説明

締結装置、締結方法および締結解除方法

【課題】爪部を確実に拡開することができる締結装置、締結方法および締結解除方法を提供する。
【解決手段】シャフト20の−Z側(他方側)に形成された第2雄ねじ部23に螺合されるスリーブ40と、シャフト20に外挿され第1ナット30とスリーブ40との間に配置された円筒状のガイドスリーブ50と、を備え、シャフト20の第1雄ねじ部22の+Z側(一方側)には、少なくとも一対の平行面24,24が外周に形成された突起部25が形成され、スリーブ40は、内周面42に雌ねじ部43が形成された円筒部41と、円筒部41のガイドスリーブ50側の端面45から軸方向に沿って立設された複数の爪部46と、を有し、ガイドスリーブ50の第1ナット30側の端面には第1凹部55が形成され、ガイドスリーブ50のスリーブ側の端面には爪部46と係合する第2凹部57が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、締結装置、締結方法および締結解除方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
線路の枕木に電気転てつ機を取り付ける際に使用される締結装置として、従来から爪ボルトが知られている。爪ボルトを用いた締結方法では、線路の枕木の下面に爪ボルトの爪を食い込ませて固定し、その後電気転てつ機の上からナットを爪ボルトに螺合して線路の枕木と電気転てつ機を固定する。この爪ボルトを用いた締結方法では、線路の枕木の下に存在する土砂や砕石等を掻き出して爪ボルトを配置するスペースを設ける作業が必要となってしまい、作業時間が長くかかっていた。
【0003】
これに対して、特許文献1では爪部材を有した締結装置が提案されている。この爪部材を有した締結装置は、基端部に係合部を設け、先端部にねじ部を形成した引っ張り部材と、引っ張り部材に挿入され、基端部が引っ張り部材の係合部に対してラジアル方向に摺接可能に係合し、側部に複数の切り込みを形成して引っ張り部材のねじ部側に向けて切り込み片を形成した爪部材と、引っ張り部材に挿入され、爪部材と切り込み片と係合し、引っ張り部材を介して爪部材をねじ部側に引っ張り切り込み片を拡開させる筒体とからなる。
この締結装置を用いた締結方法では、引っ張り部材であるボルトの基端部に爪部材を載置し、筒体をボルトに外挿し、爪部材に形成された切り込み片を筒体と係合させ、爪部材と筒体とが装着されたボルトを被締結部材に形成された挿入孔に挿入する。次に、ボルトの雄ねじ部に筒体を固定する治具とナットとを挿入し、治具で筒体を固定しつつナットを締めることでボルトを引き上げる。ボルトを引き上げると、筒体の下面は切り込み片の尖塔部を押し広げることになり、尖塔部は拡開する。そして、拡開した尖塔部が被締結部材に食い込むことによって締結装置が被締結部材に固定され、最後にナット等を螺合して被締結部材を締結する。
上述の締結装置は、爪部材と筒体とが装着されたボルトを、被締結部材に形成された挿入孔に上方から挿入してセットすることができる。この締結装置を用いれば、従来の爪ボルトを用いて締結する際に不可欠であった土砂や砕石等を掻き出す作業が不要となり、従来の爪ボルトを用いた締結方法と比較して作業時間は短くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−272518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の締結装置では、「爪部材に形成された切り込み片を筒体と係合させる」とは言っても、切り込み片を筒体に突き当てているだけである。そのため、ナットを締付けてボルトを引き上げ、爪部材の尖塔部を筒体で拡開する際に、ボルトと爪部材とを周方向に固定できないので、ナットと共にボルトと爪部材とが回ってしまう虞がある。ナットと共にボルトと爪部材とが回ってしまうと、ボルトを引き上げることができず、結果として、爪部材を引き上げることができない。したがって、筒体の外周面に爪部を乗り上げさせて尖塔部を十分に拡開することができず、また、被締結部材に爪部を食い込ませることができないという問題がある。
そこで本発明は、爪部を確実に拡開することができ、また被締結部材に爪部を食い込ませることができる締結装置、締結方法および締結解除方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の締結装置は、複数の被締結部材に形成された貫通孔に挿入されるシャフトと、前記シャフトの軸方向の一方側に形成された第1雄ねじ部に螺合する第1ナットと、前記シャフトの前記軸方向の他方側において前記シャフトに接続され、前記被締結部材に食い込む爪部と、を備え、前記第1ナットと前記爪部との間で前記複数の被締結部材を締結する締結装置であって、前記シャフトの前記他方側に形成された第2雄ねじ部に螺合されるスリーブと、前記シャフトに外挿され前記第1ナットと前記スリーブとの間に配置された円筒状のガイドスリーブと、を備え、前記シャフトの前記第1雄ねじ部の前記一方側には、少なくとも一対の平行面が外周に形成された突起部が形成され、前記スリーブは、内周面に雌ねじ部が形成された円筒部と、前記円筒部の前記ガイドスリーブ側の端面から前記軸方向に沿って立設された複数の前記爪部と、を有し、前記ガイドスリーブの前記第1ナット側の端面には第1凹部が形成され、前記ガイドスリーブの前記スリーブ側の端面には前記爪部と係合する第2凹部が形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、シャフトの第1雄ねじ部の一方側には、少なくとも一対の平行面が外周に形成された突起部が形成されているので、一対の平行面にトルクを作用させてシャフトを回転させることができる。また、ガイドスリーブの第1ナット側の端面には第1凹部が形成されているので、第1凹部を係合させてガイドスリーブを固定することができる。そして、ガイドスリーブのスリーブ側の端面にはスリーブの爪部と係合する第2凹部が形成されているので、シャフトを回転させてもスリーブを回転させずにスリーブを引き上げることができる。これにより、ガイドスリーブの外周面に爪部を乗り上げさせることができるので、爪部を確実に拡開することができる。
また、シャフトの第1雄ねじ部の一方側には、少なくとも一対の平行面が外周に形成された突起部が形成されているので、シャフトを周方向に固定しつつ第1ナットを回すことができる。これにより、シャフトとともにスリーブを引き上げることができるので、爪部を被締結部材に食い込ませることができる。
【0007】
