説明

緩衝層を備える多層構造

【課題】緩衝層を備える多層構造の提供。
【解決手段】緩衝層を備える多層構造100は、プレスダイ中において、基材5と結合し、多層構造100は少なくとも生物材料層1、粘着層3、熱塑性緩衝層4を備え、生物材料層1は少なくとも第一表面11を備え、粘着層3は第一表面11に付着し、緩衝層4の反対側は粘着層3と結合し、しかも緩衝層4は受圧面を備え高圧を受け、基材5と溶接し、粘着層3と緩衝層4は熱塑性材質であるため、熱溶融状態を通して結合することで、粘着層3と緩衝層4とを安定的に結合させることができ、緩衝層4の受圧面は、基材5がモールド中において射出成型される際の温度と圧力を受け止め、生物材料層1が受ける温度と圧力を緩和でき、これにより生物材料層1はモールド中において破壊されることがなくなり、こうして多層構造100と基材5との結合寿命を延長することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緩衝層を備える多層構造に関し、特に生物材料層を含む構造で、該多層構造はモールド中において基材と結合し、緩衝層を備え、モールド内の高圧と高温の生物材料層に対する衝撃を緩和することができる緩衝層を備える多層構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品においては、性能を追求する以外に、商品の外観、触感、さらには商品認知度を向上させるため、外観、設計、デザインの独創、刷新を絶えず続け、製品の地位と価値の向上を図っている。
携帯電話端末、ノート型コンピューターなど従来の工業製品では、プラスチック外殻が用いられるが、その外表面は塗料で覆われ、プラスチックとは異なる外観を持つ。
しかし、触ってみれば、やはり明らかにプラスチックの触感が感じられ、しかも長期間の使用、或いは摩擦を経ると、表面の塗料が剥げ、プラスチック表面が露出する。
すなわち、プラスチックに単純に塗料を塗布して覆っただけの製品外殻の外観と触感は理想的ではない。
【0003】
また、金属材料により商品の外殻を製造する際には、金属表面に簡単な処理を施し、金属模様と触感を商品の特色とする。
例えば、特許文献1が掲示する「電子装置外殻の表面被覆構造」では、底材上に蒸着層を設置する。
蒸着層表面には、酸化層を備え、しかも陽極処理を施す。
蒸着層は、銅、ブラス、チタン合金、アルミニウムなどの材質である。
しかし、金属材質で達成可能な色彩と触感の変化には限界があり、しかも弾力性がなく、あまりにもクールな感じがする。
【0004】
生物材料(木材、皮革など)と金属材質とを結合させる構造が発明された。
特許文献2が掲示する「外殻複合体の構造」では、外殻は表層と底層を備える。
表層には、デジタルインクジェット、或いは転写により図案を印刷する。
底層は金属片で、表層底面、或いは底層表面との間には、一層の接着剤を設置し、接着剤により表層と底層を結合させる。
【0005】
しかし、ただ単純に、接着剤により生物材料を金属表面に粘着させたなら、時間の経過、或いは摩擦、衝突などにより、生物材料と金属表面は辺縁から剥落し始める。
或いは、粘着が不良であれば、気泡が入り込み、部分的に浮き上がり、また摩擦などが原因で、生物材料がずれかねない。
すなわち、接着剤により、生物材料と、金属、プラスチック材質などの差異が非常に大きい材料を単純に粘着させたなら、時間の経過にしたがい徐々に緩み脱落してしまう。
さらには、生物材料と基材に、プレスダイの方式を使用して、両者をプレス成型したなら、当初は安定的に接合するが、生物材料と基材との間には、成型の衝撃と高温を緩衝できる緩衝構造がないため、生物材料そのものが損傷を受けてしまう。
しかも、生物材料と基材との静態応力変化量は異なるため、長い時間が経過すると、収縮変化の量の違いにより、亀裂が生じ細かい裂痕が出現し、表面に剥落、或いは突出が生じる。
本発明は、従来の多層構造の上記した欠点に鑑みてなされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】台湾特許証書第M346244号明細書
【特許文献2】台湾特許証書第M321677号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、生物材料と基材を結合する際、モールド射出の温度と圧力の破壊を受け、生物材料と基材が徐々に分離するという従来の技術の欠点に対して、生物材料はモールド内において温度と圧力による破壊を受けることがないため、多層構造と基材との結合の寿命を延長することができる緩衝層を備える多層構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は下記の緩衝層を備える多層構造を提供する。
緩衝層を備える多層構造は、プレスダイ中において、基材と結合し、
該多層構造は、生物材料層、粘着層、熱塑性緩衝層を備え、
該生物材料層は、少なくとも第一表面を備え、
