緩衝材製造システムおよび緩衝材製造方法
【課題】コストを抑制しつつ、様々なサイズの緩衝材を製造する技術を提供する。
【解決手段】緩衝材製造システム1において、紙管製造装置2と、プレス成形装置3と、アングル成形装置4とを設ける。紙管製造装置2により、共通のテープ状材料である紙材料10から断面サイズの異なる筒状体である紙管11を製造する。プレス成形装置3は、紙管製造装置2により製造された紙管11の中空部を押しつぶすことにより紙管11を変形させて、板状材料12とする。アングル成形装置4により、板状材料12を略L字状の緩衝材13に成形する。
【解決手段】緩衝材製造システム1において、紙管製造装置2と、プレス成形装置3と、アングル成形装置4とを設ける。紙管製造装置2により、共通のテープ状材料である紙材料10から断面サイズの異なる筒状体である紙管11を製造する。プレス成形装置3は、紙管製造装置2により製造された紙管11の中空部を押しつぶすことにより紙管11を変形させて、板状材料12とする。アングル成形装置4により、板状材料12を略L字状の緩衝材13に成形する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材を製造する技術に関する。より詳細には、異なる形状の緩衝材を共通の材料から製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙や樹脂等を様々な形状に成形した緩衝材を製造する技術が知られている。例えば、特許文献1には、被包装物を包装する略L字状のアングルが記載されている。また、多様な形状に対応し得る緩衝材を製造する方法が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−302155号公報
【特許文献2】特開平08−309893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の技術において、略L字状あるいは略コの字状の緩衝材は、材料のサイズに応じて、最終的なサイズが確定するという問題があった。例えば、断面形状が略L字状のアングル(テープ状の材料の短幅中心を90°に折ることにより製造される)のサイズは、主にテープ状の材料の短幅サイズによって決定される。すなわち、従来の技術では、サイズの異なる緩衝材を製造しようとすると、所望のサイズに応じた材料をそれぞれ準備しなければならず、共通の材料を使用することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コストを抑制しつつ、様々なサイズの緩衝材を製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、緩衝材を製造する緩衝材製造システムであって、筒状体の中空部を押しつぶすことにより、前記筒状体を変形させるとともに、前記筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する成形手段を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る緩衝材製造システムであって、前記筒状体は、回収されたリサイクル品であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る緩衝材製造システムであって、共通のテープ状材料から断面サイズの異なる筒状体を製造する筒製造手段をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明に係る緩衝材製造システムであって、前記成形手段は、内面に接着剤が塗布された筒状体の中空部を押しつぶすことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の発明は、緩衝材を製造する緩衝材製造方法であって、筒状体の中空部を押しつぶすことにより、前記筒状体を変形させるとともに、前記筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する工程を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る緩衝材製造方法であって、共通のテープ状材料から断面サイズの異なる筒状体を製造する工程をさらに有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明に係る緩衝材製造方法であって、前記テープ状材料について、前記筒状体の内面を形成する部分に、予め接着剤を塗布する工程をさらに有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8の発明は、請求項5または6の発明に係る緩衝材製造方法であって、前記筒状体の内面に接着剤を塗布する工程をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
筒状体の中空部を押しつぶすことにより、筒状体を変形させるとともに、筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する成形手段を備えることにより、例えば、回収した筒状体を材料として様々なサイズの緩衝材を製造することができるため、緩衝材の製造コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態における緩衝材製造システムを示す図である。
【図2】平坦材料としての矩形材料を示す図である。
【図3】略L字状の緩衝材を例示する図である。
【図4】緩衝材製造方法における筒状体製造工程を示す流れ図である。
【図5】緩衝材製造方法における成形工程を示す流れ図である。
【図6】第1の実施の形態における緩衝材製造システムにおいて製造される略L字状の緩衝材を示す図である。
【図7】第2の実施の形態における緩衝材製造システムを示す図である。
【図8】第2の実施の形態における緩衝材製造システムにより製造される緩衝材の断面を例示する図である。
【図9】第3の実施の形態における緩衝材製造システムを示す図である。
【図10】第3の実施の形態における緩衝材について両端部を折りたたんだ状態から略コの字状に開く過程を示す図である。
【図11】第4の実施の形態における緩衝材製造システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0017】
なお、以下の説明では、テープ状材料として、紙製(板紙やクラフト紙、ケント紙等)の材料を例に説明するが、テープ状材料としては、「紙製」に限定されるものではなく、例えば、テープフィルムのように樹脂製材料等であってもよい。すなわち、テープ状材料の素材としては、緩衝材、包装材あるいは梱包材として適切なものが、例えば、被包装物に応じて選択され得る。また、テープ状材料は略平坦な材料であり、例えば、片段ボール紙のような、波状の中芯紙(立体形状部)を備えるものを含まない。
【0018】
<1. 第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1を示す図である。緩衝材製造システム1は、テープ状材料としての紙材料10から筒状体としての紙管11を製造する紙管製造装置2と、紙管製造装置2により製造された紙管11の中空部を押しつぶすことにより板状材料12を製造するプレス成形装置3と、紙管11が変形した板状材料12を所望の形状(本実施の形態においては、略L字状)に成形することにより緩衝材13を製造するアングル成形装置4とを備えている。すなわち、緩衝材製造システム1では、紙管製造装置2、プレス成形装置3およびアングル成形装置4によって緩衝材13を製造するための製造ラインが形成されており、紙材料10から緩衝材13を製造するシステムとして構成されている。
【0019】
なお、以下の説明において、「略L字状」とは、平坦な材料において直線状の1の折り目を規定し、当該1の折り目に沿って当該材料を折り曲げたときに出現する形状をいうものとする。
【0020】
図2は、平坦材料としての矩形材料8を示す図である。また、図3は、略L字状の緩衝材9を例示する図である。図2に示す矩形材料8は、長辺のサイズが「L」、短辺のサイズが「W(W≒w1+w2)」となっており、長辺に略平行となるように、直線状の1つの折り目80が設定されている。そして、折り目80に沿って略90°に折り曲げることにより、折り目80に沿った角部を形成するように矩形材料8を成形すると、図3に例示す略L字状の緩衝材9と同じ形状となる。
【0021】
なお、図3では、w1とw2との長さが等しい例を示しているが、「略L字状」の形状としては、w1とw2との長さが等しくない形状も含む。
【0022】
図1に戻って、緩衝材製造システム1における紙管製造装置2は、図示しない軸心(マンドレル)に、紙材料10を螺旋状に巻き付けることにより、円筒状の紙管11を製造する装置である。
【0023】
このように、テープ状の紙材料10から筒状の紙管11を製造する紙管製造装置2としては、一般的に知られた装置を採用することができる。このような装置として、例えば、特開平07−040474号公報や特開2005−162348号公報、特開2009−255428号公報等に記載された装置を適宜用いることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、本実施の形態における紙管製造装置2は、断面サイズの異なる紙管11を、共通の紙材料10から製造することが可能とされている。従来の装置を適用する紙管製造装置2においては、例えば、紙材料10を巻き回すマンドレルを様々なサイズのものに交換することによって断面サイズの異なる紙管11を製造できる。
【0025】
これは、紙管製造装置2のマンドレルの外径サイズが、当該マンドレルにより製造される紙管11の内径サイズに相当するからである。したがって、共通の紙材料10を用いたとしても、外径サイズの太いマンドレルを使用した場合には、外径サイズの細いマンドレルを使用した場合に比べて、内径サイズの太い紙管11を製造することができる。
