説明

緩衝器

【課題】減衰力特性を滑らかにすることが可能な緩衝器の提供。
【解決手段】作動流体が封入されたシリンダ1と、シリンダ1内に摺動可能に嵌装され、シリンダ1内を2室4,5に区画するピストン3と、ピストン3に連結されると共にシリンダ1の外部に延出されたピストンロッド8と、ピストン3の移動によりシリンダ1内の室4,5の一方から作動流体が流れ出す第1通路30a,30bおよび第2通路135,136と、第1通路30a,30bに設けられて減衰力を発生させる減衰力発生機構32a,32bと、第2通路135,136の途中に設けられた圧力室132と、圧力室132内に移動可能に設けられて第2通路135,136を2つの領域に画成するフリーピストン57と、圧力室132の内外通路口111,112に設けられた減衰弁117,121とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器には、振動状態に応じて減衰力特性が可変となる緩衝器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−19642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、緩衝器においては減衰力特性を滑らかにすることが求められている。
【0005】
したがって、本発明は、減衰力特性を滑らかにすることが可能な緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、2室間を連通する第1通路および第2通路と、前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる減衰力発生機構と、前記第2通路の途中に設けられた圧力室と、前記圧力室内に移動可能に設けられて前記第2通路を2つの領域に画成するフリーピストンと、前記圧力室の内外通路口に設けられた減衰弁と、を備える構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、減衰力特性を滑らかにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す要部の拡大断面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の緩衝器のベース部材を示す平面図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態のストロークと減衰力との関係を示す特性線図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の緩衝器を示す断面図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態の緩衝器を示す要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下で説明の実施の形態は、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載した内容に止まること無くその他にもいろいろな課題を解決し、効果を呈している。以下の実施の形態が解決する課題の主なものを、上述の欄に記載した内容をも含め、次に列挙する。
〔特性改善〕
振動状態に応じて減衰力特性(ピストン速度に対する減衰力)を変更する際に、より滑らかに変更する等の特性設定が求められている。これは、小さな減衰力が発生する特性と、大きな減衰力が発生する特性の切り替わりが唐突に起こると、実際に発生する減衰力も唐突に切り替わるので、車両の乗り心地が悪化し、さらには減衰力の切り替わりが車両の操舵中に発生すると、車両の挙動が不安定となり、運転者が操舵に対して違和感を招く恐れがあるためである。そのため、先に示した特許文献1に示すようにより滑らかに変更する特性設定が検討されているが、さらなる特性改善が望まれている。
〔大型化の抑制〕
周波数感応機構は、フリーピストンが上下動する領域が必要であるため、領域を大きくすると軸方向に長くなるということがあげられる。シリンダ装置が大型化すると、車体への取付け自由度が低下するため、シリンダ装置の軸方向長の増加は、大きな課題であり、周波数感応部の小型化は、強い要求がある。
〔部品数の低減〕
周波数感応機構は、ピストンに加え、ハウジングやフリーピストンなどの構成部品が備えられるため、部品数は増えることになる。部品数が増えると、生産性、耐久性、信頼性などに影響がでるため、所望の特性、つまり振動周波数の広い領域に対応した減衰力特性が得られるような特性を出しつつ、部品数の低減が望まれている。
以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
「第1実施形態」
本発明に係る第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。以下の説明では理解を助けるために、図の下側を一方側とし、逆に図の上側を他方側として定義する。
【0011】
第1実施形態の緩衝器は、図1に示すように、いわゆる複筒式の油圧緩衝器で、作動流体としての油液が封入される有底円筒状のシリンダ1と、シリンダ1より大径でシリンダ1と同軸状に配置されてシリンダ1を覆う外筒2とを有している。シリンダ1内には、ピストン3が摺動可能に嵌装され、このピストン3により、シリンダ1内が上室4および下室5の2室に区画されている。ピストン3は、ピストン本体6と、その外周面に装着される円環状の摺動部材7とによって構成されている。
【0012】
ピストン本体6は、ピストンロッド8の一端部に連結されており、ピストンロッド8の他端側は、シリンダ1の開口側に装着されたロッドガイド9およびオイルシール10等に挿通されてシリンダ1の外部へ延出されている。外筒2のピストンロッド8の突出側とは反対側の端部はベースキャップ11で閉塞されており、ベースキャップ11とシリンダ1との間には、ベースバルブ12が取り付けられている。シリンダ1内の上室4および下室5内には、油液が封入されており、シリンダ1と外筒2との間はリザーバ室13とされている。リザーバ室13には油液および高圧のガスが封入されている。
【0013】
ベースバルブ12は、下室5とリザーバ室13との連通および遮断を制御するもので、下室5側の圧力がリザーバ室13側の圧力よりも高い状態で、下室5からリザーバ室13側への油液の流れを許容して減衰力を発生し、下室5側の圧力がリザーバ室13側の圧力よりも低い状態で、リザーバ室13から下室5側への油液の流れを許容する。ピストンロッド8のシリンダ1からの突出量が変化すると、シリンダ1内の容積が増減することになり、これに対応して油液がベースバルブ12を介して下室5とリザーバ室13との間で給排される。
【0014】
ピストンロッド8は、主軸部15と、これより小径でピストン3が取り付けられる一端側の取付軸部16とを有している。ピストンロッド8には、ピストン3とロッドガイド9との間の主軸部15の外周側にストッパ17が固定されている。ストッパ17のピストン3とは反対にはバネ受18が配置されており、バネ受18のストッパ17とは反対にはコイルスプリング19が配置されている。コイルスプリング19のバネ受18とは反対にはバネ受20が配置されており、このバネ受20のコイルスプリング19とは反対側には緩衝体21が設けられている。ピストンロッド8がシリンダ1から所定量突出すると、緩衝体21がロッドガイド9に当接することになり、さらにピストンロッド8が突出すると、緩衝体21およびバネ受20がピストンロッド8上を摺動しつつコイルスプリング19をバネ受18との間で縮長させることになる。これにより、コイルスプリング19がピストンロッド8の突出に抵抗する力を発生させる。
【0015】
上述の緩衝器の例えば一方側は車体により支持され、上記緩衝器の他方側に車輪側が固定される。この逆に緩衝器の他方側が車体により支持され緩衝器の一方側に車輪側が固定されるようにしても良い。車輪が走行に伴って振動すると該振動に伴ってシリンダ1とピストンロッド8との位置が相対的に変化するが、上記変化はピストン3に形成された流路の流体抵抗により抑制される。以下で詳述するごとくピストン3に形成された流路の流体抵抗は振動の速度や振幅により異なるように作られており、振動を抑制することにより、乗り心地が改善される。上記シリンダ1とピストンロッド8との間には、車輪が発生する振動の他に、車両の走行に伴って車体に発生する慣性力や遠心力も作用する。例えばハンドル操作により走行方向が変化することにより車体に遠心力が発生し、この遠心力に基づく力が上記シリンダ1とピストンロッド8との間に作用する。以下で説明するとおり、本実施の形態の緩衝器は車両の走行に伴って車体に発生する力に基づく振動に対して良好な特性を有しており、車両走行における高い安定性が得られる。
【0016】