また、本発明の締結方法は、請求項1に記載の締結装置を使用した締結方法であって、少なくとも前記スリーブが螺合された前記シャフトを、前記被締結部材の前記一方側から前記貫通孔にセットするセット工程と、前記被締結部材の前記他方側において前記スリーブの前記爪部を拡開する爪部拡開工程と、前記被締結部材の前記一方側において前記シャフトに前記第1ナットを螺合させるとともに、前記被締結部材の前記他方側において前記爪部を前記被締結部材に食い込ませ、前記第1ナットと前記爪部との間で前記複数の被締結部材を締結する締結工程と、を備え、前記セット工程は、前記スリーブが螺合された前記シャフトに前記ガイドスリーブを外挿し、前記スリーブの前記爪部に前記ガイドスリーブの前記第2凹部を係合する係合工程と、円筒状の第1治具を前記ガイドスリーブの前記一方側から前記シャフトに外挿し、前記第1治具に形成された凸部を前記ガイドスリーブの前記第1凹部に係合させ、前記第1雄ねじ部に第2ナットを螺合させて、前記第2ナットと前記スリーブとの間で前記第1治具と前記ガイドスリーブとを挟持する第1治具配置工程と、円筒状の第2治具を前記第2ナットの前記一方側から前記シャフトに外挿し、前記第2治具の内周面で前記シャフトの前記突起部および前記第2ナットを保持する第2治具配置工程と、を備えて、前記シャフトを挿入した前記被締結部材の前記他方側に前記スリーブを配置するとともに、前記被締結部材の前記一方側に前記第1治具、前記第2ナットおよび前記第2治具を配置し、前記爪部拡開工程では、前記第1治具を固定して前記ガイドスリーブを静止させつつ、前記第2治具とともに前記第2ナットおよび前記シャフトを回転させて前記スリーブを前記一方側に移動させることにより、前記ガイドスリーブの外周面に前記爪部を乗り上げさせて拡開し、前記締結工程は、前記第2治具、前記第2ナットおよび前記第1治具を前記シャフトから外す治具除去工程と、前記シャフトの前記第1雄ねじ部に前記第1ナットを配置し、前記シャフトの前記突起部を周方向に固定しつつ、前記第1ナットを締付けて前記シャフトとともに前記スリーブを引き上げ、前記爪部を前記被締結部材に食い込ませるシャフト引き上げ工程と、を有する、ことを特徴とする。
本発明によれば、第1治具配置工程を備えているので、ガイドスリーブの第1凹部に第1治具の凸部を係合して第1治具を配置し、第1治具を固定することにより、ガイドスリーブを固定することができる。また、第2ナットとスリーブとの間で第1治具とガイドスリーブとを挟持するので、ガイドスリーブの第2凹部にスリーブの爪部を確実に係合することができる。また、第2治具配置工程を備えているので、シャフトの突起部と第2ナットの両者を同時に保持することができ、第2治具を回転させることで第2ナットとシャフトを同時に回転させることができる。これにより、爪部拡開工程では、第2治具とともに第2ナットおよびシャフトを回転させても、スリーブを回転させずに一方側に移動させることができる。そのため、ガイドスリーブの外周面に爪部を乗り上げさせることができるので、爪部を確実に拡開することができる。
また、シャフト引き上げ工程を備えているので、シャフトの突起部を周方向に固定しつつ第1ナットを締付けることで、シャフトとともにスリーブを引き上げることができる。これにより、拡開したた爪部を被締結部材に食い込ませることができる。
【0008】
また、前記爪部拡開工程は、前記複数の被締結部材のうち少なくとも前記一方側の端部に配置される第1の前記被締結部材を取り外した状態で行い、前記シャフト引き上げ工程 は、前記第1被締結部材を取り付けた状態で前記第1ナットを配置することを特徴とする。
本発明によれば、第1被締結部材を取り外して爪部拡開工程を行うので、第1被締結部材を配置して爪部拡開工程を行う場合と比較して、スリーブを被締結部材の他方側に配置しやすくなる。これにより、爪部拡開工程において拡開した爪部の先端が被締結部材の他方側の表面に接触するのを防止し易くなる。また、第1治具とスリーブとの距離が短くなるので、シャフトとスリーブとを短くすることができる。これにより、部品費を抑えた低コストな締結装置を提供することができる。
【0009】
また、前記爪部拡開工程は、前記被締結部材の前記一方側の表面に前記第1治具を当接させた状態で前記第1治具を固定しつつ、前記第2治具を回転させ、前記第1治具の前記軸方向の長さは、前記爪部拡開工程において拡開した前記爪部の先端が前記被締結部材の前記他方側の表面に接触しないように設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、爪部拡開工程において拡開した爪部の先端が被締結部材の他方側の表面に接触しない。したがって、最小限の締結トルクで爪部を拡開することができる。また、爪部が拡開しながら被締結部材に食い込むことがないので、被締結部材を破壊することがない。したがって、被締結部材を強固に固定することができる。
【0010】
また、前記第2ナットとして、前記第1ナットを使用することを特徴とする。
本発明によれば、第2ナットとして第1ナットを使用することで、締結装置の構成部品である第1ナットとは別に、製造工程のみで使用する第2ナットを準備する必要がなくなる。したがって、製造コストを低減することができる。
【0011】
本発明の締結解除方法は、請求項1に記載の締結装置を使用した締結解除方法であって、前記シャフトから前記第1ナットおよび前記ガイドスリーブを取り外して前記被締結部材の前記一方側に引き出し、前記スリーブから前記シャフトを取り外して前記被締結部材の前記一方側に引き出す取り外し工程と、前記被締結部材の前記一方側から前記貫通孔を通して前記スリーブを打撃することにより、前記被締結部材から前記スリーブを取り外して前記被締結部材の前記他方側に廃棄するスリーブ廃棄工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、第1ナット、ガイドスリーブおよびシャフトを被締結部材の一方側に引き出して回収し、スリーブを被締結部材の他方側に廃棄するので、締結解除時に被締結部材の他方側の土砂や砕石等を掻き出す作業が不要となる。したがって、締結解除の作業時間が短くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シャフトの第1雄ねじ部の一方側には、少なくとも一対の平行面が外周に形成された突起部が形成されているので、一対の平行面にトルクを作用させてシャフトを回転させることができる。また、ガイドスリーブの第1ナット側の端面には第1凹部が形成されているので、第1凹部を係合させてガイドスリーブを固定することができる。そして、ガイドスリーブのスリーブ側の端面にはスリーブの爪部と係合する第2凹部が形成されているので、シャフトを回転させてもスリーブを回転させずにスリーブを引き上げることができる。これにより、ガイドスリーブの外周面に爪部を乗り上げさせることができるので、爪部を確実に拡開することができる。
