説明

緊急避難誘導システム、緊急避難誘導方法、避難誘導装置、及びプログラム

【課題】来場者の混雑状況や災害における通行危険なエリアを検知し、避難ルートを分散させ、かつ、グループ来場者を考慮して避難ルートをユーザに提示する緊急避難誘導システム等を提供する。
【解決手段】避難誘導装置11は、災害検知センサ15から災害を受信すると、施設内のどのエリアで災害が発生したかを判定する。避難誘導装置11は、位置検知装置7から各端末3の位置を受信し、施設内の各エリアの混雑度を計算し、混雑エリアを判定する。避難誘導装置11は、端末3から避難の誘導要請を受信すると、混雑エリア、ユーザのグループ情報に基づいて、適切な避難ルートを決定する。避難誘導装置11は、誘導要請元の端末3と同一グループの端末3が近傍である場合、同一グループの端末3の避難ルートを誘導要請元の端末3と同じ避難ルートとする。避難誘導装置11は、決定した避難ルートを端末3に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設の来場者を非常口に誘導する緊急避難誘導システム等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デパートやショッピングモール等の屋内の施設において火事、地震のような災害が発生した際、来場者を効率的かつ安全に非常口に誘導する必要がある。
【0003】
特許文献1には、災害発生時に施設内にいる人の位置を検知し、災害の拡大方向も考慮して、非常口への最短ルートで誘導する方法が開示されている。しかしながら、災害発生時は来場者が一斉に避難するため、非常口が混雑し、たとえ来場者が最短ルートで避難したとしても時間がかかって逃げ遅れてしまうという可能性がある。
【0004】
特許文献2には、エリア毎の許容人数に関する情報をDB(データベース)として保持し、現在、そのエリアにいる人数とエリアの許容人数とを比較し、許容人数を超えている場合にはそのエリアを誘導ルートとして選択しないという方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3298940号
【特許文献2】特許第4504825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に示す方法では、来場者が親子、友達等のグループで施設に訪れている場合において、エリアの許容人数を超えているという理由で別々の誘導ルートをとるように指示された場合、来場者に心理的な不安を与え、よけいな混乱を招いてしまい、計画的な誘導ができなくなる可能性がある。また、同じグループの来場者が施設内で別行動をしていたりして離れた位置にいる場合、お互いに同じグループの来場者がどのようなルートで避難したのか、ちゃんと避難ができたのかを把握することができず、不安を与える可能性がある。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、来場者の混雑状況や災害における通行危険なエリアを検知し、避難ルートを分散させ、かつ、グループ来場者を考慮して避難ルートをユーザに提示する緊急避難誘導システム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために第1の発明は、端末と、施設内の災害を検知する災害検知センサと、前記端末の位置を検知する位置検知装置と、避難誘導装置から構成される緊急避難誘導システムであって、前記避難誘導装置は、前記災害検知センサから災害情報を受信し、災害が発生した災害エリアを判定する災害エリア判定手段と、前記位置検知装置から前記端末の位置を受信し、混雑度を計算し、混雑エリアを判定する混雑エリア判定手段と、前記端末から誘導要請を受信すると、前記端末の位置、前記災害エリア、及び前記混雑エリアに基づいて、前記端末を保持するユーザの非常口への避難ルートを決定する避難ルート決定手段と、予め記憶している前記端末のグループ情報を参照し、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在する場合、同一グループの前記端末の避難ルートを誘導要請元の前記端末の避難ルートと同じ避難ルートに設定するグループ避難ルート決定手段と、を具備することを特徴とする緊急避難誘導システムである。第1の発明によって、来場者の混雑状況や災害における通行危険なエリアを検知し、避難ルートを分散させ、かつ、グループ来場者を考慮して避難ルートをユーザに提示することができる。
【0009】
