説明

線維性癒着及び他の疾患の治療に用いる変性フカンを含む医薬組成物

フカン剤を含有する組成物、並びに線維性癒着、腹膜炎、虚血症、再灌流傷害、エンドトキシン血症、ケロイド形質傷跡、ケロイド、皮膚炎及び酒さの治療、防止、抑制等に対する該組成物の利用。好適なフカン剤は、その分子量分布により特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の説明
本願は2009年7月27日出願の米国仮特許願61/228,929に基づく優先権を主張する。これら及び本明細書で明らかにされた他の文献は参考として本明細書に組み込まれる。
【0002】
内容の一覧
下記は本願内容の一覧である。
・関連出願の説明
・内容の一覧
・発明の背景
・発明の概要
・詳細な説明
例示薬剤の概要
フカン類
膜形態物
ゲル形態物
点滴形態物
抗線維性癒着剤の量的効果の説明
他の例示的実施態様
・実施例
・請求の範囲
・要約
【背景技術】
【0003】
線維性癒着は身体の2部位間で形成される一種の傷跡(後遺瘢痕)であり、大抵は手術後に形成される(手術性癒着)。線維性癒着は深刻な問題を提起する。例えば、女性の生殖器官(卵巣、卵管)が関与する線維性癒着は不妊症、性不感症及び重篤骨盤痛を引き起こすことがある。腸内で発生する線維性癒着は腸閉塞を引き起こすことがあり、さらに線維性癒着は心臓周囲、脊柱近辺並びに肢部などの他の身体部位においても発症し得る。手術に加えて、繊維性癒着は、例えば子宮内膜症、感染症、化学治療、放射線治療、外傷及び癌によっても引き起こされる。
【0004】
様々な線維性癒着が本明細書で説明されている。手術性癒着、手術後癒着、外科処理後癒着、骨盤炎症性疾患による癒着、物理的怪我による癒着、放射線曝露による癒着、放射線治療による癒着、外傷による癒着及び異物の存在による癒着は全て類似した作用メカニズムによる組織同士の癒着のことであり、全て線維性癒着の範疇に含まれる。
【0005】
線維性癒着の形成は複合的なプロセスが関与しており、そこでは身体内で通常では分離している組織同士が互いの組織内に侵食成長する。手術性癒着(手術後癒着)は、外傷に対する組織の通常では正常である傷治癒反応から進展し、全腹腔部手術患者の3分の2以上において発症すると報告されている(Ellis, H., Surg. Gynecol. Obstet. 133:497(1971))。これら線維性癒着の結果は多様であり、関与する手術部位や疾患部位等によって異なる。これには慢性的な痛みや腸閉塞が含まれ、心臓手術後には死亡の可能性が増大することもある(diZerega, G.S., Prog. Clin. Biol. Res. 381:1-18 (1993); diZerega, G.S., Fertil. Steril. 61:219-235 (1994); Dobell, A.R., Jain, A.K., Ann. Thorac. Surg. 37:237-278(1984) )。生殖可能年齢の女性においては、子宮、卵管または卵巣が関与する線維性癒着は全不妊症の原因の約20%を占めると考えられている(Holtz, G., Fertil. Steril. 41:497-507(1984); Weibel, M.A.及びMajno, G. Am. J. Surg. 126:345-353(1973))。
【0006】
線維性癒着形成のプロセスにおいて、最初には、線維の足場の確立及び正常組織の修復プロセスが関与する。正常修復プロセスには中皮の修復を伴う線維素分解が関与する。しかし、線維性癒着形成においては、線維芽細胞の組織網内における増殖の際に線維素のマトリックスが成長して血管形成させ、約3日から5日のうちに組織化された線維性癒着が確立される(Buckman, R.F., et al., J. Surg. Res. 21:67-76 (1976); Rafety, A.T., J. Anat. 129:659-664 (1979))。炎症プロセスには、外傷組織内での好中球の活性化、線維素沈着及び隣接組織同士の結合、マクロファージ侵入、損傷部位内への線維芽細胞増殖、コラーゲン沈着、血管形成及び永続的線維性癒着組織の確立が含まれる。
【0007】
手術性癒着を防止するために様々な方法が試されてきた。これらには、手術性外傷を伴う生物化学及び細胞作用に影響を及ぼすことを目的とした薬理的アプローチ並びに患部組織を分離する隔壁法が関与した。例えば、腹膜潅流、ヘパリン化溶液及び凝固亢進剤の利用、顕微鏡または腹腔鏡手術技術の利用のごとき外科技術の改良、手術用手袋からのタルクの除去、さらに細い縫合糸の使用並びに漿膜表面の接合部を最小化するための物理的隔壁物(膜形態物、ゲル形態物または溶液形態物)の使用等が全て試されてきた。現在のところ、予防療法には線維素沈着の防止、炎症の軽減(ステロイド系及び非ステロイド系の抗炎症薬)並びに繊維素沈着の排除も含まれている。
【0008】
手術後の癒着形成を防止するための介在形態物利用には流体物浮遊技術または防壁具の利用が含まれていた。流体物浮遊技術には、関与する器官を分離状態にしておくように大量のデキストラン(癒着研究グループ、Fertil. Steril. 40:612-619(1983))または大量のカルボキシメチルセルロース(Elkins, T.E., et al., Fertil. Steril. 41:926-928(1984))のごときポリマー溶液を手術部位へ点滴することが関与した。酸化再生セルロース(例:InterceedTM)やポリテトラフルオロエチレン(ゴアテックス手術用膜体)で成る合成隔壁膜及び変性ヒアルロン酸/カルボキシメチルセルロース(HA/CMC)の組み合わせ物質(SeprafilmTM)で成る完全再吸収膜も動物並びに人間における手術後の癒着形成を減らすために利用された(Burns, J.W., et al., Eur. J. Surg. Suppl. 577:40-48(1977); Burns, J.W., et al., Fertil. Steril. 66:814-821(1996); Becker, J.M., et al., J. Am. Coll. Surg. 183:297-306(1996))。これらHA/CMC膜の成功は、線維性癒着が形成される際の腹膜傷部修復プロセス中に組織を分離させる膜の能力によるものであろう。それらの膜は適用後3日から5日をかけて傷を受けた組織に透明粘性コーティングを形成することが観察された。この修復期間は手術後の癒着形成期間と合致する(Ellis, H., Br. J. Surg. 50:10-16(1963))。しかし残念なことに、これらの方法では限定的な成功を提供するのみであることが知られている。
【0009】
腹膜炎には腹膜の炎症が関与する。腹膜炎は激しい症状を伴うことがある。例えば、腹痛、腹部圧痛及び腹壁防御が発症する。腹膜炎には自然発生的炎症、解剖に伴う炎症及び/又は腹膜透析関連に伴う炎症が関与する場合がある。腹膜炎には、例えば管腔臓器の穿孔、腹膜の破損及び自然発生的細菌性腹膜炎が関与することがあり、全身性感染が腹膜感染及び腹膜炎の原因となることがある。腹膜炎は腹膜内への無菌体液の漏れのごときによる感染には関与せず、無菌腹腔手術が腹膜炎を発症させることがある。腹膜炎を防止及び/又は治療するために様々な方法が試された。例えば、静脈による水分補給、抗生物質投与及び手術等の一般的療法が行われてきた。腹膜炎をさらに効果的に、しかも少ない副作用で抑制または治療及び/又は防止できる化合物、組成物、方法、等々に対する需要が存在する。
【0010】
虚血症には血液供給の規制が関与する。これには正常な組織機能に必要な酸素、グルコース及び他の物質の供給不良が含まれ、組織の破壊及び/又は機能障害を招く。虚血症は重大な問題を引き起こす可能性がある。例えば、組織が無酸素状態化して壊死したりすることがあり、血液凝固が発生し得る。虚血症を防止及び/又は治療する様々な試みが為されてきた。例えば、血流復活治療あるいは再灌流治療が存在する。しかし血流復活治療には酸素の再導入が関与する。これは遊離基の発生による追加の損傷を発生させる危険が伴い、再灌流による損傷を発生させる可能性がある。再灌流損傷は深刻な問題を起こす可能性がある。よって虚血症及び/又は再灌流傷害を抑制あるいは治療及び/又は防止し、好適にはさらに効果的で副作用が少ない化合物、組成物、方法、等々(投与方法を含む)に対する需要が存在する。
【0011】
エンドトキシン血症は血液中にエンドトキシンが存在する病気である。エンドトキシン血症は重大な問題を起こす可能性がある。例えば、エンドトキシン血症は敗血性ショックを招くかも知れない。エンドトキシン血症を抑制あるいは治療及び/又は防止し、好適にはさらに効果的で副作用が少ない化合物、組成物、方法、等々(投与方法を含む)に対する需要が存在する。
【0012】
ケロイド形質は傷口を隆起させた傷跡を伴って治癒させる。ケロイド形質の隆起傷跡には異常な線維性瘢痕が関与する。ケロイド形質は重大な問題を起こす。例えば、痛みや損傷形成の発生である。ケロイド形質及び結果としての隆起傷跡の発生を抑制、治療及び/又は防止し、好適にはさらに効果的で副作用が少ない化合物、組成物、方法、等々(投与方法を含む)に対する需要が存在する。
【0013】
ケロイド(ケロイド傷跡)は正常な皮膚の上に増殖して広がるタイプの傷跡である。ケロイドにはタイプI及びタイプIIのコラージュ異常増殖を含む異常コラーゲン増殖が関与する。ケロイドは大きな問題を引き起こす。例えばケロイドは痛み及び痒みを引き起こし、感染すれば潰瘍を発症させる。外科手術、包帯手当て、ステロイド薬の注射及びレーザ治療等でケロイドを治療または防止する試みが実行されてきた。ケロイドを抑制、治療及び/又は防止し、好適にはさらに効果的で副作用が少ない化合物、組成物、方法、等々(投与方法を含む)に対する需要が存在する。
【0014】
皮膚炎にはアトピー性皮膚炎及び接触性皮膚炎等の皮膚の炎症が含まれる。例えば、接触性皮膚炎には、皮膚の異物との接触によって発症する局所的発疹及び/又は皮膚の過敏症が関与する。例えば、アトピー性皮膚炎は慢性で再発性である掻痒性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎は時にベニエ痒疹、神経皮膚炎、内因性湿疹、屈面性湿疹、乳児性湿疹、小児性湿疹及び急性単純性痒疹と称される。湿疹は皮膚炎形態の疾患である。他のタイプの皮膚炎には、海綿状皮膚炎、脂漏性皮膚炎(頭垢)、発汗性皮膚炎(汗泡症)、ジンマシン、小疱性皮膚炎(水疱性皮膚炎)及び丘疹性ジンマシンが含まれる。皮膚炎は重大な問題を引き起こす可能性がある。例えば、乾燥肌、皮膚発疹、皮膚浮腫、皮膚発赤、皮膚掻痒、皮殻形成、皮膚罅割れ、水脹れ、滲出、及び出血である。コルチコルテロイド及びコールタールの利用を含んで、皮膚炎を治療あるいは防止する努力が実行されてきた。アトピー性皮膚炎、湿疹、接触性皮膚炎、海綿状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、発汗性皮膚炎、ジンマシン、小疱性皮膚炎、及び丘疹性ジンマシンを抑制、治療及び/又は防止し、好適にはさらに効果的で副作用が少ない化合物、組成物、方法、等々(投与方法を含む)に対する需要が存在する。
【0015】