【0026】
紙管製造装置2により製造される紙管11の外径サイズ(以下、「Φ」と称する。)は、当該紙管11の内径サイズ(以下、「φ」と称する。)と、巻き回す紙材料10の巻き数(以下、「n(nは正の整数)。」と称する。)と、紙材料10の厚み(以下、「d」と称する。)とによって、以下に示す式1のように決定される。
【0027】
Φ=φ+2n×d ・・・ 式1
【0028】
ここで、紙管11の内径サイズφは先述のように紙管製造装置2のマンドレルの外径サイズであるからマンドレルを交換することにより内径サイズφは変更することができる。また、紙材料10の巻き数nも可変である。したがって、共通の紙材料10が用いられることにより、紙材料10の厚みdが一定であるとしても、式1におけるφとnとが任意に選択できるため、紙管製造装置2は所望の外径サイズΦの紙管11を製造することができる。
【0029】
また、詳細は図示しないが、紙管製造装置2は、供給される紙材料10の両面のうちの一方(以下、「第2面」と称する。)に接着剤を塗布するように構成されている。テープ状の紙材料10の所定の面に接着剤を塗布する機構としては、例えば、特開2009−255428号公報に記載されている技術を採用することができる。
【0030】
そして、紙材料10は、第2面側(塗布面側)が内面となる向きに、上記マンドレルに巻き回される。これにより、紙材料10が重なる部分では、第2面に塗布された接着剤により、内側に存在する紙材料10と外側に存在する紙材料10とが張り合わされる。
【0031】
なお、本実施の形態では、最も内側に位置する紙材料10の第2面(紙管11の内面を形成する面)にも接着剤が塗布されている。しかし、紙管11は、マンドレル上に形成された後、速やかにマンドレルから取り外されるため、紙管11が紙管製造装置2のマンドレルに固着することは防止される。言い換えれば、紙材料10に塗布された接着剤が固化する前に、紙管製造装置2は、形成されている筒状部を所望の長さ(軸心に沿った方向の長さ。以下、「L」と称する。)に切断して紙管11としてプレス成形装置3に向けて搬出する。
【0032】
したがって、本実施の形態において、紙材料10に塗布される接着剤は、遅効性(比較的ゆっくりと固化する性質)のものが好ましく、このような接着剤としては、例えば、特開平08−309893号公報に記載されているものを採用することができる。また、紙管製造装置2のマンドレルの外周面は、接着剤が固着しにくい構造、若しくは、そのような処理が施されていることが好ましい。
【0033】
このようにして、緩衝材製造システム1における紙管製造装置2は、内面に接着剤が塗布された状態の筒状体(紙管11)を製造し、かつ、共通のテープ状材料(紙材料10)から断面サイズの異なる紙管11(所望の外径サイズΦの紙管11)を製造するものである。
【0034】
プレス成形装置3は、紙管製造装置2において製造された紙管11の中空部を、例えば平坦面が互いに対向するように配置された一組の金型等で押しつぶすことにより、当該紙管11を矩形の板状材料12に変形させる機能を備えた装置である。なお、ここで「押しつぶす」とは、例えば、紙管11の中空部に内型等の物体を挿入した状態で、押圧することを除く意味である。
【0035】
紙管11を板状材料12のような形状に変形させる機構としては、上下に配置された回転ローラの間に紙管11を通すことによって押しつぶす機構等、様々な形態が考えられる。緩衝材製造システム1におけるプレス成形装置3のような機能を備えた装置は従来より提案されている様々な装置を採用することができる。
【0036】
矩形の板状材料12の各辺のサイズは、一方がL(紙管11の長軸方向のサイズ)である。そして、他方の長さ(以下、「W」と称する。)は、およそ紙管11の外周長さの1/2であるから、紙管11の外径サイズΦと円周率πとを用いて式2のように表すことができる。
【0037】
W=π×Φ/2 ・・・ 式2
【0038】
式2に式1を代入すると、式3となる。
【0039】
W=π×(φ+2n×d)/2 ・・・ 式3
【0040】
したがって、板状材料12のサイズである「長さL」および「長さW」は、いずれも紙管製造装置2において決定される値である。
【0041】
一方、略L字状の緩衝材13のサイズは、図3に示す緩衝材9と同様に、概ね「L」と、「w1」と、「w2」と、厚み(以下、「D」と称する。)によって定義される。
【0042】
まず、緩衝材13の厚みDは、以下のように式4で求まる。
【0043】
D=2n×d ・・・ 式4
【0044】
ここで、w1およびw2は、w1+w2=Wを満たし、Wに沿った方向の折り目の位置(略L字状における角部の形成位置)によって決まるサイズである。
【0045】
したがって、略L字状の緩衝材13における「w1」、「w2」および「D」がそれぞれ所望のサイズとして決まれば、これらを式3に代入した式5により、紙管製造装置2のマンドレルの外径サイズ(紙管11の内径サイズφ)が決まる。
【0046】
w1+w2=π×(φ+D)/2 ・・・ 式5
【0047】
なお、式5において、「D」が充分に小さいときは、「D」に関する項を無視してもよい。
【0048】
アングル成形装置4は、板状材料12から所望の形状(本実施の形態では略L字状)の緩衝材13を成形する装置である。板状材料12のような形状の材料から略L字状の緩衝材13を成形する装置としては、例えば、特開平09−239874号公報に記載されている装置などを採用できる。
【0049】
アングル成形装置4は、緩衝材13における「w1」と「w2」とに応じて、角部の形成位置(板状材料12における折り目の位置)を調整し、成形する。具体的には、角部からそれぞれの端部までの長さがw1:w2となる位置に角部を形成するように、板状材料12を成形する。
【0050】
以上が、緩衝材製造システム1の構成および機能の説明である。次に、緩衝材製造システム1を用いて、テープ状材料(紙材料10)から緩衝材13を製造する緩衝材製造方法について説明する。
【0051】
図4は、緩衝材製造方法における筒状体製造工程を示す流れ図である。本実施の形態では、筒状体製造工程は主に紙管製造装置2において実行される処理である。
【0052】
まず、作業員は、略L字状の緩衝材13を製造するにあたって、緩衝材13のサイズ(「L」、「w1」、「w2」および「D」)を決める。
【0053】
次に、作業員は、決定した各サイズと式5とに基づいて、紙管製造装置2のマンドレルの外径サイズ(紙管11の内径サイズφ)を求める。そして、紙管製造装置2にセット可能な複数のマンドレル(様々なサイズのマンドレル)のなかから、求めた外径サイズのマンドレルを選択し、当該マンドレルを紙管製造装置2にセットする(ステップS11)。
【0054】
適切なマンドレルがセットされると、初期設定を実行する(ステップS12)。初期設定とは、紙管製造装置2を起動した後、運転を開始(実際の製造の開始)させるまでに行う処理である。初期設定においては、様々な条件や情報が紙管製造装置2にセットされるが、特に、製造すべき紙管11の軸心方向の長さ「L」の値がセットされる。これ以外にも、巻き数nや製造数等がセットされてもよい。
【0055】
初期設定が完了すると、作業員の指示に応じて、紙管製造装置2の運転が開始され、紙材料10の供給が開始される(ステップS13)。ここで重要なのは、緩衝材製造システム1においては、所望する緩衝材13のサイズに応じて、様々な種類の紙材料から適切な紙材料10を選択し交換する必要がないことである。さらに、製造する緩衝材13のサイズに応じた紙材料を何種類も保管・管理しておく必要もない。
【0056】
紙材料10の供給が開始されると、接着剤が転写された塗布ローラが、供給される紙材料10の第2面に当接することにより接着剤を塗布しつつ(ステップS14)、ステップS11においてセットされたマンドレルに巻き付けて紙管を形成する(ステップS15)。
【0057】
紙管製造装置2は、形成された紙管の軸心方向の長さがLとなったか否かを監視している(ステップS16)。そして、紙管が成長して、当該長さがLとなったときに、ステップS16においてYesと判定し、当該紙管を軸心方向に直交する方向に切断する。
【0058】
これにより、紙管製造装置2において、1つの紙管11が製造される。なお、製造された紙管11は、成形工程を施すために、プレス成形装置3に向けて搬出される(ステップS18)。
【0059】
紙管製造装置2は、紙管11を製造するたびに、今後製造する紙管11のサイズを変更するか否かを判定する(ステップS19)。
【0060】
未だ所定数の紙管11についての製造を完了しておらず、これまでと同じサイズの紙管11の製造を継続する場合(ステップS19においてNo)、ステップS14からの処理を繰り返す。
【0061】
一方、すでに所定数の紙管11についての製造を完了し、引き続き異なるサイズの紙管11の製造を開始する場合(ステップS19においてYes)、紙材料10の供給を停止し(ステップS20)、ステップS11からの処理を繰り返す。
【0062】
以上が、筒状体製造工程の説明である。次に、緩衝材製造方法における成形工程について説明する。
【0063】
図5は、緩衝材製造方法における成形工程を示す流れ図である。本実施の形態では、成形工程は主にプレス成形装置3およびアングル成形装置4において実行される処理である。
【0064】
まず、成形工程では、筒状体製造工程において製造された筒状体(紙管11)をプレス成形装置3にセットする(ステップS21)。
【0065】
次に、プレス成形装置3を稼働させて、紙管11を板状材料12となるように押しつぶす(ステップS22)。なお、ステップS22が実行されたとしても、直後に接着剤が固化するわけではないが、ステップS22の実行後において、板状材料12は、完全な板状でなくてもよい。
