説明

線状物の巻取り装置

【課題】線状物を巻取る巻枠体を切り替える際に、線状物を連続供給しながら線状物の渡り長を最短にする線状物の巻取り装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも1本の連続した線状物を、同軸上で複数並列して配置された回転軸から放射状に複数のハンドを有する環状又は多角状の巻枠体に、それぞれ所定の巻数で各々巻取る巻取り装置であって、独立して回転可能であると共に、他の巻枠体と同期回転も可能な駆動装置を備えた複数の巻枠体と、少なくとも巻取り方向と巻枠体の並列方向と巻枠体上下方向とにトラバース部を変位可能な駆動手段を備えたトラバース機構と、巻枠体間に横架した線状物を回転時に切断する渡り糸切断機構とを少なくとも備えたことを特徴とする線状物の巻取り装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続した線状物を巻取る際の巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から1本または多数本の連続した線状物を巻取って線状物の束を作ることが行われており、例えば、中空糸膜、合成畳表、ブラシなどは線状物の束を作成した後に、それを一定長に裁断して生産されている。特に中空糸膜は、自動車産業、半導体産業、医薬食品産業(例えば、医療用の血液透析フィルター)などの多方面において使用されており、その用途からも高い品質が求められている。
【0003】
上記のように中空糸や中空糸束などの線状物を巻取る際には、同軸上で複数並列して巻枠体を配置し、一方の巻枠体に巻取り作業を行っている間には他の巻枠体から包装や切断などの作業を行い、空の巻枠体にする。そして、巻取って満巻となると満巻巻枠体から、空巻枠体に線状物の巻取りを切り替える。これにより、巻取り作業と取り出し作業を平行して行える為、工程上効率が良い。
【0004】
図1に斜視図を示すように、従来の巻取り装置(100)では、2つの並列した巻枠体(101)(102)をそれぞれの駆動装置(103)(104)によって回転駆動し、満巻側の巻枠体(102)から線状物(105)を空の巻枠体(101)にトラバースしている。トラバースは、巻枠体(101)(102)の軸方向に摺動するトラバース機構(106)が線状物の位置を切り替えることにより行う。
【0005】
そして、図2に平面図を、図3に正面図を示すように、満巻巻枠体(102)のハンド(107)から空巻枠体(101)のハンド(108)に線状物が斜めに乗り移るようになっている。
【0006】
斜めに渡した線状物(渡り糸)は、2つの巻枠体(101)(102)が同時に回転することによって、巻枠体間に設置されたカッターによって切断され、満巻巻枠体は停止し、空巻枠体には満巻となるまで巻取りを行う。
【0007】
ところがこのような構成では、斜めに渡した線状物(渡り糸)の長さが長い為に、図4のように満巻巻枠体(102)側に多く残して切断すると、渡り糸部分(110)も含めて包装してしまう恐れがあり、製品不良の原因となる。
【0008】
また、図5のように空巻枠体(101)側に渡り糸(111)を多く残すと、巻取り途中で巻き込んでしまう恐れがある。あるいは、空巻枠体(101)が満巻となって再び他方の巻枠体(102)に渡り糸(112)を渡して切断する際に、残っていた渡り糸(111)を再度切断し、その断片が製品に混入する恐れがあった。
【0009】
従って、このような渡り糸は短い方が好ましく、例えば空巻枠体側の回転速度を満巻巻枠体側の回転速度より速くして、満巻巻枠体との渡り糸が平行になるように制御する方法があったが、巻枠体の線状物に弛みが生じてしまい、安定して巻取ることができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、その目的は、線状物を巻取る巻枠体を切り替える際に、線状物を連続供給しながら線状物の渡り長を最短にする線状物の巻取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明による線状物の巻取り方法は次のような特徴を備える。
