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線維性障害を治療するための組成物および方法
説明

線維性障害を治療するための組成物および方法

本発明は、被験体に、サイトカイン、胸腺間質リンホポエチンに対する少なくとも1つのアンタゴニストの療法的有効量を投与することによって、線維性障害を患う被験体において、線維化を減少させるかまたは防止するための方法および組成物を提供する。1つの態様において、方法および組成物は、さらなる線維化促進性サイトカイン、増殖因子またはケモカインに対する、少なくとも1つのさらなるアンタゴニストを投与することをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年2月1日に出願され、その全開示が、本明細書に信頼され、そして援用される、米国仮出願第60/649,287号の優先権を、本出願によって請求する。
【0002】
発明の分野
本発明は、線維性障害を治療するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
創傷治癒の一部としての組織修復のプロセスは、2つの期を伴う。第一期は再生期であり、損傷を受けた細胞が、同じ種類の細胞に置き換えられる。第二期は、線維増殖または線維化とも呼ばれる線維性組織の形成であり、結合組織が、正常な実質組織を置き換える。組織修復プロセスは、線維化期が抑制されずに続き、広範囲に及ぶ組織リモデリングおよび永続的な瘢痕組織の形成を導く場合、病原性になりうる(Wynn, Nature Rev. Immunol. 4, 583(2004))。
【0004】
米国において、最大45%までの死亡は、多くの組織および臓器系に影響を及ぼしうる、線維増殖性疾患に起因しうると概算されている(Wynn、上記、595(2004))。主な臓器線維性疾患には、肺炎症および線維化によって特徴付けられる、間質性肺疾患(ILD)が含まれる。ILDは、サルコイドーシス、ケイ肺症、コラーゲン血管疾患、および全身性強皮症などの、いくつかの原因を有することが知られる。しかし、一般的な型のILDである、特発性肺線維症は、原因が知られていない。他の臓器線維性障害には、肝硬変、慢性B型またはC型肝炎感染から生じる肝線維症、腎疾患、心疾患、ならびに黄斑変性症および網膜およびガラス体の網膜症を含む、目の疾患が含まれる。線維増殖性障害にはまた、全身性および局所強皮症、ケロイドおよび肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、ならびに再狭窄も含まれる。さらなる線維増殖性疾患には、手術から生じる過剰な瘢痕化、化学療法薬剤誘導性線維症、放射線誘導性線維症、ならびに傷害および火傷が含まれる(Wynn、上記、585ページ)。
【0005】
現在、コルチコステロイドなどの一般的な免疫抑制薬剤、および他の抗炎症治療を含めて、線維性障害に関する治療が利用可能である。しかし、線維化の制御に関与する機構は、炎症のものとは別個であるようであり、そして抗炎症療法は、線維化を減少させるかまたは防止する際に、常に有効であるわけではない(Wynn、上記、591ページ)。したがって、線維化を減少させそして防止し、そして線維性障害を調節する治療を開発する必要性がなおある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この必要性に取り組み、そして線維性障害に関連する線維化を防止するかまたは減少させるための方法および組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、組織において、サイトカイン、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)の量または活性を調節することによって、組織における線維芽細胞集積およびコラーゲン沈着を調節するための方法を提供する。1つの側面において、本発明は、線維性障害を患う被験体において、線維化を減少させるかまたは防止する方法であって、療法的有効量の少なくとも1つのTSLPアンタゴニストを投与することを含む、前記方法を提供する。別の側面において、本発明は、こうした障害を患う被験体における線維性障害の防止または治療のための薬剤の調製における、少なくとも1つのTSLPアンタゴニストの使用を提供する。本発明は、線維性障害を患う被験体において、線維化を防止するかまたは減少させるための薬剤組成物であって、薬学的に許容しうるキャリアーと混合された、TSLPに対する少なくとも1つのアンタゴニストの療法的有効投薬量を含む、前記組成物をさらに提供する。線維性障害には、限定されるわけではないが、強皮症、間質性肺疾患(ILD)、特発性肺線維症(IPF)、慢性B型またはC型肝炎感染から生じる肝線維症、放射線誘導性線維症、および創傷治癒から生じる線維症が含まれる。
【0008】
1つの態様において、TSLPアンタゴニストは、TSLPに結合し、そしてその活性を減少させるかまたは遮断することが可能なTSLPリガンド結合剤である。これらのアンタゴニストには、限定されるわけではないが、アンタゴニスト性抗体、ペプチドまたはポリペプチド結合剤、可溶性TSLP受容体(TSLPR)、可溶性インターロイキン7受容体アルファ(IL−7Rα)/TSLPRヘテロ二量体受容体(ヘテロ二量体)、および小分子アンタゴニストが含まれる。アンタゴニスト性抗体には、限定されるわけではないが、完全ヒト、ヒト化、キメラ、一本鎖抗体、および抗体断片が含まれる。ペプチドまたはポリペプチド結合剤、可溶性受容体および可溶性ヘテロ二量体受容体アンタゴニストは、Fcドメインまたは他の多量体化構成要素、またはPEGなどのキャリアー分子をさらに含んでもよい。
【0009】
別の態様において、TSLPアンタゴニストは、TSLPRアンタゴニストである。TSLPRアンタゴニストには、TSLP受容体に結合するアンタゴニスト、およびIL−7Rα/TSLPRヘテロ二量体に結合するアンタゴニストが含まれる。これらのアンタゴニストには、限定されるわけではないが、TSLPRに結合するアンタゴニスト性抗体;ヘテロ二量体に結合するアンタゴニスト性抗体;TSLPRに結合する可溶性リガンド;ヘテロ二量体に結合する可溶性リガンド;ならびにTSLPRおよび/またはIL−7Rα/ヘテロ二量体に結合する小分子が含まれる。アンタゴニスト性抗体には、限定されるわけではないが、ヒト、ヒト化、キメラ、および一本鎖抗体、ならびに抗体断片が含まれる。可溶性リガンドは、Fcドメインまたは他の多量体化構成要素、またはPEGなどのキャリアー分子をさらに含んでもよい。
【0010】
別の態様において、TSLPアンタゴニストは、TSLPサイトカイン、TSLPR、またはヘテロ二量体受容体の発現を防止する分子である。これらの分子には、例えば、mRNAを標的とするアンチセンス・オリゴヌクレオチド、および干渉メッセンジャーRNAが含まれる。
【0011】
別の態様において、本発明の方法および組成物は、線維化を促進する1以上のサイトカイン、増殖因子、またはケモカインに対する、少なくとも1つのさらなるアンタゴニストをさらに含む。これらの線維化促進性(profibrotic)因子には、限定されるわけではないが、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−13(IL−13)、顆粒球/マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、結合組織増殖因子(CTGF)、インターロイキン−6(IL−6)、オンコスタチンM(OSM)、血小板由来増殖因子(PDGF)、単球走化性タンパク質1(CCL2/MCP−1)、ならびに肺および活性化制御ケモカイン(CCL18/PARC)が含まれる。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は、組織において、サイトカイン、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)の量または活性を調節することによって、組織における線維芽細胞集積およびコラーゲン沈着を調節する方法を提供する。TSLPは、動物における線維性障害に特徴的な、線維芽細胞集積およびコラーゲン沈着を誘導することが見出されている。1つの側面において、本発明は、TSLPまたはTSLPアゴニストを投与することによって、線維化増加が好適でありうる状況において、線維化を増加させる方法を提供する。別の側面において、本発明は、被験体を、TSLPに対する少なくとも1つのアンタゴニストの療法的有効量で治療することによって、線維性障害を患う被験体において、線維化を減少させるかまたは防止するための方法および組成物を提供する。別の側面において、本発明は、線維性障害を患う被験体における線維性障害の防止または治療のための薬剤の調製における、少なくとも1つのTSLPアンタゴニストの使用を提供する。別の側面において、本発明は、被験体において、線維化を防止するかまたは減少させるための薬剤組成物であって、薬学的に許容しうるキャリアーと混合された、TSLPに対する少なくとも1つのアンタゴニストの療法的有効投薬量を含む、前記組成物を提供する。
【0013】
本明細書において、用語「線維増殖性疾患」または「線維性疾患または障害」は、1以上の組織における線維化を伴う状態を指す。本明細書において、用語「線維化」は、臓器または組織の正常な構成要素としてではなく、修復プロセスまたは反応プロセスとしての線維性組織の形成を指す。線維化は、任意の特定の組織における、線維芽細胞集積、および通常の沈着を超えたコラーゲン沈着によって特徴付けられる。本明細書において、用語「線維化」は、「線維芽細胞集積およびコラーゲン沈着」と同義に用いられる。線維芽細胞は、結合組織細胞であり、体中の結合組織に散在する。線維芽細胞は、I型および/またはIII型コラーゲンを含有する、強固でない細胞外マトリックスを分泌する。組織に対する傷害に反応して、近傍の線維芽細胞が創傷内に遊走し、増殖し、そして多量のコラーゲン性細胞外マトリックスを産生する。コラーゲンは、グリシンおよびプロリンがリッチな線維性タンパク質であり、細胞外マトリックスおよび結合組織、軟骨、ならびに骨の主な構成要素である。コラーゲン分子は、α鎖と呼ばれる三重鎖らせん構造であり、互いに巻きついて、ロープ状のらせんになっている。コラーゲンは、いくつかの型または種類で存在し;このうち、最も一般的なI型は、皮膚、腱、および骨に見られ;そしてIII型は、皮膚、血管、および内臓に見られる。
【0014】
線維性障害には、限定されるわけではないが、全身性および局所強皮症、ケロイドおよび肥厚性瘢痕、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肺炎症および線維化、特発性肺線維症、肝硬変、慢性B型またはC型肝炎感染の結果としての線維症、腎疾患、瘢痕組織から生じる心疾患、ならびに黄斑変性症、および網膜およびガラス体の網膜症などの目の疾患が含まれる。さらなる線維性疾患には、化学療法薬剤から生じる線維症、放射線誘導性線維症、ならびに傷害および火傷が含まれる。
【0015】
強皮症は、皮膚および他の臓器における線維芽細胞による新規コラーゲンの過剰産生によって引き起こされる皮膚の肥厚および硬化によって特徴付けられる線維性障害である。強皮症は、局所または全身性疾患として起こりうる。全身性強皮症は、いくつかの臓器に影響を及ぼしうる。全身性強皮症は、ヒアリン化および肥厚コラーゲン性線維性組織の形成によって特徴付けられ、皮膚の肥厚、ならびに下層にある組織、特に手および顔の下の組織への接着を伴う。該疾患はまた、蠕動の損失および食道の粘膜下線維症による嚥下障害、肺線維症による呼吸困難、心筋線維症、および腎血管変化によっても特徴付け可能である(Stedman’s Medical Dictionary, 第26版, Williams & Wilkins, 1995)。肺線維症は、強皮症患者の30〜70%に影響を及ぼし、しばしば拘束性肺疾患を生じる(Atamasら Cytokine and Growth Factor Rev 14:537−550(2003))。
【0016】
特発性肺線維症は、慢性で、進行性であり、そして通常は致死の肺障害であり、慢性炎症性プロセスの結果であると考えられる(Kellyら, Curr Pharma Design 9:39−49(2003))。この疾患の原因はまだ知られていない。
【0017】
本明細書において、用語「被験体」は、ヒトを含む哺乳動物を含む動物を指す。用語「哺乳動物」には、霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットを含む家畜動物、動物園の動物などの捕獲された動物、および野生動物が含まれる。本明細書において、用語「組織」は、臓器、または皮膚組織、肺組織、腎組織、および他の種類の細胞などの特殊化された細胞セットを指す。
【0018】
TSLP
胸腺間質リンホポエチン(TSLP)は、4つのαらせん束のI型サイトカインを指し、該サイトカインは、IL−2ファミリーのメンバーであるが、IL−7に最も緊密に関連する。サイトカインは、特定の刺激に応答して分泌される低分子量制御タンパク質であり、標的細胞膜上の受容体に対して作用する。サイトカインは、多様な細胞応答を制御する。サイトカインは一般的に、Cytokines, A. Mire−SluisおよびR. Thorne監修, Academic Press, New York, (1998)などの参考文献に記載される。
【0019】
