説明

緩衝器

【課題】作動流体の温度が変化する場合においても安定した減衰力特性が得られる緩衝器を提供すること。
【解決手段】作動流体が封入されたシリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に配置されシリンダ1内を二つの流体室3,4に画成するピストン2と、ピストン2に形成されピストン2の摺動によって作動流体が通過すると共に作動流体に抵抗を付与する流路6と、一端にピストン2が固定されるロッド5とを備える緩衝器100であって、温度変化による作動流体の粘性変化に起因する減衰力の変化を補償する可変バルブ20を流路6と直列に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器、特に車両に搭載される緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される緩衝器として、例えば、磁気粘性流体のように温度によって粘度が変化し易い作動流体を用いたものがある(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】米国特許第6260675号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この種の緩衝器を用いた場合、緩衝器の減衰力特性が作動流体の温度によって変化するため、作動流体の高低温時に目標とする減衰力特性が得られない場合がある。
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、作動流体の温度が変化する場合においても安定した減衰力特性が得られる緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、作動流体が封入されたシリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に配置され前記シリンダ内を二つの流体室に画成するピストンと、前記ピストンに形成されピストンの摺動によって前記作動流体が通過すると共に当該作動流体に抵抗を付与する流路と、一端に前記ピストンが固定されるロッドとを備える緩衝器であって、温度変化による前記作動流体の粘性変化に起因する減衰力の変化を補償する可変バルブを前記流路と直列に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、作動流体の温度が変化し作動流体の粘性が変化した場合にでも、作動流体の粘性変化に起因する減衰力の変化を補償する可変バルブを備えるため、安定した減衰力特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0008】
(実施の形態1)
図1を参照して本発明の実施の形態1である緩衝器100について説明する。図1(a)は、緩衝器100の断面図であり、図1(b)は、図1(a)におけるB矢視図である。
【0009】
緩衝器100は、自動車等の車両の車体と車軸との間に介装され、車体姿勢の変化を抑制する機能を有するものである。
【0010】
緩衝器100は、作動流体が封入された筒状のシリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に配置され、シリンダ1内を二つの流体室3,4に画成するピストン2とを備える。
【0011】
ピストン2にはロッド5が貫通し、ピストン2はロッド5の一端に固定されている。ロッド5の他端は、シリンダ1の外部へ延在している。
【0012】
シリンダ1内には、ロッド5の侵入、退出によるシリンダ1内の容積変化を補償するガス室(図示せず)が設けられている。
【0013】
ピストン2は、ロッド5が挿通する円筒形状のピストンコア2aと、ピストンコア2aの外周に所定の間隔をもって配置された環状のリング体2bとを備える。ピストンコア2aの内周には、ロッド5がぴったりと嵌合している。
【0014】
ピストンコア2aの外周とリング体2bの内周との間には、作動流体が通過する環状の流路6が形成される。このように、ピストン2には流路6が形成される。
【0015】
リング体2bの外周には、シリンダ1内周と摺動する環状のシール部材16が設けられている。これにより、ピストン2はシリンダ1内を滑らかに摺動することができる。
【0016】
ピストン2の両端には、一対の環状のプレート11,12が配置され、プレート11,12の内周には、ロッド5が挿通しぴったりと嵌合している。