すなわち本願発明は、同軸上で複数並列して配置された回転軸から放射状に複数のハンドを有する環状又は多角状の巻枠体に、それぞれ所定の巻数で各々巻取る巻取り装置であって、独立して回転可能であると共に、他の巻枠体と同期回転も可能な駆動装置を備えた複数の巻枠体と、少なくとも巻取り方向と巻枠体の並列方向と巻枠体上下方向とにトラバース部を変位可能な駆動手段を備えたトラバース機構と、巻枠体間に横架した線状物を回転時に切断する渡り糸切断機構とを少なくとも備えたことを特徴とする線状物の巻取り装置を提供するものである。
【0012】
上記装置は、一定速度で供給される線状物を、その出口において減速又は停止可能なアキューム機構を備えたことを特徴とする。
また、前記アキューム機構は、駆動ロールを別個にサーボモータにより駆動し、駆動時のトルクを制御して駆動ロールの慣性モーメントを抑制することを特徴とする。
【0013】
また、前記渡り糸切断機構は、空巻枠体側に偏った位置で線状物を切断するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上の手段により次の効果を奏する。すなわち、上記線状物の巻取り装置によれば、巻枠体間で横方向に線状物を渡すことができるので、渡り長を最短にすることができ、渡り糸の混入等による製品不良の発生を防止することができる。また、線状物の廃棄量の削減にも寄与する。
【0015】
また、上記巻取り装置では、アキューム機構によって線状物が連続的に供給されていても、供給速度を変更することなく巻枠体の回転を停止して自動的な切り替え作業が可能になる。巻取りの停止時及び開始時に線状物の張力変動を抑制することができるので、線状物への損傷を防止し、高品質な製品製造に寄与する。
【0016】
また、線状物の切り替え時の線状物の平行性、走行安定性をより確実に維持することができ、線状物を空巻枠体側に偏った部位で毎回切断することにより、巻取り開始時に切り取った際の線状物は短く、満巻時には長くなるため、2度切りを行うおそれがなく、製品への混入や巻取り時の巻き込みも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の巻取り装置の構成を示す斜視説明図である。
【図2】同、巻枠体の平面図である。
【図3】同、巻枠体の一部正面図である。
【図4】同、渡り糸の切断における第1の態様を説明する平面図である。
【図5】同、第2の態様を説明する平面図である。
【図6】本発明に係る巻取り装置の全体平面図である。
【図7】同、全体正面図である。
【図8】本発明に係るトラバース工程(1)の説明図である。
【図9】本発明に係るトラバース工程(2)の説明図である。
【図10】本発明に係るトラバース工程(3)の説明図である。
【図11】本発明に係るトラバース工程(4)の説明図である。
【図12】本発明に係るトラバース工程(5)の説明図である。
【図13】本発明に係るトラバース工程(6)の説明図である。
【図14】本発明に係る渡り糸切断方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の最良と考えられる実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
図6は本発明に係る線状物の巻取り装置の全体図平面図、図7は同、正面図である。本装置(A)には同軸上に配設された2つの第1巻枠体(10)・第2巻枠体(11)(以下、総称する場合には巻枠体と呼ぶ)と、それぞれを独立して回転駆動可能な駆動装置(12)(13)、駆動装置(12)(13)を支持する支持台(14)(15)及び、トラバース機構(20)、ダンサーロール機構(30)、アキューム機構(40)を備えている。
【0019】
巻枠体(10)(11)は、図1にも示したように、回転軸から放射状に複数のハンド(16)・・を配設した形状であり、ハンド(16)・・の先端はコ字状を形成し、該凹部内に線状物を巻取るようになっている。このような構成では巻取られた線状物は多角状になるが、本発明において巻枠体の形状及び、巻取り後の線状物の形状は任意であって、例えば環状に巻取られる構成でもよい。
【0020】
駆動装置(12)(13)は、サーボモータであってそれぞれの回転数を自在に設定することができ、かつ2つの巻枠体(10)(11)を同期回転させることもできる。通常時、駆動装置(12)(13)の回転速度制御はダンサーロール機構(30)によって行っている。
【0021】