TSLPは、ネズミ胸腺間質細胞株から最初にクローニングされ(Simsら J. Exp. Med 192(5), 671−680(2000))、そして初期BおよびT細胞発生を援助することが見出された。ヒトTSLPが後にクローニングされ、そしてネズミ相同体に対して、43パーセントのアミノ酸配列同一性を有することが見出された(Quentmeierら Leukemia 15, 1286−1292(2001)、および本明細書に援用される米国特許第6,555,520号)。ヒトTSLPのポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号1および2に提示する。TSLPは、米国特許出願第09/895,945号(公報第2002/0068323号)(配列番号4および5)に記載されるTSLP受容体(TSLPR)と呼ばれるヘマトポエチン受容体ファミリー由来の受容体鎖に、低い親和性で結合することが見出された。それぞれ、ヒトTSLPRをコードするポリヌクレオチド配列を、本出願の配列番号3として提示し、そしてアミノ酸配列を、本出願の配列番号4として提示する。TSLPRの可溶性ドメインは、配列番号4のほぼアミノ酸25〜231である。TSLPは、TSLPRおよびインターロイキン7受容体アルファIL−7Rαのヘテロ二量体複合体に、高親和性で結合する(Parkら, J. Exp. Med 192:5(2000)、米国特許出願第09/895,945号、公報第U.S. 2002/0068323号)。IL−7受容体αの配列は、本明細書に援用される、米国特許第5,264,416号の図2に示される。IL−7受容体αの可溶性ドメインの配列は、米国特許第5,264,416号の図2のアミノ酸1〜219である。
【0020】
ヒトTSLPはまた、修飾型でも発現可能であり、該修飾型では、PCT特許出願公報WO 03/032898に記載されるような、アミノ酸配列の修飾を通じて、フューリン切断部位が除去されている。修飾TSLPは活性を保持するが、微生物または哺乳動物細胞において、全長配列がより容易に発現される。
【0021】
TSLPは、定量的mRNA分析によって決定されたように、皮膚、気管支、気管、および気道上皮細胞、角化細胞、間質細胞およびマスト細胞、平滑筋細胞、ならびに肺および皮膚線維芽細胞を含む、ヒト上皮細胞で産生される(Soumelisら, Nature Immunol. 3(7)673−680(2002))。ネズミおよびヒトTSLPは、アレルギー性炎症を促進する際に関与する。Soumelisら、上記は、TSLPヘテロ二量体受容体複合体が、ヒトCD11c+樹状細胞(DC細胞)上に発現されることを報告した。樹状細胞培養実験によって、DC細胞にTSLPが結合すると、T2細胞誘引ケモカインTARC(胸腺および活性化制御ケモカイン;CCL17としても知られる)およびMDC(マクロファージ由来ケモカイン、CCL22としても知られる)の産生が誘導され、そして細胞表面上の同時刺激分子HLA−DR、CD40、CD80、CD86、およびCD83が上方制御されることが示された。細胞培養中、TSLPに活性化されたDCは、未刺激(naive)CD4(Soumelis、上記)およびCD8 T細胞の、アレルギー促進性エフェクター細胞への分化を誘導し(Gillietら, J. Exp. Med. 197(8), 1059−1063(2003))、該エフェクター細胞は、アレルギー促進性サイトカイン、IL−4、IL−5、IL−13およびTNF−αを産生する一方、IL−10およびインターフェロン−γを下方制御する(Soumelisら、上記、Gillietら、上記)。TSLPは、炎症扁桃腺上皮細胞の組織試料中、そしてアトピー性皮膚炎患者の病変内で、発現していると報告されてきている(Soumelisら、上記)。
【0022】
TSLPアッセイ
PCT特許出願公報WO 03/032898に記載されるように、増殖のために活性TSLPを必要とする、ヒトTSLPRを発現するBAF細胞(BAF/HTR)を用いたアッセイにおいて、TSLP活性を測定可能である。BAF/HTRバイオアッセイは、ヒトTSLP受容体をトランスフェクションされているネズミ・プロBリンパ球細胞株(Steven F. Ziegler, Virginia Mason Research Center, ワシントン州シアトルから得た細胞株)を利用する。BAF/HTR細胞は、増殖のため、huTSLPに依存し、そして試験試料に添加された活性huTSLPに応答して増殖する。インキュベーション期間後、Alamar Blue色素I(Biosource Internationalカタログ番号DAL1100、10μl/ウェル)を添加することによって、細胞増殖を測定する。代謝的に活性であるBAF/HRT細胞は、Alamar Blueを取り込み、そして還元し、この色素の蛍光特性の変化を導く。huTSLP活性に関するさらなるアッセイには、例えば、米国特許第6,555,520号に記載されるような、TSLPによるヒト骨髄からのT細胞増殖の誘導を測定するアッセイが含まれる。別のTSLP活性は、Levinら, J. Immunol. 162:677−683(1999)およびPCT特許出願WO 03/032898を参照した際に記載されるような、STAT5を活性化する能力である。さらなるアッセイには、Soumelisら、上記を参照した際に記載されるような、TSLPが誘導する、初代ヒト単球および樹状細胞からのCCL17/TARC産生が含まれる。
【0023】
TSLPは、以下の実施例に記載するように、動物において、線維芽細胞集積およびコラーゲン沈着を誘導することが見出されてきている。ネズミTSLPをマウスに皮内注射すると、線維芽細胞増殖およびコラーゲン沈着によって特徴付けられる、マウスの皮下組織内の線維化が生じた。TSLP活性のアンタゴナイズは、組織中の線維芽細胞増殖およびコラーゲン沈着の防止または減少を生じるであろう。本発明は、被験体に1以上のTSLPアンタゴニストを投与することによって、線維性障害に罹患した被験体において、線維化を減少させるかまたは防止するための方法および組成物を提供する。
【0024】
本明細書において、用語「線維化促進性因子」は、TSLPに加えて、多様な組織において、線維芽細胞集積およびコラーゲン沈着を促進することが観察された、サイトカイン、増殖因子またはケモカインを指す。いくつかのサイトカインおよび増殖因子は、組織リモデリングおよび線維化を制御するのに関与することが報告されてきている。これらには、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、およびインターロイキン−13(IL−13)のような「線維化促進性サイトカイン」が含まれ、これらは、線維性組織においてコラーゲン合成および線維化を刺激することが示されてきている(Letterioら Ann Rev. Immunol. 16, 137−161(1998), Fertinら, Cell Mol. Biol. 37, 823−829(1991), Doucetら, J. Clin. Invest. 101, 2129−2139(1998))。インターロイキン−9(IL−9)は、マウスの肺において、気道線維化を誘導することが示されている(Zhuら, J. Clin. Invest. 103, 779−788(1999))。TGF−βに加えて、線維性障害、特発性肺線維症(IPF)において線維化を増加させることが報告されている、他のサイトカインまたは増殖因子には、顆粒球/マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、および結合組織増殖因子(CTGF)が含まれる(Kellyら Curr Pharmaceutical Des 9:39−49(2003))。強皮症で生じる肺線維症を促進する際に関与すると報告されているサイトカインおよび増殖因子には、TGF−β、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、インターロイキン−6(IL−6)、オンコスタチンM(OSM)、血小板由来増殖因子(PDGF)、2型サイトカイン、IL−4およびIL−13、IL−9、単球走化性タンパク質1(CCL2/MCP−1)、ならびに肺および活性化制御ケモカイン(CCLl8/PARC)が含まれる(Atamasら, Cyto Growth Fact Rev 14:537−550(2003))。したがって、1つの態様において、本発明の方法および組成物は、少なくとも1つのTSLPアンタゴニストに加えて、1以上の線維化促進性因子に対する少なくとも1つのさらなるアンタゴニストを投与して、線維性障害を患う被験体において、線維化を減少させるかまたは防止することをさらに含む。別の側面において、本発明は、被験体における線維性障害の治療または防止のための薬剤の調製における、少なくとも1つのTSLPアンタゴニストに加えた、少なくとも1つの線維化促進性アンタゴニストの使用を提供する。別の側面において、本発明は、少なくとも1つのTSLPアンタゴニストに加えて、薬学的に許容しうるキャリアーと混合された、サイトカイン、増殖因子またはケモカインである線維化促進性因子に対する1以上のアンタゴニストを含む、薬剤組成物を提供する。これらの線維化促進性因子には、限定されるわけではないが、以下のサイトカイン、増殖因子またはケモカインが含まれる:インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−13(IL−13)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF−β)、顆粒球/マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、結合組織増殖因子(CTGF)、インターロイキン−6(IL−6)、オンコスタチンM(OSM)、血小板由来増殖因子(PDGF)、単球走化性タンパク質1(CCL2/MCP−1)、ならびに肺および活性化制御ケモカイン(CCL18/PARC)。これらのサイトカインおよびその特異的受容体(入手可能である場合)の寄託番号は、以下の表Iに見られる。
【0025】
表I
【0026】
【表1−1】

【0027】
【表1−2】

【0028】
【表1−3】

【0029】
【表1−4】

【0030】
【表1−5】

TSLPアンタゴニスト
本発明記載のTSLPアンタゴニストは、TSLPの少なくとも1つの活性を阻害するかまたは遮断し、あるいは該サイトカインまたはその受容体の発現を遮断する。サイトカイン活性の阻害または遮断は、例えば、該サイトカインのその受容体への結合に干渉し、そして/または該サイトカインのその受容体への結合から生じるシグナル伝達を遮断する、1以上の阻害剤を使用することによって達成可能である。
【0031】
1つの態様において、TSLPアンタゴニストは、TSLPに結合し、そして該サイトカインのその受容体への結合を防止し、そして/または該サイトカインのその受容体への結合から生じるシグナル伝達を遮断する、TSLP結合剤を含む。これらのアンタゴニストには、限定されるわけではないが、アンタゴニスト性抗体、ペプチドまたはポリペプチド結合剤、可溶性TSLPR、可溶性IL−7Rα/TSLPRヘテロ二量体、および小分子アンタゴニストが含まれる。
【0032】
別の態様において、アンタゴニストは、TSLPRに結合し、そしてリガンド結合および/またはシグナル伝達を遮断する、TSLPRアンタゴニストである。これらのアンタゴニストには、限定されるわけではないが、TSLPRに結合し、そしてTSLPシグナル伝達および活性に干渉する、アンタゴニスト性抗体、可溶性リガンド、および小分子が含まれる。
【0033】
別の態様において、アンタゴニストは、IL−7Rα/TSLPRヘテロ二量体に結合し、そしてリガンド結合および/またはシグナル伝達を遮断する、IL−7Rα/TSLPRヘテロ二量体に対するアンタゴニストである。これらのアンタゴニストには、限定されるわけではないが、該ヘテロ二量体に結合し、そしてTSLPシグナル伝達および活性に干渉する、アンタゴニスト性抗体、可溶性リガンド、および小分子が含まれる。
【0034】
別の態様において、TSLPアンタゴニストは、TSLPサイトカイン、TSLPR、またはヘテロ二量体受容体の発現を防止する分子である。これらの分子には、例えば、mRNAを標的とするアンチセンス・オリゴヌクレオチド、および干渉メッセンジャーRNAが含まれる。
【0035】
別の態様において、本発明の方法および組成物は、線維性障害を患う被験体において、線維化を防止するかまたは減少させるため、限定されるわけではないが、IL−4、IL−5、IL−9、IL−13、TGF−β、GM−CSF、TNF−α、IL−1β、CTGF、IL−6、OSM、PDGF、CCL2/MCP−1、およびCCL18/PARCを含む、1以上の「線維化促進性因子」に対するさらなるアンタゴニストを提供する。これらの線維化促進性因子に対するアンタゴニストは、該因子自体、該因子が結合しそしてシグナル伝達しうる、受容体またはヘテロ二量体受容体に結合する剤より選択可能であり、ここでアンタゴニストは、リガンド/受容体結合および/または少なくとも1つの活性に干渉する。1つの態様において、因子アンタゴニストは、因子または受容体の発現を遮断する。
【0036】
1つの態様において、TSLPアンタゴニストは、TSLPリガンド、受容体またはヘテロ二量体受容体に特異的に結合する。本明細書において、用語「特異的に結合する」は、抗体などのアンタゴニストが、当該技術分野に周知の技術によって決定した際(例えば、Scatchard, Ann NY Acad Sci 51:660−672(1949)、および以下に記載するように)、TSLP、TSLPR、またはヘテロ二量体に対して(あるいは線維化促進性サイトカイン、サイトカイン受容体、またはサイトカイン・ヘテロ二量体受容体に対応して)、10−1以上、1つの態様において、10−1以上、別の態様において、10−1以上、別の態様において、10−1以上の結合親和性(Ka)を有することを指す。