【0066】
次に、ステップS22により変形した紙管11(板状材料12)を、アングル成形装置4にセットし(ステップS23)、所望の形状(本実施の形態においては略L字状)に成形し(ステップS24)、緩衝材13とする。
【0067】
さらに、成形した略L字状の緩衝材13において、接着剤を乾燥させる(ステップS25)。言い換えれば、ステップS24が実行されるまで、材料に対する変形や成形が繰り返されるため、紙材料10に塗布された接着剤はステップS25に至るまで完全に固化しないことが好ましい。
【0068】
図6は、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1において製造される略L字状の緩衝材13を示す図である。
【0069】
図6に示す緩衝材13は、プレス成形装置3によって押しつぶされることにより形成された接着面130および一対の端部131と、アングル成形装置4によって形成された角部132を有している。
【0070】
接着面130は、紙管11において内面を形成していた部分が、プレス成形装置3によって中空部が押しつぶされ、内面に塗布されていた接着剤により接着することにより形成されたものである。
【0071】
一対の端部131は、紙管11において外面を形成していた部分であり、図6に示すように丸みを帯びた形状として形成されたものである。したがって、緩衝材製造システム1において製造される緩衝材13において、従来のL字状アングルのように、端部131が鋭利な形状とならないため、作業員等を傷つけることがないという効果もある。
【0072】
以上のように、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1は、共通の紙材料10から断面サイズの異なる筒状体である紙管11を製造する紙管製造装置2と、紙管製造装置2により製造された紙管11の中空部を押しつぶすプレス成形装置3により当該紙管11を変形させてから、アングル成形装置4により略L字状の緩衝材13に成形する。これにより、略L字状の緩衝材13を製造するにあたって、緩衝材13のサイズにかかわらず、共通の紙材料10により製造することができる。したがって、緩衝材13のサイズに応じた様々な種類の紙材料10を保管・管理・選択・交換する等の手間が省けるため、様々なサイズの緩衝材13を製造する際のコストを抑制できる。
【0073】
また、プレス成形装置3は、内面に接着剤が塗布された紙管11の中空部を押しつぶすことにより、容易に市販のアングル成形装置4に適した形状の材料(板状材料12)を製造できる。
【0074】
なお、第1の実施の形態では、1種類の紙材料(紙材料10)から紙管11を製造する例を説明したが、2種類以上の紙材料を用いて紙管11が製造されてもよい。例えば、紙管11の内面を形成する部分の紙材料、中間部分を形成する紙材料、外面を形成する紙材料というように、形成する部分等に応じて異なる紙材料が使用されてもよい。すなわち、緩衝材13のサイズに応じて紙材料が変更されるのでなければ、本発明の効果を得ることができる。以下の実施の形態においても同様である。
【0075】
また、第1の実施の形態では、プレス成形装置3によって、筒状の紙管11を、一旦、板状の板状材料12に変形させてから、アングル成形装置4により略L字状の緩衝材13を成形するとした。これによる効果は、緩衝材製造システム1において、最も一般的に市販されているアングル成形装置4を採用することができる点にある。
【0076】
しかし、紙管11から直接に略L字状の緩衝材13を成形するように構成してもよい。例えば、略L字状の1組の金型を備えた成形装置をプレス成形装置3およびアングル成形装置4の代わりに用い、当該1組の金型によって紙管11を押しつぶすことにより、緩衝材13を成形してもよい。このように構成することにより、プレス成形装置3およびアングル成形装置4を1台の成形装置によって代用することが可能となる。
【0077】
<2. 第2の実施の形態>
第1の実施の形態における緩衝材製造システム1では、紙管11の内面に接着剤が塗布されていた。しかしながら、緩衝材製造システム1は、内面に接着剤が塗布されていない筒状体により緩衝材を製造してもよい。
【0078】
図7は、第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aを示す図である。第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aは、紙管製造装置2において製造される筒状体(紙管14)の内面に接着剤が塗布されていないことを除いて、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と同様である。
【0079】
以下の説明では、第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aにおいて、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と同様の構成については同符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0080】
第2の実施の形態における紙管製造装置2は、紙管14の内面にあたる部分に接着剤を塗布することがない。言い換えれば、紙管14の内面に相当する部分の紙材料10については、第2面に接着剤を塗布する工程を実行しない。
【0081】
このように、内面に接着剤が塗布されていない紙管14をプレス成形装置3が押しつぶすと、第1の実施の形態のように板状とはならず、図7に示すように断面形状が略楕円形状となった枕状の材料15が形成される。すなわち、一旦、押しつぶされた中空部が多少再生されたような形状となる。
【0082】
第2の実施の形態では、アングル成形装置4は、第1の実施の形態における板状材料12と同様に、材料15に折り目をつけて角部を形成することにより、緩衝材16を成形する。
【0083】
図8は、第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aにより製造される緩衝材16の断面を例示する図である。
【0084】
緩衝材16は、筒状体(紙管14)であるときにおいて、内面に接着剤が塗布されていなかったために、緩衝材13における接着面130が形成されることはない。
【0085】
その代わりに、緩衝材16には、湾曲部160と、中空部161とが形成される。すなわち、紙管11と同じ形状の筒状体をプレス成形装置3において押しつぶしたとしても、内面に接着剤が塗布されていないために、筒状に形成された際の形が残り、被包装物に当接する部分に湾曲部160を形成する。
【0086】
第2の実施の形態における緩衝材16は、湾曲部160と中空部161とによって、弾力を生ずる効果を発揮する。
【0087】
以上のように、第2の実施の形態においても、緩衝材16のサイズにかかわらず、共通の紙材料10によって緩衝材16を製造できる。
【0088】
また、筒状体の内面に接着剤を塗布しないという容易な手法によって、略L字状の緩衝材13に限定されることなく、弾力のある緩衝材16を、容易に製造することができる。例えば、第1の実施の形態における紙管製造装置2において、紙材料10に接着剤を塗布する塗布ローラを紙材料10に対して進退自在となるように構成すれば、紙管11の内面に相当する部分について塗布ローラを紙材料10から離間させることができる。すなわち、所望する緩衝材(緩衝材13または緩衝材16)に応じて、紙管製造装置2の塗布ローラを進退可能に設計すれば、緩衝材製造システム1と緩衝材製造システム1aの両方の機能を備えたシステムも容易に構築することができる。
【0089】
なお、図7では、説明の都合上、枕状の材料15がアングル成形装置4に搬入されるように記載したが、アングル成形装置4に搬入されるときには、材料15は板状材料12と同様の形状で搬入されることが好ましい。例えば、枕状の材料15を上下ローラ等で押しつぶしつつ、アングル成形装置4に搬入されるように構成することが好ましい。
【0090】
<3. 第3の実施の形態>
本発明は、緩衝材13や緩衝材16を製造する場合に限定されるものではなく、さらに、豊富な形状の緩衝材を製造する場合に適用できる。
【0091】
なお、以下の説明において、「略コの字状」とは、平坦な材料において互いに略平行な2の折り目を規定し、当該2の折り目に沿って当該材料をそれぞれ略90°に折り曲げたときに現れる形状をいうものとする。ただし、折り曲げて形成される両端部において、折り目に直行する方向の長さは、互いに異なっていてもよい。
【0092】
図9は、第3の実施の形態における緩衝材製造システム1bを示す図である。以下の説明では、第3の実施の形態における緩衝材製造システム1bにおいて、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と同様の構成については同符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0093】
第3の実施の形態における緩衝材製造システム1bは、紙管製造装置2とプレス成形装置3との間に切断装置5が配置されている一方で、アングル成形装置4に相当する装置が存在しない点が第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と異なっている。
【0094】
切断装置5は、図9に示すように、紙管14(第2の実施の形態と同様に内面に接着剤が塗布されていない。)の長軸方向に沿った方向に切断し、切断面140を形成する。
【0095】
このようにして切断面140が形成された紙管14を、プレス成形装置3によって押しつぶし、変形させることにより、2つの角部を形成して、略コの字状の緩衝材17(いわゆる「チャネル」と呼ばれる緩衝材。)を成形する。なお、切断装置5から搬出される紙管14は回転しない状態(切断面140の位置が不明にならない状態)でプレス成形装置3に向けて供給され、固定された状態でプレスされることが好ましい。
