説明

緑色野菜の退色防止方法

【課題】他の食材に接触したり加熱調理や冷凍保存したりしても、退色することがなく、かつ食感の良好な緑色野菜が得られる緑色野菜の退色防止方法を提供すること。
【解決手段】緑色野菜を重曹および食塩を含有する水溶液に浸漬する。好ましくは、上記水溶液として、重曹濃度が0.1〜0.5質量%および食塩濃度が0.5〜3.0質量%である水溶液を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑色野菜の退色防止方法、および該退色防止方法により退色が防止された緑色野菜およびその冷凍品に関する。
【背景技術】
【0002】
惣菜などに用いられるピーマンなどの緑色野菜は、他の食材、特に酸性を呈する食材に接触したり、加熱調理や冷凍保存することにより、色が落ちてしまうことがある。惣菜は、外観が購買意欲をそそる場合が多いため、緑色野菜の色落ちを防ぐことは最重要の課題である。
【0003】
このような課題を解決するものとして、特許文献1には、即席野菜天ぷらにおける野菜の鮮明な色彩を保持させるために、野菜を、重曹および食用油脂を含有するコロモ液で被覆する方法が提案されている。しかし、この方法では、緑色野菜の油ちょう時の退色を防止することはできるものの、食感が低下してしまうとの問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開昭54−23139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、他の食材に接触したり加熱調理や冷凍保存したりしても、退色することがなく、かつ食感の良好な緑色野菜が得られる緑色野菜の退色防止方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を、緑色野菜を重曹および食塩を含有する水溶液に浸漬することを特徴とする緑色野菜の退色防止方法を提供することにより解決したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の緑色野菜の退色防止方法によれば、他の食材に接触したり加熱調理や冷凍保存したりしても、退色することがなく、かつ食感の良好な緑色野菜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の緑色野菜の退色防止方法を、その好ましい実施態様に基づいて詳しく説明する。
【0009】
本発明の退色防止方法により処理される緑色野菜としては、少なくとも表面が緑色をしたものであり、緑黄色野菜、淡色野菜、豆類などが挙げられ、例えば、緑ピーマン、ブロッコリー、野沢菜、サヤインゲン、アスパラ、にんにくの芽、チンゲンサイなどが挙げられる。
【0010】
上記緑色野菜を浸漬する重曹および食塩を含有する水溶液としては、重曹濃度が0.1〜0.5質量%および食塩濃度が0.5〜3.0質量%である水溶液が好ましく、重曹濃度が0.2〜0.3質量%および食塩濃度が1.5〜2.5質量%である水溶液がより好ましい。
水溶液の重曹濃度が低すぎると、野菜の緑色が鮮やかにならず、また水溶液の重曹濃度が高すぎると、煮崩れし、形を保てない。また、水溶液の食塩濃度が低すぎると、野菜の緑色が鮮やかにならず、また水溶液の食塩濃度が高すぎると、塩辛くて喫食に適さない。
【0011】
上記緑色野菜は、カットせずにそのまま上記水溶液に浸漬してもよく、該緑色野菜を使用する食品の種類に応じて食材として適当な大きさ、形状にカットして上記水溶液に浸漬してもよい。
上記浸漬は、好ましくは70〜100℃に加熱した上記水溶液、より好ましくは70〜80℃に加熱した上記水溶液に、上記緑色野菜を浸漬するのが好ましい。上記水溶液の温度が70℃未満であると、生のままである、殺菌効果が得られない、処理の効果が上がらない場合がある。
また、浸漬時間は、緑色野菜の種類により適宜調整するのが好ましいが、上記温度の範囲内に加熱した水溶液に浸漬する場合、通常、1〜10分間程度であり、好ましくは3〜5分間である。
【0012】
上記水溶液に浸漬した緑色野菜は、水冷し、水切り後、そのまま、緑色野菜を含む食品の食材として使用してもよく、また、水切り後、冷凍して、冷凍緑色野菜とすることもできる。この冷凍は、一般の野菜の冷凍方法に準じて行えばよく、急速冷凍でも緩慢冷凍でもよいが、好ましくは急速冷凍である。
