説明

緑色感光性樹脂組成物及びそれを用いたカラーフィルタ

【課題】液晶表示装置用のカラーフィルタにハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いる際に問題であった光照射による色変化を解消し、信頼性の高いカラーフィルタを得ること。
【解決手段】少なくとも着色剤、エポキシ化合物、光重合性モノマー、光重合開始剤を含んでなる緑色感光性樹脂組成物で、前記着色剤がハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であって、前記エポキシ化合物が1分子中に不飽和エチレン性結合を有するエポキシ化合物を含有することを特徴とし、加えて、前記エポキシ化合物の着色感光性樹脂組成物の着色剤を除いた全固形分に対する重量比が15〜30%の範囲にあることを特徴とする緑色感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置等に用いられるカラーフィルタの製造に使用されるカラーフィルタ用緑色感光性樹脂組成物、及びこれを用いて形成されるカラーフィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、携帯電話・デジタルカメラ等の小面積のものからパーソナルコンピュータの表示装置・テレビなどの大面積のものまで広く普及が進んでいる。これらの液晶表示装置については、輝度や色再現性、コントラストなどの性能をより高めることが要求されており、液晶表示装置を構成する部材であるカラーフィルタにおいても、さらなる高明度化や高色再現性、高コントラスト化などが望まれている。
【0003】
上記のような、色再現域が広くかつ輝度が高いカラーフィルタを形成するために、最近では、カラーフィルタを構成する緑色フィルタセグメントの形成には、主顔料として、従来のハロゲン化銅フタロシアニン顔料(例えば、臭素化銅フタロシアニン顔料からなるC.I.ピグメントグリーン36や、塩素化銅フタロシアニン顔料からなるC.I.ピグメントグリーン7など)に代わり、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料(例えば、C.I.ピグメントグリーン58など)が用いられるようになってきた。
【0004】
しかしながら、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンは優れた着色剤であると同時に、有機半導体としても知られる材料であり、特に脱気下において光照射によりフタロシアニンラジカルとなって安定することが知られており(特許文献1、2)、ハロゲン化亜鉛フタロシアニンを着色剤として用いる場合には大きな問題となっている。すなわち、フタロシアニンラジカルは吸光波長が基底状態のフタロシアニンとは吸光の波長がずれてしまうため、着色剤として用いた場合には色が変化して見えてしまう。この現象は特に液晶表示装置のように空気とは完全に遮断された状態で用いられる場合に顕在化し、改善が望まれている。
【0005】
この類似の現象に対する解決の試みとして、ニトロソナフトール類およびベンゾフェノンから選ばれる化合物を含有等させることが提案されている(特許文献3)。しかしながら、この技術はフタロシアニン錯塩染料および顔料を用いた染色法によるカラーフィルタに用いられることを想定した技術であり、近年の微細化処理を行った顔料を着色剤とする顔料分散法、またフォトリソグラフィー法によるカラーフィルタに用いるためには顔料の分散適性、フォトリソグラフィー適性など解決すべき課題が多数あった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2949230号公報
【特許文献2】特許第2958461号公報
【特許文献3】特許第2661135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、液晶表示装置用のカラーフィルタにハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いる際に問題であった光照射による色変化を解消し、信頼性の高いカラーフィルタを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の構成を取ることによって上記課題を解決した。すなわち、上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、少なくとも、着色剤、エポキシ化合物、光重合性モノマー、光重合開始剤を含有する緑色感光性樹脂組成物において、前記着色剤がハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であって、前記エポキシ化合物が、エチレン性不飽和二重結合を有するエポキシ化合物であることを特徴とする緑色感光性樹脂組成物である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記エポキシ化合物が緑色感光性樹脂組成物の着色剤を除いた全固形分中に15%〜30%の範囲であることを特徴とする緑色感光性樹脂組成物である。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、透明基板と、この透明基板上に形成された、2色以上の多色のフィルタセグメントを具備するカラーフィルタにおいて、前記フィルタセグメントが、請求項1〜2のいずれかに記載の緑色感光性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とするカラーフィルタである。
【発明の効果】
【0011】