【0096】
図10は、第3の実施の形態における緩衝材17について両端部を折りたたんだ状態から略コの字状に開く過程を示す図である。
【0097】
図10に示す緩衝材17aは、プレス成形装置3によって押しつぶされ、変形した状態である。図9に示す例では、折りたたまれている両端部を開くことにより図10に示す緩衝材17bの状態を経て、略コの字状の緩衝材17cとしてから接着剤を固化させている。すなわち、緩衝材製造システム1bから搬出される緩衝材17は、すでに略コの字状に成形されている。
【0098】
しかしながら、図10に示す緩衝材17aの状態で出荷し、緩衝材として使用する際に、折りたたまれている両端部を開いて、略コの字状としてもよい。このようにして製造した場合、出荷時の形状は、緩衝材17aの形状であるため、すでに略コの字状とされている場合に比べて出荷・搬送に適している。
【0099】
また、折りたたまれている両端部を使用時に開くように構成すると、図10に示す緩衝材17cのように両端部において破線矢印で示す方向に付勢力が生じる。したがって、緩衝材17(緩衝材17c)は、被包装物に対して、ズレたりハズレたりすることが抑制でき、緩衝材としてより一層効果的である。
【0100】
以上のように、第3の実施の形態における緩衝材製造システム1bは、略コの字状の緩衝材17のサイズにかかわらず、共通の紙材料10により緩衝材17を製造することができる。すなわち、第1の実施の形態と同様に、所望のサイズの緩衝材を共通の紙材料から製造することができる。
【0101】
なお、第3の実施の形態では、切断装置5によって紙管14を切断してから、プレス成形装置3で押しつぶすと説明した。しかし、例えば、図7に示すように、プレス成形装置3によって紙管14を押しつぶし、枕状の材料15を形成してから、切断装置5によって切断し切断面140を形成してもよい。枕状の材料15には、中空部が形成されるため、例えば、上側(あるいは下側)のみを切断することも比較的容易である。また、このように構成すれば、枕状の材料15は回転しにくい形状であるため、切断装置5において切断面140の位置を容易に決定できる。
【0102】
<4. 第4の実施の形態>
上記実施の形態では、筒製造手段としての紙管製造装置2を備えるシステムについて説明したが、本発明はこのような装置構成に限定されるものではない。
【0103】
図11は、第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cを示す図である。以下の説明では、第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cにおいて、第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aと同様の構成については同符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0104】
第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cは、紙管製造装置2を備えていない点が第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aと異なっている。
【0105】
緩衝材製造システム1cは、使用済みの紙管(リサイクル紙管)を回収し、これに蒸気や熱等をあてて柔らかくしたもの(リサイクル紙管に対する軟化処理を施したもの)を紙管14として利用するシステムとして構成されている。
【0106】
例えば、反物を扱う業者等では、反物の巻き心として使用される紙管を多量に廃棄処分している現状がある。しかし、緩衝材製造システム1cはこれら廃棄される紙管を緩衝材16の材料として有効に活用することが可能であり、緩衝材16の製造コストを抑制できる。また、リサイクルを推進することにより、エコロジーにも貢献できる。
【0107】
なお、紙管を、そのままの形状で回収するとかさばるため、例えば、プレス成形装置3に相当する機能を備えた回収車等において、回収する紙管を押しつぶし、板状(あるいは枕状)に変形させてから回収し、アングル成形装置4で成型処理してもよい。
【0108】
また、回収された紙管は、第3の実施の形態における紙管14として使用されてもよい。すなわち、略コの字状の緩衝材17を製造するために用いられてもよい。
【0109】
<5. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0110】
例えば、被包装物の角部は90°である場合が多いために、当該被包装物の角部を保護するために用いられる緩衝材(略L字状の緩衝材や略コの字状の緩衝材)の角部は略90°となるように成形されるのが一般的である。しかしながら、緩衝材の角部の角度は90°に限定されるものではなく、被包装物の形状に応じて、適宜変更されてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態における紙管製造装置2は、紙管11の外径サイズΦを変更する際に、紙材料10を巻き付ける軸心(マンドレル)を交換するとして説明したが、もちろん他の手法が採用されてもよい。例えば、既にセットされている複数のマンドレルを選択的に切り替えるものでもよい。
【0112】
また、上記実施の形態では、紙材料10に予め接着剤を塗布してから巻き回すことにより、内面に接着剤が塗布された状態の紙管11を製造する例を説明した。しかし、筒状体として製造される紙管11については、筒状に成形されてから、内面に接着剤を塗布してもよい。また、第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cにおいて、紙管14の内面に接着剤を塗布する装置(塗布装置)を設ければ、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と同様に、略L字状の緩衝材13を容易に製造することも可能である。
【0113】
また、1つの筒状体から必ずしも1つの緩衝材を製造しなければならないわけではない。例えば、内面に接着剤が塗布されていない紙管14をプレス成形装置3で押しつぶし、これを切断装置5によって長軸方向に沿って完全に切断すると、1つの紙管14から2つの略L字状の緩衝材が製造できる。この場合、切断位置を調整することにより、大小2種類のサイズの異なる略L字状の緩衝材を製造することも可能である。これを第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cに適用すれば、切断位置を調整することにより、回収された紙管のサイズにかかわらず、様々なサイズの略L字状の緩衝材を製造することも可能となる。すなわち、回収された紙管のサイズは製造しようとする緩衝材のサイズを考慮して製造されたものではないが、このように構成することによって、所望のサイズの略L字状の緩衝材を製造できる。
【0114】
また、プレス成形装置3で押しつぶす回数は1回に限定されるものではない。例えば、2回行うことにより、筒状体の断面形状が矩形になるように構成してもよい。すなわち、当該断面形状は板状に限定されるものではなく、多角形に対応することも容易に可能である。
【0115】
また、上記実施の形態に示した各工程は、あくまでも例示であって、例えば、同様の効果が得られるならば、それらの順序や内容が適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1,1a,1b,1c 緩衝材製造システム
10 紙材料
11,14 紙管
12 板状材料
13,16,17,17a,17b,17c 緩衝材
15 枕状の材料
160 湾曲部
161 中空部
2 紙管製造装置
3 プレス成形装置
4 アングル成形装置
5 切断装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材を製造する技術に関する。より詳細には、異なる形状の緩衝材を共通の材料から製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紙や樹脂等を様々な形状に成形した緩衝材を製造する技術が知られている。例えば、特許文献1には、被包装物を包装する略L字状のアングルが記載されている。また、多様な形状に対応し得る緩衝材を製造する方法が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−302155号公報