“酒さ”は一般的には顔面紅斑を特徴とする慢性疾患または症状である。酒さは困難な問題を引き起こす可能性がある。例えば、酒さは一般的に額、鼻または頬の赤変として始まり、頸、耳、頭皮及び胸部の赤変を伴うことがある。例えば、酒さは、末梢血管拡張、丘疹、濃疱、痛痒感覚等の追加症状を引き起こし、進行した場合には酒さ鼻(紅分葉鼻)症状が発症する。酒さの亜種には、赤斑脈管拡張性酒さ(erythematotelangiectatic rosacea)、丘疹濃疱性酒さ、腫瘤性酒さ、及び眼性酒さが含まれる。抗炎症剤及び抗生物質の使用を含んで、酒さを治療または防止するために様々な試みが実行されてきた。赤斑脈管拡張性酒さ、丘疹濃疱、及び眼性亜種等の酒さを抑制、治療及び/又は防止し、好適にはさらに効果的で副作用が少ない化合物、組成物、方法、等々(投与方法を含む)に対する需要が存在する。
【0016】
本明細書で解説する線維性癒着及び/又は他の疾患及び/又は症状、並びに関連疾患及び/又は関連症状を抑制、治療及び/又は防止し、好適にはさらに効果的で副作用が少ない化合物、組成物、方法、等々(投与形態を含む)に対する需要が存在する。本発明の化合物、組成物、方法、等々はこれらの利点の1つ以上を提供する。
【発明の概要】
【0017】
本発明の組成物、方法、等々は、手術による癒着あるいは類似の疾患または症状の治療のための、本明細書で説明する線維性癒着あるいは他の疾患に対する1以上の薬剤を含んだ組成物及びその利用方法を含む。これら抗疾患剤は線維性癒着あるいは他の症状に対して優れた治療効果を発揮するが、一般的に副作用が少ない。さらに、ここでは多様で異なる薬剤が説明されているため、これら薬剤の様々な組み合わせが他の疾病または症状を患う患者の副作用を軽減するため、及び/又は他の有効な健康増進または治療効果を提供するために望むように選択でき、線維性癒着を抑制し、加えて癌や関節炎または腫症状あるいは多様な他の疾病や症状をも治療できる組成物が得られる。ここで説明する組成物は線維性増殖症状及び線維性癒着と類似した生物学的形態を共有するケロイド形質のごとき病状、並びに本明細書で解説する他の疾患及び症状の治療に有効である。従って、本明細書の説明はそのような線維性増殖症状にも同様に適用できる。
【0018】
実施例によっては、本発明の組成物、方法等には、選択された変性フカン(またはフカン組成物)を使用した治療、予防、抑制等の目的が含まれる。本発明の組成物は、普通、約40%w/w以上の総炭水化物含有量、総炭水化物に対して約40から100%である百分率のフコーストース含有量、総炭水化物に対して約0から60%である百分率のガラクトース含有量、総炭水化物に対して0から20%である百分率のフコース及びガラクトースを除く(すなわちそれら以外の)糖含有量、約40%未満のアセチル基とフコースモノマーとの割合、0から5000g/molである変性フカンの部分が約30%w/w未満を含むような分子量分布、約5000から60000g/molの変性フカンの部分が約50%w/w未満を含むような分子量分布、約60000から200000g/molの変性フカンの部分が約40%w/w未満を含むような分子量分布、約200000から1600000g/molの変性フカンの部分が約50%w/w未満を含むような分子量分布、約1600000g/mol以上の変性フカンの部分が約50%w/w未満を含むような分子量分布、約10から約50%w/wの硫酸塩含有量、及び/又は約20%w/w未満の水含有量を含んでいる。選択された変性フカンは、0.1%w/vまでの溶液で準備されたとき約pH4から8の溶液となる変性フカンも含む。この組成物は、一般的に少なくとも1種の薬学的に利用可能な添加剤、賦形剤、基剤、または希釈剤を含む。望むならこれら薬学的に利用可能な添加剤、賦形剤、基剤または希釈剤は、プルロニック、セルロース、アルギン酸塩、アクリル酸塩、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール及びキトサンから成る群から選択できる。
【0019】
従って、本明細書で説明する組成物、方法等は、関節炎を含む炎症疾患を治療し、手術癒着を含む線維性癒着を治療し、腹膜炎、虚血症、再灌流傷害、エンドトキシン血症、ケロイド形質傷跡、ケロイド、皮膚炎及び酒さの治療のための変性フカンを利用する。
【0020】
従って、本発明の組成物、方法等は線維性癒着を抑制するように意図された医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、線維性癒着を抑制するように選択された、ここで説明する薬学的有効量の変性フカンを含み、オプションで線維性癒着を抑制するように選択された治療有効量の少なくとも1種の治療有効薬剤を含み、少なくとも1種の薬剤的に利用可能な添加剤、賦形剤、基剤または希釈剤を含む。望むならこれら薬剤的に利用可能な添加剤、賦形剤、基剤または希釈剤はプルロニック、セルロース、アルギン酸塩、アクリル酸塩、ヒアルロン酸、ポリエチレングリコール及びキトサンで成る群から選択できる。
【0021】
本発明の組成物、方法等は、腹膜炎、虚血症、再灌流傷害、エンドトキシン血症、ケロイド形質傷跡、ケロイド、皮膚炎及び酒さの治療のために選択された変性フカンを含む。変性フカンは、腹膜炎、虚血症、再灌流傷害、エンドトキシン血症、ケロイド形質傷跡、ケロイド、皮膚炎及び酒さに対して有効な治療効果を発揮し、一般的に副作用が弱い。1特徴においては、この組成物、等々は患者の腹膜炎、虚血症、再灌流傷害、エンドトキシン血症、ケロイド形質傷跡、ケロイド、皮膚炎及び酒さを治療または防止する方法を提供し、患者に対する治療効果量の選択された変性フカンの投与を含む治療方法を提供する。
【0022】
実施例によっては、治療対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ラクダまたは他の哺乳動物、あるいは鳥類、爬虫類のごとき動物である。疾患部位は動物全身、または腹部、手足、脊柱、頭部等の局所、生殖管、胃腸管、肺臓系、胸腔、心臓または血管系、泌尿器系、または腹膜炎、虚血症及び再灌流傷害の治療のための腹腔等、あるいはエンドトキシン血症の治療のための脈管系、またはケロイド形質傷跡、ケロイド、皮膚炎及び酒さ、あるいはその他の任意部位の治療のための局所部位である。治療対象部位は動物全身、または腹部内、手足、脊柱、頭部、生殖管、胃腸管、肺臓系、胸腔部、心臓または血管系、泌尿器系、皮膚等の特定部位、あるいはその他の器官系または部位である。治療対象部位は手術部位、骨盤炎症疾患部位、機械的損傷部位、放射線曝露部位、異物の存在で損傷した部位、あるいはその他の任意の部位でよい。
【0023】
選択された変性フカンは、ポリマー投与形態物からの制御された放出を介して実質的継続的に疾患部位に投与される。投与形態物には膜体、点滴剤、パッチ、ペースト、微小球、インプラント、ゲル、スプレーあるいは液体、溶液、乳酸加リンゲル液USPでも利用できる縣濁液が含まれる。選択された変性フカンは別薬剤と組み合わせて投与できる。この別薬剤はここで説明するものでも、その他の治療薬剤でも構わない。
【0024】
組成物と方法等は、治療対象または患者の線維性癒着、腹膜炎、虚血症、再灌流障害、エンドトキシン血症、ケロイド形質傷跡、ケロイド、皮膚炎、および酒さに関連する症状を軽減させる医薬組成物または装置を含んだ医薬品の製造に利用できる。医薬品は薬学的効果量の変性フカンと薬学的に許容である添加剤、賦形剤、希釈剤、または緩衝剤を組み合わせて製造することができ、追加の抗疾患薬剤を含むことができる。
【0025】
変性フカン組成物は別な治療薬剤と共に使用できる。この別治療薬剤は、治療効果量である1種以上のアルギン酸、ドキシサイクリン、コルチゾン、エストラムスチン、メレチトーズ、琥珀酸、メクロフェナメート、パルミチン酸、硫酸デキストラン、コラーゲン、ブデソニド、マレイン酸エナラプリル等のエナラプニル、ナブメトン、シンバスタチン等のスタチン、カプトプリル、キトサン、ミノサイクリン、メトトレキサート、シスプラチン、イブプロフェン、エリトロマイシン、テトラサイクリン、抗ADF-1アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、抗SDF-1小型分子RNA、抗SDF-1siRNA、抗SDF-1リボザイム、抗SDF-1アプタマ、SDF-1の小型分子阻害剤等のSDF-阻害剤、抗hSDF-1/PBSF等の抗SDF-1抗体、ラパマイシン、ヒドロキシプロピルセルロース、ブスルファン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、ドセタキセル、硫酸ビンブラスチン、MG132、ニメスリド、ジクロフェナック、テノキシカム、インドメタシン、アセチルサルチル酸、ジフルシナル、ベータメタゾン、デキサメタゾン、デフェロキサミン、メシレート、レチノイン酸、ヘパリン、ペントキシフィリン、ステプトキナーゼ、TGF-ベータ、TIMP-2、デキストロース、デキストランT70、スターチ、クエルセチン二水和物、ヒドロキシプロピルセルロース、スタキオース、硫酸コンドロイチンA、等でよい。
【0026】
薬剤は抗腫瘍剤、抗炎症剤、鉄キレート化剤、トリエンマクロライド抗生物質、3−ヒドロキシ−3−メチルグルテリル-CoAリダクターゼ阻害剤、レチノイド、抗血栓剤、抗凝血剤、プラスミノーゲン活性剤、サイトカイン、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、テトラサイクリン、ACE阻害剤、デキストラン糖またはカラギーナン、アルキル化剤、抗代謝剤、リボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤、細胞毒抗生物質、タキサン、ビンカルカロイドまたはプロテアーゼ阻害剤、COX-2阻害剤、フェナメート、オキシカン、アセチル酸誘導体、サリチル酸誘導体、またはコルチコステロイドでもよい。
【0027】
本明細書の随所で説明するように、本発明の様々な特性及び実施態様、等々は望むように混合、調合、組み合わせ及び置換が可能である。よって、前述及び後述の特定の薬剤及び対象疾患は、たとえ明細書の同一段落内において記載されていなくても任意に組み合わせることが可能である。特定の適した別薬剤は、例えば、米国特許6812220(2004年11月2日発行)、米国特許7163930(2007年1月16日発行)、米国特許公開20080063682、及びPCT公開WO2004105737並びにPCT公開WO2006032143において紹介されている。これら文献の内容を本願に援用する。
【0028】
さらに別な特徴によれば、本発明の組成物、方法等は治療キットを提供する。この治療キットは本明細書で言及する組成物を含んだ収容器と、線維性癒着を抑制する組成物の薬学的利用法を指示するラベルとを含む。このラベルは、例えば2009年7月1日に施行されたFDA基準であるFDA承認ラベル等の政府公認ラベルでよい。収容器は点滴液または任意の他の組成物形態物を収容するように形態化されたバイアルでよい。ラベルはさらに非線維性癒着疾病または非線維性癒着症状の少なくとも一方を治療するための組成物の薬学的利用に関する指示を含むことができる。
【0029】
これら及び他の特性及び特徴並びに実施態様は、添付の図面と共に本明細書の以下の詳細な説明において解説されている。
【0030】
詳細な説明
例示薬剤の概要