本発明を用いることにより、液晶表示装置用のカラーフィルタにハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いる際に問題であった光照射による色変化を解消できるため、信頼性が高く、表示特性に優れたカラー液晶表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のカラーフィルタ用緑色感光性樹脂組成物について詳細に説明すると共に、着色感光性樹脂組成物の一般的製法、カラーフィルタ基板の製造方法について詳述する。
【0013】
カラーフィルタにおける緑色画素の着色剤に用いる有機顔料のうち、鮮やかで明るい色を実現することができることから、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン58(PG58)が広く用いられるようになってきた。しかしながら、背景技術で詳述したように、前記顔料は光反応性を有する為、カラーフィルタの緑色画素として用いられた場合、空気が遮断された液晶表示装置の中に組み込まれると、その光反応性から色が変化してしまっていた。特に、コントラストを向上させるために顔料粒径を小さくしていくとその傾向が顕著となるため、PG58を含有する緑色画素を有するカラーフィルタの耐光性を確保することが難しくなっていた。
【0014】
そこで、本発明者らは、緑色画素の色の変化の原因が光で生ずるフタロシアニンラジカルアニオンであることを推定し、その対策を検討した。すなわち、フタロシアニンラジカルアニオンの発生を抑制させる官能基を有する化合物を含有させることで、緑色画素の耐光性が飛躍的に向上することを見出した。
【0015】
本発明の緑色感光性樹脂組成物は、少なくとも着色剤、エポキシ化合物、光重合性モノマー、光重合開始剤を含有し、前記着色剤がハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であり、前記エポキシ化合物が1分子中にエチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物であることを特徴とするものである。
【0016】
さらに、前記緑色感光性樹脂組成物において、着色剤を除いた前記エポキシ化合物の全固形分に対する重量比が15〜30%の範囲にあることを特徴とするものである。また、本発明の緑色感光性樹脂組成物は、必要に応じて、透明樹脂、溶剤、その他成分を用いて構成することができる。
【0017】
本発明の緑色感光性樹脂組成物においては、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物が含有される。エポキシ化合物中のオキシラン環により、光照射時のフタロシアニン分子の光反応において、電子供与性官能基をトラップすることにより、フタロシアニンラジカルアニオンの発生を抑制することができるので、酸素遮断下のような条件においても優れた耐候性を示すこととなる。また、本発明におけるエポキシ化合物は、たとえば、ビニル基、アクリロイル基といったエチレン性不飽和結合の官能基を有していることから、硬化物の架橋密度を調整し、塗膜の耐溶剤性、耐薬品性にも優れたものとなる。一方、前記エポキシ化合物が芳香環を有する芳香族エポキシ化合物である場合は、芳香環と顔料分子との間で相互作用が生じやすく、耐候性はむしろ悪化するため、好ましくない。
【0018】
上記のエポキシ化合物としては、例えば、グリシジルメタクリレート、ナガセケムテックス社製のデナコールEX−111、ダイセル化学工業社製のサイクロマーM100、などが挙げられ、それぞれ単独に、または二種類以上を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの単独重合体、その他のビニル系モノマーとの共重合体として用いることもできる。
【0019】
前記ビニル系モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、4−t−ブチルメタクリレートなどの各種メタクリレート類が挙げられる。
【0020】
前記エポキシ化合物の含有量は、フォトリソグラフィ適正を損なわない範囲で多い方が好ましく、緑色感光性樹脂組成物の着色剤を除いた全固形分に対して15〜30%であることが好ましい。この範囲より含有量が少ないと光で生ずるフタロシアニンラジカルアニオンを失活させる効力がなく、この範囲より含有量が多いと感光性樹脂組成物の感度や、現像性、パターニング性が著しく低下してしまう。
【0021】
<緑色感光性樹脂組成物>
その他、本発明に係る緑色感光性樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0022】
‐着色剤‐
本発明の緑色感光性樹脂組成物に用いることのできる着色剤の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0023】
着色剤としては、C.I.ピグメントグリーン58の緑色顔料を主体に、その他に適宜C.I.ピグメントグリーン7、36等の緑色顔料や黄色顔料を併用することができる。
【0024】
黄色顔料としてはC.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、144、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214等が挙げられる。
【0025】
着色剤として上記顔料を用いる場合には、適宜、樹脂型顔料分散剤、色素誘導体、界面活性剤等の分散剤を用いることができる。分散剤の添加量は特に限定されるものではないが、着色剤100重量%に対して、好ましくは0.1〜40重量%、より好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは1〜10重量%の量で用いることができる。
【0026】
‐透明樹脂‐
本発明の緑色感光性樹脂組成物に用いることのできる透明樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂である。透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの非感光性樹脂、および感光性樹脂が含まれる。さらには必要に応じて、その前駆体である、放射線照射により硬化して透明樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0027】