第1の発明における前記グループ避難ルート決定手段は、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在しない場合、誘導要請元の前記端末に、同一グループの前記端末の避難ルートに通知することが望ましい。これによって、やむを得ず同一グループの人を別の避難ルートで誘導する場合も、同一グループ内で相互に避難ルートを通知し合うことにより、来場者がパニックを起こしにくくなる。
【0010】
また、第1の発明における前記混雑エリア判定手段は、前記非常口の人数の許容値、及び前記非常口への通路の人数の許容値の少なくとも一つに基づいて、前記混雑度を計算することが望ましい。これによって、避難ルートを判定する為の適切な混雑度を計算することができる。
【0011】
第2の発明は、端末と、施設内の災害を検知する災害検知センサと、前記端末の位置を検知する位置検知装置と、避難誘導装置から構成される緊急避難誘導システムによって実行する緊急避難誘導方法であって、前記避難誘導装置が、前記災害検知センサから災害情報を受信し、災害が発生した災害エリアを判定する災害エリア判定ステップと、前記位置検知装置から前記端末の位置を受信し、混雑度を計算し、混雑エリアを判定する混雑エリア判定ステップと、前記端末から誘導要請を受信すると、前記端末の位置、前記災害エリア、及び前記混雑エリアに基づいて、前記端末を保持するユーザの非常口への避難ルートを決定する避難ルート決定ステップと、予め記憶している前記端末のグループ情報を参照し、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在する場合、同一グループの前記端末の避難ルートを誘導要請元の前記端末の避難ルートと同じ避難ルートに設定するグループ避難ルート決定ステップと、を実行することを特徴とする緊急避難誘導方法である。第2の発明によって、来場者の混雑状況や災害における通行危険なエリアを検知し、避難ルートを分散させ、かつ、グループ来場者を考慮して避難ルートをユーザに提示することができる。
【0012】
第3の発明は、災害を検知する災害検知センサ、及び端末の位置を検知する位置検知装置と接続される避難誘導装置であって、前記災害検知センサから災害情報を受信し、災害が発生した災害エリアを判定する災害エリア判定手段と、前記位置検知装置から前記端末の位置を受信し、混雑度を計算し、混雑エリアを判定する混雑エリア判定手段と、前記端末から誘導要請を受信すると、前記端末の位置、前記災害エリア、及び前記混雑エリアに基づいて、前記端末を保持するユーザの非常口への避難ルートを決定する避難ルート決定手段と、予め記憶している前記端末のグループ情報を参照し、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在する場合、同一グループの前記端末の避難ルートを誘導要請元の前記端末の避難ルートと同じ避難ルートに設定するグループ避難ルート決定手段と、を具備することを特徴とする避難誘導装置である。第3の発明の避難誘導装置によって、第1の発明の緊急避難誘導システムを構築することができる。
【0013】
第4の発明は、コンピュータを、災害を検知する災害検知センサ、及び端末の位置を検知する位置検知装置と接続され、前記災害検知センサから災害情報を受信し、災害が発生した災害エリアを判定する災害エリア判定手段と、前記位置検知装置から前記端末の位置を受信し、混雑度を計算し、混雑エリアを判定する混雑エリア判定手段と、前記端末から誘導要請を受信すると、前記端末の位置、前記災害エリア、及び前記混雑エリアに基づいて、前記端末を保持するユーザの非常口への避難ルートを決定する避難ルート決定手段と、予め記憶している前記端末のグループ情報を参照し、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在する場合、同一グループの前記端末の避難ルートを誘導要請元の前記端末の避難ルートと同じ避難ルートに設定するグループ避難ルート決定手段と、を具備する避難誘導装置として機能させるためのプログラムである。第4の発明のプログラムをコンピュータにインストールすることによって、第3の発明の避難誘導装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、来場者の混雑状況や災害における通行危険なエリアを検知し、避難ルートを分散させ、かつ、グループ来場者を考慮して避難ルートをユーザに提示する緊急避難誘導システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】緊急避難誘導システム1の概要図
【図2】端末3のハードウエア構成図