【0017】
一対のプレート11,12のうちロッド5基端側の第一のプレート11は、ロッド5に形成された環状段部5bにワッシャー19を介して当接し、ロッド5先端側の第二のプレート12は、ロッド5先端に形成された雄ねじと螺合するナット25によって押圧される。このようにして、ピストン2はロッド5に固定される。
【0018】
プレート11,12は、リング体2b両端部内周に形成された環状段部13,14に外周縁部が係合することによって、リング体2bを挟持している。このように、リング体2bは、一対のプレート11,12にて挟持されることによってピストンコア2a外周に対して位置決めされ、ピストンコア2aとの間に均等な環状流路6を形成する。
【0019】
プレート11,12の外縁には、リング体2bと係合した状態において流路6と連通する円弧状の貫通孔11a,12aがそれぞれ複数個形成されている(本実施の形態1では4個)。また、プレート11,12のピストン2に対峙する面における貫通孔11a,12aに対応する位置には、円弧状の溝11b,12bが形成されている。
【0020】
これにより、ピストン2がシリンダ1内を摺動することによって、作動流体は、貫通孔11a,12a、溝11b,12b、及び流路6を通り流体室3と流体室4との間を行き来する。
【0021】
作動流体が流路6を通過する際に、作動流体には抵抗が付与され、緩衝器100は減衰力を発生する。
【0022】
ここで、本実施の形態1のように、作動流体が通過する流路6が環状隙間の場合には、流路6を流れる作動流体の流量は以下の(1)式によって表される。
【0023】
Q=(πdh3ΔP)/(12μl) ・・・ (1)
Q:作動流体流量,d:流路直径,h:流路隙間量,l:流路長さ,ΔP:差圧,μ:作動流体粘度
式(1)からわかるように、緩衝器100の基本特性は粘度μによって変化する。このため、作動流体として粘度μが温度によって変化し易いものを用いた場合には、緩衝器100を使用する環境の温度変化に伴って緩衝器100の減衰力特性が変化することになる。
【0024】
そこで、緩衝器100は、温度変化による作動流体の粘性変化に起因する緩衝器の減衰力変化を補償する可変バルブ20を備える。
【0025】
可変バルブ20は、環状の部材であり、ワッシャー21を介して第二のプレート12に対向して配置され、ナット25によって押圧されている。
【0026】
可変バルブ20と第二のプレート12との間にワッシャー21が介在されることによって、可変バルブ20は、第二のプレート12との間にワッシャー21の厚さ分だけの所定の隙間22をもって配置される。この隙間22は、貫通孔12aを介して流路6と繋がっている。したがって、流路6は隙間22を通じて流体室4に開口することとなる。
【0027】
可変バルブ20は、変形して隙間22を狭めたり広げたりすることによって、流路6における隙間22を通じて流体室4に開口する面積(以下、「開口面積」と称する。)を変更するものであり、隙間22を通過する作動流体に抵抗を付与するものである。このように、可変バルブ20は流路6と直列に設けられて、作動流体に抵抗を付与するものである。
【0028】
可変バルブ20は、熱膨張率が異なる二つの金属を張り合わせたバイメタルにて構成され、熱膨張率が小さいメタル20aと熱膨張率が大きいメタル20bとからなる。
【0029】
可変バルブ20は、メタル20aが隙間22にのぞむ自由端側、また、メタル20bがナット25に接触する固定側となるように配置される。
【0030】
可変バルブ20をこのように配置することによって、作動流体の温度が上昇した場合には、熱膨張率が大きいメタル20bが伸びるため、可変バルブ20はメタル20aの方向、つまり隙間22に向かって湾曲する。
【0031】
このように、可変バルブ20は、作動流体の温度が上昇した場合には、流路6を閉じる方向に変形し、作動流体の温度が下降した場合には、元に戻ろうとするため流路6を開く方向に変形する。
【0032】
次に、シリンダ1内にてピストン2が摺動することによって、ピストン2両側の流体室3,4の作動流体が流路6を介して移動する際における可変バルブ20の動作について説明する。
【0033】
作動流体の温度が基準温度から上昇した場合には、作動流体の粘性は基準温度時の粘性と比較して小さくなる。この場合、作動流体は流路6を通過し易くなるため、流路6にて発生する減衰力は低下する。しかし、可変バルブ20は流路6を閉じる方向、つまり流路6の開口面積を小さくして減衰力を増加させる方向に変形する。
