説明

線輪部品およびそれを用いたノイズフィルタ

【課題】 不要なノイズを確実に除去する線輪部品を提供する。
【解決手段】 軟磁性コア1の磁路を周回するトロイダルコイル状となるよう、複合導電体2が形成されている。複合導電体2コイルと巻き線7は軟磁性コア1の磁路に沿って互いに逆向きとなるように巻かれている。複合導電体2コイルと巻き線7間には静電容量Cが生じていて、巻き線端部71電位の時間変化と逆になるよう、第1の端子41の電位を制御すれば、複合導電体2コイルと巻き線7間の静電容量Cによる変位電流が流れ、巻き線端部71から巻き線端部72へ流れる電流の変動を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種交流機器における整流回路、雑音防止回路、共振回路、電力変換回路等に用いられる線輪部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁気コアと、磁気コア上の少なくとも一部に設けられた絶縁体と、絶縁体上の少なくとも一部に設けられた導電体と、導電体上に設けられた誘電体と、誘電体を導電体と挟むようにして磁気コアに巻回してなるコイルを備えており、キャパシタを形成する導電体、誘電体及びコイルを互いに密着したことで、製品間におけるばらつきを低減することができ、且つ減衰特性が良好で安定した特性が得られるインダクタンス素子の技術が示されている。
【0003】
また、特許文献2には、磁性材料の固有抵抗が低い磁心と、該磁心と直接導電状態に接続したアース用リードを形成したアース端子を持ち、前記磁心をケース又は絶縁塗料で覆い、その上に巻線ワイヤーが施され、巻線ワイヤーと磁心間の絶縁材料及び空間による分布容量を利用し、高周波成分をアースへ流れる機能及び製品自体の放熱効果機能を持たせたチョークコイルの技術が示されている。更に、アース用リードがチョークコイル本体にセットされており、前記アース用リードと同電位になるように巻線ワイヤーをペーストカーボン等のペースト状の導電材料で被覆して分布容量を調整及び増加させる技術も示されている。
【0004】
また、特許文献3には、絶縁体によりなる基材に形成した溝部に導電性樹脂を埋設して螺旋状に形成したコイルの技術が示されている。なお、導電性樹脂は、低融点金属、金属粉末又は金属繊維と熱可塑性樹脂を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−253643号公報
【特許文献2】特開2004−311866号公報
【特許文献3】特開2001−338812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、軟磁性コア表面の絶縁体上であって、軟磁性コアにおける磁路の外周部に導電体を形成した構成の線輪部品では、巻き線と対向する導電体の面積が充分ではなく、接地電位に到達する巻き線からの変位電流が充分確保できないため、不要なノイズが十分に除去されない場合があるという課題がある。
【0007】
従って本発明は、上記従来技術の課題を解決し、不要なノイズを確実に除去する線輪部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明によれば、電気絶縁性の表面を有する軟磁性コアと、前記軟磁性コアに接して導電性粒子および結合材を含んで構成する複合導電体と、前記軟磁性コアおよび前記複合導電体を被覆する絶縁体を備えた磁気コアと、前記複合導電体と電気的に接続して前記磁気コアの外部まで延在する端子と、前記磁気コアに施す巻き線を備える線輪部品であって、前記複合導電体と前記端子よりなる導電部を有し、前記導電部は、前記巻き線への通電によって生じる前記磁気コア内の磁束の向きに垂直な前記磁気コアの断面において、C字形状を備えることを特徴とする線輪部品が得られる。
【0009】
前記軟磁性コア表面における前記軟磁性コアの磁路に沿って1周する連続した領域以外に複合導電体を形成すれば、複合導電体内部で軟磁性コアの磁路を周回する閉じた導電経路いわゆるショートリングを持たないため、ショートリングによる軟磁性コア内部に生じる磁束の時間変化を阻害することが無く、線輪部品のインダクタンスへ影響を与えない。
【0010】
なお、本発明の前記複合導電体は、前記磁束を周回するコイル状に構成する複合導電体コイルであり、前記複合導電体コイルの両端部は、前記複合導電体と電気的に接続して前記磁気コアの外部まで延在する第1の端子および第2の端子を備えてもよい。