該粘着層は、該第一表面に付着し、
該緩衝層の反対側は、該粘着層と結合し、しかも該緩衝層は、受圧面を備え、高圧を受け、前記基材と溶接し、
該粘着層と該緩衝層は熱塑性材質であるため、熱溶融状態を通して結合することで、該粘着層と該緩衝層とを安定的に結合させることができ、
該緩衝層の受圧面は、該基材がモールド中において射出成型される際の温度と圧力を受け止め、該生物材料層が受ける温度と圧力を緩和でき、これにより該生物材料層はモールド中において破壊されることがなくなり、こうして該多層構造と該基材との結合寿命を延長することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の緩衝層を備える多層構造は、モールド中において基材と結合し、緩衝層を備えるため、モールド内の高圧と高温の生物材料層に対する衝撃を緩和することができ、これにより生物材料層はモールド中において破壊されることがなくなり、多層構造と基材との結合寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明多層構造の断面表示図である。
【図2】本発明多層構造と基材結合を示す断面表示図である。
【図3】本発明モールド中に多層構造と基材を結合する様子を示す断面表示図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明多層構造の断面表示図である図1に示すように、多層構造100は、少なくとも生物材料層1を備える。
生物材料層1は、少なくとも第一表面11を備え、粘着層3が第一表面に付着する。
粘着層3は、熱塑性の緩衝層4と結合し、しかも緩衝層4は、受圧面を備え、高圧を受け、基材5と溶接する(図2参照)。
【0013】
緩衝層4が、熱塑性材質である他に、粘着層3は、熱溶融性接着剤であるため、粘着層3が熱溶融状態である時、生物材料層1を覆う。
緩衝層4は、熱溶融状態において、粘着層3上に結合され、これにより両者の接触位置は、緩衝層4と粘着層3が混合した状態となる。
こうして、冷却後は、緩衝層4と粘着層3との間には、相互に接続する溶融接合面41を備える。
溶融接合面41は、熱溶融性質を備える粘着層3と緩衝層5とが、混合し凝結して形成されるものである。
【0014】
これにより、緩衝層4と粘着層3とは、非常に堅固に融合して接合する構造を備え、こうして緩衝層4は間接的に、生物材料層1の片側において安定的に固定される。
緩衝層4は、ポリカーボネート(Polycarbonate,PC)、ポリメチルメタクリレート(Polymethyl Methacrylate,PMMA)、修飾されたポリメチルメタクリレート(Polymethyl Methacrylate,PMMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(Acrylonitrile Butadiene Styrene,ABS)、ポリスチレン(Polystyrene,PS)、プロピレンとスチレンの共重合物(Propylene-Styrene copolymer)、ポリ塩化ビニル(Polyvinylhloride,PVC)、ポリエステル(Polyester)により組成するグループ、或いはその組合せから選択するが、緩衝層4の材質は、粘着接合しようとする材料に応じて、必要とする熱加圧融合材質を選択し、上記した技術を実施する。
【0015】
生物材料層1は、第一表面11に相対する反対側に、第二表面を備え、しかも外表層2は、第二表面に付着する。
外表層2は、生物材料層1の表面を保護し、これにより生物材料層1が、モールド中で高温と高圧を受けている時、外表層2は生物材料層1の第二表面を保護することができる。
【0016】
外表層2は、生物材料層1の固定薄層に粘着して接合することができ、染色プロセスを経て彩色することができる。
こうして、多層構造100表面は、より美しい色彩と光沢を備えるようになる。
或いは、外表層2は、剥がせるシール構造とすることもでき、生物材料層1の第二表面が高温、高圧により破壊されることのないよう保護した後で、外表層2を剥がし、第二表面に噴射塗装を行うことができる。
【0017】
外表層2は、UV固化の単体、或いはPUフィルムで、より具体的には、外表層2は、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate,PET)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate,PEN)、ジメタノール変性ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene glycol-co-cyclohexane-1,4 dimethanol terephthalate,PETG)、熱可塑性ポリウレタン(Thermoplastic