説明

総合的抗頻拍性不整脈治療のための装置

心室の頻拍性不整脈を処置するための治療を施すための方法及び装置が記載される。一実施形態では、心室頻拍が検知されると、神経刺激、抗頻拍ペーシング、及びショック療法が段階的手順で用いられる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
(優先権主張)
本明細書では参照により本明細書に組み込まれている、2005年5月5日に出願した米国特許出願第11/122、968号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は電気刺激で心臓不整脈を治療する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
頻拍性不整脈は急激な心拍数を特徴とする異常な心臓律動である。頻拍性不整脈の症例には心房頻拍(AT)、心房細動(AF)のような上室性頻拍(SVT)が含まれる。しかし、最も危険な頻拍性不整脈は心室頻拍性不整脈、すなわち心室頻拍(VT)と心室細動(VF)である。心室律動は、異なる伝導特性の心筋領域で脱分極波面のリエントリが自己持続された場合、又は心室内の興奮性の病巣が洞房結節から心拍数の制御を捕捉した場合に発生する。その結果、心房との電気機械的な同期不全で心室の収縮が急激かつ不良になる。ほとんどの心室律動は正常な心室伝導系を用いず、その代わりに脱分極が興奮性の病巣又はリエントリの部位から心筋に直接拡散するので、心電図に異常なQRS波が現れる。心室頻拍は代表的には頻拍時に生ずるQRS波の歪みを特徴としており、一方、心室細動はQRS波を識別できずに心室が無秩序に脱分極した場合にそれと診断される。心室頻拍と心室細動はいずれも血液動態を危険にさらし、双方とも生命を脅かすことがある。しかし、心室細動は数秒以内に循環停止を誘発し、突然心臓死の最もよくある原因である。
【0004】
ほとんどの頻拍性不整脈を停止させるため、カルジオバージョン(VT又はAFを停止させるためにQRS波と同期して心臓に施される電気ショック)及び除細動(VFを停止させるためにQRS波と非同期に施される電気ショック)を用いることができる。電気ショックは全ての心筋を同時に脱分極させ、これを不応にすることによって頻拍性不整脈を停止させる。埋込可能除細動器(ICD)として知られている種類の心臓律動管理装置は、装置が頻拍性不整脈を検知した場合に心臓にショック・パルスを送ることによってこの種の治療を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
別の種類の頻拍の電気的治療は抗頻拍ペーシング(ATP)である。心室ATPでは、頻拍の原因であるリエントラント回路を遮断する努力の一環として1つ又は複数のペーシング・パルスで心室に対抗的にペーシングが行われる。現在のICDは代表的には、VTが検知された場合にATP治療が施され、一方、VTとVFの双方を停止させるためにショック・パルスを送ることができるATP能力を有している。カルジオバージョン/除細動は心室頻拍を停止させるが、バッテリから大量の蓄電電力を消費し、その結果、ショック・パルスの高圧により患者が不快になる。したがって、ICDが可能な場合はショック療法を用いず頻拍性不整脈を停止させることが望ましい。したがって、細動やある一定の高心拍数の頻拍を停止させるためにカルジオバージョン/除細動ショックを施し、それよりも低い拍数の頻拍を処置するにはATPを使用するように装置のプログラムがなされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、ATPやショック療法に加えて、神経刺激を用いる心房又は頻拍性不整脈を処置する装置と方法が記載される。神経刺激は副交感神経刺激でも交感神経抑止でもよい。例示的な実施態様では、装置は頻拍性不整脈の検知に応答して段階的な治療が施されるようにプログラムされる。神経刺激はショック療法に頼らずにある種の頻拍性不整脈を停止させる補助になり、さらにショック療法と合わせて用いることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