図2に示すように、ピストン本体6には、上室4と下室5とを連通させ、ピストン3の上室4側への移動、つまり伸び行程において上室4から下室5に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30aと、ピストン3の下室5側への移動、つまり縮み行程において下室5から上室4に向けて油液が流れ出す複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路(第1通路)30bが設けられている。これらのうち半数を構成する通路30aは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30bを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン3の軸方向一側(図2の上側)が径方向外側に軸方向他側(図2の下側)が径方向内側に開口している。
【0017】
そして、これら半数の通路30aに、減衰力を発生する減衰力発生機構32aが設けられている。減衰力発生機構32aは、ピストン3の軸線方向の下室5側に配置されてピストンロッド8の取付軸部16に取り付けられている。通路30aは、ピストンロッド8がシリンダ1外に伸び出る伸び側にピストン3が移動するときに油液が通過する伸び側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構32aは、伸び側の通路30aの油液の流動を制御して減衰力を発生させる伸び側の減衰力発生機構を構成している。
【0018】
また、残りの半数を構成する通路30bは、円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路30aを挟んで等ピッチで形成されており、ピストン3の軸線方向他側(図2の下側)が径方向外側に軸線方向一側(図2の上側)が径方向内側に開口している。
【0019】
そして、これら残り半数の通路30bに、減衰力を発生する減衰力発生機構32bが設けられている。減衰力発生機構32bは、ピストン3の軸線方向の上室4側に配置されてピストンロッド8の取付軸部16に取り付けられている。通路30bは、ピストンロッド8がシリンダ1内に入る縮み側にピストン3が移動するときに油液が通過する縮み側の通路を構成しており、これらに対して設けられた減衰力発生機構32bは、縮み側の通路30bの油液の流動を制御して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構を構成している。
【0020】
ピストンロッド8には、取付軸部16のピストン3よりもさらに下室5側の端側に減衰力可変機構35が取り付けられている。
【0021】
ピストン本体6は、略円板形状をなしており、その中央には、軸方向に貫通して、上記したピストンロッド8の取付軸部16を挿通させるための挿通穴38が形成されている。
【0022】
ピストン本体6の下室5側の端部には、伸び側の通路30aの一端開口位置に、減衰力発生機構32aを構成する環状のシート部41aが形成されている。ピストン本体6の上室4側の端部には、縮み側の通路30bの一端の開口位置に、減衰力発生機構32bを構成する環状のシート部41bが形成されている。
【0023】
ピストン本体6において、シート部41aの挿通穴38とは反対側は、シート部41aよりも軸線方向高さが低い環状の段差部42bとなっており、この段差部42bの位置に縮み側の通路30bの他端が開口している。また、シート部41aには、軸方向に凹む通路溝(オリフィス)43aが、それぞれ通路30aからピストン3の径方向外側に延在して段差部42bに抜けるように形成されている。同様に、ピストン本体6において、シート部41bの挿通穴38とは反対側は、シート部41bよりも軸線方向高さが低い環状の段差部42aとなっており、この段差部42aの位置に伸び側の通路30aの他端が開口している。また、シート部41bにも、軸方向に凹む通路溝(オリフィス)43bが、それぞれ通路30bからピストン3の径方向に外側に延在して段差部42aに抜けるように形成されている。
【0024】
減衰力発生機構32aは、シート部41aの全体に同時に着座可能な環状のディスクバルブ45aと、ディスクバルブ45aよりも小径であってディスクバルブ45aのピストン本体6とは反対側に配置される環状のスペーサ46aと、スペーサ46aよりも大径であってスペーサ46aのピストン本体6とは反対側に配置される環状のバルブ規制部材47aとを有している。ディスクバルブ45aは複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されており、シート部41aから離座することで通路30aを開放する。バルブ規制部材47aはディスクバルブ45aの開方向への規定以上の変形を規制する。
【0025】
同様に、減衰力発生機構32bは、シート部41bの全体に同時に着座可能な環状のディスクバルブ45bと、ディスクバルブ45bよりも小径であってディスクバルブ45bのピストン本体6とは反対側に配置される環状のスペーサ46bと、スペーサ46bよりも大径であってスペーサ46bのピストン本体6とは反対側に配置される環状のバルブ規制部材47bとを有している。このバルブ規制部材47bは、ピストンロッド8の主軸部15の取付軸部16側の端部の軸段部48に当接している。ディスクバルブ45bも複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されており、シート部41bから離座することで通路30bを開放する。バルブ規制部材47bはディスクバルブ45bの開方向への規定以上の変形を規制する。
本実施の形態では、減衰力発生機構32a、32bを内周クランプのディスクバルブの例を示したが、これに限らず、減衰力を発生する機構であればよく、例えば、ディスクバルブをコイルバネで付勢するリフトタイプのバルブとしてもよく、また、ポペット弁であってもよい。
【0026】
ピストンロッド8の先端部にはオネジ49が形成されており、このオネジ49に減衰力可変機構35が螺合されている。減衰力可変機構35は、ピストンロッド8のオネジ49に螺合されるメネジ50が形成された蓋部材51と、この蓋部材51にその一端開口側が閉塞されるように取り付けられる略円筒状のハウジング本体52と、ハウジング本体52の他端開口側を閉塞するように取り付けられる減衰弁機構53の円板状のベース部材54とからなるハウジング55と、このハウジング55内に摺動可能に嵌挿されるフリーピストン57と、フリーピストン57とハウジング55の蓋部材51との間に介装されてフリーピストン57が一方向へ移動したときに圧縮変形する縮み側の弾性体であるOリング58と、フリーピストン57とハウジング55のハウジング本体52との間に介装されてフリーピストン57が他方向へ移動したときに圧縮変形する伸び側の弾性体であるOリング59とで構成されている。なお、図2においては便宜上自然状態のOリング58,59を図示している。特にOリング59は、シールとしても機能するので、取り付けられた状態で常時、変形(断面非円形)しているように配置されることが望ましい。
【0027】
蓋部材51は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状の蓋内筒部62と、この蓋内筒部62の軸方向の端部から径方向外側に延出する円板状の蓋板部63と、蓋板部63の外周側から蓋内筒部62と同方向に延出する蓋外筒部64とを有している。
【0028】
蓋内筒部62の内周部には、軸方向の中間位置から蓋板部63とは反対側の端部位置まで径方向内側に突出して上記したメネジ50が形成されている。また、蓋外筒部64の内周面は、蓋板部63側から順に、小径円筒面部66、テーパ面部67および曲面部68を有している。小径円筒面部66は一定径をなしており、小径円筒面部66に繋がるテーパ面部67は、小径円筒面部66から離れるほど大径となっている。テーパ面部67に繋がる曲面部68は、テーパ面部67から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部68は蓋部材51の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。
【0029】
