説明

緊締部材

【課題】緊締部材の取り外しを一層容易化させることにより、緊締部材の離脱作業の効率を高め得るように構成した緊締部材を提供する。
【解決手段】緊締部材1が、開口7が形成されたC字形状の内輪2と、該内輪2の両端から内輪2の外周側に沿って延びる各外輪3とを備えている。そして、この外輪3に、内輪2を含む平面から離間させた退避面部21を有させてなる。これにより、該緊締部材1の取り外し作業において、プラスドライバ等の工具を係合させ易くすることができると共に、緊締部材1を素手によって着脱し得るものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支軸や回転軸等の軸部材上に被嵌するギヤやコロ等の被嵌部材を固定させる緊締部材に係り、該軸部材に嵌め込むことで固定される緊締部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な止め輪の一態様として、図5に示すような、開口部20を有しつつ該開口部20からさらに2箇所の切り欠き16が形成されることで略々E字形状をなすEリング10(E形止め輪ともいう)が用いられてきた。該Eリング10は、支軸や回転軸等の軸部材に嵌合され、該軸部材上でギヤやコロ等の部材の位置を規制させる緊締部材として用いられる。ここで、上記した軸部材とは、例えば、図6に示す軸部材としての軸11のようなもので、Eリング10は、軸11における先端部近傍に形成された円周溝としての溝12に対して開口部20側から嵌め込まれる。そして、ギヤ13は、図7に示すように、Eリング10が軸11の先端部近傍に嵌め込まれた状態において、矢印Yの方向からEリング10に向って被嵌されることにより、軸11上にて固定される。
【0003】
また、Eリング10の詳細な取り付けは、上記した溝12にEリング10の開口部20を突き当て、ペンチ等でEリング10の頂部14と軸11の下側を強く挟むか、Eリング10を専用工具で保持して溝12に押し付けることによって行う。さらに、Eリング10の取り外しは、Eリング10内側の切り欠き16と軸11の間に形成される隙間17へ矢印Wの向きからマイナスドライバ18の先端19を差し込む。そして、それを矢印Zの向きに適宜に回転させて隙間17を押し広げるように移動させることによって行う(図7参照)。このようなEリング10は、簡素な形状であるために低コストで、且つペンチやマイナスドライバ等の比較的一般的な工具で着脱可能であるため事務機等の機械装置にて広く用いられてきた。
【0004】
ここで、上記したようなEリング10では、φ8軸用のものを軸部材に嵌め込む場合で98.07[N](10[kgf])前後の押圧力を必要とし、軸11から取り外す際にあっても同程度の力を必要とするものである。このように、軸11とEリング10との着脱には比較的大きな力を要することにより、ペンチやマイナスドライバ等の工具を用いることが一般的となっていた。
【0005】
また、例えば、上記マイナスドライバを用いて軸11からEリング10を取り外す際には、隙間17にマイナスドライバの先端部を挿入し、該先端部によって隙間17を押し広げるようにして行う。したがって、隙間17をマイナスドライバで押し広げて取り外す際には、Eリング10は塑性限界を超える応力を受けて永久変形し、再使用できなくなるという問題が生じがちとなっていた。そこで、Eリング10にかかる応力や着脱に要する力を低減させるため、従来、以下のような対策が考案されてきたが、それぞれの対策の有する製造上の制約や問題点等から実現には至っていない。
【0006】
1.リングの幅H(図5(a)参照)を狭める。
【0007】
幅Hを狭めることによってEリング10にかかる応力の影響を低減させ、変形させ易く(着脱し易く)することができる。しかし、幅Hは、Eリング10のプレスによる成形性を確保するために「幅H≧板厚t×2」のような制約を受けるものとなる。したがって、幅Hは、狭めることのできる限界が規定されることとなり、この限界内の幅Hでは応力や着脱に要する力の影響を十分に低減させることができない。
【0008】
2.Eリング10の外径を大きくして変形領域(Eリング外周)を長くする。
【0009】
外径を大きくした場合には、切り欠き16が深くなることとなり、製造ラインでEリング同士が絡みあってプレス成形後の後処理(表面処理等)に支障をきたす。
【0010】
3.Eリングの板厚t(図5(b)参照)を薄くする。
【0011】
一般のものに比して板厚tを十分に薄くしたEリングは、該Eリングにかかる応力の影響を低減させ、変形させ易く(着脱し易く)することができるが、該Eリングのエッヂ部分で作業者が手等を傷めやすくなる虞が生じるものとなる。また、該Eリングが、ギヤ等の固定対象物から軸方向のスラスト荷重を受けた際の耐力は低下する可能性が大きくなる。さらに、該Eリングは、使用される機械装置の保守やリサイクル等に伴う分解作業で着脱される際に、作業者が使用頻度の高いプラスドライバ等の工具をマイナスドライバやペンチ等の他の工具に持ち替えなければならないという不便な点が生じ得るものとなる。