心拍数、収縮性、興奮性は中枢を介した反射経路によって調整可能であることが知られている。心臓、大血管、肺の血圧受容器と化学受容器は、迷走神経と交感神経系の求心性線維を介して、心臓活動を中枢神経系に伝達する。交感神経の迷走神経の活動によって反射交感神経の活動、副交感神経の抑制、血管収縮、頻拍が誘発される。これに対して、副交感神経の活動によって除拍、血管拡張、バソプレッシンの抑制解除が生ずる。本明細書の開示は頻拍性不整脈の存在を検知し、神経刺激、ATP、高圧ショックとの組合せで不整脈を停止させる能力がある埋込可能の装置に関するものである。交感神経抑制又は副交感神経の活動の形態での神経刺激は、心筋の興奮性を低下させ、伝導時間を低減し、それによって不整脈停止の確率を高める。このように、神経刺激はATPの効力を高め、かつ/又はショック療法のための除細動のしきい値を低下させる。以下に記載するのは、ATP、ショック療法、神経刺激によって心房と心室の頻拍性不整脈を処置するように構成できる例示的装置である。特定の実装アルゴリズムも記載される。
【0008】
1.ハードウエア・プラットフォーム
図1に示されるように、頻拍性不整脈治療のための埋込可能心臓装置100は代表的には心房及び/又は心室の検知及びペーシングのために使用される電極300に装置を接続するため、心臓に経静脈的にリード200を通して患者の胸の皮下又は胸筋下に装着される。電極は様々な手段で心外膜上に設置してもよい。プログラム可能な電子コントローラによって、検知された心臓の電気的活動に応答して頻拍性不整脈を停止させるための電気刺激が出力される。この装置は、検知されるチャンバの近傍に配置された内部電極を組み込んだ検知チャネルを経て心臓の固有電気活動を検知する。装置によって検知される心房又は心室の固有の収縮に関連する脱分極波はそれぞれ心房感知又は心室感知と呼ばれ、心室及び心房の心拍数は感知間の間隔を測定することによって判定できる。図にはさらに、迷走神経の経血管刺激のための直接の神経カフ又は内頚静脈内に設置された経血管リードでよい神経刺激電極110も示されている。電極110は装置100から上胸部又は頚部の静脈アクセス・ポイントへと皮下を通るリード105を介して装置100と通信している。
【0009】
図2はカルジオバージョン/除細動ショック、心室又は心房のいずれかへの抗頻拍ペーシング治療と神経刺激を施す能力を有するマイクロプロセッサを用いた心臓律動管理装置のシステム図である。装置のコントローラは双方向のデータ・バスを介してメモリ12と通信するマイクロプロセッサ10である。コントローラはステート・マシン型設計を利用した他の種類の論理回路(例えばディスクリート部品又はプログラム可能論理アレイ)によって実装されてもよいが、マイクロプロセッサを用いたシステムが好ましい。本明細書で用いられる用語「回路」はディスクリート論理回路又はマイクロプロセッサのプログラミングを意味するものと理解されたい。図にはリング電極33a〜c、チップ電極34a〜c、検知増幅器31a〜c、パルス発生器32a〜c、チャネル・インターフェース30a〜cを有する双極リードを備えた「a」から「c」で示された3つの検知とペーシングのチャネルの例が示されている。このように、各チャネルは電極に接続されたパルス発生器からなるペーシング・チャネルと、電極に接続された検知増幅器からなる検知チャネルとを含んでいる。チャネル・インターフェース30a〜cはマイクロプロセッサ10と双方向通信し、各インターフェースは検知増幅器からの検知信号入力をデジタル化するためのアナログ−デジタル変換器と、ペーシング・パルスを出力し、ペーシング・パルスの振幅を変更し、検知増幅器の利得としきい値を調整するためにマイクロプロセッサによって書き込み可能なレジスタとを含んでいる。ペースメーカーの検知回路は、特定のチャネルによって生成されたエレクトログラム信号(すなわち心臓の電気活動を表す電極によって検知された電圧)が特定の検知しきい値を超えると、心房感知又は心室感知のいずれかであるチャンバ感知を検出する。特定のペーシング・モードで用いられるペーシング・アルゴリズムはこのような感知を利用してペーシングを起動又は抑制する。固有の心房及び/又は心室拍数は心房と心室の感知間の時間間隔をそれぞれ測定することによって測定可能であり、心房性頻拍性不整脈と心室性頻拍性不整脈を検知するために利用される。
