線材保持具及びそれを備えた医療用線材セット
【課題】巻き留め作業を行うことなく、医療用の線材を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる線材保持具及びそれを備えた医療用線材セットを提供する。
【解決手段】医療用線材セット200は、細径で長尺なガイドワイヤ12と、ガイドワイヤ12を収納するホルダチューブ202と、ホルダチューブ202を渦巻形状に保持するための形状保持具208とを備える。形状保持具208は、線材保持具10Aとして利用される。そして、線材保持具10Aには、ホルダチューブ202の一部が着脱可能なホルダ溝24a、24b、24cと、使用済みのガイドワイヤ12を複数回周回して束ねた集束体38を平面視で8の字状にした状態で、該集束体38の一部38aを保持する第1溝部34と、第1溝部34の延在方向に直交する方向に延在して該集束体38の他の一部38bを保持する第2溝部とが形成されている。
【解決手段】医療用線材セット200は、細径で長尺なガイドワイヤ12と、ガイドワイヤ12を収納するホルダチューブ202と、ホルダチューブ202を渦巻形状に保持するための形状保持具208とを備える。形状保持具208は、線材保持具10Aとして利用される。そして、線材保持具10Aには、ホルダチューブ202の一部が着脱可能なホルダ溝24a、24b、24cと、使用済みのガイドワイヤ12を複数回周回して束ねた集束体38を平面視で8の字状にした状態で、該集束体38の一部38aを保持する第1溝部34と、第1溝部34の延在方向に直交する方向に延在して該集束体38の他の一部38bを保持する第2溝部とが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の線材を複数回周回して束ねた集束体を平面視で8の字状に保持する線材保持具及びそれを備えた医療用線材セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管等の生体器官内にカテーテルを導入して該生体器官内の病変部(例えば、狭窄部)を処置することが広汎に行われている。この種の処置では、通常、生体器官内に長尺なガイドワイヤを先行して導入し、該ガイドワイヤに沿わせるようにカテーテルを該生体器官内に挿入する。そして、カテーテルを目的部位まで到達させた後、該カテーテルからガイドワイヤを抜去する。抜去された使用済みのガイドワイヤは廃棄される。
【0003】
また、一般的に、ガイドワイヤは、その使用前の状態において、渦巻状に巻かれたホルダチューブに収納されており、前記ホルダチューブは、隣接するチューブ同士を保持具によって固定することにより所定の渦巻形状となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4280526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、使用済みのガイドワイヤは、コンパクトな廃棄形状にした上で廃棄することが望ましい。そのため、通常、術者(使用者)等は、使用済みのガイドワイヤを複数回周回して束ねて平面視で円状の集束体にした状態で廃棄する。しかしながら、単に前記ガイドワイヤを周回しただけでは、該ガイドワイヤの弾性により該ガイドワイヤの束が散けることがある。その結果、該集束体を平面視で円状に保持することができなくなる。
【0006】
前記集束体の形状を保持させるための対策としては、該ガイドワイヤの一端側又は両端側の所定領域を該集束体のガイドワイヤの束に複数回巻き付けて留める(巻き留めする)ことが考えられる。しかしながら、この場合、巻き留めをする際に、該ガイドワイヤに付着している血液や薬液等が飛散して術者や機器類等に付着する可能性がある。また、ガイドワイヤには、通常、親水性コーティングや潤滑性コーティングが被覆されているため、使用済みのガイドワイヤは滑りやすく、巻き留めしたとしても散けてしまうことが多々ある。さらに、弾性のあるガイドワイヤの一端側の所定領域を塑性変形させる必要があるので、巻き留め作業に多大な時間を要することがある。
【0007】
ところで、本出願人は、ガイドワイヤを複数回周回して束ねて平面視で円状の集束体にした状態で、該集束体の対向する部位を半径方向内側に近づけると、該集束体が平面視で8の字状に付勢される(8の字状で安定する)ことを見出した。つまり、前記ガイドワイヤをコンパクトな廃棄形状にするためには、前記円状の集束体を平面視で8の字状に保持するとよいことがわかった。
【0008】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、巻き留め作業を行うことなく、医療用の線材を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる線材保持具及びそれを備えた医療用線材セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1で特定される発明は、可撓性を有する医療用の線材を複数回周回して束ねた集束体を平面視で8の字状に保持する線材保持具であって、平面視で8の字状にされた集束体の一部を保持可能な第1溝部と、前記第1溝部の延在方向に対して平面視で交差する方向に延在し、且つ、該集束体の他の一部を保持可能な第2溝部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項1で特定される発明によれば、医療用の線材を複数回周回して束ねた集束体を交差部が形成されるように平面視で8の字状にしているので、該集束体には、その捩り方向に平面視で円状(O字状)に戻ろうとするモーメント(戻りモーメントと称する。)が作用している。そして、第1溝部の延在方向と第2溝部の延在方向とが平面視で交差しているので、該集束体のうち時計回り方向の戻りモーメントが作用している部位(集束体の一部)を前記第1溝部で保持すると共に、該集束体のうち反時計回り方向の戻りモーメントが作用している部位(集束体の他の一部)を前記第2溝部で保持することができる。これにより、本発明に係る線材保持具を用いて、該集束体を平面視で8の字状に保持することができる。よって、医療用の線材を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる。また、前記線材に血液や薬液等が付着していた場合であっても、巻き留め作業を行う必要がないので、該血液や該薬液等が飛散して術者や機器等に付着することも好適に抑えることができる。
【0011】
本願の請求項2で特定される発明は、請求項1記載の線材保持具において、前記第1溝部の延在方向と前記第2溝部の延在方向とが、平面視で互いに直交していることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項2で特定される発明によれば、第1溝部の延在方向と第2溝部の延在方向とが平面視で互いに直交しているので、平面視で8の字状にされた集束体の交点付近を前記第1溝部と前記第2溝部で好適に保持することができる。これにより、例えば、該集束体の交点から離れた位置を前記第1溝部と前記第2溝部で保持する場合に比べて、線材保持具をコンパクトにすることができる。
【0013】
本願の請求項3で特定される発明は、請求項2記載の線材保持具において、前記第1溝部の開口方向と前記第2溝部の開口方向とが、平面視で互いに直交していることを特徴とする。
【0014】
本願の請求項3で特定される発明によれば、第1溝部の開口方向と第2溝部の開口方向とが平面視で互いに直交しているので、平面視で8の字状にされた集束体の交点付近を第1溝部と第2溝部に容易に配設させることができる。
【0015】
本願の請求項4で特定される発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の線材保持具において、保持具本体と、前記保持具本体に立設された側部と、前記側部の上端部に前記保持具本体と対向するように設けられた突出部と、を備え、前記保持具本体の一部が前記第1溝部の一方の溝側面を形成し、前記突出部の前記保持具本体に対向する側の面が前記第1溝部の他方の溝側面を形成し、前記第1溝部の他方の溝側面には、該第1溝部の開口部に向かうに従って前記保持具本体とは反対側に傾斜するテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0016】
ところで、使用済みの線材は、複数回周回して束ねて円状(楕円状)の集束体にした状態でバット(トレー)等に載置されることがある。
【0017】
本願の請求項4で特定される発明によれば、前記集束体の一部が保持具本体に対向配置されるように突出部の上面をバットの載置面に接触させ、該集束体を前記バットに抑えた状態で、線材保持具をスライドさせることにより、該集束体の一部をテーパ面に滑らせながら第1溝部内に導入させることができる。これにより、該集束体の一部を簡単に前記第1溝部内に配設させることができる。
【0018】
本願の請求項5で特定される発明は、前記第1溝部及び前記第2溝部のうち少なくともいずれか一方は、該集束体が離脱することを阻止する離脱阻止部を有することを特徴とする。