また、シャフトの第1雄ねじ部の一方側には、少なくとも一対の平行面が外周に形成された突起部が形成されているので、シャフトを周方向に固定しつつ第1ナットを回すことができる。これにより、シャフトとともにスリーブを引き上げることができるので、爪部を被締結部材に食い込ませることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】締結装置の正面図である。
【図2】シャフトの説明図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は正面図である。
【図3】スリーブの説明図であり、図3(a)は平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A線における断面図である。
【図4】ガイドスリーブの説明図であり、図4(a)は平面図であり、図4(b)は正面図である。
【図5】締結装置の締結方法のフローチャートである。
【図6】セット工程を示す工程図であり、図6(a)は係合工程を示す工程図であり、図6(b)は第1治具配置工程を示す工程図の部分断面図であり、図6(c)は第2治具配置工程を示す工程図の部分断面図である。
【図7】第1治具の説明図であり、図7(a)は図7(b)のB−B線における部分断面図であり、図7(b)は底面図である。
【図8】第2治具の説明図であり、図8(a)は平面図であり、図8(b)は図8(a)のC−C線における部分断面図であり、図8(c)は底面図である。
【図9】爪部拡開工程を示す工程図である。
【図10】締結工程を示す工程図であり、図10(a)は治具除去工程を示す工程図であり、図10(b)はシャフト引き上げ工程を示す工程図であり、図10(c)は締結装置の締結後の説明図である。
【図11】取り外し工程を示す工程図である。
【図12】スリーブ廃棄工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照して説明する。
(第1実施形態、締結装置)
最初に、第1実施形態における締結装置について説明する。本実施形態では、締結装置のシャフトを枕木および転てつ機の貫通孔に挿入して締結する場合を例にして説明する。以下の説明では、シャフトの軸方向の転てつ機側を+Z側とし、枕木側を−Z側とする。
図1は締結装置の正面図である。
図1に示すように、本実施形態の締結装置10は、転てつ機12aおよび枕木12b(複数の被締結部材)に形成された貫通孔14a,14bに挿入されるシャフト20と、シャフト20の軸方向の+Z側(一方側)に形成された第1雄ねじ部22に螺合する第1ナット30と、シャフト20の軸方向の−Z側(他方側)においてシャフト20に接続され、枕木12bに食い込む爪部46と、を備え、第1ナット30と爪部46との間で転てつ機12aおよび枕木12bを締結する締結装置10であって、シャフト20の−Z側に形成された第2雄ねじ部23に螺合されるスリーブ40と、シャフト20に外挿され第1ナット30とスリーブ40との間に配置された円筒状のガイドスリーブ50と、を備え、シャフト20の第1雄ねじ部22の+Z側には、少なくとも一対の平行面24,24が外周に形成された突起部25が形成され、スリーブ40は、内周面42に雌ねじ部43が形成された円筒部41と、円筒部41のガイドスリーブ50側の端面45から軸方向に沿って立設された複数の爪部46と、を有し、ガイドスリーブ50の第1ナット30側の端面には第1凹部55が形成され、ガイドスリーブ50のスリーブ40側の端面には爪部46と係合する第2凹部57が形成されている。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の締結装置10は、転てつ機12aおよび枕木12bに形成された貫通孔14a,14bに挿入されるシャフト20を備えている。
図2はシャフト20の説明図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は正面図である。
シャフト20は、鉄やステンレス等の金属からなる棒状の部材であり、鍛造や機械加工により軸部21を形成する。また、軸部21の軸方向の+Z側には第1雄ねじ部22を、−Z側には第2雄ねじ部23を形成する。軸部21を形成した後に、軸部21の両端を転造加工することにより雄ねじ部22,23のねじ溝を形成する。
前述のとおり、軸部21の両端に転造加工をして雄ねじ部22,23を形成するので、雄ねじ部22,23のねじの呼び径は軸部21の直径よりも小さくなる。ねじ溝のピッチは、第1雄ねじ部22のねじ溝と第2雄ねじ部23のねじ溝とを同ピッチで形成するか、第2雄ねじ部23のねじ溝を第1雄ねじ部22のねじ溝よりも狭ピッチで形成する。なお、第2雄ねじ部23のねじ溝を第1雄ねじ部22のねじ溝よりも狭ピッチで形成すると、後述する爪部拡開工程において、小さい締結トルクで爪部を拡開することができる。
【0016】
また、図2に示すように、シャフト20の第1雄ねじ部22の+Z側には、少なくとも一対の平行面24,24が外周に形成された突起部25が形成されている。
突起部25は、シャフト20の外形を鍛造等で形成する際に同時に形成するほか、シャフト20の外形を鍛造で形成した後に機械加工により形成する。突起部25の外周には少なくとも一対の平行面24,24を機械加工等により形成し、突起部25の軸方向に垂直な方向の断面形状は例えば矩形状となる。
また、後述する爪部拡開工程および締結工程で必要とされる締結トルクに耐え得る強度が確保できるように突起部25の断面積を設定する。これにより、突起部25の一対の平行面24,24にトルクを作用させて、シャフト20を周方向に回転または固定をすることができる。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の締結装置10は、シャフト20の軸方向の+Z側に形成された第1雄ねじ部22に螺合する第1ナット30を備えている。第1ナット30は市販のナットをそのまま採用することができる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の締結装置10は、シャフト20の−Z側に形成された第2雄ねじ部23に螺合されるスリーブ40を備えている。
図3はスリーブ40の説明図であり、図3(a)は平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A線における断面図である。スリーブ40は、内周面42に雌ねじ部43が形成された円筒部41と、円筒部41のガイドスリーブ側の端面45から軸方向に沿って立設された複数の爪部46と、を有している。
スリーブ40は鉄やステンレス等のシャフトと同じ材質の金属からなる。スリーブ40は、パイプ状の素材を切断することにより外形を形成し、その後、雌ねじ部43と爪部46とを機械加工により形成する。