【0010】
各々の双極リードの電極はリード内の導体を経て、マイクロプロセッサによって制御されるMOSスイッチング・ネットワーク70に接続される。スイッチング・ネットワークは固有の心臓活動を検出するために電極を検知増幅器の入力に切り換えるために、かつペーシング・パルスを送るために電極をパルス生成器の出力に切り換えるために使用される。スイッチング・ネットワークはさらに、装置がリードのリング電極とチップ電極の双方を利用する双極モードで、又は装置のハウジング(カン)80を有するリードの電極の1つだけを利用するか、あるいはアース電極としての役割を果たす別のリード上の電極を利用する単極モードのいずれかで検知又はペーシングすることを可能にする。ショック・パルス発生器60もショックを与えることができる頻拍性不整脈が検知されると、一対のショック電極61を介して除細動ショックを心房又は心室に送るためのコントローラにインターフェースされている。
【0011】
コントローラには抗頻拍ペーシングが施される態様を決める複数の選択可能なATPペーシング・プロトコルがプログラムされてもよい。マイクロプロセッサを用いた装置では、ペーシング・パルスの出力は、様々なパラメータによって決まるように選択されたペーシング・プロトコルを実現するペーシング・ルーチンによって制御される。メモリに記憶されるデータ構造は利用可能なペーシング・プロトコルの各々を決めるパラメータ・セットを含んでいる。心拍数及び/又は脱分極パターンに関して異なることがある特定の頻拍性不整脈を停止させる際に、異なるプロトコルのほうが別のプロトコルよりも成功し易いことがある。このような理由から、現在の心臓律動管理装置は治療のために幾つかの異なるATPプロトコルを利用できる。
【0012】
神経刺激チャネルは副交感神経刺激及び/又は交感神経抑制を施すために装置に組み込まれ、一方のチャネルはリング電極43及びチップ電極44を有する双極リードと、パルス発生器42と、チャネル・インターフェース40とを含み、他のチャネルはリング電極53及びチップ電極54を有する双極リードと、パルス発生器52と、チャネル・インターフェース50とを含んでいる。他の実施形態は単極リードを使用してもよく、その場合、神経刺激パルスはカン又はその他の電極が基準とされる。各チャネル用のパルス発生器は、振幅、周波数、デューティサイクルをコントローラによって変更可能な一連の神経刺激パルスを出力する。この実施形態では、各神経刺激チャネルは、例えば交感神経抑制チャネルの場合は血圧受容器の近傍、又は副交感刺激チャネルの場合は副交感神経の近傍のような適宜の刺激部位の近傍の脈管内に装着可能なリードを使用する。他の種類のリード及び/又は電極を利用してもよい。神経刺激を与えるために脈管内に装着される電極の代わりに神経カフ電極を使用してもよく、その場合には電極は例えば、副交感神経刺激を与えるために頚部迷走神経束の周囲に、又は交感神経抑制を与えるために大動脈洞神経又は頸動脈洞神経の周囲に配置してもよい。別の実施形態では、神経刺激電極のリードの代わりにワイヤレス・リンクが用いられ、副交感神経刺激のための、かつ/又は交感神経抑制のための電極は衛星ユニットに組み込まれる。
【0013】
2.実装例
実施例では、図2に示されるようなATP治療、ショック療法、神経刺激を施す能力を有する埋込可能心臓装置は、頻拍性不整脈の検知に応答して段階的に治療を行うようにプログラムされる。神経刺激リードは例えば、高密度の血圧受容器の近傍の肺動脈内に装着される伸張自在の刺激リード、心臓脂肪体の1つの近傍に装着される経血管リード、心臓脂肪体内に装着される心外膜リード、又は大動脈、頸動脈もしくは迷走神経の周囲に装着されたカフ電極、あるいはこれらの神経の1つの近傍に装着された経血管リードであってよい。装置は従来のアルゴリズムを用いて頻拍性不整脈を検知し、漸次より積極的になる一連の治療で応答する。このような総合的な抗頻拍性不整脈治療は心房不整脈、心室不整脈、又はその双方に適用できる。