【0012】
そこで、上記制約や問題点を解決するため、軸の外周に嵌め込み可能な略々C字形状の内輪と、該内輪外側に形成され、内輪の開口部側両端部と接続された外輪とを備えた、全体として略々C字形状をなす緊締部材が提案されている(特許文献1参照)。さらに、上記緊締部材には、上記内輪と上記外輪との間に形成され、軸に嵌め込んだ状態において、プラスドライバの先端と係合可能な切り欠き及び平行部からなる係合部とを備えさせている。この緊締部材にあっては、該緊締部材の着脱に要する力を低減させると共に、使用頻度の高いプラスドライバ等の工具によって容易に取り外しができるものとさせている。
【0013】
【特許文献1】特開2003−113819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上記特許文献1に記載されたような緊締部材が、軸に嵌め込まれた状態で、該軸に被嵌されたギヤやコロ等の被嵌部材を位置規制した際には、被嵌部材の側面と緊締部材の側面とは互いに密着した状態となる。したがって、該緊締部材には自身の取り外しが容易とされる切り欠きや係合部が設けられているものの、外輪の厚さが比較的薄い点から、必ずしも取り外しに際してプラスドライバ等の工具の先端が掛け易い状態にあるとはいい難かった。そして、このような、取り外し時における工具先端の掛け易さは、作業時間の短縮に影響を及ぼす一つの要因となっていた。
【0015】
そこで本発明は、緊締部材における取り外しを一層容易化させることにより、緊締部材の離脱作業の効率を高め得るように構成し、もって上述した課題を解決した遊技機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、開口部を有した湾曲形状に形成され、該開口部から軸部材の外周に嵌め込む緊締部材において、前記開口部を形成する略々C字形状の内輪部と、該内輪部の両端から該内輪部の外周側に沿って延びる外輪部とを備えさせる。そして、前記外輪部には、前記内輪部を含む平面から離間させた退避面部を有させてなる、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる緊締部材によれば、開口部を形成する略々C字形状の内輪部と、該内輪部の両端から該内輪部の外周側に沿って延びる外輪部とを備え、該外輪部には内輪部を含む平面から離間させた退避面部を有させてなる。これにより、緊締部材の取り外し作業において、プラスドライバ等の工具を係合させ易くすることができ、作業の一層の効率化を図ることができると共に、該緊締部材を素手によって着脱し得るものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態にかかる緊締部材1を、図1及び図2に沿って説明する。図1は、緊締部材1を詳細に示す三面図であり、(a)は緊締部材1を正面視にて示す正面図、(b)は緊締部材1を上方視にて示す平面図、(c)は緊締部材1を側方視にて示す側面図、図2は、緊締部材1の使用例を示す概略斜視図である。
【0019】
図1に示すように、緊締部材1は、金属材料でプレス成形にて製作され、全体として開口7を有する薄板部材からなっている。さらに細かくは、該緊締部材1は、開口7を形成する略々C字形状の内輪部としての内輪2と、該内輪2の両端から該内輪2の外周側に沿って延びる外輪部としての外輪部とを備えている。このように、緊締部材1は、貫通孔22が内面部に形成された状態において、内輪2と外輪3とによる輪状をなしている。
【0020】
内輪2は、開口7を形成することによって略々C字形状をしており、その中央部には該内輪2を周方向に両断し得るような横断面方向のスリット6を有し、さらに内輪2の平面視上部で且つスリット6端部には溝状の切り欠き部4を有している。外輪3は、内輪2の両端から延び、内輪2の外周側を沿うように湾曲形状に形成されている。
【0021】
さらに、外輪3上であって内輪2側の端部、つまりスリット6及び切り欠き部4から対向した位置には、外輪3の外周側に向って凹状に切り欠かれる切り欠き部5が形成されている。この切り欠き部5は、プラスドライバ等の工具先端における突起を容易に係合させ得るものとなっている。また、該切り欠き部5の左右側には平滑面5aが形成されており、プラスドライバ等の工具先端が切り欠き部5に係合された際に、該平滑面5aは、工具先端における突起の左右平面部が係合されるものとなっている。したがって、これら切り欠き部5及び平滑面5aは、プラスドライバ等の工具を緊締部材1に対して係合させ易く安定したものにさせている。