【0034】
一方、作動流体の温度が基準温度から低下した場合には、作動流体の粘性は基準温度時の粘度と比較して大きくなる。この場合、作動流体は流路6を通過し難くなるため、流路6にて発生する減衰力は増加する。しかし、可変バルブ20は流路6を開く方向、つまり流路6の開口面積を大きくして減衰力を低下させる方向に変形する。
【0035】
このように、流路6と直列に設けられた可変バルブ20は、温度変化による作動流体の粘性変化に起因する緩衝器100の減衰力変化を補償するように動作する。
【0036】
このことから、作動流体の温度が基準温度から変化した場合でも、緩衝器100の減衰力特性が基準温度時のものと同等の特性となるように、可変バルブ20の変形特性を設定すれば、緩衝器100の減衰力特性を作動流体の温度に依らず一定とすることができる。
【0037】
以上のように、可変バルブ20は、作動流体の温度変化に応じて流路22の開口面積を調整するものであり、緩衝器100の減衰力特性が作動流体の温度に依らず一定となるように流路22の開口面積を調整するものである。
【0038】
以上の本実施の形態1によれば、作動流体の温度変化に応じた可変バルブ20の変形を利用することによって、温度変化による作動流体の粘性変化に起因する緩衝器の減衰力変化を補償することができる。したがって、緩衝器100の減衰力特性を作動流体の温度に依らず一定とすることができるため、緩衝器100を環境温度の変化が激しい場所にて使用する場合においても、安定した減衰力特性を得ることができる。
【0039】
(実施の形態2)
図2を参照して本発明の実施の形態2である緩衝器200について説明する。図2は、緩衝器200の断面図である。
【0040】
本実施の形態2に係る緩衝器200と上記実施の形態1に係る緩衝器100とは、可変バルブ20の構造が相違する。なお、本実施の形態2において、上記実施の形態1における緩衝器100と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0041】
以下に、緩衝器200における可変バルブ20について説明する。
【0042】
可変バルブ20は、貫通孔12aを介して流路6にのぞむ弁体26と、弁体26に連結され温度変化に応じて変形することによって弁体26を流路6に対して近離方向に移動させるダイヤフラム27とを備える。
【0043】
弁体26及びダイヤフラム27は、環状の部材であり、双方の内周にはロッド5が挿通され、ロッド5に対して摺動自在である。
【0044】
弁体26とプレート12との間には弾性体であるスプリング28が介装されており、弁体26は、スプリング28によって流路6を開く方向に付勢されている。
【0045】
ダイヤフラム27は、内部に温度によって容積変化を起こす流体又は気体の媒体が封入され、温度変化に伴う媒体の膨張、収縮によって変形するものである。具体的には、ダイヤフラム27は、媒体の温度が上昇した場合には膨張し、媒体の温度が下降した場合には収縮する。
【0046】
したがって、作動流体の温度が上昇した場合には、ダイヤフラム27の膨張により、弁体26はスプリング28の付勢力に抗して流路6に近づく方向に移動するため、流路6の開口面積は小さくなる。
【0047】
また、作動流体の温度が下降した場合には、ダイヤフラム27の収縮により、弁体26はスプリング28の付勢力によって流路6から離れる方向に移動するため、流路6の開口面積は大きくなる。
【0048】
このように、可変バルブ20は、作動流体の温度が上昇した場合には、流路6を閉じる方向に変形し、作動流体の温度が下降した場合には、流路6を開く方向に変形する。
【0049】
したがって、ダイヤフラム27を用いた本実施の形態2における可変バルブ20も、温度変化による作動流体の粘性変化に起因する緩衝器200の減衰力変化を補償するように動作し、上記実施の形態1と同様の作用効果を奏する。
【0050】
(実施の形態3)
図3を参照して本発明の実施の形態3である緩衝器300について説明する。図3は、緩衝器300の断面図である。
【0051】
緩衝器300も、上記実施の形態1に係る緩衝器100と同様に、ピストン2に作動流体が通過する流路6が形成されると共に、その流路6と直列に設けられた可変バルブ20を備える。
【0052】