【0014】
装置は検知チャネルからの検知された活動に応答してプログラムされたマイクロプロセッサの制御の下で抗頻拍性不整脈の治療(すなわちATP治療、神経刺激、及び/又は除細動ショック)を施す。検知ルーチンは頻拍性不整脈を検知するために検知チャネルから受けた電気的活動を解析する。RR間隔と呼ばれる連続的な心室感知間の時間間隔が測定されることによって心室拍数が判定される。測定された心室拍数が頻拍検知拍数(TDR)を超える場合は心室性頻拍性不整脈が検知される。頻拍性不整脈が検知されると、心拍数と細動検知拍数(FDR)との比較によって律動は頻拍であるか細動であるかに分類される。TDRとFDRの数値例はそれぞれ150bpm及び200bpmである。心室拍数がFDR以上である場合は、生命を脅かす状況が生じ、装置は最も積極的な治療を即座に施すようにプログラムされる必要がある。したがって、本実施形態では、装置は細動であると分類された頻拍性不整脈に対して遅延なくショック療法又はショック療法と神経刺激との組合せを施すようにプログラムされる。しかしFDR未満の頻拍性不整脈については、装置は不要に積極的な介在を避ける目的で段階的に異なる治療を施すようにプログラムされてもよい。装置によって内科医は治療のための1段階又は複数段階をプログラムすることができ、各段階は1つ又は複数の利用できる治療を含むようにプログラムされる。TDRを超えるがFDR未満の頻拍性不整脈に応答して、1つが成功するまで段階的な手順で治療が施される。
【0015】
一実施形態では、治療は例えば下記の5段階で行われ、頻拍性不整脈が停止すると手順は停止される。
1.神経刺激
2.抗頻拍ペーシング
3.神経刺激+ATP
4.ショック療法
5.神経刺激+ショック療法
【0016】
図3は上記のアプローチを用いて頻拍性不整脈を停止させるために神経刺激、ATP治療、及び/又はショック療法を施すために特定のアルゴリズムで心律動管理によって実行される工程を示す流れ図である。ステップS1では、装置はRR間隔を測定し、現在の心拍数をHRcurrentとして記憶する。装置はステップS2で現在の心拍数とTDRとを比較することによって頻拍性不整脈が存在するか否かを判定する。頻拍性不整脈が検知され(例えば以前の10のRR間隔のうちの8つが60、000/TDRよりも速いかそれ未満であるかを判定することによる。ただしRR間隔とFDRはそれぞれミリ秒とbpmによってそれぞれ表される)、現在の心拍数がFDRを超える場合は、装置はステップS5に進み、ショック療法を施す。ステップS6での判定で依然として頻拍性不整脈が存在する場合は、次に装置はステップS7で神経刺激とともにショック療法を施し、ステップS1に戻る。ステップS3での判定で現在の心拍数がFDR未満である場合は、頻拍性不整脈はVTであると分類され、装置はステップS4aからS4hと示された治療手順を開始する。ステップS4aでは神経刺激が施される。ステップS4bとS4cとでVTが依然として存在し、心拍数が依然としてFDR未満であるものと判定されると、ステップ4dでATP治療が施される。ステップS4eとS4fとでVTが未だ停止せず、心拍数が依然としてFDR未満であることが判定されると、ステップS4gで神経刺激とともにATP治療が施される。次にステップS4hはVTが停止したか否かを判定する。停止している場合は、装置はステップS1に戻る。VTが依然として存在している場合は、装置は必要に応じてステップS5からS7を行い、ショック療法又は神経刺激と合わせたショック療法でVTを停止しようと試みる。治療手順中、ステップS4cとS4fで心拍数がFDR以上であることが判明した場合も、装置はステップS5からS7を行う。
【0017】