ハウジング本体52は、切削加工を主体として形成されるもので、軸方向一側が窄まる略円筒状をなしている。ハウジング本体52の内周部には、その窄まる部分に、径方向内方に突出する円環状の内側環状突起79が形成されている。ハウジング本体52の内周面には、軸方向一側から順に、小径側嵌合円筒面部80、これより小径の小径円筒面部81、テーパ面部82、曲面部83、大径円筒面部84、これより大径の大径側嵌合円筒面部85が形成されている。小径円筒面部81は一定径をなしており、小径円筒面部81に繋がるテーパ面部82は、小径円筒面部81から離れるほど大径となっている。テーパ面部82に繋がる曲面部83は、テーパ面部82から離れるほど大径の円環状となっており、曲面部83に繋がる大径円筒面部84は、小径円筒面部81より大径の一定径をなしている。大径円筒面部84に軸方向で隣り合う大径側嵌合円筒面部85は、大径円筒面部84より大径となっている。曲面部83はハウジング本体52の中心軸線を含む断面が円弧状をなしており、小径円筒面部81とテーパ面部82と曲面部83とが、内側環状突起79に形成されている。
【0030】
このようなハウジング本体52の大径側嵌合円筒面部85に、蓋部材51の蓋外筒部64が嵌合している。この大径側嵌合円筒面部85に嵌合することで、蓋外筒部64は、その曲面部68が、ハウジング本体52の大径円筒面部84と段差なく連続するようになっている。テーパ面部67および曲面部68は、大径円筒面部84よりも径方向内方に突出する、蓋部材51の内側環状突起86に形成されている。なお、ハウジング本体52を略円筒と記述しているが、内周面は断面円形となることが望ましいが、外周面は、多角形等断面非円形であってもよい。
【0031】
ここで、ハウジング本体52には、蓋部材51が、蓋内筒部62および蓋外筒部64を先側にし蓋板部63を後側にして、蓋外筒部64にて大径側嵌合円筒面部85に嵌合することになる。この状態でハウジング本体52の大径側嵌合円筒面部85の一部を形成し蓋部材51から突出する端部が内側に加締められることで、ハウジング本体52に蓋部材51が固定され一体化される。また、減衰弁機構53の円板状のベース部材54が小径側嵌合円筒面部80に嵌合することになり、この状態でハウジング本体52の小径側嵌合円筒面部80の一部を形成しベース部材54から突出する端部が内側に加締められることで、ハウジング本体52にベース部材54が固定され一体化される。このように、一体化されたハウジング本体52、蓋部材51およびベース部材54が、ハウジング55を構成する。
【0032】
フリーピストン57は、切削加工を主体として形成されるもので、略円筒状のピストン筒部91と、このピストン筒部91の軸方向の中間部を閉塞するピストン閉板部92とを有しており、ピストン筒部91には径方向外方に突出する円環状の外側環状突起93が軸方向の中間位置に形成されている。
【0033】
ピストン筒部91の外周面には、外側環状突起93よりも下室5側に小径円筒面部97が形成されており、外側環状突起93には、下室5から順に、曲面部98、テーパ面部99、大径円筒面部100、テーパ面部101、曲面部102および小径円筒面部103が形成されている。
【0034】
小径円筒面部97は一定径となっており、この小径円筒面部97に繋がる曲面部98は小径円筒面部97から離れるほど大径の円環状となっている。曲面部98に繋がるテーパ面部99は、曲面部98から離れるほど大径となっており、テーパ面部99に繋がる大径円筒面部100は、小径円筒面部97より大径の一定径をなしている。曲面部98はフリーピストン57の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。
【0035】
大径円筒面部100に繋がるテーパ面部101は大径円筒面部100から離れるほど小径となり、テーパ面部101に繋がる曲面部102は、テーパ面部101から離れるほど小径の円環状をなしている。曲面部102に小径円筒面部103が繋がっており、この小径円筒面部103は、小径円筒面部97と同径となっている。曲面部102はフリーピストン57の中心軸線を含む断面が円弧状をなしている。外側環状突起93はその軸線方向の中央位置を通る平面に対して対称形状をなしている。フリーピストン57は、外側環状突起93の軸方向の中央位置に、外側環状突起93を径方向に貫通する貫通穴105が複数形成されている。
【0036】
フリーピストン57は、ハウジング55内に配置された状態で、大径円筒面部100においてハウジング本体52の大径円筒面部84に摺動可能に嵌挿されることになる。また、フリーピストン57は、一方の小径円筒面部97がハウジング本体52の小径円筒面部81に、他方の小径円筒面部103が蓋部材51の蓋外筒部64の小径円筒面部66に、それぞれ、位置によって摺動可能となっている。ハウジング55内に配置された状態で、ハウジング本体52のテーパ面部82とフリーピストン57の曲面部98とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになり、ハウジング本体52の曲面部83とフリーピストン57のテーパ面部99とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、ハウジング本体52のテーパ面部82および曲面部83の全体と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の全体とがフリーピストン57の移動方向で対向する。加えて、蓋部材51の蓋外筒部64のテーパ面部67とフリーピストン57の曲面部102とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになり、蓋部材51の蓋外筒部64の曲面部68とフリーピストン57のテーパ面部101とがこれらの径方向において位置を重ね合わせることになる。よって、蓋部材51のテーパ面部67および曲面部68の全体と、フリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101の全体とがフリーピストン57の移動方向で対向する。
【0037】
そして、フリーピストン57の小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99と、ハウジング本体52のテーパ面部82、曲面部83および大径円筒面部84との間に、言い換えれば、フリーピストン57の外側環状突起93とハウジング55の一方の内側環状突起79との間に、Oリング59(図2において自然状態を図示)が配置されている。このOリング59は、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなし、内径がフリーピストン57の小径円筒面部97よりも小径で、外径がハウジング本体52の大径円筒面部84よりも大径となっている。つまり、Oリング59は、フリーピストン57およびハウジング本体52の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
【0038】
また、ハウジング本体52の大径円筒面部84と、蓋部材51のテーパ面部67および曲面部68と、フリーピストン57のテーパ面部101、曲面部102および小径円筒面部103との間に、言い換えれば、フリーピストン57の外側環状突起93とハウジングの他方の内側環状突起86との間に、Oリング58(図2において自然状態を図示)が配置されている。このOリング58も、自然状態にあるとき、中心軸線を含む断面が円形状をなしており、内径がフリーピストン57の小径円筒面部103よりも小径で、外径がハウジング本体52の大径円筒面部84よりも大径となっている。つまり、Oリング58も、フリーピストン57およびハウジング55の両方に対してこれらの径方向に締め代をもって嵌合される。
【0039】
両Oリング58,59は、同じ大きさのものであり、フリーピストン57をハウジング55に対して所定の中立位置に保持するとともにフリーピストン57のハウジング55に対する軸方向の上室4側および下室5側の両側への軸方向移動を許容する。
【0040】
フリーピストン57においては、Oリング58が小径円筒面部103、曲面部102およびテーパ面部101に接触することになり、これらのうち曲面部102およびテーパ面部101は、フリーピストン57の移動方向に対し傾斜している。また、ハウジング55においては、Oリング58が大径円筒面部84、テーパ面部67および曲面部68に接触することになり、これらのうちテーパ面部67および曲面部68は、フリーピストン57の移動方向に対し傾斜している。
【0041】
言い換えれば、フリーピストン57の外周部に外側環状突起93を設け、この外側環状突起93の軸方向両面は、曲面部98およびテーパ面部99と、曲面部102およびテーパ面部101とを構成し、ハウジング55の内周における、外側環状突起93の両側の位置に、テーパ面部82および曲面部83を構成する内側環状突起79と、テーパ面部67および曲面部68を構成する内側環状突起86とを設け、外側環状突起93と、内側環状突起79および内側環状突起86との間にそれぞれOリング59およびOリング58を設けている。
【0042】