【図3】位置検知装置7、避難誘導装置11を実現するコンピュータのハードウエア構成図
【図4】位置検知装置7の電波強度DB9内の位置判定テーブル40の一例を示す図
【図5】避難誘導装置11のグループテーブル50の一例を示す図
【図6】避難誘導装置11の地図DB13内の許容値テーブル60の一例を示す図
【図7】緊急避難誘導システム1における緊急避難誘導処理の流れを示すフローチャート
【図8】ステップS106の避難ルートの決定処理の流れを示すフローチャート
【図9】施設内のエリアの一例を示す図
【図10】最短の避難ルートの一例を示す図
【図11】同グループの端末3−1、3−2の避難ルートの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。最初に、図1から図6を参照しながら、緊急避難誘導システム1の構成について説明する。
【0017】
図1は、緊急避難誘導システム1の概要図である。図1に示すように、緊急避難誘導システム1は、単一又は複数の端末3、単一又は複数の位置測位情報装置5、単一の位置検知装置7、単一の避難誘導装置11、単一又は複数の災害検知センサ15から構成される。
【0018】
位置測位情報装置5は、無線LAN(Local Area Network)等のアクセスポイントである。位置測位情報装置5は、無線通信を媒介するとともに、位置測位に必要なMAC(Media Access Control)アドレス等の情報を端末3に送信する。
【0019】
端末3は、ユーザが所有するスマートフォン等の情報処理端末である。端末3はユーザのユーザID(identification)と、親子や友達等のユーザIDをグループ情報として保持し、避難誘導装置11に送信する。端末3は、位置測位情報装置5の電波強度とMACアドレス等を取得し、取得した情報と端末3のユーザIDを位置検知装置7に送信する。施設内における災害発生時、端末3は避難誘導装置11に避難の誘導要請を送信し、現在位置から非常口までの適切な避難ルートを避難誘導装置11から受信する。
【0020】
位置検知装置7は、電波強度DB9を有し、端末3から受信する情報に基づいて、端末3の位置測位を行う。電波強度DB9には、施設内の各エリアにおける位置測位情報装置5の電波強度等を予め調査しておき、位置測位情報装置5のMACアドレスと対応付けて登録しておく。
【0021】
避難誘導装置11は、位置検知装置7から送信される端末3の位置測位に関する情報を受信し、端末3の位置情報を把握し、施設内における混雑度を計算する。避難誘導装置11は、計算した混雑度に加え、災害検知センサ15、端末3から受信する情報に基づいて、各ユーザの適切な避難ルートを決定し、各端末3に送信する。また、決定した避難ルートを保持する。
【0022】
また、避難誘導装置11は、地図DB13を有する。地図DB13は、施設内の地図、施設内を分割したエリアに関する情報、各エリアを通ることができる人数の許容値、各非常口の人数の許容値等を有する。
【0023】
災害検知センサ15は、施設内に1又は複数設置される火災検知センサ等であり、施設内で発生した災害を検知する。また、ユーザの避難時に崩れた荷物や危険箇所等を検知し、避難誘導装置11に情報を送信する。
【0024】
正常時、緊急避難誘導システム1では、施設内に存在する端末3が、位置測位情報装置5の電波強度及びMACアドレス並びにユーザIDを定期的に位置検知装置7に送信する。位置検知装置7は端末3から受信する情報に基づいて、端末3の位置を測位し、避難誘導装置11に送る。
【0025】
施設内で災害が発生した場合、緊急避難誘導システム1は、端末3を所有するユーザを適切な避難ルートで非常口に誘導する。具体的には、災害検知センサ15が災害を検知すると、避難誘導装置11に災害情報を送信する。端末3が避難の誘導要請を避難誘導装置11に送信すると、避難誘導装置11は、位置検知装置7から受信済の端末3の位置測位に関する情報に基づいて、施設内の各エリアの混雑度等を計算し、ユーザのグループ情報も考慮して適切な避難ルートを決定し、端末3に送信する。端末3は、ユーザに対して避難ルートを提示する。
【0026】
図2は、端末3のハードウエア構成図である。尚、図2のハードウエア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。端末3は、制御部21、記憶部22、入力部23、表示部24、通信部25等が、バス26を介して接続される。