図3を参照して記載される実施形態は心室不整脈の処置に関するものである。心房の頻拍性不整脈を処置するために同じ段階的な治療手順を用いた同様のアルゴリズムを装置によって実行可能であろう。その場合は、心房感知間の間隔を測定することによって心房の頻拍性不整脈が検知され、TDRとFDRは心房拍数が基準とされ、ATP治療は心房ATPであり、ショック療法はAFを停止させるように意図されたカルジオバージョン・ショックである。装置は心室頻拍を停止させるために心室の抗頻拍ペーシング又はショックを施すように、また、心房の頻拍性不整脈を停止させるために心房の抗頻拍ペーシング又は心房変換ショックを施すように構成され、さらに装置が心房の頻拍性不整脈であるSVTと心室の頻拍性不整脈であるVTとを区別できることが重要である。装置がSVTとVTとを区別できる方法の1つは拍数に準拠したテストを利用して、VTを構成するのに充分に高い心室拍数が検知された場合に、心室拍数も心房拍数よりも大きければ不整脈がVTにカテゴリー分類されるようにすることである。これに対して心房拍数が心室拍数以上である頻拍は、VT、SVT又はVTとSVTの双方が同時に存在する二重頻拍である。VTはより重大な状態であり、即座に処置される必要があるので、VTが除外される前に拍数に準拠したテストは1回以上の追加の拍数準拠の判定基準に適合する必要がある。SVTの識別を補助するこのような判定基準には、心室拍数の不安定性、突然発症の欠如、特定の心房頻拍性不整脈のしきい値を超える心房拍数などが含まれる。これらの1つ以上の判定基準が満たされた場合に限り、頻拍はSVTであると分類される。SVTを心房細動のような処置を要する心房頻拍性不整脈であるとさらに分類し、又は不整脈であるとはみなされず処置の必要はないSTであると分類するためにも心房頻拍性不整脈のしきい値を利用できる。SVTをさらに精密に検知するため、SVTとVTとを区別するため上記の拍数準拠のテストの代わりに形態学/拍数の組合せに準拠したテストを用いてもよい。形態学/拍数の組合せに準拠したテストでは、STVを検知するための付加的な判定基準を得るためにエレクトログラム波形の形態学的解析に基づく形態学的判定基準が用いられる。例えば、1)心房拍数が心室拍数以上の場合、2)エレクトログラム波形の形態学的解析を含む形態学的判定基準によって、ある最小限の心室鼓動が正常に行われていると判定された場合に、SVTを検知することができる。SVTとVTを区別するための形態学的判定基準の例は、開示内容が参照により本明細書に組み込まれている、Cardiac Pacemaker Inc.に譲渡されている米国特許第6、449、503号明細書に記載されている。
【0018】
特定の一実施形態では、装置はTDR、FDR、治療段階数、各段階に含まれる特定の治療(1つ又は複数)に関してプログラムされる。装置は特定の頻拍検知拍数(TDR)と細動検知拍数(FDR)を決めるため、TDRの治療段階数を決め、各TDR段階に含めてもよい1つ以上の治療を選択するため、FDRの治療段階数を決め、各FDR段階に含めてもよい1つ以上の治療を選択するために、テレメトリ・インターフェース85(図2)を介してユーザー入力を受ける。TDR又はFDR段階に含めてもよい1つ以上の治療には、神経刺激、抗頻拍ペーシング(ATP)治療、ショック療法、さらに場合によっては薬品投与のような他の種類の頻拍性不整脈治療が含まれる。頻拍性不整脈が検知されると、次に装置は、心拍数がFDRを超えるのならば治療手順内の決められたFDR段階の治療を施し、頻拍性不整脈が停止すれば治療手順は停止される。頻拍性不整脈がFDR未満である場合は、装置は治療手順内の決められたTDR段階の治療を施し、頻拍性不整脈が停止すれば治療手順は停止される。図4は総合的治療で頻拍性不整脈を処置するために装置をプログラムする際にユーザーが講じるステップを示す。このような設定は心房と心室の頻拍性不整脈について別個にプログラム可能である。ステップA1で、ユーザーはTDRとFDRを決める。ステップA2で、FDR以上の頻拍性不整脈を処置するために用いられるFDR治療の数が決められる。ステップA3で、決められたFDR治療段階に含めるべき特定の治療(1つ又は複数)が選択される。ステップA4でTDRとFDRとの間の頻拍性不整脈を処置するために用いられるTDR治療段階の数が決められ、各TDRに含まれる治療(1つ又は複数)がステップA5で選択される。
【0019】