【特許文献2】特開平08−309893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の技術において、略L字状あるいは略コの字状の緩衝材は、材料のサイズに応じて、最終的なサイズが確定するという問題があった。例えば、断面形状が略L字状のアングル(テープ状の材料の短幅中心を90°に折ることにより製造される)のサイズは、主にテープ状の材料の短幅サイズによって決定される。すなわち、従来の技術では、サイズの異なる緩衝材を製造しようとすると、所望のサイズに応じた材料をそれぞれ準備しなければならず、共通の材料を使用することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コストを抑制しつつ、様々なサイズの緩衝材を製造する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、緩衝材を製造する緩衝材製造システムであって、筒状体の中空部を押しつぶすことにより、前記筒状体を変形させるとともに、前記筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する成形手段を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る緩衝材製造システムであって、前記筒状体は、回収されたリサイクル品であることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る緩衝材製造システムであって、共通のテープ状材料から断面サイズの異なる筒状体を製造する筒製造手段をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明に係る緩衝材製造システムであって、前記成形手段は、内面に接着剤が塗布された筒状体の中空部を押しつぶすことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の発明は、緩衝材を製造する緩衝材製造方法であって、筒状体の中空部を押しつぶすことにより、前記筒状体を変形させるとともに、前記筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する工程を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明に係る緩衝材製造方法であって、共通のテープ状材料から断面サイズの異なる筒状体を製造する工程をさらに有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7の発明は、請求項6の発明に係る緩衝材製造方法であって、前記テープ状材料について、前記筒状体の内面を形成する部分に、予め接着剤を塗布する工程をさらに有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8の発明は、請求項5または6の発明に係る緩衝材製造方法であって、前記筒状体の内面に接着剤を塗布する工程をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
筒状体の中空部を押しつぶすことにより、筒状体を変形させるとともに、筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する成形手段を備えることにより、例えば、回収した筒状体を材料として様々なサイズの緩衝材を製造することができるため、緩衝材の製造コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態における緩衝材製造システムを示す図である。
【図2】平坦材料としての矩形材料を示す図である。
【図3】略L字状の緩衝材を例示する図である。
【図4】緩衝材製造方法における筒状体製造工程を示す流れ図である。
【図5】緩衝材製造方法における成形工程を示す流れ図である。
【図6】第1の実施の形態における緩衝材製造システムにおいて製造される略L字状の緩衝材を示す図である。
【図7】第2の実施の形態における緩衝材製造システムを示す図である。
【図8】第2の実施の形態における緩衝材製造システムにより製造される緩衝材の断面を例示する図である。
【図9】第3の実施の形態における緩衝材製造システムを示す図である。
【図10】第3の実施の形態における緩衝材について両端部を折りたたんだ状態から略コの字状に開く過程を示す図である。
【図11】第4の実施の形態における緩衝材製造システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0017】
なお、以下の説明では、テープ状材料として、紙製(板紙やクラフト紙、ケント紙等)の材料を例に説明するが、テープ状材料としては、「紙製」に限定されるものではなく、例えば、テープフィルムのように樹脂製材料等であってもよい。すなわち、テープ状材料の素材としては、緩衝材、包装材あるいは梱包材として適切なものが、例えば、被包装物に応じて選択され得る。また、テープ状材料は略平坦な材料であり、例えば、片段ボール紙のような、波状の中芯紙(立体形状部)を備えるものを含まない。
【0018】
<1. 第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1を示す図である。緩衝材製造システム1は、テープ状材料としての紙材料10から筒状体としての紙管11を製造する紙管製造装置2と、紙管製造装置2により製造された紙管11の中空部を押しつぶすことにより板状材料12を製造するプレス成形装置3と、紙管11が変形した板状材料12を所望の形状(本実施の形態においては、略L字状)に成形することにより緩衝材13を製造するアングル成形装置4とを備えている。すなわち、緩衝材製造システム1では、紙管製造装置2、プレス成形装置3およびアングル成形装置4によって緩衝材13を製造するための製造ラインが形成されており、紙材料10から緩衝材13を製造するシステムとして構成されている。
【0019】
なお、以下の説明において、「略L字状」とは、平坦な材料において直線状の1の折り目を規定し、当該1の折り目に沿って当該材料を折り曲げたときに出現する形状をいうものとする。
【0020】
図2は、平坦材料としての矩形材料8を示す図である。また、図3は、略L字状の緩衝材9を例示する図である。図2に示す矩形材料8は、長辺のサイズが「L」、短辺のサイズが「W(W≒w1+w2)」となっており、長辺に略平行となるように、直線状の1つの折り目80が設定されている。そして、折り目80に沿って略90°に折り曲げることにより、折り目80に沿った角部を形成するように矩形材料8を成形すると、図3に例示す略L字状の緩衝材9と同じ形状となる。
【0021】
なお、図3では、w1とw2との長さが等しい例を示しているが、「略L字状」の形状としては、w1とw2との長さが等しくない形状も含む。
【0022】
図1に戻って、緩衝材製造システム1における紙管製造装置2は、図示しない軸心(マンドレル)に、紙材料10を螺旋状に巻き付けることにより、円筒状の紙管11を製造する装置である。
【0023】
このように、テープ状の紙材料10から筒状の紙管11を製造する紙管製造装置2としては、一般的に知られた装置を採用することができる。このような装置として、例えば、特開平07−040474号公報や特開2005−162348号公報、特開2009−255428号公報等に記載された装置を適宜用いることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0024】
また、本実施の形態における紙管製造装置2は、断面サイズの異なる紙管11を、共通の紙材料10から製造することが可能とされている。従来の装置を適用する紙管製造装置2においては、例えば、紙材料10を巻き回すマンドレルを様々なサイズのものに交換することによって断面サイズの異なる紙管11を製造できる。
【0025】
これは、紙管製造装置2のマンドレルの外径サイズが、当該マンドレルにより製造される紙管11の内径サイズに相当するからである。したがって、共通の紙材料10を用いたとしても、外径サイズの太いマンドレルを使用した場合には、外径サイズの細いマンドレルを使用した場合に比べて、内径サイズの太い紙管11を製造することができる。
【0026】
紙管製造装置2により製造される紙管11の外径サイズ(以下、「Φ」と称する。)は、当該紙管11の内径サイズ(以下、「φ」と称する。)と、巻き回す紙材料10の巻き数(以下、「n(nは正の整数)。」と称する。)と、紙材料10の厚み(以下、「d」と称する。)とによって、以下に示す式1のように決定される。
【0027】
Φ=φ+2n×d ・・・ 式1
【0028】
ここで、紙管11の内径サイズφは先述のように紙管製造装置2のマンドレルの外径サイズであるからマンドレルを交換することにより内径サイズφは変更することができる。また、紙材料10の巻き数nも可変である。したがって、共通の紙材料10が用いられることにより、紙材料10の厚みdが一定であるとしても、式1におけるφとnとが任意に選択できるため、紙管製造装置2は所望の外径サイズΦの紙管11を製造することができる。
【0029】
また、詳細は図示しないが、紙管製造装置2は、供給される紙材料10の両面のうちの一方(以下、「第2面」と称する。)に接着剤を塗布するように構成されている。テープ状の紙材料10の所定の面に接着剤を塗布する機構としては、例えば、特開2009−255428号公報に記載されている技術を採用することができる。
【0030】
そして、紙材料10は、第2面側(塗布面側)が内面となる向きに、上記マンドレルに巻き回される。これにより、紙材料10が重なる部分では、第2面に塗布された接着剤により、内側に存在する紙材料10と外側に存在する紙材料10とが張り合わされる。
【0031】
なお、本実施の形態では、最も内側に位置する紙材料10の第2面(紙管11の内面を形成する面)にも接着剤が塗布されている。しかし、紙管11は、マンドレル上に形成された後、速やかにマンドレルから取り外されるため、紙管11が紙管製造装置2のマンドレルに固着することは防止される。言い換えれば、紙材料10に塗布された接着剤が固化する前に、紙管製造装置2は、形成されている筒状部を所望の長さ(軸心に沿った方向の長さ。以下、「L」と称する。)に切断して紙管11としてプレス成形装置3に向けて搬出する。
【0032】
したがって、本実施の形態において、紙材料10に塗布される接着剤は、遅効性(比較的ゆっくりと固化する性質)のものが好ましく、このような接着剤としては、例えば、特開平08−309893号公報に記載されているものを採用することができる。また、紙管製造装置2のマンドレルの外周面は、接着剤が固着しにくい構造、若しくは、そのような処理が施されていることが好ましい。
【0033】
このようにして、緩衝材製造システム1における紙管製造装置2は、内面に接着剤が塗布された状態の筒状体(紙管11)を製造し、かつ、共通のテープ状材料(紙材料10)から断面サイズの異なる紙管11(所望の外径サイズΦの紙管11)を製造するものである。