【0037】
TSLPおよび線維化促進性因子に対するアンタゴニストを、一般的に、以下により詳細に記載する。
【0038】
特定のアンタゴニスト
抗体
アンタゴニストには、サイトカインまたはその受容体のいずれかに結合し、そして該サイトカインの少なくとも1つの活性を減少させるかまたは遮断する抗体が含まれる。本明細書において、用語「抗体」は、ポリクローナル抗体(例えばAntibodies: A Laboratory Manual, HarlowおよびLane(監修), Cold Spring Harbor Press, (1988)を参照されたい)、およびモノクローナル抗体(例えば、米国特許第RE 32,011号、第4,902,614号、第4,543,439号、および第4,411,993号、ならびにMonoclonal Antibodies: A New Dimension in Biological Analysis, Plenum Press, Kennett, McKearnおよびBechtol(監修)(1980)を参照されたい)を含む、損なわれていない(intact)抗体を指す。本明細書において、用語「抗体」はまた、F(ab)、F(ab’)、F(ab’)、Fv、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、またはこれらの組み合わせなどの抗体断片も指し、これらは、DNA組換え技術によって、あるいは損なわれていない抗体の酵素的または化学的切断によって、産生可能である。抗体にはまた、少なくとも、ポリペプチドに対して特異的抗原結合を与えるのに十分な免疫グロブリン部分を含有する、融合タンパク質などのポリペプチドも含まれる。抗体にはまた、dAb(Vドメイン)、ディアボディ(各々がVおよびV鎖を有する、2つのポリペプチド鎖を含む、二価抗体)、ならびにトリアボディおよびテトラボディ(各々がVおよびV鎖を有する、それぞれ、3つおよび4つのポリペプチド鎖を持つ抗体)。抗体にはまた、組換えDNA技術によって、あるいは損なわれていない抗体の酵素的または化学的切断によって産生される、ミニボディ(WO 94/09817に記載されるようなもの)、およびマキシボディまたはscFv−Fc融合体(Powersら, J. Immunol Meth 251, 123−135(2001))も含まれる。
【0039】
用語「抗体」はまた、2つの異なる重鎖/軽鎖および2つの異なる結合部位を有する人工的ハイブリッド抗体である、二重特異性抗体または二重官能性抗体も指す。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の連結を含む、多様な方法によって産生可能である(Songsivilaiら, Clin. Exp. Immunol. 79:315−321(1990), Kostelnyら, J. Immunol. 148:1547−1553(1992)を参照されたい)。本明細書において、用語「抗体」はまた、キメラ抗体、すなわち1以上の非ヒト可変抗体免疫グロブリン・ドメインまたはその断片にカップリングしたヒト定常抗体免疫グロブリン・ドメインを有する抗体も指す(例えば、米国特許第5,595,898号および米国特許第5,693,493号を参照されたい)。抗体はまた、「ヒト化」抗体、およびトランスジェニック動物によって産生されたヒト抗体も指し、これらのどちらも、以下により詳細に説明する。用語「抗体」にはまた、多量体抗体、またはヘテロ二量体抗体などの、タンパク質のより高次の複合体も含まれる。「抗体」にはまた、抗イディオタイプ抗体も含まれる。抗体の産生を以下により詳細に記載する。
【0040】
ポリペプチドおよびアジュバントの多数回の皮下または腹腔内注射によって、動物(例えばウサギまたはマウス)において、サイトカインまたはその受容体ポリペプチドに向けられるポリクローナル抗体を産生してもよい。免疫しようとする種において免疫原性であるキャリアータンパク質、例えばキーホールリンペット(keyhole limpet)ヘモシアニン、血清、アルブミン、ウシ・チログロブリン、またはダイズ・トリプシン阻害剤に、抗原ポリペプチドをコンジュゲート化することが有用でありうる。また、ミョウバンなどの凝集剤を用いて、免疫応答を増進してもよい。免疫後、動物から採血し、そして抗体力価に関して血清をアッセイする。
【0041】
培養中の連続細胞株によって抗体分子の産生を提供する、任意の方法を用いて、サイトカインまたはその受容体と免疫反応性であるモノクローナル抗体を産生する。モノクローナル抗体を調製するのに適した方法の例には、Kohlerら Nature 256:495−97(1975)のハイブリドーマ法、およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, J. Immunol. 133:3001(1984); Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications 51−63(Marcel Dekker, Inc., 1987)が含まれる。本発明がやはり提供するのは、サイトカインまたはその受容体と反応性であるモノクローナル抗体を産生する、ハイブリドーマ細胞株である。
【0042】
療法剤として使用するため、本発明のモノクローナル抗体を修飾してもよい。1つの態様は、重(H)鎖および/または軽(L)鎖の部分が、特定の種に由来するか、あるいは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるかまたは相同である一方、鎖(単数または複数)の残りが、別の種に由来するか、あるいは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるかまたは相同である、「キメラ」抗体である。やはり含まれるのは、望ましい生物学的活性を示す限り、こうした抗体の断片である。米国特許第4,816,567号; Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851−55(1985)を参照されたい。
【0043】
モノクローナル抗体はまた、「ヒト化」抗体であってもよい。非ヒト抗体をヒト化するための方法が、当該技術分野に周知である。米国特許第5,585,089号および第5,693,762号を参照されたい。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された、1以上のアミノ酸残基を有する。例えば、当該技術分野に記載される方法を用いて(例えば、米国特許第4,816,567号およびWO 94/10332、Jonesら, Nature 321:522−25(1986); Riechmannら, Nature 332:323−27(1998); Verhoeyenら, Science 239:1534−36(1988)を参照されたい)、げっ歯類相補性決定領域の少なくとも部分を、ヒト抗体の対応する領域に置換することによって、ヒト化を行ってもよい。
【0044】
抗体は、ヒト抗体であってもよい。内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体のレパートリーを産生可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を用いると、場合によってキャリアーとコンジュゲート化された、適切な抗原(すなわち、少なくとも6の連続アミノ酸を有するもの)で免疫することによって、こうした抗体が産生される。例えば、Jakobovitsら, Proc. Natl. Acad. Sci. 90:2551−55(1993); Jakobovitsら, Nature 362:255−58(1993) Bruggermannら Year in Immuno. 7:33(1993), Mendezら, Nature Genetics 15:146−156(1997)、および本明細書に援用される米国特許第6,300,129号を参照されたい。1つの方法において、重鎖および軽鎖免疫グロブリン鎖をコードする内因性遺伝子座を無能力にし、そしてヒト重鎖および軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座をそのゲノムに挿入することによって、こうしたトランスジェニック動物を産生する。次いで、完全(full complement)より少ない修飾を有する、部分的に修飾された動物を交配して、望ましい免疫系修飾すべてを有する動物を得る。免疫原を投与した際、これらのトランスジェニック動物は、これらの抗原に免疫特異的な可変領域を含めて、ヒト(例えばネズミでなく)アミノ酸配列を持つ抗体を産生する。PCT出願第PCT/US96/05928号および第PCT/US93/06926号を参照されたい。さらなる方法が、米国特許第5,545,807号、PCT出願第PCT/US91/245号および第PCT/GB89/01207号に、そして欧州特許第546073B1号および第546073A1号に記載される。また、宿主細胞における組換えDNA発現によって、または本明細書に記載するようなハイブリドーマ細胞における発現によって、ヒト抗体を産生してもよい。
【0045】
また、ヒト抗体を含む抗体を、ファージ−ディスプレイ・ライブラリーから産生してもよい(Hoogenboomら, J. Mol. Biol. 227:381(1991); Marksら, J. Mol. Biol. 222:581(1991))。これらのプロセスは、糸状バクテリオファージ表面上での抗体レパートリーのディスプレイ、およびそれに続いて、選択される抗原への結合によるファージの選択を通じて、免疫選択を模倣する。こうした技術の1つが、こうしたアプローチを用いた、MPL−およびmsk−受容体に対する高親和性でそして機能するアゴニスト性抗体の単離を記載する、PCT出願第PCT/US98/17364号に記載される。Fab抗体断片を、例えばファージおよびファージミド・ライブラリー上にディスプレイし、それによって可溶性FabおよびIgGの選択および精製を可能にし、そして親和性精製を可能にする、抗体ファージ・ディスプレイ・ライブラリーが入手可能である(Dyax Corp)。
【0046】
キメラ、CDR移植、およびヒト化抗体は、典型的には組換え法によって産生される。抗体をコードする核酸が、宿主細胞に導入され、そして本明細書に記載する材料および方法を用いて発現される。1つの態様において、哺乳動物宿主細胞、例えばCHO細胞で抗体が産生される。宿主細胞における組換えDNAの発現によって、または本明細書に記載するようなハイブリドーマ細胞における発現によって、モノクローナル(例えばヒト)抗体を産生してもよい。
【0047】
ペプチド/ポリペプチド・アンタゴニスト
TSLPに対するアンタゴニストには、TSLP、TSLPR、またはIL−7Rα/TSLPRヘテロ二量体受容体に結合し、リガンド−受容体結合を阻害するかまたは遮断し、そして/またはサイトカイン活性を減少させるかまたは遮断することが可能な、ペプチドおよびポリペプチドが含まれる。他の線維化促進性因子に対するペプチドおよびポリペプチド・アンタゴニストには、適用可能な場合、リガンド、リガンド受容体、またはヘテロ二量体受容体に結合可能なペプチドまたはポリペプチドが含まれる。本明細書において、用語「ポリペプチド」は、長さまたは翻訳後修飾にかかわらず、ペプチド結合によって連結されるいかなるアミノ酸鎖も指す。「ペプチド」は、一般的に、およそ2アミノ酸からおよそ50アミノ酸の間の、アミノ酸のより短い鎖を指す。ポリペプチドおよびペプチドには、天然タンパク質、合成または組換えポリペプチドおよびペプチドが含まれる。本明細書において、用語「アミノ酸」は、20の標準的なα−アミノ酸ならびに天然存在および合成誘導体を指す。ポリペプチドは、LまたはDアミノ酸あるいはその組み合わせを含有してもよい。本明細書において、用語「ペプチド模倣体」は、1以上のアミノ酸に対して置換された非アミノ酸構造を有する、ペプチド様構造を指す。
【0048】
本発明の結合ポリペプチドおよびペプチドには、天然存在タンパク質の配列または部分配列、天然存在タンパク質由来のランダム化配列、あるいは完全ランダム化配列が含まれてもよい。
【0049】
ペプチドおよびポリペプチド・アンタゴニストには、ペプチドまたはポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端が、別のポリペプチド、その断片、または一般的にはいかなる特定のタンパク質配列の一部とも認識されないアミノ酸に融合された、融合タンパク質が含まれる。こうした融合タンパク質の例は、免疫グロブリン定常領域(Fc)などの免疫原性ポリペプチド、マーカータンパク質、所望のペプチドまたはポリペプチドの精製を容易にするタンパク質またはポリペプチド、二量体または三量体形成において有用であり、そして安定性およびより長い循環半減期を促進するのに有用である、ロイシンジッパーモチーフなどの、多量体タンパク質形成を促進する配列である。他の有用な融合タンパク質には、酵素由来の活性部位、グリコシル化ドメイン、細胞ターゲティングシグナルまたは膜貫通領域などの、機能ドメインの連結が含まれる。分子を多量体化し、そしてそれによって結合親和性を増進するため、Fc領域などの多量体化剤に加えて、これらのペプチドまたはポリペプチドを、ペプチドリンカーにさらに付着させてもよい。IgF、IgA、IgM、またはIgEのFcドメインなどの抗体断片と、サイトカイン受容体の可溶性ドメインなどのポリペプチドの融合が周知である。また、結合ペプチドまたはポリペプチドを、ポリエチレングリコール(PEG)などのキャリアー分子と付着させてもよい。
【0050】