【0011】
上記構成とすることで、複合導電体コイル両端に接続された第1の端子と第2の端子間に生じる軟磁性コア内部の磁束の時間変化に起因する誘導起電力を利用して巻き線に入力されたノイズを効率的に除去することができる。同時に複合導電体コイルは軟磁性コア表面を、隣接する複合導電体コイル間の絶縁性確保に必要なギャップ部を残して被覆することができるため、巻き線上のノイズ電圧に起因する変位電流を最大限受けることができる。なお、複合導電体コイルと巻き線をトランスあるいはコモンモードチョークコイルとして用いることもできる。
【0012】
また、前記軟磁性コアは、導電性の軟磁性体と、前記軟磁性体の表面を被覆する熱可塑性樹脂と軟磁性粉を含む複合磁性体を備え、前記複合磁性体は、前記軟磁性コアよりも体積抵抗率が高い線輪部品であってもよい。
【0013】
導電性の軟磁性体表面は、巻き線との絶縁性を確保し、同時に高い磁気特性を得るために、表面を軟磁性体よりも高い電気抵抗を持つ複合磁性体で被覆する必要があるが、複合磁性体の樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合のような成形途中の硬化が無くなるため、確実に表面を複合磁性体で被覆することができる。
【0014】
さらに、前記軟磁性コアにおける前記複合磁性体の軟磁性体に面する部分を除く表面すなわち軟磁性コア表面は、前記複合磁性体の内部及び軟磁性体に面する表面すなわち軟磁性コア内部よりも軟磁性粉の含有率が低いほうが、複合磁性体表面の絶縁性能が向上するため、望ましい。
【0015】
また、前記複合導電体コイルと前記巻き線が前記軟磁性コアの磁路に沿って巻かれる方向は、互いに逆向きである線輪部品を、巻き線の一端部を入力側、他方の端部を出力側として、前記巻き線の一端部の電位変動と逆になるよう、複合導電体コイルにおける一端部に近接する側の端部の電位が変化するノイズフィルタとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、線輪部品巻き線のノイズを最大限変位電流として接地電位へ逃がすことができる、ノイズ除去性能の高い線輪部品を提供できる。
【0017】
同時に軟磁性コア内部の磁束の時間変化により生じる複合導電体コイル両端の誘導起電力を利用することで、さらにノイズ除去性能を高めた線輪部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す斜視図である。図1(a)は絶縁体を被覆する前の磁気コアを示す図、図1(b)は絶縁体を被覆した後の磁気コアを示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における磁気コアの断面図である。図2(a)は図1(a)におけるA−A断面図、図2(b)は図1(b)におけるB−B断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における軟磁性コアの断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す、絶縁体で被覆する前の磁気コアの斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態における、絶縁体で被覆する前の磁気コアを、端子のある底面側より見た概略図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における、磁気コアへ絶縁体を被覆後、巻き線を施した線輪部品を底面側より見た概略図である。
【図7】図6における線輪部品の等価回路の一例を示す図である。
【図8】図6における線輪部品をノイズフィルタとして用いた場合の等価回路の一例を示す図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態における線輪部品を底面側より見た概略図である。