【0019】
図3に示すように、スリーブ40は内周面42に雌ねじ部43が形成された円筒部41を有している。
円筒部41の外周面44の直径は、転てつ機および枕木に形成された貫通孔の直径よりも若干小さく作られている。これにより、シャフトに螺合されたスリーブ40を+Z側から貫通孔に挿入することができる。
また、スリーブ40は、円筒部41のガイドスリーブ側の端面45から軸方向に沿って立設された複数の爪部46を有している。
スリーブ40の外形を形成した後、スリット47を形成することにより爪部46を形成する。具体的には、パイプ状の素材を切断することによりスリーブ40の外形を形成し、その後+Z側の端面から−Z側に向かって、周方向に沿って略等間隔に切削加工を施すことによりスリット47を一定幅で形成して、爪部46を形成する。スリット47を一定幅で形成しているので、切削加工を容易にすることができる。スリーブ40の+Z側はスリット47により分離されており、スリーブ40の周方向に沿って、略等間隔にスリット47と同数の爪部46を形成している。なお、爪部46を別部材としてプレス加工や機械加工、鍛造加工等で形成し、雌ねじ部43を形成した円筒部41と爪部46とを溶接等で接合してもよい。
爪部46は、円筒部41の端面45から一定幅で軸方向に沿って立設された基端部48と、基端部48の+Z側に配置され、+Z側に向かうに従い先細り形状となる先端部49とを有している。
先端部49の内周面42aは、−Z側から+Z側にかけて内径が拡大するテーパ面となっている。これにより、後述する爪部拡開工程において、先端部49がガイドスリーブの外周面に乗り上げやすくなり、爪部46を確実に拡開することができる。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の締結装置10は、シャフト20に外挿され第1ナット30とスリーブ40との間に配置された円筒状のガイドスリーブ50を備えている。
図4はガイドスリーブ50の説明図であり、図4(a)は平面図であり、図4(b)は正面図である。
ガイドスリーブ50は鉄やステンレス等の金属からなる円筒状の部材である。パイプ状の素材を切断することによりガイドスリーブ50の外形を形成する。内周面51の直径は、シャフトの軸部の直径よりも若干大きく形成している。これにより、ガイドスリーブ50をシャフトに外挿することができる。また、外周面53の直径は、転てつ機と枕木とに形成されている貫通孔の直径よりも若干小さく形成している。これにより、ガイドスリーブ50を転てつ機または枕木の+Z側から貫通孔に挿入することができる。
図4に示すように、ガイドスリーブ50の+Z側には、第1治具に形成された凸部が係合される第1凹部55が形成されている。ガイドスリーブ50の外形を形成した後に、機械加工により第1凹部55を形成する。ガイドスリーブ50の周方向に沿って、略等間隔に複数個(本実施形態では2個)の第1凹部55を形成している。これにより、ガイドスリーブ50を固定する際に、第1凹部55および後述する第1治具の凸部に発生する応力を分散することができる。また、第1凹部55は矩形状の切欠きとなっており、第1凹部55の軸方向の長さは第1治具の凸部の軸方向の長さよりも若干長く設定されており、第1凹部55の周方向の幅は第1治具の凸部の幅とほぼ同等か若干広く設定されている。これにより、ガイドスリーブ50の第1凹部55に第1治具の凸部を確実に係合することができる。
【0021】
ガイドスリーブ50の−Z側には、スリーブの爪部が係合される第2凹部57が形成されている。第1凹部55と同様に、ガイドスリーブ50の外形を形成した後に、機械加工により第2凹部57を形成する。第2凹部57は矩形状の切欠きとなっており、第2凹部57の軸方向の長さは爪部の長さよりも若干短く設定されている。これにより、ガイドスリーブ50の第2凹部57にスリーブの爪部の先端を確実に乗り上げさせて拡開することができる。
また、第2凹部57の周方向の幅はスリーブの爪部の最大幅よりも若干狭く設定されており、ガイドスリーブの周方向に沿って略等間隔にスリーブの爪部と同数(本実施形態では4個)の第2凹部57を形成している。これにより、スリーブの周方向の位置を決定することができる。
【0022】
本実施形態によれば、図1に示すように、シャフト20の第1雄ねじ部22の+Z側には、少なくとも一対の平行面24,24が外周に形成された突起部25が形成されているので、一対の平行面24,24にトルクを作用させてシャフト20を回転させることができる。また、ガイドスリーブ50の第1ナット30側の端面には第1凹部55が形成されているので、第1凹部55を係合させてガイドスリーブ50を固定することができる。そして、ガイドスリーブ50のスリーブ40側の端面にはスリーブ40の爪部46と係合する第2凹部57が形成されているので、シャフト20を回転させてもスリーブ40を回転させずにスリーブ40を引き上げることができる。これにより、ガイドスリーブ50の外周面53に爪部46を乗り上げさせることができるので、爪部46を確実に拡開することができる。
また、シャフト20の第1雄ねじ部22の+Z側には、少なくとも一対の平行面24,24が外周に形成された突起部25が形成されているので、シャフト20を周方向に固定しつつ第1ナット30を回すことができる。これにより、シャフト20とともにスリーブ40を引き上げることができるので、爪部46を枕木12bに食い込ませることができる。
【0023】
(締結方法)
次に、本実施形態の締結装置を使用した締結方法について図面を参照して説明する。なお、第1実施形態の締結装置と同様の構成となる部分については、詳細な説明を省略する。
図5は締結装置の締結方法のフローチャートである。
図5に示すように、本実施形態の締結装置を使用した締結方法は、少なくともスリーブが螺合されたシャフトを、転てつ機の+Z側から貫通孔にセットするセット工程(S10)と、枕木の−Z側においてスリーブの爪部を拡開する爪部拡開工程(S20)と、転てつ機の+Z側においてシャフトに第1ナットを螺合させるとともに、枕木の−Z側において爪部を枕木に食い込ませ、第1ナットと爪部との間で転てつ機と枕木とを締結する締結工程(S30)と、を備えている。
【0024】
最初に、少なくともスリーブが螺合されたシャフトを、転てつ機の+Z側から貫通孔にセットするセット工程(S10)を行う。
図6はセット工程(S10)を示す工程図であり、図6(a)は係合工程(S11)を示す工程図であり、図6(b)は第1治具配置工程(S13)を示す工程図の部分断面図であり、図6(c)は第2治具配置工程(S15)を示す工程図の部分断面図である。