本実施の形態3に係る緩衝器300と上記実施の形態1に係る緩衝器100とは、流路6を構成するピストン2の構造と、可変バルブ20の構造とが相違する。以下に、その相違点を中心に緩衝器300について説明する。
【0053】
まず、ピストン2の構造について説明する。
【0054】
ピストン2は、ロッド5が挿入される穴30を有するピストンコア2aと、ピストンコア2aの外周に所定の間隔をもって配置された環状のリング体2bとを備える。
【0055】
ピストンコア2aの外周とリング体2bの内周との間が、作動流体が通過する環状の流路6である。
【0056】
リング体2bは、ピストンコア2aの基端側外周に嵌合した環状のプレート31によって、ピストンコア2a外周に対して位置決めされ、ピストンコア2aとの間に均等な環状流路6を形成する。
【0057】
プレート31には、外縁に沿って環状突起31aが形成され、リング体2bは、環状突起31aの内周に圧入されることによって、プレート31と一体となっている。
【0058】
プレート31の内周面は、ピストンコア2aの基端側外周の小径部32に、ぴったりと嵌合している。そして、プレート31がピストンコア2aから抜けないように、ピストンコア2aの基端外周にはナット33が螺合している。
【0059】
プレート31には、ピストンコア2aと嵌合した状態において流路6と連通すると共に、流体室3に対して開口する円弧状の貫通孔31bが複数個形成されている。
【0060】
以上のように、本実施の形態3におけるリング体2bは、一端のみがプレート31によって支持され、他端は自由端となっている。したがって、自由端側では、流路6は流体室4に対して環状に開口している。
【0061】
ピストンコア2a、リング体2b、プレート31、及びナット33によってピストンアッセンブリが構成され、このピストンアッセンブリは、ロッド5の先端部がピストンコア2aの穴30に螺合することによって、ロッド5の一端に固定される。
【0062】
ピストン2がシリンダ1内を摺動することによって、作動流体は、貫通孔31b及び流路6を通り流体室3と流体室4との間を行き来する。
【0063】
次に、可変バルブ20について説明する。
【0064】
可変バルブ20は、リング体2bの自由端側であるピストン2の先端に配置される。
【0065】
上記実施の形態1では、緩衝器の減衰力変化を補償する可変バルブ20としてバイメタルを用いたが、本実施の形態2では、可変バルブ20は、磁場を受けることによって弾性変形する磁歪材料にて構成される磁歪体36と、磁歪体36外周に巻装されたコイル37と、磁歪体36に連結され流路6にのぞむ円板状の弁体38とを備える。
【0066】
磁歪体36は、外周にコイル37が巻装された状態にて、その基端がピストンコア2a先端の凹部35に固定される。
【0067】
弁体38は、磁歪体36を介して流路6にのぞんでいるため、流路6の開口部から所定の隙間22をもって配置される。このように、隙間22は流路6と繋がっているため、流路6は隙間22を通じて流体室4に開口することになる。
【0068】
可変バルブ20は、磁歪体36の変形を利用して弁体38を移動させ隙間22を狭めたり広げたりすることによって、流路6の開口面積を変更して隙間22を通過する作動流体に抵抗を付与するものである。このように、可変バルブ20は流路6と直列に設けられて、作動流体に抵抗を付与するものである。
【0069】
コイル37には車両に搭載されたコントローラ(図示せず)からの電流が入力され、磁歪体36は、コイル37の通電によって発生する磁場を受けて弾性変形する。
【0070】
なお、コイル37に接続されるリード線は、ピストンコア2aに形成された通路(図示せず)とロッド5の中空部とを挿通しコントローラに接続されている。
【0071】
磁歪体36は励磁状態では、ロッド5の軸方向と直角方向に伸びる。これにより、磁歪体36に連結された弁体38は、流路6に近づく方向に移動するため、流路6の開口面積は小さくなる。
【0072】
また、磁歪体36に対する磁場を取り除き非励磁とすることによって磁歪体36は元の状態に戻る。これにより、弁体38も元の位置に戻る。
【0073】
このことから、作動流体の温度をセンサ等の検知器によって検出し、作動流体の温度が上昇した場合には弁体38が流路6を閉じる方向に磁歪体36を変形させ、作動流体の温度が下降した場合には弁体38が流路6を開く方向に磁歪体36を変形させるように、磁歪体36に対して磁場をかけるようにすれば、実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0074】