結合ポリペプチドおよびペプチドには、本明細書に援用される、米国特許第6,660,843号に記載されるペプチボディがさらに含まれる。
可溶性リガンド
ペプチドおよびポリペプチド・アンタゴニストには、可溶性リガンド・アンタゴニストが含まれる。本明細書において、用語「可溶性リガンド・アンタゴニスト」は、TSLP受容体または他の線維化促進性因子受容体、あるいはヘテロ二量体受容体に結合して、そしてサイトカイン受容体結合および/またはシグナル伝達および活性を遮断することが可能な、可溶性ペプチド、ポリペプチドまたはペプチド模倣体を指す。可溶性リガンド・アンタゴニストには、リガンドに対して実質的な相同性を維持するが、その活性は維持しない、サイトカインの変異体が含まれ、NまたはC末端一部切除(truncation)などの一部切除、置換、欠失、およびアミノ酸残基に対する非アミノ酸ペプチド模倣体の置換などのアミノ酸配列中の他の改変が含まれる。例えば、可溶性リガンド・アンタゴニストは、サイトカイン受容体に結合可能であるが、シグナル伝達を可能にしない。本発明の目的のため、タンパク質は、アミノ酸配列が互いに少なくとも80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%同一である場合に、別のタンパク質に「実質的に類似」である。
可溶性受容体
ペプチドおよびポリペプチド・アンタゴニストには、TSLP(または他の線維化促進性因子)に結合し、そして/またはTSLP受容体結合を遮断するかまたは阻害し、そしてそれによって、サイトカイン活性を減少させるかまたは遮断することが可能な、修飾されたかまたはそうでない、サイトカイン受容体の一部切除型または断片がさらに含まれる。サイトカイン受容体のこれらの一部切除型には、例えば、天然存在可溶性ドメイン、ならびに、NまたはC末端のタンパク質分解による変異が含まれる。可溶性ドメインには、単独か、あるいはさらなるペプチドまたは修飾に付着した、受容体の細胞外ドメインのすべてまたは一部が含まれる。ヒトTSLPRの可溶性ドメインは、配列番号4のほぼアミノ酸25〜231である。IL−7Rαの可溶性ドメインは、米国特許第5,264,416号の図2のほぼアミノ酸1〜219である。受容体の可溶性ドメインを、Fc融合体などの融合タンパク質として提供することもまた可能である。
【0051】
サイトカイン・アンタゴニストにはまた、サイトカインに結合するように設計された、架橋されたホモまたはヘテロ二量体受容体あるいは受容体の断片も含まれ、これらは「サイトカイン・トラップ」としても知られる。サイトカイン・トラップは、サイトカインに結合して、機能しない複合体を形成することが可能な融合ポリペプチドである。サイトカイン・トラップには、サイトカイン受容体のシグナル伝達構成要素の細胞外ドメインのサイトカイン結合部分と一緒に、サイトカイン受容体の特異性決定領域の細胞外ドメインの少なくともサイトカイン結合部分、およびサイトカイン受容体断片を多量体化する、Fcなどの構成要素が含まれる。サイトカイン・トラップは、例えば、米国特許第6,472,179号に記載される。
ペプチドおよびポリペプチド
化学合成、タンパク質の消化、または組換え技術、ファージ・ディスプレイ、RNA−ペプチド・スクリーニング、および他のアフィニティー・スクリーニング技術を含む、当該技術分野に知られる方法いずれによって、本発明のペプチドおよびポリペプチド・アンタゴニストを生成してもよい。例えば、慣用的技術にしたがって、溶液中または固体支持体上で、ポリペプチドおよびペプチドを合成してもよい。多様な自動化合成装置が商業的に入手可能であり、そして既知のプロトコルにしたがって、こうした装置を用いてもよい。例えば、各々、本明細書に援用される、StewartおよびYoung(上記); Tamら, J Am Chem Soc, 105:6442, (1983); Merrifield, Science 232:341−347(1986); BaranyおよびMerrifield, The Peptides, GrossおよびMeienhofer監修, Academic Press, New York, 1−284; Baranyら, Int J Pep Protein Res, 30:705−739(1987);ならびに米国特許第5,424,398号を参照されたい。固相ペプチド合成のための方法が、例えば、Coliganら, Curr Prot Immunol, Wiley Interscience, 1991, Unit 9に記載される。
【0052】
固相ペプチド合成法は、0.1〜1.0mMアミン/gポリマーを含有するコポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)を用いる。ペプチド合成のためのこれらの方法は、アルファ−アミノ基のブチルオキシカルボニル(t−BOC)または9−フルオレニルメチルオキシ−カルボニル(FMOC)保護を用いる。どちらの方法も、段階的な合成を伴い、これによって、ペプチドのC末端から出発して、各工程で、単一のアミノ酸が付加される(Coliganら, Curr Prot Immunol, Wiley Interscience, 1991, Unit 9を参照されたい)。化学合成が完了したら、減少した温度での酸処理によって、合成ペプチドを脱保護して、t−BOCまたはFMOCアミノ酸ブロッキング基を除去し、そしてポリマーから切断することも可能である(例えば0℃、約0.25〜約1時間の液体HF−10%アニソール)。試薬を蒸発させた後、1%酢酸溶液でポリマーからペプチドを抽出し、次いで、これを凍結乾燥して、未精製材料を得る。溶媒として5%酢酸を用いたSephadex G−15上でのゲルろ過などの技術によって、通常、これを精製可能である。カラムの適切な分画の凍結乾燥は、均質なペプチドまたはペプチド誘導体を生じるであろうし、次いで、これをアミノ酸分析、薄層クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィー、紫外線吸収分光法、モル旋光度、溶解度などの標準的技術によって性質決定し、そして固相エドマン分解によって定量化してもよい。
【0053】
ファージ・ディスプレイ技術は、サイトカインまたはその受容体に結合可能なペプチドを同定するための別の方法に相当する。簡潔には、アミノ酸残基の挿入物をディスプレイするファージ・ライブラリーを調製する(例えばml 13、fd、またはラムダ・ファージを用いる)。挿入物は、例えば、完全に縮重しているかまたはバイアスがかかったアレイに相当してもよい。所望の抗原に結合する挿入物を所持するファージを選択し、そして所望の抗原に結合するファージを再選択する数周期を通じて、このプロセスを反復する。DNA配列決定を行って、発現されたペプチドの配列を同定する。この方法で、所望の抗原に結合する配列の最小直鎖部分を決定することも可能である。最小直鎖部分の一部またはすべてに加えてその上流または下流の1以上のさらなる縮重残基を含有するバイアス化ライブラリーを用いて、この方法を反復してもよい。これらの技術は、サイトカインまたはその受容体にさらにより大きい結合親和性を持つペプチドを同定可能である。ファージ・ディスプレイ技術は、例えば、Scottら Science 249:386(1990); Devlinら, Science 249:404(1990);米国特許第5,223,409号;米国特許第5,733,731号;米国特許第5,498,530号;米国特許第5,432,018号;米国特許第5,338,665号;米国特許第5,922,545号; WO 96/40987、およびWO 98/15833に記載され、これらは各々、本明細書に援用される。場合によって、突然変異誘発ライブラリーを生成し、そして上述のようにスクリーニングして、最適結合剤の配列をさらに最適化する(Lowman, Ann Rev Biophys Biomol Struct 26:401−24(1997))。
【0054】
結合ペプチドを生成する他の方法には、当該技術分野に知られる、さらなるアフィニティー選択技術が含まれ、集合的に「RNA−ペプチド・スクリーニング」として知られる、ペプチドのRNAへの化学的連結を使用する、「大腸菌(E. coli)ディスプレイ」、「リボソーム・ディスプレイ」法が含まれる。酵母2−ハイブリッド・スクリーニング法もまた、サイトカインまたはその受容体に結合する本発明のペプチドを同定するために使用可能である。さらに、ペプチドが、安定で非生物学的な材料、例えばオリエチレン(olyethylene)ロッドまたは溶媒浸透性樹脂上に固定されている、化学的に得られるペプチドライブラリーが開発されてきている。別の化学的に得られるペプチドライブラリーは、フォトリソグラフィーを用いて、ガラス・スライド上に固定されたペプチドをスキャンする。これ以降、これらの方法および関連法を、集合的に「化学的ペプチド・スクリーニング」と称する。化学的ペプチド・スクリーニングは、D−アミノ酸および他の類似体、ならびに非ペプチド要素の使用を可能にする点で、好適でありうる。生物学的方法および化学的方法はどちらも、WellsおよびLowman, Curr Opin Biotechnol 3:355−62(1992)に概説される。
【0055】
さらに、「合理的薬剤設計」の使用を通じて、サイトカインおよびサイトカイン受容体に結合可能な、選択されたペプチド、ペプチド模倣体、および小分子を、さらに改善することも可能である。1つのアプローチにおいて、x線結晶学によって、核磁気共鳴によって、またはコンピュータ相同性モデリングによって、あるいは最も典型的には、これらのアプローチの組み合わせによって、本発明のポリペプチド、リガンドまたは結合パートナー、あるいはポリペプチド−結合パートナー複合体の三次元構造を決定する。適切な構造情報を用いて、類似の分子を設計し、本発明のポリペプチドに結合可能な小分子など、効率的な阻害剤を同定する。タンパク質の三次元構造に基づいて、基質または結合剤をモデリングするためのアルゴリズム、ソフトウェア、および方法の例が、その開示が本明細書に援用される、PCT公報WO107579に記載される。
【0056】
標的サイトカインまたはサイトカイン受容体標的への結合に関してスクリーニングし、その後、非特異的および特異的溶出によって、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣体、抗体、可溶性ドメイン、および小分子などのアンタゴニストを選択する。いくつかの結合アッセイが、当該技術分野に知られ、そしてこうしたアッセイには、非競合的および競合的結合アッセイが含まれる。続いて、細胞に基づくアッセイまたは他のアッセイを用いて、IC50(指定された活性の50%が阻害される濃度)などの阻害性パラメーター、およびK(解離定数)またはK(会合定数)によって測定されるような結合親和性を決定してもよい。例えば細胞表面上にサイトカイン受容体、ならびにpLuc−MCSレポーター・ベクター(Stratageneカタログ番号219087)などのサイトカイン応答性シグナル伝達レポーターを発現している細胞培養を使用する、細胞に基づくアッセイを用いて、IC50を決定してもよい。増加する量の阻害剤がサイトカインとともに細胞培養中に存在する際のシグナル伝達の阻害を用いて、IC50を決定することも可能である。本明細書において、用語「特異的に結合する」は、10−1以上、1つの態様において、10−1以上の結合親和性を指す。製造者が示唆するプロトコルにしたがって、多様な濃度の候補阻害剤を用い、BIAcore(登録商標)3000(Biacore, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)などのBIAcore(登録商標)アッセイ系を用いることによって、平衡定数KまたはKを決定してもよい。次いで、以下の実施例に記載するネズミモデルなどの多様な動物モデルに対して、アンタゴニストの療法値を試験してもよい。
【0057】
線維化促進性因子に対する特異的アンタゴニストが知られる。TSLP活性に対する阻害剤に加えて、本発明の方法および組成物は、特定のアンタゴニストを使用してもよく、これには、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))として知られるTNF−α受容体Fc融合タンパク質、sTNF−RI、オネルセプト、D2E7、およびレミケードTM、ならびにTNF−αおよびTNF−α受容体に特異的に反応する抗体が含まれる。アンタゴニストには、アナキンラ、キネレット(登録商標)などのIL−1rαアンタゴニスト分子、IL−1Hy1およびIL−1Hy2などのIL−1rα様分子;IL−1αおよびIL−1α受容体に対するポリペプチド阻害剤、IL−1可溶性受容体アンタゴニストがさらに含まれる。IL−1ポリペプチド阻害剤は、グリコシル化および非グリコシル化ポリペプチド配列を記載し、本明細書に援用される、米国特許第6,599,873号に記載される。キネレット(登録商標)は、アミノ末端に単一のメチオニン残基の付加を有する点で、天然ヒトIL−1rαと異なる。キネレット(登録商標)は、I型インターロイキン−1受容体(IL−1rI)へのIL−1の結合を競合的に阻害することによって、IL−1の生物学的活性を遮断する。さらなる既知の阻害剤には、IL−4およびIL−4受容体に結合する抗体、IL−5およびIL−5受容体に結合する抗体、ならびにIL−13およびIL−13受容体に結合する抗体が含まれる。
【0058】