【0022】
また、外輪3は、プレス成形時に生じるバリのある側(以後バリ方向と称す)へ、曲げ8を起点として屈曲されることで傾斜しており、外輪3にあっては、この傾斜した面部を退避面部21としている。ここで、この退避面部21における表面21aの位置は、内輪2の表面2aを含む平面と軸方向において角度αだけ傾斜することにより、退避面部21が内輪2を含む平面から離間された(バリ方向へ退避された)ものとなっている。
【0023】
このような、緊締部材1は、従来から用いられている一般的なEリングと同様、図6に示したような軸部材(溝12が形成された軸11)に対して、図2のように嵌め込まれた状態で用いられる。これにより、緊締部材1は、軸11に被嵌したギヤ30といった被嵌部材を、軸11における軸方向で移動しないよう規制するものとなっている。
【0024】
つぎに、図1に示した緊締部材1の着脱に係る動作について説明する。
【0025】
すなわち、緊締部材1は、作業者により、ペンチ等の工具で狭持された状態で、例えば軸11における溝12に対して、外周側から、或いは、外周側へと、着脱される。この軸11への着脱工程において、緊締部材1は、開口7の入り口付近が軸11によって広げられるため、これに伴って内輪2及び外輪3が適宜に変形するものとなる。
【0026】
ここで、本実施の形態における緊締部材1は、従来のEリングの外周長より外輪3の外周長を長くできることと、内輪2と外輪3とで構成された輪状となっていることから、従来のEリングに比して全体的に撓み易く柔軟なものとなっている。これにより、本緊締部材1では、着脱時の変形に要する力が従来のEリングに比して小さくなり、内輪2や外輪3等にかかる応力が従来に比して小さいものとなる。また、緊締部材1は、撓み易い構造となっていることから、内輪2及び外輪3における応力の集中が生じにくく分散され易い形状となっている。その結果、該緊締部材1にあっては、着脱時に外輪3に加わる応力が降伏応力以下となり、着脱時の永久変形が抑制されることによって、複数回に亘る再利用が実現されるものとなる。
【0027】
ついで、緊締部材1の取り外しの動作について説明する。
【0028】
緊締部材1の取り外しを行う際には、作業者は、図2に示すように、プラスドライバ9における先端9aを、切り欠き部5と切り欠き部4との間に挿入する。その状態から、作業者は、先端9aにおける突起部を切り欠き部5に係合させ、そのまま先端9aを軸11から矢印Xに示す向きに離間させるようにして行う。
【0029】
このとき、切り欠き部5は、曲げ8によってギヤ30の表面30aの位置から軸方向に離間された退避面部21上に形成されていることにより、ギヤ30の表面30aの位置から退避された状態となっている。これにより、作業者は、プラスドライバ9の先端9aを切り欠き部5と切り欠き部4との間に挿入させ易くなり、該先端9aを切り欠き部5に対して容易に係合させることができるものとなる。このように、緊締部材1が、ギヤ30のような被嵌部材から退避される退避面部21を外輪3上に有することにより、プラスドライバ9の先端を切り欠き部5に素早く掛けることが可能となるため、緊締部材1の取り外し作業を効率化することができるようになる。
【0030】
また、従来のEリングにおいては、その取り外し作業の際に、比較的使用頻度の高いプラスドライバ等の工具から、比較的使用頻度の低いマイナスドライバへと工具を持ち替えるといった手間がかかっていた。しかし、本緊締部材1を用いることにより、上記したような工具の持ち替えといった無駄な動作を抑制させることができるようになる。
【0031】
また、従来のEリングは、着脱する際に、φ8軸用で98.07[N](10[kgf])前後の力を加えなければならなかったが、緊締部材1では19.614[N](2[kgf])前後の力を加えることで着脱できるように設計可能となっている。このように、着脱に要する力を低減させたことと、切り欠き部5を曲げ8によってギヤ30の表面30aから退避させたこととによって、緊締部材1を手指で掴み易くできると共に、素手によって着脱し得るものとすることができるようになる。
【0032】
また、緊締部材1では、溝12に嵌め込む際の取付け方向(軸方向の向き)を作業者が認識しやすいという利点を有している。従来のEリングを含め、一般的な緊締部材においては、プレスによって生じたバリを、対象となる被嵌部材と逆側に向くように軸部材に嵌め込んで使用する。これは、軸部材に被嵌した被嵌部材から受けるスラスト荷重に対し、取付け溝と緊締部材の噛合いを深くして緊締部材の耐スラスト荷重性能を確保するために行われるものである。しかし、プレス断面の形状によるバリ方向の識別は、未熟な作業者の場合には手間取ったり間違えたりする可能性がある。この点にあって、緊締部材1は、曲げ8によって曲げられた方向をバリ方向とするため、作業者が未熟な場合であっても、その取付け方向を容易に認識することができるものとなっている。