幾つかの実施例では、本発明の組成物、方法等は、選択された変性フカンを利用して、手術による癒着を含む線維性癒着等の疾患または症状の治療、予防、抑制、等々を含む。この変性フカンは普通、約40%w/w以上の総炭水化物含有量、総炭水化物含有量の百分率として約40から100%のフコース含有量、総炭水化物含有量の百分率として約0から60%のガラクトース含有量、総炭水化物含有量の百分率として約0から20%のフコース及びガラクトースを含む糖含有量、約40%未満のアセチル基とフコースモノマーの割合、約0から5000g/molの変性フカンの部分が約30%w/w未満を含むような分子量分布、約5000から60000の変性フカンの部分が50%未満を含むような分子量分布、約60000から200000g/molの変性フカンの部分が約40%w/w未満を含むような分子量分布、200000から1600000g/molの変性フカンの部分が約50%w/w未満を含むような分子量分布、約1600000g/mol以上の変性フカンの部分が50%w/w未満を含むような分子量分布、約10から50%w/wの硫酸塩含有量、及び/又は約20%w/w未満の水含有量を含んだ成分の特定の組み合わせで成る。選択された変性フカンは、0.1%w/vまでの溶液では、約pH4から8の溶液となるような変性フカンを含むこともできる。本明細書で説明する組成物、方法等は、関節炎、腹膜炎、虚血症、エンドトキシン血症、ケロイド形質/隆起傷跡、ケロイド(ケロイド傷跡)、皮膚炎(海綿状皮膚炎、脂漏性皮膚炎(頭垢)、発汗性皮膚炎(汗疱)、ジンマシン、小疱性皮膚炎(水疱性皮膚炎)及び丘疹ジンマシンを含む)、酒さ(例:赤斑脈管拡張性酒さ、丘疹濃疱酒さ、瘤腫症酒さ及び眼性酒さ)を含む炎症を治療する変性フカンをさらに含むことができる。
【0031】
組成物は医療用組成物であり、医薬組成物または栄養補給組成物でもよい。本明細書で使用する用語である医薬組成物とは薬理学剤(薬)であり、医療用装置とは本明細書で述べる組成物を含んだものである。薬剤組成物は、医療用食品のごとき物品であると考えられる栄養補給組成物とは異なる。
【0032】
組成物は別の薬剤(副薬剤)も含むことができる。例えば、線維性癒着の形成または本明細書で解説する他の疾患を治療、抑制または防止する薬剤を含むことができる。このような線維性癒着は手術後、外傷の結果、または放射線に曝露された結果、あるいは化学療法の結果及び他の原因の結果として形成される。薬剤は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシまたは他の哺乳類、あるいは鳥類、爬虫類または他の動物を含んだ動物の線維性癒着が疑われる部位の組織に適用される。例えば、実際に線維性癒着を有する部位、線維性癒着の発症条件下に曝露されている部位、例えば、放射線への曝露、手術部位、病気または外傷、及び線維性癒着の進行過程である部位に適用される。本明細書で解説するそれぞれの副薬剤には、否定されていない限り薬剤自体並びにその誘導体、塩、及び類似体が含まれている。これら副薬剤は線維性癒着の抑制のために異なる処方形態で投与可能である。これら組成物の一部の全身的搬送に伴うかも知れない有害性を軽減するため、望むならこれら組成物は、治療効果量の副薬剤を患部に対してのみ放出させることができる。これら組成物は、本明細書で紹介する副薬剤(それらの誘導体、塩及び類似体を含む)のポリマー形態の処方薬または他の形態の処方薬も含むことができる。このポリマー形態処方薬は線維性癒着部位にて副薬剤を持続的に放出させることができる。組成物は患部に直接的に投与することも、全身的またはその他の様態で投与することもできる。実施例によっては、本明細書の組成物は遺伝子治療用ヌクレオチド等のアンチセンスオリゴヌクレオチドまたは他のオリゴヌクレオチド剤を含まない。
【0033】
本発明の方法の実施例では線維性癒着または非線維性癒着あるいはそれらの諸症状の識別して治療する機能を含み、本明細書で説明する組成物を含んだ組成物を選択的に投与できる。実施例によっては、本発明の組成物及び方法には、疾患または症状に対して1種の成分が主要効果を有しており、別成分も主要効果を有する複数の薬剤を選択することが含まれる。例示的な非線維性癒着またはその症状には癌、PID、放射線曝露、機械的及び他の外傷、関節炎、手術結果、局所症状、例えば閉塞または他の機械的疾病症状、等々の実質的なリスクを有する疾病である胃腸管の疾病及び閉塞が含まれる。
【0034】
実施例によっては、抗線維性癒着剤は、例えば、軟膏、溶液、クリーム、粉末ローション、ゲル、スプレー、ムース、コーティング、ラップ(包体)、ペースト、バリア(隔壁体)、インプラント、微小球、微粒体、膜、微粒子、液体、インプラントフィルム、点滴処方剤、等々の形態で処方される。投与経路及び投与部位には、経口、全身、眼球、皮下、腹膜、筋肉、関節、疾患部、膣、肛門、または局部が含まれ、パッチ形態等が利用される。
【0035】
本明細書で言及する組成物は適した収容器で提供できる。この収容器は薬剤キットの形態で提供でき、そこにはラベルが添付できる。好適にはラベルはアメリカ合衆国食品医薬品局のごとき適した政府機関が承認するものである。ラベルは組成物の薬学的利用のための指示を含むことができる。収容器は、例えばバイアルであり、組成物を膜形態、ゲル形態、点滴薬形態、その他の形態で提供できるように形態化される。
【0036】
抗線維性癒着剤を含んだ組成物は基剤及び/又は物理的隔壁体(バリア)として機能することができる。これはポリマーであっても非ポリマーであってもよい。本明細書で説明する組成物は薬剤(フコイダン、変性フカンその他の変性フカンを含んだ、本明細書で説明する薬剤から選択される任意の薬剤の組み合わせ)を単独または水溶液形態あるいは非水溶液形態で含むことができ、または収容器内または基剤内に縣濁液として分散させることができる。ポリマー基剤、バリア及び添加剤の代表例には、キトサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(乳酸)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリ(グルコール酸)、エチレンと酢酸ビニルの共重合体、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン、乳酸及びグリコール酸との共重合体、ポリ(乳酸)とポリ(カプロラクトン)の共重合体、ゼラチン、コラーゲン、セルロース、アルブメン、プルロニック、ポリ(バレロラクトン)、ポリ(無水物)、ポリサッカリド、アルギン酸塩のごときアルギン酸、ヒアルロン酸、注射可能な添加剤、他のポリマー形態賦形剤及び共重合体、これらの誘導体、混合物、並びに調合物が含まれる。他の適した基剤の例には、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはトランスクトール(商品名)を含むグリコール類、エタノールとグリコールの混合物、ミリスチン酸イソプロピルまたはパルミチン酸イソプロピル、エタノールとミリスチン酸イソプロピルまたはパルミチン酸イソプロピルの混合物が含まれる。組成物によっては、このようなポリマーは自身で抗癒着活性を提供するであろう。
【0037】
例示的な副薬剤には、NSAID、COX−2阻害剤、ニメスリド、メクロフェナミン酸及びメクロフェナメートを含むフェナメート、ジクロフェナック、テノキシカムを含むオキシカム、インドメタシンを含むアセチル酸誘導体、アセチルサリチル酸を含むサリチル酸誘導体、ジフルニサル、フェニルブタゾンを含むピラザロン、デキサメタゾンを含むコルチコステロイド、ブスルファンを含むアルキル化剤、シクロホスファミド、エストラムスチン、シスプラチン及びデカルバジン、メトトレキセートを含む抗代謝剤、ヒドロキシウレアを含むリボヌクレオチドリダクターゼ阻害剤、ミトタンを含む細胞毒性抗生物質、タキサン、ドセタキセルを含むトポイソメラーゼ阻害剤、ビンカルカロイド及びビンブラスチンを含む類似体、MG132を含むプロテアゾーム阻害剤、デフェロキサミンメシレートを含む鉄キレート化剤、スタチン及びシムバスタチンを含む3-ヒドロキシ-3-メチルグルテリル-CoAリダクターゼ阻害剤、レチノイドと全トランスレチノイン酸を含むレチノイド類似体、ヘパリンナトリウム及び低分子量ヘパリンを含んだ抗血栓剤、ペントキシフィリンを含む抗血液凝固剤、ストレプトキナーゼを含むプラスミノーゲン活性剤、トランスフォーミング成長因子-ベータ(TGF-β)を含むサイトカイン、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、TIMP-2を含むマトリックスメタロプロテイナーゼ(TIMP)の組織阻害剤、テトラサイクリン、ミノサイクリン及びドキシサイクリンを含むテトラサイクリン、カプトプリルを含むアンギオテンシン-変換酵素(ACE)及びマレイン酸エナラプリルごとき塩を含むエナラプリルが含まれる。他の望ましい薬剤には、レフルノミド(アラバ)、エルトロマイシン、硫酸デキストラン、アルギン酸、デキストロース、デキストランT70、スターチ、二水クエルセチン、カフェイン、τ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、スタキオース、及び硫酸コンドロイチンが含まれる。これら副薬剤の説明は、例えばPCT公開番号WO2006032143において提供されている。
【0038】
フカン類
フカン(フコイダン及び変性フカンを含む)はワカメ(褐海草)から抽出される高分子の硫酸化多糖体(ポリサッカリド)であり(Percival, E., and McDowell, R.H., Chemistry and Enzymology of Marine Algae Polysaccharides, pp.157-175 (Academic Press, New York, 1967))、よく知られているようにヒバマタ目及びコンプ科(fucales and Laminariaceae)の分類ファミリーでのごとき他の抽出源、または他の海藻類及び海苔並びに棘皮類、ナマコ、ウニ、または、合成抽出源を含む他の抽出源から抽出できる。フコイダン(またはフコイジン)はワカメまたは他の原料から誘導される変性フカンを含む。US特許願2003064958参照。フカンは単独でも混合でも利用できる。例えば、キシロース、ガラクトース、グルコース、及び/又はマンノースのごとき糖類の混合物形態でもよい。これら糖類は海藻類に含まれていることが知られており、変性フカンと共に抽出できる(Duarte, Maria ER., Cardoso, Marc A., Noseda, Miguel D., Cerezo, Alberto S., “Structural studies on fucoidans from the brown seaweed Sargassum stenophyllum”, Carbohydrate Research: 2001(333):281-29)。直鎖、枝鎖及び直鎖の硫酸化変性フカンは異なる抗凝固活性を有すると報告されている(Pereira, M.S., J. Bio. Chem. 12:7656-67(1999))。
【0039】
フコイダンのごときフカンは様々な種の褐藻類から得られる。例えば、非限定的ながら、Adenocystis utricularis, Ascophyllum nodosum, Chorda filum, Cladosiphon okamuranus, Cystoseirabies marina, Ecklonia kurome, Fucus evanescens, Fucus vesiculosis, Hizikia fusiforme, Kjellmaniella crassifolia, Laminaria brasiliensis, Laminaria cichorioides, Laminaria japonica (コンブ), Laminaria saccharina, Pelvetia fastigiata, Sargassum stenophylum, Sargassum thunbergii及びUndaria pinnatifidaである。これらの種は全て分類クラスの褐藻類に属し、これらの種の大部分はFucalesとLaminariceaeに属する。