磁歪体36の変形量(伸び量)は、磁歪体36が受ける磁場の強さによって決まり、磁歪体36が受ける磁場の強さは、コイル37への通電量を調整することによって変化させることができる。
【0075】
したがって、コイル37への通電量を調整し磁歪体36の変形量を調整することによって、流路6の開口面積を自由に変更することができる。
【0076】
したがって、磁歪体36の変形量を、温度変化による作動流体の粘性変化に起因する緩衝器の減衰力変化を補償するように制御すれば、緩衝器300の減衰力特性を作動流体の温度に依らず一定とすることができる。
【0077】
以上のように、本実施の形態3によれば、作動流体の温度変化に応じた磁歪体36の変形を利用することによって、温度変化による作動流体の粘性変化に起因する緩衝器の減衰力変化を補償することができる。したがって、緩衝器300の減衰力特性を作動流体の温度に依らず一定とすることができるため、緩衝器300を環境温度の変化が激しい場所にて使用する場合においても、安定した減衰力特性を得ることができる。
【0078】
(実施の形態4)
図4を参照して本発明の実施の形態4である緩衝器400について説明する。図4は、緩衝器400の断面図である。
【0079】
本実施の形態4に係る緩衝器400における上記実施の形態1に係る緩衝器100との相違点は、作動流体が磁気粘性流体である点である。
【0080】
なお、本実施の形態4において、上記実施の形態1における緩衝器100と同様の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0081】
磁気粘性流体は、磁界の作用によって見かけの粘性が変化するものであり、油等の液体中に強磁性を有する微粒子を分散させた液体である。磁気粘性流体の粘性は、作用する磁界の強さを変更することによって調節することができ、磁界を除くことによって元の状態に戻る。
【0082】
ピストンコア2a及びリング体2bは、磁性材料にて構成される。
【0083】
ピストンコア2aの外周には環状の凹部8が形成され、この凹部8内にはコイル9が収容されている。このように、コイル9は、ピストンコア2aの外周に巻装され、流路6に面して形成されている。
【0084】
したがって、コイル9に電流を流すことによってコイル9は磁場を発生し、その磁場は、ピストンコア2a及びリング体2bが形成する磁気通路を介して、流路6を流れる磁気粘性流体に作用することになる。
【0085】
ピストンコア2aには、通路2cが形成されている。コイル9のリード線9aは通路2cを挿通すると共に、ロッド5の中空部を挿通し、車両に搭載されたコントローラ(図示せず)に接続されている。このようにして、コイル9には、コントローラからの駆動電流が入力される。
【0086】
磁気粘性流体に起因して発生する減衰力について説明する。
【0087】
シリンダ1内にてピストン2が摺動すると、ピストン2両側の流体室3,4の磁気粘性流体が流路6を介して移動する。このとき、コイル9に電流を流すと流路6を流れる磁気粘性流体に磁場が作用し、磁気粘性流体の粘性が変化する。これにより、緩衝器400は、流路6を流れる磁気粘性流体の粘性抵抗の大きさに応じた減衰力を発生する。
【0088】
コイル9の電流が大きくなるほど磁気粘性流体の粘性は大きくなり、緩衝器400の発生する減衰力も大きくなる。このように、緩衝器400が発生する減衰力の調節は、コイル9への通電量を変化させ流路6を流れる磁気粘性流体に作用する磁場の強さを変化させることによって行われる。
【0089】
本実施の形態4に係る緩衝器400は以下に示す効果を奏する。
【0090】
コイル9に流す電流を調整することによって流路6を流れる磁気粘性流体の粘性抵抗を調整し所望の減衰力を発生させる際、温度変化によって磁気粘性流体の粘性が変化した場合には、所望の減衰力が得られない可能性がある。
【0091】
しかし、磁気粘性流体を用いた緩衝器に可変バルブ20を適用することによって、温度変化による磁気粘性流体の粘性変化に起因する減衰力の変化を補償することができるため、所望の減衰力を得ることができる。
【0092】
このように、本実施の形態4に係る緩衝器400によれば、環境温度の変化が激しい環境にて使用する場合においても、安定した減衰力特性を得ることができる。
【0093】