セット工程(S10)は、図6に示すように、スリーブ40が螺合されたシャフト20にガイドスリーブ50を外挿し、スリーブ40の爪部46にガイドスリーブ50の第2凹部57を係合する係合工程(S11)と、円筒状の第1治具60をガイドスリーブ50の+Z側からシャフト20に外挿し、第1治具60に形成された凸部64をガイドスリーブ50の第1凹部55に係合させ、第1雄ねじ部22に第2ナット32を螺合させて、第2ナット32とスリーブ40との間で第1治具60とガイドスリーブ50とを挟持する第1治具配置工程(S13)と、円筒状の第2治具70を第2ナット32の+Z側からシャフト20に外挿し、第2治具70の内周面72でシャフト20の突起部25および第2ナット32を保持する第2治具配置工程(S15)と、を備えて、シャフト20を挿入した枕木12bの−Z側にスリーブ40を配置するとともに、枕木12bの+Z側に第1治具60、第2ナット32および第2治具70を配置する。
【0025】
係合工程(S11)では、図6(a)に示すように、スリーブ40が螺合されたシャフト20にガイドスリーブ50を外挿し、スリーブ40の爪部46にガイドスリーブ50の第2凹部57を係合する。
具体的には、まず、シャフト20の第2雄ねじ部23にスリーブ40を螺合する。ここで、スリーブ40をシャフト20の第2雄ねじ部23に螺合するときは、第2雄ねじ部23の−Z側の端面23bとスリーブ40の−Z側の端面47とが面一となるようにスリーブ40を配置する。これにより、第1治具および第2ナットの軸方向の位置を決定することができるので、後述する第2治具配置工程(S15)において、第2治具の内周面でシャフト20の突起部および第2ナットを確実に保持することができる。
次に、スリーブ40が螺合されたシャフト20にガイドスリーブ50を外挿し、スリーブ40の爪部46にガイドスリーブ50の第2凹部57を係合する。ガイドスリーブ50の−Z側には第2凹部57が形成されている。スリーブ40の爪部46に第2凹部57が係合するように周方向に位置を調整しながらガイドスリーブ50を外挿する。これにより、ガイドスリーブ50の第2凹部57にスリーブ40の爪部46の先端部49を確実に乗り上げさせて拡開することができる。
【0026】
第1治具配置工程(S13)では、図6(b)に示すように、円筒状の第1治具60をガイドスリーブ50の+Z側からシャフト20に外挿し、第1治具60に形成された凸部64をガイドスリーブ50の第1凹部55に係合させ、第1雄ねじ部22に第2ナット32を螺合させて、第2ナット32とスリーブ40との間で第1治具60とガイドスリーブ50とを挟持する。
まず、円筒状の第1治具60をガイドスリーブ50の+Z側からシャフト20に外挿し、第1治具60に形成された凸部64をガイドスリーブ50の第1凹部55に係合させる。
ここで、図7は第1治具60の説明図であり、図7(a)は図7(b)のB−B線における部分断面図であり、図7(b)は底面図である。図7に示すように、第1治具60は、内周面62に形成された凸部64と、外周面66に形成された第1把持部68とを有する、鉄やステンレス等の金属からなる筒状の部材である。第1治具60は、2つの筒状部材60a,60bからなる。+Z側の筒状部材60aの内周面62に凸部64を機械加工で形成し、−Z側の筒状部材60bの外周面66に一対の平行面68a,68aを機械加工で形成することで第1把持部68を形成し、その後に2つの筒状部材60a,60bを溶接等で接合して第1治具60を形成する。なお、パイプ状の素材を切断することにより外形を形成し、その後、内周面62に凸部64を、外周面66に一対の平行面68a,68aを、それぞれ機械加工で形成することにより、第1治具60を1部材で形成することもできる。
第1治具60に形成された凸部64の軸方向の長さは、ガイドスリーブの第1凹部の軸方向の長さよりも若干短く設定されており、凸部64の周方向の幅は第1凹部の幅とほぼ同等か若干狭く設定されている。これにより、ガイドスリーブの+Z側の端面と、筒状部材60aの−Z側の端面とを突き当てて配置することができ、ガイドスリーブの第1凹部に第1治具60の凸部64を確実に係合することができる。
第1治具60の両端は開口しており、シャフト挿入孔61aの直径は、シャフトが挿通可能であり、かつ、第2ナットをシャフトに螺合したときに座面が確保できるように設定される。また、ガイドスリーブ挿入孔61bの孔径は、ガイドスリーブ50が挿通可能な直径に設定される。
また、筒状部材60bの外周面66の外径は、枕木の貫通孔の直径よりも大きく形成される。これにより、筒状部材60bの−Z側の端面と枕木の+Z側の面とを突き当てて枕木の+Z側に第1治具60を配置することができる。
【0027】
図6(b)に戻り、次に、第1雄ねじ部22に第2ナット32を螺合させて、第2ナット32とスリーブ40との間で第1治具60とガイドスリーブ50とを挟持する。
具体的には、まず、第1雄ねじ部22に第2ナット32を螺合させる。第2ナット32は市販のナットをそのまま採用することができる。このとき、第2ナット32と第1治具60との間にワッシャ34を装着してもよい。これにより、第2ナット32の座面を確実に確保できる。また、第2ナット32として、第1ナットを使用してもよい。これにより、締結装置の構成部品である第1ナットとは別に、製造工程のみで使用する第2ナット32を準備する必要がなくなる。したがって、製造コストを低減することができる。
最後に、第2ナット32とスリーブ40との間で第1治具60とガイドスリーブ50とを挟持する。第2ナット32を軽く締め込むことにより、第2ナット32とスリーブ40との間で第1治具60とガイドスリーブ50とを挟持することができる。
本実施形態では、第1治具配置工程(S13)を備えているので、ガイドスリーブ50の第1凹部55に第1治具60の凸部64を係合して第1治具60を配置し、第1治具60を固定することにより、ガイドスリーブ50を固定することができる。また、第2ナット32とスリーブ40との間で第1治具60とガイドスリーブ50とを挟持するので、ガイドスリーブ50の第2凹部57にスリーブ40の爪部46を確実に係合することができる。
【0028】
第2治具配置工程(S15)では、図6(c)に示すように、円筒状の第2治具70を第2ナット32の+Z側からシャフト20に外挿し、第2治具70の内周面51でシャフト20の突起部25および第2ナット32を保持する。
ここで、図8は第2治具70の説明図であり、図8(a)は平面図であり、図8(b)は図8(a)のC−C線における部分断面図であり、図8(c)は底面図である。第2治具70は、鉄やステンレス等の金属からなる筒状の部材であり、外形は鍛造や機械加工により形成される。図8に示すように、第2治具70の内周面72の+Z側70aには突起部挿入孔73が、−Z側70bにはナット嵌合孔74が、突起部挿入孔73とナット嵌合孔74との間には雄ねじ部挿入孔75が形成されている。また、第2治具70の外周面76の+Z側には、一対の平行面78a,78aが形成された第2把持部78が形成されている。