【0040】
膜形態物
ここで説明する薬剤は、線維性癒着の治療のためにヒトを含む動物の組織に直接的に適用するのに適した膜形態物として処方できる。膜形態物の望ましい特性は、それが薄くてフレキシブルであり、取り扱いが容易で組織に接着することができることである。それぞれの薬剤は膜形態物を製造するためにポリマーに組み込むことが可能である。ポリマー膜状処方物の特性は適した添加剤の追加によって強化される。1実施例においては、薬剤はヒアルロン酸ポリマーと組み合わされて膜形態物を造ることができる。添加可能な添加剤には1-エチル-3-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDAC)及びグリセロールが含まれる。
【0041】
本発明の1実施例では薬(薬剤)膜形態物を製造するために次の割合で薬剤が含まれている。0.001%から99%w/wの薬、50%から99%w/wの薬、0.001%から50%w/wの薬、10%から50%w/wの薬、30%から40%w/wの薬、0.001%から10%w/wの薬、1%から10%w/wの薬、0.001%から1%w/wの薬、1%から5%w/wの薬、1%から2%w/wの薬、または他の濃度の薬を含む。1実施例では5%w/wの薬剤膜形態物を製造するように薬剤をヒアルロン酸に含ませ、膜の残り部分はヒアルロン酸、グリセロール及びEDACを約45:19:3の比で含んでいる。
【0042】
ゲル形態物
本明細書で言及するそれぞれの薬剤は、ここではゲル形態物と呼称する粘性溶液内に溶解される。このゲル形態物はヒトを含む動物の体腔部に投与され、線維性癒着形成の抑制または防止に有効である。
【0043】
ゲル形態物の望ましい特性は、それが特定の体部箇所に投与されて、そこに留まるように十分に粘性であり、自重で流動せず、注射器または注入器で針を通して所望の体部箇所に投与できることを含む。1実施例では、ゲル形態物は5.5w/vのヒアルロン酸溶液と薬剤とを含んでおり、0.001%から1%w/vのゲル、1%から10%のw/vのゲル、または10%から50%w/vのゲルあるいは他の濃度のゲルを所望通りに製造する。
【0044】
点滴剤形態物
それぞれの組成物は液体中に溶解または縣濁することができる。この液体はヒトを含む動物の体腔部に投与でき、線維性癒着の増加した増殖部を含んだ癒着形成を抑制、治療、防止、等々の目的に使用できる。これら処方物はここでは点滴処方物と呼称される。これら処方物は、例えば手術後に患者の腹腔内に投与でき、手術後の癒着の形成を防止し、その他の所望の傷部、疾患部、等々の部位に投与できる。この液体は溶媒であってもよく、薬剤の溶液を提供することができる。さらに、薬剤を溶解させるのに使用される溶媒は水を主成分とした溶媒でよく、電解溶液でよい。
【0045】
実施例によっては、点滴溶液は実質的には非粘性液であり、例えば水と実質的に類似した粘性を有し、あるいは生理塩溶液と実質的に類似した粘性を有し、導入される身体のあらゆる腔部に到達できる。望ましい混合液とは、本明細書で説明している少なくとも一種の薬剤を液体内に溶解させており、約0.0001%w/vから1%w/v、1%w/vから2%w/v、2%w/vから5%w/v、5%w/vから10%w/v、10%w/vから25%w/v、及び25%w/vから50%w/v、あるいはその他の濃度で薬剤を含んだ溶液(または縣濁液、ゾル、等々)である。実施例によっては、点滴溶液は濃縮された溶液(または縣濁液、ゾル、等々)として作製され、続いてさらに希釈され(例えば、商業的に入手できる生理食塩水または乳酸加リンゲル液USPまたは他の溶液により希釈)、実質的に非粘性である液体が作製される。この濃縮溶液(または縣濁液、ゾル、等々)は約1%w/vから25%w/v、1%w/vから15%w/v、1%w/vから10%w/v、5%w/vから10%w/v、または5%w/vの濃度、あるいは所望の他の濃度で作製できる。
【0046】
抗線維性癒着剤の量的効果の説明
1実施例においては、手術性線維性癒着に対する所定の薬または薬調合物の効果は、所定の標準値に対する、その薬または薬調合物の平均全面癒着強度値(強度x面積;“TAV”)の低下で評価することができる。例えば、ラット網膜側壁モデルにおける薬含有ヒアルロン酸ナトリウム膜と偽薬膜すなわちヒアルロン酸ナトリウム単独との比較で評価できる。他の標準として活用できる物質には、別種の膜、溶液、等々が含まれ、ウサギ子宮角モデル等のモデルあるいはヒトにおける効果が考察できる。様々な実施態様では、手術性線維性癒着に対処する薬は、ラット盲腸側壁モデルを利用した、例えばヒアルロン酸塩膜においては、対照物の値の0.01%、1%、5%、10%、25%、50%または75%以下の平均TAVを有することができる。他の測定パラメータに関して、この薬は患者の全ての線維性癒着形成を実質的に抑制することができる。
【0047】
追加の例示的実施例
実施例によっては、医薬組成物は溶液、ゲル、ゾル、または縣濁液でよく、0から10%w/vで、5%w/v、0.001w/v、1%w/v、0.05%w/v、0.03%w/vの組成物の全域w/vフカン濃度を有することができる。
【0048】
実施例によっては、本発明の組成物、方法等には、処理中、製造中、運搬中及び/又はヒト、動物、爬虫類及び鳥類を含む患者に対する投与中に、向上した効果、及び/又は低減された毒性(有害性)、及び/又は改善された取り扱い性を提供するために、特製フコイダンを含む変性フカン等を利用した治療、抑制、等々が含まれる。変性フカンには白色からオフホワイトの間、白色から薄黄色の間、白色から薄橙色の間、白色から薄緑色の間、及び白色から薄茶色の間の外観色を有する変性フカンが含まれる。また変性フカンには、約30から100%w/w、40から90%w/w、50から80%w/w、37から75%w/w及び約55から75%w/wの総炭水化物含有量を有する変性フカンが含まれる。また変性フカンには、総炭水化物含有量の約20から100%w/w、約30から100%w/w、31から71%w/w、約40から100%w/w、約50から100%w/w、約60から100%w/w、約70から100%w/w、約80から100%w/w、約90から100%w/w、約40から80%w/w、約50から70%w/w及び約51から71%w/wのフコース含有量を有する変性フカンが含まれる。
【0049】
また変性フカンには、総炭水化物含有量の約0から70%w/w、9から46%、約10から60%、約20から50%、約25から45%及び約26から46%のガラクトース含有量を有する変性フカンが含まれる。また変性フカンには、総炭水化物の約0から59%w/w、0から40%、約0から30%、0から20%、0から15%、約0から10%、約0から6%、及び約0から5%のフコース並びにガラクトースを除いた糖含有量を有する変性フカンが含まれる。また変性フカンには、総炭水化物含有量の約0から40%、0から30%、約0から20%、約0から15%、約0から10%、約0から6%、及び約0から5%のフコースを除いた糖含有量を有する変性フカンが含まれる。
【0050】
また変性フカンには、約0から100%w/w、0から70%w/w、約0から40%w/w、0から36%w/w、0から30%w/w、約0から20%w/w、約0から10%w/w、約0から5%w/w、及び約0から2%w/wのアセチル基含有量を有する変性フカンが含まれる。また変性フカンには、約0から5000g/molの部分が約0から50%w/w、約0から40%w/w、約0から30%w/w、約0から25%w/w、及び約0から20%w/wを含むように分子量分布されている変性フカンが含まれる。
【0051】
また変性フカンには、約0から5000g/molの部分が約0から25%w/wまたは約0から30%w/w未満を含むように分子量分布されている変性フカンが含まれる。また変性フカンには、約5000から60000g/molの部分が約0から55%w/w、5から38%w/w、約10から45%w/w、約15から40%w/w、及び約17.5から37.5%w/wを含むように分子量分布されている変性フカンが含まれる。また変性フカンには、約60000から200000g/molの部分が約0から60%w/w、約0から50%w/w、約0から40%w/w、約5から35%w/w、及び約10から30%w/wを含むように分子量分布されている変性フカンが含まれる。また変性フカンには、約200000から1600000g/molの部分が約0から60%w/w、約0から50%w/w、8から43%w/w、及び10から40%w/wを含むように分子量分布されている変性フカンが含まれる。また変性フカンには、約1600000g/mol以上の部分が約0から60%w/w、約0から50%w/w、1から33%w/w、及び約2.5から42.5%w/wを含むように分子量分布されている変性フカンが含まれる。また変性フカンには、約0から60%w/w、約10から50%w/w、及び約20から40%w/wの硫酸化含有量を有する変性フカンが含まれる。また変性フカンには、約0から20%w/w、約0から15%w/w、14から40%w/w、または約0から10%w/wの水含有量を有する変性フカンが含まれる。また変性フカンには、約0から12%w/w、0から10%w/w、約0から5%w/w、及び約0から2%w/wのタンパク質含有量を有する変性フカンが含まれる。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0052】
実施例1:開腹手術及び空腸吻合手術を受けたウマの手術性癒着の防止のための溶液処方剤中の選択フコイダンの安全性及び効果
フコイダン
フコイダンは褐海草Undaria ponnatifida(オーストラリア産)から抽出された。
【0053】
フコイダン分析方法及び材料