【0019】
本願の請求項5で特定される発明によれば、離脱阻止部を設けることによって、第1溝部又は第2溝部に対して集束体を一層確実に保持することができる。
【0020】
本願の請求項6で特定される発明は、可撓性を有する医療用の線材と、使用前の前記線材が収納されたホルダチューブと、前記ホルダチューブを渦巻状又は巻回状に保持するために、該ホルダチューブのうち互いに隣接する部位を一体的に保持する形状保持具と、を備えた医療用線材セットであって、前記形状保持具は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の線材保持具であることを特徴とする。
【0021】
本願の請求項6で特定される発明によれば、上述した請求項1〜5のいずれか1項で特定される発明と同様の効果を奏する。また、形状保持具を線材保持具として利用することができる。そのため、医療用線材セットに形状保持具とは別に線材保持具を用意する必要がないので、部品点数を削減することができると共に、製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る線材保持具によれば、第1溝部の延在方向と第2溝部の延在方向とが平面視で交差しているので、集束体を平面視で8の字状に保持することができる。これにより、医療用の線材を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる。なお、前記線材に血液や薬液等が付着していた場合であっても、巻き留め作業を行う必要がないので、該血液や薬液等が飛散することも抑えることができる。
【0023】
また、本発明に係る医療用線材セットによれば、形状保持具を線材保持具として利用することができるので、部品点数を削減することができると共に、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る線材保持具の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る線材保持具の第1溝部に集束体の一部を配設する手順を説明するための説明図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った一部省略断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る線材保持具を用いて集束体を平面視で8の字状に保持した状態を示す斜視図である。
【図5】図4の一部省略拡大平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る線材保持具の斜視図である。
【図7】図6の一部を切り欠いた状態を示す斜視図である。
【図8】第2の実施の形態に係る線材保持具を用いて集束体を平面視で8の字状に保持した状態を示す斜視図である。
【図9】図8の一部省略拡大平面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る線材保持具の斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る線材保持具の斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿った断面図である。
【図13】第4の実施の形態に係る線材保持具を用いて第1の方法により集束体を平面視で8の字状に保持した状態を示す斜視図である。
【図14】図13の一部省略拡大平面図である。
【図15】第4の実施の形態に係る線材保持具を用いて第2の方法により集束体を平面視で8の字状に保持した状態を示す斜視図である。
【図16】図15の一部省略拡大平面図である。
【図17】第4の実施の形態に係る線材保持具の変形例を示す斜視図である。
【図18】本発明に係る医療用線材セットの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る線材保持具及びそれを備えた医療用線材セットについて、好適な実施形態例を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態に係る線材保持具)
先ず、第1の実施の形態に係る線材保持具10Aについて説明する。本実施の形態に係る線材保持具10Aは、使用済みのガイドワイヤ(線材)12を所定の廃棄形状に保持するためのものであって、後述するホルダチューブ202(図18参照)を渦巻形状(巻回形状)に保持するための形状保持具としても兼用される。
【0027】
ガイドワイヤ12は、生体器官(例えば、血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等)内に形成された病変部の改善又は診断に用いられる図示しないカテーテルを該病変部に導くために用いられる。また、ガイドワイヤ12は、細径で長尺な高弾性の金属線(超弾性合金等)で形成されている(図2参照)。その金属線の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金等が用いられる。
【0028】
第1の実施の形態に係る線材保持具10Aの斜視図を図1に示す。この図1では、説明の便宜上、左方向をXa方向、右方向をXb方向、手前方向をYa方向、奥方向をYb方向、下方をZa方向、上方向をZb方向とする。
【0029】
線材保持具10Aは、樹脂等で構成されており、図1に示すように、略直方体状に形成された保持具本体14と、前記保持具本体14のXa側の端部からZb方向に立設した第1側部16と、前記第1側部16の上端部からXb方向に突出した第1突出部18と、前記保持具本体14のXb側の端部からZb方向に立設した第2側部20と、前記第2側部20の上端部から前記第1突出部18の突出方向(Xb方向)と前記保持具本体14の高さ方向(Zb方向)とがなす平面に対して直交する方向、すなわちYa方向に突出した第2突出部22とを備えている。
【0030】
保持具本体14のうち第1側部16と第2側部20との間には、前記ホルダチューブ202の一部が着脱可能であり互いに平行な複数(3つ)のホルダ溝24a、24b、24cが前記第1側部16に沿ってY方向に延在するように形成されている。ホルダ溝24a、24b、24cのそれぞれは、断面略半円状に形成されている。ホルダ溝24a、24b、24cのそれぞれの両端は、保持具本体14の端面に開口している。
【0031】
また、ホルダ溝24a、24b、24cは、その延在方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に所定間隔離間して配置されている。そのため、ホルダ溝24a及びホルダ溝24b間の壁部26の上端部と、ホルダ溝24b及びホルダ溝24c間の壁部28の上端部は、断面半円状に形成されている。
【0032】
保持具本体14におけるホルダ溝24aの開口部の壁部26とは反対側に連なる第1平坦面30、保持具本体14におけるホルダ溝24cの開口部の壁部28とは反対側に連なる第2平坦面32、壁部26の上端部、及び、壁部28の上端部は同一平面上に位置している。この理由については後述する。
【0033】
第1側部16のY方向の長さは、ホルダ溝24aのY方向の長さと同一に設定されている。第1側部16のホルダ溝24aが位置する側、すなわち第1側部16のXb側の側面16aは、断面略半円状に形成されている。第1突出部18の先端部(Xb方向の端部)は、先細りのテーパ状となっている。これにより、第1突出部18には、その先端に向かうに従ってZb方向に傾斜するテーパ面18bが形成されることとなる。
【0034】
第1平坦面30と、第1突出部18のテーパ面18bに連続する下面18aは、第1側部16の側面16aに終端する。その結果、第1平坦面30、第1側部16の側面16a、第1突出部18の下面18a、及び、第1突出部18のテーパ面18bによって延在方向の両端が開放(開口)した第1溝部34が形成される。第1溝部34は、複数本のガイドワイヤ12を配設可能な大きさとなっている(図3及び図4参照)。
【0035】
第2側部20は、ホルダ溝24aの延在方向(Y方向)に沿って延在しており、そのZ方向の高さは、第1側部16のZ方向の高さと略同一に設定されている。ホルダ溝24aの延在方向(Y方向)における第2側部20と第2突出部22を合わせた長さ、すなわち、第2側部20のYb方向の端部から第2突出部22の先端(Ya方向の端部)までの長さは、第1側部16の長さと同一に設定されている。第2側部20のうち第2突出部22が位置する側(Ya側)の側面20aは、断面略半円状に形成されている。
【0036】
第2平坦面32と、第2突出部22の下面22aとは、第2側部20の側面20aに終端する。その結果、第2平坦面32、第2側部20の側面20a、及び、第2突出部22の下面22aによって延在方向(X方向)の両端が開放(開口)した第2溝部36が形成される。第2溝部36は、複数本のガイドワイヤ12が配設可能な大きさとなっている(図4参照)。なお、第2溝部36の延在方向(X方向)は、第1溝部34の延在方向(Y方向)に対して直交している。
【0037】
次に、以上のように構成される線材保持具10Aに使用済みのガイドワイヤ12を保持する手順について説明する。