ペプチドまたはポリペプチドを調製する方式に関わらず、標準的組換えDNA法を用いて、各ペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸分子を生成してもよい。これらがコードするアミノ酸配列を変化させることなく、こうした分子のヌクレオチド配列を適切なように操作して、核酸暗号の縮重の原因とするとともに、特定の宿主細胞におけるコドン優先性の原因とすることも可能である。組換えDNA技術はまた、本発明のポリペプチド剤、または例えば可溶性受容体ドメインを含むその断片を調製するのに好適な方法も提供する。ポリペプチドまたは断片をコードするポリヌクレオチドを、発現ベクターに挿入してもよく、次に、本発明のポリペプチドの産生のため、該ベクターを宿主細胞に挿入してもよい。
【0059】
多様な発現ベクター/宿主系を利用して、ペプチドおよびポリペプチド剤を発現してもよい。これらの系には、限定されるわけではないが、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えばカリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)でトランスフェクションされたか、または細菌発現ベクター(例えばTiまたはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞系;あるいは動物細胞系が含まれる。組換えタンパク質産生に有用な哺乳動物細胞には、限定されるわけではないが、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、COS細胞(COS−7など)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562および293細胞が含まれる。
【0060】
用語「発現ベクター」は、ポリヌクレオチド配列からポリペプチドを発現するためのプラスミド、ファージ、ウイルスまたはベクターを指す。発現ベクターは、(1)遺伝子発現において、制御の役割を有する、単数または複数の遺伝子要素、例えばプロモーターまたはエンハンサー、(2)mRNAに転写され、そしてタンパク質に翻訳されるポリペプチド剤をコードする構造配列、ならびに(3)適切な転写開始および終結配列の集合を含む、転写単位を含むことも可能である。酵母または真核発現系における使用が意図される構造単位には、好ましくは、翻訳されたタンパク質が宿主細胞によって細胞外に分泌されるのを可能にするリーダー配列が含まれる。あるいは、リーダーまたは輸送配列を伴わずに組換えタンパク質が発現される場合、これにはアミノ末端メチオニル残基が含まれてもよい。この残基は、続いて、最終ポリペプチド産物を提供するのに、発現された組換えタンパク質から切断されても、またされなくてもよい。例えば、製造者の使用説明書にしたがって、商業的に入手可能な発現系、例えばピキア属(Pichia)発現系(Invitrogen、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて、ペプチドおよびペプチボディを酵母において組換え的に発現させてもよい。この系はまた、分泌を指示する、プレ−プロ−アルファ配列にも頼るが、挿入物の転写は、メタノールによる誘導に際して、アルコール酸化酵素(AOX1)プロモーターによって駆動される。細菌および哺乳動物細胞上清からポリペプチドを精製するのに用いられる方法を用いて、分泌されたポリペプチドを、酵母増殖培地から精製する。
【0061】
あるいは、ペプチドおよびポリペプチドをコードするcDNAを、バキュロウイルス発現ベクターpVL1393(PharMingen、カリフォルニア州サンディエゴ)内にクローニングしてもよい。製造者の指示(PharMingen)にしたがって、このベクターを用いて、sF9タンパク質不含培地中のスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞を感染させ、そして組換えタンパク質を産生してもよい。ヘパリン−Sepharoseカラム(Pharmacia)を用いて、培地から組換えタンパク質を精製し、そして濃縮してもよい。
【0062】
あるいは、ペプチドまたはポリペプチドを昆虫系において発現させてもよい。タンパク質発現用の昆虫系は、当業者に周知である。1つのこうした系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)多核体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして用いて、スポドプテラ・フルギペルダ細胞またはトリコプルシア属(Trichoplusia)幼虫において、外来(foreign)遺伝子を発現させてもよい。ペプチドコード配列を、ウイルスの非必須領域、例えばポリヘドリン遺伝子内にクローニングし、そしてポリヘドリン・プロモーターの調節下に置いてもよい。ペプチド挿入に成功すると、ポリヘドリン遺伝子は不活性になり、そしてコート・タンパク質を欠く組換えウイルスが生じるであろう。組換えウイルスを用いて、S.フルギペルダ細胞またはトリコプルシア属幼虫を感染させることも可能であり、該細胞または幼虫の中でペプチドが発現される(Smithら, J Virol 46:584(1983); Engelhardら, Proc Nat Acad Sci(USA)91:3224−7(1994))。
【0063】
別の例において、ペプチドをコードするDNA配列をPCRによって増幅し、そして適切なベクター、例えば、pGEX−3X(Pharmacia)内にクローニングしてもよい。ベクターにコードされるグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、およびベクターのクローニング部位内に挿入されたDNA断片にコードされるタンパク質を含む、融合タンパク質を生じるように、pGEXベクターを設計する。例えば適切な切断部位を含むように、PCRのプライマーを生成してもよい。
【0064】
あるいは、ペプチドをコードするDNA配列を、所望のプロモーター、および場合によってリーダー配列(Betterら, Science 240:1041−43(1988))を含有するプラスミド内にクローニングしてもよい。自動化配列決定装置によって、この構築物の配列を確認してもよい。次いで、細菌のCaClインキュベーションおよび熱ショック処理を使用した標準法を用いて、このプラスミドを、大腸菌株MC1061に形質転換してもよい(Sambrookら、上記)。カルベニシリンを補ったLB培地中で形質転換細菌を増殖させ、そして適切な培地中の増殖によって、発現されたタンパク質の産生を誘導してもよい。存在する場合、リーダー配列は、ペプチドの分泌を達成可能であり、そして分泌中に切断されることも可能である。
【0065】
組換えペプチドおよびポリペプチドの発現のための哺乳動物宿主系が、当業者には周知である。発現されたタンパク質をプロセシングするか、またはタンパク質活性を提供する際に有用であろう特定の翻訳後修飾を生じる特定の能力のため、宿主細胞株を選択してもよい。タンパク質のこうした修飾には、限定されるわけではないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が含まれる。CHO、HeLa、MDCK、293、WI38などの異なる宿主細胞は、特定の細胞機構、およびこうした翻訳後活性のための特徴的な機構を有し、そして導入された外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを確実にするため、これらを選択してもよい。
【0066】
形質転換細胞を、長期の高収率タンパク質産生のために用いることが好ましい。こうした細胞を、選択可能マーカーならびに所望の発現カセットを含有するベクターで形質転換したら、細胞を濃縮培地中で1〜2日間増殖させ、その後、選択培地にスイッチしてもよい。選択可能マーカーは、導入された配列を成功裡に発現する細胞の増殖および回収を可能にするよう設計される。使用する細胞株に適した組織培養技術を用いて、安定形質転換細胞の耐性の塊を増殖させてもよい。
【0067】
いくつかの選択系を用いて、組換えタンパク質産生のために形質転換されている細胞を回収してもよい。こうした選択系には、限定されるわけではないが、それぞれ、tk−、hgprt−またはaprt−細胞における、HSVチミジンキナーゼ、ヒポキサンチン−グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼおよびアデニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれる。また、メトトレキセートへの耐性を与えるdhfr;ミコフェノール酸への耐性を与えるgpt;アミノグリコシドG418への耐性を与え、そしてクロロスルフロンへの耐性を与えるneo;およびハイグロマイシンへの耐性を与えるhygroに関して、代謝拮抗物質耐性を選択の基礎として用いてもよい。有用でありうるさらなる選択可能遺伝子には、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB、または細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisDが含まれる。形質転換体の同定のための視覚的指標を与えるマーカーには、アントシアニン、β−グルクロニダーゼおよびその基質GUS、ならびにルシフェラーゼおよびその基質ルシフェリンが含まれる。
【0068】
いくつかの場合、発現された本発明のポリペプチドは、生物学的に活性になるために、「再フォールディング」され、そして酸化されて適切な三次構造およびジスルフィド連結を生じることを必要としうる。当該技術分野に周知のいくつかの方法を用いて、再フォールディングを達成してもよい。こうした方法には、例えば、可溶化されたポリペプチド剤を、カオトロピック剤の存在下で、通常は7を超えるpHに曝露することが含まれる。カオトロープの選択は、封入体可溶化に用いる選択と類似であるが、カオトロープは、典型的には、より低濃度で用いられる。典型的なカオトロピック剤はグアニジンおよび尿素である。大部分の場合、再フォールディング/酸化溶液はまた、還元剤に加えて、その酸化型も、特定の比で含有し、システイン架橋の形成のため、ジスルフィド・シャフリングが起こることを可能にする、特定の酸化還元電位を生じるであろう。いくつかの一般的に用いられる酸化還元対には、システイン/シスタミン、グルタチオン/ジチオビスGSH、塩化第二銅、ジシオスレイトールDTT/ジチアンDTT、および2−メルカプトエタノール(bME)/ジチオ−bMEが含まれる。多くの場合、共溶媒を用いて、再フォールディングの効率を増加させてもよい。一般的に用いられる共溶媒には、グリセロール、多様な分子量のポリエチレングリコール、およびアルギニンが含まれる。
【0069】
本発明のペプチドおよびポリペプチドを精製することが必要である。タンパク質精製技術は、当業者に周知である。これらの技術は、1つのレベルで、タンパク質性および非タンパク質性分画の未精製分画を含む。ペプチドまたはポリペプチドを他のタンパク質と分離したら、クロマトグラフィーおよび電気泳動技術を用いて、関心対象のペプチドまたはポリペプチドをさらに精製して、部分的または完全精製(または均一になるまでの精製)を達成してもよい。ポリペプチドおよびペプチドの調製に特に適した分析法は、イオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー;ポリアクリルアミドゲル電気泳動;等電点電気泳動である。ペプチドを精製する、特に効率的な方法は、迅速なタンパク質液体クロマトグラフィー、またはより適切にはHPLCである。用語「精製ポリペプチドまたはペプチド」は、本明細書において、他の構成要素から単離可能な組成物を指すよう意図され、ここでポリペプチドまたはペプチドは、天然に得られうる状態に比較して、任意の度合いに精製される。精製ペプチドまたはポリペプチドは、したがって、天然に存在しうる環境から離れたポリペプチドまたはペプチドもまた指す。一般的に、「精製された」は、分画に供されて、多様な他の構成要素が除去され、そして発現された生物学的活性を実質的に保持する、ペプチドまたはポリペプチド組成物を指すであろう。用語「実質的に精製された」を用いる場合、この指定は、ポリペプチドまたはペプチドが、組成物の主な構成要素を形成し、例えば組成物中のタンパク質の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%またはそれを超える割合を構成する、ペプチドまたはポリペプチド組成物を指すであろう。
【0070】
本開示を考慮して、ペプチドまたはポリペプチドの精製の度合いを定量化するための多様な方法が、当業者に知られる。これらには、例えば、活性分画の特異的結合活性を決定すること、またはSDS/PAGE分析によって、分画内のペプチドまたはポリペプチド量を評価することが含まれる。ペプチドまたはポリペプチド分画の純度を評価するのに好ましい方法は、分画の結合活性を計算し、最初の抽出物の結合活性に比較し、そしてこうして、本明細書において「倍精製数」によって評価される、精製の度合いを計算することである。結合活性の量を表すために用いられる実際の単位は、もちろん、精製にしたがって選択された特定のアッセイ技術、およびポリペプチドまたはペプチドが、検出可能な結合活性を示すかどうかに応じるであろう。
【0071】
精製において使用するのに適した多様な技術が当業者に周知である。これらには、例えば、硫酸アンモニウム、PEG、抗体(免疫沈降)等での沈殿または熱変性による沈殿後の遠心分離;アフィニティークロマトグラフィー(例えばプロテインA−Sepharose)、イオン交換、ゲルろ過、逆相、ヒドロキシルアパタイトおよびアフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー工程;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;ならびにこうした技術および他の技術の組み合わせが含まれる。当該技術分野に一般的に知られるように、多様な精製工程を行う順序を変化させるか、または特定の工程を省いて、そしてなお、実質的に精製されたポリペプチドの調製に適した方法を生じることも可能であると考えられる。