ダンサーロール機構(30)は図示のような振り子式のダンサーロール(31)を回動軸(33)で枢支したダンサーアーム(32)の先端に回転自在に配設する。ダンサーアームは回動軸(33)を中心に回動するので、ダンサーロール(31)はガイドローラ(34)(34)間で上下動可能であるが、巻枠体(10)(11)の回転数制御においてダンサーアーム(32)の位置が変化しないように制御するため、通常位置はほぼ一定である。
【0022】
例えば、通常巻取り時にはダンサーアーム(32)が僅かに下がると、それを図示しない回動位置検出手段が検出して巻き取りの回転数を上げ、逆に僅かに上がると回転数を下げる制御を行う。
【0023】
このようなダンサーロール機構(30)の作用によって、巻取り時などにおける線状物の張力変動を抑制することができる。ダンサーアーム(32)の回動位置検出により回転数制御を行うため、ダンサーアーム(32)の位置が急激に変化しないように巻枠体(10)(11)、アキューム機構(40)の加減速には十分な余裕をもって行うようにしている。
【0024】
上記のダンサーロール機構(30)は振り子式のものを示したが、本発明では、ダンサーロール機構の構成は任意であって、例えば公知の低摩擦シリンダーを用いた垂直式のダンサーロールを用いることもできる。
【0025】
そして、ダンサーロール機構(30)の上流側には、アキューム機構(40)が配設されている。アキューム機構(40)には図示しない駆動モータにより回転駆動可能な駆動ロール(41)〜(43)と、固定板(44)に軸支されたアキュームロール(45)・・が交互に配設されて、線状物を順次巻回すると共に、該固定板(44)はボールネジ機構を用いた上下アクチュエータ(46)によって図示実線表示の下端位置から、図示点線表示の上端位置まで変動可能である。
【0026】
本構成によると、通常アキュームロール(45)が上端において線状物の走行をガイドする一方で、上下アクチュエータ(46)が固定板(44)を下方に変動させると共に線状物が該アキューム機構(40)内に貯留し、後述の巻枠体(10)(11)停止時には、最下流の駆動ロール(41)では走行速度が0となる。巻枠体停止時には、固定板(44)は一定速度で下がり続けて貯留する。
【0027】
貯留時には駆動ロールが上流に向かうに従って回転速度が速くなり、最上流の駆動ロール(43)の回転速度は、停止前と変わらないので、線状物の供給装置においては連続的に線状物を供給することができる。
【0028】
このようなアキューム機構(40)の作動にもダンサーロール機構(30)における回動位置検出手段の情報を用いる。すなわち、満巻を検出して巻枠体への巻取りを停止する際に、巻枠体の回転数を減速すると、ダンサーアーム(32)が下がるため、これを検出してアキューム機構(40)を作動制御する。
【0029】
巻取りの停止中においては、該ダンサーアーム(32)の位置が変化しないように、アキューム機構(40)の速度を制御する。
さらに、トラバースを終えて空巻枠体への巻取りを開始する際には、アキューム機構(40)が減速するため、同じくダンサーアーム(32)が下がり、それを検出して巻枠体の回転を開始制御する。
【0030】
巻枠体の回転速度が上昇するに従って、アキューム機構(40)が減速すると共に、最下流の駆動ロール(41)が回転速度を上げ、巻取り速度が糸の供給速度と等しくなると、アキューム機構(40)は停止する。この時、固定板(44)は動作領域における最下点に位置する。
【0031】
その後、アキューム機構(40)に貯留された線状物を巻枠体に供給する際には、上下アクチュエータ(46)が固定板(44)を上方に変動させると、ダンサーアーム(32)が下がり、巻枠体の回転速度も上昇する。糸の供給速度は変化しないため、最下流の駆動ロール(41)が最も速く回転し、駆動ロール(43)の回転速度は変化しない。このとき、駆動源による回転速度は同一であるが、駆動ロール(41)(42)は空転することによってより速く回転する。
【0032】
なお、本発明において、駆動ロール(41)〜(43)は線状物の通常走行時には同一の回転を行うが、アキューム機構(40)の作動時に最上流の駆動ロール(43)を除き駆動を停止する。そして、駆動ロール(41)(42)はアキュームロール(48)の下降に伴って走行する線状物に従って自由に回転を行う。駆動ロール(43)は常に線状物の供給速度と同一の回転を続けるため、別駆動となっており、その他の駆動ロール(41)(42)は同一駆動で停止し、回転自在となる。