非感光性樹脂は、エチレン性不飽和二重結合を有しない樹脂であり、熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等が挙げられる。但し、これらの樹脂はアルカリ可溶性を示さない。
【0028】
現在、現像液としては、環境に対する影響の少ないアルカリ現像液が多く使用されている。このため、樹脂バインダーとしてアルカリ可溶型の樹脂を使用することが望ましい。アルカリ可溶型の非感光性透明樹脂とは、アルカリ水溶液に溶解する性質を持つ、エチレン性不飽和二重結合を有しない透明樹脂であり、このようなアルカリ可溶型の非感光性樹脂として具体的には、酸性官能基を有するアクリル樹脂、α−オレフィン−(無水)マレイン酸共重体、スチレン−(無水)マレイン酸共重合体、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、イソブチレン−(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。なかでも、酸性官能基を有するアクリル樹脂、α−オレフィン−(無水)マレイン酸共重合体、スチレン−(無水)マレイン酸共重合体およびスチレン−スチレンスルホン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂が好適に用いられる。
【0029】
感光性樹脂としては、反応性官能基を有する線状高分子に、この反応性官能基と反応可能な置換基を有する(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等を反応させて、エチレン不飽和二重結合を該線状高分子に導入した樹脂が挙げられる。また、反応性官能基を有する(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等に、この反応性官能基と反応可能な置換基を有する線状高分子を反応させて、エチレン不飽和二重結合を該線状高分子に導入した樹脂が挙げられる。前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等が例示でき、この反応性官能基と反応可能な置換基としては、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等が例示できる。
【0030】
また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子を、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも、感光性樹脂として使用できる。
【0031】
‐光重合性モノマー‐
光重合性モノマーとしては、水酸基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレートを用いることができる。
【0032】
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性ペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロカラクトン変性ペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルプロピルメタクリレート、エポキシ基含有化合物とカルボキシ(メタ)アクリレートの反応物、水酸基含有ポリオールポリアクリレート等が挙げられる。
【0033】
また、多官能イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
なお、本発明の緑色感光性樹脂組成物における経時安定性および現像性と、形成された着色層のタック性を考慮すると、光重合性モノマーの含有量は、緑色感光性樹脂組成物の20重量%以下であることが好ましい。また、露光感度、パターンの解像性および耐溶剤性の観点から、1重量%以上であることが好ましい。
【0035】
‐光重合開始剤‐
本発明における光重合開始剤としては、オキシムエステル系重合開始剤が好適に使用できる。例えば、1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、O−(アセチル)−N−(1−フェニル−2−オキソ−2−(4'−メトキシ−ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)である。
他の重合開始剤を併用することもできる。このような重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサンソン系化合物、トリアジン系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が例示できる。また、ベンゾイン系化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が例示できる。ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド等が例示できる。チオキサンソン系化合物としては、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等が例示できる。トリアジン系化合物としては、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリルs−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4 '−メトキシスチリル)−6−トリアジン等が例示できる。ホスフィン系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が例示できる。また、キノン系化合物としては、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等を例示できる。光重合開始剤の使用量は、緑色感光性樹脂組成物の全固形分量を基準として0.5〜50重量%が好ましく、より好ましくは3〜30重量%である。