そして、フリーピストン57の小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99において、Oリング59に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング55の大径円筒面部84、曲面部83およびテーパ面部82において、Oリング59に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン57の移動によってOリング59に接触している部分の最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン57のフリーピストン接触面と、ハウジング55のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング59が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部97、曲面部98およびテーパ面部99と大径円筒面部84、曲面部83およびテーパ面部82との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の上室4側に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング59が接触している部分の最短距離は大径円筒面部84と小径円筒面部97との半径差である(大径円筒面部84と小径円筒面部97との半径差よりもOリング59の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング59がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動すると、Oリング59との接触部分は曲面部98と曲面部83となり、最もOリング59が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
【0043】
同様に、フリーピストン57の小径円筒面部103、曲面部102およびテーパ面部101において、Oリング58に接触している部分であるフリーピストン接触面と、ハウジング55の大径円筒面部84、曲面部68およびテーパ面部67において、Oリング58に接触している部分であるハウジング接触面とが、フリーピストン57の移動によってOリング58に接触している部分の最短距離が変化し、最短距離となる部分を結ぶ線分の向きが変化する。言い換えれば、フリーピストン57のフリーピストン接触面と、ハウジング55のハウジング接触面と、それぞれのうちOリング58が接触している部分の最短距離を結ぶ線分の向きが変化するように小径円筒面部103、曲面部102およびテーパ面部101と、大径円筒面部84、曲面部68およびテーパ面部67との形状が設定されている。具体的に、フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室5側に位置するとき、フリーピストン接触面とハウジング接触面と、それぞれのうちOリング58が接触している部分の最短距離は大径円筒面部84と小径円筒面部103との半径差である(大径円筒面部84と小径円筒面部103との半径差よりもOリング58の外径と内径の半径差の方が大であるため、Oリング58がその差分潰れ、その部分、つまり最短距離の線分は傾斜角0となる)。一方フリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の上室4側に移動すると、Oリング58との接触部分は曲面部68と曲面部102となり、最もOリング58が潰される位置、つまり最短距離の線分の傾斜角が斜めになる。
【0044】
減衰弁機構53の円板状のベース部材54には、中央に嵌合穴110が軸方向に沿って貫通形成されている。図3に示すように、ベース部材54には、この嵌合穴110を中心として互いに180度異なる位置に二箇所のオリフィスとしての流入穴(内外通路口)111が軸方向に沿って貫通形成され、これら流入穴111と90度異なる位置に、二箇所のオリフィスとしての流出穴(内外通路口)112が軸方向に沿って貫通形成されている。二箇所の流出穴112も、嵌合穴110を中心として互いに180度位置を異ならせている。ベース部材54には、その軸方向一側に、流入穴111をそれぞれ囲むように軸方向に突出する流入側シート部113が形成されており、これら流入側シート部113は嵌合穴110の周囲を囲むようにして互いに繋がっている。二箇所の流入側シート部113は全体として嵌合穴110を中心とした円形ではなく、異形シートとなっている。ベース部材54には、その軸方向他側にも、流出穴112をそれぞれ囲むように軸方向に突出する流出側シート部114が形成されており、これら流出側シート部114も嵌合穴110の周囲を囲むようにして互いに繋がっている。流出側シート部114も異形シートとなっている。なお、ベース部材54は表裏が同一形状となっており、ハウジング本体52への取り付けの向きによって、流入穴111、流出穴112、流入側シート部113および流出側シート部114が規定される。
【0045】
図2に示すように、減衰弁機構53は、ベース部材54の流入穴111を囲む流入側シート部113の全体に同時に着座可能な円環状の流入側ディスクバルブ(減衰弁)117と、流入側ディスクバルブ117よりも小径であって流入側ディスクバルブ117のベース部材54とは反対側に配置される円環状のスペーサ118と、スペーサ118よりも大径であってスペーサ118のベース部材54とは反対側に配置される円環状のバルブ規制部材119とを有している。これら流入側ディスクバルブ117、スペーサ118およびバルブ規制部材119はハウジング55の内側に配置されている。
【0046】
流入側ディスクバルブ117は、複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されており、流入側シート部113に着座することで流入穴111を閉塞し、流入側シート部113から離座することで流入穴111を開放するとともに、離座時の変形量に応じて流入穴111の開放通路面積を変化させる。また、バルブ規制部材119は流入側ディスクバルブ117の開方向への規定以上の変形を規制する。
【0047】
減衰弁機構53は、ベース部材54の流出穴112を囲む流出側シート部114の全体に同時に着座可能な円環状の流出側ディスクバルブ(減衰弁)121と、流出側ディスクバルブ121よりも小径であって流出側ディスクバルブ121のベース部材54とは反対側に配置される円環状のスペーサ122と、主軸部材123とを有している。主軸部材123は、スペーサ122よりも大径であってスペーサ122のベース部材54とは反対側に配置されるフランジ部124と、スペーサ122、流出側ディスクバルブ121、ベース部材54、流入側ディスクバルブ117、スペーサ118およびバルブ規制部材119を貫通してバルブ規制部材119に係合する軸部125とを有している。これら流出側ディスクバルブ121およびスペーサ122はハウジング55の外側に配置されている。
【0048】
流出側ディスクバルブ121も、複数枚の環状のディスクが重ね合わせられることで構成されており、流出側シート部114に着座することで流出穴112を閉塞し、流出側シート部114から離座することで流出穴112を開放するとともに、離座時の変形量に応じて流出穴112の開放通路面積を変化させる。また、主軸部材123はそのフランジ部124が流出側ディスクバルブ121の開方向への規定以上の変形を規制する。
【0049】
なお、主軸部材123は、軸部125の先端部分が加締められ径方向に広がることで形成される加締部126がバルブ規制部材119を係止することになり、このようにして、主軸部材123、スペーサ122、流出側ディスクバルブ121、ベース部材54、流入側ディスクバルブ117、スペーサ118およびバルブ規制部材119が一体に組み立てられて減衰弁機構53となる。ここで、フリーピストン57のピストン筒部91の内径は、流入側ディスクバルブ117の外径よりも大径となっており、ピストン筒部91の内側に加締部126、バルブ規制部材119、スペーサ122、流入側ディスクバルブ117および流入側シート部113が進入可能となっている。なお、軸部125を加締めるのではなく、ネジ締結でバルブ規制部材119を主軸部材123に係止しても良い。
【0050】
なお、減衰力可変機構35は、例えば減衰弁機構53が予め加締めて取り付けられたハウジング本体52内に曲面部83の位置までOリング59を挿入し、これらハウジング本体52およびOリング59の内側にフリーピストン57を嵌合し、ハウジング本体52とフリーピストン57との間に曲面部102の位置までOリング58を挿入して、蓋部材51をハウジング本体52に加締めることにより、組み立てられることになる。そして、このように予め組み立てられた減衰力可変機構35がピストンロッド8の取付軸部16のオネジ49にメネジ50を螺合させて取り付けられることになり、その際に、ハウジング55の蓋板部63が減衰力発生機構32aのバルブ規制部材47aに当接して、減衰力発生機構32a、ピストン本体6および減衰力発生機構32bをピストンロッド8の軸段部48との間に挟持することになる。つまり、減衰力可変機構35は、減衰力発生機構32a、ピストン本体6および減衰力発生機構32bをピストンロッド8に締結する締結部材を兼ねている。減衰力可変機構35の外径つまりハウジング本体52の外径は、シリンダ1の内径よりも流路抵抗とならない程度に小さく設定されている。