【図10】図9における線輪部品の等価回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明について、図面を基に説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態を示す斜視図である。図1(a)は絶縁体を被覆する前の磁気コアを示す図、図1(b)は絶縁体を被覆した後の磁気コアを示す図である。図2は、本発明の第1の実施の形態における磁気コアの断面図である。図2(a)は図1(a)におけるA−A断面図、図2(b)は図1(b)におけるB−B断面図である。図1(a)および図1(a)におけるA−A断面図である図2(a)は、軟磁性コア1に端子4を接着剤5で接着した後、軟磁性コア1表面に複合導電体2を形成した状態を示していて、さらにその表面に絶縁体3を形成した磁気コア6を示したのが図1(b)および図1(b)におけるB−B断面図である図2(b)である。
【0021】
ここで複合導電体とは、焼成銀、導電性樹脂、導電接着剤、銀ペースト等の導電性粒子と絶縁性結合材よりなる導電体のことである。
【0022】
また絶縁体3としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が用いられるが、複合導電体2と巻き線の間に大きな静電容量が求められる場合は、TiO、Bi等の高い誘電率を持つ誘電体粒子を分散させた樹脂を用いるのが望ましい。また、コアロスに起因する軟磁性コアからの発熱や、導電性樹脂に流れる電流によるジュール熱が無視できない場合には、アルミナ、窒化ホウ素等の熱伝導率の高い誘電体粒子を分散させた樹脂を用いることで放熱性を高めることが望ましい。
【0023】
なお、複合導電体2は、複合導電体成形金型に軟磁性コア1及び接着剤5で接着された端子4をセットし、複合導電体を軟磁性コア1と金型内壁の隙間に射出して成形する。さらに、絶縁体3を形成する際にも絶縁体成形金型に複合導電体2を形成した軟磁性コア1をセットし、絶縁体を軟磁性コア1または複合導電体2と金型内壁の隙間に射出して成形する。複合導電体成形、絶縁体成形いずれの場合でも金型にセットする際には金型内で確実に固定する必要があるため、金型に設けた支持ピンによる窪み21が複合導電体2、絶縁体3いずれにも残っている。なお、複合導電体2の形成方法は、以上の説明にある金型を用いた射出成形に限らず、スクリーン印刷であっても良く、この場合は窪み21が残らない。また、絶縁体3を絶縁材料の塗布により形成しても良い。
【0024】
本発明では図1(a)に示されるように、紙面上部の軟磁性コア1の磁路に沿って一周する円環領域を除く部分に複合導電体2を形成しているが、このような構成とすることで、複合導電体2が軟磁性コア1内部に生じる磁束に対してショートリングとなることは無いため、線輪部品のインダクタンスへ影響を与えない。
【0025】
図3は本発明の第1の実施の形態における軟磁性コアの断面図である。軟磁性体11の表面を軟磁性粉の含有率が高い複合磁性体121が覆い、さらにその表面を軟磁性粉の含有率が低い複合磁性体122が覆っている構成となっている。
【0026】
図3の軟磁性粉の含有率が低い複合磁性体122を持つ複合磁性体を形成するには、金型の内壁を熱伝導率の低い0.1mm〜0.5mmのエポキシ樹脂やポリイミド等で覆い、さらに金型を複合磁性体中の熱可塑性樹脂の熱変形温度より30℃低く室温以上の温度に保った状態で、複合磁性体を射出すれば良い。
【0027】
なお、この際、軟磁性体11は熱変形温度より高い温度にしておくことで射出時における複合磁性体12の流動性が高まるため望ましいが、軟磁性体11と複合磁性体12の間にも絶縁性を確保したい場合は熱変形温度より30℃低く室温以上の温度にしても良い。
【0028】
熱変形温度より30℃低く室温以上の温度に保たれ、熱伝導率の低い物質で覆われた金型表面を熱可塑の状態にある複合磁性体12が流動する際、金型表面の熱伝導率の低い物質に複合磁性体12中の熱可塑性樹脂が接し、冷却されることで固化してゆくが、金型表面の熱伝導率が低いことから、熱可塑性樹脂の固化した層は一定の厚さに留まる、一方軟磁性粉は複合磁性体内部の流れに引きずられ、流動してゆくため、結果的に金型表面に面する複合磁性体12は電気絶縁性の高い熱可塑性樹脂の割合が多くなる。よって、金型壁面側に面する複合磁性体12の絶縁性を高めることができる。なお、軟磁性体11がNiZnフェライト等の高抵抗の材質であれば、複合磁性体12を省略することができる。
【0029】
(第2の実施の形態)
図4は本発明の第2の実施の形態を示す、絶縁体で被覆する前の磁気コアの斜視図である。軟磁性コア1の磁路を周回するトロイダルコイル状となるよう、複合導電体2によるコイルが形成されている。ここで複合導電体2を成形時に軟磁性コア1を支持するためのピンにより窪み21が複合導電体2のほぼ中央部に残されている。なお、第1の端子41、第2の端子42は、複合導電体2形成前に接着剤5で予め軟磁性コア1底部に接着しておく。