【0036】
さらに、光重合開始剤に加えて光増感剤を併用することもできる。光増感剤としては、アミン系化合物を例示することができる。トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルパラトルイジン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'−ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン等である。光増感剤の使用量は、光重合開始剤と光増感剤の合計量を基準として0.5〜60重量%が好ましく、より好ましくは3〜40重量%である。
【0037】
さらに、緑色感光性樹脂組成物には、連鎖移動剤としての働きをする多官能チオールを含有させることができる。多官能チオールは、チオール基を2個以上有する化合物であればよく、例えば、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、1,4−ブタンジオールビスチオプロピオネート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオグリコレート、エチレングリコールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、トリメルカプトプロピオン酸トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−(N,N−ジブチルアミノ)−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等が挙げられる。
【0038】
‐溶剤‐
本発明に係る緑色感光性樹脂組成物には、必要に応じて有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
【0039】
次に、本発明になる緑色感光性樹脂組成物の調製方法について説明する。前記緑色感光性樹脂組成物は、例えば、光重合性モノマー、透明樹脂、顔料、分散剤及び溶剤とから下記(1)〜(4)のいずれかの方法により調製することができる。
【0040】
(1): 光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液に、顔料と分散剤を予め混合して調製した顔料組成物を添加して分散させ、残りの成分を添加する。
【0041】
(2): 光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液に、顔料と分散剤を別々に添加して分散させた後、残りの成分を添加する。
【0042】
(3): 光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液に、顔料を分散させた後、顔料分散剤を添加した後、残りの成分を添加する。
【0043】
(4): 光重合性モノマー又は透明樹脂、あるいはその両者を溶剤に溶解した溶液を2種類調製し、顔料と分散剤を予め別々に分散させてから、これらを混合し、残りの成分を添加する。なお、顔料と分散剤のうち一方は溶剤にのみ分散させても良い。
【0044】
ここで、顔料や分散剤の分散は、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、ディゾルバー、ハイスピードミキサー、ホモミキサー、アトライター、ペイントコンディショナー等の各種分散装置を用いて行うことができる。
【0045】
また、顔料と分散剤を予め混合して顔料組成物を調製する場合、粉末の顔料と粉末の分散剤を単に混合するだけでも良いが、(a)ニーダー、ロール、アトライター、スーパーミル等の各種粉砕機により機械的に混合するか、(b)顔料を溶剤に分散させた後、分散剤を含む溶液を添加し、顔料表面に分散剤を吸着させるか、(c)硫酸等の強い溶解力を持つ溶媒に顔料と分散剤を共溶解した後、水等の貧溶媒を用いて共沈させるなどの混合方法を採用することが好ましい。
【0046】
<カラーフィルタの製造方法>
以下に、本発明のカラーフィルタを得るための方法を記述する。本発明のカラーフィルタは少なくとも透明基板上に複数色の画素を備えており、当該複数色の画素は少なくとも着色層から構成されている。複数色には赤、緑、青(加法混色型)の組み合わせやイエロー、マゼンダ、シアン(減法混色型)の組み合わせが挙げられるが、本発明のカラーフィルタは緑色画素を有するカラーフィルタに対して特に好ましく適用できる。
【0047】
本発明の方法に用いられる透明基板は可視光に対してある程度の透過率を有するものが好ましく、より好ましくは80%以上の透過率を有するものを用いることができる。一般に液晶表示装置に用いられているものでよく、PETなどのプラスチック基板やガラスが挙げられるが、通常はガラス基板を用いるとよい。遮光パターンを用いる場合はあらかじめ該透明基板上にクロム等の金属薄膜や遮光性樹脂によるパターンを公知の方法で付けたものを用いればよい。
【0048】
本発明における透明基板上への着色層の形成は、フォトリソグラフィ法により下記の方法で行う。すなわち、少なくとも着色剤、エポキシ化合物、光重合性モノマー、光重合開始剤を含有する着色感光性樹脂組成物を透明基板上に、スプレーコートやスピンコート、スリットコート、ロールコート等の塗布方法により、乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布する。必要により乾燥された膜には、この膜と接触あるいは非接触状態で設けられた所定のパターンマスクを介して、高圧水銀灯などを光源として紫外線露光を行う。その後、溶剤またはアルカリ現像液に浸漬するか、もしくはスプレーなどにより現像液を噴霧して未硬化部を除去し所望のパターンを形成する。その後、パターン形成された着色層の重合を促進するため、必要に応じて加熱を施すこともできる。
