説明

総ビリルビンの測定法およびそれに用いる試薬

【課題】
ビリルビンを含有する検体中の総ビリルビンを、簡単に、かつ正確に測定する方法および測定用試薬を提供すること。
【解決手段】
ビリルビンを含有する生体試料にビリルビンオキシダーゼを作用させて、それにより生ずる変化を光学的に測定する方法において、ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体から選択される少なくとも1種を共存させて測定することを特徴とする総ビリルビンの測定法および測定用試薬。
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総ビリルビンを酵素的に測定する方法およびそれに用いる試薬に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビリルビンは、生体中において胆汁中に最も多く存在する色素で、ピロール骨格を持つことから、診断分野においては含窒素成分の項目として捉えられている。老廃赤血球は、骨髄、胸腺、肝臓等で分解、代謝されるが、この時に主要構成成分であるヘモグロビンから非抱合ビリルビンが生成される。このビリルビンは、血中ではアルブミンと結合し、最も多く代謝される胸腺から肝臓に輸送される。肝臓では、非抱合ビリルビンは、構造的に2つのカルボキシル基がグルクロン酸1つまたは2つの抱合を受け、抱合ビリルビンへと変化し、そして胆道に排泄される。
【0003】
臨床的意義において、溶血性黄疸では、非抱合ビリルビンの上昇が著しいが、特に、肝臓の未発達な新生児黄疸では、非抱合ビリルビンの遊離したビリルビン(遊離ビリルビン)がビリルビン脳症の成立と密接な関係があると考えられている。一方、肝臓で生成された抱合ビリルビンが胆道閉塞等で正常に排泄されない場合、血流中に逆流し、胆道閉塞性黄疸となる。そして、増大した抱合ビリルビンの一部が、非酵素的にアルブミンと共有結合したδビリルビンに変化することが1980年代の研究により明らかにされた。このδビリルビンの寿命は、アルブミン代謝速度とほぼ同じ2週間程度で、他のビリルビンよりも非常に長いという特徴がある。
【0004】
このような種々ビリルビンの体内動態をもとに、新生児においてはビリルビン脳症の予防に、成人においては肝・胆道系疾患の鑑別および病態の把握、先天性ビリルビン代謝異常症の診断や溶血性疾患の発見等にビリルビンの測定が行われている。
【0005】
ビリルビンの測定法は、1916年van den Bergh等によって報告されたジアゾ法が世界的に普及した。血清ビリルビンには、ジアゾ試薬に対して異なった反応をする2種類のアゾ色素の存在が指摘され、その反応性から直接型ビリルビン、間接型ビリルビンとして識別された。そして、両者を合わせたものを総ビリルビンと称している。我が国においても、ジアゾ試薬による比色法等の化学的測定法が主に用いられてきた。しかし、試薬の安定した調製が困難なこと、血清中に含有する薬物代謝産物による測定誤差を受けやすい等の問題で、日常検査ではほとんど使用されなくなった。
【0006】
その後、ビリルビンオキシダーゼ等の酸化酵素を用いたビリルビンの定量法が発表されている。この方法は、従来のジアゾ法に比べて、いずれも簡便性に優れたものであった。しかしながら、ビリルビンオキシダーゼのみでは、反応が不十分であるため、その反応促進剤としてサルファ剤や界面活性剤を利用した方法が考案された(特許文献1参照)。しかし、それら促進剤はpH6.5よりも低いと沈殿するため、使用できるpH範囲が狭い。また、上記促進剤はミロセシウム属( Myrothecium )由来のビリルビンオキシダーゼには効果的であるが、エビタケ属( Trachyderma )由来のものにはあまり効果を発揮しないこと、使用できるpHではδビリルビンに対する反応促進効果も完全なものでない等の問題があった。
【0007】
さらにフェリシアン化カリウムを配合した方法も開示されている(特許文献2参照)。この方法では、総ビリルビン測定におけるpHの巾が狭く、特にpHが酸性域では反応促進効果は不十分であり、フェリシアン化カリウムを用いて十分に反応を促進させようとした場合にはその配合量が多くなるため、有害物質としての排出量が増加し好ましくない。
【0008】
検体の液性をアルカリ性(pH10以上)に保持して、検体中の抱合型ビリルビンを予め脱抱合して非抱合型ビリルビンとした後、検体中に存在する非抱合型ビリルビン量をビリルビンオキシダーゼを作用させて測定する方法が開示されている(特許文献3参照)。この方法では、血清をアルカリ処理するため、蛋白変性により混濁を生じ測定値に影響を与える場合がある。
【0009】
また、ビリルビンオキシダーゼ以外の酸化酵素として安定性の高いアスコルビン酸オキシダーゼを用いた方法が開示されている(特許文献4参照)。アスコルビン酸オキシダーゼは、ビリルビンを酸化する活性が非常に低く、ビリルビン酸化酵素としては特異的ではない。そこで、種々の反応促進剤を共存させると確かに活性は高くなるものの、非常に高単位の酵素を用いるため、あまり実用的でないと言えよう。
【0010】
一方、本出願人は、ビリルビンオキシダーゼの反応促進剤として、フェノール類やアニリン誘導体を使用する方法を開示している(特許文献5参照)。
【0011】
【特許文献1】特開昭62−282598号
【特許文献2】特開昭59−130198号
【特許文献3】特開平5−322903号
【特許文献4】特開平9−178755号