【0051】
ピストンロッド8には、主軸部15の取付軸部16側の端部位置に径方向に沿う通路穴130が形成されており、取付軸部16には、この通路穴130に連通する通路穴131が軸方向に沿って形成されている。よって、これらの通路穴130,131によって、上室4が、減衰力可変機構35のハウジング55内に形成された圧力室132に連通しており、具体的には、圧力室132のうちハウジング55とOリング58とフリーピストン57とで画成される上室連通室133内に連通している。また、下室5が、ハウジング55の減衰弁機構53の流入穴111および流出穴112のいずれか一方を介してハウジング55内に連通可能となっており、具体的には、圧力室132のうちハウジング55とOリング59とフリーピストン57とで画成される下室連通室134内に連通可能となっている。
【0052】
なお、ハウジング本体52とフリーピストン57との間に配置されたOリング59は、ハウジング55とフリーピストン57との間を常にシールするように配置され、上室連通室133と下室連通室134との連通を常に遮断する。また、減衰弁機構53は、圧力室132の下室連通室134と下室5との境界位置に配置されており、下室5に対する流入および流出の双方向の流れに対して減衰力を発生させる。また、減衰弁機構53の流入穴111は、下室5からの油液の流入時に、ハウジング55内に形成された圧力室132の下室5との境界の内外通路口を構成しており、この流入穴111に減衰弁としての流入側ディスクバルブ117が設けられている。減衰弁機構53の流出穴112は、下室5への油液の流出時に、ハウジング55内に形成された圧力室132の下室5との境界の内外通路口を構成しており、この流出穴112に減衰弁としての流出側ディスクバルブ121が設けられている。
【0053】
通路穴130,131および上室連通室133が、ピストン3の上室4側への移動によりシリンダ1内の一方の上室4から油液が流れ出す通路(第2通路)135を構成しており、減衰弁機構53の流入穴111および下室連通室134が、ピストン3の下室5側への移動によりシリンダ1内の一方の下室5から油液が流れ出す通路(第2通路)136を構成している。よって、ハウジング55には、内部に通路135の一部の流路が形成されており、内部に通路136の一部の流路が形成されている。フリーピストン57は、これら通路135,136の途中に設けられたハウジング55内の圧力室132内に移動可能に挿入されており、上流と下流の2つの領域である通路135,136を画成する。ここで、第2通路は、フリーピストン57により画成されており、上室4と下室5間で油液が置換する流れは生じないが、フリーピストン57がハウジング55に対して移動している間は、上室4の油液が圧力室132に流入し、同量の油液が下室5側に押し出されるので、実質的に流れを生じている。フリーピストン57の摺動方向両側に配置されたOリング58,59は、このフリーピストン57の変位に対し抵抗力を発生する。
【0054】
ここで、ピストンロッド8が伸び側に移動する伸び行程では、上室4から通路30aを介して下室5に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、上室4から通路30aに導入された油液が、基本的に、ピストン3に形成された通路溝43aとシート部41aに当接するディスクバルブ45aとで画成されるコンスタントオリフィスを介して下室5に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、上室4から通路30aに導入された油液が、基本的にディスクバルブ45aを開きながらディスクバルブ45aとシート部41aとの間を通って下室5に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0055】
ピストンロッド8が縮み側に移動する縮み行程では、下室5から通路30bを介して上室4に油液が流れることになるが、ピストン速度が微低速域の場合は、下室5から通路30bに導入された油液が、基本的に、ピストン3に形成された通路溝43bとシート部41bに当接するディスクバルブ45bとで画成されるコンスタントオリフィスを介して上室4に流れ、その際オリフィス特性(減衰力がピストン速度の2乗にほぼ比例する)の減衰力が発生する。また、ピストン速度が上昇して低速域に達すると、下室5から通路30bに導入された油液が、基本的にディスクバルブ45bを開きながらディスクバルブ45bとシート部41bとの間を通って上室4に流れることになる。このため、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が発生する。
【0056】
ここで、ピストン速度が遅いとき、つまり微低速域(例えば0.05m/s)の周波数が比較的高い領域(例えば7Hz以上)は、例えば路面の細かな表面の凹凸から生じる振動であり、このような状況では減衰力を下げるのが好ましい。また、同じくピストン速度が遅いときであっても、上記とは逆に周波数が比較的低い領域(例えば2Hz以下)は、いわゆる車体のロールによるぐらつき等の振動であり、このような状況では減衰力を上げるのが好ましい。
【0057】
これに対応して、上記した減衰力可変機構35が、ピストン速度が同じように遅い場合でも、周波数に応じて減衰力を可変とする。つまり、ピストン速度が遅い時、ピストン3の往復動の周波数が高くなると、その伸び行程では、上室4の圧力が高くなって、ピストンロッド8の通路穴130,131を介して減衰力可変機構35の上室連通室133に上室4から油液を導入させるとともに、減衰力可変機構35の下室連通室134から、減衰弁機構53の流出側ディスクバルブ121を開き、通路136内の下流側の流出穴112を介して下室5に油液を排出させながら、フリーピストン57が軸方向の下室5側にあるOリング59の付勢力に抗して軸方向の下室5側に移動する。このようにフリーピストン57が軸方向の下室5側に移動することにより、上室連通室133に上室4から油液を導入することになり、上室4から通路30aに導入され減衰力発生機構32aを通過して下室5に流れる油液の流量が減ることになる。これはフリーピストン57が移動している間は、見かけ上、ピストン部とは別に油液が流れることとなり、これにより、減衰力が下がる。
【0058】
続く縮み行程では、下室5の圧力が高くなるため、減衰弁機構53の流入側ディスクバルブ117を開き、通路136内の上流側の流入穴111を介して減衰力可変機構35の下室連通室134に下室5から油液を導入させるとともにピストンロッド8の通路穴130,131を介して上室連通室133から上室4に油液を排出させながら、それまで軸方向の下室5側に移動していたフリーピストン57が軸方向の上室4側にあるOリング58の付勢力に抗して軸方向の上室4側に移動する。このようにフリーピストン57が軸方向の上室4側に移動することにより、下室連通室134に下室5から油液を導入することになり、下室5から通路30bに導入され減衰力発生機構32bを通過して上室4に流れる油液の流量が減ることになる。これにより、伸び行程と同様に減衰力が下がる。
【0059】
そして、ピストン3の周波数が高い領域では、フリーピストン57の移動の周波数も追従して高くなり、その結果、上記した伸び行程の都度、下室連通室134から減衰弁機構53の流出側ディスクバルブ121を開き流出穴112を介して下室5に油液を排出させながら上室4から上室連通室133に油液が流れることになり、縮み行程の都度、上室連通室133から通路穴130,131を介して上室4に油液を排出させながら減衰弁機構53の流入側ディスクバルブ117を開き流入穴111を介して下室5から下室連通室134に油液が流れることになって、上記のように、減衰力が下がった状態に維持されることになる。
【0060】
他方で、ピストン速度が遅い時、ピストン3の周波数が低くなると、フリーピストン57の移動の周波数も追従して低くなるため、伸び行程の初期に、下室連通室134から減衰弁機構53の流出側ディスクバルブ121を開き流出穴112を介して下室5に油液を排出させながら上室4から上室連通室133に油液が流れるものの、その後はフリーピストン57がOリング59を圧縮して軸方向の下室5側で停止し、上室4から上室連通室133に油液が流れなくなるため、上室4から通路30aに導入され減衰力発生機構32aを通過して下室5に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