【0034】
プレス成形装置3は、紙管製造装置2において製造された紙管11の中空部を、例えば平坦面が互いに対向するように配置された一組の金型等で押しつぶすことにより、当該紙管11を矩形の板状材料12に変形させる機能を備えた装置である。なお、ここで「押しつぶす」とは、例えば、紙管11の中空部に内型等の物体を挿入した状態で、押圧することを除く意味である。
【0035】
紙管11を板状材料12のような形状に変形させる機構としては、上下に配置された回転ローラの間に紙管11を通すことによって押しつぶす機構等、様々な形態が考えられる。緩衝材製造システム1におけるプレス成形装置3のような機能を備えた装置は従来より提案されている様々な装置を採用することができる。
【0036】
矩形の板状材料12の各辺のサイズは、一方がL(紙管11の長軸方向のサイズ)である。そして、他方の長さ(以下、「W」と称する。)は、およそ紙管11の外周長さの1/2であるから、紙管11の外径サイズΦと円周率πとを用いて式2のように表すことができる。
【0037】
W=π×Φ/2 ・・・ 式2
【0038】
式2に式1を代入すると、式3となる。
【0039】
W=π×(φ+2n×d)/2 ・・・ 式3
【0040】
したがって、板状材料12のサイズである「長さL」および「長さW」は、いずれも紙管製造装置2において決定される値である。
【0041】
一方、略L字状の緩衝材13のサイズは、図3に示す緩衝材9と同様に、概ね「L」と、「w1」と、「w2」と、厚み(以下、「D」と称する。)によって定義される。
【0042】
まず、緩衝材13の厚みDは、以下のように式4で求まる。
【0043】
D=2n×d ・・・ 式4
【0044】
ここで、w1およびw2は、w1+w2=Wを満たし、Wに沿った方向の折り目の位置(略L字状における角部の形成位置)によって決まるサイズである。
【0045】
したがって、略L字状の緩衝材13における「w1」、「w2」および「D」がそれぞれ所望のサイズとして決まれば、これらを式3に代入した式5により、紙管製造装置2のマンドレルの外径サイズ(紙管11の内径サイズφ)が決まる。
【0046】
w1+w2=π×(φ+D)/2 ・・・ 式5
【0047】
なお、式5において、「D」が充分に小さいときは、「D」に関する項を無視してもよい。
【0048】
アングル成形装置4は、板状材料12から所望の形状(本実施の形態では略L字状)の緩衝材13を成形する装置である。板状材料12のような形状の材料から略L字状の緩衝材13を成形する装置としては、例えば、特開平09−239874号公報に記載されている装置などを採用できる。
【0049】
アングル成形装置4は、緩衝材13における「w1」と「w2」とに応じて、角部の形成位置(板状材料12における折り目の位置)を調整し、成形する。具体的には、角部からそれぞれの端部までの長さがw1:w2となる位置に角部を形成するように、板状材料12を成形する。
【0050】
以上が、緩衝材製造システム1の構成および機能の説明である。次に、緩衝材製造システム1を用いて、テープ状材料(紙材料10)から緩衝材13を製造する緩衝材製造方法について説明する。
【0051】
図4は、緩衝材製造方法における筒状体製造工程を示す流れ図である。本実施の形態では、筒状体製造工程は主に紙管製造装置2において実行される処理である。
【0052】
まず、作業員は、略L字状の緩衝材13を製造するにあたって、緩衝材13のサイズ(「L」、「w1」、「w2」および「D」)を決める。
【0053】
次に、作業員は、決定した各サイズと式5とに基づいて、紙管製造装置2のマンドレルの外径サイズ(紙管11の内径サイズφ)を求める。そして、紙管製造装置2にセット可能な複数のマンドレル(様々なサイズのマンドレル)のなかから、求めた外径サイズのマンドレルを選択し、当該マンドレルを紙管製造装置2にセットする(ステップS11)。
【0054】
適切なマンドレルがセットされると、初期設定を実行する(ステップS12)。初期設定とは、紙管製造装置2を起動した後、運転を開始(実際の製造の開始)させるまでに行う処理である。初期設定においては、様々な条件や情報が紙管製造装置2にセットされるが、特に、製造すべき紙管11の軸心方向の長さ「L」の値がセットされる。これ以外にも、巻き数nや製造数等がセットされてもよい。
【0055】
初期設定が完了すると、作業員の指示に応じて、紙管製造装置2の運転が開始され、紙材料10の供給が開始される(ステップS13)。ここで重要なのは、緩衝材製造システム1においては、所望する緩衝材13のサイズに応じて、様々な種類の紙材料から適切な紙材料10を選択し交換する必要がないことである。さらに、製造する緩衝材13のサイズに応じた紙材料を何種類も保管・管理しておく必要もない。
【0056】
紙材料10の供給が開始されると、接着剤が転写された塗布ローラが、供給される紙材料10の第2面に当接することにより接着剤を塗布しつつ(ステップS14)、ステップS11においてセットされたマンドレルに巻き付けて紙管を形成する(ステップS15)。
【0057】
紙管製造装置2は、形成された紙管の軸心方向の長さがLとなったか否かを監視している(ステップS16)。そして、紙管が成長して、当該長さがLとなったときに、ステップS16においてYesと判定し、当該紙管を軸心方向に直交する方向に切断する。
【0058】
これにより、紙管製造装置2において、1つの紙管11が製造される。なお、製造された紙管11は、成形工程を施すために、プレス成形装置3に向けて搬出される(ステップS18)。
【0059】
紙管製造装置2は、紙管11を製造するたびに、今後製造する紙管11のサイズを変更するか否かを判定する(ステップS19)。
【0060】
未だ所定数の紙管11についての製造を完了しておらず、これまでと同じサイズの紙管11の製造を継続する場合(ステップS19においてNo)、ステップS14からの処理を繰り返す。
【0061】
一方、すでに所定数の紙管11についての製造を完了し、引き続き異なるサイズの紙管11の製造を開始する場合(ステップS19においてYes)、紙材料10の供給を停止し(ステップS20)、ステップS11からの処理を繰り返す。
【0062】
以上が、筒状体製造工程の説明である。次に、緩衝材製造方法における成形工程について説明する。
【0063】
図5は、緩衝材製造方法における成形工程を示す流れ図である。本実施の形態では、成形工程は主にプレス成形装置3およびアングル成形装置4において実行される処理である。
【0064】
まず、成形工程では、筒状体製造工程において製造された筒状体(紙管11)をプレス成形装置3にセットする(ステップS21)。
【0065】
次に、プレス成形装置3を稼働させて、紙管11を板状材料12となるように押しつぶす(ステップS22)。なお、ステップS22が実行されたとしても、直後に接着剤が固化するわけではないが、ステップS22の実行後において、板状材料12は、完全な板状でなくてもよい。
【0066】
次に、ステップS22により変形した紙管11(板状材料12)を、アングル成形装置4にセットし(ステップS23)、所望の形状(本実施の形態においては略L字状)に成形し(ステップS24)、緩衝材13とする。
【0067】
さらに、成形した略L字状の緩衝材13において、接着剤を乾燥させる(ステップS25)。言い換えれば、ステップS24が実行されるまで、材料に対する変形や成形が繰り返されるため、紙材料10に塗布された接着剤はステップS25に至るまで完全に固化しないことが好ましい。
【0068】
図6は、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1において製造される略L字状の緩衝材13を示す図である。
【0069】
図6に示す緩衝材13は、プレス成形装置3によって押しつぶされることにより形成された接着面130および一対の端部131と、アングル成形装置4によって形成された角部132を有している。
【0070】
接着面130は、紙管11において内面を形成していた部分が、プレス成形装置3によって中空部が押しつぶされ、内面に塗布されていた接着剤により接着することにより形成されたものである。
【0071】
一対の端部131は、紙管11において外面を形成していた部分であり、図6に示すように丸みを帯びた形状として形成されたものである。したがって、緩衝材製造システム1において製造される緩衝材13において、従来のL字状アングルのように、端部131が鋭利な形状とならないため、作業員等を傷つけることがないという効果もある。
【0072】
以上のように、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1は、共通の紙材料10から断面サイズの異なる筒状体である紙管11を製造する紙管製造装置2と、紙管製造装置2により製造された紙管11の中空部を押しつぶすプレス成形装置3により当該紙管11を変形させてから、アングル成形装置4により略L字状の緩衝材13に成形する。これにより、略L字状の緩衝材13を製造するにあたって、緩衝材13のサイズにかかわらず、共通の紙材料10により製造することができる。したがって、緩衝材13のサイズに応じた様々な種類の紙材料10を保管・管理・選択・交換する等の手間が省けるため、様々なサイズの緩衝材13を製造する際のコストを抑制できる。
【0073】
また、プレス成形装置3は、内面に接着剤が塗布された紙管11の中空部を押しつぶすことにより、容易に市販のアングル成形装置4に適した形状の材料(板状材料12)を製造できる。
【0074】
なお、第1の実施の形態では、1種類の紙材料(紙材料10)から紙管11を製造する例を説明したが、2種類以上の紙材料を用いて紙管11が製造されてもよい。例えば、紙管11の内面を形成する部分の紙材料、中間部分を形成する紙材料、外面を形成する紙材料というように、形成する部分等に応じて異なる紙材料が使用されてもよい。すなわち、緩衝材13のサイズに応じて紙材料が変更されるのでなければ、本発明の効果を得ることができる。以下の実施の形態においても同様である。