【0033】
別実施例として、駆動ロール(41)〜(43)をすべて同一駆動とし、最上流の駆動ロール(43)についてもアキューム機構(40)の作動時には駆動を停止して回転自在にする構成でもよい。
【0034】
従来は駆動を用いないフリーロールであったため、ロールの回転が減速、加速する時に発生した慣性モーメントがすべて糸の負荷になる問題があった。そこで、本実施例では、同一駆動の駆動ロール(41)(42)を配設した上で、公知のトルクリミッタを付設し、該慣性モーメントをキャンセルできるように構成した。これにより、アキューム機構(40)の停止時にはトルクリミッタの作用によって各駆動ロールが最適な速度まで迅速に減速又は停止できるようになっている。
【0035】
なお、生じる慣性モーメントにつき詳述すると、アキューム機構(40)が下がる時(下降が加速する時・巻取が減速する時)には、最下流の駆動ロール(41)は回転数が0に向う一方、最上流の駆動ロール(43)は紡糸速度で回りつづける。このときには同一駆動の駆動を停止し、最下流のロールの慣性モーメントを減らすことができる。アキューム機構(40)が定速で下がっている時には、慣性モーメントは生じない。
【0036】
さらに、アキューム機構(40)が停止する時(下降が減速の時・巻取が加速する時)には、最下流の駆動ロール(41)は回転数が紡糸速度に向かうため、同一駆動を開始し、該ロールにおける慣性モーメントを減少させる。
【0037】
アキューム機構(40)からの糸の吐き出し時には、逆に固定板(47)を上下アクチュエータ(49)により上方に変動させながら徐々に下流に向けて線状物を流しはじめ、それに伴い駆動ロール(41)(42)は徐々に回転速度を上げていく。このときにも、駆動ロール(41)(42)には回転と逆方向の慣性モーメントが発生するため、トルクリミッタによって駆動ロール(41)(42)が自由に回転(空転)できるようにする。
このようにトルクリミッタを駆動ロール(41)(42)に設ける他、別実施例として、駆動ロール(41)(42)毎にサーボモータで駆動する構成をとることもできる。
【0038】
すなわち、公知のサーボモータでは駆動トルクを自在に制御することができるので、駆動ロール(41)(42)の駆動時・停止時の回転速度にあわせて駆動トルクを変じ、線状物に不安定な張力が発生しないようにする。
【0039】
以上に説述した構成は、本発明の要部である巻枠体間の線状物の切り替えを連続的かつ自動的に行う上で極めて好適な実施例である。切り替え時の所要時間に応じて、アキューム機構(40)のアキュームロール(45)の数は適宜設定することができ、固定板(44)の上下移動量とアキュームロール数(45)を調整する。これにより、線状物の十分な長さの貯留が可能になるため、巻枠体の切り替えが確実かつ効率的に可能となる。アキューム機構(40)では次に説述するトラバース機構(20)の動作速度などに対応して必要十分なアキューム量を設定することが望ましい。
【0040】
本発明では、図1で示したような1次元のトラバース(106)だけでなく、3次元方向に移動可能なトラバース機構(20)を新たに配設することを提案する。すなわち、図6及び図7に示すように、巻枠体(10)(11)の上方であって、線状物の上流側に第1トラバース(21)を、その直下流側に第2トラバースを設ける。
【0041】
第1トラバース(21)は、巻枠体(10)(11)の軸方向に摺動自在であって、従来と同様に線状物の位置を案内することができる。
一方、第2トラバース(22)は、ガイド部材(23)に従って、巻取り方向と平行にトラバース部を移動させることが出来る他、巻枠体と重なる程度まで下降したり、巻枠体と干渉しない程度まで上昇する上下方向の移動、さらに第1トラバース(21)と基部を連設することによって巻枠体(10)(11)の軸方向の摺動も自在である。これらの駆動は図示しないコンピュータにより独立して制御可能となっている。
【0042】
このような3次元方向に移動自在な第2トラバース(22)を用いて、本発明は次のようなトラバース方法を実装する。図8ないし図13はトラバース方法を順に説明する説明図であり、各図の(a)は平面図説明図、(b)は正面図説明図である。
