説明

線路ポイントの切替検査装置

【課題】列車が走行する線路の分岐点に設けられたポイントにおける回転動作部のトルク値測定検査を容易に行うことができる線路ポイントの切替検査装置を提供する。
【解決手段】トルクレンチ10が固定されると共に回転軸部5を回転自在に保持する保持フレーム6を備え、回転軸部5の一端に設けたはすばギヤ17とこれに歯合されたウォームギヤ18とをギヤボックス15に収容する。ウォームギヤ18に連結したハンドル部20を回転すると、ウォームギヤ18とギヤボックス15との減速比により発生する増幅された力によって、回転軸部5に係合されたポイント2の回転動作部4を回転できるから操作性に優れる。また、回転動作部4のトルク値を測定するとき、トルクレンチ自体は回転されないから、作業者はトルクレンチ10の表示部12に表示される回転動作部4のトルク値を容易に把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の走行する線路の分岐点に設けられているポイントが正常に動作可能か否かを検査するための線路ポイントの切替検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
列車が走行するための進路を切り替えるため、線路が交差する分岐点にはポイントが設けられている。このような列車を所望する進路へ案内するためのポイントは、過去においては、係員が列車の行き先を確認して手動でポイントの切替操作行ってきた時代があり、また、近年では、人員によるポイントの誤操作の防止や合理化の観点から、ポイントの切替は遠隔操作によって自動的に動作されることが一般化されている。ポイントの切替動作は、一般的にモータを駆動源として行われているのだが、それにより動作される動作部が正常に動作可能か否かを定期的に点検する必要があり、点検方法としては、通常、回転可能に設けられた回転動作部が規定範囲のトルク値で正常に動作するか否かを、作業者が測定用トルクレンチを使用して手動で測定を行っている。
【0003】
上記従来技術に関連するもとして、特許文献1には、列車が走行するための進路を自動制御する列車自動進路制御装置において、現場設備として線路ポイント切替装置について記載されており、また、特許文献2には、出力されてきた制御信号に従って、ポイント内のトングレールを所定の位置に駆動する列車の制御システムが開示されている。また、特許文献3には、測定したトルク値を表示部にデジタル表示することができる棒状のトルクレンチが開示されており、さらに非特許文献1等には、規定のトルク値でボルトやナットを締め付けるための作業用トルクレンチ(シグナル式トルクレンチ)や既に締め付けられたナットなどの回転動作部のトルク値を測定することを目的とする測定用トルクレンチ(直読式トルクレンチ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−95111号公報
【特許文献2】特開2000−335415号公報
【特許文献3】特開2007−111796号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://tohnichi.jp/product/tw.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したポイントの回転動作部の測定を、特許文献3等に開示されているような一般的な形態である棒状のトルクレンチのみにより行う場合には、従来以下の課題があった。
【0007】
先ず第一には、ナット状の回転動作部を、締め付や測定のために回転させる際には、棒状のトルクレンチを用いて回転動作部を回転させるのに伴って、作業者の視線に対してトルクレンチに設けられた表示部の向きが変化するため、作業者は、表示部に表示されたトルク値を正確に読み取り辛くなってしまうという問題があった。
【0008】
第二には、地面に設置されているポイントに構成された回転動作部は、通常その軸線方向が鉛直方向になっており、軸線方向が鉛直方向の回転動作部を、一般的な棒状のトルクレンチを用いて回転させるとなると、そのトルクレンチ先端側のソケット部を中心として、その反対側に位置するトルクレンチ後端側のハンドル部を水平方向に回転しなければならないため、トルクレンチで回転動作部の締め付けや測定のために回転させるに際しては、作業者の自らに近づく手前方向に腕を屈曲させたり、作業者から離れる方向に腕を直線状に伸張させたりして、トルクレンチを水平方向に回転操作しなければならない場合があることから、トルクレンチをスムーズに回転させながらトルク値を正確に測定するには、熟練者であればともかく、例えば、トルクレンチの使用に不慣れな初心者や、或いは作業者の操作癖なども影響して、測定しようとするトルク値にばらつきが生じる場合があった。