【0038】
通常、術者は、図2に示すように、生体器官内に形成された病変部の改善又は診断に用いられた使用済みのガイドワイヤ12を複数回周回して束ねて平面視で円状(楕円状)の集束体38にした状態でバット(トレー)40内に載置する。このとき、集束体38は、その外方向の広がりがバット40の側壁によって抑えられているので、平面視で円状に保持される。
【0039】
そして、術者は、図3に示すように、第1側部16と第2側部20の間に集束体38の(ガイドワイヤ12の束)一部(以下、第1部位38aともいう。)が位置するように、第1突出部18の上面と第2突出部22の上面をバット40の載置面に接触させる。
【0040】
その後、術者等は、一方の手で集束体38の他の部位をバット40の載置面に押し付けた状態で、第1側部16が第1部位38aに近接するように、載置面に対して線材保持具10Aを他方の手でスライドさせる。これにより、第1部位38aは、テーパ面18bを滑り上がり第1溝部34内に導入されて配設される。
【0041】
続いて、術者等は、集束体38の第1部位38aを第1溝部34内に配設させた状態で集束体38をバット40から引き上げて、集束体38の第1部位38aに対向する第2部位38bを該第1部位38aに近づけることにより、集束体38は平面視で8の字状となる。その後、平面視で8の字状となった集束体38の第2部位38bを第2溝部36に配設させる(図4参照)。これにより、集束体38の第1部位38aが第1溝部34に保持され、集束体38の第2部位38bが第2溝部36に保持される。
【0042】
このとき、第1平坦面30、第2平坦面32、壁部26の上端部、及び、壁部28の上端部が同一平面上に位置しているので、壁部26の上端部及び壁部28の上端部に対して平面視で8の字状にした集束体38を滑らせることにより、該集束体38の第2部位38bを第2溝部36内に容易に導入させることができる。
【0043】
なお、図5に示すように、集束体38の第2部位38bを第2溝部36に配設した状態で、平面視で8の字状にされた集束体38の交点Pは、投影平面視で保持具本体14の上に位置している。
【0044】
平面視で8の字状にされた集束体38には、その捩じり方向に平面視で円状(O字状)に戻ろうとするモーメント(戻りモーメント)が作用している。そして、本実施の形態に係る線材保持具10Aでは、第1溝部34の延在方向と第2溝部36の延在方向とが交差しているので、集束体38のうち図4の矢印A方向から見て時計回り方向の戻りモーメントが作用している第1部位(集束体38の一部)38aを第1溝部34で保持すると共に、集束体38のうち前記矢印A方向から見て反時計回り方向の戻りモーメントが作用している第2部位(集束体38の他の一部)38bを第2溝部36で保持することができる。
【0045】
これにより、集束体38を平面視で8の字状に保持することができる。よって、ガイドワイヤ12を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる。また、使用済みのガイドワイヤ12に血液や薬液等が付着していた場合であっても、巻き留め作業を行う必要がないので、該血液や該薬液等が飛散して術者や機器等に付着することも好適に抑えることができる。
【0046】
本実施の形態に係る線材保持具10Aは、第1溝部34の開口方向と、第2溝部36の開口方向とが平面視で互いに直交しているので、平面視で8の字状にされた集束体38の交点P付近を第1溝部34と第2溝部36に容易に配設させることができる。
【0047】
本実施の形態に係る線材保持具10Aによれば、ホルダ溝24aの両端が保持具本体14の端面に開口し、第1溝部34の長さをホルダ溝24aの長さと同一に設定しているので、例えば、第1溝部34の長さをホルダ溝24aの長さの半分以下に設定した場合と比較して、集束体38の第1部位38aが第1溝部34から外れ難くすることができる。なお、第1側部16の側面16aと第2側部20の側面20aは、断面略半円状に形成されている例に限らず、断面多角形状等に形成されていてもよい。
【0048】
(第2の実施の形態に係る線材保持具)
次に、第2の実施の形態に係る線材保持具10Bについて図6〜図9を参照しながら説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。後述する第3及び第4の実施の形態においても同様である。
【0049】
図6に示すように、本実施の形態に係る線材保持具10Bでは、第2側部42のY方向の長さが上述した線材保持具10Aの第2側部20のY方向の長さよりも短く設定され、その結果、空いたスペースに側部44が設けられている。つまり、側部44は、保持具本体14の他方の端部(Xb側の端部)に立設されており、そのZ方向の高さは、第2側部42と同一に設定されている。側部44及び第2突出部22の間には、ガイドワイヤ12の直径よりも大きな隙間46が形成されている。
【0050】
また、第1側部48のうち第2溝部36に対向する部位には、該第2溝部36の断面形状に対応した断面形状の第3溝部50が形成されている(図7参照)。なお、第3溝部50の一方(Za方向)の溝側面は、第1平坦面30と略同一の高さに位置しており、第3溝部50の他方(Zb方向)の溝側面は、第1側部52の下面52aと略同一の高さに位置している。そして、第1突出部52には、ホルダ溝24aの延在方向と直交する方向に切れ目54が形成されている。該切れ目54は、前記第3溝部50にまで達している。なお、切れ目54の幅は、ガイドワイヤ12の直径よりも大きく設定されている。
【0051】
本実施の形態に係る線材保持具10Bでは、図8及び図9に示すように、平面視で8の字状にした集束体38の第2部位38bを第2溝部36及び第3溝部50に配設して保持する。これにより、集束体38の第2部位38bを線材保持具10Bに対して一層確実に保持することができる。
【0052】
本実施の形態に係る線材保持具10Bでは、第2溝部36又は第3溝部50を省略しても構わない。この場合であっても、第2溝部36又は第3溝部50で集束体38の他の一部38bを保持することが可能である。
【0053】
(第3の実施の形態に係る線材保持具)
次に、第3の実施の形態に係る線材保持具10Cについて図10を参照しながら説明する。
【0054】
図10に示すように、本実施の形態に係る線材保持具10Cでは、第1側部56におけるY方向の一端部(Ya側の端部)に上述した線材保持具10Bの第3溝部50の断面形状に対応した溝部58が形成されている。また、第1側部56におけるY方向の他端部(Yb側の端部)に前記溝部58を反転させた形状の溝部60が形成されている。なお、第1側部56の上端部には、第1突出部18が設けられている。
【0055】
また、線材保持具10Cでは、上述した線材保持具10Aの第2側部20及び第2突出部22が省略されている。そして、保持具本体14における他方の端部(Xb側の端部)には、第1側部56をY軸(Y方向に沿った線)に対して線対称に反転させた形状の第2側部62が立設しており、その第2側部62の上端部には、前記第1突出部18をY軸に対して線対称に反転させた形状の第2突出部64が形成されている。つまり、第2側部62及び第2突出部64には、第1溝部34に対応した溝部66と、溝部58に対応した溝部68と、溝部60に対応した溝部70とが形成されている。
【0056】
本実施の形態に係る線材保持具10Cによれば、例えば、集束体38の第1部位38aを第1溝部34で保持した場合に、集束体38の第2部位38bを溝部68又は溝部70で保持することができる。また、例えば、集束体38の第2部位38bを溝部66で保持した場合に、集束体38の第1部位38aを溝部58又は溝部60で保持することができる。これにより、集束体38を8の字状に保持する際に、線材保持具10Cの向きを調節する必要がないので、ガイドワイヤ12を一層簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる。
【0057】
(第4の実施の形態に係る線材保持具)
次に、第4の実施の形態に係る線材保持具10Dについて図11〜図17を参照しながら説明する。
【0058】
図11に示すように、本実施の形態に係る線材保持具10Dでは、上述した線材保持具10Aの第1側部16、第1突出部18、第2側部20、及び、第2突出部22が省略され、ホルダ溝24aの溝底面に溝部(第1溝部)72が、ホルダ溝24cの溝底面に溝部74が該ホルダ溝24aの延在方向(Y方向)に沿ってそれぞれ形成されている。
【0059】
溝部72は、ホルダ溝24aの溝底面に開口して断面矩形状の幅狭部76と、前記幅狭部76に連続して保持具本体14の一方の側(Xa側)に拡張する断面三角形状の第1拡張部(離脱阻止手段)78と、前記幅狭部76に連続して保持具本体14の他方の側(Xb側)に拡張して前記第1拡張部78を線対称に反転した形状の第2拡張部(離脱阻止手段)80とを有する。第1拡張部78及び第2拡張部80のそれぞれは、先端先細りのテーパ状になっている。なお、溝部74は、溝部72と同一形状であるため、詳細な説明を省略する。
【0060】