【特許文献5】特開平3−175997号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような従来の課題に着目してなされたものであって、検体中の総ビリルビンを、簡単に、かつ正確に測定する方法および試薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、検体中の総ビリルビン測定において、ビリルビンにビリルビンオキシダーゼを作用させて、それにより生ずる変化を光学的に測定する方法において、ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体から選択される少なくとも1種を共存させると精度良く測定できることを見出し、本発明に至った。
【0014】
本発明の検体中の総ビリルビン測定法は、ビリルビンを含有する検体にビリルビンオキシダーゼを作用させて、それにより生ずる変化を光学的に測定する方法において、ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体から選択される少なくとも1種を共存させて測定することを特徴とする。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)ビリルビンを含有する生体試料にビリルビンオキシダーゼを作用させて、それにより生ずる変化を光学的に測定する方法において、ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を共存させることを特徴とする総ビリルビンの測定法。
(2)ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体が、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシピリジン−N−オキサイドおよび2−メルカプトピリジン−N−オキサイドから選ばれる少なくとも1種である(1)記載の測定法。
(3)pH5.0〜8.0の範囲でビリルビンオキシダーゼを作用させる(1)〜(2)記載の測定法。
(4)ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種とビリルビンオキシダーゼを含むことを特徴とする総ビリルビン測定用試薬。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、pH5.0〜8.0におけるビリルビンオキシダーゼ反応において、ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を共存させることによって、ビリルビンを含有する検体中の総ビリルビンを正確に、安価に測定する方法および試薬を提供することができる。したがって、肝機能、胆道系疾患や造血機能系疾患をより精度良く診断することができる。また、本発明はpHが5.0〜8.0という穏やかな条件下において、精度良く測定できるので分析装置への適用が容易で、その測定効率はHPLC法よりも良く、コスト的にも非常に安価である。以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
酵素法によるビリルビンの測定法において、使用するビリルビンオキシダーゼ酵素由来により各種ビリルビンに対する反応性は、pHや使用する緩衝液等で異なることが知られている。現在容易に入手できるミロセシウム属( Myrothecium )由来のビリルビンオキシダーゼでは、δビリルビンは、pH4.8付近において最も反応性が高いが、6.0以上では反応性が低くなる。一方、抱合ビリルビンは、6.0〜6.5付近において最大の反応性を有するが、5.0〜11.0まではほぼ一定の反応性がある。非抱合ビリルビンは、pH6.5付近で最も反応性は高いが、クエン酸緩衝液や2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液よりも2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝液の方が反応性は高い、というように緩衝剤の種類によっても、反応性が異なってくる。また、エビタケ属( Trachyderma )由来のビリルビンオキシダーゼに関しては、δビリルビンは、pH4.8付近において最も反応性が高いが、6.0以上では反応性が非常に低くなる。一方、抱合ビリルビンは、6.0〜6.5付近において最大の反応性を有し、9.2以上では反応性がほとんどない。非抱合ビリルビンは、pH5.5〜6.0で最も反応するが、pH9.0以上ではほとんど反応しない。また、上記緩衝液により反応性にほとんど差はない。
【0017】
このように、上記酵素を用いた方法においては、pHや使用する緩衝液を選択することだけで、血清中の総ビリルビンを正確に測定することは困難であるため、酵素の反応促進剤が必要となってくる。
【0018】
本発明は、ビリルビンオキシダーゼを用いた総ビリルビンの測定において、ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体から選択される少なくとも1種を共存させて測定することにより、上記問題点を解決したものである。すなわち、これらの反応促進剤は、δビリルビンがほとんど反応しないpH6.0以上でその反応性を向上させるだけではなく、非抱合ビリルビンに対する反応性が低いpH5.0〜5.5または7.5〜8.0の領域での反応性を向上させる効果を有している。その結果、pH5.0〜8.0と広いpH領域での使用が可能となる。また、異なる由来のビリルビンオキシダーゼにおいても、促進効果を有す。
【0019】