【0072】
ポリヌクレオチドに対するアンタゴニスト
本発明記載のTSLPおよび他の線維化促進性サイトカインに対するアンタゴニストには、該サイトカインまたはその受容体の発現を防止するかまたは減少させるアンタゴニストが含まれる。これらには、標的mRNA(センス)またはDNA(アンチセンス)配列に結合可能な一本鎖ポリヌクレオチド配列(RNAまたはDNAいずれか)を含むアンチセンスまたはセンス・オリゴヌクレオチドが含まれる。本発明にしたがったアンチセンスまたはセンス・オリゴヌクレオチドは、サイトカインまたはその受容体いずれかをコードする、標的とされるポリヌクレオチド配列の断片を含む。こうした断片は、一般的に、少なくとも約14ヌクレオチド、典型的には、約14〜約30ヌクレオチドを含む。所定のタンパク質をコードする核酸配列に基づいて、アンチセンスまたはセンス・オリゴヌクレオチドを得る能力は、例えば、SteinおよびCohen(Cancer Res. 48:2659, 1988)、ならびにvan der Krolら(BioTechniques 6:958, 1988)に記載される。アンチセンスまたはセンス・オリゴヌクレオチドが標的核酸配列に結合した結果、RNAse HによるmRNAの分解増進、スプライシングの阻害、転写または翻訳の未成熟な終結を含むいくつかの手段の1つによって、あるいは他の手段によって、タンパク質の発現を遮断するかまたは阻害する二重鎖が形成される。こうして、アンチセンス・オリゴヌクレオチドを用いて、タンパク質の発現を遮断することも可能である。アンチセンスまたはセンス・オリゴヌクレオチドは、修飾糖−ホスホジエステル主鎖(またはWO91/06629に記載されるものなどの他の糖連結)を有するオリゴヌクレオチドをさらに含み、そしてここで、こうした糖連結は内因性ヌクレアーゼに耐性である。耐性糖連結を持つ、こうしたオリゴヌクレオチドは、in vivoで安定である(すなわち酵素分解に抵抗可能である)が、標的ヌクレオチド配列に結合可能な配列特異性を保持する。
【0073】
センスまたはアンチセンス・オリゴヌクレオチドの他の例には、WO90/10448に記載されるものなどの有機部分、およびポリ(L)−リジンなどの、標的核酸配列に対するオリゴヌクレオチドの親和性を増加させる他の部分に、共有連結されたオリゴヌクレオチドが含まれる。さらになお、エリプチシンなどの挿入剤、およびアルキル化剤または金属複合体を、センスまたはアンチセンス・オリゴヌクレオチドに付着させて、標的ヌクレオチド配列に対するアンチセンスまたはセンス・オリゴヌクレオチドの結合特異性を修飾してもよい。
【0074】
例えば、リポフェクション、CaPO仲介DNAトランスフェクション、エレクトロポレーションを含む遺伝子トランスファー法いずれかによって、あるいはエプスタイン−バー・ウイルスまたはアデノウイルスなどの遺伝子トランスファーベクターを用いることによって、標的核酸を含有する細胞内に、アンチセンスまたはセンス・オリゴヌクレオチドを導入してもよい。
【0075】
WO 91/04753に記載されるように、リガンド結合分子とのコンジュゲートを形成することによって、標的核酸を含有する細胞内に、センスまたはアンチセンス・オリゴヌクレオチドを導入してもよい。適切なリガンド結合分子には、限定されるわけではないが、細胞表面受容体、増殖因子、他のサイトカイン、または細胞表面受容体に結合する他のリガンドが含まれる。好ましくは、リガンド−結合分子のコンジュゲート化は、リガンド−結合分子が、対応する分子または受容体に結合する能力に実質的に干渉せず、あるいはセンスもしくはアンチセンス・オリゴヌクレオチドまたはそのコンジュゲート化型が細胞内に進入するのを遮断しない。
【0076】
あるいは、WO 90/10448に記載されるように、オリゴヌクレオチド−脂質複合体の形成によって、標的核酸を含有する細胞内に、センスまたはアンチセンス・オリゴヌクレオチドを導入してもよい。センスまたはアンチセンス・オリゴヌクレオチド−脂質複合体は、好ましくは、内因性リパーゼによって、細胞内で解離する。
【0077】
標的とされるサイトカインまたはサイトカイン受容体の発現を防止するさらなる方法は、例えばBosherら, Nature Cell Biol 2, E31−E36(2000)に記載されるような、特異的二本鎖RNA(dsRNA)の導入によって生じるRNA干渉またはRNAiである。
【0078】
薬剤組成物
本発明記載の1以上のTSLPアンタゴニストを含有する薬剤組成物は、本発明の範囲内である。さらに、線維化促進性因子に対するアンタゴニストに加えて、1以上のTSLPアンタゴニストを含有する薬剤組成物を提供する。こうした組成物は、薬学的に許容しうる材料と混合された、療法的または予防的有効量の各アンタゴニストを含む。本明細書において、有効量は、線維性障害に関して、被験体を治療するのに十分な量である。典型的には、アンタゴニストは、動物への投与のため、十分に精製されるであろう。
【0079】
薬剤組成物は、例えば、組成物のpH、モル浸透圧濃度、粘性、透明度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、分解または放出速度、吸着または浸透を修飾するか、維持するか、または保存するための配合物材料を含有することも可能である。適切な配合物材料には、限定されるわけではないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなど);抗菌剤;酸化防止剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝剤(ホウ酸、重炭酸、Tris−HCl、クエン酸、リン酸または他の有機酸など);充填剤(マンニトールまたはグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリンなど);増量剤;単糖;二糖および他の炭水化物(グルコース、マンノースまたはデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど);着色剤、フレーバー剤および希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);保存剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサル、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトールまたはソルビトールなど);懸濁剤;界面活性剤または湿潤剤(プルロニック類、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80などのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサパル(tyloxapal)など);安定性増進剤(スクロースまたはソルビトールなど);等張性増進剤(ハロゲン化アルカリ金属(好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトール・ソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤および/または薬学的佐剤が含まれる(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版, A.R. Gennaro監修, Mack Publishing Company, 1990)。
【0080】
例えば意図される投与経路、送達形式および所望の投薬量に応じて、当業者が、最適な薬剤組成物を決定するであろう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、上記を参照されたい。こうした組成物は、療法分子の物理的状態、安定性、in vivo放出速度およびin vivoクリアランス速度に影響を及ぼすことも可能である。
【0081】
薬剤組成物中の主なビヒクルまたはキャリアーは、性質が水性または非水性のいずれであることも可能である。例えば、適切なビヒクルまたはキャリアーは、注射用水、生理学的生理食塩水溶液または人工的脳脊髄液であることも可能であり、非経口投与のための組成物において一般的な、他の材料を補足することも可能である。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンと混合した生理食塩水が、さらなる典型的なビヒクルである。他の典型的な薬剤組成物は、pH約7.0〜8.5のTris緩衝液、またはpH約4.0〜5.5の酢酸緩衝液を含み、これらは、ソルビトールまたはその適切な代用物をさらに含むことも可能である。本発明の1つの態様において、望ましい度合いの純度を有する選択した組成物と、場合による配合剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、上記)を混合して、凍結乾燥ケーク型または水性溶液型にすることによって、アンタゴニスト組成物を、保管用に調製することも可能である。さらに、スクロースなどの適切な賦形剤を用いて、凍結乾燥物として、療法アンタゴニストを配合することも可能である。
【0082】
治療しようとする状態のため、薬剤組成物を選択することも可能である。線維性障害の治療を、例えば、局所的に、経口的に、あるいは注射によって送達してもよい。あるいは、組成物を、例えば、吸入療法によって、経口的に、または注射によって、送達してもよい。こうした薬学的に許容しうる組成物の調製は、当該技術分野の技術内である。
【0083】
配合物構成要素は、投与部位に許容しうる濃度で存在する。例えば、緩衝剤を用いて、組成物を生理学的pHまたはわずかにより低いpH、典型的には約5〜約8のpH範囲内に維持する。
【0084】
非経口投与を意図する場合、本発明で使用するための療法組成物は、薬学的に許容しうるビヒクル中、所望のアンタゴニストを含む、発熱物質不含の非経口的に許容しうる水性溶液の形であることも可能である。非経口注射に特に適したビヒクルは、無菌再蒸留水であり、この中で、アンタゴニストを、適切に保存された無菌等張溶液として配合する。さらに別の調製は、製品の制御放出または持続放出を提供する、注射可能微小球体、生体侵食可能粒子、ポリマー性化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸)、ビーズまたはリポソームなどの剤を、所望の分子と配合することを伴うことも可能であり、次いでデポ注射を介してこの製品を送達することも可能である。ヒアルロン酸もまた使用可能であり、そしてヒアルロン酸は、循環中に存在する期間の持続を促進する効果を有することも可能である。所望の分子を導入するための他の適切な手段には、移植可能薬剤送達装置が含まれる。
【0085】
別の側面において、非経口投与に適した薬学的配合物を、水性溶液中、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的に緩衝された生理食塩水などの生理学的に適合しうる緩衝液中に配合してもよい。水性注射懸濁物は、懸濁物の粘性を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランを含有してもよい。さらに、適切な油性注射懸濁物として、活性化合物の懸濁物を調製してもよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、あるいはオレイン酸エチル、トリグリセリド、またはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが含まれる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーもまた、送達のために使用可能である。場合によって、懸濁物はまた、適切な安定化剤、または化合物の溶解度を増加させる剤も含有して、そして非常に濃縮された溶液の調製を可能にしてもよい。別の態様において、薬剤組成物を吸入のために配合することも可能である。例えば、アンタゴニストを、吸入用の乾燥粉末として配合することも可能である。アンタゴニストを含むポリペプチドまたは核酸分子吸入溶液を、エアロゾル送達用の噴霧剤を用いて配合することもまた可能である。さらに別の態様において、溶液を噴霧することも可能である。肺投与は、化学的に修飾されたタンパク質の肺送達を記載する、PCT出願第PCT/US94/001875号にさらに記載され、そして該出願は本明細書に援用される。
【0086】
特定の配合物を経口投与することも可能であることが意図される。本発明の1つの態様において、この方式で投与される分子を、錠剤およびカプセルなどの固形投薬型の調剤(compounding)に通例用いられるキャリアーを伴いまたは伴わずに配合することも可能である。例えば、生物学的利用能が最大であり、そして全身に到達する前の(pre−systemic)分解が最小である、胃腸管の箇所で、配合物の活性部分が放出されるように、カプセルを設計することも可能である。さらなる剤を含ませて、アンタゴニスト分子の吸収を促進することも可能である。希釈剤、フレーバー剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤もまた、使用可能である。
【0087】
経口投与に適した投薬型で、当該技術分野に周知の薬学的に許容しうるキャリアーを用いて、経口投与用の薬剤組成物を配合することもまた可能である。こうしたキャリアーは、薬剤組成物を、患者が摂取するための、錠剤、ピル、ドラジェー、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物等として配合するのを可能にする。