【0075】
また、第1の実施の形態では、プレス成形装置3によって、筒状の紙管11を、一旦、板状の板状材料12に変形させてから、アングル成形装置4により略L字状の緩衝材13を成形するとした。これによる効果は、緩衝材製造システム1において、最も一般的に市販されているアングル成形装置4を採用することができる点にある。
【0076】
しかし、紙管11から直接に略L字状の緩衝材13を成形するように構成してもよい。例えば、略L字状の1組の金型を備えた成形装置をプレス成形装置3およびアングル成形装置4の代わりに用い、当該1組の金型によって紙管11を押しつぶすことにより、緩衝材13を成形してもよい。このように構成することにより、プレス成形装置3およびアングル成形装置4を1台の成形装置によって代用することが可能となる。
【0077】
<2. 第2の実施の形態>
第1の実施の形態における緩衝材製造システム1では、紙管11の内面に接着剤が塗布されていた。しかしながら、緩衝材製造システム1は、内面に接着剤が塗布されていない筒状体により緩衝材を製造してもよい。
【0078】
図7は、第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aを示す図である。第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aは、紙管製造装置2において製造される筒状体(紙管14)の内面に接着剤が塗布されていないことを除いて、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と同様である。
【0079】
以下の説明では、第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aにおいて、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と同様の構成については同符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0080】
第2の実施の形態における紙管製造装置2は、紙管14の内面にあたる部分に接着剤を塗布することがない。言い換えれば、紙管14の内面に相当する部分の紙材料10については、第2面に接着剤を塗布する工程を実行しない。
【0081】
このように、内面に接着剤が塗布されていない紙管14をプレス成形装置3が押しつぶすと、第1の実施の形態のように板状とはならず、図7に示すように断面形状が略楕円形状となった枕状の材料15が形成される。すなわち、一旦、押しつぶされた中空部が多少再生されたような形状となる。
【0082】
第2の実施の形態では、アングル成形装置4は、第1の実施の形態における板状材料12と同様に、材料15に折り目をつけて角部を形成することにより、緩衝材16を成形する。
【0083】
図8は、第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aにより製造される緩衝材16の断面を例示する図である。
【0084】
緩衝材16は、筒状体(紙管14)であるときにおいて、内面に接着剤が塗布されていなかったために、緩衝材13における接着面130が形成されることはない。
【0085】
その代わりに、緩衝材16には、湾曲部160と、中空部161とが形成される。すなわち、紙管11と同じ形状の筒状体をプレス成形装置3において押しつぶしたとしても、内面に接着剤が塗布されていないために、筒状に形成された際の形が残り、被包装物に当接する部分に湾曲部160を形成する。
【0086】
第2の実施の形態における緩衝材16は、湾曲部160と中空部161とによって、弾力を生ずる効果を発揮する。
【0087】
以上のように、第2の実施の形態においても、緩衝材16のサイズにかかわらず、共通の紙材料10によって緩衝材16を製造できる。
【0088】
また、筒状体の内面に接着剤を塗布しないという容易な手法によって、略L字状の緩衝材13に限定されることなく、弾力のある緩衝材16を、容易に製造することができる。例えば、第1の実施の形態における紙管製造装置2において、紙材料10に接着剤を塗布する塗布ローラを紙材料10に対して進退自在となるように構成すれば、紙管11の内面に相当する部分について塗布ローラを紙材料10から離間させることができる。すなわち、所望する緩衝材(緩衝材13または緩衝材16)に応じて、紙管製造装置2の塗布ローラを進退可能に設計すれば、緩衝材製造システム1と緩衝材製造システム1aの両方の機能を備えたシステムも容易に構築することができる。
【0089】
なお、図7では、説明の都合上、枕状の材料15がアングル成形装置4に搬入されるように記載したが、アングル成形装置4に搬入されるときには、材料15は板状材料12と同様の形状で搬入されることが好ましい。例えば、枕状の材料15を上下ローラ等で押しつぶしつつ、アングル成形装置4に搬入されるように構成することが好ましい。
【0090】
<3. 第3の実施の形態>
本発明は、緩衝材13や緩衝材16を製造する場合に限定されるものではなく、さらに、豊富な形状の緩衝材を製造する場合に適用できる。
【0091】
なお、以下の説明において、「略コの字状」とは、平坦な材料において互いに略平行な2の折り目を規定し、当該2の折り目に沿って当該材料をそれぞれ略90°に折り曲げたときに現れる形状をいうものとする。ただし、折り曲げて形成される両端部において、折り目に直行する方向の長さは、互いに異なっていてもよい。
【0092】
図9は、第3の実施の形態における緩衝材製造システム1bを示す図である。以下の説明では、第3の実施の形態における緩衝材製造システム1bにおいて、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と同様の構成については同符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0093】
第3の実施の形態における緩衝材製造システム1bは、紙管製造装置2とプレス成形装置3との間に切断装置5が配置されている一方で、アングル成形装置4に相当する装置が存在しない点が第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と異なっている。
【0094】
切断装置5は、図9に示すように、紙管14(第2の実施の形態と同様に内面に接着剤が塗布されていない。)の長軸方向に沿った方向に切断し、切断面140を形成する。
【0095】
このようにして切断面140が形成された紙管14を、プレス成形装置3によって押しつぶし、変形させることにより、2つの角部を形成して、略コの字状の緩衝材17(いわゆる「チャネル」と呼ばれる緩衝材。)を成形する。なお、切断装置5から搬出される紙管14は回転しない状態(切断面140の位置が不明にならない状態)でプレス成形装置3に向けて供給され、固定された状態でプレスされることが好ましい。
【0096】
図10は、第3の実施の形態における緩衝材17について両端部を折りたたんだ状態から略コの字状に開く過程を示す図である。
【0097】
図10に示す緩衝材17aは、プレス成形装置3によって押しつぶされ、変形した状態である。図9に示す例では、折りたたまれている両端部を開くことにより図10に示す緩衝材17bの状態を経て、略コの字状の緩衝材17cとしてから接着剤を固化させている。すなわち、緩衝材製造システム1bから搬出される緩衝材17は、すでに略コの字状に成形されている。
【0098】
しかしながら、図10に示す緩衝材17aの状態で出荷し、緩衝材として使用する際に、折りたたまれている両端部を開いて、略コの字状としてもよい。このようにして製造した場合、出荷時の形状は、緩衝材17aの形状であるため、すでに略コの字状とされている場合に比べて出荷・搬送に適している。
【0099】
また、折りたたまれている両端部を使用時に開くように構成すると、図10に示す緩衝材17cのように両端部において破線矢印で示す方向に付勢力が生じる。したがって、緩衝材17(緩衝材17c)は、被包装物に対して、ズレたりハズレたりすることが抑制でき、緩衝材としてより一層効果的である。
【0100】
以上のように、第3の実施の形態における緩衝材製造システム1bは、略コの字状の緩衝材17のサイズにかかわらず、共通の紙材料10により緩衝材17を製造することができる。すなわち、第1の実施の形態と同様に、所望のサイズの緩衝材を共通の紙材料から製造することができる。
【0101】
なお、第3の実施の形態では、切断装置5によって紙管14を切断してから、プレス成形装置3で押しつぶすと説明した。しかし、例えば、図7に示すように、プレス成形装置3によって紙管14を押しつぶし、枕状の材料15を形成してから、切断装置5によって切断し切断面140を形成してもよい。枕状の材料15には、中空部が形成されるため、例えば、上側(あるいは下側)のみを切断することも比較的容易である。また、このように構成すれば、枕状の材料15は回転しにくい形状であるため、切断装置5において切断面140の位置を容易に決定できる。
【0102】
<4. 第4の実施の形態>
上記実施の形態では、筒製造手段としての紙管製造装置2を備えるシステムについて説明したが、本発明はこのような装置構成に限定されるものではない。
【0103】
図11は、第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cを示す図である。以下の説明では、第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cにおいて、第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aと同様の構成については同符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0104】