また、本実施の形態に係る線材保持具10Dでは、第1平坦面82の幅が上述した線材保持具10Aの第1平坦面30の幅よりも狭く設定され、第2平坦面84の幅が前記線材保持具10Aの第2平坦面32の幅よりも狭く設定されている。さらに、壁部26の上端部に平坦面86が形成され、壁部28の上端部に平坦面88が形成されている。
【0061】
第1平坦面82のY方向の両端部には一対の第1引掛部90a、90bが、平坦面86のY方向の両端部には第2引掛部92a、92bが、平坦面88のY方向の両端部には第3引掛部94a、94bが、第2平坦面84のY方向の両端部には第4引掛部96a、96bがそれぞれ設けられている。なお、第1平坦面82、第2平坦面84、平坦面86、及び、平坦面88は、同一平面上に位置している。
【0062】
図12に示すように、第1引掛部90aは、第1平坦面82に配設された立設部98と、前記立設部98の上端部から第1引掛部90b側(Yb側)に突出した突起部100とを有する。立設部98は、上方に向かう方向に先細りのテーパ状となっている。突起部100は、下方に向けて突出した部分が断面逆三角形状に形成されている。つまり、突起部100の下面には、第1引掛部90bに向かうに従って下方に傾斜する第1傾斜面101と、第1傾斜面101に連続して第1引掛部90bに向かうに従って上方に傾斜する第2傾斜面104とが形成されている。
【0063】
第1平坦面82、立設部98のテーパ面106、及び、突起部100の下面は、立設部98と突起部100の境界部で終端する。その結果、第1平坦面82、立設部98のテーパ面、及び、突起部100の下面によって、溝部(第2溝部)102が形成される。
【0064】
第2引掛部92a、第3引掛部94a、及び、第4引掛部96aは、第1引掛部と同一の形状を有しており、第1引掛部90b、第2引掛部92b、第3引掛部94b、及び、第4引掛部96bは、第1引掛部90aをX軸(X方向に沿った線)に対して線対称に反転させた形状であるので、第1引掛部90b、第2引掛部92a、92b、第3引掛部94a、94b、及び、第4引掛部96a、96bの詳細な説明を省略する。
【0065】
本実施の形態に係る線材保持具10Dによれば、第1の方法として、例えば、平面視で8の字状にした集束体38の第1部位38aを溝部72で保持すると共に、集束体38の第2部位38bを第1引掛部90bの溝部102と第4引掛部96aの溝部102で保持することにより、ガイドワイヤ12を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる(図13及び図14参照)。
【0066】
本実施の形態によれば、溝部72が第1拡張部78と第2拡張部80を有しているので、溝部72に配設した集束体38の第1部位38aが溝部72から離脱することを好適に阻止することができる。
【0067】
本実施の形態によれば、第1引掛部90bの溝部102の開口部に第2傾斜面104を形成しているので、集束体38の第2部位38bを該第2傾斜面104に滑らせながら該溝部102に導入させることができる。これにより、該集束体38の第2部位38bを第1引掛部90bの溝部102に容易に配設させることができる。なお、第4引掛部96aにおいても同様である。
【0068】
また、本実施の形態によれば、第1引掛部90bの溝部102の溝底部が第1傾斜面101と立設部98のテーパ面106によって形成されているので、該溝底部が離脱阻止手段として機能する。そのため、該溝部102に配設された集束体38の第2部位38bが該溝部102から離脱することを阻止することができる。なお、第4引掛部96aにおいても同様である。
【0069】
第1の方法では、第1引掛部90bの溝部102又は第4引掛部96aの溝部102で集束体38の第2部位38bを保持してもよい。また、集束体38の第2部位38bを溝部74で保持すると共に、集束体38の第1部位38aを第1引掛部90aの溝部102と第4引掛部96bの溝部102で保持してもよい。この場合、第1引掛部90aの溝部102又は第4引掛部96bの溝部102で集束体38の第1部位38aを保持してもよい。
【0070】
また、第2の方法として、例えば、平面視で8の字状にした集束体38の第1部位38aを溝部72で保持すると共に、集束体38の第2部位38bを第1引掛部90bの溝部102、第2引掛部92bの溝部102、第3引掛部94bの溝部102、及び、第4引掛部96bの溝部102で保持することにより、ガイドワイヤ12を確実且つコンパクトな廃棄形状に保持することができる(図15及び図16参照)。この場合、集束体38の第2部位38bを一層確実に保持することができる。
【0071】
本実施の形態に係る線材保持具10Dは、上述した構成に限定されない。例えば、図17に示すように、溝部72及び溝部74を省略すると共に、ホルダ溝24bの溝底部に上述した溝部72と同一形状の溝部108を形成してもよい。この場合、集束体38の第1部位38aが溝部108によって保持される。
【0072】
次に、本実施形態に係る医療用線材セット200について説明する。図18に示すように、医療用線材セット200は、円筒状に形成された長尺なホルダチューブ202と、前記ホルダチューブ202に収納される線材としてのガイドワイヤ12と、前記ホルダチューブ202の一端に設けられて前記ガイドワイヤ12の一端部を保護するための保護キャップ204と、前記ホルダチューブ202の他端に設けられて図示しないプライミング用の注入具を接続可能とするためのコネクタ206とを備えている。
【0073】
ホルダチューブ202は、摺動性の高い樹脂等で構成されており、渦巻状に複数回(本実施の形態では2回)巻かれている。ホルダチューブ202の巻き数は、その長さや外径等に基づいて任意に設定することができる。また、ホルダチューブは、その隣接するチューブ同士を複数(本実施の形態では3つ)の形状保持具208、210、212により一体的に保持することにより、渦巻形状(巻回形状)に保持されている。形状保持具208は、上述した第1の実施の形態に係る線材保持具10Aである。なお、形状保持具210、212は、従来の形状保持具と同様の構成でよい。
【0074】
本実施の形態に係る医療用線材セット200によれば、形状保持具208を線材保持具10Aとして利用することができる。そのため、医療用線材セット200に形状保持具208、210、212とは別に線材保持具10Aを用意する必要がないので、部品点数を削減することができると共に、製造コストを抑えることができる。
【0075】
本実施の形態に係る医療用線材セット200において、形状保持具208の代わりに、第2の実施の形態に係る線材保持具10B、上述した第3の実施の形態に係る線材保持具10C、及び、上述した第4の実施の形態に係る線材保持具10Dのいずれか1つの線材保持具を採用してもよい。
【0076】
本発明は上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【符号の説明】
【0077】
10A、10B、10C、10D…線材保持具
12…ガイドワイヤ 14…保持具本体
18b…テーパ面 24a、24b、24c…ホルダ溝
34…第1溝部 36…第2溝部
38…集束体 50…第3溝部
58、60、68、70、102…溝部(第2溝部)
66、72、74、108…溝部(第1溝部)
78…第1拡張部 80…第2拡張部
200…医療用線材セット 202…ホルダチューブ
208、210、212…形状保持具
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の線材を複数回周回して束ねた集束体を平面視で8の字状に保持する線材保持具及びそれを備えた医療用線材セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管等の生体器官内にカテーテルを導入して該生体器官内の病変部(例えば、狭窄部)を処置することが広汎に行われている。この種の処置では、通常、生体器官内に長尺なガイドワイヤを先行して導入し、該ガイドワイヤに沿わせるようにカテーテルを該生体器官内に挿入する。そして、カテーテルを目的部位まで到達させた後、該カテーテルからガイドワイヤを抜去する。抜去された使用済みのガイドワイヤは廃棄される。
【0003】
また、一般的に、ガイドワイヤは、その使用前の状態において、渦巻状に巻かれたホルダチューブに収納されており、前記ホルダチューブは、隣接するチューブ同士を保持具によって固定することにより所定の渦巻形状となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4280526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、使用済みのガイドワイヤは、コンパクトな廃棄形状にした上で廃棄することが望ましい。そのため、通常、術者(使用者)等は、使用済みのガイドワイヤを複数回周回して束ねて平面視で円状の集束体にした状態で廃棄する。しかしながら、単に前記ガイドワイヤを周回しただけでは、該ガイドワイヤの弾性により該ガイドワイヤの束が散けることがある。その結果、該集束体を平面視で円状に保持することができなくなる。