本発明で、総ビリルビンを測定する添加物として使用するヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体である限り、公知の中から適宜選択することができる。その具体例としては、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシピリジン−N−オキサイド、2−メルカプトピリジン−N−オキサイドからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。これら、添加物の濃度は、1〜200mMの範囲であることが好ましく、より好ましくは、20〜100mMの範囲である。ここで、濃度が1mMより低いときは、δビリルビンおよび非抱合ビリルビンが充分反応せず、濃度が200mMを越えたときは、ビリルビンオキシダーゼの非存在下でも、僅かにビリルビンが分解されてしまう。
【0020】
本発明で使用される反応pHは、5.0〜8.0の範囲であることが好ましく、より好ましくはpH6.0〜7.5の範囲である。pHが5.0よりも低いと、ビリルビンオキシダーゼの非存在下でも、ビリルビンの分解が惹起される。pHが8.0よりも高いと、δビリルビンおよび非抱合ビリルビンの反応性が低下し、反応終点に達するまでの時間が長くなる。そのため、自動分析装置への適用は困難となる。
【0021】
本発明で使用できる緩衝液としては、pHを上記範囲内に維持できるものであれば、特に制限されず、公知の緩衝液の中から適宜選択することができるが、特にグッド緩衝液やリン酸緩衝液が好ましい。
【0022】
本発明において、総ビリルビンの測定を行う検体としては、一般にビリルビンを含有する水性検体であり、例えば、血清、血漿、胆汁等が挙げられる。これら検体は、必要に応じて希釈、または前処理されていても良い。
【0023】
また、本発明で用いられるビリルビンオキシダーゼとしては、一般に、ビリルビンオキシダーゼとして用いられている酵素であればいずれも良いが、入手し易さを考慮すると、ミロセシウム属( Myrothecium )由来またはエビタケ属( Trachyderma )由来の酵素が好ましい。このビリルビンオキシダーゼの濃度は、0.02〜10U/mL、好ましくは、0.1〜8U/mLである。
【0024】
本発明は、ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む緩衝液 (試薬−1)と、ビリルビンオキシダーゼ溶液 (試薬−2)からなる2試薬系の総ビリルビン測定用試薬として提供することができる。ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体としては、上述したものの中から適宜選択すれば良い。
【0025】
本発明による総ビリルビンの測定は、ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体から選択される少なくとも1種を含む緩衝液 (試薬−1)を加え、予備加温後、ビリルビンオキシダーゼ溶液 (試薬−2)を加えて反応させ 、その結果生ずる総ビリルビンの減少を光学的に測定することにより行われる。すなわち、ビリルビンがビルベルジンに酸化されることに伴うビリルビンの量的変化を、420〜480nmの吸光度の減少として捉えることで達成される。
【0026】
本発明においては、特に必要とされないが、必要に応じて胆汁酸類、フェノール誘導体、アニリン誘導体、サルファ剤、安息香酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸等の反応促進剤、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アルブミン等の蛋白質等を適宜添加することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0028】
実施例1.各種ビリルビンに対する反応性
50mMヒドロキシピリジン誘導体(またはメルカプトピリジン誘導体)および0.05%ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(非イオン性界面活性剤)を含有する100mMリン酸緩衝液(試薬−1 : pH7.2)0.24mLに、各種ビリルビン、すなわち合成δビリルビン(5mg/dL;渭原博 医学検査 43 1253〜55 (1994)による)、ジタウロビリルビン(35mg/dL;抱合ビリルビンの一種)または非抱合ビリルビン(35mg/dL)を各々0.008mL添加し、37℃にて5分間加温し、ミロセシウム属由来ビリルビンオキシダーゼ1U/mLを含む10mMのN−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸(CAPS)緩衝液(試薬−2:pH9.0)0.06mLを加えて、37℃で日立7170形自動分析装置を用いて波長450nmにおける吸光度を測定した。標準品の吸光度を対照としてビリルビン値を算出し、検体中の理論ビリルビン値に対する割合(%)を比較した。
【0029】
その結果を表1に示す。ヒドロキシピリジン誘導体を添加した試薬は、δビリルビンに対して75〜100%、ジタウロビリルビンおよび非抱合ビリルビンに対しては83〜100%の反応性を示した。一方、メルカプトピリジン誘導体を添加した試薬は、δビリルビンに対しては78%、ジタウロビリルビンおよび非抱合ビリルビンに対しては93〜98%の反応性を示した。これらのことから、人工的に調製した試料において全てのビリルビン種が、ほぼ測定されることが分かった。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例2.反応pHと各種ビリルビンに対する反応性
実施例1の試薬−1におけるヒドロキシピリジン誘導体として2−ヒドロキシピリジンN−オキサイドを選択し、クエン酸またはリン酸緩衝液100mMにてpHを4.5〜9.0に調製した試薬−1 0.24mLに、実施例1で用いた各種ビリルビン試料0.008mLを加え、37℃で5分間予備加温した後、実施例1と同様の試薬−2またはエビタケ属由来ビリルビンオキシダーゼ1U/mLを含む試薬−2(pH9.0)を0.06mLを加えて、37℃で日立7170形自動分析装置を用いて波長450nmにおける吸光度を測定した。標準品の吸光度を対照としてビリルビン値を算出し、検体中の理論ビリルビン値に対する割合(%)を比較した。
