説明

緑化舗装及び緑化舗装方法

【課題】車両や人の通行による植生植物へのダメージが小さく、水遣りの回数が少なくても植物が枯れ難い、緑化舗装及び緑化舗装方法を提供する。
【解決手段】本発明の緑化舗装は、車両や人が通行したり停止したりする区域を緑化するために敷設される緑化舗装であって、車両や人の通行を可能とするために上方に突出して設けられた多数の荷重支持部と、芝等の緑化植物を植生するために該支持部間に設けられた多数の植生凹部とを有し、該植生凹部内には、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマーと、繊維状物質と、を含有する保水部材が充填されており、該保水部材は該吸水性ポリマーが乾燥した状態においても該繊維状物質どうしの絡み合いによって空隙を有しつつ形状が保たれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駐車場や歩道等、車両や人が通行したり停止したりする区域において、芝などの緑化植物の生育を行うことができる、緑化舗装及び緑化舗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、駐車場や歩道等は、アスファルトやコンクリートで舗装されることが多い。しかし、景観の向上やヒートアイランド現象の問題、さらには地球温暖化の原因となる炭酸ガス低減の必要性等の理由から、舗装を緑化したいという要請がある。
【0003】
こうした要請に応えるべく、図8に示すように、車両や人の通行を可能とするために上方に突出して設けられた荷重支持部100と、芝等の緑化植物を植生するために該支持部間に設けられた植生凹部101とを有する緑化ブロックが四方に多数敷設された緑化舗装が知られている(特許文献1)。
【0004】
この緑化舗装によれば、車両や人の通行時の荷重が荷重支持部100に加わるため、植生凹部101に植生された植物にかかる加重負荷が軽減される。このため、車両や人の通行と、植物の育成とを両立させることができる。
【0005】
また、プラスチック成形体からなる同様の緑化舗装も提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−150505号公報
【特許文献2】特開2004−254510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の緑化舗装では、緑化舗装の下(すなわち基盤)が一定の保水量の確保が可能な土壌等に限られていた。このため、駐車場や歩道等の一定の保水量の確保が困難な既存構造物の上では、植物の生育が困難となるため、施工できなかった。このような場合において、既存構造物上に土を被覆して、緑化舗装を行うことも考えられるが、荷重制限によって困難となることも多かった。
【0008】
また、上記従来の緑化舗装では、荷重支持部が車両や人の通行による荷重負荷を受け持ち、芝等の植物には荷重負荷はかからないように植生凹部に植えられる。しかしながら、実際には、以下のような理由により、植物に大きな荷重負荷がかかってしまう。すなわち、植生凹部には植物を生育させるために、通常は土が充填されており、植物は生育するにしたがって大きくなる。このため、植生凹部の植物に植生された植物は、荷重支持部の上端よりも突出することとなる。このため、緑化舗装上を車等が通行する場合、タイヤと土との間に植物が挟まれ大きな圧力で踏まれることとなるのである。
また、緑化舗装がプラスチック等の弾性体からなる場合は、構造体自体が車等から受ける荷重によって塑性変形し、タイヤと土との間隔が狭くなり、植物はさらに大きな圧力を受けることとなる。
このため、植生凹部内やその下に存在する土が自動車や人の重量によって踏み固められ、植物の根の周りの空気が排除されることとなり、植物の生育環境が悪化していた。
【0009】
本発明は上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、既設の駐車場や歩道等の構造物の上であっても施工可能であり、車両や人の通行による植生植物へのダメージが小さく、植物の生育環境が良好となり、水遣りの回数が少なくても植物が枯れ難い、緑化舗装及び緑化舗装方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の緑化舗装は、車両や人が通行したり停止したりする区域を緑化するために敷設される緑化舗装であって、車両や人の通行を可能とするために上方に突出して設けられた多数の荷重支持部と、芝等の緑化植物を植生するために該支持部間に設けられた多数の植生凹部とを有し、該植生凹部内には、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマーと、繊維状物質と、を含有する保水部材が充填されており、該保水部材は該吸水性ポリマーが乾燥した状態においても該繊維状物質どうしの絡み合いによって空隙を有しつつ形状が保たれていることを特徴とする。
