説明

総入れ歯

【課題】「さ行」あるいは「た行」の発音を誰もが的確に行うことができる総入れ歯を提供する。
【解決手段】上顎側に装着される床本体1と、床本体1に固定される義歯Tとを備えており、義歯列より内側の床底面2に、発音促進用のリブ状突起3を設ける。リブ状突起3は、中切歯T1から第2小臼歯T5に至る義歯列に沿って湾曲状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用時の発音を適正に行えるようにした総入れ歯に関する。
【背景技術】
【0002】
総入れ歯を使用するとき、「さ行」あるいは「た行」の発音を的確に行えなくなることが指摘されている。このような発音障害を解消するために、特許文献1では、総入れ歯の床本体の内奥縁(喉側の縁)を、床中央の側へ向かって凹曲線状に湾曲している。さらに、舌と接触する床底面の全体にわたって、傾斜する溝の一群と、傾斜しない溝の一群とを形成している。また、床底面の前部中央に「干」字状の突部を設けている。
【0003】
本発明の総入れ歯に関して、床底面の中程に床穴を設けることが特許文2に開示してある。そこでは、食べ物をおしく食べるために床穴を設け、床穴に臨む上顎の粘膜に舌を接触できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−201773号公報
【特許文献2】実開平05−070518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の総入れ歯では、床本体の内奥縁に7〜10mmの凹曲縁部を設けて、「さ行」の発音を自然に行えるとしているが、凹曲縁部を設けることと、「さ行」の発音を自然に行えることとの因果関係は不明である。また、床底面の全体にわたって傾斜する溝の一群、および傾斜しない溝の一群を設けているが、これらの溝の溝深さは0.2〜0.7mmと浅く、上顎内面の粘膜表面の凹凸を模したものでしかない。
【0006】
本発明者は、総入れ歯を日常的に使用するときの「さ行」あるいは「た行」の発音障害を実際に体験し、自然な発音を行うための入れ歯の構造に関して研究を重ねた。さらに、自ら総入れ歯を試作し、実際に使用して発音障害を克服できるか否かを確認した。
【0007】
本発明の目的は、「さ行」あるいは「た行」の発音を誰もが的確に行うことができる総入れ歯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る総入れ歯は、上顎側に装着される床本体1と、床本体1に固定される義歯Tとを備えており、義歯列より内側の床底面2に、発音促進用のリブ状突起3が設けてあることを特徴とする。
【0009】
リブ状突起3は義歯列に沿って湾曲状に形成する。
【0010】
さらに好ましくは、リブ状突起3を中切歯T1から第2小臼歯T5に至る義歯列に沿って湾曲状に形成する。
【0011】
リブ状突起3の床底面2からのリブ高さHは5〜7mmに設定する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の総入れ歯においては、義歯列より内側の床底面2に発音促進用のリブ状突起3を設けるので、舌先をリブ状突起3にあてがって発音することにより、「さ行」あるいは「た行」の発音を的確に行うことができる。これは、舌先をリブ状突起3に接触させることにより、「さ行」および「た行」の破擦音および破裂音を確実に発音できるからである。
【0013】
リブ状突起3を義歯列に沿って湾曲状に形成すると、舌先とリブ状突起3との接触機会が増えて、接触刺激によって唾液が適度に出るため、食べ物が滑りやすく、口臭も激減する。
【0014】
また、リブ状突起3を中切歯T1から第2小臼歯T5に至る義歯列に沿って湾曲状に形成すると、食べ物がリブ状突起3に引っ掛かるのを良く防止しながら、「さ行」および「た行」の発音を適正に行える。
【0015】
リブ状突起3の床底面2からのリブ高さHは5〜7mmに設定するのは、リブ高さHが5mm未満であると、発音促進効果が得られにくくなるからである。また、リブ高さHが7mmを越える場合にも、発音促進効果が得られにくいうえ、義歯列とリブ状突起3との間に食べ物が引っ掛かりやすくなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る総入れ歯の底面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図1におけるB−B線断面図である。
【図4】総入れ歯の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
図1ないし図4は本発明に係る総入れ歯の実施例を示す。図1において、総入れ歯はレジンを成型して形成される床本体1と、床本体1に固定される義歯Tとで構成してあり、T1は中切歯、T2は側切歯、T3は犬歯、T4は第1小臼歯、T5は第2小臼歯、T6は第1大臼歯、T7は第2大臼歯である。
【0018】
上記構成の総入れ歯において、「さ行」ないし「た行」の発音を自然に行うために、義歯列より内側の床底面2に発音促進用のリブ状突起3を設ける。図1に点描したように、リブ状突起3の表面と、床底面2のリブ状突起3で囲まれた半円状の点描領域4の表面には、「さ行」の発音をより的確に行うために、微小凹凸面で形成してある。リブ状突起3は、中切歯T1から第2小臼歯T5に至る義歯列に沿って湾曲状に形成してある。図 に示すようにリブ状突起3は、舌触りを滑らかなものとするために、先端が丸められた断面山形に形成してあり、その床底面からのうリブ高さHは7mm、リブ幅Wは6mmとした。リブ高さHは5〜7mの範囲内で選定でき、リブ高さHが5mm未満であると、発音促進効果が得られにくくなる。同様に、リブ高さHが7mmを越える場合にも、発音促進効果が得られにくいうえ、義歯列とリブ状突起3との間に食べ物が引っ掛かりやすくなる。リブ幅Wは5〜7mmの範囲内で選定することが好ましい。
【0019】
以上のように構成した総入れ歯は、図4に示すように上顎に装着して使用する。使用者は、舌先をリブ状突起3にあてがって発音することにより、「さ行」および「た行」の破擦音および破裂音を確実に発音できる。また、リブ状突起3を中切歯T1から第2小臼歯T5に至る義歯列に沿って湾曲状に形成するので、舌先とリブ状突起3との接触機会が増えるので、リブ状突起3との接触刺激によって唾液が適度に出るため、食べ物が滑りやすく、口臭も激減する。さらに、食べ物がリブ状突起3に引っ掛かるのを良く防止しながら、「さ行」および「た行」の発音を適正に行える。
【0020】
上記の実施例では、リブ状突起3を義歯列に沿って湾曲状に形成したが、その必要はなく、少なくとも中切歯T1および側切歯T2とほぼ平行になる状態で形成することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 床本体
2 床底面
3 リブ状突起
T 義歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上顎側に装着される床本体(1)と、床本体(1)に固定される義歯(T)とを備えている総入れ歯であって、
義歯列より内側の床底面(2)に、発音促進用のリブ状突起(3)が設けてあることを特徴とする総入れ歯。
【請求項2】
リブ状突起(3)が義歯列に沿って湾曲状に形成してある請求項1に記載の総入れ歯。
【請求項3】
リブ状突起(3)が中切歯(T1)から第2小臼歯(T5)に至る義歯列に沿って湾曲状に形成してある請求項2に記載の総入れ歯。
【請求項4】
リブ状突起(3)の床底面(2)からのリブ高さHが5〜7mmに設定してある請求項1から3のいずれか一つに記載の総入れ歯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−85929(P2013−85929A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240648(P2011−240648)
【出願日】平成23年10月15日(2011.10.15)
【出願人】(511265534)
【Fターム(参考)】