【0029】
突起部挿入孔73は、第2治具70の外形が形成された後に機械加工により形成される。突起部挿入孔73には、突起部の外周に形成された一対の平行面と当接する一対の平行面が内周に形成されており、突起部挿入孔73の形状は、例えば矩形状である。
ナット嵌合孔74は、第2治具70の外形が形成されるときに同時に鍛造により形成されるか、外形が形成された後に機械加工により形成される。ナット嵌合孔74には、第2ナットの外周に形成された一対の平行面と当接する一対の平行面が形成されており、例えば第2ナットが六角ナットである場合には、一対の平行面が三対もしくは六対形成される。
突起部挿入孔73とナット嵌合孔74との間に、雄ねじ部挿入孔75が形成されている。雄ねじ部挿入孔75の軸方向の長さは、第1雄ねじ部に第2ナットを螺合させて、第2ナットとスリーブとの間で第1治具とガイドスリーブとを挟持させた際に、第2ナットから突出している第1雄ねじ部の軸方向の長さよりも長く形成される。したがって、第1雄ねじ部は第2治具70と干渉しない。また、雄ねじ部挿入孔75の長さは、係合工程においてシャフトおよびスリーブを面一としたときに、突起部挿入孔73の内側に突起部を配置しうる長さに設定されている。
第2把持部78は、外周面76に少なくとも一対の平行面78a,78aが設けられることにより形成される。一対の平行面78a,78aは、第2治具70の外形が形成されるときに同時に鍛造または機械加工により形成されるか、外形が形成された後に機械加工により形成される。
本実施形態では、第2治具配置工程(S15)を備えているので、図6(c)に示すように、シャフト20の突起部25と第2ナット32の両者を同時に保持することができ、第2治具70を回転させることで第2ナット32とシャフト20を同時に回転させることができる。
【0030】
図6に示すように、セット工程(S10)では、最終的に、シャフト20を挿入した枕木12bの−Z側にスリーブ40を配置するとともに、枕木12bの+Z側に第1治具60、第2ナット32および第2治具70を配置する。このとき、第1治具60の筒状部材60bの−Z側の端面が枕木12bに突き当たるように第1治具60の配置を行う。
シャフト20の挿入はセット工程(S10)中のどのタイミングでもよいが、第1治具配置工程(S13)の後にシャフト20を枕木の挿入孔に挿入することが望ましい。第1治具配置工程(S13)の後であれば、第1治具60の筒状部材60bの−Z側の端面を枕木12bに突き当てて第1治具60を配置しているので、シャフト20が枕木12bの−Z側に落下するのを防止できる。
【0031】
次に、枕木の−Z側においてスリーブの爪部を拡開する爪部拡開工程(S20)を行う。
図9は爪部拡開工程(S20)を示す工程図である。
爪部拡開工程(S20)では、図9に示すように、枕木12bの+Z側の表面に第1治具60を当接させた状態で、第1治具60を固定してガイドスリーブ50を静止させつつ、第2治具70とともに第2ナット32およびシャフト20を回転させてスリーブ40を+Z側に移動させることにより、ガイドスリーブ50の外周面53に爪部46を乗り上げさせて拡開する。
まず、第1治具60を固定してガイドスリーブ50を静止させる。具体的には、第1治具60の外周面66に形成された第1把持部68を、レンチ等の工具で把持して周方向に固定する。第1治具60の内周面には凸部が形成されており、ガイドスリーブ50の第1凹部に第1治具60の凸部を係合させて第1治具60を配置しているので、第1治具60を周方向に固定することにより、ガイドスリーブ50を周方向に固定することができる。
【0032】
そして、第2治具70とともに第2ナット32およびシャフト20を回転させてスリーブ40を+Z側に移動させる。具体的には、第2治具70の外周面76に形成された第2把持部78をレンチ等の工具で把持して、第2治具70を周方向に回転させて締付ける。なお、スリーブ40の爪部46はガイドスリーブ50の第2凹部57と係合しているので、ガイドスリーブ50を周方向に固定することによりスリーブ40も周方向に固定されている。第2治具70の内周面でシャフト20の突起部25および第2ナット32を保持しているので、第2治具70を周方向に回転させて締付けることにより、第2ナット32とシャフト20とが共に軸方向の位置を保持したまま周方向に回転する。これにより、周方向に固定されているスリーブ40は+Z側に引き上げられる。
【0033】
そして、ガイドスリーブ50の外周面53に爪部46を乗り上げさせて拡開する。具体的には、スリーブ40が+Z側に引き上げられることにより、先端が尖塔形状となっている爪部46がガイドスリーブ50の外周面53に乗り上げることになる。第2治具70の締結トルクが規定値に達するまで第2治具70を締め込むことにより、爪部46を規定の開度まで拡開することができる。
ここで、第1治具60の軸方向の長さは、爪部拡開工程(S20)において拡開した爪部46の先端が枕木12bの−Z側の表面に接触しないように設定されている。具体的には、ガイドスリーブ50の+Z側端面を第1治具60の筒状部材60aの−Z側端面に突き当て、第1治具60の筒状部材60bの−Z側端面を枕木12bに突き当てた状態で、爪部46の先端と枕木12bとの距離が少なくとも爪部46の長さよりも長くなるように、第1治具60の筒状部材60bの軸方向の長さが設定されている。これにより、爪部拡開工程(S20)において拡開した爪部46の先端が枕木12bの−Z側の表面に接触しない。したがって、最小限の締結トルクで爪部46を拡開することができる。また、爪部46が拡開しながら枕木12bに食い込むことがないので、枕木12bを破壊することがない。したがって、転てつ機と枕木12bとを強固に固定することができる。
このように、本実施形態の爪部拡開工程(S20)では、第2治具70とともに第2ナット32およびシャフト20を回転させても、スリーブ40を回転させずに+Z側に移動させることができる。そのため、ガイドスリーブ50の外周面53に爪部46を乗り上げさせることができるので、爪部46を確実に拡開させることができる。
【0034】
最後に、転てつ機の+Z側においてシャフトに第1ナットを螺合させるとともに、枕木の−Z側において爪部を枕木に食い込ませ、第1ナットと爪部との間で転てつ機と枕木とを締結する締結工程(S30)を行う。
図10は締結工程(S30)を示す工程図であり、図10(a)は治具除去工程(S31)を示す工程図であり、図10(b)はシャフト引き上げ工程(S33)を示す工程図である。