【0011】
本発明の緑化舗装では、植生凹部内に大きな保水量の確保を可能とする吸水ポリマーを含む保水部材が充填されているため、少ない保水部材で多量の保水が可能である。このため、保水部材の厚さを薄くしても充分な保水量を確保でき、しかも緑化舗装自体の軽量化が可能となる。このため、水遣りの回数を大幅に減らすことができるとともに、重量制限のあるような既存構造物上においても施工することができる。さらには、砂、砕石、アスファルト、コンクリート、金属等様々な基盤の上に施工することができる。また、上記従来の緑化舗装では施工できなかった、屋上や、駐車場や歩道などにおいても施工可能となる。このため、既存設備の撤去費用が不要となり、施工費用を低廉化することが可能である。
【0012】
また、本発明の緑化舗装上を車両や人が通る場合、タイヤや足の裏は、上方に突出して設けられた多数の荷重支持部と当接するため、植生凹部に直接当接することはない。このため、車両や人の通行時の荷重が荷重支持部に加わり、植生凹部に植生された植物にかかる荷重が軽減される。
【0013】
さらに、保水部材には、吸水性ポリマーが乾燥した状態においても繊維状物質どうしの絡み合いによって空隙を有しつつ形状が保たれているため、植生凹部内に植生されている植物にとって極めて重要な根周辺の空気を確保することができる。このため、植物の育成環境が極めて好適なものとなる。しかも、乾燥した吸水性ポリマーは繊維状物質に絡み付いているため、吸水性ポリマーが吸水と乾燥とを繰り返しても、吸水性ポリマーどうしが集まって大きな塊となることはない。このため、乾燥後、吸水性ポリマーが再び吸水する際に、迅速に吸水することができる
【0014】
また、保水部材が空隙を有するという構造は、緑化舗装上を車両等が通行する場合において、車両等による荷重から植物を保護する役割を果たすことができる。すなわち、緑化舗装上を車等が通行する場合において、タイヤと保水部材との間に植物が挟まれたとしても、保水部材自体がクッションの役割をするため、植物に大きなストレスがかかることはない。また、緑化舗装がプラスチック等の弾性体からなる場合において、構造体自体が車等から受ける荷重によって塑性変形し、タイヤと保水部材との間隔が狭くなっても、同様に保水部材自体がクッションの役割をするため、植物に大きなストレスがかかることはない。さらには、吸水性ポリマーが吸水している状態ではゲル状となるため、極めて弾力に冨み、やはり保水部材自体がクッションの役割をするため、植物に大きなストレスがかかることはない。さらには、吸水性ポリマーを無機繊維の表面に付着させているので、吸水性ポリマーのみが剥がれて、植生凹部から抜け出ることはない。
【0015】
したがって、本発明の緑化舗装によれば、既設の駐車場や歩道等の構造物の上であっても施工可能であり、車両や人の通行による植生植物へのダメージが小さく、植物の生育環境が良好となり、水遣りの回数が少なくても植物が枯れ難い。
【0016】
保水部材に用いる繊維状物質としては、吸水性ポリマーが乾燥した状態においても繊維状物質どうしの絡み合いによって空隙を有しつつ形状が保たれるものであれば特に限定はなく、無機繊維や有機化学繊維や有機天然繊維等を用いることができる。具体的には、例えばロックウールやガラス繊維等の無機繊維、ポリプロピレン、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維等の有機化学繊維、セルロース繊維や羊毛繊維などの天然繊維等を用いることができる。この中でも、耐候性や耐熱性に優れた無機繊維が好ましい。特に好ましいのはロックウールである。また、複数の繊維状物質を混合してもよい。こうすることによって、それぞれの繊維の利点を相乗的に発揮させることができる(例えば、耐候性や耐熱性に優れた無機繊維と、機械的特性に優れた化学繊維を組み合わせることなどが挙げられる。)
【0017】