【0009】
さらに第三には、棒状のトルクレンチのみでトルク値を測定する際には、前述したトルクレンチ先端のソケット部が支点となりトルクレンチ後端側のハンドル部が力点になるわけではあるが、例えば比較的大きなトルク値を測定する際には、大きな腕力が必要になることから、一般的な作業者においては、支点と力点の距離を長くとった長尺なトルクレンチを使用しなければならず、そのような長尺なトルクレンチでトルク値を測定するとなると、益々操作性が悪くなりトルク値の測定結果に大きな誤差が発生してしまうことがあった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、人為的な作業で行われる、列車が走行する線路の分岐点に設けられたポイントなどにおける回転動作部のトルク値の測定を、高い精度であって且つ比較的大きな力を必要とせずに容易に行うことを可能にし、点検作業性を向上させた線路ポイントの切替検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る線路ポイントの切替検査装置の発明は、
列車が走行する線路の分岐点に設置されたポイントに備えられる回転動作部のトルク値を表示部にて表示するトルクレンチを備えた切替検査装置であって、
前記トルクレンチが固定された保持フレームと、
該保持フレームに回転自在に保持されると共に前記回転動作部に係合される回転軸部と、
該回転軸部に設けた従動ギヤと、
該従動ギヤと歯合された主動ギヤと、
該主動ギヤと前記従動ギヤとが収容されたギヤボックスと、
前記主動ギヤを回転させるために該主動ギヤの一端に連結されるハンドル部と、を備え、
該主動ギヤの一端に連結されたハンドル部の操作により発生される駆動力を、前記主動ギヤ、前記従動ギヤの順に伝達させて、前記回転軸部の先端側を係合させた前記回転動作部のトルク値を測定するとき、
前記回転軸部と共に回転される前記ギヤボックスに設けたトルクレンチ用係合部、又は前記回転軸部に設けたトルクレンチ用係合部に対し、トルクレンチの一端に設けられたソケット部を係合させた状態で、前記保持フレームに回転不能に固定された前記トルクレンチのその表示部に前記回転動作部のトルク値を表示させたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る線路ポイントの切替検査装置の発明は、請求項1において、
前記ハンドル部で回転される前記主動ギヤの駆動力は、該主動ギヤと該主動ギヤに歯合された前記従動ギヤとによって、前記回転軸部に伝達される駆動力を増幅させることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る線路ポイントの切替検査装置の発明は、請求項1又は2において、
前記主動ギヤをウォームギヤとしたときには前記従動ギヤをはすばギヤに、前記主動ギヤをはすばギヤとしたときには前記従動ギヤをウォームギヤにすることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る線路ポイントの切替検査装置の発明は、請求項1〜3の何れか1項において、
前記主動ギヤと前記従動ギヤとの減速比を、10乃至16:1にしたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る線路ポイントの切替検査装置の発明は、請求項1〜4の何れか1項において、
前記主動ギヤの一端に前記ハンドル部を着脱自在に係合させて連結させたことを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る線路ポイントの切替検査装置の発明は、請求項1〜5の何れか1項において、
前記回転軸部に前記ギヤボックスを保持させ、該ギヤボックスから突出させた前記回転軸部の基端部側に、該回転軸部の直径よりも径大であって前記回転軸部と同心状に回転体を固着したことを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る線路ポイントの切替検査装置の発明は、請求項1〜6の何れか1項において、