【0043】
図8の状態は、第1巻枠体(10)に線状物の巻取り作業を行っている場合であって、第2トラバース(22)は第1トラバース側に寄って線状物をガイドした状態である。なお、(a)に示す黒点はそれぞれ第1トラバースと第2トラバースの位置を示したものである。
【0044】
そして、第1巻枠体(10)が満巻になると、第1巻枠体(10)が回転を停止する。このとき、上記ダンサーロール機構(30)が作用し、それに伴ってアキューム機構(40)でアキューム動作が開始される。
【0045】
そして図9のように、第1トラバース(21)が第2巻枠体(11)側に移動するのと同時に、第2トラバース(22)は下流側(第1トラバースと離れた位置方向)に移動する。従って、第2トラバース(22)は斜め方向の軌跡で移動する。なお、本願では第2トラバースの移動始端・終端のみを特徴としているので、移動軌跡は任意であり、例えば軸方向に移動した後に、巻取り方向に移動する構成や、2次曲線的な軌跡により移動してもよい。
【0046】
線状物は、第2トラバース(22)にガイドされて第2巻枠体にトラバースする。このとき、第1巻枠体・第2巻枠体共に静止しているため、第1巻枠体(10)から軸方向と平行に最短で線状物を渡すことができる。
【0047】
ところで、第1巻枠体(10)ではハンド(16a)によって係止されるため線状物は巻取り方向と垂直に移動するが、第2巻枠体のハンド(16b)が必ずしも対応する位置にあるとは限らない。
【0048】
そこで、図10に示すように、第2巻枠体(11)を僅かに回転させてハンド(16b)が線状物を係止する位置まで移動させる。これにより、第1巻枠体(10)から第2巻枠体(11)に線状物を最短距離で掛け替えることが可能になる。
なお、上記において第1巻枠体(10)を完全に停止する構成としたが、本発明では、第1巻枠体(10)の回転速度を十分に減速して、ハンド(16a)から第2巻枠体(11)に線状物を案内し、第2巻枠体をわずかに回転させることによって線状物を横架させるように構成することもできる。このような減速の際にも、上記同様アキューム機構(40)により実現可能である。
【0049】
さらに、第2トラバース(22)が図11のように上昇し、線状物から離脱する。さらに、図12のように上昇したままの状態で第2トラバース(22)が第1トラバース(21)側まで移動する。
【0050】
最後に、図13のように第2トラバース(22)は再び下降して線状物をガイドし、それと共に第2巻枠体(11)が第1巻枠体(10)と共に同期して回転を開始する。
以上の工程により、本発明に係る第2トラバース(22)を用いて満巻側の巻枠体から垂直に空の巻枠体に線状物をトラバースする動作が完了する。これらの各工程は短時間で行うことができるだけでなく、ハンドに確実に係止することによって、線状物の脱落などの恐れがなく、好適な巻取り方法に寄与するものである。
【0051】
本発明は、必ずしも第1トラバース(21)を配設せず、第2トラバース(22)のみによってトラバース動作を行うように構成してもよい。ただし、第1トラバースによって、巻枠体に至る行程で線状物を平行に案内することができるので、安定した線状物の供給に寄与するので、第1トラバースの設置が望ましい。
【0052】
従来、巻枠体間に渡した渡り糸は巻枠体間にカッターを設けて巻枠体の同期回転に伴って切断するように構成していた。
本発明では、このときの2度切りや切断糸の巻き込みなどを防ぐため、新規な構成のカッターを採用した。図7に示すように通常カッター(17)は巻枠体(10)(11)と離脱した状態で待機し、切断時に巻枠体間に水平移動して渡り糸を切断する。
【0053】
本構成に加えて、カッター(17)を巻枠体の回転軸方向にも移動可能とし、渡り糸の切断位置を第1巻枠体(10)側、第2巻枠体(11)側のいずれか一方に偏った位置に変じることができるように構成した。
【0054】
すなわち、図14の(a)では第2巻枠体(11)側に偏った位置であり、(b)は第1巻枠体(10)側に偏った位置である。
そして、切断位置は常に空巻枠体側に偏った位置となるようにした。本構成の意味するところは、最初の切断した残存部分と、次に切断した時の残存部分の長さが異なるようにすることである。
【0055】