polyurethane,TPU)、ポリウレタン(Polyurethane,PU)、ポリプロピレン(Polypropylene,PP)、ポリカーボネート(Polycarbonate,PC)、アモルファスポリエチレンテレフタレート(Amorphous polyethylene terephthalate,APET)、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride,PVC)、アクリル(Acrylic)、メタクリル酸メチルスチレン(Methly-methacrylate-styrene, MS)、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンの共重合物(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene copolymer)、ポリスチレン(Polystyrene,PS)、ポリオキシメチレン(Polyoxymethylene,POM)、ナイロン(Nylon)により組成するグループ、或いはその組み合わせから選択する。
【0018】
図2、3に示すように、多層構造100は、プレスダイにおいて、基材5と結合する。
図3に示すように、プレスダイは、オス型91とメス型92により構成する。
多層構造100は、メス型92上に予め固定し、オス型91とメス型92は結合して、封鎖された空間を構成し、高圧、高温により、基材5を多層構造100上に射出成型する。
【0019】
基材5を射出成型する温度範囲は、200℃から300℃の間で、基材5射出後の型内の圧力は180tから500tの間である。
図2に合わせて示すように、基材5を緩衝層4上に射出成型するため、圧力と温度により、熱塑性を備える緩衝層4は、熱と圧力により融合し、基材5上に緊密に付着する。
同時に、緩衝層4は、基材5射出時に多層構造100に加えられる圧力と温度を先ず受け止め、次に、その圧力と温度を多層構造100の他の層に分散する。
これにより、生物材料層1が受ける圧力は、従来の技術に比べはるかに小さくなるため、生物材料層1は、プレスダイ内において、圧力と温度により破壊されることはない。
さらにこうして、多層構造100と基材5との結合の寿命を延長することができる。
【0020】
上記したメス型92上には、少なくとも1個の模様93を設置することができる。
こうして、プレスダイの圧力により、外表層2の外表面には、立体的な凹凸模様が形成され、多層構造100の外観をより美しくし、触感をアップグレードすることができる。
【0021】
上記の本発明名称と内容は、本発明技術内容の説明に用いたのみで、本発明を限定するものではない。本発明の精神に基づく等価応用或いは部品(構造)の転換、置換、数量の増減はすべて、本発明の保護範囲に含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は特許の要件である新規性を備え、従来の同類製品に比べ十分な進歩を有し、実用性が高く、社会のニーズに合致しており、産業上の利用価値は非常に大きい。
【符号の説明】
【0023】
100 多層構造
1 生物材料層
11 第一表面
2 外表層
3 粘着層
4 緩衝層
41 溶融接合面
5 基材
91 オス型
92 メス型
93 模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスダイ中において、基材と結合し、
前記多層構造は、生物材料層、粘着層、熱塑性緩衝層を備え、
前記生物材料層は、少なくとも第一表面を備え、
前記粘着層は、前記第一表面に付着し、
前記緩衝層は、前記粘着層と結合し、前記緩衝層は、熱溶融性接着剤で、しかも前記緩衝層は、受圧面を備え、高圧を受け、前記基材と溶接することを特徴とする緩衝層を備える多層構造。
【請求項2】
前記生物材料層は、前記第一表面に相対する反対側に、第二表面を備え、しかも外表層は、前記第二表面に付着し、
前記外表層は、染色プロセスを経て彩色することを特徴とする請求項1に記載の緩衝層を備える多層構造。
【請求項3】
前記プレスダイは、オス型とメス型を備え、
前記多層構造は、前記メス型上に固定し、前記オス型と前記メス型との結合後に、前記基材を前記緩衝層上に射出成型することを特徴とする請求項1に記載の緩衝層を備える多層構造。
【請求項4】
前記メス型上には、少なくとも1個の模様を設置することを特徴とする請求項3に記載の緩衝層を備える多層構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−88434(P2011−88434A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207633(P2010−207633)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(510242255)森騰新技有限公司 (4)
【Fターム(参考)】