前記トルクレンチ係合部を設けたギヤボックスには、その外側にコ字型のカバーフレームが一体に取り付けられて構成されており、該ギヤボックスに設けられたトルクレンチ用係合部を、前記回転軸部と同心状になるようにして前記カバーフレームに形成したことを特徴とする。
【0018】
請求項8に係る線路ポイントの切替検査装置の発明は、請求項7において、
前記ギヤボックスの端面と前記カバーフレームとの間に空間部を設け、該空間部に前記回転体を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本線路ポイントの切替検査装置の発明によれば、列車が走行する線路の分岐点に設置されたポイントの回転動作部を回転させながら行うトルク値の測定検査を行うに際し、主動ギヤと従動ギヤの減速比を10乃至16:1(より具体的には、13:1)にすることにより、作業者は回転動作部の回転を増幅された力により容易に行うことができ、しかも、回転動作部を回転させながらトルク値の測定検査を行っているときには、トルクレンチ(の表示部)は動かぬよう静止させた状態で測定することができる。よって、トルク値を測定する際の操作性及びトルク値が表示される表示部の視認性の向上を図ることができ、高精度且つ容易にトルク値の測定検査を行うことが可能となる。そして、ひいてはポイントの故障に伴う列車事故を防止することが可能となる。
【0020】
さらに、ギヤボックスに収容される主動ギヤと従動ギヤは、ウォームギヤとはすば歯車を組み合わせたものであり、これらの組み合わせは、他の歯車の歯合に比べてバックラッシュを小さくできる特性があることから、これらから駆動力が伝達され回転される回転動作部を、スムーズに回転動作させながらトルク値の検査を行うことができるので、測定されるトルク値の誤差を可及的に抑えることができる。
【0021】
さらに、切替検査装置からハンドル部を着脱することができるので、作業者が、列車の走行する線路の分岐点に設置されたポイントへ切替検査装置を持ち運ぶとき、ハンドル部が邪魔にならないように簡単に取り外してコンパクトにまとめることができるので、移送手段(自動車や自転車等)により近づくことが困難な線路のポイントまで、容易に歩くなどして持ち運ぶことができる。
【0022】
さらに、回転軸部の直径よりも径大であって、回転軸部と同心状に回転体を固着していることから、回転動作部のトルク値の検査を行うために、ハンドル部を回転操作しているとき、作業者は、比較的大きくて容易に視認することが可能な表示部を目視することで、回転軸部の係合部を係合させたポイントの回転動作部が所定の正しい方向に回転されているかを一目して簡単に把握することができる。
【0023】
さらに、主動ギヤと従動ギヤを収容するギヤボックスには、その外側にコ字型のカバーフレームが一体に取り付けられて構成されており、ギヤボックスに設けられたトルクレンチ用係合部を、回転軸部と同心状になるようにしてカバーフレームに形成している。これにより、トルクレンチの固定された保持フレームを回転不能に保持した状態において、回転動作部のトルク値を測定するに際し、ハンドル部の回転操作をすると、その駆動力が、主動ギヤ、従動ギヤに伝達され、従動ギヤを構成する回転軸部が回転されることで、それに係合した回転動作部が回転される。そのとき、回転軸部の回転に従い、ギヤボックスに設けたカバーフレームが捻られ、回転軸部と同心状に設けられたトルクレンチ係合部に係合したトルクレンチのソケット部が回転されることにより、トルク値の測定が行われる。よって、従来のようにトルクレンチ自体を回転させずに静止させた状態でトルク値の測定を行うことが可能であり、表示部に表示された測定中のトルク値を容易に把握することができる。
【0024】
さらに、回転動作部のトルク値の測定を行う際、回転方向を容易に認識できるようにした回転体が、ギヤボックスの端面とカバーフレームとの間の空間部で回転されるが、ギヤボックスとカバーフレームとの間に回転体が配置されているため、トルク値の測定中に作業者の手などが回転体に触れてしまい怪我を負ったり或いは回転の妨げになることを防止することができる。
【0025】