フコイダンの外観を決定するために視覚検査が実行された。濃度3%のフコイダン溶液を使用し、USPCSA法<781>に従って旋光度による比施光度が決定された。USP CSA法に従って強熱残留物(硫酸化)が調べられた。ウベローデ粘度計を使用して動粘性が決定された。個別の糖モノマー含有量及び総炭水化物含有量は誘導体化によって決定され、電子衝撃イオン化モードを利用して質量選択検出器とインターフェースするガスクロマトグラフィによって分析された。分子量分布はゲル透過クロマトグラフィによって決定された。フコイダンの硫酸含有量は誘導結合プラズマ分光分析によって決定された。乾燥による損失は約105℃にて決定された。濃度0.1%のフコイダン溶液のpHはUSPCSA法によって決定された。
【0054】
ウマ腹腔出術時のフコイダンの効果及び安全性を調べる方法及び材料
12頭のウマが胃腸管または腹部とは無関係な理由により使用された。ウマは乱塊化され、それぞれ2種類の実験群の一方に振り分けられた。実験群(1)にはフコイダン溶液が投与され、実験群(2)には対照LRSが投与された(n=6頭/群)。フコイダン溶液と対照LRSは、2.5gのフコイダンを含有する50mLのフコイダン濃縮液または50mLのLRSを、LRSの5Lバッグ内でそれぞれ混合し、手術前にほぼ体温にまで暖めて準備された。
【0055】
ウマは周術期にフルニキンメグルミニン及び抗菌剤で治療された。短時間の腹腔診査が20cmの腹部正中線腹腔切開を介して実施された。空腸部での口腔部から腹骨に至る10及び5の弓形道管で、1cmの全厚周囲楔形部分が切除され、2層の単純連続パターンの2-0ポリグラクチン910を使用して吻合手術が実行された。口腔吻合部位は機械的試験のために利用され、反口側部位は組織評価のために利用された。白線の縫合に先立って、5Lのフコイダン溶液または対照LRSが腹腔部に注入された。#2ポリグラクチン910を単純な連続パターンで使用して白線は接着された。白線縫合の頭方で連続パターンは8cmのところで遮断され、この部分は機械的試験のために使用された。尾方の12cmが組織評価のために使用された。皮下組織は2-0ポリグラクチン910を単純連続パターンで使用して接着された。
【0056】
手術後に餌の提供が48時間かけて少しずつ再開された。物理的検査は12時間毎に実行された。ウマは疝痛の兆しをモニターされ、手術後の還流(一度に1L以上の還流を対象)は8時間毎にチェックされた。切開は浮腫、触診による痛痒、排液、及び裂開に関して主観的に等級付けられた。全血球算定、プラズマ化学、及び血液凝固プロフィールが手術前及び手術後の1日目、2日目、6日目並びに10日目に実行された。ウマは手術後10日目に安楽死処分された。死体解剖及び病状の結果は後述されている。
【0057】
ウマは手術後10日目に安楽死処分された。治癒及び癒着または感染を評価するために死体解剖が行われた。白線の頭方半分と口腔吻合部は殺菌生理食塩水で包まれ、直後の機械的試験のために冷蔵された。白線の尾方半分と口腔外吻合部は組織評価のために10%の中性緩衝(バッファ)されたホルマリン内で固定された。
【0058】
白線は緊張状態で試験され、破断荷重が記録され(ニュートン、N)、白線長に対して補正された(N/cm)。吻合破裂圧力(mmHg)が記録され、破裂壁引張力(ダイン/cm)が計算された。吻合及び切開はヘマトキシリンとエオシンで染色され、炎症程度が等級化された。分散の一方向分析で継続的データが分析された。有効係数レベルはp<0.05と確認された。
【0059】
フコイダン分析結果
フコイダンは次の特徴を備えていることが判明した。外見は白色からオフホワイトの間であり、比旋光度は負の68.4°であり、強熱残分は約25.9%であり、動粘度は約2.05mm/sであり、炭水化物含有量は約60.5%であり、総炭水化物含有量の百分率としてのフコース含有量は約52%であり、総炭水化物含有量の百分率としてのガラクトース含有量は約48%であり、総炭水化物の百分率としての残りの糖モノマー含有量(総糖モノマー含有量−フコース及びガラクトースの含有量)は約1%未満であり、分子量分布は約0から5000g/molの間では約8.4%であり、約5000から60000g/molの間では約13.4%であり、60000から200000g/molの間では約26.5%であり、200000から1600000g/molの間では約38.7%であり、約1600000g/mol以上では約13.2%であり、硫酸塩含有量は約30.6%であり、乾燥損失は約3.7%であり、0.1%溶液のpHは約6.9であった。
【0060】
ウマ腹腔手術時のフコイダンの効率及び安全性の結果
手術前または10日間の研究期間中、心拍数または肛門温度において実験群間では差異が見られなかった。仙痛発作の回数では実験群間に差異はなかった。手術後に還流があったのはフコイダン溶液群では2頭のウマで、LRS対照群では3頭のウマであった。術後還流量はLRS対照群のウマ(手術後の最初の24時間内の1頭では9.5L、手術後3日目の別の1頭では4L、手術後の最初の72時間内のさらに別の1頭では5L)と較べてフコイダン群のウマ(手術後の1日目から4日目の1頭では23L、手術後の2日目から5日目の別の1頭では139L)ではさらに多く、全部のウマは正常に回復した。死体解剖では手術後の還流の原因を示す徴候はなかった。還流と馬糞にはサルモネア種は存在しなかった。対照群の1頭は切開感染を発症したが、フコイダン群では切開感染を発症したウマはいなかた(治療群の間に統計的な差異はなかった)。全ウマに腹膜炎の徴候はなかった。フィブリノーゲン濃度、血小板算定、活性化部分トロンボプラスチン時間、γグルタミル基トランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼまたはクレアチニン濃度に関しては実験群間に差異は観察されなかった。白血球数及び好中球数、アンチトロンビンIII、プロトロンビン時間、及びヘマトクリットにおける実験群間の相違は、数回調べられたが、それらの測定値は一般的に正常範囲内であった。フコイダンは硫酸化多糖体(例えばヘパリン)であったが、フコイダンでの治療は血液凝固パラメータに負の影響は及ぼさなかった。
【0061】
対照LRS群の1頭は脾臓と切開感染部位の身体壁との間で癒着を有していた。その他の癒着は存在しなかった(フコイダン群では癒着は存在しなかった)。肉眼剖検によると実験群間で吻合及び切開治癒に差はなかった。フコイダン溶液群のウマはLRS対照群のウマに較べて大幅に高い吻合破裂圧を有した(265±52mmHgに対して206±12mmHg、p=0.03)。このことは、フコイダンが吻合部位の治癒を向上させたことを示す。LRS対象群のウマと較べて、フコイダン溶液群のウマがさらに高い腸管破裂壁引張度を有する傾向も存在した(1104000±270000ダイン/cmに対して941000±189000ダイン/cm)。しかし、これは統計的な意味付けには不足であった(p=0.29)。実験群間で白線を破断させる引張荷重に差異はなかった(フコイダン溶液群とLRS群ではそれぞれ67±15N/cmと64±21N/cm、p=0.81)。分析によれば、吻合部または白線切開部で組織学的な炎症程度に差異はなかった。
【0062】
フコイダン濃度とフコイダン溶液は臨床セッティングでの利用が簡単で容易であった。フコイダンは対照LRS群の動物数の約17%から、フコイダン群の癒着を有した動物の数を0に減少させた。機械的試験ではフコイダン溶液が吻合治癒または切開治癒を妨害せず、例え妨害が存在したとしても、術後10日目の吻合強度や切開強度は対照群の場合よりも大きいことを示した。フコイダン溶液はウマの開腹時及び吻合時に安全に腹腔内投与された。よってフコイダン溶液は吻合治癒を改善したと結論付けられる。
【0063】
実施例2:腸剥離を患うポニーの手術後癒着防止のための溶液処方形態フコダインの安全性及び効果
フコダイン
【0064】
フコダインは褐海草Undaria pinnatifida(オーストラリア産)から抽出された。
【0065】
フコダイン分析方法及び材料
【0066】
フコイダンの外見を決定するために視覚的検査が行われた。個々の糖モノマー含有量及び総炭水化物含有量は、誘導化法及び電子衝撃イオン化モードを利用した質量選択性検出器とインターフェースしたガスクロマトグラフィによる分析によって決定された。分子量分布はゲル透過クロマトグラフィで決定された。フコイダンの硫酸塩含有量は誘導結合プラズマ分光によって決定された。アセチル基含有量は1HNMRで決定された(アセチル基の量的決定を行うため、1.6ppmと2.5ppmでのピークが一体化され、その割合はアセチル化度として報告された)。
【0067】
ポニー腹腔部手術時のフコイダン効果及び安全分析方法及び材料
【0068】
漿膜磨耗法と空腸の4箇所で腸線縫合を利用した腹腔癒着を発症させるために新生ポニーに対して手術が実行された。手術部位の縫合前に、600mLの治療溶液が腹腔内に投与され、手術部位と切開部は縫合閉鎖された。治療群には対照乳酸加リンゲル液USP(LRS)(n=6)及びLRS(n=6)に溶解されたフコイダン(0.03%)が投与された。10日後に再腹腔鏡検査が実行され、1頭あたりの癒着数及び各癒着部の特徴(単純又は複雑)が評価された。重傷度スコアが癒着部に付与され、全重傷度スコアがそれぞれの治療群に付与された。2つの治療群間で動物体重と血液学パラメータ(白血球細胞差、血液凝固及びフィブリノーゲンを含む全血液算定)を比較し、有害性の徴候を観察することで治療の有害性が調査された。
【0069】
フコイダン分析結果
【0070】
フコイダンの総炭水化物含有量はフコイダンの51.1±5.5%w/wと決定された。フコイダンの個々のグリコキシ含有量を次の表に示す。
【表1】