【0027】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。CPUは、記憶部22、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス26を介して接続された各装置を駆動制御し、端末3が行う後述する処理を実現する。ROMは、不揮発性メモリであり、プログラムやデータ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部22、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部21が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0028】
記憶部22は、フラッシュメモリ等であり、制御部21が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ等が格納される。これらの各プログラムコードは、制御部21のCPUにより必要に応じて読み出されてRAMに移され、各種の手段として実行される。
【0029】
入力部23は、データの入力を行い、例えば、タッチパネル、キー等の入力装置を有する。入力部23を介して、端末3に対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。表示部24は、液晶パネル等のディスプレイ装置と連携して端末3のビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。尚、入力部23及び表示部24は、タッチパネル付ディスプレイのように、一体であっても良い。
【0030】
通信部25は、位置測位情報装置5(無線LAN等)のネットワーク(図示しない)等との間の通信を媒介する通信インタフェースであり、位置測位情報装置5、位置検知装置7等と通信を行う。バス26は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0031】
図3は、位置検知装置7、避難誘導装置11を実現するコンピュータのハードウエア構成図である。尚、図3のハードウエア構成は一例であり、用途、目的に応じて様々な構成を採ることが可能である。コンピュータは、制御部31、記憶部32、入力部33、表示部34、通信部35等が、バス36を介して接続される。
【0032】
制御部31は、CPU、ROM、RAM等で構成される。CPUは、記憶部32、ROM、記録媒体等に格納されるプログラムをRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス36を介して接続された各装置を駆動制御し、コンピュータが行う後述する処理を実現する。ROMは、不揮発性メモリであり、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。RAMは、揮発性メモリであり、記憶部32、ROM、記録媒体等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、制御部31が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0033】
記憶部32は、HDD(ハードディスクドライブ)、フラッシュメモリ等であり、制御部31が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、後述する処理をコンピュータに実行させるためのアプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、制御部31により必要に応じて読み出されてRAMに移され、CPUに読み出されて各種の手段として実行される。
【0034】
入力部33は、データの入力を行い、例えば、タッチパネル、キー、キーボード等の入力装置を有する。入力部33を介して、コンピュータに対して、操作指示、動作指示、データ入力等を行うことができる。表示部34は、液晶パネル等のディスプレイ装置と連携してコンピュータのビデオ機能を実現するための論理回路等(ビデオアダプタ等)を有する。
【0035】
通信部35は、コンピュータとネットワーク間の通信を媒介する通信インタフェースであり、ネットワークを介して、他のコンピュータ間と通信を行う。ネットワークは、有線、無線を問わない。バス36は、各装置間の制御信号、データ信号等の授受を媒介する経路である。
【0036】
図4は、位置検知装置7の電波強度DB9内の位置判定テーブル40の一例を示す図である。位置判定テーブル40は、位置検知装置7が端末3を位置測位するための情報を保持するものであり、エリア41、MACアドレス43、電波強度45等を有する。
【0037】