【0061】
続く縮み行程でも、その初期に、上室連通室133から通路穴130,131を介して上室4に油液を排出させながら下室5から減衰弁機構53の流入側ディスクバルブ117を開き流入穴111を介して下室連通室134に油液が流れるものの、その後はフリーピストン57がOリング58を圧縮して軸方向の上室4側で停止し、下室5から下室連通室134に油液が流れなくなるため、下室5から通路30bに導入され減衰力発生機構32bを通過して上室4に流れる油液の流量が減らない状態となり、減衰力が高くなる。
【0062】
そして、本実施形態においては、上記したように、フリーピストン57に中立位置へ戻すように付勢力を与える部品としてゴム材料からなるOリング58,59を用いており、フリーピストン57の中立位置では、フリーピストン57とハウジング55との間にあるOリング58,59が、ハウジング本体52の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97,103との間に位置する。
【0063】
この中立位置から例えば伸び行程でフリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動すると、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97とがOリング59を、相互間で転動つまり内径側と外径側とが逆方向に移動するように回転させてハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動させることになり、その後、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の上室4側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の下室5側とが、Oリング59を転動させながらフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の下室5側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の上室4とが、Oリング59をフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮する。なお、この中立位置から伸び行程でフリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動すると、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部103とがOリング58を、相互間で転動させてハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動させることになる。
【0064】
このとき、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97との間でOリング59を転動させる領域と、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82とフリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99との間でOリング59を転動させる領域とが、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部から離間した位置において、Oリング59が転動する転動領域であり、下流側端部から離間した位置において、Oリング59がフリーピストン57の移動方向にハウジング55とフリーピストン57と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング59の少なくともフリーピストン移動方向下流端位置(図2における下端位置)が移動することを言う。
【0065】
また、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82とフリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99との間でOリング59を圧縮する領域が、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング59をフリーピストン57の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング59のフリーピストン移動方向上流端位置(図2における上端位置)が移動し、下流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。
【0066】
続く縮み行程でフリーピストン57がハウジング55に対して軸方向の上室4側に移動すると、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の下室5側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の上室4とが、Oリング59の圧縮を解除し、続いて、ハウジング55の曲面部83およびテーパ面部82の軸方向の上室4側と、フリーピストン57の曲面部98およびテーパ面部99の軸方向の下室5側とが、Oリング59を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97とがOリング59を、相互間で転動させながらハウジング55に対して軸方向の上室4側に移動させることになる。なお、このとき、Oリング58についても、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部103とが、相互間で転動させてハウジング55に対して軸方向の上室4側に移動させることになる。そして、その後、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67の軸方向の下室5側と、フリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101の軸方向の上室4側とが、Oリング58を転動させながらフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮し、続いてハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67の軸方向の上室4側と、フリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101の軸方向の下室5側とが、Oリング58をフリーピストン57の軸方向および径方向に圧縮する。
【0067】
このとき、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部103との間でOリング58を転動させる領域と、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67とフリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101との間でOリング58を転動させる領域とが、フリーピストン57の移動領域のうち上流側端部から離間した位置において、Oリング58が転動する転動領域であり、上流側端部から離間した位置において、Oリング58がフリーピストン57の移動方向にハウジング55とフリーピストン57と双方に接触した状態で移動する移動領域となっている。この移動とは、Oリング58の少なくともフリーピストン移動方向上流端位置(図2における上端位置)が移動することを言う。
【0068】
また、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67とフリーピストン57の曲面部102およびテーパ面部101との間でOリング58を圧縮する領域が、フリーピストン57の移動領域のうち下流側端部側において、Oリング58をフリーピストン57の移動方向に弾性変形させる移動方向変形領域となっている。この移動方向変形領域における弾性変形とは、Oリング58のフリーピストン移動方向下流端位置(図2における下端位置)が移動し、上流端位置が移動しない変形のことである。ここでは、転動領域および移動領域が、移動方向変形領域の一部とラップしている。
【0069】