【0006】
前記集束体の形状を保持させるための対策としては、該ガイドワイヤの一端側又は両端側の所定領域を該集束体のガイドワイヤの束に複数回巻き付けて留める(巻き留めする)ことが考えられる。しかしながら、この場合、巻き留めをする際に、該ガイドワイヤに付着している血液や薬液等が飛散して術者や機器類等に付着する可能性がある。また、ガイドワイヤには、通常、親水性コーティングや潤滑性コーティングが被覆されているため、使用済みのガイドワイヤは滑りやすく、巻き留めしたとしても散けてしまうことが多々ある。さらに、弾性のあるガイドワイヤの一端側の所定領域を塑性変形させる必要があるので、巻き留め作業に多大な時間を要することがある。
【0007】
ところで、本出願人は、ガイドワイヤを複数回周回して束ねて平面視で円状の集束体にした状態で、該集束体の対向する部位を半径方向内側に近づけると、該集束体が平面視で8の字状に付勢される(8の字状で安定する)ことを見出した。つまり、前記ガイドワイヤをコンパクトな廃棄形状にするためには、前記円状の集束体を平面視で8の字状に保持するとよいことがわかった。
【0008】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、巻き留め作業を行うことなく、医療用の線材を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる線材保持具及びそれを備えた医療用線材セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1で特定される発明は、可撓性を有する医療用の線材を複数回周回して束ねた集束体を平面視で8の字状に保持する線材保持具であって、平面視で8の字状にされた集束体の一部を保持可能な第1溝部と、前記第1溝部の延在方向に対して平面視で交差する方向に延在し、且つ、該集束体の他の一部を保持可能な第2溝部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項1で特定される発明によれば、医療用の線材を複数回周回して束ねた集束体を交差部が形成されるように平面視で8の字状にしているので、該集束体には、その捩り方向に平面視で円状(O字状)に戻ろうとするモーメント(戻りモーメントと称する。)が作用している。そして、第1溝部の延在方向と第2溝部の延在方向とが平面視で交差しているので、該集束体のうち時計回り方向の戻りモーメントが作用している部位(集束体の一部)を前記第1溝部で保持すると共に、該集束体のうち反時計回り方向の戻りモーメントが作用している部位(集束体の他の一部)を前記第2溝部で保持することができる。これにより、本発明に係る線材保持具を用いて、該集束体を平面視で8の字状に保持することができる。よって、医療用の線材を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる。また、前記線材に血液や薬液等が付着していた場合であっても、巻き留め作業を行う必要がないので、該血液や該薬液等が飛散して術者や機器等に付着することも好適に抑えることができる。
【0011】
本願の請求項2で特定される発明は、請求項1記載の線材保持具において、前記第1溝部の延在方向と前記第2溝部の延在方向とが、平面視で互いに直交していることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項2で特定される発明によれば、第1溝部の延在方向と第2溝部の延在方向とが平面視で互いに直交しているので、平面視で8の字状にされた集束体の交点付近を前記第1溝部と前記第2溝部で好適に保持することができる。これにより、例えば、該集束体の交点から離れた位置を前記第1溝部と前記第2溝部で保持する場合に比べて、線材保持具をコンパクトにすることができる。
【0013】
本願の請求項3で特定される発明は、請求項2記載の線材保持具において、前記第1溝部の開口方向と前記第2溝部の開口方向とが、平面視で互いに直交していることを特徴とする。
【0014】
本願の請求項3で特定される発明によれば、第1溝部の開口方向と第2溝部の開口方向とが平面視で互いに直交しているので、平面視で8の字状にされた集束体の交点付近を第1溝部と第2溝部に容易に配設させることができる。
【0015】
本願の請求項4で特定される発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の線材保持具において、保持具本体と、前記保持具本体に立設された側部と、前記側部の上端部に前記保持具本体と対向するように設けられた突出部と、を備え、前記保持具本体の一部が前記第1溝部の一方の溝側面を形成し、前記突出部の前記保持具本体に対向する側の面が前記第1溝部の他方の溝側面を形成し、前記第1溝部の他方の溝側面には、該第1溝部の開口部に向かうに従って前記保持具本体とは反対側に傾斜するテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0016】
ところで、使用済みの線材は、複数回周回して束ねて円状(楕円状)の集束体にした状態でバット(トレー)等に載置されることがある。
【0017】
本願の請求項4で特定される発明によれば、前記集束体の一部が保持具本体に対向配置されるように突出部の上面をバットの載置面に接触させ、該集束体を前記バットに抑えた状態で、線材保持具をスライドさせることにより、該集束体の一部をテーパ面に滑らせながら第1溝部内に導入させることができる。これにより、該集束体の一部を簡単に前記第1溝部内に配設させることができる。
【0018】
本願の請求項5で特定される発明は、前記第1溝部及び前記第2溝部のうち少なくともいずれか一方は、該集束体が離脱することを阻止する離脱阻止部を有することを特徴とする。
【0019】
本願の請求項5で特定される発明によれば、離脱阻止部を設けることによって、第1溝部又は第2溝部に対して集束体を一層確実に保持することができる。
【0020】
本願の請求項6で特定される発明は、可撓性を有する医療用の線材と、使用前の前記線材が収納されたホルダチューブと、前記ホルダチューブを渦巻状又は巻回状に保持するために、該ホルダチューブのうち互いに隣接する部位を一体的に保持する形状保持具と、を備えた医療用線材セットであって、前記形状保持具は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の線材保持具であることを特徴とする。
【0021】
本願の請求項6で特定される発明によれば、上述した請求項1〜5のいずれか1項で特定される発明と同様の効果を奏する。また、形状保持具を線材保持具として利用することができる。そのため、医療用線材セットに形状保持具とは別に線材保持具を用意する必要がないので、部品点数を削減することができると共に、製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明に係る線材保持具によれば、第1溝部の延在方向と第2溝部の延在方向とが平面視で交差しているので、集束体を平面視で8の字状に保持することができる。これにより、医療用の線材を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる。なお、前記線材に血液や薬液等が付着していた場合であっても、巻き留め作業を行う必要がないので、該血液や薬液等が飛散することも抑えることができる。
【0023】
また、本発明に係る医療用線材セットによれば、形状保持具を線材保持具として利用することができるので、部品点数を削減することができると共に、製造コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る線材保持具の斜視図である。
【図2】第1の実施の形態に係る線材保持具の第1溝部に集束体の一部を配設する手順を説明するための説明図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った一部省略断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る線材保持具を用いて集束体を平面視で8の字状に保持した状態を示す斜視図である。
【図5】図4の一部省略拡大平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る線材保持具の斜視図である。
【図7】図6の一部を切り欠いた状態を示す斜視図である。
【図8】第2の実施の形態に係る線材保持具を用いて集束体を平面視で8の字状に保持した状態を示す斜視図である。
【図9】図8の一部省略拡大平面図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る線材保持具の斜視図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る線材保持具の斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿った断面図である。
【図13】第4の実施の形態に係る線材保持具を用いて第1の方法により集束体を平面視で8の字状に保持した状態を示す斜視図である。