なお、上記実施の形態2及び実施の形態3に係る緩衝器200及び緩衝器300の作動流体を磁気粘性流体としても同様の作用効果を得ることができる。
【0094】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、車両に搭載する緩衝器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)本発明の実施の形態1における緩衝器100を示す断面図である。(b)図1(a)におけるB矢視図である。
【図2】本発明の実施の形態2における緩衝器200を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3における緩衝器300を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態4における緩衝器400を示す断面図である。
【符号の説明】
【0097】
100,200,300,400 緩衝器
1 シリンダ
2 ピストン
2a ピストンコア
2b リング体
3,4 流体室
5 ロッド
6 流路
9 コイル
11,12,31 プレート
20 可変バルブ
20a 熱膨張率が小さいメタル
20b 熱膨張率が大きいメタル
21 ワッシャー
22 隙間
23 コイル
26 弁体
27 ダイヤフラム
28 スプリング
36 磁歪体
37 コイル
38 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダ内に摺動自在に配置され、前記シリンダ内を二つの流体室に画成するピストンと、
前記ピストンに形成され、ピストンの摺動によって前記作動流体が通過すると共に当該作動流体に抵抗を付与する流路と、
一端に前記ピストンが固定されるロッドと、を備える緩衝器であって、
温度変化による前記作動流体の粘性変化に起因する減衰力の変化を補償する可変バルブを前記流路と直列に設けたことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記可変バルブは、前記作動流体の温度変化に応じて、前記流路の開口面積を調整することを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記可変バルブは、緩衝器の減衰力特性が、前記作動流体の温度に依らず一定となるように前記流路の開口面積を調整することを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記可変バルブは、前記作動流体の温度が上昇した場合には前記流路を閉じる方向に変形し、前記作動流体の温度が下降した場合には前記流路を開く方向に変形するバイメタルであるであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記可変バルブは、温度によって容積変化を起こす媒体が封入されたダイヤフラムを備え、
前記ダイヤフラムは、前記作動流体の温度が上昇した場合には前記流路を閉じる方向に変形し、前記作動流体の温度が下降した場合には前記流路を開く方向に変形することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記可変バルブは、外部から磁場を受けることによって弾性変形する磁歪体を備え、
前記磁歪体は、
前記作動流体の温度が上昇した場合には前記流路を閉じる方向に変形し、前記作動流体の温度が下降した場合には前記流路を開く方向に変形するように、磁場を受けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の緩衝器。
【請求項7】
作動流体の温度が基準温度から変化した場合でも、緩衝器の減衰力特性が基準温度時のものと同等の特性となるように、前記可変バルブの変形特性を設定することを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の緩衝器。
【請求項8】
前記作動流体は磁気粘性流体であり、
前記ピストンは、
前記ロッドが挿入されると共に前記流路に磁界を作用させるコイルを外周に巻装したピストンコアと、
当該ピストンコアの外周に所定の間隔をもって配置され前記ピストンコアの外周との間に前記流路を形成するリング体と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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