フコイダンの分子量分布は以下の表のごとく決定された。
【表2】

【0071】
硫酸フコイダン含有量は約32.9±0.9%w/wであった。フコイダンアセチル基含有量は、アセチルとフコースの割合が0から0.3%となるように決定された。
【0072】
ポニー腹腔手術時のフコイダンの効果及び安全性結果
【0073】
フコイダン溶液は臨床セッティングにおいて使用が簡単で容易である。手術を受け、600mLの0.03%w/vフコイダン溶液で治療されたポニーはそれぞれ平均数の癒着と、全重傷度スコア2.2±1.2及び3.5±1.5を有した。これらの数値は両方とも対照LRS群の6.2±2.5及び14.5±3.8と比べて大きく低減している。フコイダン溶液で治療された実験群で観察された13部位の癒着のうちで複雑性のものは皆無であり、一方、対照実験群で観察された37部位の癒着のうちで20部位が複雑性のものであった。死亡に至った動物はおらず、ポニーは安楽死処分された。いずれの動物にも有害性の徴候はなかった。臨床的に意義を有していないと考えられた正常範囲内の統計的には意味のある小さな相違を除いて、治療群間で血液パラメータの相違は存在しなかった。フコイダン溶液で治療されたポニーは、4日目、6日目、8日目及び10日目に正常範囲を超えた分葉好中球数を有した。0日における分葉好中球値はこの動物においては得られなかったが、杵状好中球数はこの当初時点で正常範囲を超えており、よって治療の結果とは見做されなかった。フコイダン溶液は利用が容易であり、ポニーの腹腔部の手術性癒着による漿膜剥離における癒着の形成を安全に防止した。
【0074】
実施例3:子宮角手術を受けたラビットの手術性癒着防止のための溶液処方物内フコイダンの安全性及び効果
フコイダン
【0075】
複数のフコダイン抽出物が褐海草Undaria pinnatifida(オーストラリア産)から準備された。
【0076】
フコイダン分析方法及び材料
【0077】
フコイダンの外見を決定するために視覚的検査が行われた。分子量分布はゲル透過クロマトグラフィで決定された。フコイダンの硫酸塩含有量は誘導結合プラズマ分光によって決定された。アセチル基含有量は1HNMRにより決定された(アセチル基の量的決定を行うため、1.6ppmと2.5ppmでのピークが一体化され、その比がアセチル化度として報告された)。
【0078】
ラビット腹腔手術時のフコイダンの効果及び安全性決定方法及び材料
【0079】
ラビットは55mg/kgの塩酸ケタミンと5mg/kgのロンパムとで筋肉注射により麻酔された。無菌手術の準備に続き、正中線開腹手術が実行された。同母ウマ兄弟が肱置され、漿膜面の剥離によって点状出血するまで外傷化処理された。両子宮角の虚血症が側副血液供給の除去によって発症した。子宮角への残りの血液供給は子宮筋の子宮−膣動脈の上行枝への供給であった。その後に子宮角は通常の解剖学的部位に戻され、正中線は3-0バイクリル糸により縫合された。切開部が閉じられたとき、巾着縫合が切開部に置かれたカテーテル周囲に施された。カテーテルを通じては何も投与されなかった(手術対照)(n=5)。あるいは45mLの対照乳酸加リンゲル液USP(対照LRS)(n=5)または0.03%w/vの乳酸加リンゲル液USP(フコイダン溶液)が腹部に投与された。その後に最終縫合により閉鎖された。
【0080】
7日後にラビットは殺処分され、様々な器官に対する子宮角の癒着面積の百分率が決定された。加えて、癒着の固着度が次の基準に従って等級化された。
0=癒着無し
1=弱程度で容易に切除できる癒着
2=中程度で切除不能であるが器官は破損させない
3=強度の癒着で、切除不能であり、除去すると器官が損傷
【0081】
加えて、上記の全データを考慮した全等級が各ラビットに与えられた。以下の等級基準が採用された。
【表3】

【0082】
ラビットは以前の治療のことは知らされていない2人の独立した観察者によって等級化(スコア化)された。個別の動物に対する2人の等級付けに相違があれば高い方の等級が付与された。
【0083】
全等級は等級順序分析及び等級分散分析により分析された。様々な器官に関与した子宮角の面積百分率はスチューデント検定あるいは分散の一方向分析と比較された。
【0084】
フコイダン分析結果
【0085】
フコイダンの外見、硫酸塩含有量及びアセチル基含有量分析の結果は以下の表に提供されている。
【表4】

【0086】
フコイダン分子量分布分析の結果は以下の表に示されている。
【表5】

【0087】
ラビット腹腔手術時のフコイダンの効果、安全性及び使用容易性の結果
【0088】
フコイダン溶液は手術での利用が容易である。以下の表は手術対照及び対照LRS溶液と比較した種々なフコイダン抽出物のまとめである。
【表6】

【0089】
フコイダン溶液で治療された動物に有害性の徴候はなかった。
【0090】
実施例4:種々フコイダン:分析;ラビットにおける安全性;手術を受けたラビットでの効果及び安全性;手術を受けたビットにおけるカルボキシメチルセルロースナトリウムと比較した効果及び安全性
フコイダン
フコイダン抽出物は褐色海草Laminaria japonica(マコンブ)(中国産)、Laminaria hyperborean(欧州産)及びUndaria pinnatifida(ワカメ)(韓国産)から準備された。以下で詳細に説明するように、3種全てのフコイダンが分析された。3種全てのフコイダンは溶液として準備され、ラビットに対して16.7及び50mg/kg体重が投与されて安全性が試験された。3種全てのフコイダンは溶液として準備され、ラビットに対して5mg/kg体重が投与され、効果及び安全性が試験された。1種のフコイダン(Laminaria hyperborean)は溶液(5mg/kg体重)として準備され、ラビットに対する効果及び安全性を調べるためにゲルとして準備されたカルボキシメチルセルロースナトリウムと比較された。
【0091】
フコイダン分析−方法及び材料
フコイダンの外見を決定するために視覚的検査が行われた。硫酸塩含有量は誘導結合プラズマによって決定された。タンパク質含有量は紫外線−可視光線(UV−VIS)検出により決定された。フコース、ガラクトース及び他の糖モノマー含有量、並びに総炭水化物含有量はUV−VIS検出機能を備えた超高性能液体クロマトグラフィによって決定された。分子量分布は回折率検出機能を備えたゲル透過クロマトグラフィによって決定された。
【0092】
フコイダン分析−結果
フコイダンの外見、硫酸塩含有量及びタンパク質含有量分析の結果は以下の表に提供されている。
【表7】