上記に続く伸び行程では、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67の上室4側とフリーピストン57のテーパ面部101および曲面部102の下室5側とがOリング58の圧縮を解除し、続いて、ハウジング55の曲面部68およびテーパ面部67の下室5側とフリーピストン57のテーパ面部101および曲面部102の上室4側とがOリング58を転動させながら圧縮をさらに解除することになり、続いて、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部103とがOリング58を、相互間で転動させてハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動させることになる。このとき、Oリング59についても、ハウジング55の大径円筒面部84とフリーピストン57の小径円筒面部97とが、相互間で転動させてハウジング55に対して軸方向の下室5側に移動させることになる。そして、フリーピストン57が中立位置を通過すると、Oリング58,59を上記と同様に、動作させる。
【0070】
以上により、Oリング58,59は、移動方向変形領域において移動方向につぶされる。
【0071】
ここで、ゴム材料からなるOリング58,59によるフリーピストン57の変位に対する荷重の特性は、非線形の特性となる。つまり、フリーピストン57の中立位置の前後の所定範囲では線形に近い特性となり、この範囲を超えると、変位に対して滑らかに荷重の増加率が増大するようになる。上記のように、ピストン3の作動周波数が高い領域では、ピストン3の振幅も小さいため、フリーピストン57の変位も小さくなり、中立位置前後の線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン57は動きやすくなり、ピストン3の振動に追従して振動して減衰力発生機構32a,32bの発生する減衰力の低減に寄与する。
【0072】
他方で、ピストン3の作動周波数が低い領域では、ピストン3の振幅が大きくなるため、フリーピストン57の変位が大きくなり、非線形の特性範囲で動作することになる。これにより、フリーピストン57は徐々に滑らかに、動き難くなり、減衰力発生機構32a,32bの発生する減衰力を低減し難くなる。
【0073】
そして、上記した縮み行程から伸び行程に切り替わる際に、一旦、減衰弁機構53の流入側ディスクバルブ117が流入穴111を閉じ、流出側ディスクバルブ121が流出穴112を閉じる状態が生じ、上室4から上室連通室133に油液が流れようとしても、上室連通室133の圧力が高まり、フリーピストン57を介して下室連通室134の圧力が下室5の圧力より所定値高くならないと、流出側ディスクバルブ121は流出穴112を開かない。そして、下室連通室134の圧力が下室5の圧力より所定値高くなると、流出側ディスクバルブ121は流出穴112を開いて下室連通室134から下室5に油液を流すことになる(この間、流入側ディスクバルブ117は流入穴111を閉じ続ける)。このように流出側ディスクバルブ121が流出穴112を開いて下室連通室134から下室5に油液を排出させる状態になるとき、流出側ディスクバルブ121が徐々にオリフィスとしての流出穴112の開口面積を拡げることになる。以上により、縮み行程から伸び行程への切り替わり直後に滑らかに減衰力を発生させることができ、縮み行程から伸び行程への切り替わりの減衰力過渡特性を滑らかにすることができる。
【0074】
また、上記した伸び行程から縮み行程に切り替わる際にも、一旦、減衰弁機構53の流出側ディスクバルブ121が流出穴112を閉じ、流入側ディスクバルブ117が流入穴111を閉じる状態が生じ、下室5から下室連通室134に油液が流れようとしても、下室5の圧力が高まり、下室連通室134の圧力より所定値高くならないと、流入側ディスクバルブ117は流入穴111を開かない。そして、下室5の圧力が下室連通室134の圧力より所定値高くなると流入側ディスクバルブ117は流入穴111を開いて下室5から下室連通室134に油液を流すことになる(この間、流出側ディスクバルブ121は流出穴112を閉じ続ける)。このように流入側ディスクバルブ117が流入穴111を開いて下室5から下室連通室134に油液を流入させる状態になるときも、流入側ディスクバルブ117が徐々にオリフィスとしての流入穴111の開口面積を拡げることになる。以上により、伸び行程から縮み行程への切り替わり直後に減衰力を滑らかに発生させることができ、伸び行程から縮み行程への切り替わりの減衰力過渡特性を滑らかにすることができる。
【0075】
つまり、減衰弁機構53の流出側ディスクバルブ121および流入側ディスクバルブ117を設けない場合には、図4に破線で示すように、ストロークが縮み側から伸び側に切り替わった直後、および伸び側から縮み側に切り替わった直後に、減衰力が不足する領域Y1’,Y2’が生じることになる。これに対し、流出側ディスクバルブ121および流入側ディスクバルブ117を設けることで、図4に実線で示すように、領域Y1’,Y2’に対する領域Y1,Y2のように減衰力の不足を抑制し減衰力の立ち遅れを緩和するようにできる。つまり、緩衝器のストロークが縮み側から伸び側に切り替わった直後に、流出穴112を流出側ディスクバルブ121が一時的に閉じていることによって、上室4から上室連通室133への油液の流れおよび下室連通室134から下室5への油液の流れを一時的に阻止して減衰力を発生させることになる(領域Y1)。また、緩衝器のストロークが伸び側から縮み側に切り替わった直後に、流入穴111を流入側ディスクバルブ117が一時的に閉じていることによって、下室5から下室連通室134への油液の流れおよび上室連通室133から上室4への油液の流れを一時的に阻止して減衰力を発生させることになる(実線の領域Y2)
【0076】
以上に述べた第1実施形態によれば、ハウジング55内に形成された圧力室132の下室5側の内外通路口である流出穴112および流入穴111に減衰力を発生させる減衰弁として流出側ディスクバルブ121および流入側ディスクバルブ117が設けられているため、減衰力特性を滑らかにすることが可能となり、特に伸縮行程反転時の減衰力過渡特性を滑らかにすることができる。これにより、この緩衝器が搭載された車両において操舵の反転時に操作に手応え感を発生させることができ、操作感を向上させることができる。このように伸縮行程反転時に減衰力の立ち遅れを緩和し減衰力過渡特性が滑らかになることで、圧力変動が一気に生じることによりピストンロッド8が加振されて騒音や振動を生じる、いわゆるロッドGを低減することができる。
【0077】
また、減衰弁機構53において、減衰弁として流入側ディスクバルブ117および流出側ディスクバルブ121が用いられているため、減衰弁機構53の構成を簡素にでき、全長を抑えることができる。
【0078】
また、流入側ディスクバルブ117および流出側ディスクバルブ121が、下室5と圧力室132との間の双方向の流れに対して減衰力を発生させるため、伸び行程から縮み行程に切り替わる際の減衰力過渡特性と、縮み行程から伸び行程に切り替わる際の減衰力過渡特性とを、ともに滑らかにすることができる。
【0079】
また、流入側シート部113および流出側シート部114を異形シートとすることで、直線状の流入穴111としても流出側ディスクバルブ121側を常時開放でき、直線状の流出穴112としても流入側ディスクバルブ117側を常時開放できるため、ベース部材54の厚みを抑えることができ、その結果、減衰弁機構53全体の厚みを抑えることができる。
【0080】
また、減衰力可変機構35のフリーピストン57のピストン筒部91の内径は、流入側ディスクバルブ117の外径よりも大径となっており、ピストン筒部91の内側に加締部126、バルブ規制部材119、スペーサ118、流入側ディスクバルブ117および流入側シート部113が進入可能となっているため、減衰力可変機構35の全体の長さを抑えることができる。
【0081】
なお、第1実施形態の緩衝器の減衰力周波数特性を左右する減衰弁機構53の開弁特性は、流入側シート部113の受圧面積、流入穴111の通路径および流入側ディスクバルブ117のバルブ剛性と、流出側シート部114の受圧面積、流出穴112の通路径および流出側ディスクバルブ121のバルブ剛性とによって決まることになる。
【0082】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図5および図6に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0083】
図5に示すように、第2実施形態は、第1実施形態の外筒2およびベースバルブ12を持たない、いわゆるモノチューブ式の油圧緩衝器となっている。このため、ピストン3よりもシリンダ1の底部側に、下室5と室140とを区画するための区画体141がシリンダ1内を摺動可能に設けられている。室140には高圧(20〜30気圧程度)のガスが封入されている。
【0084】