エリア41は、施設内を分割したエリアを表すIDである。MACアドレス43は、エリア41で端末3が受信する位置測位情報装置5(無線LAN等)のMACアドレスである。電波強度45は、エリア41で端末3がMACアドレス43が設定された位置測位情報装置5の電波強度である。
【0038】
端末3は、位置測位情報装置5のMACアドレスと電波強度を位置検知装置7に送信する。位置検知装置7は、位置判定テーブル40を参照し、端末3から受信したMACアドレス、電波強度がどのエリア41に該当するかを判定することにより、端末3の位置測位を行う。
【0039】
図4に示す例では、2台の位置測位情報装置5が施設内に配置されている。つまり、MACアドレス43が「0A:BB:CC:DD:11:22」の位置測位情報装置5と、MACアドレス43が「0B:EE:FF:GG:33:44」の位置測位情報装置5の2台である。
【0040】
図5は、避難誘導装置11が有するグループテーブル50の一例を示す図である。グループテーブル50は、施設に来場している親子、友達等のグループに関する情報であり、グループID51、ユーザID53を有する。
【0041】
グループID51は、グループを一意に示すIDである。ユーザID52は、グループに所属するユーザを示すIDである。避難誘導装置11は、端末3からグループに関する情報を受信し、グループテーブル50に登録する。
【0042】
図6は、避難誘導装置11の地図DB13内の許容値テーブル60の一例を示す図である。許容値テーブル60は、通路の大きさや歩きやすさなどによって、各非常口に誘導できる人数の許容値を保持するものであり、非常口ID61、許容値63等を有する。
【0043】
非常口ID61は、施設内の非常口を一意に表すIDである。許容値63は、非常口を通ることができる人数の許容値である。地図DB13は、非常口毎の人数の許容値だけではなく、非常口までの通路についても許容値を設定するようにしてもよい。また、地図DB13は、施設内の各エリアの人数の許容値を有する。
【0044】
次に、図7から図11を参照しながら、本発明の緊急避難誘導システム1における緊急避難誘導の処理の流れについて詳細に説明する。
【0045】
図7は、緊急避難誘導システム1における緊急避難誘導処理の流れを示すフローチャートである。施設内は、図9に示すようにエリアA〜エリアGのような複数のエリアに分割されている。災害検知センサ15は、例えば、エリアごとに1台ずつ配置する。
【0046】
避難誘導装置11は、災害検知センサ15から災害を受信すると(ステップS101)、災害検知センサ15のIDから施設内のどのエリアで災害が発生したかを判定する(ステップS102)。
【0047】
端末3は、位置測位情報装置5のMACアドレス及び電波強度並びにユーザIDを定期的に位置検知装置7に送信している。位置検知装置7は、端末3から受信したMACアドレス及び電波強度に基づいて、各端末3の位置測位を行い、各端末3の位置情報を定期的に避難誘導装置11に送信している。
【0048】
避難誘導装置11は、位置検知装置7から各端末3の位置を受信し(ステップS103)、施設内の各エリアの混雑度を計算し(ステップS104)、混雑エリアを判定する(ステップS105)。
【0049】
避難誘導装置11は、各端末3の位置情報から各エリア内にいるユーザの人数を把握し、地図DB13に保持する各エリアの人数の許容値と比較し、例えば、許容値以上に人数が存在するエリアを混雑エリアであると判定する。
【0050】
避難誘導装置11は、端末3から避難の誘導要請を受信すると、混雑エリア、ユーザのグループ情報に基づいて、適切な避難ルートを決定し(ステップS106)、決定した避難ルートを端末3に送信する(ステップS107)。
【0051】
図8は、ステップS106の避難ルートの決定処理の流れを示すフローチャートである。
【0052】
避難誘導装置11は、任意の端末3から避難の誘導要請を受信すると(ステップS201)、端末3の避難ルートが既に設定されているかどうかを判定する(ステップS202)。端末3と同グループの端末3の避難ルートが既に決定していて、端末3の避難ルートも同グループの端末3と同じ避難ルートに設定されている場合(ステップS202のYes)、端末3の避難ルートを「決定」とする(ステップS203)。
【0053】
端末3の避難ルートがまだ設定されていない場合(ステップS202のNo)、避難誘導装置11は地図DB13を参照し、端末3の現在位置から非常口までの最短の避難ルートを検索する(ステップS204)。
【0054】