【0033】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる緊締部材31を図3を用いて説明する。図3は、緊締部材31を詳細に示す三面図であり、(a)は緊締部材31を正面視にて示す正面図、(b)は緊締部材31を上方視にて示す平面図、(c)は緊締部材31を側方視にて示す側面図である。但し、図1、2及び図5ないし図7と共通する構成については同じ符号を付し、それぞれの図の説明を援用する。
【0034】
すなわち、図3に示す緊締部材31は、外輪部としての外輪32に対して絞り加工を施すことにより、該外輪32内に内輪2を含む平面から離間された隆起部分が形成されている。そして、この隆起部分には、立ち上がり部34を介した退避面部33が形成されている。
【0035】
本緊締部材31における外輪32は、図3(a)に示す上部中央付近に、開口7の直径と略々同様の幅となる退避面部33を有している。該退避面部33の左右部には、内輪2の表面2aから例えば図3(c)に示すような左方に向けて徐々に傾斜して立ち上がる立ち上がり部34が形成されている。これにより、退避面部33は、立ち上がり部34を介して外輪32から離間された(浮き出した)状態となっている。このように、退避面部33は、立ち上がり部34によって内輪2の表面2aを含む平面からバリ方向へ距離A1だけ退避されるものとなっている。
【0036】
上記した緊締部材31は、図6に示したような軸部材(例えば軸11)の円周溝(例えば軸12)に対して嵌め込まれた状態で使用される(図2と同様)。これにより、緊締部材31は、軸11に被嵌したギヤ30等といった被嵌部材を、軸11における軸方向で移動しないよう規制するものとなっている。このような緊締部材31を、軸部材から離脱させる際にあっては、作業者は、退避面部33における切り欠き部5にプラスドライバ等の工具の先端を係合させ、これを軸部材から離間させることによって取り外しが行われる。
【0037】
このとき、切り欠き部5は、前述した立ち上がり部34を介した退避面部33内に形成されている。このことにより、切り欠き部5は、上記被嵌部材の表面から浮き出した状態となり、作業者は工具の先端が係合させ易く、緊締部材31の取り外しを楽に行うことができるものとなる。さらに、本緊締部材31にあっては、内輪2における表面2aを含む平面から切り欠き部5までの距離A1を、絞り加工によって形成される立ち上がり部34と等しい厚さに抑えることができるため、コンパクトな態様で上記効果を奏するものとなっている。
【0038】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる緊締部材41を図4を用いて説明する。図4は、緊締部材41を詳細に示す三面図であり、(a)は緊締部材41を正面視にて示す正面図、(b)は緊締部材41を上方視にて示す平面図、(c)は緊締部材41を側方視にて示す側面図である。但し、図1ないし図3、及び図5ないし図7と共通する構成については同じ符号を付し、それぞれの図の説明を援用し、省略するものとする。
【0039】
すなわち、図4に示す緊締部材41は、外輪部としての外輪42における内輪2の両端に近い位置に絞り加工が施されることにより、該外輪42内の略々全体に亘る隆起部分が形成されている。そして、この隆起部分には、立ち上がり部43を介した退避面部44が形成されている。
【0040】
本緊締部材41における外輪42は、内輪2の両端から一続きに形成されると共に、該両端に近接した位置に亘る退避面部44を有するものとなっている。該退避面部44の左右部には、内輪2の表面2aから例えば図4(c)に示すような左方に向けて徐々に傾斜して立ち上がる立ち上がり部43が形成されることにより、退避面部44は、該立ち上がり部43を介して外輪42から隆起した(浮き出した)状態となる。したがって、退避面部44は、立ち上がり部43により、内輪2の表面2aを含む平面からバリ方向へ距離A2だけ離間されて位置するものとなっている。
【0041】
上記した緊締部材41は、図6に示したような軸部材(例えば軸11)の円周溝(例えば軸12)に対して嵌め込まれた状態で使用される(図2と同様)。これにより、緊締部材41は、軸11に被嵌されたギヤ30等といった被嵌部材を、軸11における軸方向で移動しないよう規制するものとなる。このような緊締部材41を、軸部材から離脱させる際にあっては、作業者は、退避面部44における切り欠き部5にプラスドライバ等の工具の先端を係合させ、軸部材から離間させることによって取り外しを行う。