別の実施形態では、頻拍性不整脈が検知されると施される治療手順が、検知された心拍数に応じて変化するように装置がプログラムされてもよい。例えば、TDRとFDRとの間で複数の心拍数範囲が決められ、このような各心拍数範囲について異なる治療手順が決められてもよい。心拍数範囲の数や、範囲を決める境界はプログラム可能にしてもよく、フィーチャーを有効にするか否かのオプションで固定されてもよい。例えば、VTがVT又はFVT(急激VT)のいずれかに指定されるように、TDRとFDRとの間で2つの心拍数範囲が決められてもよい。次に各種類のVTについて別個の治療手順のプログラムが可能である。例えば、神経調整だけで開始される前述の治療手順をVT用に用い、一方、FTVにはATPとともに神経調整で手順を開始することもできよう。
【0020】
別の実施形態では、各治療について記録された成功/失敗率に基づいて、頻拍性不整脈を処置するために用いられる治療手順を自動的に変更するように装置がプログラムされてもよい。ある例では、装置はTDRとFDRとの間の複数の心拍数範囲について頻拍性不整脈を停止させる各治療の成功と失敗とを記録し、各心拍数範囲について各治療の成功/失敗率を計算する。特定の心拍数範囲での特定の治療の成功/失敗率が特定のしきい値未満に低下するか、治療手順内の別の治療との差の特定のしきい値未満に低下した場合は、成功しない治療は特定の心拍数範囲での治療手順から中断される。
【0021】
本発明を上記の特定の実施形態に関連して記載したが、当業者には多くの代替形態、変更及び修正が明らかであろう。このような代替形態、変更、修正は添付の特許請求の範囲に含まれることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】埋込可能心臓装置の物理的配置図である。
【図2】ATP、神経調整及びカルジオバージョン/除細動能力を有する心臓律動管理装置のブロック図である。
【図3】特定の実施形態で実行される治療工程を示す流れ図である。
【図4】特定の実施形態で実行される構成工程を示す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心室内の電気活動を示すエレクトログラム信号を生成するための検知チャネルと、
抗頻拍ペーシング(ATP)を施すためのペーシング・チャネルと、
ショック治療を施すためのショック・チャネルと、
神経刺激を施すための刺激チャネルと、
コントローラとを備え、そのコントローラが、
チャンバ感知を検知し、前記感知間の時間間隔を測定して現在の心拍数を判定し、
前記心拍数が特定の頻拍検知拍数(TDR)を超えた場合は頻拍性不整脈を検知し、
頻拍性不整脈が検知されると、前記心拍数が細動検知拍数(FDR)を超える場合はショック療法を施し、
前記FRD未満の頻拍性不整脈が検知されると、神経刺激を含む治療手順を施し、前記頻拍性不整脈が停止しなければ抗頻拍ペーシング(ATP)を施すようにプログラムされている、心臓装置。
【請求項2】
前記コントローラはさらに、ATP治療を施しても前記FDR未満の前記頻拍性不整脈が停止しない場合に、ATP治療とともに神経刺激を施すようにプログラムされている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラはさらに、ATP治療とともに神経刺激を施しても前記FDR未満の前記頻拍性不整脈が停止しない場合に、ショック療法を施すようにプログラムされている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記コントローラはさらに、ショック療法を施しても前記FDR未満の前記頻拍性不整脈が停止しない場合に、ショック療法とともに神経刺激を施すようにプログラムされている請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記コントローラはさらに、ショック療法を施しても前記FDR未満の前記頻拍性不整脈が停止しない場合にショック療法とともに神経刺激を施すようにプログラムされている請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記コントローラはさらに、各治療について記録された成功/失敗率に基づいて頻拍性不整脈の治療の用いられる治療の手順を変更するようにプログラムされている請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記コントローラはさらに、