すなわち、各巻枠体について、はじめに他方の巻枠体からの渡り糸を切断した後、自巻枠体が満巻になると再び他の巻枠体への渡り糸を切断するため、最初の渡り糸の残存部分(50)と、満巻時の渡り糸の残存部分(51)の長さが異なる。最初の残存部分(50)の長さが短いために2度目の切断時にこの残存部分(50)とカッターが交差する恐れがなく、2度切りすることがない。
また、最初の残存部分(50)は短いため、続く巻取り時にも巻き込む恐れがない。
本発明の実施においては、カッター(17)を軸方向に移動させる構成の他、カッターを第1巻枠体(10)側と、第2巻枠体(11)側にそれぞれ別個に配置し、常に空巻枠体側のカッターを作動させる構成をとってもよい。
【0056】
渡り糸の切断時には、両巻枠体(10)(11)が同期回転し、渡り糸の切断が終了した時点で、満巻側の第1巻枠体(10)は回転を停止する。一方、アキューム機構(40)においてアキュームロールが所定の速度で上昇を開始し、ダンサー機構(30)の制御に従って、これから巻取り作業を行う第2巻枠体(11)の回転速度が上昇する。
【0057】
第1巻枠体(10)の線状物はその後、例えば梱包や所定の長さ毎に裁断されて取り外され、再び空巻枠体として次の巻取り作業に備えておく。
本発明は、以上説述したように、連続的に線状物を供給しながら、アキューム機構によって線状物を貯留して巻枠体の回転停止を可能にすると共に、3次元動作が可能な第2トラバースを備えることで最短距離にて線状物の切り替えを実現する巻取り方法及び装置を提供するものである。
【0058】
本構成は必ずしも2個の巻枠体の構成に限らず、複数並列して配置される巻取り装置であれば用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
A 巻取り装置、
10 第1巻枠体、
11 第2巻枠体、
12 駆動装置、
13 駆動装置、
14 支持台、
15 支持台、
16 ハンド、
17 カッター、
20 トラバース機構、
21 第1トラバース、
22 第2トラバース、
23 ガイド部材、
30 ダンサーロール機構、
31 ダンサーロール、
32 ダンサーアーム、
33 回動軸、
34 ガイドロール、
40 アキューム機構、
41〜46 駆動ロール、
47 固定板、
48 アキュームロール、
49 上下アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の連続した線状物を、同軸上で複数並列して配置された回転軸から放射状に複数のハンドを有する環状又は多角状の巻枠体に、それぞれ所定の巻数で各々巻取る巻取り装置であって、
独立して回転可能であると共に、他の巻枠体と同期回転も可能な駆動装置を備えた複数の巻枠体と、
少なくとも巻取り方向と巻枠体の並列方向と巻枠体上下方向とにトラバース部を変位可能な駆動手段を備えたトラバース機構と、
巻枠体間に横架した線状物を回転時に切断する渡り糸切断機構と
を少なくとも備えたことを特徴とする線状物の巻取り装置。
【請求項2】
前記線状物の巻取り装置において、一定速度で供給される線状物を、その出口において減速又は停止可能なアキューム機構を備えたことを特徴とする請求項に記載の線状物の巻取り装置。
【請求項3】
前記アキューム機構が、
駆動ロールを別個にサーボモータにより駆動し、駆動時のトルクを制御して駆動ロールの慣性モーメントを抑制することを特徴とする請求項に記載の線状物の巻取り装置。
【請求項4】
前記渡り糸切断機構が、空巻枠体側に偏った位置で線状物を切断するように構成した請求項1ないし3に記載の線状物の巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−208968(P2009−208968A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150211(P2009−150211)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【分割の表示】特願2003−421818(P2003−421818)の分割
【原出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【出願人】(000116736)旭化成エンジニアリング株式会社 (49)
【Fターム(参考)】