンビームにより切断する工程と
を含む荷電粒子線プリズムの製造方法。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか記載の荷電粒子線プリズムの製造方法であって、
前記原料ガスは、炭素を含むガスであり、
前記フィラメントは、前記第1の荷電粒子ビームの照射により形成されるダイヤモンド状炭素からなる
荷電粒子線プリズムの製造方法。
【請求項10】
荷電粒子線を屈折させるための導電性のフィラメントを有する荷電粒子線プリズムであって、
前記フィラメントは、間隙が設けられた導電性部材上に前記間隙を渡すように取り付けられた導電性ワイヤを前記間隙上において切断することにより形成される整列された導電性チップ対に原料ガスを供給するとともに、前記原料ガスが供給された領域に収束した第1の荷電粒子ビームを照射することにより前記導電性チップ対間に形成される
荷電粒子線プリズム。
【請求項11】
荷電粒子線の干渉縞を用いた観察方法であって、
入射した荷電粒子線を複数に分割するとともに、分割された前記複数の荷電粒子線を重畳する荷電粒子線プリズムを準備し、
可干渉な荷電粒子線を射出し、
前記荷電粒子線プリズムに前記可干渉な荷電粒子線を入射させることにより干渉縞を形成する
観察方法であり、
前記荷電粒子線プリズムを準備する工程は、
間隙が設けられた導電性部材上に前記間隙を渡すように導電性ワイヤを取り付ける工程と、
前記間隙上において前記導電性ワイヤを切断することにより整列された導電性チップ対を形成する工程と、
前記導電性チップ対に原料ガスを供給するとともに、前記原料ガスが供給された領域に収束した荷電粒子ビームを照射して前記荷電粒子線を屈折させるための導電性のフィラメントを前記導電性チップ対間に形成する工程とを含む
観察方法。
【請求項12】
電子顕微鏡であって、
可干渉な電子線を射出する電子線射出部と、
前記電子線射出部から射出された前記可干渉な電子線を複数に分割するとともに、分割された前記複数の電子線を重畳する電子線プリズムと、
前記複数の電子線が重畳されることにより形成される干渉縞を拡大する電子線光学系と
を備え、
前記電子線プリズムは、
間隙が設けられた導電性部材上に前記間隙を渡すように取り付けられた導電性ワイヤを前記間隙上において切断することにより形成される整列された導電性チップ対と、
前記導電性チップ対に原料ガスを供給するとともに、前記原料ガスが供給された領域に収束した荷電粒子ビームを照射することにより前記導電性チップ間に形成された前記電子線を屈折させるための導電性のフィラメントと
を有する
電子顕微鏡。
【請求項13】
電子顕微鏡において電子線の干渉縞を形成する干渉縞の形成方法であって、
入射した電子線を複数に分割するとともに、分割された前記複数の電子線を重畳する電子線プリズムを準備し、
前記電子顕微鏡の電子線源から可干渉な電子線を射出し、
前記電子線プリズムに前記可干渉な電子線を入射させることにより干渉縞を形成する
干渉縞の形成方法であり、
前記電子線プリズムを準備する工程は、
間隙が設けられた導電性部材上に前記間隙を渡すように導電性ワイヤを取り付ける工程と、
前記間隙上において前記導電性ワイヤを切断することにより整列された導電性チップ対を形成する工程と、
前記導電性チップ対に原料ガスを供給するとともに、前記原料ガスが供給された領域に収束した荷電粒子ビームを照射して前記電子線を屈折させるための導電性のフィラメントを前記導電性チップ間に形成する工程とを含む
干渉縞の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−225533(P2010−225533A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73986(P2009−73986)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年11月7日 社団法人応用物理学会発行の「アプライド・フィジックス・エクスプレス 第1巻(2008年)第11号 オンライン版」に発表
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【出願人】(592216384)兵庫県 (258)
【Fターム(参考)】