【0032】
その結果を表2に示す。ミロセシウム属ビリルビンオキシダーゼを用いたときは、pH5.0〜8.0でδビリルビンに対しては85〜100%、ジタウロビリルビンおよび非抱合ビリルビンに対しては86〜100%の反応性を示した。また、pH5.0未満ではδビリルビンに対して77%、ジタウロビリルビンおよび非抱合ビリルビンに対しては31〜88%の反応性を示し、pH8.0より高いときは、δビリルビンに対して10〜50%、ジタウロビリルビンおよび非抱合ビリルビンに対しては93〜98%の反応性を示した。一方、エビタケ属ビリルビンオキシダーゼを用いた場合は、pH5.0〜8.0でδビリルビンに対して80〜99%、ジタウロビリルビンおよび非抱合ビリルビンに対しては86〜99%の反応性を示した。また、pH5.0未満ではδビリルビンに対して75%、ジタウロビリルビンおよび非抱合ビリルビンに対しては30〜85%の反応性を示し。pH8.0より高いときは、δビリルビンに対して10〜30%、ジタウロビリルビンおよび非抱合ビリルビンに対しては60〜90%の反応性を示した。これらの結果から、人工的試料では、pH5.0〜8.0の範囲内では、全てのビリルビン種が80〜100%とほぼ完全な反応性を示すことが確認された。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例3.人血清ビリルビンに対する反応性のHPLCによる分析
実施例1で、ヒドロキシピリジン誘導体として2−ヒドロキシピリジンN−オキサイドを用いた試薬−1 0.45mLに、血清検体0.015mLを添加し、37℃で5分間予備加温した後、実施例1と同様の試薬−2を0.112mLを加えて、更に37℃で5分間予備加温し、3g/dL のフッ化ナトリウム水溶液0.03mLおよび10g/dLのアスコルビン酸水溶液0.01mLを加え、その反応液0.1mLをHPLCに供した。HPLCの測定条件は、溶離液−1に0.05g/dLのフッ化ナトリウムおよび0.2g/dLのアスコルビン酸を添加したこと、そして装置として東ソー社製8020分析装置を用いたこと以外、ラウフ等( John J.Lauff、 J Chromatogr.、226、p391〜402(1981) )の実験条件に準じて行った。なお、試薬−1と血清検体を37℃で5分間予備加温した後、フッ化ナトリウム水溶液およびアスコルビン酸水溶液を添加した試薬−2を加え、ビリルビンオキシダーゼ反応を抑制した溶液中の各種ビリルビンを対照とした。
【0035】
その結果を図1に示す。本試薬におけるビリルビンオキシダーゼ反応により、δビリルビン、ジグルクロナイドビリルビン、モノグルクロナイドビリルビンおよび非抱合ビリビンに相当するピークがほぼ消失していることが判った。このことから、本発明による試薬において、人血清中の総ビリルビン(全ビリルビン)を測定していることが示された。
【0036】
実施例4.人血清ビリルビンにおける相関性
実施例3の試薬を用いて、市販されている酵素法による総ビリルビン試薬との人血清120例における相関性を評価した。
【0037】
その結果を図2に示す。相関係数r=0.9999、一次回帰式Y=0.999X−0.11と良好な相関関係にあることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、以上のように、ビリルビンを含有する検体中の総ビリルビンを正確に測定する方法および試薬を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】人血清ビリルビンの反応性についてHPLC分析した結果を示すグラフである。
【図2】本発明法による総ビリルビン測定値と従来酵素法測定値の相関を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビリルビンを含有する生体試料にビリルビンオキシダーゼを作用させて、それにより生ずる変化を光学的に測定する方法において、ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を共存させることを特徴とする総ビリルビンの測定法。
【請求項2】
ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体が、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシピリジン−N−オキサイドおよび2−メルカプトピリジン−N−オキサイドから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の測定法。
【請求項3】
pH5.0〜8.0の範囲でビリルビンオキシダーゼを作用させる請求項1〜2記載の測定法。
【請求項4】
ヒドロキシピリジン誘導体またはメルカプトピリジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種およびビリルビンオキシダーゼを含むことを特徴とする総ビリルビン測定用試薬。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−34178(P2006−34178A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219497(P2004−219497)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000120456)栄研化学株式会社 (67)
【Fターム(参考)】