一方、保水部材に用いる吸水性ポリマーとしては特に限定はなく、例えばポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩等のアクリル系ポリマーや、それらの各種変性ポリマーを用いることができる。具体的には、(株)日本触媒製のアクリ
ホープ、住友精化(株)のアクアキープ、サンダイヤポリマー(株)のアクアパール等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図2のI−I矢視断面図である。
【図2】緑化舗装本体1の平面図である。
【図3】緑化舗装本体1の植生凹部4に保水部材6を充填した状態の断面図である。
【図4】実施例の緑化舗装の施工時における各工程ごとの写真である。
【図5】実施例の緑化舗装の上に芝ブロックを置いた状態の断面図である。
【図6】芝ブロックの上からローラ車で転圧した後の断面図である。
【図7】保水部材6の部分拡大図である。
【図8】従来の緑化舗装のためのブロックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の緑化舗装の実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
(実施例1)
<保水部材原液の調製>
以下の割合で薬剤を秤り取る。
・アクリル酸重合体部分ナトリウム塩架橋物(吸水性ポリマー)
((株)日本触媒製 アクリホープ) 30〜50重量部
・ロックウール
(日本ロックウール(株)製 粒状綿) 500〜1500重量部
・粘土(クニミネ工業(株)製 ベントナイト) 50〜200重量部
・増粘剤(ダイセル化学工業(株)製 CMC) 5〜100重量部
次に、秤り取った薬剤を水10000重量部中に入れ、撹拌混合し、コロイド状の保水部材原液を得る。
【0020】
<緑化舗装本体の用意>
図1に示す緑化舗装本体1を用意する。
この緑化舗装本体1はポリプロピレンの成形体からなり、図1に示すように、中空の略四角錐の上端を切り取った形状の荷重支持部2が、連結部材3によって四方に数多く連結されたシート状の構造となっている。荷重支持部2の上端は面一とされ、図2に示すように、中央に四角い孔2aが形成されている。また、荷重支持部2の下端は正八角形に水平に広がった足部2bが形成されている。
【0021】
連結部材3は板状をなし、荷重支持部2の頂点方向から見た場合、荷重支持部2の側壁から互いに垂直となるように十字状に四方に延在しており、隣の荷重支持部2の側壁に接続されている。そして、連結部材3の中央部分は高さが低くされている(図1参照)。これにより、植生凹部4が形成されている。
【0022】
<緑化舗装の作製>
次に、この緑化舗装本体1を用いて駐車場の緑化舗装を作るには、次のように施工する。すなわち、まず、図3に示すように、緑化したい場所の基盤5(例えば既存のアスファルトを敷設した駐車場や歩道など)に、上記緑化舗装本体1を、敷設し(図4a参照)、上記の保水部材原液を緑化舗装本体1の上から注ぎ、植生凹部4に保水部材6を充填する(図4b参照)。注ぐ量としては、荷重支持部2の上端より少し低い位置程度が好ましい。こうして、実施例1の緑化舗装が完成する。
【0023】
<芝の植生>
次に、実施例1の緑化舗装を用いて芝を貼る施工法について示す。図5に示すように、土を取り除いて根が剥き出しとなった芝ブロック7を構造本体1の上に敷き詰め(図4c参照)、その上からローラ車で転圧し(図4d参照)、図6に示すように、芝ブロック7が荷重支持部2に突き刺さった状態とする。これにより、芝ブロック7の根7aの部分が保水部材6と当接し、根が水を吸い上げ可能となり、駐車場の緑化舗装が完了する(図4e参照)。
【0024】
以上のようにして芝が貼られた緑化舗装を車両や人が通る場合、タイヤや足の裏が、上方に突出して設けられた多数の荷重支持部2と当接するため、植生凹部4に直接当接することはない。このため、車両や人の通行時の荷重が荷重支持部2に加わり、植生凹部4に植生された植物にかかる荷重が軽減される。
【0025】
また、植生凹部4に充填されている保水部材6は、図7に示すように、吸水性ポリマー6aが乾燥した状態においても、ロックウール6bどうしの絡み合いによって空隙を有しつつ形状が保たれている。このため、芝にとって極めて重要な根周辺の空気を確保することができ、芝の根周辺の育成環境が極めて好適なものとなる。
【0026】
