説明

線輪部品

【課題】 簡単な構造で安定したギャップを形成し、インダクタンスの調整も容易で、漏れ磁束も少なく、かつ低コストの線輪部品を提供すること。
【解決手段】 巻線されたドラム型磁性体コア1の周囲を磁性粉入り樹脂からなる筒状のスリーブ型コア2で囲み、またギャップ部分に軟磁性金属粉末と樹脂との混和物3を注入する構造をとることにより、インダクタンスの調整が容易で安定したインダクタンスが得られ、かつ漏れ磁束を低減した線輪部品を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として携帯端末機器等の小型電化製品の電源装置に使用される線輪部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来のドラム型磁性体コアを使用した線輪部品の説明図である。図2(a)は、上面図、図2(b)は、図2(a)のAA'断面図である。従来、ドラム型磁性体コアを使用した線輪部品は、図2に示すように、導電性線材4を巻き回したドラム型磁性体コア1にスリーブ型体コア2を組み合わせた構造であり、前記ドラム型磁性体コア1にスリーブ型コア2が組み合わされることで閉磁路を構成する。またドラム型磁性体コア1とスリーブ型コア2間の接着の際、両コア間のギャップを調整することによりインダクタンス値の調整を行っている。
【0003】
更に、特許文献1には、フェライト燒結体または、金属磁性体粉末からなる圧粉磁心の周囲に巻線が巻き回され、それを覆うようにして磁性体粉末と樹脂とからなる磁性部材が設けられた線輪部品について記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−185421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のドラム型磁性体コアとスリーブ型コアを使用した線輪部品には次のような欠点がある。即ち、必要とするインダクタンス値を得るためにはドラム型磁性体コアとスリーブ型コアとの間に一定のギャップを形成する必要があり、ギャップが狭くなるほど磁性体コアの寸法のバラツキ、ドラム型磁性体コア及びスリーブ型コアの位置決めが難しく、安定したギャップ形成が困難となり量産時のバラツキが大きくなる。特に近年の小型化の要請は止まるところを知らずますますその要請は厳しさをましており、実際上外寸法数ミリ以下のコアのギャップ寸法の調整は極めて困難である。またドラム型磁性体コアとスリーブ型コア間のギャップは、漏れ磁束の量を大きくするという問題もかかえている。さらに2つの磁性体を使用するとゆうことはコストへの影響が大きく、低コスト化の障害になっていた。また、特許文献1に記載の線輪部品は、コンポジット磁性材料の磁性体が、FeSiAl系合金やFeNi系合金であり透磁率の値が十分でないという問題があった。
【0006】
従って本発明の課題は、上記の問題を解決し、簡単な構造で安定したギャップを形成し、インダクタンスの調整も容易で、漏れ磁束も少なく、かつ低コストの線輪部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、導電性線材を巻き回したドラム型磁性体コアと該ドラム型磁性体コアを囲繞する筒状のスリーブ型コアとを組み合せた構成からなる線輪部品において、前記スリーブ型コアが軟磁性金属粉末と樹脂から形成され、前記スリーブ型コアと前記ドラム型磁性体コア及びコイルとのギャップが、前記軟磁性金属粉末と前記樹脂からなる混和物の注入により埋められていることを特徴とする線輪部品である。
【0008】
本発明は、前記軟磁性金属粉末が、CoNiZr系、FeZrCuB系、FeSiB系、FeCoZrCuB系、若しくはNiSiB系アモルファス合金粉末またはステンレス粉末のうち少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする線輪部品である。
【0009】
本発明は、前記軟磁性金属粉末が、その平均粒径を3〜50μmとし、その粒度分布を平均粒径に0.2を乗じた値以上から平均粒径に2.0を乗じた値以下の範囲内にある粒子の体積割合が全体の50%以上であることを特徴とする線輪部品である。
【0010】
本発明は、前記スリーブ型コア及び前記混和物において、前記軟磁性金属粉末の配合割合が、25vol%(体積%)以上50vol%(体積%)未満であることを特徴とする線輪部品である。
【0011】
本発明は、前記樹脂が、硬化処理前には粉末状または液状を呈する熱硬化性樹脂であり、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリイミド樹脂の内、少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする線輪部品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、巻線されたドラム型磁性体コアの周囲を磁性粉入り樹脂からなる筒状のスリーブ型コアで囲み、またギャップ部分に軟磁性粉末と樹脂との混和物を注入する構造をとることにより、インダクタンスの調整が容易で安定したインダクタンスが得られ、かつ漏れ磁束を低減した線輪部品を提供することが出来る。
【0013】
またコストへの影響が大きい磁性体コアからなるスリーブを使用せず、磁性粉入り樹脂によるスリーブを使用することで低コスト化することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の線輪部品の実施の形態について具体的に説明する。本発明の線輪部品は、導電性線材を巻き回したドラム型磁性体コアと該ドラム型磁性体コアを囲繞する筒状のスリーブ型コアとを組み合せた構成である。
【0015】
ここで、ドラム型磁性コアは、その材質として、Ni−Zn系フェライト材料、あるいはMn―Zn系フェライト材料を用いるが、これに限定されるものではない。
【0016】
また、スリーブ型コアは、軟磁性金属粉末と樹脂とからなり、前記軟磁性金属粉末が、CoNiZr系、FeZrCuB系、FeSiB系、FeCoZrCuB系、若しくはNiSiB系アモルファス合金粉末またはステンレス粉末のうち少なくとも1つ以上を含んでいる。前記樹脂は、硬化処理前には粉末状または液状を呈する熱硬化樹脂とし、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリイミド樹脂の内、少なくとも1つ以上を含んでいる。