【図14】図13の一部省略拡大平面図である。
【図15】第4の実施の形態に係る線材保持具を用いて第2の方法により集束体を平面視で8の字状に保持した状態を示す斜視図である。
【図16】図15の一部省略拡大平面図である。
【図17】第4の実施の形態に係る線材保持具の変形例を示す斜視図である。
【図18】本発明に係る医療用線材セットの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る線材保持具及びそれを備えた医療用線材セットについて、好適な実施形態例を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態に係る線材保持具)
先ず、第1の実施の形態に係る線材保持具10Aについて説明する。本実施の形態に係る線材保持具10Aは、使用済みのガイドワイヤ(線材)12を所定の廃棄形状に保持するためのものであって、後述するホルダチューブ202(図18参照)を渦巻形状(巻回形状)に保持するための形状保持具としても兼用される。
【0027】
ガイドワイヤ12は、生体器官(例えば、血管、胆管、気管、食道、尿道、その他の臓器等)内に形成された病変部の改善又は診断に用いられる図示しないカテーテルを該病変部に導くために用いられる。また、ガイドワイヤ12は、細径で長尺な高弾性の金属線(超弾性合金等)で形成されている(図2参照)。その金属線の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、Ni−Ti合金等が用いられる。
【0028】
第1の実施の形態に係る線材保持具10Aの斜視図を図1に示す。この図1では、説明の便宜上、左方向をXa方向、右方向をXb方向、手前方向をYa方向、奥方向をYb方向、下方をZa方向、上方向をZb方向とする。
【0029】
線材保持具10Aは、樹脂等で構成されており、図1に示すように、略直方体状に形成された保持具本体14と、前記保持具本体14のXa側の端部からZb方向に立設した第1側部16と、前記第1側部16の上端部からXb方向に突出した第1突出部18と、前記保持具本体14のXb側の端部からZb方向に立設した第2側部20と、前記第2側部20の上端部から前記第1突出部18の突出方向(Xb方向)と前記保持具本体14の高さ方向(Zb方向)とがなす平面に対して直交する方向、すなわちYa方向に突出した第2突出部22とを備えている。
【0030】
保持具本体14のうち第1側部16と第2側部20との間には、前記ホルダチューブ202の一部が着脱可能であり互いに平行な複数(3つ)のホルダ溝24a、24b、24cが前記第1側部16に沿ってY方向に延在するように形成されている。ホルダ溝24a、24b、24cのそれぞれは、断面略半円状に形成されている。ホルダ溝24a、24b、24cのそれぞれの両端は、保持具本体14の端面に開口している。
【0031】
また、ホルダ溝24a、24b、24cは、その延在方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に所定間隔離間して配置されている。そのため、ホルダ溝24a及びホルダ溝24b間の壁部26の上端部と、ホルダ溝24b及びホルダ溝24c間の壁部28の上端部は、断面半円状に形成されている。
【0032】
保持具本体14におけるホルダ溝24aの開口部の壁部26とは反対側に連なる第1平坦面30、保持具本体14におけるホルダ溝24cの開口部の壁部28とは反対側に連なる第2平坦面32、壁部26の上端部、及び、壁部28の上端部は同一平面上に位置している。この理由については後述する。
【0033】
第1側部16のY方向の長さは、ホルダ溝24aのY方向の長さと同一に設定されている。第1側部16のホルダ溝24aが位置する側、すなわち第1側部16のXb側の側面16aは、断面略半円状に形成されている。第1突出部18の先端部(Xb方向の端部)は、先細りのテーパ状となっている。これにより、第1突出部18には、その先端に向かうに従ってZb方向に傾斜するテーパ面18bが形成されることとなる。
【0034】
第1平坦面30と、第1突出部18のテーパ面18bに連続する下面18aは、第1側部16の側面16aに終端する。その結果、第1平坦面30、第1側部16の側面16a、第1突出部18の下面18a、及び、第1突出部18のテーパ面18bによって延在方向の両端が開放(開口)した第1溝部34が形成される。第1溝部34は、複数本のガイドワイヤ12を配設可能な大きさとなっている(図3及び図4参照)。
【0035】
第2側部20は、ホルダ溝24aの延在方向(Y方向)に沿って延在しており、そのZ方向の高さは、第1側部16のZ方向の高さと略同一に設定されている。ホルダ溝24aの延在方向(Y方向)における第2側部20と第2突出部22を合わせた長さ、すなわち、第2側部20のYb方向の端部から第2突出部22の先端(Ya方向の端部)までの長さは、第1側部16の長さと同一に設定されている。第2側部20のうち第2突出部22が位置する側(Ya側)の側面20aは、断面略半円状に形成されている。
【0036】
第2平坦面32と、第2突出部22の下面22aとは、第2側部20の側面20aに終端する。その結果、第2平坦面32、第2側部20の側面20a、及び、第2突出部22の下面22aによって延在方向(X方向)の両端が開放(開口)した第2溝部36が形成される。第2溝部36は、複数本のガイドワイヤ12が配設可能な大きさとなっている(図4参照)。なお、第2溝部36の延在方向(X方向)は、第1溝部34の延在方向(Y方向)に対して直交している。
【0037】
次に、以上のように構成される線材保持具10Aに使用済みのガイドワイヤ12を保持する手順について説明する。
【0038】
通常、術者は、図2に示すように、生体器官内に形成された病変部の改善又は診断に用いられた使用済みのガイドワイヤ12を複数回周回して束ねて平面視で円状(楕円状)の集束体38にした状態でバット(トレー)40内に載置する。このとき、集束体38は、その外方向の広がりがバット40の側壁によって抑えられているので、平面視で円状に保持される。
【0039】
そして、術者は、図3に示すように、第1側部16と第2側部20の間に集束体38の(ガイドワイヤ12の束)一部(以下、第1部位38aともいう。)が位置するように、第1突出部18の上面と第2突出部22の上面をバット40の載置面に接触させる。
【0040】
その後、術者等は、一方の手で集束体38の他の部位をバット40の載置面に押し付けた状態で、第1側部16が第1部位38aに近接するように、載置面に対して線材保持具10Aを他方の手でスライドさせる。これにより、第1部位38aは、テーパ面18bを滑り上がり第1溝部34内に導入されて配設される。
【0041】
続いて、術者等は、集束体38の第1部位38aを第1溝部34内に配設させた状態で集束体38をバット40から引き上げて、集束体38の第1部位38aに対向する第2部位38bを該第1部位38aに近づけることにより、集束体38は平面視で8の字状となる。その後、平面視で8の字状となった集束体38の第2部位38bを第2溝部36に配設させる(図4参照)。これにより、集束体38の第1部位38aが第1溝部34に保持され、集束体38の第2部位38bが第2溝部36に保持される。
【0042】
このとき、第1平坦面30、第2平坦面32、壁部26の上端部、及び、壁部28の上端部が同一平面上に位置しているので、壁部26の上端部及び壁部28の上端部に対して平面視で8の字状にした集束体38を滑らせることにより、該集束体38の第2部位38bを第2溝部36内に容易に導入させることができる。
【0043】
なお、図5に示すように、集束体38の第2部位38bを第2溝部36に配設した状態で、平面視で8の字状にされた集束体38の交点Pは、投影平面視で保持具本体14の上に位置している。
【0044】
平面視で8の字状にされた集束体38には、その捩じり方向に平面視で円状(O字状)に戻ろうとするモーメント(戻りモーメント)が作用している。そして、本実施の形態に係る線材保持具10Aでは、第1溝部34の延在方向と第2溝部36の延在方向とが交差しているので、集束体38のうち図4の矢印A方向から見て時計回り方向の戻りモーメントが作用している第1部位(集束体38の一部)38aを第1溝部34で保持すると共に、集束体38のうち前記矢印A方向から見て反時計回り方向の戻りモーメントが作用している第2部位(集束体38の他の一部)38bを第2溝部36で保持することができる。
【0045】
これにより、集束体38を平面視で8の字状に保持することができる。よって、ガイドワイヤ12を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる。また、使用済みのガイドワイヤ12に血液や薬液等が付着していた場合であっても、巻き留め作業を行う必要がないので、該血液や該薬液等が飛散して術者や機器等に付着することも好適に抑えることができる。
【0046】
本実施の形態に係る線材保持具10Aは、第1溝部34の開口方向と、第2溝部36の開口方向とが平面視で互いに直交しているので、平面視で8の字状にされた集束体38の交点P付近を第1溝部34と第2溝部36に容易に配設させることができる。