さらに、ウォームギヤとはすばギヤはギヤボックス内に収容されているので、トルク値の測定中に作業者の手などが前記ギヤに触れてしまい怪我を負ったりすることも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1における線路ポイントの回転動作部を回転するための切替検査装置を示す斜視図である。
【図2】同上、切替検査装置を示す正面図である。
【図3】同上、切替検査装置を示す左側面図である。
【図4】同上、切替検査装置を正面側から視た状態を示す縦断面図である。
【図5】同上、切替検査装置を側方から視た状態を示す縦断面図である。
【図6】同上、切替検査装置を示すA−A線断面図である。
【図7】同上、切替検査装置を示すB−B線断面図である。
【図8】同上、列車が走行する線路の分岐点に設置されたポイントを示す概略説明図である。
【図9】実施例2における切替検査装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図1〜図9により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施形態において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【実施例1】
【0028】
図1に示す本発明の一例の切替検査装置1は、列車が走行する線路が交差する分岐点に設置されたポイント(転轍機)が正常に動作するか否かを点検する際に用いられるものであり、より詳しくは、図8の概略説明図に示すように、ポイント2の筐体3に備えられた回転動作部4を回転させることでこの回転動作部4が規定のトルク値で動作するか否かを測定し点検を行うためのものである。なお、回転動作部4の通常の動作においては、モータ等の電動動力源により駆動されるものであり、これによりポイントに設置されたレール(トングレール)の向きの切り替えが行われる。
【0029】
図1〜図7に示すように切替検査装置1には、軸心方向が鉛直方向で回転方向が水平方向である凹状の回転動作部4に対して先端側が係合される回転軸部5を備え、この回転軸部5は保持フレーム6に設けられた孔部7に挿入され回転自在に保持されている。
【0030】
保持フレーム6の上部には、螺子8などからなる固着手段9により棒状のトルクレンチ10が一体的に固定されており、トルクレンチ10の先端側にはソケット部11が設けられ、その反対側の基端側にはソケット部11の回転に伴い測定されたトルク値を表示する表示部12が設けられている。なお、このトルクレンチ単体は、市販されている棒状のものを採用したものであることから、詳細な構造については周知なため説明を省略する。
【0031】
回転動作部4に係合される係合部13が設けられた回転軸部5、ソケット部11、及び、ソケット部11が係合される後述するギヤボックス15のトルクレンチ用係合部16は、図2〜図5に示すように同心状に配設され、保持フレーム6の孔部7とトルクレンチ10のソケット部11との間に配設されたギヤボックス15には、回転軸部5の基端側に形成された従動ギヤとしてのはすばギヤ17と、このはすばギヤ17に歯合された主動ギヤとしてのウォームギヤ18とが回転自在に軸支され収容されている。なお、ウォームギヤ18とはすばギヤ17との減速比は、10乃至16:1(より具体的には13対1)の減速比となっており、ウォームギヤ18に入力された駆動力がはすばギヤ17から出力されるときには、回転駆動力が増幅されるようになっている。
【0032】
ウォームギヤ18の一方の端部には、図5に示すように係合凹部19が形成されており、この係合凹部19に対して着脱自在な手動のハンドル部20の先端部が係合され、これにより、作業者はハンドル部20を手動で回転操作することで梃子の作用によりウォームギヤ18を簡単に回転することができる。
【0033】
また、前述したギヤボックス15は、回転軸部5の回転に従い同様に回転されるよう回転軸部5に対して一体に固定されており、ギヤボックス15の上部外側にはコ字型のカバーフレーム21が一体に取り付けられて構成されている。そして、ギヤボックス15のカバーフレーム21に形成されたトルクレンチ用係合部16にトルクレンチ10のソケット部11が係合されていることで、回転軸部5が回転されるとその駆動力は、ギヤボックス15のカバーフレーム21に形成したトルクレンチ用係合部16を介してソケット部11に伝達され、回転軸部5の係合部13に係合されているポイント2の回動動作部4のトルク値は、トルクレンチ10の表示部12に表示されることになる。