さらに、第2実施形態は、第1実施形態に対して減衰力可変機構35が一部相違している。具体的には、図6に示すように、減衰力可変機構35において、減衰弁機構53がハウジング55のハウジング本体52ではなく、蓋部材51に取り付けられている。つまり、蓋部材51の蓋内筒部62が、ピストンロッド8のオネジ49に螺合されるメネジ50が形成された螺合筒部144と、この螺合筒部144よりも蓋板部63とは反対側に突出する固定筒部145とを有している。固定筒部145の内周面には螺合筒部144側から順に円筒面部146、円筒面部146から離れるほど拡径するテーパ面部147およびテーパ面部147の大径側よりも大径の嵌合円筒面部148を有している。
【0085】
そして、第1実施形態と同様の減衰弁機構53の円板状のベース部材54が、嵌合円筒面部148に嵌合されることになり、この状態でハウジング本体52の嵌合円筒面部148の一部を形成しベース部材54から突出する端部が内側に加締められることで、ハウジング本体52にベース部材54が固定され一体化される。
【0086】
第2実施形態において、減衰弁機構53は、圧力室132の上室連通室133と上室4に繋がる通路穴130,131との境界位置に配置されており、通路穴130,131に対する流入および流出の双方向の流れに対して減衰力を発生させる。また、減衰弁機構53の流入穴111が、上室4からの油液の流入時に、ハウジング55内に形成された圧力室132の、上室4側の通路穴130,131との境界の内外通路口を構成しており、この流入穴111に減衰弁としての流入側ディスクバルブ117が設けられている。減衰弁機構53の流出穴112は、上室4への油液の流出時に、ハウジング55内に形成された圧力室132の、上室4側の通路穴130,131との境界の内外通路口を構成しており、この流出穴112に減衰弁としての流出側ディスクバルブ121が設けられている。なお、第2実施形態では、流出側ディスクバルブ121側に、加締部126、スペーサ118および円環状のバルブ規制部材119が設けられている。また、主軸部材123のフランジ部124とは別にバルブ規制部材150が、流入側ディスクバルブ117側に配置されたフランジ部124とスペーサ122との間に設けられている。
【0087】
また、減衰弁機構53の上記配置に伴い、ピストン閉板部92がピストン筒部91の下室5側にずれて形成されており、ピストン筒部91の内径が固定筒部145の外径より大径で、フリーピストン57は、そのピストン筒部91内に、減衰弁機構53および固定筒部145を進入させた状態でハウジング55に保持されている。
【0088】
上記した縮み行程から伸び行程に切り替わる際に、一旦、減衰弁機構53の流出側ディスクバルブ121が流出穴112を閉じ、流入側ディスクバルブ117が流入穴111を閉じる状態が生じ、上室4から通路穴130,131を介して上室連通室133に油液が流れようとしても、上室4の圧力が高まり、上室連通室133の圧力より所定値高くならないと、流入側ディスクバルブ117は流入穴111を開かない。そして、上室4の圧力が上室連通室133の圧力より所定値高くなると、流入側ディスクバルブ117は流入穴111を開いて上室4から上室連通室133に油液を流すことになる(この間、流出側ディスクバルブ121は流入穴112を閉じ続ける)。このように流入側ディスクバルブ117が流入穴111を開いて上室4から通路穴130,131を介して上室連通室133に油液を流入させる状態になるときも、流入側ディスクバルブ117が徐々にオリフィスとしての流入穴111の開口面積を拡げることになる。以上により、縮み行程から伸び行程への切り替わり直後に減衰力を滑らかに発生させることができ、縮み行程から伸び行程への切り替わりの減衰力過渡特性を滑らかにすることができる。
【0089】
また、上記した伸び行程から縮み行程に切り替わる際にも、一旦、減衰弁機構53の流入側ディスクバルブ117が流入穴111を閉じ、流出側ディスクバルブ121が流出穴112を閉じる状態が生じ、上室連通室133から通路穴130,131を介して上室4に油液が流れようとしても、下室5の圧力が上がり、上室連通室133の圧力が上室4の圧力より所定値高くならないと、流出側ディスクバルブ121は流出穴112を開かない。そして、上室連通室133の圧力が上室4の圧力より所定値高くなると、流出側ディスクバルブ121は流出穴112を開いて上室連通室133から上室4に油液を流すことになる(この間、流入側ディスクバルブ117は流入穴111を閉じ続ける)。このように流出側ディスクバルブ121が流出穴112を開いて上室連通室133から通路穴130,131を介して上室4に油液を流出させる状態になるときも、流出側ディスクバルブ121が徐々にオリフィスとしての流出穴112の開口面積を拡げることになる。以上により、伸び行程から縮み行程への切り替わり直後に減衰力を滑らかに発生させることができ、伸び行程から縮み行程への切り替わりの減衰力過渡特性を滑らかにすることができる。
【0090】
第1実施形態は複筒式の油圧緩衝器に、第2実施形態はモノチューブ式の油圧緩衝器に、それぞれ本発明を用いた例を示したが、第1実施形態の減衰弁機構53を含む減衰力可変機構35をモノチューブ式の油圧緩衝器に、第2実施形態の減衰弁機構53を含む減衰力可変機構35を複筒式の油圧緩衝器に、それぞれ適用することも可能である。さらに、複筒式の油圧緩衝器のベースバルブ12に、上記ハウジング55を設けることで、ベースバルブ12に本発明を適用することも可能である。また、シリンダの外部にシリンダ内と連通する油通路を設け、この油通路に減衰力発生機構を設ける場合は、上記ハウジング55をシリンダ外部に設けることになる。また、車体のレイアウトにより、緩衝器の取り付けにあたり、軸方向長の自由度がある場合と、径方向長の自由度がある場合がある。第1実施の形態の緩衝器は、軸方向長は長くなるものの、径方向長を抑えることができ、第2実施の形態の緩衝器は、軸方向長を短く抑えることができるものの、径方向長は大きくなる。よって、車体のレイアウトにより、適宜選択することで、車体への取付け自由度を向上することができる。
【0091】
なお、上記実施の形態では、油圧緩衝器を例に示したが、流体として水や空気を用いることもできる。
さらに、上記各実施形態では、Oリングを2個の例を示したが、必要に応じて同様の技術思想で、1個あるいは3個以上としてもよい。
また、上記各実施形態では、弾性体としてゴム(樹脂)製のリングを用いた例を示したが、ゴム製の球を周方向に間隔をもって複数も設けてもよく、また、本発明に用いることのできる弾性体は、一の軸方向に弾性を有するものではなく、複数の軸方向に対して弾性を有するものであれば、ゴムでなくともよい。
【符号の説明】
【0092】
1 シリンダ
3 ピストン
4 上室(室)
5 下室(室)
8 ピストンロッド8
30a,30b 通路(第1通路)
135,136 通路(第2通路)
32a,32b 減衰力発生機構
57 フリーピストン
111 流入穴(内外通路口)
112 流出穴(内外通路口)
117 流入側ディスクバルブ(減衰弁)
121 流出側ディスクバルブ(減衰弁)
132 圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入されたシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に嵌装され、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、
前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されたピストンロッドと、
前記2室間を連通する第1通路および第2通路と、
前記第1通路に設けられて減衰力を発生させる減衰力発生機構と、
前記第2通路の途中に設けられた圧力室と、
前記圧力室内に移動可能に設けられて前記第2通路を2つの領域に画成するフリーピストンと、
前記圧力室の内外通路口に設けられた減衰弁と、
を備えたことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記減衰弁は、ディスクバルブからなることを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記減衰弁は、双方向の流れに対して減衰力を発生させることを特徴とする請求項1または2に記載の緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137167(P2012−137167A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291643(P2010−291643)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】