本発明の退色防止方法により退色が防止された本発明の緑色野菜は、従来の緑色野菜と同様にして、緑色野菜を含む食品の食材として使用することができる。また、本発明の緑色野菜を冷凍してなる本発明の冷凍緑色野菜は、自然解凍または電子レンジ、スチームなどを用いて解凍してから本発明の緑色野菜と同様にして食材として使用することができ、また緑色野菜を含む食品の種類によっては冷凍状態のまま食材として使用することもできる。
【0013】
本発明の緑色野菜および冷凍緑色野菜が使用される上記の緑色野菜を含む食品としては、制限されるものではなく、例えば、惣菜類、弁当類、米飯類、調理麺類などが挙げられるが、特に、食品の外観に緑色野菜が現れる食品、例えば、食材の緑色野菜として緑ピーマンを使用したナポリタン、チンゲンサイを使用した中華焼きそば、グリンピースを使用したチャーハンなどが好ましい。
【実施例】
【0014】
次に、本発明をさらに具体的に説明するために、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0015】
実施例1
沸騰水中に重曹および食塩を投入し、重曹濃度が0.2質量%および食塩濃度が2質量%の水溶液を調製した。この水溶液(水溶液の温度80℃)に緑ピーマンを投入し、水溶液を加熱しながら水溶液の温度が80℃に達するまで緑ピーマンを水溶液に浸漬した。浸漬時間は4分間であった。
浸漬後、緑ピーマンを水切りして、水冷し、本発明の退色防止方法により退色が防止された緑ピーマンを得た。
【0016】
比較例1
沸騰水中に重曹のみを投入し、重曹濃度が0.4質量%の水溶液を調製し、この水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして緑ピーマンを処理した。
【0017】
比較例2
沸騰水中に食塩のみを投入し、食塩濃度が3質量%の水溶液を調製し、この水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして緑ピーマンを処理した。
【0018】
評価試験例1
実施例1および比較例1〜2で得た緑ピーマンについて、室温に24時間放置後の食感および色ならびに冷凍状態で7日間保存後に電子レンジで解凍した直後の食感および色を、10名のパネラーに下記評価基準により評価させた。その評価結果(10名のパネラーの平均点)を表1に示す。
【0019】
(食感の評価基準)
5点:シャキシャキとして歯ごたえがある。
4点:ややシャキシャキとして歯ごたえがある。
3点:ややフニャフニャとして歯ごたえに欠ける。
2点:フニャフニャとして歯ごたえに欠ける。
1点:フニャフニャとして著しく歯ごたえに欠ける。
【0020】
(色の評価基準)
5点:鮮やかな緑色である。
4点:やや鮮やかな緑色である。
3点:やや褐色をしてあせた色である。
2点:褐色をしてあせた色である。
1点:褐色をして著しくあせた色である。
【0021】
【表1】

【0022】
使用例1
ナポリタンに使用する食材の緑ピーマンとして実施例1で得た緑ピーマンを使用した以外は、ナポリタンの一般的な製造方法によりナポリタンを製造した。このナポリタンの外観は、緑ピーマンが鮮やかな緑色で美味しそうであった。また、このナポリタンを食したところ、緑ピーマンの食感が良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑色野菜を重曹および食塩を含有する水溶液に浸漬することを特徴とする緑色野菜の退色防止方法。
【請求項2】
水溶液の重曹濃度が0.1〜0.5質量%および食塩濃度が0.5〜3.0質量%である請求項1記載の緑色野菜の退色防止方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の退色防止方法により退色が防止された緑色野菜。
【請求項4】
請求項3記載の緑色野菜を冷凍してなる冷凍緑色野菜。

【公開番号】特開2009−17859(P2009−17859A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184953(P2007−184953)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(398012306)日清フーズ株式会社 (139)
【Fターム(参考)】