【0042】
このとき、切り欠き部5は、前述した立ち上がり部43を介した退避面部44内に形成されている。このことにより、切り欠き部5は、上記被嵌部材の表面から浮き出した状態となり、作業者は工具の先端が係合させ易く、緊締部材41の取り外しを楽に行うことができるものとなる。さらに、本緊締部材41にあっては、外輪42と上記被嵌部材との接触を可及的に防止できるというメリットを持つ。例えば、ベアリング等を緊締部材で固定(位置規制)する際には、回転するベアリングの外周と緊締部材との接触は両者の削れを引き起す虞がある。この点において、本緊締部材41は、絞りの方向、つまり立ち上がり部43の立ち上がる方向が上記ベアリングの側と逆側となることにより、ベアリング側面と外輪42における退避面部44及び立ち上がり部43との接触を可及的に防ぐことができるようになる。
【0043】
以上説明したように、第1ないし第3の実施の形態にかかる緊締部材1,31,41によれば、開口7が形成されたC字形状の内輪2と、該内輪2の両端から内輪2の外周側に沿って延びる各外輪3,32,42とをそれぞれ備えている。そして、該各外輪3,32,42は、内輪2を含む平面から離間させた退避面部21,33,44をそれぞれ有してなる。これにより、各緊締部材1,31,41の取り外し作業時において、プラスドライバ等の比較的使用頻度の高い工具を係合させ易くすることができ、作業の一層の効率化を図ることができるようになる。さらに、上記した退避面部21,33,44を有することにより、該緊締部材1,31,41を素手によって着脱し得るものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明にかかる緊締部材は、軸部材に被嵌させる被嵌部材の位置規制に有用であり、特に、着脱作業の迅速性が要求される緊締部材に適している。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施の形態における緊締部材を詳細に示す三面図であり、(a)は緊締部材を正面視にて示す正面図、(b)は緊締部材を上方視にて示す平面図、(c)は緊締部材を側方視にて示す側面図である。
【図2】緊締部材の使用例を示す概略斜視図である。
【図3】第2の実施の形態における緊締部材を詳細に示す三面図であり、(a)は緊締部材を正面視にて示す正面図、(b)は緊締部材を上方視にて示す平面図、(c)は緊締部材を側方視にて示す側面図である。
【図4】第3の実施の形態における緊締部材を詳細に示す三面図であり、(a)は緊締部材を正面視にて示す正面図、(b)は緊締部材を上方視にて示す平面図、(c)は緊締部材を側方視にて示す側面図である。
【図5】従来のEリングを示す図で、(a)はEリングを正面視にて示す正面図、(b)はEリングを側方視にて示す側面図である。
【図6】軸を示す概略図であり、(a)は軸を正面視にて示す正面図、(b)は軸を側方視にて示す側面図である。
【図7】従来のEリングの使用例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 緊締部材
2 内輪部(内輪)
2a 平面(表面)
3 外輪部(外輪)
5 切り欠き部
6 スリット部(スリット)
11 軸部材(軸)
12 円周溝(溝)
21 退避面部
30 被嵌部材(ギヤ)
31 緊締部材
32 外輪部(外輪)
33 退避面部
41 緊締部材
42 外輪部(外輪)
44 退避面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有した湾曲形状に形成され、該開口部から軸部材の外周に嵌め込む緊締部材において、
前記開口部を形成する略々C字形状の内輪部と、該内輪部の両端から該内輪部の外周側に沿って延びる外輪部とを備え、
前記外輪部は、前記内輪部を含む平面から離間させた退避面部を有してなる、
ことを特徴とする緊締部材。
【請求項2】
前記退避面部は、前記内輪部側の端部に前記外輪部の外周側に向って凹状に切り欠かれる切り欠き部を有してなる、
請求項1に記載の緊締部材。
【請求項3】
前記退避面部は、前記外輪部に絞り加工を施すことにより、前記内輪部を含む平面から離間させるように隆起されてなる、
請求項1又は2に記載の緊締部材。
【請求項4】
前記内輪部は、該内輪部を周方向に両断し得るようなスリット部が形成されてなる、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の緊締部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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