第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cは、紙管製造装置2を備えていない点が第2の実施の形態における緩衝材製造システム1aと異なっている。
【0105】
緩衝材製造システム1cは、使用済みの紙管(リサイクル紙管)を回収し、これに蒸気や熱等をあてて柔らかくしたもの(リサイクル紙管に対する軟化処理を施したもの)を紙管14として利用するシステムとして構成されている。
【0106】
例えば、反物を扱う業者等では、反物の巻き心として使用される紙管を多量に廃棄処分している現状がある。しかし、緩衝材製造システム1cはこれら廃棄される紙管を緩衝材16の材料として有効に活用することが可能であり、緩衝材16の製造コストを抑制できる。また、リサイクルを推進することにより、エコロジーにも貢献できる。
【0107】
なお、紙管を、そのままの形状で回収するとかさばるため、例えば、プレス成形装置3に相当する機能を備えた回収車等において、回収する紙管を押しつぶし、板状(あるいは枕状)に変形させてから回収し、アングル成形装置4で成型処理してもよい。
【0108】
また、回収された紙管は、第3の実施の形態における紙管14として使用されてもよい。すなわち、略コの字状の緩衝材17を製造するために用いられてもよい。
【0109】
<5. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0110】
例えば、被包装物の角部は90°である場合が多いために、当該被包装物の角部を保護するために用いられる緩衝材(略L字状の緩衝材や略コの字状の緩衝材)の角部は略90°となるように成形されるのが一般的である。しかしながら、緩衝材の角部の角度は90°に限定されるものではなく、被包装物の形状に応じて、適宜変更されてもよい。
【0111】
また、上記実施の形態における紙管製造装置2は、紙管11の外径サイズΦを変更する際に、紙材料10を巻き付ける軸心(マンドレル)を交換するとして説明したが、もちろん他の手法が採用されてもよい。例えば、既にセットされている複数のマンドレルを選択的に切り替えるものでもよい。
【0112】
また、上記実施の形態では、紙材料10に予め接着剤を塗布してから巻き回すことにより、内面に接着剤が塗布された状態の紙管11を製造する例を説明した。しかし、筒状体として製造される紙管11については、筒状に成形されてから、内面に接着剤を塗布してもよい。また、第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cにおいて、紙管14の内面に接着剤を塗布する装置(塗布装置)を設ければ、第1の実施の形態における緩衝材製造システム1と同様に、略L字状の緩衝材13を容易に製造することも可能である。
【0113】
また、1つの筒状体から必ずしも1つの緩衝材を製造しなければならないわけではない。例えば、内面に接着剤が塗布されていない紙管14をプレス成形装置3で押しつぶし、これを切断装置5によって長軸方向に沿って完全に切断すると、1つの紙管14から2つの略L字状の緩衝材が製造できる。この場合、切断位置を調整することにより、大小2種類のサイズの異なる略L字状の緩衝材を製造することも可能である。これを第4の実施の形態における緩衝材製造システム1cに適用すれば、切断位置を調整することにより、回収された紙管のサイズにかかわらず、様々なサイズの略L字状の緩衝材を製造することも可能となる。すなわち、回収された紙管のサイズは製造しようとする緩衝材のサイズを考慮して製造されたものではないが、このように構成することによって、所望のサイズの略L字状の緩衝材を製造できる。
【0114】
また、プレス成形装置3で押しつぶす回数は1回に限定されるものではない。例えば、2回行うことにより、筒状体の断面形状が矩形になるように構成してもよい。すなわち、当該断面形状は板状に限定されるものではなく、多角形に対応することも容易に可能である。
【0115】
また、上記実施の形態に示した各工程は、あくまでも例示であって、例えば、同様の効果が得られるならば、それらの順序や内容が適宜変更されてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1,1a,1b,1c 緩衝材製造システム
10 紙材料
11,14 紙管
12 板状材料
13,16,17,17a,17b,17c 緩衝材
15 枕状の材料
160 湾曲部
161 中空部
2 紙管製造装置
3 プレス成形装置
4 アングル成形装置
5 切断装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝材を製造する緩衝材製造システムであって、
筒状体の中空部を押しつぶすことにより、前記筒状体を変形させるとともに、前記筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する成形手段を備えることを特徴とする緩衝材製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝材製造システムであって、
前記筒状体は、回収されたリサイクル品であることを特徴とする緩衝材製造システム。
【請求項3】
請求項1に記載の緩衝材製造システムであって、
共通のテープ状材料から断面サイズの異なる筒状体を製造する筒製造手段をさらに備えることを特徴とする緩衝材製造システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の緩衝材製造システムであって、
前記成形手段は、内面に接着剤が塗布された筒状体の中空部を押しつぶすことを特徴とする緩衝材製造システム。
【請求項5】
緩衝材を製造する緩衝材製造方法であって、
筒状体の中空部を押しつぶすことにより、前記筒状体を変形させるとともに、前記筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する工程を有することを特徴とする緩衝材製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の緩衝材製造方法であって、
共通のテープ状材料から断面サイズの異なる筒状体を製造する工程をさらに有することを特徴とする緩衝材製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の緩衝材製造方法であって、
前記テープ状材料について、前記筒状体の内面を形成する部分に、予め接着剤を塗布する工程をさらに有することを特徴とする緩衝材製造方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の緩衝材製造方法であって、
前記筒状体の内面に接着剤を塗布する工程をさらに有することを特徴とする緩衝材製造方法。
【請求項1】
緩衝材を製造する緩衝材製造システムであって、
筒状体の中空部を押しつぶすことにより、前記筒状体を変形させるとともに、前記筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する成形手段を備えることを特徴とする緩衝材製造システム。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝材製造システムであって、
前記筒状体は、回収されたリサイクル品であることを特徴とする緩衝材製造システム。
【請求項3】
請求項1に記載の緩衝材製造システムであって、
共通のテープ状材料から断面サイズの異なる筒状体を製造する筒製造手段をさらに備えることを特徴とする緩衝材製造システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の緩衝材製造システムであって、
前記成形手段は、内面に接着剤が塗布された筒状体の中空部を押しつぶすことを特徴とする緩衝材製造システム。
【請求項5】
緩衝材を製造する緩衝材製造方法であって、
筒状体の中空部を押しつぶすことにより、前記筒状体を変形させるとともに、前記筒状体を所望の形状を有する緩衝材に成形する工程を有することを特徴とする緩衝材製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の緩衝材製造方法であって、
共通のテープ状材料から断面サイズの異なる筒状体を製造する工程をさらに有することを特徴とする緩衝材製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の緩衝材製造方法であって、
前記テープ状材料について、前記筒状体の内面を形成する部分に、予め接着剤を塗布する工程をさらに有することを特徴とする緩衝材製造方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載の緩衝材製造方法であって、
前記筒状体の内面に接着剤を塗布する工程をさらに有することを特徴とする緩衝材製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−101845(P2012−101845A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254365(P2010−254365)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(500266667)株式会社ホンシュ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(500266667)株式会社ホンシュ (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]