【0034】
ギヤボックス15の上部の端面23とカバーフレーム21との間には、図3等に示すように、空間部24が設けられており、この空間部24には、ギヤボックス15の上方に突出された回転軸部5の基端部側に、回転軸部5よりも径大であって周方向に等間隔の目盛りの設けられた回転体25が回転軸部と同心状になるようにして固着されており、この回転体25の目盛りを目視することで、回転軸部5の係合部13に係合された回転動作部4が正逆どちらの方向に回転されるかや、その回転角度がどれくらいなのかを一瞥して容易に確認できるようになっている。
【0035】
次に、切替検査装置1の動作及び切替検査装置1を用いてポイント2の回転動作部4のトルク値を測定する検査方法について以下に説明する。
【0036】
先ず、作業者が線路の分岐点に設置されたポイント2まで切替検査装置1を持ち運び、図6に示す蓋体26を開いて、ここから筐体3の内部に設けられた回転動作部4へ回転軸部5の先端に設けられた係合部13を挿通して係合させると、切替検査装置1は起立状態で保持される。この状態にて、ギヤボックス15から外側に露出されたウォームギヤ18の端部に形成された係合凹部19にハンドル部20の先端を連結しセットする。
【0037】
続いて、作業者がトルクレンチ10の固定されている保持フレーム6を、一方の手などで動かぬよう保持した状態で、他方の手でハンドル部20を回転させると、それに伴いウォームギヤ18が回転されてゆく。
【0038】
ウォームギヤ18が回転されると、これに歯合されたはすばギヤ17が回転され、はすばギヤ17を構成する回転軸部5が回転される。そして、ウォームギヤ18、はすばギヤ17、さらにはハンドル部20の梃子の作用も加わり、これらの増幅された駆動力により、切替検査装置1の係合部13に係合されたポイント2の回転動作部4が回転されてゆく。
【0039】
回転動作部4を回転させる回転駆動力は、回転軸部5の回転に伴いギヤボックス15に伝達され、それにより、ギヤボックス15は回転軸部5と共に回転される。すると、ギヤボックス15の上部に構成されたカバーフレーム21が捻られ、このカバーフレーム21に設けたトルクレンチ係合部16に対して係合させたトルクレンチ10のソケット部11が回転されてゆき、トルク値の測定が行われ、そ表示部12には回転動作部4のトルク値が表示される。そして、このトルク値が予め設定した規定値の範囲内であるか否か、つまり正常であるか否かの点検が行われる。
【0040】
以上のように本実施形態の切替検査装置1は、トルクレンチ自体を動くことがないよう静止させた状態(回転不能状態)で、トルクレンチ10においては、ソケット部11のみが回転されることで回転動作部4のトルク値を測定可能にしたものであり、列車が走行する線路の分岐点に設置されたポイント2の回転動作部4を回転させながら行う、トルク値の測定検査を行うに際し、特に、主動ギヤたるウォームギヤ18と従動ギヤたるはすばギヤ17の減速比を10乃至16:1(より詳しくは、13:1)にすることにより、作業者は、回転動作部4の回転を増幅させた力により容易に行うことができる。しかも、回転動作部4を回転させながらトルク値の測定検査を行っているときには、トルクレンチ(の表示部)10を動かぬよう静止させた状態で測定することができる。よって、トルク値を測定する際の操作性及びトルク値が表示される表示部12の視認性の向上を図ることができ、高精度且つ容易にトルク値の測定検査を行うことが可能となり作業性に優れる。そして、ひいてはポイント2の故障に伴う列車事故を防止することが可能となる。
【0041】
さらに、ギヤボックス15に収容される主動ギヤと従動ギヤは、ウォームギヤ18とはすば歯車17を組み合わせたものであり、これらの組み合わせは、他の歯車の歯合に比べてバックラッシュを小さくできる特性があることから、これにより切替検査装置1から回転駆動力が伝達される回転動作部4の動作をスムーズに安定的に行うことができる。よって、ポイント2の回転動作部4のトルク値の検査を行うに際し、測定誤差を抑止し正確に測定することができる。
【0042】
さらに、切替検査装置1からハンドル部20を着脱することができるので、作業者が、列車の走行する線路の分岐点に設置されたポイント2へ切替検査装置1を持ち運ぶとき、ハンドル部20が邪魔にならないように簡単に取り外してコンパクトにまとめることができる。よって、自動車や自転車等の移送手段により近づくことが困難な線路のポイント2まで、切替検査装置1を容易に歩くなどして持ち運ぶことができるから、利便性に優れる。