【0030】
図5は本発明の第2の実施の形態における、絶縁体で被覆する前の磁気コアを、端子のある底面側より見た概略図である。底面にも複合導電体2形成時に軟磁性コア1を支持するためのピンによる窪み21が残されている。第1の端子41、第2の端子42は、複合導電体2によるコイル両端に接続された配置となっている。
【0031】
図6は本発明の第2の実施の形態における、磁気コアへ絶縁体を被覆後、巻き線を施した線輪部品を底面側より見た概略図である。図5における絶縁体で被覆する前の磁気コアへ絶縁体3を被覆し、巻き線7を施した線輪部品の一例を示すものである。なお、巻き線7の巻き線端部71、72は絶縁皮膜を除去している。ここで、複合導電体2によるコイルと巻き線7は軟磁性コア1の磁路に沿って互いに逆向きとなるように巻かれている。また、絶縁体3形成時に軟磁性コア1及び複合導電体2を支持するためのピンによる窪み21が残されている。なお、説明の都合上、図6における巻き線7は磁気コアの一部に施されているが、第1の端子41、第2の端子42を除く磁気コア全体に渡って巻き線7を施すことで、後述の変位電流によるノイズ除去能が高まるため、望ましい。
【0032】
図7は、図6における線輪部品の等価回路の一例を示す図である。複合導電体2によるコイルと巻き線7間には静電容量Cが生じていて、複合導電体2によるコイルの巻き始めは第2の端子42側、巻き線7の巻き始めは巻き線端部71側からとなる。巻き線端部71電位の時間変化と逆になるよう、第1の端子41の電位を制御すれば、複合導電体2によるコイルと巻き線7間の静電容量Cによる変位電流が流れ、巻き線端部71から巻き線端部72へ流れる電流の変動を抑制することができる。従って、図7における線輪部品はノイズフィルタとして使用することができ、複合導電体2によるコイル両端の電位を入力端子としての巻き線端部71の電位変動に伴って制御することでノイズフィルタとしての性能をより高めることができる。
【0033】
図8は、図6における線輪部品をノイズフィルタとして用いた場合の等価回路の一例を示す図である。線輪部品の入力側の端子を巻き線端部71、出力側の端子を巻き線端部72とする。なお、第1の端子41は調整抵抗Rを介して接地電位に接続し、第2の端子42は直接接地電位に接続している。調整抵抗Rは、複合導電体2と巻き線7間の絶縁耐圧の範囲内でかつ、ノイズにより磁気コアの磁気飽和の起こらない範囲内に設定する。また、調整抵抗Rと並列にツェナーダイオードを接続すると、複合導電体2と巻き線7間の電位差を絶縁耐圧の範囲内に確実に留めることができる。
【0034】
巻き線端部71への入力電圧が急激に増加した場合、巻き線端部71より巻き線端部72へ流れる電流の増加に伴い、図6における軟磁性コア1内の紙面左回り向きの磁束も増加する。複合導電体2によるコイルには軟磁性コア1内の磁束の変化に伴う誘導起電力が発生し、複合導電体2によるコイルと巻き線7は軟磁性コア1の磁路に沿って互いに逆向きであることから、第1の端子41から第2の端子42に電流が流れ、調整抵抗Rによる電圧降下で第1の端子41側の複合導電体2によるコイルの電位が接地電位よりも低くなる。すると、巻き線端部71側の巻き線7の電位との電位差が大きくなることに伴い、静電容量Cを介した変位電流が巻き線端部71側の巻き線7から第1の端子41側の複合導電体2コイルへ流れるため、巻き線端部71より巻き線端部72へ流れる電流は抑制される。
【0035】
巻き線端部71への入力電圧が急激に減少増加した場合、巻き線端部71より巻き線端部72へ流れる電流の減少に伴い、軟磁性コア1内の紙面右回り向きの磁束が増加する。複合導電体2によるコイルには軟磁性コア1内の磁束の変化に伴う誘導起電力が発生し、複合導電体2によるコイルと巻き線7は軟磁性コア1の磁路に沿って互いに逆向きであることから、第2の端子42から第1の端子41に電流が流れ、調整抵抗Rによる電圧降下で第1の端子41側の複合導電体2によるコイルの電位が接地電位よりも高くなる。すると、巻き線端部71側の巻き線7の電位との電位差が小さくなることに伴い、静電容量Cを介した変位電流が第1の端子41側の複合導電体2によるコイルから巻き線端部71側の巻き線7へ流れるため、巻き線端部71より巻き線端部72へ流れる電流の減少は抑制される。