前記TDRと前記FDRとの間の複数の心拍数範囲での頻拍性不整脈を停止させるための各種の治療に関する成功と失敗の数を記録し、
各心拍数範囲での各種の治療の成功/失敗率を計算し、
特定の心拍数範囲での治療の前記成功/失敗率が特定のしきい値未満である場合は、前記特定の心拍数範囲での頻拍性不整脈を処置する前記治療のさらなる使用を中断するようにプログラムされている請求項4に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラはさらに、前記心拍数が前記FDRを超える場合、ショック療法とともに神経刺激を施すようにプログラムされている請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記神経刺激によって副交感神経活動を誘発させる請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記神経刺激によって交感神経抑制が誘発される請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記コントローラはさらに、前記TDRと前記FDRとの間の複数の心拍数範囲での頻拍性不整脈を停止させるための各種の治療に関する成功と失敗の数を記録し、
各心拍数範囲での各種の治療の成功/失敗率を計算し、
特定の心拍数範囲での治療の前記成功/失敗率と前記治療手順での別の治療の特定の成功/失敗率との差が特定のしきい値未満である場合は、前記特定の心拍数範囲で頻拍性不整脈を処置する前記治療のさらなる使用を中断するようにプログラムされている請求項4に記載の装置。
【請求項12】
心室内の電気活動を示すエレクトログラム信号を生成するための検知チャネルと、
抗頻拍ペーシング(ATP)を施すためのペーシング・チャネルと、
ショック治療を施すためのショック・チャネルと、
神経刺激を施すための刺激チャネルと、
コントローラとを備え、そのコントローラが、
特定の頻拍検知拍数(TDR)と細動検知拍数(FDR)とを決めるためにユーザー入力を受け、
TDR治療段階の回数を決め、各TDR段階に含める1つ又は複数の治療を選択するユーザー入力を受け、
FDR治療段階の回数を決め、各FDR段階に含める1つ又は複数の治療を選択するユーザー入力を受け、
チャンバ感知を検知し、前記感知間の時間間隔を測定して現在の心拍数を判定し、
前記心拍数が前記TDRを超えた場合は頻拍性不整脈を検知し、
頻拍性不整脈が検知されると、前記心拍数が前記FDRを超える場合は治療手順で前記規定のFDR段階の前記治療を施し、前記頻拍性不整脈が停止すれば前記治療手順が停止され、
前記FDR未満の頻拍性不整脈が検知されると、治療手順で前記規定のTDR段階の前記治療を施し、前記頻拍性不整脈が停止すれば前記治療手順が停止されるようにプログラムされている、心臓装置。
【請求項13】
TDR又はFDR段階に含まれる1つ又は複数の治療は神経刺激、抗頻拍ペーシング(ATP)治療、ショック療法を含む請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−539893(P2008−539893A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510246(P2008−510246)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/017375
【国際公開番号】WO2006/121836
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(505003528)カーディアック・ペースメーカーズ・インコーポレーテッド (466)
【Fターム(参考)】