【0043】
さらに、回転軸部5の直径よりも径大であって、且つ、回転軸部5と同心状になるようにして、目盛りの付された回転体25を回転軸部5に固着していることから、回転動作部4のトルク値の測定検査を行うため、ハンドル部20を回転操作しているとき、作業者は、比較的大きくて容易に視認することが可能な表示部12を目視することで、切替検査装置1の係合部13を係合させたポイント2の回転動作部4が、所定の正しい方向に回転されているかや、どれくらいの角度で回転されたかなどを一目して簡単に把握することができる。
【0044】
さらに、ウォームギヤ18とはすばギヤ17が装着されたギヤボックス15には、その外側にコ字型のカバーフレーム21が一体に取り付けられて構成されており、ギヤボックス15に設けられたトルクレンチ用係合部16は、回転軸部5と同心状になるようにしてギヤボックス15のカバーフレーム21に形成されている。これにより、トルクレンチ10の固定された保持フレーム6を回転不能に保持した状態において、回転動作部4のトルク値を測定するに際し、ハンドル部20の回転操作をすると、その駆動力が、主動ギヤたるウォームギヤ18、従動ギヤたるはすばギヤ17の順に伝達され、はすばギヤ17が形成された回転軸部5が回転されることで、それに係合したポイント2の回転動作部4が回転される。そのとき、回転軸部5の回転に従い、ギヤボックス15に設けたカバーフレーム21が捻られ(回転され)、回転軸部と同心状に設けられたトルクレンチ係合部16に対し係合したトルクレンチ10のソケット部11が回転されることにより、トルク値の測定が行われる。よって、従来のようにトルクレンチ自体を回転させずに静止させた状態でトルク値の測定を行えるので、トルクレンチ10はもちろんのことそれに設けた表示部12が回転移動されることはなく、表示部12に表示された測定中のトルク値を容易に把握することができる。
【0045】
さらに、回転動作部4のトルク値の測定を行う際、回転方向を容易に認識できるようにした回転体25が、ギヤボックス15の端面23とカバーフレーム21との間の空間部24で回転されるが、ギヤボックス15とカバーフレーム21との間に回転体25が配置していることから、トルク値の測定中に作業者の手などが回転体25に触れてしまい、作業者が怪我を負ったり或いは回転体25の回転の妨げになることを防止することができる。
【0046】
さらに、ウォームギヤ18とはすばギヤ17はギヤボックス内に収容されているので、トルク値の測定中に作業者の手などが前記ギヤ17,18に触れてしまい怪我を負ったりすることも防止することができる。
【0047】
以上、本実施形態の一例を詳述したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。なお、本実施形態においては、主動ギヤとしてはウォームギヤ18を、従動ギヤとしてははすばギヤ17を採用したものであるが、従動ギヤから出力される駆動力が増幅されるのであれば、主動ギヤとしてはすばギヤ17を、従動ギヤとしてはウォームギヤ18を採用し、入れ替えするなどしてもよく、適宜選定実施してもよい。
【実施例2】
【0048】
図9は実施例2における切替検査装置1を示したものであり、実施例2におけるトルクレンチ用係合部16は、回転軸部5の上端部に直接設けられていて、実施例1のようにカバーフレーム21は構成されていない。その点以外は前記実施例1と実質的に同様の構成であるため、同一部分には同一符号を付しその詳細な説明を省略する。本実施例2においては、カバーフレーム21が存在しないため、目盛りの付された回転体25の全体が外部に露出することになるものの、表示部12の視認性を向上でき、さらに部品点数を少なくすることができるので、軽量化に伴う携帯性の向上とコストの低減を図った切替検査装置1を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように本発明に係わる切替検査装置1は、列車が走行する線路の分岐点に設置されたポイント2の回転動作部4のトルク値の測定検査ができるほか、それ以外にもトルク値測定装置として、産業機器などに有するあらゆる回転動作部の測定検査にも有効に活用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 切替検査装置