【0093】
フコイダンの総炭水化物、フコースモノマー及びガラクトースモノマー含有量分析の結果は以下の表に提供されている。
【表8】

【0094】
フコイダン分子量分布分析の結果は以下の表に提供されている。
【表9】

【0095】
ラビットにおけるフコイダン安全性−方法及び材料
乳酸加リンゲル液USP(LRS)内の種々フコイダンの有害性は、ニュージーランドホワイトラビットの1回の腹腔内注入に続く14日間の観察期間によって特徴付けられた。
【0096】
研究のためのラビットの実験群振り分けは以下の表に要約されている。
【表10】

*2匹の雄ラビット及び2匹の雌ラビットは当初には実験群5に割り振られた。しかし、調達に関わる理由によって、2匹の雄ラビットは実験群1及び実験群3に再割り振りされ、1匹の雌ラビットは実験群2に再割り振りされた。
【0097】
実験中に動物はその潜在的な死亡可能性及び臨床的徴候に関してモニターされた。体重及び食物摂取量が記録された。血液サンプルが臨床病理評価(血液学、臨床化学及び血液凝固)のために集められた。毒性動態学評価に供するため、集められた血液サンプルは将来の分析に備えて保存された。観察期間後に死体解剖が行われ、目視観察結果が記録された。
【0098】
ラビットにおけるフコイダンの安全性−結果
この研究では死亡例がなかった。実験中、3種の異なるフコイダン試験物の投与(16.7または50mg/kg)に関連すると考えられる不都合な臨床徴候は存在しなかった。また、治療群と対照群との間で体重増加に目立った相違はなかった。時折見受けられた食欲不振は治療開始前に全部の被験動物に起きており、投与量には無関係であった。
【0099】
3種の異なるフコイダン試験物の投与(16.7または50.0mg/kg)に続く食物摂取に対する試験物関連の影響はなかった。
【0100】
フコイダン試験物による効果/影響を示すと考えられる血液パラメータに変化はなかった。細胞モルフォロジー試験は有害性に関して何の発見もなかった。試験物効果/影響を示すと考えられる血液凝固パラメータの変化は存在せず、血清化学パラメータで見られた変化は、16.7または50.0mg/kg量の3種の異なるフコイダン試験物の治療効果を暗示しなかった。
【0101】
治療に関連することを示すと考えられる器官重量に変動はなかった。
【0102】
フコイダン試験物のいずれかによる治療効果を示すと考えられる治療された動物における目視による疾患の発生は認められなかった。
【0103】
結論すれば、Laminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaから抽出された3種の異なるフコイダン試験物による16.7及び50.0mg/kgの投与量での治療はラビットを死に至らしめず、治療に関係する変化も認められず、動物に対する試験物のいずれかの効果/影響を示すと考えられる目視による疾患の発見もなかった。
【0104】
腹腔手術を受けたラビットにおけるフコイダンの効果及び安全性−方法及び材料
子宮角と腹腔側壁との間に癒着形成を発生させるためにニュージーランドホワイトラビットに対して手術が行われた。手術部位を閉じる前に16.7mL/kg体重の治療溶液が腹腔内に投与され、その後に手術部位及び切開部が縫合によって閉じられた。治療群に対する試験物は、乳酸加リンゲル液USP(LRS)内のLaminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaから抽出されたkg体重あたり0.03%w/vのフコイダン(5mgフコイダン)と、LRS単独(対照)(n=4/実験群)であった。14日後に動物は安楽死処分され、標準等級化法に従って子宮角と腹腔側壁との間に形成された癒着(子宮癒着等級)及び腹腔の他の部位(腹腔癒着値)が評価された。治療の有害性は、動物の体重と切開幅を実験群間で比較し、血液学的、血液生化学的及び血液凝固パラメータ値を実験群間で手術前と手術後24時間及び7日目に比較し、有害性の明確な徴候を観測することで調べられた。
【0105】
腹腔手術を受けたラビットにおけるフコイダンの効果及び安全性−結果
対照LRSと比較した子宮癒着値の低下がLaminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaフコイダン溶液群(18.4±7.8に対して3.1±1.7、1.3±1.0及び2.3±0.5)で確認された。対照LRSと比較した腹腔癒着値の低下がLaminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaフコイダン溶液群(2.5±1.0に対して0.9±0.3、0.8±0.3及び0.3±0.3)で確認された。死亡及び安楽死処分された動物は皆無であった。フコイダン溶液とLRSとの間で動物の体重または切開厚に相違はなかった。動物で目立つ有害性が観測されたものもなかった。どの時点においても実験群間で完全血液算定、血液特異性または血液凝固パラメータに相違は観察されなかった。対照LRSとUndaria pinnatifidaとの間でアラニントランスアミラーゼ(ALT)量の相違は23.0±1.8に対して16.8±1.0IU/Lであった。ALT量の相違は臨床学的には意味を有しなかった。実験群間で他の血液化学パラメータの相違はどの時点でも観察されなかった。結論すれば、Laminaria japonica、Laminaria hyperborean及びUndaria pinnatifidaから抽出して準備された16.7mLの0.03%w/vフコイダン溶液(5mgフコイダン)/kg体重は、手術性癒着のラビット子宮角モデルにおいて癒着の形成を防止するのに有効であった。また、有害性の徴候は皆無であった。
【0106】
腹部手術を受けたラビットにおけるカルボキシメチルセルロースナトリウムと比較したフコイダンの効果及び安全性−方法及び材料
カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)溶液は粘性ゲルであり、ウマの腹腔手術時に獣医によっては腹腔壁を閉じる直前にSCMC溶液を腹腔内(IP)に点滴するか、手術時に腸内にSCMC溶液の一部を注入し、閉鎖の直前に残りのSCMC溶液を腹腔内に点滴し、手術後の癒着形成を低減させようとする。この研究の目的は、閉鎖する直前に試験物を腹腔内に投与し、または手術時に試験物の一部を子宮角に注入し、さらに閉鎖の直前に残りの試験物を腹腔内に投与し、またはこれら2つの試験物を組み合わせて投与した後で、SCMC溶液とフコイダン溶液の効果及び安全性を比較するために手術性癒着の生体内モデルを使用することであった。SCMC型7H35FPHがハーキュリーズ社から調達された。子宮角と腹腔側壁との間で癒着形成させるためにニュージーランドホワイトラビットに対して手術が行われた。それぞれの動物は全部で16.7mLの試験物/kg体重が与えられた。(試験物の組み合わせ物を受けた動物は全部で16.7mLの各試験物/kg体重を与えられた。)3種の異なる試験物がこの研究に使用された。すなわち、乳酸加リンゲル液USP(LRS)単独(対照溶液)と、167mgのSCMS/kg体重(SCMC溶液)に均等であるUSPに対する1%w/vSCMC(水中)と、5mgフコイダン/kg体重(フコイダン溶液)に均等である0.03%w/vフコイダン(Laminaria hyperborean)(LRS内)とである。6つの治療群がこの研究に関与した(n=6/治療群)。これら3治療群は、腹腔壁の閉鎖に先立って腹腔内に点滴されたLRS、フコイダンまたはSCMCであった。2つの治療群では、フコイダン溶液またはSCMC溶液が分割され、5mLの試験物が子宮角に与えられ、残りは閉鎖前に点滴された。1治療群では、SCMCとフコイダンの両方が投与され、5mLのSCMC溶液は子宮角に適用され、残りは閉鎖前にフコイダンと共に点滴された。14日後に動物は安楽死処分され、子宮角と腹腔側壁との間で形成された癒着(子宮癒着)または腹腔の他の場所の癒着(腹腔癒着)は標準等級法によって評価された。治療群間で手術前、手術後24時間時点及び7日後に、動物重量及び切開厚を比較し、血液学的に比較し、血液生化学的に比較し、血液凝固パラメータを比較し、有害性の明確な臨床徴候を観察することで治療の有害性が調べられた。
【0107】
腹腔手術を受けたラビットにおけるカルボキシメチルセルロースナトリウムと比較したフコイダンの効果及び安全性−結果
対照LRS及び両方のSCMC溶液(20.0±2.8、19.3±4.1及び17.3±5.0)での治療間の子宮癒着等級には相違が観察されなかった。SCMC溶液とフコイダン溶液の組み合わせによる治療は、対照LRS及び両方のSCMC溶液による治療と比較して、大きな子宮癒着等級(6.1±5.2)の低下をもたらした。両方のフコイダン溶液での治療は、全部の他の治療群と比較して大きな子宮癒着等級(2.4±1.1及び3.0±1.8)の低下をもたらした。対照LRSと、両方のSCMC溶液による治療と、SCMC溶液とフコイダン溶液の組み合わせによる治療(それぞれ2.6±2.4、2.4±1.4、2.3±1.3及び2.1±1.1)間で腹腔癒着等級に差異はなかった。両方のフコイダン溶液による治療は全部の他の治療群と比較して腹腔癒着等級(0.3±0.5及び0.2±0.4)に大きな低下があった。それら2つのフコイダン溶液による治療間では子宮癒着等級または腹腔癒着等級に差異はなかった。治療群と対照LRS治療群間で動物体重または切開厚に差異はなかった。また、動物での有害性の目立つ徴候はなかった。どの時点でも対照LRS群と治療群との間で完全血液算定、特異性及び血液化学パラメータに差異はなかった。
【0108】
対照LRS群、両方のSCMC溶液治療群及びSCMC溶液とフコイダン溶液の組み合わせ治療群で、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の増加が手術前及び手術後24時間の値で観察されたが、2つのフコイダン治療群内では観察されなかった。結論すれば、SCMC溶液治療は癒着に対して効果がなかった。SCMC溶液とフコイダン(Laminaria hyperboreanから抽出)溶液の組み合わせによる治療は、子宮癒着値に約70%の低下をもたらしたが、腹腔癒着値には低下効果はなく、ラビットの子宮角側壁の手術性癒着モデルにおいてはフコイダン(Laminaria hyperboreanから抽出)溶液による治療は癒着形成に約90%の低下効果を発揮した。閉鎖直前のフコイダン溶液の腹腔点滴に効果の差異は観察されなかった。また、フコイダン溶液の一部を子宮角に使用し、閉鎖直前に残りを腹腔に投与することにも差異はなかった。フコイダン溶液の単独またはSCMCとの組み合わせに有害性の徴候はなかった。
【0109】
実施例5:腹膜炎を患うウマにおける選択されたフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によりそのフコイダンが以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表11】