図10は、最短の避難ルートの一例を示す図である。例えば、エリアBにおいて災害が発生した場合、避難誘導装置11は、エリアA、B、Cは非常口Aへ、エリアD、E、F、Gは非常口Bへの避難ルートを求める。例えば、エリアEに位置する端末3−1は、非常口Bへの避難ルートとする。
【0055】
避難誘導装置11は、混雑エリア判定に基づいて、最短ルートとして検索した避難ルートの非常口が混雑していないかを判定し(ステップS205)、混雑していない場合(ステップS205のYes)、避難ルートを「決定」とする(ステップS207)。混雑している場合(ステップS205のNo)、避難誘導装置11は別の避難ルートの検索を行う(ステップS206)。
【0056】
混雑しているかどうかの判定は、判定した混雑エリア、及び許容値テーブル60を参照して行う。例えば、図10の端末3−1はエリアEに位置するため、最短ルートとしては、非常口Bへの避難ルートとなる。しかし、既に非常口Bの許容値63を超える人が非常口Bへの避難ルートに誘導されている場合、端末3−1に対しては非常口Aへの避難ルートとする。
【0057】
端末3の避難ルート決定後、避難誘導装置11はグループテーブル50を参照し、誘導要請元の端末3と同グループの端末3がグループテーブル50に登録されているか否か判定する(ステップS208)。誘導要請元の端末3と同グループの端末3が登録されていない場合(ステップS208のNo)、避難誘導装置11は誘導要請元の端末3の避難ルートを設定し、ステップS106の処理を終了する。
【0058】
誘導要請元の端末3と同グループの端末3がグループテーブル50に登録されている場合(ステップS208のYes)、同グループの端末3の位置情報を位置検知装置7から取得し(ステップS209)、誘導要請元の端末3と同グループの端末3の位置が近傍かどうか判定する(ステップS210)。近傍判定は、例えば、半径何メートル以内等、予め決めた条件に従って行う。
【0059】
同グループの端末3が誘導要請元の端末3の近傍の場合(ステップS210のYes)、避難誘導装置11は、同グループのユーザが同じ非常口に避難できるようにするため、同グループの端末3の避難ルートを誘導要請元の端末3と同じ避難ルートに設定する(ステップS211)。
【0060】
例えば、図11において、端末3−1、3−2が同グループである場合、エリアEに位置する端末3−1の最短ルートは非常口Bへの避難ルートであり、エリアCに位置する端末3−2の最短ルートは非常口Aへの避難ルートである。このような状況において、避難誘導装置11は、端末3−1の避難ルート決定後、端末3−2が端末3−1の近傍であると判定した場合、端末3−2の避難ルートを端末3−1と同じ非常口Bへの避難ルートと決定する。
【0061】
同グループの端末3が誘導要請元の端末3と近傍ではないと判定した場合(ステップS210のNo)、避難誘導装置11は、同グループの端末3、及び誘導要請元の端末3の避難ルートを相互に通知する(ステップS212)。
【0062】
以上の通り、本実施の形態における緊急避難誘導システムでは、屋内における災害発生時、非常口が複数ある場合、人の混雑状況に基づいて特定の非常口、エリア等に人が集まりすぎないように避難ルートを分散させながら、親子、友達等の同一グループで施設に訪れた人をグループ単位で避難誘導することが可能となる。同一グループの人が同一の避難ルートをとることにより、来場者に安心感を与えることができる。また、混雑度により、やむを得ず同一グループの人を別の避難ルートで誘導する場合も、同一グループ内で相互に避難ルートを通知し合うことにより、来場者がパニックを起こしにくくなる。
【0063】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る緊急避難誘導システム等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………緊急避難誘導システム
3………端末
5………位置測位情報装置
7………位置検知装置
9………電波強度DB
11………避難誘導装置
13………地図DB
15………災害検知センサ
40………位置判定テーブル
50………グループテーブル
60………許容値テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末と、施設内の災害を検知する災害検知センサと、前記端末の位置を検知する位置検知装置と、避難誘導装置から構成される緊急避難誘導システムであって、
前記避難誘導装置は、
前記災害検知センサから災害情報を受信し、災害が発生した災害エリアを判定する災害エリア判定手段と、
前記位置検知装置から前記端末の位置を受信し、混雑度を計算し、混雑エリアを判定する混雑エリア判定手段と、