2 ポイント
4 回転動作部
5 回転軸部
6 保持フレーム
10 トルクレンチ
11 ソケット部
12 表示部
15 ギヤボックス
16 トルクレンチ用係合部
17 はすばギヤ(従動ギヤ)
18 ウォームギヤ(主動ギヤ)
20 ハンドル部
21 カバーフレーム
23 端面
24 空間部
25 回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車が走行する線路の分岐点に設置されたポイントに備えられる回転動作部のトルク値を表示部にて表示するトルクレンチを備えた切替検査装置であって、
前記トルクレンチが固定された保持フレームと、
該保持フレームに回転自在に保持されると共に前記回転動作部に係合される回転軸部と、
該回転軸部に設けた従動ギヤと、
該従動ギヤと歯合された主動ギヤと、
該主動ギヤと前記従動ギヤとが収容されたギヤボックスと、
前記主動ギヤを回転させるために該主動ギヤの一端に連結されるハンドル部と、を備え、
該主動ギヤの一端に連結されたハンドル部の操作により発生される駆動力を、前記主動ギヤ、前記従動ギヤの順に伝達させて、前記回転軸部の先端側を係合させた前記回転動作部のトルク値を測定するとき、
前記回転軸部と共に回転される前記ギヤボックスに設けたトルクレンチ用係合部、又は前記回転軸部に設けたトルクレンチ用係合部に対し、トルクレンチの一端に設けられたソケット部を係合させた状態で、前記保持フレームに回転不能に固定された前記トルクレンチのその表示部に前記回転動作部のトルク値を表示させたことを特徴とする線路ポイントの切替検査装置。
【請求項2】
前記ハンドル部で回転される前記主動ギヤの駆動力は、該主動ギヤと該主動ギヤに歯合された前記従動ギヤとによって、前記回転軸部に伝達される駆動力を増幅させることを特徴とする請求項1記載の線路ポイントの切替検査装置。
【請求項3】
前記主動ギヤをウォームギヤとしたときには前記従動ギヤをはすばギヤに、前記主動ギヤをはすばギヤとしたときには前記従動ギヤをウォームギヤにすることを特徴とする請求項1又は2に記載の線路ポイントの切替検査装置。
【請求項4】
前記主動ギヤと前記従動ギヤとの減速比を、10乃至16:1にしたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の線路ポイントの切替検査装置。
【請求項5】
前記主動ギヤの一端に前記ハンドル部を着脱自在に係合させて連結させたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の線路ポイントの切替検査装置。
【請求項6】
前記回転軸部に前記ギヤボックスを保持させ、該ギヤボックスから突出させた前記回転軸部の基端部側に、該回転軸部の直径よりも径大であって前記回転軸部と同心状に回転体を固着したことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の線路ポイントの切替検査装置。
【請求項7】
前記トルクレンチ係合部を設けたギヤボックスには、その外側にコ字型のカバーフレームが一体に取り付けられて構成されており、該ギヤボックスに設けられたトルクレンチ用係合部を、前記回転軸部と同心状になるようにして前記カバーフレームに形成したことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の線路ポイントの切替検査装置。
【請求項8】
前記ギヤボックスの端面と前記カバーフレームとの間に空間部を設け、該空間部に前記回転体を配置したことを特徴とする請求項7に記載の線路ポイントの切替検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−98698(P2011−98698A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256298(P2009−256298)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(591273292)株式会社徳利 (10)
【出願人】(509310004)新潟北酸株式会社 (2)
【出願人】(399039719)東日本電気エンジニアリング株式会社 (30)
【Fターム(参考)】