締結工程(S30)は、図10に示すように、第2治具70、第2ナット32および第1治具60をシャフト20から外す治具除去工程(S31)と、シャフト20の第1雄ねじ部22に第1ナット30を配置し、シャフト20の突起部25を周方向に固定しつつ、第1ナット30を締付けてシャフト20とともにスリーブ40を引き上げ、爪部46を枕木12bに食い込ませるシャフト引き上げ工程(S33)と、を有している。
【0035】
治具除去工程(S31)では、図10(a)に示すように、第2治具70、第2ナット32および第1治具60をシャフト20から外す。
具体的には、まず、シャフト20と第2ナット32とに外挿されている第2治具70を+Z側に外す。次に、第1雄ねじ部22に螺合されている第2ナット32を回して緩めて+Z側に外す。このとき、第2ナット32とシャフト20が共回りすると第2ナット32を緩めることができないので、シャフト20の突起部25を把持して周方向に固定しつつ第2ナット32を回す。最後に、シャフト20とガイドスリーブ50とに外挿されている第1治具60を+Z側に外す。
ここで、治具除去工程(S31)を実施する前に、シャフト20を引き上げて爪部46の先端を少しだけ枕木12bに食い込ませておくことが望ましい。これにより、第2治具70、第2ナット32および第1治具60を除去してから第1ナット30を配置するまでに、シャフト20が枕木12bの−Z側に落下するのを防止することができる。
【0036】
シャフト引き上げ工程(S33)では、図10(b)に示すように、シャフト20の第1雄ねじ部22に第1ナット30を配置し、シャフト20の突起部25を周方向に固定しつつ、第1ナット30を締付けてシャフト20とともにスリーブ40を引き上げ、爪部46を枕木12bに食い込ませる。
具体的には、まず、枕木12bから突出しているシャフト20およびガイドスリーブ50に、転てつ機12aの貫通孔14aを外挿して、枕木12bの+Z側に転てつ機12aを配置する。次に、シャフト20のZ方向の位置を保持しつつ、ワッシャ34とともに第1ナット30を第1雄ねじ部22に回し入れて配置する。その後、シャフト20の突起部25をレンチ等の工具で把持して周方向に固定しつつ、第1ナット30を回して螺合する。このとき、突起部25をレンチ等の工具で把持して周方向に固定しているので、第1ナット30を回すことによりシャフト20とスリーブ40とが+Z側に引き上げられる。なお、スリーブ40の爪部46が枕木12bの下面に当接すると同時に、第1ナット30の締結トルクが急激に上昇することになる。
そして、さらにトルクを加えて第1ナット30を締付けることにより、第1ナット30と共にシャフト20が回転するのを防止してスリーブ40を引き上げることができ、爪部46を枕木12bに食い込ませることができる。爪部46が規定位置まで食い込むと締結トルクが規定値に達する。このようにして、第1ナット30とスリーブ40との間に配置された転てつ機12aと枕木12bとを締結する。なお、図10(c)に示すように、第1ナット30の締結後に、第1ナット30と同じ仕様の第3ナット36をさらに第1雄ねじ部に締め込むことが望ましい。これにより、第1ナット30の締結力を増加させることができるので、第1ナット30の緩みを防止することができる。
本実施形態によれば、シャフト引き上げ工程(S33)を備えているので、図10(b)に示すように、シャフト20の突起部25を周方向に固定することにより、シャフト20を周方向に固定しつつ第1ナット30を回すことができる。これにより、第1ナット30と共にシャフト20が回転するのを防止してスリーブ40を引き上げることができるので、爪部46を枕木12bに食い込ませることができる。
【0037】
(締結解除方法)
次に、本実施形態の締結装置を使用した締結解除方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の締結装置10を使用した締結解除方法は、シャフト20から第1ナット30およびガイドスリーブ50を取り外して転てつ機12aの+Z側に引き出し、スリーブ40からシャフト20を取り外して転てつ機12aの+Z側に引き出す取り外し工程(図11参照)と、枕木12bの+Z側から貫通孔14bを通してスリーブ40を打撃することにより、枕木12bからスリーブ40を取り外して枕木12bの−Z側に廃棄するスリーブ廃棄工程(図12参照)と、を有することを特徴とする。
【0038】
図11は取り外し工程を示す工程図である。
取り外し工程は、図11に示すように、シャフト20から第1ナット30およびガイドスリーブ50を取り外して転てつ機12aの+Z側に引き出し、スリーブ40からシャフト20を取り外して転てつ機12aの+Z側に引き出す。
具体的には、シャフト20の突起部25をレンチ等の工具で把持して周方向に固定しつつ、第1ナット30を回して取り外す。その後、転てつ機12aを取り外した後、ガイドスリーブ50を+Z側に引き出す。最後に、シャフト20の突起部25を把持して周方向に回転させつつスリーブ40からシャフト20を取り外し、シャフト20を+Z側に引き出す。
【0039】
図12はスリーブ廃棄工程を示す工程図である。
スリーブ廃棄工程は、図12に示すように、枕木12bの+Z側から貫通孔14bを通してスリーブ40を打撃することにより、枕木12bからスリーブ40を取り外して枕木12bの−Z側に廃棄する。
第1ナット、ガイドスリーブおよびシャフト20を回収した後も、スリーブ40は枕木12bの−Z側に食い込んだままである。そこで、棒状の部材を貫通孔14bに通し、枕木12bの−Z側に配置されているスリーブ40を打撃して枕木12bの−Z側に外す。棒状の部材として、取り外し工程で取り外したシャフト20またはガイドスリーブを使用することにより、別途棒状の部材を用意する必要がなくなる。最終的に、外れたスリーブ40は、枕木12bの−Z側の土砂や砕石等の中に放置される。
本実施形態では、取り外し工程において第1ナット30、ガイドスリーブ50およびシャフト20を枕木12bの+Z側に引き出して回収し、さらに廃棄工程においてスリーブ40を枕木12bの−Z側に廃棄するので、締結解除時に枕木12bの−Z側の土砂や砕石等を掻き出す作業が不要となる。したがって、締結解除の作業時間が短くなる。
【0040】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態の締結装置では、ガイドスリーブの第1凹部に第1治具の凸部を係合して第1治具を配置し、第1治具を周方向に固定することにより、ガイドスリーブを周方向に固定している。しかし、例えば、ガイドスリーブの肉厚を増やして強度を確保し、ガイドスリーブの外周部に一対の平面部を設けて把持部を形成し、直接ガイドスリーブを把持することにより、第1治具を用いなくてもガイドスリーブを周方向に固定することができる。