【0049】
現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液
が使用され、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。なお、紫外線露光感度を上げるために、上記着色感光性樹脂組成物を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ可溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
【0050】
以上の一連の工程を、着色感光性樹脂組成物および画素のパターンを替え、必要な数だけ繰り返すことで複数色の画素を備えるカラーフィルタを得ることができる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
【0052】
<樹脂型分散剤溶液の調製>
市販の樹脂型分散剤である、チバ・ジャパン社製「EFKA4300」と、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いて不揮発分40重量%溶液に調製し、樹脂型分散剤溶液として使用した。
【0053】
<分散樹脂の調整>
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器に、シクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より
ベンジルメタクリレート 13.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2.9部
メタクリル酸 1.6部
パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート 11.6部
(東亞合成株式会社社製「アロニックスM110」)
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4部
の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分30重量%、重量平均分子量30000の顔料分散に用いる樹脂溶液を調製した。
【0054】
<アクリル樹脂の調整>
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器に、シクロヘキサノン70.0部を仕込み、80℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下管より
n−ブチルメタクリレート 5.3部
ベンジルメタクリレート 7.1部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 2.9部
メタクリル酸 1.8部
パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート 12.5部
(東亞合成株式会社社製「アロニックスM110」)
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 0.4部
の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、固形分30重量%、重量平均分子量30000のアクリル樹脂溶液を調製した。
【0055】
<緑色顔料分散体の調整>
ハロゲン化亜鉛フタロシアニン系緑色顔料 11.0部
(C.I.ピグメントグリーン58、大日本インキ化学工業(株)製
「FASTOGEN Green A10」)
樹脂型分散剤溶液 2.5部
分散樹脂溶液 40.0部
エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート 46.5部
の混合物を均一に撹拌混合した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、アイガーミル(アイガージャパン社製「ミニモデルM−250 MKII」)で5時間分散した後、5.0μmのフィルタで濾過し緑色顔料分散体を調整した。
【0056】
<緑色感光性樹脂組成物の調整>
【実施例1】
【0057】
下記の割合で調整した混合物を均一になるように攪拌混合した後、1.0μmのメンブレンフィルタ(ミリポア社製)で濾過して、緑色感光性樹脂組成物1を得た。
【0058】
エポキシ化合物 3.9部
(ナガセケムテックス社製「EX−111」)
光重合性モノマー 2.6部
(東亜合成社製「アロニックスM-402」)
光重合開始剤: チバ・ジャパン社製「イルガキュアOXE−02」
0.2部
チバ・ジャパン社製「イルガキュア379」
0.8部
着色剤(上記緑色顔料分散体) 50.0部
溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート) 42.5部
【実施例2】
【0059】
緑色感光性樹脂組成物の調整におけるエポキシ化合物に、大阪有機化学工業社製のグリシジルメタクリレートを用いた以外は実施例1と同様にして、緑色感光性樹脂組成物2を得た。
【実施例3】
【0060】
緑色感光性樹脂組成物の調整におけるエポキシ化合物に、ダイセル化学工業社製のサイクロマーM100を用いた以外は実施例1と同様にして、緑色感光性樹脂組成物3を得た。
【実施例4】
【0061】
緑色感光性樹脂組成物の調整において、エポキシ化合物EX―111を2.6部用いた以外は実施例1と同様にして、緑色感光性樹脂組成物4を得た。
【実施例5】
【0062】