前記端末から誘導要請を受信すると、前記端末の位置、前記災害エリア、及び前記混雑エリアに基づいて、前記端末を保持するユーザの非常口への避難ルートを決定する避難ルート決定手段と、
予め記憶している前記端末のグループ情報を参照し、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在する場合、同一グループの前記端末の避難ルートを誘導要請元の前記端末の避難ルートと同じ避難ルートに設定するグループ避難ルート決定手段と、
を具備することを特徴とする緊急避難誘導システム。
【請求項2】
前記グループ避難ルート決定手段は、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在しない場合、誘導要請元の前記端末に、同一グループの前記端末の避難ルートに通知することを特徴とする請求項1に記載の緊急避難誘導システム。
【請求項3】
前記混雑エリア判定手段は、前記非常口の人数の許容値、及び前記非常口への通路の人数の許容値の少なくとも一つに基づいて、前記混雑度を計算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の緊急避難誘導システム。
【請求項4】
端末と、施設内の災害を検知する災害検知センサと、前記端末の位置を検知する位置検知装置と、避難誘導装置から構成される緊急避難誘導システムによって実行する緊急避難誘導方法であって、
前記避難誘導装置が、
前記災害検知センサから災害情報を受信し、災害が発生した災害エリアを判定する災害エリア判定ステップと、
前記位置検知装置から前記端末の位置を受信し、混雑度を計算し、混雑エリアを判定する混雑エリア判定ステップと、
前記端末から誘導要請を受信すると、前記端末の位置、前記災害エリア、及び前記混雑エリアに基づいて、前記端末を保持するユーザの非常口への避難ルートを決定する避難ルート決定ステップと、
予め記憶している前記端末のグループ情報を参照し、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在する場合、同一グループの前記端末の避難ルートを誘導要請元の前記端末の避難ルートと同じ避難ルートに設定するグループ避難ルート決定ステップと、
を実行することを特徴とする緊急避難誘導方法。
【請求項5】
災害を検知する災害検知センサ、及び端末の位置を検知する位置検知装置と接続される避難誘導装置であって、
前記災害検知センサから災害情報を受信し、災害が発生した災害エリアを判定する災害エリア判定手段と、
前記位置検知装置から前記端末の位置を受信し、混雑度を計算し、混雑エリアを判定する混雑エリア判定手段と、
前記端末から誘導要請を受信すると、前記端末の位置、前記災害エリア、及び前記混雑エリアに基づいて、前記端末を保持するユーザの非常口への避難ルートを決定する避難ルート決定手段と、
予め記憶している前記端末のグループ情報を参照し、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在する場合、同一グループの前記端末の避難ルートを誘導要請元の前記端末の避難ルートと同じ避難ルートに設定するグループ避難ルート決定手段と、
を具備することを特徴とする避難誘導装置。
【請求項6】
コンピュータを、
災害を検知する災害検知センサ、及び端末の位置を検知する位置検知装置と接続され、
前記災害検知センサから災害情報を受信し、災害が発生した災害エリアを判定する災害エリア判定手段と、
前記位置検知装置から前記端末の位置を受信し、混雑度を計算し、混雑エリアを判定する混雑エリア判定手段と、
前記端末から誘導要請を受信すると、前記端末の位置、前記災害エリア、及び前記混雑エリアに基づいて、前記端末を保持するユーザの非常口への避難ルートを決定する避難ルート決定手段と、
予め記憶している前記端末のグループ情報を参照し、誘導要請元の前記端末と同一グループの前記端末が近傍に存在する場合、同一グループの前記端末の避難ルートを誘導要請元の前記端末の避難ルートと同じ避難ルートに設定するグループ避難ルート決定手段と、
を具備する避難誘導装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−73300(P2013−73300A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210187(P2011−210187)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】