本実施形態の締結装置を使用した締結方法では、転てつ機を取り外した状態で爪部拡開工程を行っている。しかし、例えば、シャフトやガイドスリーブ、第1治具、第2治具等の長さを調整することにより、転てつ機を取り付けた状態で爪部拡開工程を行うこともできる。
本実施形態の締結装置、締結装置を用いた締結方法および締結解除方法では、被締結部材が転てつ機と枕木とである場合について述べたが、本発明の締結装置、締結装置を用いた締結方法および締結解除方法は、枕木および転てつ機以外の被締結部材の締結に使用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10・・・締結装置 12a・・・被締結部材(転てつ機) 12b・・・被締結部材(枕木) 14a,14b・・・貫通孔 20・・・シャフト 22・・・第1雄ねじ部 23・・・第2雄ねじ部 24・・・平行面 25・・・突起部 30・・・第1ナット 32・・・第2ナット 40・・・スリーブ 41・・・円筒部 42・・・内周面 43・・・雌ねじ部 44・・・外周面 45・・・端面 46・・・爪部 50・・・ガイドスリーブ 53・・・外周面 55・・・第1凹部 57・・・第2凹部 60・・・第1治具 64・・・凸部 70・・・第2治具 72・・・内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被締結部材に形成された貫通孔に挿入されるシャフトと、
前記シャフトの軸方向の一方側に形成された第1雄ねじ部に螺合する第1ナットと、
前記シャフトの前記軸方向の他方側において前記シャフトに接続され、前記被締結部材に食い込む爪部と、を備え、
前記第1ナットと前記爪部との間で前記複数の被締結部材を締結する締結装置であって、
前記シャフトの前記他方側に形成された第2雄ねじ部に螺合されるスリーブと、
前記シャフトに外挿され前記第1ナットと前記スリーブとの間に配置された円筒状のガイドスリーブと、を備え、
前記シャフトの前記第1雄ねじ部の前記一方側には、少なくとも一対の平行面が外周に形成された突起部が形成され、
前記スリーブは、内周面に雌ねじ部が形成された円筒部と、前記円筒部の前記ガイドスリーブ側の端面から前記軸方向に沿って立設された複数の前記爪部と、を有し、
前記ガイドスリーブの前記第1ナット側の端面には第1凹部が形成され、前記ガイドスリーブの前記スリーブ側の端面には前記爪部と係合する第2凹部が形成されていることを特徴とする締結装置。
【請求項2】
請求項1に記載の締結装置を使用した締結方法であって、
少なくとも前記スリーブが螺合された前記シャフトを、前記被締結部材の前記一方側から前記貫通孔にセットするセット工程と、
前記被締結部材の前記他方側において前記スリーブの前記爪部を拡開する爪部拡開工程と、
前記被締結部材の前記一方側において前記シャフトに前記第1ナットを螺合させるとともに、前記被締結部材の前記他方側において前記爪部を前記被締結部材に食い込ませ、前記第1ナットと前記爪部との間で前記複数の被締結部材を締結する締結工程と、を備え、
前記セット工程は、
前記スリーブが螺合された前記シャフトに前記ガイドスリーブを外挿し、前記スリーブの前記爪部に前記ガイドスリーブの前記第2凹部を係合する係合工程と、
円筒状の第1治具を前記ガイドスリーブの前記一方側から前記シャフトに外挿し、前記第1治具に形成された凸部を前記ガイドスリーブの前記第1凹部に係合させ、前記第1雄ねじ部に第2ナットを螺合させて、前記第2ナットと前記スリーブとの間で前記第1治具と前記ガイドスリーブとを挟持する第1治具配置工程と、
円筒状の第2治具を前記第2ナットの前記一方側から前記シャフトに外挿し、前記第2治具の内周面で前記シャフトの前記突起部および前記第2ナットを保持する第2治具配置工程と、
を備えて、前記シャフトを挿入した前記被締結部材の前記他方側に前記スリーブを配置するとともに、前記被締結部材の前記一方側に前記第1治具、前記第2ナットおよび前記第2治具を配置し、
前記爪部拡開工程では、前記第1治具を固定して前記ガイドスリーブを静止させつつ、前記第2治具とともに前記第2ナットおよび前記シャフトを回転させて前記スリーブを前記一方側に移動させることにより、前記ガイドスリーブの外周面に前記爪部を乗り上げさせて拡開し、
前記締結工程は、
前記第2治具、前記第2ナットおよび前記第1治具を前記シャフトから外す治具除去工程と、
前記シャフトの前記第1雄ねじ部に前記第1ナットを配置し、前記シャフトの前記突
起部を周方向に固定しつつ、前記第1ナットを締付けて前記シャフトとともに前記スリーブを引き上げ、前記爪部を前記被締結部材に食い込ませるシャフト引き上げ工程と、を有する、
ことを特徴とする締結方法。
【請求項3】
前記爪部拡開工程は、前記複数の被締結部材のうち少なくとも前記一方側の端部に配置される第1の前記被締結部材を取り外した状態で行い、
前記シャフト引き上げ工程は、前記第1被締結部材を取り付けた状態で前記第1ナットを配置することを特徴とする請求項2に記載の締結方法。
【請求項4】
前記爪部拡開工程は、前記被締結部材の前記一方側の表面に前記第1治具が当接した状態で前記第1治具を固定しつつ、前記第2治具を回転させ、
前記第1治具の前記軸方向の長さは、前記爪部拡開工程において拡開した前記爪部の先端が前記被締結部材の前記他方側の表面に接触しないように設定されていることを特徴とする請求項2または3に記載の締結方法。
【請求項5】
前記第2ナットとして、前記第1ナットを使用することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の締結方法。
【請求項6】
請求項1に記載の締結装置を使用した締結解除方法であって、
前記シャフトから前記第1ナットおよび前記ガイドスリーブを取り外して前記被締結部材の前記一方側に引き出し、前記スリーブから前記シャフトを取り外して前記被締結部材の前記一方側に引き出す取り外し工程と、
前記被締結部材の前記一方側から前記貫通孔を通して前記スリーブを打撃することにより、前記被締結部材から前記スリーブを取り外して前記被締結部材の前記他方側に廃棄するスリーブ廃棄工程と、
を有することを特徴とする締結解除方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−74988(P2011−74988A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226009(P2009−226009)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(399039719)東日本電気エンジニアリング株式会社 (30)
【出願人】(506345351)ニッセンファスナー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】