【0088】
活性化合物と固体賦形剤を合わせ、そして生じた顆粒混合物を(場合によって粉砕した後)プロセシングして、錠剤またはドラジェー・コアを得ることを通じて、経口使用のための薬剤調製物を得ることも可能である。所望の場合、適切な補助剤を添加することも可能である。適切な賦形剤には、炭水化物またはタンパク質増量剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール、およびソルビトールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモ、または他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアゴムおよびトラガカントを含むゴム;ならびにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質が含まれる。所望の場合、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、およびアルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤を添加することも可能である。
【0089】
アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物もまた含有可能な、濃縮糖溶液などの、適切なコーティングと組み合わせて、ドラジェー・コアを用いることも可能である。製品を同定するため、または活性化合物の量、すなわち投薬量を特徴付けるため、染料または色素を錠剤またはドラジェー・コーティングに添加することも可能である。
【0090】
経口で使用可能な薬剤調製物にはまた、ゼラチン製の押し込み型カプセル、ならびにゼラチン製の軟密閉カプセルおよびグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングが含まれる。押し込み型カプセルは、増量剤または結合剤、例えばラクトースまたはデンプン、潤滑剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および場合によって安定化剤と混合された活性成分を含有することも可能である。軟カプセルにおいて、安定化剤を伴い、または伴わず、活性化合物を適切な液体、例えば脂肪油、液体、または液体ポリエチレングリコール中に、溶解するかまたは懸濁することも可能である。
【0091】
別の薬剤組成物は、錠剤の製造に適した非毒性賦形剤との混合物中に、有効量のアンタゴニストを含むことも可能である。錠剤を無菌水または他の適切なビヒクルに溶解することによって、単位投薬型の溶液を調製することも可能である。適切な賦形剤には、限定されるわけではないが、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸水素ナトリウム、ラクトース、またはリン酸カルシウム;あるいは結合剤、例えばデンプン、ゼラチン、またはアラビアゴム;あるいは潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクが含まれる。
【0092】
さらなる薬剤組成物が当業者には明らかであり、こうした組成物には、持続または制御送達配合物中に分子を伴う配合物が含まれる。多様な他の持続または制御送達手段、例えばリポソーム・キャリアー、生体内分解性微小粒子または多孔ビーズおよびデポ注射を配合するための技術もまた、当業者に知られる。例えば、薬剤組成物の送達用の多孔ポリマー性微小粒子の調節された放出を記載する、PCT/US93/00829を参照されたい。持続放出調製物のさらなる例には、成形物品の形の半透性ポリマーマトリックス、例えばフィルム、または微小カプセルが含まれる。持続放出マトリックスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリ乳酸(U.S. 3,773,919、EP 58,481)、L−グルタミン酸およびガンマ・エチル−L−グルタメートのコポリマー(Sidmanら, Biopolymers, 22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langerら, J. Biomed. Mater. Res., 15:167−277(1981); Langerら, Chem. Tech., 12:98−105(1982))、エチレン酢酸ビニル(Langerら、上記)、またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(EP 133,988)が含まれることも可能である。持続放出組成物にはまた、当該技術分野に知られるいくつかの方法のいずれかによって調製可能なリポソームも含まれる。例えばEppsteinら, PNAS(USA), 82:3688(1985);EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949を参照されたい。
【0093】
in vivo投与に用いようとする薬剤組成物は、典型的には無菌でなければならない。これは、無菌ろ過膜を通じたろ過によって達成可能である。組成物を凍結乾燥する場合、この方法を用いた滅菌は、凍結乾燥および再構成前にまたはその後のいずれかに行うことも可能である。非経口投与用の組成物は、凍結乾燥型で、または溶液中で保存することも可能である。さらに、非経口組成物は、一般的に、無菌アクセスポートを有する容器、例えば静脈内溶液バッグ、または皮下注射針によって貫通可能な栓を有するバイアル中に入れられる。
【0094】
薬剤組成物を配合したら、溶液、懸濁物、ゲル、エマルジョン、固体、あるいは脱水または凍結乾燥粉末として、無菌バイアル中で保存することも可能である。こうした配合物は、すぐに使える型で、または投与前に再構成を要する型(例えば凍結乾燥型)のいずれで保存することも可能である。
【0095】
特定の態様において、本発明は、単回用量投与単位を生じるキットに関する。該キットは、各々、乾燥タンパク質を有する第一の容器および水性配合物を有する第二の容器の両方を含有することも可能である。本発明の範囲内にやはり含まれるのは、単一チャンバーおよび多チャンバーのあらかじめ充填されたシリンジ(例えば液体シリンジおよびリオシリンジ(lyosyringes))を含有するキットである。
【0096】
療法的に使用しようとする薬剤組成物の有効量は、例えば療法状況および目的に応じるであろう。したがって、当業者は、治療に適した投薬レベルが、部分的に、送達される分子、該分子が用いられる徴候、投与経路、ならびに患者のサイズ(体重、体表面または臓器サイズ)および状態(年齢および全身の健康状態)に応じて、多様であろうことを認識するであろう。したがって、臨床医は、最適な療法効果を得るため、投薬量を滴定し、そして投与経路を修正することも可能である。典型的な投薬量は、上述の要因に応じて、約0.1mg/kg〜最大約100mg/kg以上の範囲であることも可能である。抗体は、好ましくは、静脈内注射または投与可能である。
【0097】
いかなる化合物に関しても、まず、細胞培養アッセイ、あるいはマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、またはサルなどの動物モデルのいずれかにおいて、療法的有効用量を概算することも可能である。動物モデルを用いて、適切な濃度範囲および投与経路を決定することもまた、可能である。次いで、こうした情報を用いて、ヒトにおける投与に有用な用量および経路を決定することも可能である。
【0098】
治療が必要な被験体に関する要因を考慮して、正確な投薬量が決定されるであろう。投薬量および投与を調整して、十分なレベルの活性化合物を提供するか、または所望の効果を維持する。考慮に入れることが可能な要因には、炎症状態の重症度、状態が急性であるかまたは慢性であるか、被験体の全身健康状態、被験体の年齢、体重、および性別、投与の時間および頻度、薬剤の併用(単数または複数)、反応感度、ならびに療法に対する反応が含まれる。特定の配合物の半減期およびクリアランス速度に応じて、長期作用薬剤組成物を、3〜4日ごと、毎週、または1週おきに投与することも可能である。
【0099】
投薬頻度は、用いる配合物中の療法的アンタゴニスト分子の薬力学的パラメーターに応じるであろう。典型的には、投薬型が所望の効果を達成するにいたるまで、組成物を投与する。したがって、組成物を単一用量として、またはある期間に渡る多数の用量として(同じまたは異なる濃度/投薬量で)、あるいは連続注入として、投与することも可能である。適切な投薬型のさらなる改良が日常的に行われる。適切な用量−反応データを用いることを通じて、適切な投薬型を確かめることも可能である。さらに、組成物を予防的に投与してもよい。
【0100】
薬剤組成物の投与経路は、既知の方法にしたがい、例えば経口であるか、静脈内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋内、眼内、動脈内、門脈内、病巣内経路、髄内、鞘内、心室内、経皮、皮下、腹腔内による注射を通じるか、鼻内、腸内、局所、舌下、尿道、膣、または直腸手段であるか、持続放出系によるか、あるいは移植装置による。所望の場合、ボーラス注射によって、または注入によって連続して、あるいは移植装置によって、組成物を投与することも可能である。
【0101】
あるいはまたはさらに、所望の分子が吸収されているかまたは被包されている、膜、スポンジ、または別の適切な材料の移植を介して、組成物を局所投与することも可能である。移植装置を用いる場合、装置を適切な組織または臓器いずれかに移植することも可能であり、そして所望の分子の送達は、分散、時限放出ボーラス、または連続投与を介することも可能である。
【0102】
いくつかの場合、本明細書記載のものなどの、ポリペプチドを発現させ、そして分泌させる方法を用いて、遺伝子操作されている特定の細胞を移植することによって、本発明のアンタゴニストを送達することも可能である。こうした細胞は、動物またはヒト細胞であることも可能であるし、そして自己、異種(heterologousまたはxenogeneic)であることも可能である。場合によって、細胞を不死化してもよい。免疫学的応答の可能性を減少させるため、細胞を被包して、周囲組織への浸潤を回避することも可能である。被包材料は、典型的には、生体適合性の半浸透性ポリマー封入体(enclosures)または膜であって、タンパク質産物(単数または複数)の放出を可能にするが、患者免疫系による、または周囲組織由来の他の有害な因子による、細胞の破壊を防止するものである。
【0103】
本発明の療法アンタゴニストを含有する薬剤組成物を、線維性障害を患う被験体に投与して、被験体における線維化を防止するかまたは減少させる。線維性障害には、局所および全身性強皮症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、慢性B型またはC型肝炎から生じる線維症、放射線誘導性線維症、および創傷治癒から生じる線維症が含まれる。
【0104】
本発明を記載してきたが、以下の実施例を、例示の目的で提供し、そしてこれは限定を目的とはしない。
【実施例】
【0105】
実施例
以下のプロトコルにしたがって、ネズミTSLP(R&D Systems)を15匹の8週齢Balb/c雌マウス(Charles River)に投与した。ネズミを各5匹の3群に分けた。第1群には、週3回、1週間注射し(総数3回の注射);第2群には、週3回、2週間注射し(総数6回の注射)、そして第3群には、週3回、6週間注射した(総数18回の注射)。マウスには、100μlのPBS中、10μgのTSLPを左わき腹に、そして対照として100μlのPBSを右わき腹に、皮内注射した。最後の注射の72時間後、動物を麻酔し、末端採血を行い、そしてさらなる分析のため、血清を単離した。皮膚を採取し、ホルマリン中で固定し、そして病理学的評価のため、H&E(ヘマトキシリンおよびエオジン)染色用のスライドを作製した。
【0106】
組織病理学的検査によって、muTSLP皮内注射の1または2週間後、マウスの皮膚が、皮下組織内に単核細胞および好酸球の浸潤を含有し、皮膚体幹筋(cutaneous trunci muscle)およびその上の脂肪内に広がっていると決定された。TSLPで処置した部位はまた、皮膚において、穏やかな浮腫および最低限から中程度の上皮過形成も示した。対照的に、PBSを注射した皮膚の切片は、注射部位に沿って、最小限の単核細胞および好酸球浸潤しか示さなかった。皮膚病片は、多病巣から局所拡大的になる傾向があった。病変重症度は、処置期間が増加するにつれて増加した。しかし、注射6週間後、TSLPを注射した皮膚は、フレーク状態(flakiness)または病変を発展させる徴候をまったく示さなかった。
【0107】
コラーゲンを緑に染色するMassonの三色染色剤で皮膚切片を染色した。染色によって、2週間の時点で、コラーゲンが、PBS処置した皮膚と対比して、TSLP処置した皮膚に沈着し始めたことが示された。このコラーゲン沈着は、1週間の時点では見られなかったが、2週間および6週間の時点で現れた。
【0108】
組織病理は、muTSLPを6週間皮内投与した後、皮下組織が、単核細胞および好酸球の拡散した中程度から重度の浸潤を含有し;真皮が、マスト細胞、好酸球および単核細胞を含有し、そして上皮が穏やかに肥厚したことを示した。PBSを注射された皮膚は、真皮内の単核細胞および好酸球の拡散した浸潤しか示さず、これはおそらく、全身性のmuTSLPまたは反復注射に対する非特異的反応によって引き起こされたものであろう。