【0110】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。腹痛、腹圧痛及び腹壁防御のごとき症状を含む腹膜炎を患うウマにフコイダン溶液が30分をかけて静脈点滴により静脈注入された。フコイダン溶液による治療によってウマの腹膜炎及び腹膜炎症状は軽減された。
【0111】
実施例6:腹膜炎を患うウマにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によりそのフコイダンが以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表12】

【0112】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。腹痛、腹圧痛及び腹壁防御のごとき症状を含む腹膜炎を患うウマにフコイダン溶液50mLが腹腔内注入された。フコイダン溶液での治療によってウマの腹膜炎及び腹膜炎症状は軽減された。
【0113】
実施例7:虚血症を患うウマにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってそのフコイダンが以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表13】

【0114】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。虚血症を患うウマにフコイダン溶液50mLが30分をかけて静脈点滴された。フコイダン溶液での治療によってウマの虚血症は軽減された。
【0115】
実施例8:再灌流傷害を患うウマにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によりそのフコイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表14】

【0116】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。再灌流治療を受ける虚血症を患うウマにフコイダン溶液または対照リンゲル液USPが30分をかけて50mLが再灌流治療の直前に静脈点滴された。フコイダン溶液を注入されたウマは対照リンゲル液USPを注入されたウマと較べて再灌流傷害が軽減された。
【0117】
実施例9:エンドトキシン血症を患うウマにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によりそのフコイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表15】

【0118】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。敗血症性ショック等のエンドトキシン血症の症状を含んだエンドトキシン血症を患うウマにフコイダン溶液50mLが30分をかけて静脈注入された。フコイダン溶液での治療によってウマのエンドトキシン血症及びエンドトキシン血症の症状が緩和した。
【0119】
実施例10:ケロイド形質を患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってそのフコイダンが以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表16】

【0120】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。隆起傷跡のごときケロイド形質の症状を含んだケロイド形質を患うヒトの患部に1回あたりフコイダン溶液0.5mLを皮下注射した。フコイダン溶液による治療によって隆起傷跡は症状程度が軽減された。
【0121】
実施例11:ケロイド(ケロイド傷跡)を患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってそのフコイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表17】

【0122】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。ケロイド(ケロイド傷跡)を有するヒトの患部に1回あたりフコイダン溶液0.5mLを皮下注射した。フコイダン溶液による治療でケロイド傷跡は症状程度が軽減された。
【0123】
実施例12:脂漏性皮膚炎(頭垢)を患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってそのフコイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表18】

【0124】
フコイダン溶液は、5gのフコイダンを50mLの乳酸加リンゲル液USPに溶解し、オートクレーブで殺菌し、溶液を常温にまで冷却することで準備された。脂漏性皮膚炎(頭垢)を有するヒトに5日間毎日、脂漏性皮膚炎の患部に局所的にフコイダン溶液5mLが塗布された。フコイダン溶液による治療によって脂漏性皮膚炎の症状程度は軽減された。
【0125】
実施例13:接触性皮膚炎を患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってフコイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表19】

【0126】
フコイダンクリームは、5gのフコイダンを50mLのダーマベース・クリームと完全に混合することで準備された。接触性皮膚炎を患い、赤くて痛痒い症状を有するヒトの患部に5日間毎日局所的にフコイダンクリーム5mLが塗布された。フコイダンクリームによる治療によって接触性皮膚炎はその症状と共に程度が軽減された。
【0127】
実施例30:酒さを患うヒトにおけるフコイダン溶液処方物の効果
フコイダンは褐海草Undaria pinnatifidaから抽出され、前述の分析技術によってそのフコイダンは以下の表で示す特徴を有することが確認された。
【表20】

【0128】
フコイダンクリームは、5gのフコイダンを50mLのダーマベース・クリームと完全に混合することで準備された。初期段階の酒さを患い、禿げた頭部に赤くて痛痒い皮膚の症状を有するヒトに、5日間毎日酒さ患部に局所的にフコイダンクリーム5mLが塗布された。フコイダンクリームでの治療によって、その症状を含んだ酒さの症状程度が軽減された。
【0129】
変更すべきでないと明記されていない限り、あるいは変更が不可であることが文脈から明白でない限り、全実施例の特性、特徴その他の混在、調和、組み合わせ及び順序は所望する態様に変更できる。請求項における“または”は“及び”を含み、“及び”は“または”を含む。非限定用語は限定的であると解釈すべきでない(例えば、“含む”、“有する”及び“含んで成る”とは“比限定的に含む”を意味する。)。特に明記されていない限り、請求項内で使用される物体は単数または複数である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療効果量のフカンを、少なくとも一種の薬学的に許容である添加剤、賦形剤、基剤または希釈剤と共に含んでおり、
前記フカンは約14〜40%w/wの硫酸塩を含有しており、総炭水化物含有量は約37〜75%w/wであり、分子量分布は、約0〜5000g/molの部分が約0〜25%w/w、約5000〜60000g/molの部分が約5〜38%w/w、約60000〜200000g/molの部分が約10〜30%w/w、約200000〜1600000g/molの部分が約8〜43%w/w、約1600000g/molを超える部分が約1〜33%w/wである医薬組成物。
【請求項2】
前記フカンは、総炭水化物含有量の百分率で約31〜71%w/wのフコース含有量を有する請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記フカンは、総炭水化物含有量の百分率で約9〜46%w/wのガラクトース含有量を有する請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記フカンは、フコース及びガラクトースを除いて総炭水化物含有量の百分率で約0〜59%w/wの糖含有量を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記フカンは、アセチル:フコースの比として約0〜36%のアセチル含有量を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記フカンは、0.1%w/vの溶液として調製された場合のpHが約4〜8である請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記フカンは、約0〜12%w/wのタンパク質含有量を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記フカンの外見は、白色、オフホワイト、薄黄色、薄橙色または薄緑色である請求項1〜7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
フカン濃度が約0〜10%w/vの溶液形態、ゲル形態、ゾル形態、縣濁液形態である請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
フカン濃度が約5%w/vである請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
フカン濃度が約0.001〜1%w/vである請求項9記載の医薬組成物。
【請求項12】
フカン濃度が約0.05%w/vである請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
フカン濃度が約0.03%w/vである請求項11記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を、線維性癒着が疑われる部位に投与することを含む、動物の線維性癒着を抑制する方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を、腹膜炎が疑われる部位に投与することを含む、動物の腹膜炎を抑制する方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を、虚血症が疑われる部位に投与することを含む、動物の虚血症を抑制する方法。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を、再灌流傷害が疑われる部位に投与することを含む、動物の再灌流傷害を抑制する方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を、エンドトキシン血症が疑われる部位に投与することを含む、動物のエンドトキシン血症を抑制する方法。
【請求項19】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を、ケロイド形質傷跡が疑われる部位に投与することを含む、動物のケロイド形質傷跡を抑制する方法。
【請求項20】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を、ケロイドが疑われる部位に投与することを含む、動物のケロイドを抑制する方法。
【請求項21】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を、皮膚炎が疑われる部位に投与することを含む、動物の皮膚炎を抑制する方法。
【請求項22】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を、酒さが疑われる部位に投与することを含む、動物の酒さを抑制する方法。
【請求項23】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物の治療効果量を含む治療キットであって、動物に対して少なくとも1回分の医薬組成物を投与する形態の容器に入っており、本治療キットは投与のための指示文言を記載した少なくとも1枚のラベルをさらに含んでいる治療キット。
【請求項24】
前記指示文言は、線維性癒着、腹膜炎、虚血症、再灌流傷害、エンドトキシン血症、ケロイド形質傷跡、ケロイド、皮膚炎及び酒さのうちの少なくとも一種の治療に向けられたものである請求項23記載の治療キット。
【請求項25】
ヒトの患者の増殖性または炎症性疾患の抑制、防止または治療のための医薬品の製造過程で利用するために単離あるいは純化されている請求項1〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記疾患は、線維性癒着、腹膜炎、虚血症、再灌流傷害、エンドトキシン血症、ケロイド形質傷跡、ケロイド、皮膚炎及び酒さのうちの少なくとも一種である請求項25記載の医薬組成物。
【請求項27】
溶液、ゲル、ゾル、縣濁液、スプレー液、ムース、ローション、クリーム、軟膏、ペースト、泥漿、粒体、微小粒体、微小球体、膜体、平板体、包体、障壁体または埋込体である請求項25記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2013−500274(P2013−500274A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521918(P2012−521918)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001175
【国際公開番号】WO2011/011881
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(512021508)エーアールシー メディカル デバイス,インク. (1)
【Fターム(参考)】