【0047】
本実施の形態に係る線材保持具10Aによれば、ホルダ溝24aの両端が保持具本体14の端面に開口し、第1溝部34の長さをホルダ溝24aの長さと同一に設定しているので、例えば、第1溝部34の長さをホルダ溝24aの長さの半分以下に設定した場合と比較して、集束体38の第1部位38aが第1溝部34から外れ難くすることができる。なお、第1側部16の側面16aと第2側部20の側面20aは、断面略半円状に形成されている例に限らず、断面多角形状等に形成されていてもよい。
【0048】
(第2の実施の形態に係る線材保持具)
次に、第2の実施の形態に係る線材保持具10Bについて図6〜図9を参照しながら説明する。本実施の形態では、第1の実施の形態と共通する構成には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略する。後述する第3及び第4の実施の形態においても同様である。
【0049】
図6に示すように、本実施の形態に係る線材保持具10Bでは、第2側部42のY方向の長さが上述した線材保持具10Aの第2側部20のY方向の長さよりも短く設定され、その結果、空いたスペースに側部44が設けられている。つまり、側部44は、保持具本体14の他方の端部(Xb側の端部)に立設されており、そのZ方向の高さは、第2側部42と同一に設定されている。側部44及び第2突出部22の間には、ガイドワイヤ12の直径よりも大きな隙間46が形成されている。
【0050】
また、第1側部48のうち第2溝部36に対向する部位には、該第2溝部36の断面形状に対応した断面形状の第3溝部50が形成されている(図7参照)。なお、第3溝部50の一方(Za方向)の溝側面は、第1平坦面30と略同一の高さに位置しており、第3溝部50の他方(Zb方向)の溝側面は、第1側部52の下面52aと略同一の高さに位置している。そして、第1突出部52には、ホルダ溝24aの延在方向と直交する方向に切れ目54が形成されている。該切れ目54は、前記第3溝部50にまで達している。なお、切れ目54の幅は、ガイドワイヤ12の直径よりも大きく設定されている。
【0051】
本実施の形態に係る線材保持具10Bでは、図8及び図9に示すように、平面視で8の字状にした集束体38の第2部位38bを第2溝部36及び第3溝部50に配設して保持する。これにより、集束体38の第2部位38bを線材保持具10Bに対して一層確実に保持することができる。
【0052】
本実施の形態に係る線材保持具10Bでは、第2溝部36又は第3溝部50を省略しても構わない。この場合であっても、第2溝部36又は第3溝部50で集束体38の他の一部38bを保持することが可能である。
【0053】
(第3の実施の形態に係る線材保持具)
次に、第3の実施の形態に係る線材保持具10Cについて図10を参照しながら説明する。
【0054】
図10に示すように、本実施の形態に係る線材保持具10Cでは、第1側部56におけるY方向の一端部(Ya側の端部)に上述した線材保持具10Bの第3溝部50の断面形状に対応した溝部58が形成されている。また、第1側部56におけるY方向の他端部(Yb側の端部)に前記溝部58を反転させた形状の溝部60が形成されている。なお、第1側部56の上端部には、第1突出部18が設けられている。
【0055】
また、線材保持具10Cでは、上述した線材保持具10Aの第2側部20及び第2突出部22が省略されている。そして、保持具本体14における他方の端部(Xb側の端部)には、第1側部56をY軸(Y方向に沿った線)に対して線対称に反転させた形状の第2側部62が立設しており、その第2側部62の上端部には、前記第1突出部18をY軸に対して線対称に反転させた形状の第2突出部64が形成されている。つまり、第2側部62及び第2突出部64には、第1溝部34に対応した溝部66と、溝部58に対応した溝部68と、溝部60に対応した溝部70とが形成されている。
【0056】
本実施の形態に係る線材保持具10Cによれば、例えば、集束体38の第1部位38aを第1溝部34で保持した場合に、集束体38の第2部位38bを溝部68又は溝部70で保持することができる。また、例えば、集束体38の第2部位38bを溝部66で保持した場合に、集束体38の第1部位38aを溝部58又は溝部60で保持することができる。これにより、集束体38を8の字状に保持する際に、線材保持具10Cの向きを調節する必要がないので、ガイドワイヤ12を一層簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる。
【0057】
(第4の実施の形態に係る線材保持具)
次に、第4の実施の形態に係る線材保持具10Dについて図11〜図17を参照しながら説明する。
【0058】
図11に示すように、本実施の形態に係る線材保持具10Dでは、上述した線材保持具10Aの第1側部16、第1突出部18、第2側部20、及び、第2突出部22が省略され、ホルダ溝24aの溝底面に溝部(第1溝部)72が、ホルダ溝24cの溝底面に溝部74が該ホルダ溝24aの延在方向(Y方向)に沿ってそれぞれ形成されている。
【0059】
溝部72は、ホルダ溝24aの溝底面に開口して断面矩形状の幅狭部76と、前記幅狭部76に連続して保持具本体14の一方の側(Xa側)に拡張する断面三角形状の第1拡張部(離脱阻止手段)78と、前記幅狭部76に連続して保持具本体14の他方の側(Xb側)に拡張して前記第1拡張部78を線対称に反転した形状の第2拡張部(離脱阻止手段)80とを有する。第1拡張部78及び第2拡張部80のそれぞれは、先端先細りのテーパ状になっている。なお、溝部74は、溝部72と同一形状であるため、詳細な説明を省略する。
【0060】
また、本実施の形態に係る線材保持具10Dでは、第1平坦面82の幅が上述した線材保持具10Aの第1平坦面30の幅よりも狭く設定され、第2平坦面84の幅が前記線材保持具10Aの第2平坦面32の幅よりも狭く設定されている。さらに、壁部26の上端部に平坦面86が形成され、壁部28の上端部に平坦面88が形成されている。
【0061】
第1平坦面82のY方向の両端部には一対の第1引掛部90a、90bが、平坦面86のY方向の両端部には第2引掛部92a、92bが、平坦面88のY方向の両端部には第3引掛部94a、94bが、第2平坦面84のY方向の両端部には第4引掛部96a、96bがそれぞれ設けられている。なお、第1平坦面82、第2平坦面84、平坦面86、及び、平坦面88は、同一平面上に位置している。
【0062】
図12に示すように、第1引掛部90aは、第1平坦面82に配設された立設部98と、前記立設部98の上端部から第1引掛部90b側(Yb側)に突出した突起部100とを有する。立設部98は、上方に向かう方向に先細りのテーパ状となっている。突起部100は、下方に向けて突出した部分が断面逆三角形状に形成されている。つまり、突起部100の下面には、第1引掛部90bに向かうに従って下方に傾斜する第1傾斜面101と、第1傾斜面101に連続して第1引掛部90bに向かうに従って上方に傾斜する第2傾斜面104とが形成されている。
【0063】
第1平坦面82、立設部98のテーパ面106、及び、突起部100の下面は、立設部98と突起部100の境界部で終端する。その結果、第1平坦面82、立設部98のテーパ面、及び、突起部100の下面によって、溝部(第2溝部)102が形成される。
【0064】
第2引掛部92a、第3引掛部94a、及び、第4引掛部96aは、第1引掛部と同一の形状を有しており、第1引掛部90b、第2引掛部92b、第3引掛部94b、及び、第4引掛部96bは、第1引掛部90aをX軸(X方向に沿った線)に対して線対称に反転させた形状であるので、第1引掛部90b、第2引掛部92a、92b、第3引掛部94a、94b、及び、第4引掛部96a、96bの詳細な説明を省略する。
【0065】
本実施の形態に係る線材保持具10Dによれば、第1の方法として、例えば、平面視で8の字状にした集束体38の第1部位38aを溝部72で保持すると共に、集束体38の第2部位38bを第1引掛部90bの溝部102と第4引掛部96aの溝部102で保持することにより、ガイドワイヤ12を確実且つ簡単にコンパクトな廃棄形状に保持することができる(図13及び図14参照)。
【0066】
本実施の形態によれば、溝部72が第1拡張部78と第2拡張部80を有しているので、溝部72に配設した集束体38の第1部位38aが溝部72から離脱することを好適に阻止することができる。
【0067】
本実施の形態によれば、第1引掛部90bの溝部102の開口部に第2傾斜面104を形成しているので、集束体38の第2部位38bを該第2傾斜面104に滑らせながら該溝部102に導入させることができる。これにより、該集束体38の第2部位38bを第1引掛部90bの溝部102に容易に配設させることができる。なお、第4引掛部96aにおいても同様である。
【0068】
また、本実施の形態によれば、第1引掛部90bの溝部102の溝底部が第1傾斜面101と立設部98のテーパ面106によって形成されているので、該溝底部が離脱阻止手段として機能する。そのため、該溝部102に配設された集束体38の第2部位38bが該溝部102から離脱することを阻止することができる。なお、第4引掛部96aにおいても同様である。