【0109】
6週間のTSLP処置によって、線維芽細胞増殖およびコラーゲン沈着によって特徴付けられる、皮下組織内の中程度の線維化が生じた。この観察は、三色染色によって確認された。線維芽細胞増殖またはコラーゲン沈着のいずれも、PBSで処置した皮下組織には見られなかった。6週で採取した試料の染色によって、PBS試験した皮膚の真皮においてマスト細胞がまばらな集団であったのに比較して、炎症を起こしたmuTSLP注射真皮内には増加した数のマスト細胞があることが示された。
【0110】
週3回の注射後、第1週、第2週、および第6週のTSLP処置マウス皮膚に関する病理スコアを、第6週のPBS処置マウス皮膚と比較して、以下に示す表2〜5に要約する。
【0111】
【表2】

表2:1週間のTSLP処置
【0112】
【表3】

表3:2週間のTSLP処置
【0113】
【表4】

表4:6週間のTSLP処置
【0114】
【表5】

表5:6週間のPBS対照
コードおよび記号
0=知見なし
1=最小限
2=穏やか
3=中程度
4=顕著
=細胞炎症構成要素スコアを除く(好中球、単核細胞、好酸球)。
【0115】
†=皮下組織における混合細胞浸潤および浮腫
これらの結果は、マウスの皮膚に精製TSLPを注射すると、早ければ注射後2週間で、上皮下線維芽細胞集積およびコラーゲン沈着が導かれることを立証する。この反応は、6週間の時間経過に渡って増加し、そして観察される皮膚の肥厚、浮腫、ならびに表皮、真皮および皮下組織における有意な細胞集積を伴った。この応答は、線維性疾患の促進におけるTSLPの関与を立証する。
【0116】
追加実験において、以下のプロトコルにしたがって、8週齢のBalb/c雌マウス(Charles Rever)の5群を処置した。各群は5匹のマウスを含有した。群には、上述のように、総体積100μlを、背中の別個の部分に皮内注射した。第1群には、背中の別個の部分に、10μgのMSA(マウス血清アルブミン、陰性対照)、10μgのTSLP、およびPBSの1回の注射を、1週間(総数1回の注射)投与した。第2群には、背中の別個の部分に、10μgのMSA、10μgのTSLP、およびPBSを、週1回、2週間(総数2回の注射)注射した。第3群には、背中の別個の部分に、10μgのMSA、10μgのTSLP、およびPBSを、週3回、2週間(総数6回の注射)注射した。第4群には、背中の別個の部分に、1μgのMSA、1μgのTSLP、およびPBSを、週3回、2週間(総数6回の注射)注射した。第5群には、背中の別個の部分に0.1μgのMSA、0.1μgのTSLP、およびPBSを、週3回、2週間(総数6回の注射)注射した。最後の注射の72時間後、各群の動物を屠殺し、皮膚を採取し、ホルマリン中で固定し、そして病理学的評価のため、H&E染色用のスライドを作製した。皮膚試料由来の表皮下線維化の徴候を、1〜4のスケールでスコア付けした。皮膚切片の表皮下領域における線維芽細胞集積に基づいて、線維化を視覚的にスコア付けした。結果を図1および2に示す。図1に見られるように、TSLPの1週間(図1A、第1群)、または2週間(図1B、第2群)の単回毎週投与は、線維化の徴候を生じなかった。図2Aに見られるように、週3回、2週間、10μgの投薬量のTSLPを投与する(第3群)と、皮膚で見られる最大の度合いの線維化が誘導され、3のスコアが生じた。図2Bに見られるように、1μgの投薬量のTSLPを週3回、2週間投与する(第4群)と、2のスコアが生じ、そして図2Cに示すように、0.1μgの投薬量のTSLPを週3回、2週間投与する(第5群)と、1のスコアが生じた。対照MSA、およびPBSのみでは、第4群のPBSでスコア1の動物が1匹あった(図2C)のを除いて、どの群でもマウス皮膚において線維化のいかなる徴候も誘導されなかった。この第二の実験は、TSLPが、動物において、用量依存的方式で、線維化を誘導することを立証する。
【0117】
本発明は、本明細書に記載する特定の態様によって、範囲を限定されるものではなく、これらの態様は、本発明の個々の側面の単一の例示として意図され、そして機能的に同等な方法および構成要素が、本発明の範囲内にある。実際、本明細書に示し、そして記載したものに加えて、当業者には、前述の説明および付随する図から、本発明の多様な修飾が明らかになるであろう。こうした修飾は、付随する請求項の範囲内に属すると意図される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1Aおよび1B、ならびに図2A、2B、および2Cは、多様な投薬量のTSLPおよび陰性対照MSA(マウス血清アルブミン)を、5群のBalb/cマウスに、週1回、1週間(図1A、第1群)、週1回、2週間(図1B、第2群);そして図2A(第3群)、2B(第4群)、および2C(第5群)では週3回、2週間、皮内注射した結果を示す。図1A(第1群)は、1週間の10μgのTSLP;MSAのみ;およびPBSのみの単回注射からは表皮下の線維化が誘導されないことを示す。図1B(第2群)は、10μgのTSLP;MSAのみ;およびPBSのみの各々2週間の単回注射(総数2回の注射)から誘導される、表皮下の線維化がないことを示す。
【図2】図2A(第3群)は、週3回、2週間注射された際の10μgのTSLPに関して、レベル3にスコア付けされる表皮下線維化が見られるが、MSAのみ、およびPBSのみでは線維化がないことを示す。図2B(第4群)は、週3回、2週間注射された際の1μgのTSLPに関して、レベル2にスコア付けされる線維化が見られるが、PBSのみの1匹の動物がレベル1の線維化を示したことを除いて、MSAのみ、およびPBSのみでは線維化がないことを示す。図2C(第5群)は、週3回、2週間注射された際の0.1μgのTSLPに関して、レベル1にスコア付けされる線維化が見られるが、MSAのみ、およびPBSのみでは線維化がないことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維性障害を患う被験体において、線維化を減少させるかまたは防止する方法であって、被験体に療法的有効量の胸腺間質リンホポエチン・アンタゴニストを投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
アンタゴニストが胸腺間質リンホポエチン結合剤である、請求項1の方法。
【請求項3】
剤が、アンタゴニスト性抗体、ペプチドまたはポリペプチド結合剤、可溶性胸腺間質リンホポエチン受容体、可溶性IL−7受容体α/胸腺間質リンホポエチン・ヘテロ二量体受容体、あるいは小分子アンタゴニストからなる群より選択され、胸腺間質リンホポエチンに結合する、請求項2の方法。
【請求項4】
アンタゴニスト抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、または抗体断片からなる群より選択される、請求項3の方法。
【請求項5】
ペプチドまたはポリペプチド結合剤、可溶性受容体または可溶性ヘテロ二量体受容体が、Fcドメインをさらに含む、請求項3の方法。
【請求項6】
アンタゴニストが胸腺間質リンホポエチン受容体アンタゴニストである、請求項1の方法。
【請求項7】
アンタゴニストが、アンタゴニスト性抗体、可溶性リガンド、および小分子からなる群より選択され、胸腺間質リンホポエチン受容体に結合する、請求項6の方法。
【請求項8】
抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、または抗体断片からなる群より選択される、請求項7の方法。
【請求項9】
可溶性リガンドがFcドメインをさらに含む、請求項7の方法。
【請求項10】
アンタゴニストが、アンタゴニスト性抗体、可溶性リガンド、および小分子からなる群より選択され、IL−7受容体α/胸腺間質リンホポエチン受容体ヘテロ二量体に結合する、請求項6の方法。
【請求項11】
抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、または抗体断片からなる群より選択される、請求項10の方法。
【請求項12】
可溶性リガンドがFcドメインをさらに含む、請求項10の方法。
【請求項13】
線維性障害が、強皮症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、慢性B型またはC型肝炎から生じる線維症、放射線誘導性線維症、および創傷治癒から生じる線維症からなる群より選択される、請求項1の方法。
【請求項14】
線維化促進性(profibrotic)サイトカインに対する第二のアンタゴニストを投与することをさらに含み、該サイトカインが、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−13(IL−13)、顆粒球/マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、結合組織増殖因子(CTGF)、インターロイキン−6(IL−6)、オンコスタチンM(OSM)、血小板由来増殖因子(PDGF)、単球走化性タンパク質1(CCL2/MCP−1)、ならびに肺および活性化制御ケモカイン(CCL18/PARC)より選択される、請求項1の方法。
【請求項15】
線維性障害を患う被験体において、線維化を減少させるかまたは防止するための薬剤組成物であって、薬学的に許容しうるキャリアーと混合された、療法的有効量の胸腺間質リンホポエチン・アンタゴニストを含む、前記組成物。
【請求項16】
アンタゴニストが胸腺間質リンホポエチン結合剤である、請求項15の組成物。
【請求項17】
剤が、アンタゴニスト性抗体、ペプチドまたはポリペプチド結合剤、可溶性胸腺間質リンホポエチン受容体、可溶性IL−7受容体α/胸腺間質リンホポエチン・ヘテロ二量体受容体、および小分子アンタゴニストからなる群より選択され、胸腺間質リンホポエチンに結合する、請求項16の組成物。
【請求項18】
アンタゴニスト抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、または抗体断片からなる群より選択される、請求項17の組成物。
【請求項19】
可溶性受容体がFcドメインをさらに含む、請求項17の組成物。
【請求項20】
アンタゴニストが胸腺間質リンホポエチン受容体アンタゴニストである、請求項15の組成物。
【請求項21】
アンタゴニストが、アンタゴニスト性抗体、可溶性リガンド、および小分子からなる群より選択され、胸腺間質リンホポエチン受容体に結合する、請求項20の組成物。
【請求項22】
アンタゴニスト性抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、または抗体断片からなる群より選択される、請求項21の組成物。
【請求項23】
可溶性リガンドがFcドメインをさらに含む、請求項21の組成物。
【請求項24】
アンタゴニストが、アンタゴニスト性抗体、可溶性リガンド、および小分子からなる群より選択され、IL−7受容体α/胸腺間質リンホポエチン受容体ヘテロ二量体に結合する、請求項20の組成物。
【請求項25】
アンタゴニスト性抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、または抗体断片からなる群より選択される、請求項24の組成物。
【請求項26】
可溶性リガンドがFcドメインをさらに含む、請求項24の組成物。
【請求項27】
線維性障害が、強皮症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、慢性B型またはC型肝炎感染から生じる肝線維症、放射線誘導性線維症、および創傷治癒から生じる線維症からなる群より選択される、請求項15の組成物。
【請求項28】
線維化促進性サイトカインに対する第二のアンタゴニストをさらに含み、該サイトカインが、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−9(IL−9)、インターロイキン−13(IL−13)、顆粒球/マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、結合組織増殖因子(CTGF)、インターロイキン−6(IL−6)、オンコスタチンM(OSM)、血小板由来増殖因子(PDGF)、単球走化性タンパク質1(CCL2/MCP−1)、ならびに肺および活性化制御ケモカイン(CCL18/PARC)より選択される、請求項15の組成物。
【請求項29】
組織中の線維芽細胞集積およびコラーゲン沈着を調節する方法であって、組織中の胸腺間質リンホポエチンの量または活性を調節することを含む、前記方法。
【請求項30】
胸腺間質リンホポエチンまたは胸腺間質リンホポエチン受容体の量が減少する、請求項29の方法。
【請求項31】
胸腺間質リンホポエチンまたは胸腺間質リンホポエチン受容体の量が、アンチセンス・オリゴヌクレオチドまたは干渉RNAの使用を通じて減少する、請求項30の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−537727(P2008−537727A)
【公表日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554182(P2007−554182)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/003519
【国際公開番号】WO2006/083947
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(500203709)アムジェン インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】