【0017】
また、ドラム型コアとスリーブ型コアのギャップを埋める混和物は、軟磁性体金属粉末と樹脂とから形成され、前記軟磁性金属粉末が、CoNiZr系、FeZrCuB系、FeSiB系、FeCoZrCuB系、若しくはNiSiB系アモルファス合金粉末またはステンレス粉末のうち少なくとも1つ以上を含んでいる。前記樹脂は液状或いは粉末状の熱硬化樹脂とし、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリイミド樹脂の内、少なくとも1つ以上を含んでいる。
【0018】
従って、前記スリーブ型コアと前記混和物の材質は上記の材料から選択され同じ材質であっても、異なっていても良く線輪部品のインダクタンス調整の自由度は高い。
【0019】
また、軟磁性体金属粉末と樹脂からなる混和物において、軟磁性体金属粉末の平均粒径を3〜50μmとし、その粒度分布を平均粒径に0.2を乗じた値以上から平均粒径に2.0を乗じた値以下の範囲内にある粒子の体積割合が全体の50%以上としている。軟磁性体金属粉末の平均粒径を3〜50μmに限定したのは、平均粒径が3μm未満では粒子同士が凝集し樹脂中に均一に分散しないからであり、平均粒径が50μmを超えると軟磁性体金属粉末と樹脂との混合が困難となるためである。粒度分布を、平均粒径に0.2を乗じた値以上から平均粒径に2.0を乗じた値以下の範囲内にある粒子の体積割合が全体の50%以上としたのは、50%未満では磁気特性のバラツキが大きくインダクタンスの調整が困難になるからである。
【0020】
また、スリーブ型コア及び軟磁性体金属粉末と樹脂からなる混和物において、軟磁性体金属粉末の配合比率を25vol%以上50vol%未満とし、軟磁性体金属粉末と樹脂との配合比率によってスリーブ型コア及び軟磁性体金属粉末と樹脂からなる混和物の透磁率を調整している。
【0021】
配合比率を25vol%以上50vol%未満と限定したのは、軟磁性体金属粉末の配合比率を25vol%未満であると、磁気特性が低く不具合が発生し、また、軟磁性体金属粉末の配合比率を50vol%以上であると、混和物が均等に形成することができないからである。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態1の線輪部品の説明図である。図1(a)は、線輪部品の上面図、図1(b)は、図1(a)のAA'断面図である。図1(b)に示す線輪部品は、ドラム型磁性体コア1の鍔部の間に導電性線材4が巻かれ、その周囲を磁性粉入り樹脂からなるスリーブ型コア2に囲まれ、そのギャップ5部分を軟磁性金属粉末と樹脂の混和物3が注入されている。
【0024】
ここで、ドラム型磁性体コア1は、その材質をNi―Znフェライト材料としている。また、磁性粉入り樹脂によるスリーブ型コア2、及びギャップ5部分に注入されている軟磁性金属粉末と樹脂との混和物3において、軟磁性金属粉末はアモルファス粉末であり、その材質はFeSiB系軟磁性合金とした。また前記樹脂の材質はエポキシ樹脂を選択した。
【0025】
また、磁性粉入り樹脂からなるスリーブ型コア2において、軟磁性金属粉末と樹脂との比率は、軟磁性金属粉末35vol%に対して、樹脂は65vol%とし、ドラム型磁性体コア1とスリーブ型コア2のギャップ5部分に注入されている軟磁性金属粉末と樹脂の混和物3においても、軟磁性金属粉末と樹脂との比率は、軟磁性金属粉末35vol%に対して、樹脂は65vol%とした。また前記チョークコイルの外形寸法は、外形3.8mm角、また高さは1.2mmとした。
【0026】
なお、本発明は、前記の実施の形態に限定されるものではなく、当業者であればなし得るであろう各種の変形、修正が本発明に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1の線輪部品の説明図。図1(a)は、本発明の実施の形態1の線輪部品の上面図。図1(b)は、本発明の実施の形態1の線輪部品の断面図。
【図2】従来の線輪部品の説明図。図2(a)は、従来の線輪部品の上面図。図2(b)は、図2(a)のAA'断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 ドラム型磁性体コア
2 スリーブ型コア
3 軟磁性金属粉末と樹脂との混和物
4 導電性線材
5 ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性線材を巻き回したドラム型磁性体コアと該ドラム型磁性体コアを囲繞する筒状のスリーブ型コアとを組み合せた構成からなる線輪部品において、前記スリーブ型コアが軟磁性金属粉末と樹脂から形成され、前記スリーブ型コアと前記ドラム型磁性体コア及びコイルとのギャップが、前記軟磁性金属粉末と前記樹脂からなる混和物の注入により埋められていることを特徴とする線輪部品。
【請求項2】
前記軟磁性金属粉末が、CoNiZr系、FeZrCuB系、FeSiB系、FeCoZrCuB系、若しくはNiSiB系アモルファス合金粉末またはステンレス粉末のうち少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の線輪部品。
【請求項3】
前記軟磁性金属粉末の平均粒径が、3〜50μmであり、その粒度分布が、平均粒径に0.2を乗じた値以上から平均粒径に2.0を乗じた値以下の範囲内にある粒子の体積割合が全体の50%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の線輪部品。
【請求項4】
前記スリーブ型コア及び前記混和物において、前記軟磁性金属粉末の配合割合が、25vol%以上、50vol%未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の線輪部品。
【請求項5】
前記樹脂が、硬化処理前には粉末状または液状を呈する熱硬化性樹脂であり、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリイミド樹脂の内、少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の線輪部品。

【図1】
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【図2】
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