【0036】
上記メカニズムにより、複合導電体2によるコイルは巻き線端部71における電流変動抑制に寄与する。
【0037】
なお、複合導電体によるコイルを備えた線輪部品の巻き線は、上記実施の形態に限らず複数あってもよいが、各巻き線に通電されるノイズ電流により生じる磁束が、磁気コア内の周回する磁路に対して全て同じ向きであれば、複合導電体コイルによるノイズ抑制効果を発揮することができるため、望ましい。
【0038】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明の第3の実施の形態における線輪部品を底面側より見た概略図であり、図6と複合導電体2によるコイルと巻き線7は軟磁性コア1の磁路に沿って互いに同じ向きとなるように巻かれている点が異なる線輪部品を示す図である。
【0039】
図10は図9における線輪部品の等価回路の一例を示す図である。複合導電体2によるコイルと巻き線7間には静電容量Cが生じていて、複合導電体2によるコイルの巻き始めは第1の端子41側、巻き線7の巻き始めは巻き線端部73側からとなる。巻き線端部73と第1の端子41を入力側、巻き線端部74と第2の端子42を出力側とし、ノイズフィルタとして用いる場合は、巻き線端部73から巻き線端部74に流れる電流により軟磁性コア内部に生じる磁束と、第2の端子42から第1の端子41に流れる電流により軟磁性コア内部に生じる磁束の一部が打ち消しあい、いわゆるコモンモードチョークコイルとして働く。一方、打ち消し合わなかった磁束により自己インダクタンスが生じ、ノーマルモードのノイズも抑制される。また、複合導電体2によるコイルと巻き線7間の静電容量によるノイズ抑制効果も働く。
【符号の説明】
【0040】
1 軟磁性コア
11 軟磁性体
12、121、122 複合磁性体
2 複合導電体
21 窪み
3 絶縁体
4 端子
41 第1の端子
42 第2の端子
5 接着剤
6 磁気コア
7 巻き線
71、72、73、74 巻き線端部
C 静電容量
R 調整抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性の表面を有する軟磁性コアと、前記軟磁性コアに接して導電性粒子および結合材を含んで構成する複合導電体と、前記軟磁性コアおよび前記複合導電体を被覆する絶縁体を備えた磁気コアと、前記複合導電体と電気的に接続して前記磁気コアの外部まで延在する端子と、前記磁気コアに施す巻き線を備える線輪部品であって、前記複合導電体と前記端子よりなる導電部を有し、前記導電部は、前記巻き線への通電によって生じる前記磁気コア内の磁束の向きに垂直な前記磁気コアの断面において、C字形状を備えることを特徴とする線輪部品。
【請求項2】
前記複合導電体は、前記磁束を周回するコイル状に構成する複合導電体コイルであり、前記複合導電体コイルの両端部は、前記複合導電体と電気的に接続して前記磁気コアの外部まで延在する第1の端子および第2の端子を備えることを特徴とする請求項1記載の線輪部品。
【請求項3】
前記軟磁性コアは、導電性の軟磁性体と、前記軟磁性体の表面を被覆する熱可塑性樹脂と軟磁性粉を含む複合磁性体を備え、前記複合磁性体は、前記軟磁性体よりも体積抵抗率が高いことを特徴とする請求項1または2に記載の線輪部品。
【請求項4】
前記軟磁性コアにおける前記複合磁性体の軟磁性体に面する部分を除く表面は、前記複合磁性体の内部及び軟磁性体に面する表面よりも軟磁性粉の含有率が低いことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の線輪部品。
【請求項5】
前記複合導電体コイルと前記巻き線が前記軟磁性コアの磁路に沿って巻かれる方向は、互いに逆向きであることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の線輪部品。
【請求項6】
前記巻き線の一端部を入力側、他方の端部を出力側として、前記巻き線の前記一端部の電位変動と逆になるよう、前記複合導電体コイルにおける前記一端部に近接する側の端部の電位が変化することを特徴とする請求項5記載の線輪部品を用いたノイズフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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