【0069】
第1の方法では、第1引掛部90bの溝部102又は第4引掛部96aの溝部102で集束体38の第2部位38bを保持してもよい。また、集束体38の第2部位38bを溝部74で保持すると共に、集束体38の第1部位38aを第1引掛部90aの溝部102と第4引掛部96bの溝部102で保持してもよい。この場合、第1引掛部90aの溝部102又は第4引掛部96bの溝部102で集束体38の第1部位38aを保持してもよい。
【0070】
また、第2の方法として、例えば、平面視で8の字状にした集束体38の第1部位38aを溝部72で保持すると共に、集束体38の第2部位38bを第1引掛部90bの溝部102、第2引掛部92bの溝部102、第3引掛部94bの溝部102、及び、第4引掛部96bの溝部102で保持することにより、ガイドワイヤ12を確実且つコンパクトな廃棄形状に保持することができる(図15及び図16参照)。この場合、集束体38の第2部位38bを一層確実に保持することができる。
【0071】
本実施の形態に係る線材保持具10Dは、上述した構成に限定されない。例えば、図17に示すように、溝部72及び溝部74を省略すると共に、ホルダ溝24bの溝底部に上述した溝部72と同一形状の溝部108を形成してもよい。この場合、集束体38の第1部位38aが溝部108によって保持される。
【0072】
次に、本実施形態に係る医療用線材セット200について説明する。図18に示すように、医療用線材セット200は、円筒状に形成された長尺なホルダチューブ202と、前記ホルダチューブ202に収納される線材としてのガイドワイヤ12と、前記ホルダチューブ202の一端に設けられて前記ガイドワイヤ12の一端部を保護するための保護キャップ204と、前記ホルダチューブ202の他端に設けられて図示しないプライミング用の注入具を接続可能とするためのコネクタ206とを備えている。
【0073】
ホルダチューブ202は、摺動性の高い樹脂等で構成されており、渦巻状に複数回(本実施の形態では2回)巻かれている。ホルダチューブ202の巻き数は、その長さや外径等に基づいて任意に設定することができる。また、ホルダチューブは、その隣接するチューブ同士を複数(本実施の形態では3つ)の形状保持具208、210、212により一体的に保持することにより、渦巻形状(巻回形状)に保持されている。形状保持具208は、上述した第1の実施の形態に係る線材保持具10Aである。なお、形状保持具210、212は、従来の形状保持具と同様の構成でよい。
【0074】
本実施の形態に係る医療用線材セット200によれば、形状保持具208を線材保持具10Aとして利用することができる。そのため、医療用線材セット200に形状保持具208、210、212とは別に線材保持具10Aを用意する必要がないので、部品点数を削減することができると共に、製造コストを抑えることができる。
【0075】
本実施の形態に係る医療用線材セット200において、形状保持具208の代わりに、第2の実施の形態に係る線材保持具10B、上述した第3の実施の形態に係る線材保持具10C、及び、上述した第4の実施の形態に係る線材保持具10Dのいずれか1つの線材保持具を採用してもよい。
【0076】
本発明は上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【符号の説明】
【0077】
10A、10B、10C、10D…線材保持具
12…ガイドワイヤ 14…保持具本体
18b…テーパ面 24a、24b、24c…ホルダ溝
34…第1溝部 36…第2溝部
38…集束体 50…第3溝部
58、60、68、70、102…溝部(第2溝部)
66、72、74、108…溝部(第1溝部)
78…第1拡張部 80…第2拡張部
200…医療用線材セット 202…ホルダチューブ
208、210、212…形状保持具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する医療用の線材を複数回周回して束ねた集束体を平面視で8の字状に保持する線材保持具であって、
平面視で8の字状にされた集束体の一部を保持可能な第1溝部と、
前記第1溝部の延在方向に対して平面視で交差する方向に延在し、且つ、該集束体の他の一部を保持可能な第2溝部と、を備えることを特徴とする線材保持具。
【請求項2】
請求項1記載の線材保持具において、
前記第1溝部の延在方向と前記第2溝部の延在方向とが、平面視で互いに直交していることを特徴とする線材保持具。
【請求項3】
請求項2記載の線材保持具において、
前記第1溝部の開口方向と前記第2溝部の開口方向とが、平面視で互いに直交していることを特徴とする線材保持具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の線材保持具において、
保持具本体と、
前記保持具本体に立設された側部と、
前記側部の上端部に前記保持具本体と対向するように設けられた突出部と、を備え、
前記保持具本体の一部が前記第1溝部の一方の溝側面を形成し、
前記突出部の前記保持具本体に対向する側の面が前記第1溝部の他方の溝側面を形成し、
前記第1溝部の他方の溝側面には、該第1溝部の開口部に向かうに従って前記保持具本体とは反対側に傾斜するテーパ面が形成されていることを特徴とする線材保持具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の線材保持具において、
前記第1溝部及び前記第2溝部のうち少なくともいずれか一方は、該集束体が離脱することを阻止する離脱阻止部を有することを特徴とする線材保持具。
【請求項6】
可撓性を有する医療用の線材と、
使用前の前記線材が収納されたホルダチューブと、
前記ホルダチューブを渦巻状又は巻回状に保持するために、該ホルダチューブのうち互いに隣接する部位を一体的に保持する形状保持具と、を備えた医療用線材セットであって、
前記形状保持具は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の線材保持具であることを特徴とする医療用線材セット。
【請求項1】
可撓性を有する医療用の線材を複数回周回して束ねた集束体を平面視で8の字状に保持する線材保持具であって、
平面視で8の字状にされた集束体の一部を保持可能な第1溝部と、
前記第1溝部の延在方向に対して平面視で交差する方向に延在し、且つ、該集束体の他の一部を保持可能な第2溝部と、を備えることを特徴とする線材保持具。
【請求項2】
請求項1記載の線材保持具において、
前記第1溝部の延在方向と前記第2溝部の延在方向とが、平面視で互いに直交していることを特徴とする線材保持具。
【請求項3】
請求項2記載の線材保持具において、
前記第1溝部の開口方向と前記第2溝部の開口方向とが、平面視で互いに直交していることを特徴とする線材保持具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の線材保持具において、
保持具本体と、
前記保持具本体に立設された側部と、
前記側部の上端部に前記保持具本体と対向するように設けられた突出部と、を備え、
前記保持具本体の一部が前記第1溝部の一方の溝側面を形成し、
前記突出部の前記保持具本体に対向する側の面が前記第1溝部の他方の溝側面を形成し、
前記第1溝部の他方の溝側面には、該第1溝部の開口部に向かうに従って前記保持具本体とは反対側に傾斜するテーパ面が形成されていることを特徴とする線材保持具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の線材保持具において、
前記第1溝部及び前記第2溝部のうち少なくともいずれか一方は、該集束体が離脱することを阻止する離脱阻止部を有することを特徴とする線材保持具。
【請求項6】
可撓性を有する医療用の線材と、
使用前の前記線材が収納されたホルダチューブと、
前記ホルダチューブを渦巻状又は巻回状に保持するために、該ホルダチューブのうち互いに隣接する部位を一体的に保持する形状保持具と、を備えた医療用線材セットであって、
前記形状保持具は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の線材保持具であることを特徴とする医療用線材セット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−70905(P2012−70905A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217554(P2010−217554)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(591140938)テルモ・クリニカルサプライ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【出願人】(591140938)テルモ・クリニカルサプライ株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]