緑色感光性樹脂組成物の調整において、エポキシ化合物EX―111を2.0部用いた以外は実施例1と同様にして、緑色感光性樹脂組成物5を得た。
【0063】
<比較例1>
緑色感光性樹脂組成物の調整において、エポキシ化合物を用いず、上記調整したアクリル樹脂溶液を13.0部用い、感光性樹脂組成物の固形分調整として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを33.4部とした以外は実施例1と同様にして、緑色感光性樹脂組成物6を得た。
【0064】
<比較例2>
緑色感光性樹脂組成物の調整におけるエポキシ化合物に、ナガセケムテックス社製のEX
―121を用いた以外は実施例1と同様にして、緑色感光性樹脂組成物7を得た。
【0065】
<比較例3>
緑色感光性樹脂組成物の調整におけるエポキシ化合物に、ナガセケムテックス社製のEX―141を用いた以外は実施例1と同様にして、緑色感光性樹脂組成物8を得た。
【0066】
<比較例4>
緑色感光性樹脂組成物の調整において、エポキシ化合物EX―111を1.5部用いた以外は実施例1と同様にして、緑色感光性樹脂組成物9を得た。
【0067】
<比較例5>
緑色感光性樹脂組成物の調整において、エポキシ化合物EX―111を6.0部用いた以外は実施例1と同様にして、緑色感光性樹脂組成物10を得た。
【0068】
(耐光性評価)
得られた緑色感光性樹脂組成物1〜10を、スピンコーターにてガラス基板(100mm×100mm、0.7mm厚)に、乾燥膜厚が2μmとなるように塗布し、塗布基板を得た。次に、減圧乾燥後、超高圧水銀ランプを用いて、積算光量200mJ、照度30mWで紫外線露光を行った。25℃の0.2重量%の炭酸ナトリウム水溶液にて60秒間スプレー現像後、クリーンオーブンにて230℃で1時間加熱焼成することで、それぞれの感光性樹脂組成物の硬化塗膜を得た。この硬化塗膜上に、酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明電極膜(膜厚1500Å)をスパッタリング法により形成し、評価用のサンプルを得た。耐光性は、作成したサンプルをキセノンウェザーメーターCi35A(ALTAS社製)にて、照度0.5mW/cm(340nm)、温度63℃、湿度50%の条件下にて200時間照射し、照射前後の分光特性を顕微分光光度計OSP−SP100(オリンパス光学社製)で測定し、色差(ΔE*ab)を求め、顕微鏡にて試験後の外観観察をすることで評価を行った。耐候性評価の判定基準については、○:ΔE*ab≦3、×:ΔE*ab>3、とした。
【0069】
実施例1〜5および比較例1〜5の結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

表1の結果から、以下のことが明らかである。すなわち、ハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を用いた緑色感光性樹脂組成物において、フタロシアニンラジカルアニオンの発生を抑制させる、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物を含有することで耐候性が改善されていることがわかる。
【0071】
これに対し、エポキシ化合物を含有していない、一般的なアクリル樹脂を用いた比較例1では、耐候性は悪い。また、エチレン性不飽和結合を有さない比較例2においては、耐候性はよいものの、塗膜としてのパターニング適性に欠ける結果となった。比較例3においては、ベンジル基起因で耐候性の悪化も見られていた。比較例4においては、エポキシ化合物の含有量が少なく、耐候性改善に十分でなく、比較例5においては、エポキシ化合物の含有量が多いため、感度が低く、現像速度の低下が見られており、パターニング適性に欠ける結果となった。
【0072】
以上のように、感光性樹脂組成物にエチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物を含有させることにより、耐候性に優れたハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料を含有する感光性樹脂組成物となり、酸素遮断下においても信頼性に優れた高表示品質のカラーフィルタを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、着色剤、エポキシ化合物、光重合性モノマー、光重合開始剤を含有する緑色感光性樹脂組成物において、前記着色剤がハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料であり、前記エポキシ化合物が、エチレン性不飽和二重結合を有するエポキシ化合物であることを特徴とする緑色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化合物が緑色感光性樹脂組成物の着色剤を除いた全固形分中に対して15%〜30%の範囲で含まれることを特徴とする緑色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
透明基板と、この透明基板上に形成された、2色以上の多色のフィルタセグメントを具備するカラーフィルタにおいて、前記フィルタセグメントが、請求項1または2に記載の緑色感光性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項4】
請求項3に記載のカラーフィルタを備えることを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2011−257591(P2011−257591A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131827(P2010−131827)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】