また、吸水性ポリマー6aが吸水する際、吸水による膨潤が妨げられることがないので、吸水性ポリマー6aの持つ本来の特性を十分に発揮して適切に吸水することができる。このため、少ない水遣りで芝を枯らすことなく育成させることができる。しかも、吸水性ポリマー6aがロックウール6bの表面に付着させているので、吸水性ポリマー6aのみが剥がれて、植生凹部4から抜け出ることはない。
【0027】
さらには、乾燥した吸水性ポリマー6aはロックウール6bに絡み付いているため、吸水性ポリマー6aが吸水と乾燥とを繰り返しても、吸水性ポリマー6aどうしが集まって大きな塊となることはない。このため、乾燥後、吸水性ポリマー6aが再び吸水する際に、迅速に吸水することができる
【0028】
また、緑化舗装上を車等が通行する場合において、タイヤと保水部材との間に植物が挟まれたとしても、多くの空隙を有する保水部材6自体がクッションの役割をする。このため、芝に大きなストレスがかかることはない。また、緑化舗装本体1は弾性体であるポリプロピレンからなるため、緑化舗装本体1自体が車等から受ける荷重によって塑性変形し、タイヤと保水部材との間隔が狭くなっても、同様に保水部材自体がクッションの役割をするため、植物に大きなストレスがかかることはない。
【0029】
さらには、吸水性ポリマー6aが吸水している状態ではゲル状となるため、吸水状態において極めて弾力に冨み、保水部材6自体がクッションの役割をするため、植物に大きなストレスがかかることはない。
【0030】
したがって、実施例の緑化舗装によれば、既設の駐車場や歩道等の構造物の上であっても施工可能であり、車両や人の通行による植生植物へのダメージが小さく、植物の生育環境が良好となり、水遣りの回数が少なくても植物が枯れ難い。
【0031】
また、保水部材6の保水量が多いことから、保水部材6の厚さを薄くでき、さらには、砂や砕石の上のような保水量の少ない地盤であっても施工可能となる。また、土壌の上の緑化舗装のみならず、駐車場や歩道等の既存構造物の上のような荷重制限がある箇所においても、敷設することが可能となる。
【0032】
この発明は上記発明の実施の態様及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1…緑化舗装本体
1a…荷重支持部
1b…地盤
2…荷重支持部
3…連結部材
4…植生凹部
5…基盤
6…保水部材
6a…吸水性ポリマー
6b…ロックウール
7…芝ブロック
7a…根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両や人が通行したり停止したりする区域を緑化するために敷設される緑化舗装であって、
車両や人の通行を可能とするために上方に突出して設けられた多数の荷重支持部と、
芝等の緑化植物を植生するために該支持部間に設けられた多数の植生凹部とを有し、
該植生凹部内には、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマーと、繊維状物質と、を含有する保水部材が充填されており、
該保水部材は該吸水性ポリマーが乾燥した状態においても該繊維状物質どうしの絡み合いによって空隙を有しつつ形状が保たれていることを特徴とする緑化舗装。
【請求項2】
該繊維状物質は無機繊維からなることを特徴とする請求項1記載の緑化舗装。
【請求項3】
車両や人が通行したり停止したりする区域を緑化するための緑化舗装方法であって、
車両や人の通行を可能とするために上方に突出して設けられた多数の荷重支持部と、芝等の緑化植物を植生するために該支持部間に設けられた多数の植生凹部とを有する緑化舗装本体を、緑化しようとする場所に敷設する工程と、
該敷設された該緑化舗装本体の該植生凹部に、吸水と乾燥とを繰り返し行うことが可能な吸水性ポリマーと繊維状物質とを含有する保水部材を、該吸水性ポリマーが乾燥した状態においても該繊維状物質どうしの絡み合いによって空隙を有しつつ形状が保たれた状態となるように充填する工程と、
を備えることを特徴とする緑化舗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−65584(P2012−65584A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212925(P2010−212925)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(505156938)株式会社加藤組 (4)
【Fターム(参考)】